説明

紙クレーピング装置及びその方法

本発明は、回転シリンダから稼働ペーパー・ウェブをスクレーピング及びクレーピングするためのクレーピングドクター装置である。本装置は、連続又は分割した長手方向に移動可能なドクターブレードを支持可能となるように配されるホルダー装置を備える。ドクターブレードは、シリンダの少なくとも2倍を超える長さを有するように配されるとともに、スクレーピング面並びに接触線及び/又は接触面と一緒に設けられる。接触線及び/又は接触面は、特定の線形負荷において回転シリンダのジャケット面を支えることを目的としている。ドクターブレードは、支持部材とその支持部材に関連して移動可能な摩耗部材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転シリンダからの稼働ペーパーウェブをスクレーピング及びクレーピングするための装置及び方法に関する。本装置と方法は、サスペンション手段と、サスペンション手段に配されるとともに連続又は分割した長手方向に移動可能なドクターブレードを支持するように配されるホルダー装置とを備える。ドクターブレードは、シリンダの少なくとも2倍を超える長さを有するとともに、スクレーピング面並びに接触線及び/又は接触面が一緒に備わっている。接触線及び/又は接触面は、特定の線形負荷において回転シリンダのジャケット面を支えることを目的としている。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー、家事用ペーパー、ナプキン、及び類似の衛生用品のような柔らかい紙を製造する際、紙の柔らかさと吸収性は、通常、所謂クレーピング方法によって実現される。この方法では、紙形成時に生成される未だ濡れた状態の線維層/ウェブが乾燥シリンダ上に誘導され、最終的に乾燥又は部分的に乾燥したウェブが、シリンダの出口側においてスクレーピングされて引き出され、その後、後に続く任意の追加的な乾燥及び/又は巻き取り工程へと誘導される。取引商品型として、このような乾燥シリンダは、「ヤンキーシリンダ」と呼ばれている。これらのシリンダは、3から5メートルの間という大きな半径を有するという特徴を有している。ペーパーウェブの乾燥は、一般的にスチームの内部電源及び熱風の外部電源によって加熱された高温面に接触させることによって実施される。
【0003】
したがって、所謂クレーピング(縮み加工)は、上述したウェブの移動(スクレーピング(削り取り))で実施される。本工程において、稼働中ウェブは、シリンダから、所謂カウンターブレードを用いて、シリンダ状面を支える特定の圧力によって「スクレーピング」される。稼働ウェブがブレードの鈍端面にあたることによりウェブ/紙の微細なしわ加工が実施される。この微細なしわ加工(クレーピングと呼ばれる)は、紙の厚みと柔らかさを増加させる。クレーピングを実施する必要条件は、稼働ウェブがシリンダ状面に対して特定の粘着性を発揮することである。この粘着性は、紙が完全に乾燥していないことによって、又はシリンダ状面に接着する成分を含む紙線維の組成によって、自然に得られてもよい。所望の粘着性を得る一般的な方法は、シリンダ状面上に外部から粘着剤を供給することである。通常、これは粘着物質を低濃度でシリンダ状面上に噴霧することによって実施される。
【0004】
したがって、クレーピング工程における作動機械部品は、カウンターブレードであり、これはクレーピングドクターと呼ばれ、シリンダ状面に対する圧力負荷(ベア)と、紙をスクレーピング且つ微細なしわ加工をする鈍端面を備える。クレーピングドクターは、下記の主な機能を有するホルダー内に配される。
・シリンダ状面に対するクレーピングドクターのための制御可能なベアリング圧力を達成する
・クレーピングドクターの係合及び離脱を可能とする
・クレーピングドクターの高速交換を可能とする
【0005】
クレーピングドクターとシリンダ状面との間の接触により、クレーピングドクターと同様にシリンダ状面も磨耗する。これにより、磨耗形態において否定的な工程結果が得られることになる。クレーピングドクターにとって磨耗という結果は、クレーピングドクターを交換する必要性を示しており、クレーピングドクター手段の費用に加えて、交換に関連する生産量低減という多大な費用がかかることになる。シリンダ状面にとって磨耗という結果は、表面をしばしば再回転させる必要性を示しており、これには費用が発生する。シリンダは圧力容器であるため、シリンダには特定のジャケット厚さが必要である。このことは、シリンダが、特定数の再研削の後に新しい磨耗面に取り替えられる必要性があることを意味する。クレーピングドクター磨耗による他の結果は、クレープペーパーの品質が磨耗レベルに応じて変動することである。
