説明

紗張り機

【課題】
簡便な構造で安価に製作でき、操作が簡単で作業性が良く、確実且つ安定したクランプ力と均一な張力を容易に得られる紗張り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
直交する2軸方向に配置された2本の軸と、前記軸上に設けられた型枠を載せる型枠載置台と、前記軸上に設けられた紗の端縁を支持するクランプバーと、からなる紗張り機において、前記クランプバーは、断面が四角形状で上面には長手方向に切欠したスリットが設けられ、断面が逆T字形の固定用バーを嵌合させることによって紗の端縁を支持して、クランプバーを前記軸上の外方向へ移動させて紗を張る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便な構造で、確実且つ安定したクランプ力と均一な張力が容易に得られる紗張り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン印刷または捺染に使用する紗を型枠に張る作業は、ナイロン、ポリエステルなどの高分子からなる繊維を製織して得られるスクリーンメッシュを、専用の紗張り装置などを用いて比較的大きな張力で四方に引っ張り、引っ張った状態でこのスクリーンメッシュを型枠に接着固定する方法が採られていた。
【0003】
スクリーン印刷が精度良く行なわれるためには、スクリーンの網目を通じてインクが均一に分散されることが必要であり、そのためにはスクリーンの各部に一様な張力がかかって、網目が一様で完全であることが要求される。
したがって、紗張り装置によるスクリーンメッシュの引っ張りに際しては、確実で安定したクランプ力と均一な引っ張り力が要求される。
【0004】
例えば、特開平9―109362号公報(特許文献1)に、紗張り方法と紗張り装置が開示されている。
同公報に開示されている装置は、四角形をなす紗を、対角線方向の外方向に向かって延伸させ、次いで各辺に直交する外方向に延伸させるようにしたものである。
この各辺に直交する外方向に紗を延伸させるには、多数のクランパによって紗の四辺をクランプすることによって行い、紗の四辺に直角の方向において、各クランパが外方向に移動することによって、紗全体が拡張されて紗張り作業を行うことができるというものである。
【0005】
また、特開2005―103967号公報(特許文献2)には、紗張り装置が開示されている。
同公報に開示されている装置は、連続する多数の一巻き部分からなる4本のコイルばねを四角形状に配置され、この各コイルばねに多数の拘束手段を配列し、各拘束手段によって紗の四辺を拘束することによって紗を固定し、各コイルばねの両端に連結された伸張手段によって各コイルばねが伸張する構成となっている。
このコイルばねおよび伸張手段が、紗の四辺に直角する方向において紗の外方向に移動することで、各拘束手段によって紗全体を拡張するというものである。
【0006】
【特許文献1】特開平9―109362号
【特許文献2】特開2005―103967号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献に開示されている装置は、以下の問題がある。
【0008】
まず、特許文献1に開示されている紗張り装置は、荷重検出器を用いて引張力を測定し、装置を駆動制御して紗全体を均一に拡張させることを図っているため、装置の構造が複雑で、装置の製造コストも非常に高い。
【0009】
すなわち、特許文献1に開示されている紗張り装置は、紗の四辺に直角の方向に、各クランパを紗の外方向に移動させるものであるが、これだけでは紗全体を均一に拡張させることはできず、紗全体を均一に拡張させるには、各クランパが互いに離れる方向に移動し、そのピッチが漸次増大するようにする必要がある。
【0010】
この均一に拡張されたかどうかを確認する手段として荷重検出器を用いて引張力を測定し、各クランパを制御して紗全体を均一に拡張している。
複数のクランパを駆動制御する装置であるため、構造が非常に複雑で高額化してしまう。
【0011】
また、特許文献2に開示されている紗張り装置は、大きな張力で紗を引っ張ると紗が破れてしまい、紗全体が均一に拡張されないおそれがある。
【0012】
