説明

純粋なキシリレンジアミン(XDA)の製造方法

粗キシリレンジアミンを塔中で連続的に蒸留することにより純粋なキシリレンジアミン(XDA)を製造する方法において、側方排出部を有する蒸留塔を使用し、かつXDAを側方排出部で排出し、かつ蒸留塔の塔底生成物を付加的な蒸発濃縮工程でさらに蒸発濃縮し、かつこの蒸発濃縮工程の凝縮液を、側方排出部を有する蒸留塔へ返送することを特徴とする、純粋なキシリレンジアミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塔中で粗キシリレンジアミンを連続的に蒸留することにより純粋なキシリレンジアミン(XDA)を製造する方法に関する。
【0002】
キシリレンジアミン(ビス(アミノメチル)ベンゼン)は、たとえばポリアミド、エポキシ硬化剤の合成のために、またはイソシアネートを製造するための中間体として有用な原料である。
【0003】
「キシリレンジアミン」(XDA)という名称は、3つの異性体、つまりオルト−キシリレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン(MDXA)およびパラ−キシリレンジアミンを包含する。
【0004】
粗キシリレンジアミンはたとえばキシレンのアンモ酸化および引き続き得られたフタロジニトリルの水素化により製造することができる。可能な製造法はたとえば以下に記載する出願に記載されている。
【0005】
US−A−4,482,741(UOP Inc.)は、アンモニア、特殊な触媒および溶剤としてのXDAの存在下でのフタロジニトリル(PDN)の水素化を記載している。
【0006】
EP−A2−1193247およびEP−A1−1279661(いずれも三菱ガス化学株式会社)は、イソフタロジニトリル(IPDN)を精製するための方法もしくは純粋なXDAを製造する方法に関する。
【0007】
EP−A2−1193244(三菱ガス化学株式会社)は、先行する工程でキシレンをアンモ酸化することによって合成されるフタロジニトリルの水素化によりXDAを製造する方法を記載しており、その際、アンモ酸化工程の蒸気状生成物を直接に液状の有機溶剤と接触させ(急冷(クエンチ)し)、かつ得られたクエンチ溶液またはクエンチ懸濁液を水素化に供給している。
【0008】
得られた粗XDAの精製は、以下の特許出願にも記載されている:
JP2002−088032(三菱ガス化学株式会社)は、凝縮器に不活性ガスを供給することによりXDAを精製する方法を記載しており、その際、塔の塔頂圧力は、53ミリバール以下に、かつ凝縮器の出口温度は110℃以下に維持される。XDAより沸点の低い成分は不活性ガスによりストリッピングされるので、該成分は、凝縮しないか、もしくは完全には凝縮せず、不活性ガスと共に塔頂を介して留去される。高い凝縮温度により、その効果は促進される。しかし真空装置の負荷は、不活性ガスにより拡大され、かつストリッピングされた成分は、不活性ガスから凝縮することが困難であるので、実質的にマッフル炉またはフレア中での燃焼が残る。請求項2の記載によれば、請求項1と同様に不活性ガスが添加され、かつ塔底温度は180℃に限定される。ここから大きな生成物損失が塔底を介して生じるか、または極めて低い真空が必要とされるが、しかしこれは不活性ガスの添加によって発生させることが困難であり、かつ高価である。
【0009】
US3,647,054(日本瓦斯化学工業株式会社)は、アルカリ性成分の添加およびその後の、水素化されなかったか、もしくは完全に水素化されなかったフタロジニトリルもしくはシアノベンジルアミンの残分をけん化するための加熱により粗キシリレンジアミンを精製し、引き続き蒸留によって純粋なキシリレンジアミンを得ることを記載している。フタロジニトリルおよびシアノベンジルアミンは、さもなければ、キシリレンジアミンからはほとんど蒸留によって分離することができない。ケン化反応のための条件は記載されている。純粋蒸留については単に実施例において、減圧で作業することが言及されているのみである。蒸留の際に比較的高い温度でキシリレンジアミンから生じ、かつ生成物を汚染する分解生成物ついては、US3,647,054には記載されていない。
【0010】
