説明

紙の製造方法

【課題】本発明は、紙の品質を損なうことがなく、しかも、設備的にも従来の装置を殆ど変更することなくソフトロールのクラックの発生を防止することが可能な紙の製造方法を提供する。
【解決手段】抄紙機で抄造した紙をカレンダーにより表面処理する紙の製造するとき、抄紙機とオンラインにソフトカレンダーを設置し、ソフトカレンダーに供給する紙の幅を該ソフトカレンダーのソフトロールの有効面長よりも広くする。望ましくは、ソフトカレンダーのロールの有効面長よりも片側あたり5〜30mm広くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機で抄造した紙をソフトカレンダーを用い表面処理することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に紙は、機械パルプや、化学パルプ、あるいは、脱墨パルプ(DIP)等、各種のパルプを用途に応じて一種あるいは二種以上混合し、これに適宜、内添填料を加えて調成した紙料を公知の抄紙機によって抄造される。
この抄造した紙に適宜、塗料薬品(顔料や接着剤等)を塗工(又は塗布)した後、スーパーカレンダーやソフトカレンダーにより艶出し等の表面処理を行い、ワインダーで巻き取り仕上げられる。
【0003】
この紙は近年の高品質化の流れに伴って、表面に塗料薬品を塗工し、カレンダーにより艶出し等の表面処理を施したものが多くなっている。そして、従来のカレンダー処理は低温の多段ロールを使用したスーパーカレンダーが主流であったが、スーパーカレンダーは、多数のロールを使用するため高速化が難しいと共に、高速化するとロールの内部発熱に対する耐熱性、耐久性にも劣る等、生産効率も悪く、近年の高速抄造の流れには対応できず、一台の抄紙機に対して複数台のスーパーカレンダーが必要になる等の問題から、近年ではアート紙やグラシン紙等の特別な用途以外の紙は抄紙機とオンライン処理が可能なソフトカレンダー処理が多く採用される傾向にある。
【0004】
このソフトカレンダーは、一組あるいは複数組のヒーティングロールとソフトロールの組合せにより構成されており、且つ、前記ヒーティングロールは、金属製のロールで、50℃〜250℃位の高温に加熱されている。また、ソフトロールは、金属製の芯材に硬質のゴムあるいはプラスチック等の弾性材の層が一層又は複数層設けられている。
そして、ソフトカレンダーは、対を成すヒーティングロールとソフトロールを一組あるいは複数組で構成されており、ヒーティングロールとソフトロールとの間に加圧しながら通紙することによって平滑や光沢等の紙表面の改質を行うようになっている。
【0005】
ところが、このソフトカレンダーにおいては、前記したごとく対をなすヒーティングロールとソフトロール間に通紙するが、通紙する紙の幅は常に一定ではないためヒーティングロールとソフトロール間に紙が存在する部分と存在しない部分が生じる。
この結果、ヒーティングロールとソフトロール間に紙が存在する部分では、紙の断熱効果によりヒーティングロールからソフトロールに伝わる熱は少ないが、紙が存在しない部分では、ヒーティングロールとソフトロールとが直接対面することになり、ヒーティングロールからソフトロールに伝わる熱が多くなり、この部分が過熱されることになる。そして、この過熱によってソフトロール、特にその端部にクラックが発生することがある。
【0006】
このクラックの発生は既に当業者間においても良く知られており、過熱部分に冷風を吹き付けることにより冷却しようとする試みがなされているが、冷風では十分な冷却効果が得られていないのが実情である。このため、既に更なる解決手段も提案されている。
例えば、特開平7−11599号(特許文献1)によれば、ソフトロールの面長方向の部分的な発熱を検出して、発熱部分に水を噴霧して加熱された部分を冷却する方法が開示されている。また、特開2000−73291号(特許文献2)によれば、金属ロール及び/又は弾性ロール(ヒーティングロール及び/又はソフトロール)両端部の紙が接触しない部分及び紙の幅方向両端部が接触する部分に気水混合ミストを噴霧して冷却し、クラックの発生を防止したものが開示されている。
【特許文献1】特開平7−11599号公報
【特許文献2】特開2000−73291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した特許文献1及び2に記載のものは、いずれもヒーティングロール及び/又はソフトロールの加熱されやすい部分に水や気水を噴き付けて冷却するものである。
このため、水の吹き付け量が多いと紙を加湿することになり、製品としての紙の品質を損なうことになる。逆に、水の吹き付け量が少ないと十分な冷却効果が得られず、目的とするソフトロールの割れや亀裂の発生等による損傷を防止できない。
また、ロールの表面温度を測定したり、水や気水を噴き付けるため、温度計測装置や水噴霧装置等を別途追加して設置する必要がある等、設備費が嵩むと共に、そのメンテナンスも必要となる不具合が発生する。