すなわち、特許文献2に開示されている紗張り装置は、紗の目を針に通し、紗を針に係合させて紗を拘束するものであるが、紗は、ナイロン、ポリエステルなどの高分子からなる繊維を製織して得られるスクリーンメッシュであり、この網目に針を通して係合させ、この係合させた針によって紗を四方に拡張するものであるから、大きな張力によって針に係合させた網目部分が破れ、張力が均一にならないおそれがある。
【0013】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な構造で安価に製作でき、操作が簡単で作業性が良く、確実且つ安定したクランプ力と均一な張力を容易に得られる紗張り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明においては、次の技術的手段を講じている。
【0015】
本発明の請求項1に係る紗張り機は、
直交する2軸方向に配置された2本の軸と、
前記軸上に設けられた型枠を載せる型枠載置台と、
前記軸上に設けられた紗の端縁を支持するクランプバーと、
からなる紗張り機において、
前記クランプバーは、断面が四角形状で上面には長手方向に切欠したスリットが設けられ、
断面が逆T字形の固定用バーを嵌合させることによって紗の端縁を支持して、
クランプバーを前記軸上の外方向へ移動させて紗を張る
ことを特徴としている。
【0016】
型枠設置台は、軸上に設けられ、軸方向に移動可能な状態で設ける。
型枠設置台は、紗を張る型枠を載せる台として利用するものであり、型枠の四辺を支持するように軸上に配置する。
型枠設置台を配置する位置は、型枠の大きさに合わせて軸上を移動させて調節する。
これにより、異なる大きさの型枠に対しても対応できる。
【0017】
型枠設置台は、軸上の任意の場所に配置できれば良いので、軸上に固定する必要はなく、軸から取り外し可能に設けても良い。
型枠の大きさが予め決まっている場合には、所定の位置に段階的に移動できる調節手段を設けても良い。
また、型枠が外れないように、型枠設置台に型枠を固定する手段を設けても良い。
【0018】
クランプバーは、軸上に設けられ、軸方向に移動可能な状態で設ける。
クランプバーは、固定用バーを嵌合させることで紗の端縁を支持し、軸の外方へ移動させることで紗に引っ張り力を与えるものであるので、移動可能な状態で設けるのは各軸に対して1箇所のみであっても良いし、全てのクランプバーを移動可能な状態で設けても良い。
【0019】
クランプバーは、断面が四角形状で、上面に長手方向に切欠したスリットを設けた形状とする。
このスリットに、固定用バーを嵌合させることによって紗の端縁を支持する。
クランプバーと固定用バーとで紗の端縁を支持した状態で、クランプバーを軸の外方向へ移動させることによって紗を引っ張り、紗張り作業を行う。
【0020】
クランプバーの中空部分は、固定用バーを嵌めることができる程度の空間を設ける。
【0021】
固定用バーは、断面が逆T字形で、長手方向の長さは、クランプバーと略同じとする。
固定用バーの底部の幅は、クランプバーに設けたスリットの幅よりも長いものとする。
これにより、クランプバーのスリット部分から差し込んだ固定用バーは、大きな引張力がかかってもクランプバーから抜けることなくクランプバーと嵌合する。
【0022】
このクランプバーと固定用バーの構造は、張力が加わることで、よりクランプ力が増加する構造となっている。
すなわち、紗は、引っ張り力が働くことで、固定用バーを下方から持ち上げ、固定用バーが持ち上がることで、クランプバーに嵌合し、よりクランプ力が増す構造となっている。
【0023】
また、固定用バーの底部の幅は、軸の中心側部分と軸の外側部分とで、長さが異なるものとする。
例えば、大きな引張力がかかる軸の中心側部分の幅は、軸の外側部分の幅に比して長くし、固定用バーを軸の外方向へ寄せても、固定用バーをクランプバーから垂直方向に引き抜くことができない長さとする。
【0024】
これに対し、軸の外側部分の幅は、固定用バーを軸の中心方向へ寄せた場合に、固定用バーがクランプバーのスリット部分から容易に引き抜くことができる長さとする。
これにより、固定用バーをクランプバーから引き抜くには、固定用バーを軸の中心方向へ寄せてから行うことが明確になり、操作性が向上すると共に安全性の向上を図ることができる。
【0025】
紗張り作業における引張力は、印刷精度とも関係する非常に重要なものであり、大きく且つ均一な張力によって行われることが求められる。