1968年1月26日(Galperin等)のSU−A−322322は、随伴成分としてニトリルを含有している粗キシリレンジアミンの精製を記載しており、ここで随伴成分は200℃でアルカリ液またはアンモニアの存在下に加水分解される。精留は詳細に記載されていない。高温での生成物の分解またはアンモニアの分離の問題については記載されていない。
【0011】
JP−B−70014777(日本瓦斯化学工業株式会社)は、反応していないフタロニトリルに対して0.5〜5質量%のアルカリ性物質を粗キシリレンジアミンに添加することによって、キシリレンジアミンを精製することを記載している。粗キシリレンジアミンは、液状のアンモニアと有機溶剤とからなる均質な液相中でフタロニトリルを水素化することにより得られている。引き続き該混合物を蒸留する。
【0012】
JP−A−2003026638(三菱ガス化学株式会社)は、XDAの精製のための、水および芳香族もしくは飽和炭化水素を用いた高価な抽出法を記載している。このために、フタロニトリルをキシレンからアンモ酸化によって製造し、反応ガスを溶剤で急冷し、アンモニアを添加し、かつ水素化する。アンモニアおよび溶剤を分離した後で、粗キシリレンジアミンが得られる。水および少なくとも1の芳香族もしくは飽和溶剤が添加される。相分離の後で、純粋なキシリレンジアミンが水相と共に得られ、ここから純粋なキシリレンジアミンが蒸留によって取得される。
【0013】
純粋なXDAを得るために、上記の刊行物では部分的に高価な方法が記載されており、これらの方法によってXDAはたとえば抽出により精製されるか、またはXDAの要求される高い純度を保証すべき助剤が添加される。助剤の添加により、水素化の後で不完全な反応によってなお不純物として粗キシリレンジアミン中に含有されている相応するニトリルがけん化される。
【0014】
記載された方法は、装置的に、および大量の溶剤流もしくは付加的な成分の取り扱いによって高価である。
【0015】
2005年1月24日の第102005003315.6号および2005年2月24日の第102005008929.1号の2つのドイツ特許出願(いずれもBASF AG)は、ラネー触媒の存在下でのPDN低圧水素化に関する。
【0016】
WO−A−05/028417、WO−A−05/026102、WO−A−05/026103、WO−A−05/026104、WO−A−05/026100、WO−A−05/026101、WO−A−05/026098、WO−A−05/026099および2005年8月2日の第102005036222.2号および2005年9月24日の第102005045806.8号の2つのドイツ特許出願(いずれもBASF AG)は、それぞれXDAを製造する方法に関する。これらの全ての方法において、粗キシリレンジアミンが得られ、これを引き続きさらに精製しなくてはならない。
【0017】
たとえばWO−A−05/028417は、第8頁で、低沸点および高沸点の副生成物の分離を、側方排出部または分離壁塔中で行うことができ、その際、純粋なキシリレンジアミンが、液状もしくは気体状の側方供給部を介して得られることを教示している。高温での粗XDAの蒸留塔塔底における反応に基づいて、この方法ではXDAは、蒸留を極めて低い圧力で行って塔底温度を限定する場合にのみ良好な収率で得ることができるにすぎない。この方法は装置的に比較的高価である。純粋なXDAを側方排出部で取得するためには、大工業的により容易に実現される真空で、塔底を介した生成物の損失を甘受しなくてはならない。収率を向上する際に、上昇する塔底温度は生成物の分解につながり、その際、分解生成物、たとえばメチルベンジルアミンは、側方排出部で取り出されるXDAを汚染する。従って、純粋なXDAは、比較的低い収率で得られるか、または汚染されたXDAが高い収率で得られる。
【0018】
本発明の根底には、粗キシリレンジアミン、特にメタ−キシリレンジアミン(MXDA)を蒸留により精製するための改善された経済的な方法であって、キシリレンジアミンが高い純度で、および同時に高い収率で得られる方法を見いだすという課題が存在していた。
【0019】
