説明

純水製造装置

【課題】UV酸化装置とイオン交換装置とを有する純水製造装置におけるUV酸化装置の後段のイオン交換装置中のイオン交換樹脂の劣化を抑制した純水製造装置を提供する。
【解決手段】純水製造装置は、前処理システム1、一次純水システム2、及びサブシステム3により構成される。サブシステム3は、UV酸化装置(紫外線酸化装置)8と、非再生型イオン交換装置9とを有し、UV酸化装置8の後段にUV殺菌装置(紫外線酸化装置)8Aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造システム等に組み込むのに好適な純水製造装置に関し、特にUV酸化装置とイオン交換装置とを有し、UV酸化装置の後段のイオン交換装置中のイオン交換樹脂の劣化を抑制した純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水製造装置は、通常、図2に示すように前処理システム1、一次純水システム2、及び二次純水製造装置たるサブシステム3により構成される。前処理システム1は、凝集、加圧浮上、ろ過等により構成され、被処理水W0から濁質成分の除去を行う。
【0003】
一次純水システム2は、一次純水タンクT1、4床5塔イオン交換装置4、RO(逆浸透膜)装置5、脱気膜装置6及び電気脱イオン装置7により構成され、ほとんどのイオン成分やTOC成分がこの一次純水システム2において除去される。この一次純水システム2において、TOC成分が10ppb以下程度にまで除去される。
【0004】
サブシステム3は、サブタンクT2、UV酸化装置(紫外線酸化装置)8、非再生型イオン交換装置9及びUF装置(限外濾過装置)10により構成される。このサブシステム3において、TOC成分は、UV酸化装置8で炭酸又は有機酸のレベルにまで分解され、後段の非再生型イオン交換装置9で除去され、1〜5ppb以下程度にまで処理される。
【0005】
そして、このようにして製造された超純水W1は、ユースポイントUPに送水され、余剰の超純水W1は、サブシステム3の前段のサブタンクT2に返送される。
【0006】
ところで、超純水の要求水質は年々厳しくなり、現在、最先端の電子産業分野では、TOC成分の濃度が0.5ppb以下の超純水が要求される場合もある。このような場合には、図2に示すシステム構成において、サブシステム3の前にさらにUV酸化装置と、非再生型イオン交換装置を設けることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような従来の超純水製造装置では、UV酸化装置8の後段に配置される非再生型イオン交換装置9中のイオン交換樹脂の劣化が生じやすい、という問題があることがわかった。特に劣化がひどい場合には、非再生型イオン交換装置9中のイオン交換樹脂のポリマーの重合が切断され、約6ヶ月程度で微粒子成分が流出し、UF装置10を閉塞してしまうおそれもある。この傾向は、UV酸化装置8のUVの強度が強いほど、またUV酸化装置8から非再生型イオン交換装置9までの配管長さが短いほど顕著であることが明らかになった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、UV酸化装置とイオン交換装置とを有する純水製造装置において、UV酸化装置の後段のイオン交換装置中のイオン交換樹脂の劣化を抑制することのできる純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、UV酸化装置とイオン交換装置とを有する純水製造装置であって、前記UV酸化装置の後段にUV殺菌装置を有することを特徴とする純水製造装置を提供する(請求項1)。
【0010】
上記発明(請求項1)においては、前記イオン交換装置が、非再生型のイオン交換装置であるのが好ましい(請求項2)。
【0011】
上記発明(請求項1,2)によれば、主UV波長185nmのUV酸化装置の後段に、主UV波長254nmのUV殺菌装置を設けることにより、UV酸化装置で発生するオゾン等の酸化成分を分解することができ、これらの後段のイオン交換装置中のイオン交換樹脂の劣化を抑制することができる。
【0012】
これは以下のような作用によると考えられる。すなわち、従来の超純水製造装置においては、非再生型イオン交換装置中のイオン交換樹脂の劣化が、UV酸化装置のUVの強度が強いほど、またUV酸化装置から非再生型イオン交換装置までの配管長さが短いほど顕著であることから、水及び水中の溶存酸素がUV酸化装置によって下記式のように酸化され、オゾン等の酸化成分が多く発生し、かつこれにより生じたラジカル等の分解時間が短いことにより、イオン交換装置にオゾンやラジカルが供給され、イオン交換樹脂の劣化が生じると考えられる。
【0013】
【化1】

【0014】
そこで、UV酸化装置の後段にUV殺菌装置を配置して、下記式に示すようにオゾンを波長254nmのUVにより過酸化水素と酸素に分解し、この過酸化水素をさらに分解して水と酸素とに戻すことで、後段のイオン交換装置にオゾンやラジカルが供給されてしまうのを防止し、これにより非再生型イオン交換装置中のイオン交換樹脂の劣化を抑制することができる。
【0015】
【化2】