【0008】
本発明は、紙の品質を損なうことがなく、しかも、設備的にも従来の装置を殆ど変更することなくソフトロールのクラックの発生を防止することが可能な紙の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の発明は、抄紙機で抄造した紙をカレンダーにより表面処理する紙を製造するに際し、ソフトカレンダーに供給する紙の幅を該ソフトカレンダーのソフトロールの有効面長よりも広くしたことを特徴とする紙の製造方法である。
また、本発明第2の発明は、前記第1の発明において、ソフトカレンダーに供給する紙の紙幅を該ソフトカレンダーのソフトロールの有効面長よりも片側当たり5〜30mm広くしたことを特徴とする紙の製造方法である。
更に、本発明第3の発明は、前記第1、第2の発明において、ソフトカレンダーで表面処理した後、リールに巻き取る前にスリッターにより紙の両端の耳部を切断することを特徴とする紙の製造方法である。
更に又、本発明第4の発明は、コーター設置の抄紙機において、コーターを経由した紙をオンラインでソフトカレンダーに供給することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紙の製造方法によれば紙の品質を損なうことがなく、しかも、設備的にも従来の装置を殆ど変更することなくソフトロールのクラックの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
一般的に紙は、機械パルプや、化学パルプ、あるいは、脱墨パルプ(DIP)等、各種のパルプを用途に応じて一種あるいは二種以上配合し、これに適宜、内添薬品を加えて調成した紙料を、図示は省略するが、公知の抄紙機に供給して抄造される。
この抄造した紙は、用途に応じてはそのまま、または、前記の抄紙機で抄造した紙に、図示しないコーター(塗工機)より、塗料薬品(顔料や接着剤等)を塗工した後、スーパーカレンダーやソフトカレンダーにより平滑や光沢等の表面処理を行った後、ワインダーで巻き取り、所望の製品に仕上げられる。
【0012】
本発明は、抄紙機により抄造した紙をカレンダー、殊に、ソフトカレンダーによって平滑や光沢等の表面処理を行なう紙の製造方法に関するものである。
図1において、11はソフトロールで、金属の芯11aに硬質のゴムあるいはプラスチックを被覆した被覆層11bが形成されている。12はヒーティングロールで、内部に図示しない熱媒体通路が形成されており、50℃〜250℃位に加熱されている。
そして、前記ソフトロール11とヒーティングロール12が一対として構成されており本実施例では対を成す2組のソフトロール11とヒーティングロール12によってソフトカレンダー13を構成している。
なお、このソフトカレンダー13は2組のソフトロール11とヒーティングロール12に限定されるものではなく、1組あるいは3組以上としても良いことは言うまでもない。
【0013】
図1において、14はスリッターで、上下一対の回転刃14a、14bにより構成されている。なお、このスリッター14も、上下一対の回転刃を有するものに限定されるものではなく、上又は下に回転刃を有するものであっても良い。15は紙である。
【0014】
前記したソフトカレンダー13において、図1に示すように、図示しない抄紙機又はコーターからオンラインで送られてきた紙は、ソフトカレンダー13のソフトロール11とヒーティングロール12との間に加圧されながら通される。
このとき、ヒーティングロール12は前記したごとく、50℃〜250℃位に加熱されているため、熱と加圧力の相乗効果によってソフトロールとヒーティングロールによる比較的小さい加圧力でも紙表面の艶出し等の表面処理を行なうことが可能であり、紙を必要以上に押し潰すことが無いので嵩高で印刷適性が良好な紙の製造に適しているという利点を有する。
【0015】
ところで、一般的にソフトロール11はその全長(全幅)1Cが実際の作業に有効ではない。ロールの撓み等のため、有効面長1A(ソフトカレンダーのソフトロールとヒーティングロールとの間で紙を加圧する接触面において、設定の温度、圧力を加えることのできるソフトロールの面長)はロールの全長1Cより短く設定されている。また、ソフトロール11は、金属の芯11aの外周を硬質のゴムあるいはプラスチックで被覆した被覆層11bが形成されているが、この被覆層11bの幅は少なくとも、前記有効面長1Aよりも長く設定されている。なお、通常はソフトロール11の全長に亘って覆い、且つ、両端部は肩落しされて薄くなっている。
【0016】
従来は、図3に示すようにソフトカレンダー後のスリッターが設置されておらず、ワイヤーパートで耳を落としたり、場合によってはソフトカレンダー33の前でスリッター等により紙幅が調整される。従って図4に示すように、ソフトカレンダー33に通紙する紙35の幅3Bが有効面長3Aに収まるようになっている。