粗キシリレンジアミンとはこの明細書において、特に相応するフタロジニトリル(PDN)の水素化からの反応搬出物であって、場合によりアンモニアが完全に、もしくはほぼ、ならびに場合により水素化で使用された溶剤が完全に、もしくはほぼ分離されており、かつなお比較的沸点の高い不純物、ならびに溶剤も含む沸点の低い成分を含有する反応搬出物を意味している。
【0020】
蒸留によるXDAの精製の際には特に、生成物の分解によってアンモニアおよび/または低沸点成分、たとえばメチルベンジルアミンが遊離し、これが生成物を汚染するという問題が存在する。
【0021】
意外にも、純粋なキシリレンジアミンは、キシリレンジアミンが、側方排出塔により、側方排出流として得られ、かつ蒸留が工業的に簡単に実現される真空で運転する場合に、粗キシリレンジアミンを蒸留することによって得られることを実験により示すことができた。
【0022】
従って、塔中での粗キシリレンジアミンの連続的な蒸留により純粋なキシリレンジアミン(XDA)を製造する方法が判明し、この方法は、側方排出部を有する蒸留塔を使用し、かつXDAを側方排出部で排出し、かつ蒸留塔の塔底生成物を付加的な蒸発濃縮工程でさらに蒸発濃縮し、かつこの蒸発濃縮工程の凝縮液を、側方排出部を有する蒸留塔へ返送することを特徴とする。
【0023】
本発明による方法では、付加的な方法工程、たとえば抽出工程は必ずしも必要ではない。
【0024】
有利な実施態様では、助剤(たとえばKOH、NaOH、NaもしくはKのフタルイミドまたはその他のアルカリ性成分(塩基)、それぞれ純粋な形または溶液として、ならびに還元性成分、たとえばNaBH4またはLiAlH4、ならびに塩基と還元性成分との組み合わせ、ならびにH3PO3)の添加は、完全に水素化されていないニトリルのけん化に使用されない場合には、その添加を断念することができる。ニトリル(たとえばフタロジニトリルもしくはシアノベンジルアミン)をけん化するための助剤の添加は、先行する水素化工程において不完全な反応の場合には有利でありうる。本発明で記載されるアミンの分解もしくは分解の十分な抑制もしくは粗XDAの良好な収率での取得は、粗生成物が十分にニトリル不含である場合には、上記の従来技術に記載した助剤の添加に依存する。
【0025】
たとえばメタ−キシリレンジアミンの蒸留の際には、アンモニアおよびメタ−メチルベンジルアミンが遊離し、これは、メタ−キシリレンジアミンよりも低い沸点を有する。蒸留の際に、常に新たな低沸点成分が形成され、該成分は蒸留されたキシリレンジアミン中の不純物として現れる。蒸留における塔底温度を、たとえば185℃以下に、特に180℃以下に、たとえば160〜185℃の範囲の温度に、とりわけ170〜180℃の範囲の温度に限定することにより、生成物の分解を認容可能な程度に制限することができる。
【0026】
このことは、十分に低い真空を適用することにより、および/または塔底の蒸発速度を限定するか、かつ/または塔底での滞留時間を最小化することにより達成される。全ての代替手段はまず依然として不満足である。というのも、高価な真空の発生および拡大された蒸留塔が装置的に高価であるか、または高い生成物損失および相応して低減された有価生成物収率につながるからである。塔底での滞留時間は有利には、構成上の措置によっても、特に(その上に存在する塔本体に対して)塔底範囲での塔直径の低減、たとえば25〜60%の低減によっても短縮することができる。この場合、直径は塔底状態およびその可能な変動範囲が、塔底搬出物を制御するため、および場合により使用される塔底循環ポンプを運転するための低減された塔底体積で十分に量定されるように選択する。この寸法決定は、相応する当業者により実施することができる。
【0027】
従来の蒸留塔に対する側方排出塔の利点は、このことによって塔底で形成される低沸点成分の大部分が、塔頂を介して搬出され、従ってより高いXDAの純度を達成することができることである。従って、「通常の」塔を用いる場合よりも高い塔底温度が可能となり、その際、生成物は形成された低沸点成分と一緒に塔頂で生じる。
【0028】
側方排出部を有する蒸留塔は、真空で運転される。塔底における圧力(=塔頂圧力プラス塔による圧力損失)は、有利には200ミリバール以下、特に100ミリバール以下、特に50ミリバール以下であり、たとえば30〜50ミリバールの範囲である。