そのため、簡便な操作性と高度な安全性が重要であるところ、従来技術においては、凹状の溝に固定用のバーを嵌合させただけのものもある。
【0026】
しかし、型枠の大小に拘わらず、大きな張力がかかる紗張り作業の中で、固定用のバーが外れた場合、底部が怪我を負うなどの大きな事故につながりかねない。
それゆえ、クランプバーと固定用バーの嵌合には、簡便な操作性と高度な安全性が望まれる。
本発明は、簡便な構造によって、この課題をも解決するものである。
【0027】
クランプバーと固定用バーには、互いに接触する部分に、滑り止め処理を施してもよい。
滑り止め処理は、紗を張る際に大きい引張力がかかり、クランプバーに固定用バーを嵌合させて紗を支持しても紗が滑ってしまう可能性があるため、これを防止することを目的としたものである。
【0028】
滑り止め処理は、クランプバーと固定用バーとが互いに接触する面を、梨地処理したり、溝や小突起、凹凸状、楔状に形成したり、ゴムなどの弾性部材を貼設しても良い。
また、固定用バー自体をゴムなどの弾性材などによって成形しても良い。
【0029】
また、クランプバーは、軸から取り外し可能に設けても良い。
クランプバーの長手方向の長さは、型枠の大きさに対応したものであることが望ましいところ、小さい型枠に対して大きいクランプバーを使って紗張りを行うと、隣接するクランプバー同士で接触してしまう。
【0030】
そこで、型枠の大きさに合わせて、クランプバーを取り替えることができるように、クランプバーは軸から取り外し可能に設けるのが良い。
これにより、異なる大きさの型枠に対しても対応できる。
【0031】
本発明の請求項2に係る紗張り機は、
前記のクランプバーは、
前記軸上に、可動的に設けられている
ことを特徴としている。
【0032】
可動的とは、軸に螺子等で螺合したクランプバーが、螺合した箇所を中心として、円周方向にクランプバーが可動できるように設けることを意味する。
【0033】
紗を張る作業の中で、型枠に紗を被せて紗の端縁をクランプバーと固定用バーとで支持する作業があるが、型枠の対向する2辺で紗を均一に支持するのは難しい。
すなわち、型枠の対向する2辺を上辺、下辺として比較した場合、上辺の右端の紗を支持した箇所から下辺の右端の紗を支持した箇所までの長さと、上辺の左端の紗を支持した箇所から下辺の左端の紗を支持した箇所までの長さとを、全く同一にするのは難しい。
【0034】
この長さが異なったまま、紗張りを行っても、均一な張力にならなくなってしまう。
つまり、クランプバーを、型枠の辺に対して水平にした状態で軸上に完全に固定してしまった場合は、上述のように型枠の対向する2辺で紗の長さが異なってしまった場合、均一な張力で紗を引っ張ることができなくなってしまう。
本発明は、この課題を解決するものである。
【0035】
クランプバーを軸上に可動的に設けることで、紗を異なる長さで支持してしまっても、異なる張力に対応してクランプバーが自動的に傾き、張力を均一にして紗を張ることができる。
【0036】
張力がかかるのは、クランプバーを移動させる方向であるので、少なくとも軸と水平の方向に対して可動的にクランプバーを設けることが必要である。
クランプバーは、全てを可動的に設けても良いし、各軸に対して1つのクランプバーのみであっても良い。
【0037】
本発明の請求項3に係る紗張り機は、
前記クランプバーは、
クランプバーの底面と固定用バーの底部との間に所定の間隙を設け、
前記間隙に補助部材を設けた
ことを特徴としている。
【0038】
補助部材とは、固定用バーの底部の下に設けられるもので、紗を確実にクランプさせ、固定用バーのクランプバーへの差し込み、固定用バーのクランプバーからの取り外しを容易にするためのものである。
【0039】
補助部材を設けない場合、固定用バーがクランプバーに嵌合し、確実にクランプするまでの間に、紗が滑ってしまうことが考えられる。
また、クランプバーへ固定用バーを差し込んだ際に、固定用バーはクランプバーの底面に落下してしまい、クランプバーや固定用バーだけでなく紗も損傷させてしまうことも考えられる。
【0040】
また、クランプバーは、固定用バーを差し込むのに必要な空間を設けるために中空状になっているため、深く入り込んだ固定用バーをクランプバーからスムーズに取り出すことができない。
本発明は、これらの課題を解決するものである。
【0041】