【0016】
上記発明(請求項1,2)においては、前記純水製造装置が、一次純水製造装置と、この一次純水製造装置で処理された一次純水を処理する二次純水製造装置とを備え、前記二次純水製造装置に、前記UV酸化装置と、前記UV殺菌装置と、前記イオン交換装置とが設けられているのが好ましい(請求項3)。
【0017】
上記発明(請求項3)によれば、純水製造のイオン交換装置の交換時期を延ばすことが可能となり、長期間安定して純水を供給することのできる純水製造装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の純水製造装置によれば、主UV波長185nmのUV酸化装置の後段に、主UV波長254nmのUV殺菌装置を設けることにより、UV酸化装置におけるUV照射で発生するオゾン等の酸化成分を分解することができ、これらの後段のイオン交換装置中のイオン交換樹脂の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による純水製造装置を示すフロー図である。
【図2】従来の純水製造装置を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の純水製造装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る超純水製造装置を示すフロー図である。本実施形態の超純水製造装置は、前述した図2に示す従来の超純水製造装置と基本的には同様の構成を有するため、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0021】
本実施形態においては、サブシステム3は、UV酸化装置(紫外線酸化装置)8、UV殺菌装置(紫外線殺菌装置)8A、非再生型イオン交換装置9及びUF装置(限外濾過装置)10により構成されている。
【0022】
上記UV酸化装置8は、波長185nmの紫外線を主波長として放出する。この220nm以下の短波長紫外線は強いエネルギーを有することから、水中の有機物分解に有効である。
【0023】
一方、UV殺菌装置8Aは、波長254nmの紫外線を主波長として放出する。この波長254nmの紫外線は、オゾンや過酸化水素の分解に有効である。
【0024】
前記構成につきその作用について説明する。
被処理水W0は、まず前処理システム1により濁質成分等が除去された後、一次純水システム2の4床5塔イオン交換装置4、RO(逆浸透膜)装置5、脱気膜装置6、電気脱イオン装置7により、ほとんどのイオン成分やTOC成分が除去される。この一次純水システム2で、TOC成分は10ppb以下程度にまで除去される。
【0025】
そして、この一次純水システム2で処理された一次純水は、サブシステム3のサブタンクT2に一旦貯留された後、UV酸化装置8により、TOC成分が炭酸又は有機酸のレベルになるまで分解される。このUV酸化装置8の酸化力は非常に強力であるため、水や溶存酸素が酸化されてオゾンが発生する。
【0026】
続いて、この処理水がUV殺菌装置8Aで処理されることにより、処理水中のオゾンは過酸化水素を経由して水と酸素とに戻ることになる。
【0027】
そして、微量に含まれる炭酸、有機酸等が非再生型イオン交換装置9で除去され、UF装置10を透過して超純水W1を得ることができ、これをユースポイントUPに送水し、余剰の超純水W1はサブシステム3の前段のサブタンクT2に返送される。
【0028】
このように本実施形態の純水製造装置によれば、オゾンや過酸化水素等の強酸化成分が非再生型イオン交換装置9に供給されることがないため、非再生型イオン交換装置9中のイオン交換樹脂の劣化を抑制することができる。
【0029】
以上、本実施形態に係る純水製造システムについて図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。
【0030】
例えば、一次純水システム2は、被処理水W0の水質に応じて種々設定することができる。具体的には、下記のような構成を有するものとすることができる。
(1)2床3塔イオン交換装置+RO装置+脱気膜装置+電気脱イオン装置
(2)第1のRO装置+第2のRO装置+脱気膜装置+電気脱イオン装置
【0031】
なお、上記実施形態においては、サブシステム3にUV殺菌装置を設けたが、一次純水システム2やその他の箇所にUV酸化装置と非再生型イオン交換装置とを設ける場合にもUV酸化装置の後段にUV殺菌装置を設けてもよい。
【実施例】
【0032】
以下に比較例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
なお、以下の比較例及び実施例においては、以下の装置を使用した。
・電気脱イオン装置(栗田工業社製「KCDI−UPz」、処理水量:15000L/hr)
・RO装置(栗田工業社製,製品名:K−RO−A−2072)
・脱気膜装置(セルガード社製,製品名:リキセルX40)
・UV酸化装置(出力0.3kW/(m/h))
・UV殺菌装置(出力0.05kW/(m/h))
・非再生型イオン交換装置(栗田工業(株)製、KR−FM)
【0033】
〔実施例1〕
図1に示す構成の超純水製造装置を用いて、非再生型イオン交換装置9へ通水条件SV=90/hで通水し、6ヶ月経過後の非再生型イオン交換装置9の出口水の微粒子数を微粒子モニター(栗田工業(株)製、KLAMIC−KS)により計測したところ、微粒子は確認されなかった。
【0034】
〔比較例1〕
実施例1において、UV殺菌装置8Aを用いない以外は同様にして、非再生型イオン交換装置9へ通水条件をSV=90/hで通水し、6ヶ月経過後の非再生型イオン交換装置9の出口水の微粒子数を微粒子モニターにより計測したところ、粒径約0.05μmの微粒子が70個/mL検出された。これは非再生型イオン交換装置9中のイオン交換樹脂が劣化したためであると考えられる。
【符号の説明】
【0035】
1…前処理システム
2…一次純水システム
3…サブシステム(二次純水製造装置)
8…UV酸化装置(紫外線酸化装置)
8A…UV殺菌装置(紫外線殺菌装置)
9…非再生型イオン交換装置(イオン交換装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV酸化装置とイオン交換装置とを有する純水製造装置であって、
前記UV酸化装置の後段にUV殺菌装置を有することを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
前記イオン交換装置が、非再生型のイオン交換装置であることを特徴とする請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記純水製造装置が、一次純水製造装置と、この一次純水製造装置で処理された一次純水を処理する二次純水製造装置とを備え、
前記二次純水製造装置に、前記UV酸化装置と、前記UV殺菌装置と、前記イオン交換装置とが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227886(P2010−227886A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80533(P2009−80533)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】