【0029】
有利には運転中にわずかな圧力損失を有するのみの塔内部構造物を使用して、一方では真空を発生するためのコストを小さく維持し、かつ他方では塔底生成物にできる限り熱負荷をかけないようにする。塔底生成物の熱負荷に関して決定的であるのは、塔底温度であり、これは塔底濃度と塔底中の圧力から生じる。
【0030】
本発明による方法で使用される粗XDAは、たとえば85〜99.7質量%の範囲、特に90〜99.5質量%の範囲の純度を有する。低沸点成分、たとえばベンジルアミンおよび相応するメチル−ベンジルアミン(つまり2−、3−もしくは4−メチル−ベンジルアミン)の割合は、有利には0.01〜2質量%の範囲であり(そのつどアンモニアおよび溶剤を含まない原料に対する)、高沸点成分、たとえばアミド、アミジン、ビス−XDAおよび高級オリゴマーの割合は、たとえば0.3〜13質量%の範囲、特に0.5〜9質量%の範囲である。
【0031】
高沸点成分とは、同一の条件下で、そのつどのキシリレンジアミンよりも高い沸点を有する成分であると理解すべきである。
【0032】
高沸点成分とは、たとえばアミド、アミジン、ビス−XDA(XDA−二量体)、およびその他のオリゴマー、たとえば以下の式のものである:
アミド、たとえば
【化1】

R=−CH2NH2、−CN、−CONH2、−CH2NHCH2−アリール、−C(NH)NCH2−アリール、−CHNCH2−アリール、
アミジン、たとえば
【化2】

R、R′(相互に無関係に)=−CH2NH2、−CN、−CONH2、−CH2NHCH2−アリール、−C(NH)NCH2−アリール、−CHNCH2−アリール、
ビス−XDA、たとえばビス−MXDA
【化3】

その他のオリゴマー、たとえば
【化4】

R、R′(相互に無関係に)=−CH2NH2、−CN、−CONH2、−CH2NHCH2−アリール、−C(NH)NCH2−アリール、−CHNCH2−アリール。
【0033】
次いで塔底搬出物は別の蒸発工程に供給され、その際、有利には同一の、もしくは側方供給部を有する蒸留塔の塔頂よりも低い真空(あるいはまた短縮された滞留時間、場合により改善された真空および短縮された滞留時間)を適用し、かつそのなかで供給流をできる限り蒸発する。
【0034】
特に、側方排出部を有する蒸留塔および後方に接続された蒸発工程のための真空を、同一の真空装置で発生させることも可能であり、この場合、後方に接続された蒸発工程は、蒸留塔の塔底で生じるよりも低い圧力を生じる。というのも、側方排出部を有する塔中で、圧力損失は塔内部構造物に基づいてより大きいからである。上記の点を顧慮して、生成物の分解は限定されている。後の工程で得られるXDAを、改めて側方排出塔により処理するので、後方接続された蒸発工程における分解は、XDAの品質に関して決定的ではなく、従ってここでは物質損失を、分解と、生じる残留物量とにより相互に考慮することができる。
【0035】
後方接続された蒸発工程の蒸気は有利には凝縮され、かつ次いで液状の形で側方排出部を有する蒸留塔にふたたび供給される。蒸気の圧縮および蒸留塔への蒸気状の供給流は、別の態様では同様に可能である。いずれの場合でも、蒸気状の側方排出部を有する塔では、供給は側方排出部の上方で行う。
【0036】
液状の側方排出部を有する塔の場合、粗XDAの供給ならびに蒸発工程からの返送されたXDAの供給は、そのつど側方排出部の下方で行う。
【0037】
純粋なキシリレンジアミンのための側方排出部は有利には蒸気状の側方排出部として側方排出塔のストリッピング部に配置されている。
【0038】
有利な実施態様では、側方排出部を有する蒸留塔として、有利には側方排出部を有する分離壁蒸留塔を使用することができる。
【0039】
この場合、生成物であるキシリレンジアミンの不純物を塔底での分解によってなおさらに低減することができる。
【0040】
この場合、有利には液状の側方排出部は、分離壁の範囲内で使用される。後方に接続された蒸発工程の凝縮された、もしくは圧縮された蒸気の供給は、有利には分離壁の範囲の供給側で(存在する供給側に対する側方供給部側で)行われる。
【0041】