すなわち、補助部材が固定用バーを下方から押し上げる作用をすることで、固定用バーをクランプバーに押し付けて紗を確実にクランプさせるので、紗張り作業において、紗が滑ることなく、確実且つ安全なクランプがなされる。
【0042】
また、クランプバーの底面と固定用バーの底部との間に所定の間隙を設け、この間隙に補助部材を設けることで、クランプバーへ固定用バーを差し込んだ際に、クランプバーや固定用バー、紗の損傷を防ぐことができる。
【0043】
また、補助部材を設けることで、固定用バーは、クランプバーの底面まで入り込むことがなく、クランプバーからスムーズに取り出すことができ、操作性の向上を図ることができる。
【0044】
このような目的から、補助部材は、クッション性のある素材であることが望ましい。
例えば、スポンジなどの多孔性素材が安価で適している。
【0045】
特に、紗を型枠に貼りつける際に使う接着剤は、速乾性の液体ボンドが適しているが、この液体ボンドが不意に固定用バーに付着してしまった場合でも、スポンジなどの多孔性素材であれば、孔の内部に浸透するので、固定用バーと紗が固着するのを防ぐことができる。
【0046】
また、補助部材は、下面に硬質部材を接合しても良い。
補助部材は、上述の通り、液体ボンドが付着することもあるので、孔の内部に浸透した液体ボンドが下面に溜まり、クランプバーの底面と固着してしまう。
この場合に、補助部材の下面に硬質部材を接合することで、クランプバーの底面との固着を防ぐことができる。
【0047】
また、補助部材を交換する際には、クランプバーの中から引き出す必要があるところ、補助部材の下面に硬質部材を予め接合しておけば、硬質部材をスライドさせてクランプバーから引き出すことで、簡単に補助部材も引き出すことができ、補助部材の交換が容易になる。
【0048】
硬質部材には、補助部材よりも硬い材質のものであればいずれでも良く、プラスチック、木、鉄、アルミニウムなどいずれでも良い。
【0049】
本発明の請求項4に係る紗張り機は、
前記クランプバーは、
前記固定用バーを載せる受け部が設けられている
ことを特徴とする。
【0050】
受け部は、クランプバーの一部分であって、固定用バーを載せることができるようにしたものである。
固定用バーは、クランプバーと常に1組がセットになって使用するものであるため、操作ごとに固定用バーが紛失してしまっては、紗張り作業に支障が生じる。
そこで、操作中、操作後においても、クランプバーと固定用バーとが常に同じ箇所にあるように、クランプバーに受け部を設けたものである。
【0051】
例えば、クランプバーの軸の外方部分を凹状の溝で成形し、その溝に固定用バーを載せることができるようにする。
紗張り作業を終えて固定用バーをクランプバーのスリット部分から引き出した後は、この凹状の溝に固定用バーを載せることができるので、操作性の向上を図ることができる。
【0052】
本発明の請求項5に係る紗張り機は、
前記固定用バーは、
操作者が操作しやすいように把持部が設けられている
ことを特徴とする。
【0053】
把持部は、固定用バーの頭部に設けるもので、操作者が固定用バーを把持しやすいようにしたものである。
固定用バーの頭部は、クランプバーと固定用バーとが嵌合するために採るべき形状が決まっていないため、操作者が把持しやすいように、種々の形状にすることができる。
【0054】
例えば、固定用バーの頭部の操作者が把持する部分を、ゴム等の部材で覆ったり、軸の外方に傾けた形状にしたり、軸の外方に向かって伸びた略L字の形状にするなど、種々の形状にすることができる。
これにより、固定用バーの差し込み、抜き出しを行いやすくなり、操作性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明では以下の効果を奏する。
【0056】
1)簡便な構造で安価に製作でき、操作が簡単で作業性が良い。
【0057】
2)クランプバーと固定用バーとを嵌合させる方法によってクランプさせることによって、紗を張るにつれて、より大きい張力を得ることができ、また、クランプバーと固定用バーを本発明に係る形状を採用したことにより、確実且つ安定したクランプ力を得ることができる。
【0058】
3)クランプバーが軸上に可動的に設けられていることにより、紗を型枠に被せてクランプバーと固定用バーとで支持した時に、紗にムラが生じていても、通常の作業と同様にして、均一な張力を確実且つ容易に得られる。
【0059】