【0006】
磨耗を抑えるためには、クレーピングドクター先端とシリンダ状面との間の圧力を可能な限り小さく維持することが重要である。しかしながら、特定の最小圧力は、ペーパーウウェブ又はペーパーウェブの一部がクレーピングドクターとシリンダ状面との間を通過することを防ぐために必要である。これがなければ、ウェブが破損してしまうことになる。
【0007】
所望のクレーピングドクター圧力を達成するための最も一般的な方法は、サスペンションの軸周りにホルダーを回転させることである。回転によって、クレーピングドクターは多かれ少なかれ湾曲することになり、これによりシリンダ状面に対して弾性圧力が加えられることになる。この解決法の欠点は、磨耗が存在するとベアリング圧力を増大させることができないことである。この理由は、クレーピングドクターが柔軟性を有しており、その湾曲性が圧力に応じて増加するからである。これにより、オープンウェッジを形成する特定の圧力レベルでシリンダに対して表面接触することになり、ウェブが引っ掛かるという危険性が増大し、ウェブの破損が起こってしまう。
【0008】
上述の欠点は、特許文献1に記載の装置によって解消することができる。この装置は、シリンダ状面に対するクレーピングドクターの接触角度を変化させることなく圧力を変動させることができる。これは、クレーピングドクターの先端付近で作用する別個の押圧手段によって達成されるため、クレーピングドクターは圧力変動に関連して湾曲しない。したがって、クレーピングドクターの交換間の時間間隔が延長可能である、即ち、その寿命が延びることになる。
【0009】
また、クレーピングドクターの寿命は、ドクターの先端とシリンダに対する接触面がクレーピングドクターの基礎本体部よりも固い材料で被膜されることによって延ばすことが可能である。この解決策の一例は、特許文献2に記載されている。この解決策の問題は、固い材料ほどシリンダ状面を磨耗等によって容易に損傷してしまうことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】スウェーデン特許第505,667号
【特許文献2】イギリス特許第2,128,551号
【特許文献3】米国特許第4,961,406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
シリンダ状面の磨耗を減少させるには、シリンダ状面に対するペーパーウェブの接着性を増大させる物質を、シリンダ状面上に層構築する物質と組み合わせることで可能となる。したがって、クレーピングドクターの先端はシリンダ状面に対して「スクレーピングする」ことの代わりに、構築された層を「スクレーピングする」ことになる。この方法の欠点は、多量の化学物質が消費され、シリンダを通る熱輸送が正常に機能しなくなり、化学物質残留物が紙に混入する等の他の問題にある。
【0012】
クレーピングドクターの稼働時間は、上述方法によって増大可能となるものの、クレーピングドクターは、多かれ少なかれある長さの製造間隔後に交換する必要がある。従来の長いクレーピングドクターを長手方向に連続して送り込むことによってこの問題を減じようとする試みがなされてきた。この方法は、特許文献3に記載されている。本方法の市場における構築を妨げる要因のある部分又は幾つかの部分は、本構成のメンテナンス費用が高く、調整の実現性が制限されていること、さらに、機器の両側に広い空間を必要とすること、そして両側間に品質の違いを生じさせないように入口側と出口側の磨耗に十分な違いを持たせるために十分送り込み速度が速い必要があるため、ドクターブレードの消費が多いことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主な目的は、とりわけブレード交換による生産量低減を減少させることであり、好ましくはシリンダの磨耗も軽減させ、好ましくはシリンダの磨耗を軽減するための化学物質の必要性を抑えることであり、これは請求項1記載の方法によって達成される。
【0014】