分離壁塔の場合、後方接続された蒸発工程の凝縮または圧縮された蒸気の添加は、同一の高さに、または側方排出部の下側に配置されていてもよく、しかしいずれの場合でも有利には分離壁の範囲内である。
【0042】
有利には本発明による方法は、イソフタロジニトリル(IPDN)の水素化により得られ、再び特に先行する工程でアンモ酸化によりメタ−キシレンから合成された粗メタ−キシリレンジアミンから出発して、純粋なメタ−キシリレンジアミン(MXDA)の製造のために適用される。
【0043】
本発明による方法により、有利には純度99.9質量%以上、特に99.94質量%以上を有する純粋なXDAが得られる。
【0044】
本発明による方法により製造される純粋なXDAは有利には、500ppm以下、特に300ppm以下、特に有利には250ppm以下、とりわけ150ppm以下、たとえば5〜140ppmの範囲の相応するメチル−ベンジルアミン(つまり2−、3−もしくは4−メチル−ベンジルアミン)の残留含有率を有している。
【0045】
本発明による方法により、そのつど使用される粗XDA中の純粋なXDAの量に対して、有利には95%以上、特に97%以上の蒸留収率で純粋なXDAが得られる。
【0046】
本方法を以下では有利な実施態様で図1を用いて詳細に説明する。
【0047】
NH3および場合により溶剤がほぼ除去されている粗XDAを、真空で運転される側方排出塔の中央の領域に供給し(流[1])、かつここで低沸点成分(流[4])、純粋なXDA(流[6])、および高沸点成分(流[7])に分離する。塔のストリッピング部には、蒸気状の側方供給部が存在し、これにより純粋なXDAが蒸気の形で留去され(流[6])、かつ引き続き凝縮される。塔底の加熱は有利には蒸気により加熱される熱伝達媒体(W100)により行われる。塔底温度は、キシリレンジアミンからのアンモニアおよびメチルベンジルアミンの形成を限定するために、有利には180℃を超えない。塔頂生成物は、熱伝達媒体W102中で凝縮され、かつ部分的に返送流として塔に返送される(流[3])。これは、低沸点成分、特にメチルベンジルアミンを含有しているが、しかしまたベンジルアミン、場合により粗XDA中に含有されていた溶剤またはその残分も含有している。アンモニアは、大部分、不活性ガスと共に真空装置によって留去される(流[5])。塔底生成物(流[7])は、別の蒸発工程に供給される(W150)。これはたとえば薄層蒸発器または流下薄膜式蒸発器であるか、またはその他の、たとえば適切な熱伝達媒体であってもよい。W150における温度は、W100における温度よりも高くてよい。しかし有利には温度はW150における温度とほぼ同じであるか、あるいはより小さい圧力で後蒸発してもよい。比較的わずかな滞留時間(VWZ)に基づいて、濃縮の際に、分解はできる限り低く維持するべきである。蒸発器の塔頂生成物(流[8])を、W151中で凝縮する。不活性成分およびNH3を、真空装置により留去する。濃縮された塔底生成物(流[10])は、わずかなキシリレンジアミンを含有しているのみであり、かつ方法から排出される。凝縮液(流[9])は、塔K100の側方排出部の上方に返送される。該供給流は粗XDAの供給部よりも上方でも、下方でも、または同じ高さであってもよい。有利には同じ高さである。粗XDAがさらに大量の溶剤を含有している場合には、流[9]の供給部を、主供給部の下方に配置することが有意義でありうるが、しかしいずれの場合でも側方供給部の上方である。
【0048】
粗XDAが、少量の低沸点成分を含有しているのみの場合、XDAの精留のための精留部に液状の側方排出部を有する塔もまた使用することができる。この場合、方法は蒸気状の側方排出部を有する上記の方法と同様であるが、しかし粗XDAのための供給部ならびに返送される付加的な蒸発工程の凝縮液のための供給流が、液状の側方排出部の下方に存在する。
【0049】
側方排出塔の代わりに、分離壁塔を使用する場合、方法は有利な変法ではわずかに変更されるのみである。図2を参照のこと。分離壁(分離板)は、塔を供給部(粗XDA供給流が塔に供給される側)および取り出し部(純粋なXDA側方排出流が、塔から排出される側)とに分割している。
【0050】