4)紗張り作業に、熟練の技術や勘を必要とせず、誰でも確実且つ安定したクランプ力と均一な張力で紗を張ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0061】
図1は、本発明に係る紗張り機の平面図である。
【0062】
直交する2本の軸1上に、型枠を載せる型枠載置台2と、紗の端縁を支持するクランプバー3とを設けてある。
クランプバー3には、紗を支持するために固定用バー4を嵌合させる。
【0063】
型枠設置台2、クランプバー3、固定用バー4は、1本の軸上に2箇所ずつ、それぞれ計4つ設置してある。
型枠設置台2は、型枠のサイズに合わせられるように、軸1上を移動可能に設けてある。
型枠設置台2は、軸1に固定する必要はないので、本実施例では、単に軸1に載せるだけにしてあるが、移動手段を設けて軸1に固定しても良い。
【0064】
型枠は、型枠の大きさに合わせて型枠載置台2を軸1上で移動させて位置調節した後、型枠設置台2の上に載せる。
型枠設置台2は、型枠に紗を張るために型枠をクランプバー3よりも高い位置で固定するのに必要とするものであるので、型枠を安定して載せることができればいずれの材質、大きさでも良い。
本実施例では、プラスチックを使用したが、木、鉄、アルミニウムなどいずれでも良い。
【0065】
クランプバー3は、ボールネジ5によって軸1上をスライド可能に設けてある。
クランプバー3をスライド可能に設けるのは、クランプバー3を軸の外方へスライドさせて、紗に引っ張り力を与えるためであるので、全てのクランプバーをスライド可能に設けてもよいし、各軸に対して1つのみをスライド可能に設けても良い。
【0066】
軸1の端部に設けた回転棒6が回転し、ボールネジ5の回転動作によって、クランプバー3が軸1上をスライドする。
クランプバー3が軸1の外方へスライドして移動することにより、紗を大きな張力で引っ張り、紗張り作業を行うことができる。
【0067】
以上の操作で、簡単に紗を張ることができるので、荷重検出器や制御回路などは一切不要で、安価で簡便な構造の紗張り機を提供できる。
クランプバー3は、軸1上をスライド可能に設けられればボールネジ5に限らず台形ネジなどのネジタイプに限定されず、またその他いずれの構造によっても良い。
【0068】
本実施例では、中心をボールネジ5と連動させた棒状の回転棒6を用いたが、円形のハンドル形状のものを用いても良い。
また、本実施例では、操作者の負担軽減と作業効率の向上のために、回転補助具7として、操作者が回転棒を回す際に把持する部材を設けた。
【0069】
また、型枠の大きさに合わせて、大きさの異なるクランプバー3に取り替えることができるように、クランプバー3は軸1から取り外し可能に設けても良い。
これにより、異なる大きさの型枠に対しても対応できる。
【0070】
図2は、本発明に係る紗張り機のクランプバーを可動的に設けた一実施例の平面図である。
【0071】
クランプバー3は、軸1に当接しないようにボールネジ5上をスライドするナット8に螺合し、水平方向に可動的に設けた。
クランプバー3を可動的に設ける方法は、いずれの方法によっても良いが、少なくとも水平方向に可動的に設けることが必要である。
【0072】
本実施例では、クランプバー3は、ナット8を中心として円周方向に回動させることが可能である。
クランプバー3を軸1に可動的に設けることで、紗にムラが生じた状態で支持しても、異なる張力に対応してクランプバー3が自動的に傾き、張力を均一にして紗を張ることができる。
【0073】
クランプバー3は、4つ全てを可動的に設けても良いし、図2記載の実施例のように、各軸1に対して1つずつのクランプバー3のみであっても良い。
【0074】
図3(a)乃至(c)は、本発明に係る紗張り機のクランプバーに固定用バーを嵌合させた一実施例の断面図で、(a)は紗を支持していない状態、(b)は紗を支持した状態、(c)は紗を支持してクランプバーをスライドさせ、紗を引っ張った状態である。
【0075】
クランプバー3の上面には、長手方向に切欠したスリットを設け、断面が逆T字形の固定用バー4を嵌合させることによって紗の端縁を支持する。
【0076】
図4(a)乃至(c)は、本発明に係る紗張り機のクランプバーのスリット部分の一実施例の断面図であり、(a)は通常のスリット部分の形状、(b)はスリット部分を斜めにカットした形状、(c)はスリット部分を段を設けた形状である。
【0077】