本発明の結果、費用効率の高い設計が達成され、良好な調整能力が得られ、多くの利点が得られる。これは、主に製造停止の減少によるものであるが、ドクターブレード費用と乾燥シリンダの再研削に関連する費用削減によるものでもある。
【0015】
本発明のさらなる態様によると、以下が得られる。
−ドクターブレードの断面積は、2−75mm、好ましくは3−50、より好ましくは5−30mmである。これにより磨耗部材の費用(即ち、ドクターブレード)が相当軽減されるという利点が得られる。これは、特に、ドクターブレードが、異なる種類の金属合金(例えば、スチール、ブロンズ、真ちゅう、アルミニウム合金、銅合金、チタニウム合金、耐熱性ポリマー(例えばPTFE等)等)等の従来の耐久性素材よりも大幅に安価な材料から作られているためである。
−ドクターブレードはホルダー装置から突出している支持/ホルダー部材において摺動するように固定されており、交換可能なドクターブレードの断面積を小さいレベルに維持することが容易であるという利点が得られる。これは、突出ホルダー部材の補助によりその断面積を最小限にできることの結果、得られるものである。
−支持部材は、ドクターブレードと略平行に伸長するピボットヒンジとともに提供される。このヒンジは、好ましくは弾力性がある。これにより、ドクター装置が、ドクターブレードの比較的大きな磨耗においても良好なクレーピング/スクレーピングを維持することが可能となるという利点が得られる。この利点は、シリンダの伸長方向に沿ってドクターブレードを角度付ける実現性によって得られるものである。
−押圧装置は、接触線及び/又は接触面によって上述の線形負荷が達成されるように配される。これにより、線形負荷の柔軟性と費用効率制御の実現性が高まる結果となり、クレーピングとスクレーピングが最適化される。
−押圧装置は、支柱周りをピボット可能である本体部を含む。本体部は、ホルダー装置に固定される。押圧装置は、押圧部材と加圧手段を含む。押圧部材は、好ましくは少なくとも部分的に分割されることによって、独立した押圧部材が互いに隣接可能である。これにより、比較的単純で容易に押圧装置を制御することが達成できるという利点がもたらされる。
−ホルダー装置は、細長アンカー部材において固定されている。その固定手段が配されることにより、シリンダ状のジャケット面への距離に対してアンカー部材の中心線を位置付ける配置が可能となる。これにより、ドクターブレードの磨耗を補うことが容易であり且つ費用効率が高く、その一方でスクレーピングとクレーピング効果は維持されたままとなる。
【0016】
本発明の好適な実施形態は、以下の原理に基づく。クレーピングドクター装置は、2つの部材からなり、支持部材とドクターブレード部材である。支持部材は、この支持部材に摺動するように固定されているドクターブレードのガイドを収納するスチール等の安定な材料からなる。ドクターブレードは、好ましくは、シリンダ状面において従来の材料よりも比較的磨耗の影響が低い材質から製造される(例えば、シリンダ状面よりも耐磨耗性が低い材料形態等)。これにより、クレーピングドクターがシリンダ状面においてなだらかに作動することになる。クレーピングドクターの後面は、ユニットの消費部材である。ドクターブレードの材料費を最小限にするために、断面積を小さくする。このことは、長いドクターブレードをリールとして保管可能であるという利点をもたらす。作動中のドクター部材の断面積は5−75mmであり、好適な実施形態では、10−30mmであり、厚さは3と0.3の間であり、好ましくは、2と0.5の間であり、より好ましくは1.5−0.6mmである。
【0017】
ブレードの交換時間が減少することは、作動ドクター部材がシリンダの長さよりも相当長いとともにその長手方向に継続的に移動可能であることによって達成される。ドクターブレードの上述長さはシリンダの2乃至150倍である。本発明の好適な実施形態では、その長さは、シリンダ長さの10乃至50倍であり、このようなシリンダの長さは通常4−5メートルであり、公知のものは7メートルまでであるため、概略で8−700メートルの範囲となる。しかしながら、原則として、空間/管理容易性以外に、最大長さにおいて実質的な制限はない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るクレーピングドクターの原理を概略的に示す。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明に係るクレーピングドクターを上方から示した図である。