粗XDAの供給部は、分離壁の範囲内で塔の中央の領域に存在している。純粋なXDAの側方排出流は蒸気状であってもよいが、しかし有利には液状の側方排出流を使用する(流[6])。側方排出部は、分離壁の範囲内の取り出し側に(図2では、塔部分は分離壁の右側)に存在している。後蒸発からの返送流(流[9])は、分離壁の範囲内の供給側(図2では塔部分は分離壁の左側)に、有利には粗XDA流の供給部の下方または同じ高さに返送される。その他は図1と同様に側方排出塔を使用する場合と同様に、同一の周辺条件および装置接続が該当する。
【0051】
全てのppmの記載はこの明細書中では質量に対するものである。
【0052】
実施例
例1
粗MXDAを、直列に接続された2つの塔中で留去する。第一の塔では、塔頂を介して低沸点成分を分離する(そのつど比較的少量の水、メチルベンジルアミンおよびアンモニア)。塔底を介して粗MXDAを排出し、かつ第二の塔に供給する。第二の塔中で、MXDAを蒸気状の側方排出部を介してストリッピング部で排出し、他方、塔頂を介して新たに形成された低沸点成分(メチルベンジルアミンおよびアンモニア)を分離した。第二の塔中で塔底温度は180℃である。留去されたMXDAの純度は、99.95%(GC面積%)に達した。副成分において、痕跡量の水およびメチル化MXDA以外に、特に80ppmのメタ−メチルベンジルアミン(全てのキャンペーンによる平均値)が存在していた。これに対して第一の塔の塔底では、10ppmよりわずかなメタ−メチルベンジルアミンが検出されたに過ぎなかった、つまりメタ−メチルベンジルアミンは、第二の塔中で新たに形成されていた。第二の塔の塔底では、平均して約50質量%のMXDAが得られた。蒸留収率は87%であった。
【0053】
この例は、側方排出塔では、容易に特定の高い純度および特定の高い収率が同時に実現されることを示している。
【0054】
例2
粗MXDAを不連続式の蒸留装置中で蒸留した。40ミリバールの塔頂圧力、179〜200℃の塔底温度で得られた最後のチャージは、メタ−メチルベンジルアミン0.94質量%を含有していた。残留する塔底生成物はなお59.4質量%のMXDAを含有していた。塔底生成物は、薄層蒸発器中でさらに濃縮され、かつMXDAを割合が10質量%の場合でも、なお良好に流動性であった。塔頂生成物は高い塔底温度に基づいて、約1質量%のメタ−メチルベンジルアミンを含有していた。改めて蒸留した後で、ここから規定どおりの(MXDA>99.9質量%ならびに〜100ppmのメタ−メチルベンジルアミン)MXDAが得られた。
【0055】
この例は、温度が高い場合に生成物の分解がどれほど増大するかを示している。さらにこの例は、塔底生成物を、極めて顕著に濃縮することができ、かつその場合にも依然として技術的に良好に取り扱い可能であることを示している。この例はさらに、高いメチルベンジルアミン含有率を有する塔底クエンチングの塔頂生成物を、改めて蒸留することができ、かつここからMXDAが高い純度で得られることを示している。従って、この例は塔底の本発明による濃縮、(十分に純粋ではない)蒸留液の収容および蒸留への返送を示しており、これにより蒸留収率が向上される。濃縮された塔底生成物によるMXDAの損失ならびに分解による損失は極わずかである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による1実施態様を示す図
【図2】本発明による1実施態様を示す図
【符号の説明】
【0057】
1 粗XDA、 3 返送流、 4 低沸点成分、 5 、 6 純粋なXDA、 7 高沸点成分、 8 蒸発器の塔頂生成物、 9 凝縮液、 10 濃縮された塔底生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗キシリレンジアミンを塔中で連続的に蒸留することにより純粋なキシリレンジアミン(XDA)を製造する方法において、側方排出部を有する蒸留塔を使用し、かつXDAを側方排出部で排出し、かつ蒸留塔の塔底生成物を付加的な蒸発濃縮工程でさらに蒸発濃縮し、かつこの蒸発濃縮工程の凝縮液を、側方排出部を有する蒸留塔へ返送することを特徴とする、純粋なキシリレンジアミンの製造方法。
【請求項2】