クランプバー3のスリット部分は、固定用バー4を入れやすいように、図4(b)(c)記載の実施例のような形状にしても良い。
固定用バー4の差し込み、抜き出しを行いやすくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0078】
図5(a)乃至(d)は、本発明に係る紗張り機の固定用バーの一実施例の断面図であり、(a)は通常の固定用バーの形状、(b)は固定用バーの上部に把持部を設けた形状、(c)は固定用バーの上部を斜めにした形状、(d)は固定用バーの上部を略L字状にした形状である。
【0079】
固定用バー4の形状は、操作者が把持しやすいように、図5(b)乃至(d)記載の実施例のように、種々の形状にしても良いし、把持する部分をゴム等の部材で覆って把持しやすいように把持部を設けても良い。
固定用バー4の差し込み、抜き出しの操作を行いやすくなり、操作性を高めることができる。
【0080】
また、図5(a)乃至(d)記載の実施例のように、固定用バー4の底部のうち、軸の外方側の端部を斜めにカットした形状にしても良い。
クランプバー3への差し込み、抜き出しの操作を行いやすくなり、操作性を高めることができる。
【0081】
図6(a)及び(b)は、本発明に係る紗張り機のクランプバーに固定用バーの受け部を設けた一実施例の断面図で、(a)は受け部に固定用バーを載せていない状態、(b)は受け部に固定用バーを載せた状態である。
【0082】
クランプバー3は、固定用バー4を外した後に固定用バー4を載せる受け部9を設けても良い。
本実施例では、クランプバー3の一部に固定用バー4を載せることができる大きさの凹状の溝を設けてある。
これにより、外した固定用バー4を紛失するなどの事態を回避できると共に、操作性の向上を図ることができる。
【0083】
図7は、本発明に係る紗張り機のクランプバーに補助部材を設けた一実施例の断面図である。
【0084】
クランプバー3の中空部分には、補助部材10を設けても良い。
補助部材10は、クッション性のある素材であることが望ましい。
【0085】
例えば、スポンジなどの多孔性素材が安価で適している。
本実施例では、発泡ポリウレタン素材のスポンジを使用した。
【0086】
スポンジのクッション性のため、クランプバー3や紗を損傷することなく、固定用バー4を差し込むことができる。
補助部材10が固定用バー4を下方から押し上げる作用をすることで、固定用バー4をクランプバー3に押し付けて紗を確実にクランプさせるので、紗張り作業において、紗が滑ることなく、確実且つ安全なクランプがなされる。
【0087】
また、補助部材10を設けることで、固定用バー4はクランプバー3の底面まで入り込むことがなく、またクランプバー3からスムーズに取り出すことができ、操作性の向上を図ることができる。
【0088】
また、補助部材10は、下面に硬質部材11を接合しても良い。
本実施例では、硬質部材11として、プラスチックを使用した。
【0089】
補助部材10は、接着剤で型枠に紗を貼り付ける際に、過って接着剤が付着してしまうことがあるが、この場合、接着剤が補助部材10の内部に浸透し、クランプバー3の底面とを固着させてしまう。
補助部材10の下面に硬質部材11を予め接合しておくことで、過って接着剤が付着してしまっても、補助部材10がクランプバー3の底面と固着してしまうことを防ぐことができる。
【0090】
また、補助部材10を交換する際には、クランプバー3の中から引き出す必要があるところ、補助部材10の下面に硬質部材11を予め接合しておけば、硬質部材11をスライドさせてクランプバー3から引き出すことで、簡単に補助部材10も引き出すことができ、補助部材10の交換が容易になる。
【0091】
また、クランプバー3と固定用バー4には、紗を確実且つ安全にクランプするために、滑り止め処理を施しても良い。
滑り止め処理は、クランプバー3と固定用バー4とが互いに接触する面を、梨地処理したり、溝や小突起、凹凸状、楔状に形成したり、ゴムなどの弾性部材を貼設しても良い。
また、固定用バー4自体をゴムなどの弾性材などによって成形しても良い。
【0092】
以下に、実際に型枠に紗を張る一連の作業を説明する。
【0093】
型枠の大きさに合わせて、型枠設置台2を移動し、型枠設置台2に型枠を載せる。
クランプバー3は、型枠の大きさに合わせて、適宜大きさの異なるクランプバー3に取り替える。