このときソフトロール31の外周を被覆した硬質のゴムやプラスチックの被覆層31bのうち紙35を挟んでヒーティングロール32と面する部分はヒーティングロール32からの熱は紙で遮断され、必要以上に加熱されることは無いが、紙幅を越えた部分はソフトロール31とヒーティングロール32とが常時対面することで問題が生じることがある。即ち、ヒーティングロール32からの熱が直接ソフトロール31、特に、硬質のゴムやプラスチックの被覆層31bに伝達され、異常に過熱される結果被覆層31bに熱による割れや亀裂の発生の原因となっている。
【0017】
そこで本発明では図2に示すように、ソフトカレンダー13に通紙する紙15の幅1Bを有効面長1Aよりも広くし、ソフトカレンダー13の後段でスリッター14により余分な耳部を切り落とすようにしている。このため、ソフトカレンダー13においては、有効面長1Aを超えてロールの略全長に亘って紙15が通されることになるので、ソフトロール11とヒーティングロール12との間に紙15が介在し、ソフトロール11とヒーティングロール12とが直接対面することが殆ど無く、ヒーティングロール12からの熱が直接ソフトロール11、殊に、被覆層11bに直接伝達され、被覆層11bが異常に過熱されることは無い。このため、被覆層11bの異常過熱による割れや亀裂の発生もない。
ソフトカレンダーに通紙する紙幅はソフトロールの有効面長よりも片面あたり5〜30mm広くしている。これは、5mmより狭いとソフトロールとヒーティングロールの断熱効果が不足するおそれがあるし、30mm以上となると断熱効果が頭打ちになるからである。
【0018】
ここで、スリッター14により余分な耳部を切り落とさないでリールに巻き取ると、余分な部分はソフトカレンダーにより設定の温度、圧力が加わっていないので、それ以外の部分と幅方向の紙厚、平滑性等が異なることになり、リール巻きの凹凸やシワを生じる原因になる。そこでスリッター14により余分な部分を切断することが操業上より望ましい。
【0019】
なお、ソフトカレンダーの前段で紙両端の不要な耳部を裁断した後、製品部分と切り落とし部分を共にソフトカレンダーに通し、カレンダー処理した後に分離することも考えられるが、カレンダーロールは通常ロール端部は肩落とし(ロール径をテーパー状に細くする)されており、通紙するとき、切断した耳部がロールの肩落とし部にかかるとズレて切断部が分離すると共に、オンラインで高速処理するソフトカレンダーにおいては耳部の通紙が上手くできず操業トラブルの原因になり易い。
【0020】
以上のごとく本発明によれば、ソフトカレンダー13に通紙する紙15の幅1Bを有効面長1Aよりも広くし、ソフトカレンダー13の後段でスリッター14により余分な部分を切り落とすという簡単な工程変更ながら、有効面長1Aを超えてロールの略全幅に亘って紙15を通されることになるので、ソフトロール11とヒーティングロール12との間に紙15が介在することにより、ソフトロール11とヒーティングロール12との直接対面を無くし、ヒーティングロール12からの熱によりソフトロール11の被覆層11bが異常に過熱するのを防止でき、被覆層11bの異常過熱による割れや亀裂の発生を防止できる。
よって、長期間安定した操業が可能になると共に、保守・点検も容易になる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のソフトカレンダーを示す概略側面図。
【図2】図1のX〜線に沿う正断面図。
【図3】従来のソフトカレンダーを示す概略側面図。
【図4】図3のY〜線に沿う正断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機で抄造した紙をソフトカレンダーにより表面処理する紙の製造方法において、ソフトカレンダーに供給する紙の幅を該ソフトカレンダーのソフトロールの有効面長よりも広くしたことを特徴とする紙の製造方法。
【請求項2】
ソフトカレンダーに供給する紙の紙幅を該ソフトカレンダーのソフトロールの有効面長よりも片側あたり5〜30mm広くしたことを特徴とする請求項1に記載の紙の製造方法。
【請求項3】
ソフトカレンダーで表面処理した後、リールに巻き取る前にスリッターにより紙の両端の耳部を切断することを特徴とする請求項1又は2に記載の紙の製造方法。
【請求項4】
コーター設置の抄紙機において、コーターを経由した紙をオンラインでソフトカレンダーに供給することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の紙の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150707(P2010−150707A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330340(P2008−330340)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】