側方排出部を有する蒸留塔中の塔底温度が185℃以下であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
XDAを、蒸気状の側方排出部を介して蒸留塔のストリッピング部で排出することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
付加的な蒸発濃縮工程の凝縮液を、蒸留塔の側方排出部の上方に返送することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
側方排出部を有する蒸留塔として、側方排出部を有する分離壁蒸留塔を使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
XDAを、液状の側方排出流により、分離壁の範囲で排出することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
付加的な蒸発濃縮工程の凝縮液を、蒸留塔の供給側の分離壁の範囲に返送することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
使用される粗XDAが、粗メタキシリレンジアミン(MXDA)であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
使用される粗XDAが、85〜99.7質量%の範囲の純度を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
側方排出部を有する蒸留塔を、真空下に、200ミリバール以下の塔底圧力で運転することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
側方排出部を有する蒸留塔を、真空下に、100ミリバール以下の塔底圧力で運転することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
側方排出部を有する蒸留塔を、真空下に、50ミリバール以下の塔底圧力で運転することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
付加的な蒸発濃縮工程を、側方排出部を有する蒸留塔の塔頂と同じ圧力で、または蒸留塔の塔頂よりも低い圧力で運転することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
99.9質量%以上の純度を有するXDAを製造するための、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
500質量ppm以下の2−メチル−ベンジルアミンの残留含有率を有するオルト−XDAを製造するための、請求項1から7まで、または9から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
500質量ppm以下の3−メチル−ベンジルアミンの残留含有率を有するメタ−XDAを製造するための、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
500質量ppm以下の4−メチル−ベンジルアミンの残留含有率を有するパラ−XDAを製造するための、請求項1から7まで、または9から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
側方排出部を有する蒸留塔の直径が、塔底範囲で、その上に存在する塔本体に対して低減している、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−525303(P2009−525303A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552782(P2008−552782)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050679
【国際公開番号】WO2007/088131
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】