型枠に紗を被せ、紗の端縁をクランプバー3に被せ、クランプバー3のスリット部分に固定用バー4を嵌合させ、紗の端縁を支持する。
【0094】
軸1の端部に設けた回転棒6を回転させ、クランプバー3を軸1の外方へ移動させる。
このクランプバー3の移動に伴い、紗に引っ張り力を与え、型枠に紗を張ることができる。
【0095】
クランプバー3は、軸1のそれぞれ1箇所、計2箇所のクランプバー3を移動させるだけで、紗に引っ張り力を与え、型枠に紗を張ることができる。
クランプバー3は、軸1に可動的に設けてあるので、紗を支持した際に紗にムラが生じていても、クランプバー3を軸1の外方にスライドさせるにつれて、クランプバー3が自動的に傾き、張力を均一にして紗を張ることができる。
【0096】
型枠に紗を張った後は、接着剤によって紗を型枠に貼り付ける。
本実施例では、接着剤は、速乾性の液体ボンドを使用した。
【0097】
接着剤が乾いた後は、型枠の外側で紗を切り取り、紗を張り付けた型枠が完成する。
残った紗は、固定用バー4をクランプバー3から取り外して、紗を取り除く。
【0098】
以上のように、紗を張る作業において、熟練の技術や勘を必要とせず、誰でも確実且つ安定したクランプ力と均一な張力で紗を張ることができる。
また、荷重検出器や制御回路などは一切不要で、構造も簡便なので、安価に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係る紗張り機の一実施形態の上面図である。
【図2】本発明に係るクランプバー部分の一実施形態の断面図である。
【図3】本発明に係る紗張り機のクランプバーに固定用バーを嵌合させた一実施例の断面図である。
【図4】本発明に係る紗張り機のクランプバーのスリット部分の一実施例の断面図である。
【図5】本発明に係る紗張り機の固定用バーの一実施例の断面図である。
【図6】本発明に係る紗張り機のクランプバーに固定用バーを載せる受け部を設けた一実施例の断面図である。
【図7】本発明に係る紗張り機のクランプバーに補助部材を設けた一実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1 軸
2 型枠設置台
3 クランプバー
4 固定用バー
5 ボールネジ
6 回転棒
7 回転補助具
8 ナット
9 受け部
10 補助部材
11 硬質部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する2軸方向に配置された2本の軸と、
前記軸上に設けられた型枠を載せる型枠載置台と、
前記軸上に設けられた紗の端縁を支持するクランプバーと、
からなる紗張り機において、
前記クランプバーは、断面が四角形状で上面には長手方向に切欠したスリットが設けられ、
断面が逆T字形の固定用バーを嵌合させることによって紗の端縁を支持して、
クランプバーを前記軸上の外方向へ移動させて紗を張る
ことを特徴とする紗張り機。
【請求項2】
前記のクランプバーは、
前記軸上に、可動的に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の紗張り機。
【請求項3】
前記クランプバーは、
クランプバーの底面と固定用バーの底部との間に所定の間隙を設け、
前記間隙に補助部材を設けた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紗張り機。
【請求項4】
前記クランプバーは、
前記固定用バーを載せる受け部が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の紗張り機。
【請求項5】
前記固定用バーは、
操作者が操作しやすいように把持部を設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の紗張り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−302497(P2008−302497A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148696(P2007−148696)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(503271132)株式会社コスミック (1)
【Fターム(参考)】