【図4】本発明の好適な実施形態によるドクターユニットの側面図を示す。
【図5】本発明に係るクレーピングドクターの接触面の全体図である(入口側)。
【図6】本発明に係るクレーピングドクターの接触面の全体図である(出口側)。
【図7】本発明に係るクレーピングドクターの好適な実施形態の全体側面図である。
【図8】本発明に係るクレーピングドクターの好適な実施形態の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1と図2は、本発明に係るクレープペーパー(ちりめん紙)の製造原理を示す。ペーパーウェブ(1)は、入ってくる湿潤繊維ウェブ(1A)の形態(従来手法によるもの)で示され、乾燥シリンダ(2)へと導かれる。この乾燥シリンダ(2)は、例えばヤンキーシリンダと呼ばれる形態であり、加熱ジャケット面を備え、このジャケット面に熱風乾燥機(3)が配置される。最終的に乾燥又は部分的に乾燥したウェブ(1B)はスクレーピングされ、クレーピングドクター装置(5)を用いてシリンダ(2)の出口側から引き出される。スクレーピングは、シリンダ(2)の表面(20)に対する特定の圧力負荷を備える反作用ドクターブレード(6)によって達成される。クレーピングドクター(5)は細長ホルダー部材(7)とアンカー部材(8)を含む。ホルダー部材(7)(以下、ホルダー装置とも記載する)は、縦溝(十分な深さと幅を有するスロット形態であり、十分な支持とガイドを同時に提供することにより摺動可能とする)(72)とともに設けられる。この縦溝(72)は、ドクターブレード交換時の引き出し及び押し込みのために十分な幅を有すること、及び/又は、高さ及び/又は幅を設定可能な手段とともに提供されることのいずれかを備え、ホルダー装置(7)内にドクターブレード(6)を位置付ける。同様に、ホルダー装置(7)は、アンカー部材(8)において回転可能に固定される。アンカー部材(8)は、好適な実施形態によれば、シリンダ状の外側ジャケット面の細長部材からなる。好適な固定手段/ロック手段(図示せず)が提供されることにより、ホルダー装置(7)がアンカー部材(8)に関連する特定の任意位置に固定される。アンカー部材(8)周りにホルダー部材(7)を回転させることにより、ドクターブレード(6)がロール(2)のジャケット面(20)を往復移動でき、さらに、ロール(2)の表面(20)に対するドクターブレード(6)の調整可能なベアリング圧力が達成可能となる。
【0020】
図2は、ドクターブレード(6)の鈍端部(60)を示す。この鈍端部(60)は、シリンダ(2)の回転によって鈍端部(60)へ導かれたウェブ(1B)と接触した時に、微細しわ付ウェブ(1C)を実現可能である。
【0021】
図3は、本発明に係るクレーピングドクター装置を上方から概略的に示した図である。図に示される如く、ドクターブレード(6)は、ドクター装置(5)の入口側に関連して配されるリール(65)上に配置される。ドクターブレード(6)は、クレーピングドクター装置(5)の出口側に関連して配されるキャプスタン(66)を用いて、リール(65)から連続してホルダー装置(7)内の溝(72)へと供給される。また、アンカー部材(8)は、ジャケット面(20)によって形成された線に関連して角度を形成するように配されることが、図3の概略図から明らかである。したがって、中心線(80)間の距離は、クレーピングドクター装置(5)の入口側付近でより短い距離aを形成し、クレーピングドクター装置(5)の出口側付近でより長い距離a’を形成する。これは、少なくとも水平面における位置に関しては、アンカー部材(8)の位置調節を可能とするサスペンション手段(81、82)の配置によって達成される。(ある実施形態では、クレーピングドクター装置は、本質的に公知の方法(例えば、SE505,667)で機器スタンドに接続される。この機器スタンドは、クレーピングドクターとシリンダー(2)との間の接触点に一致する回転の第2中心を有するものである。)。本実施形態によると、シリンダ状表面に対するドクターブレードの角度βの調整が促進される。
【0022】
アンカー部材(8)のこの位置付けの結果、ドクターブレード(6)とジャケット面(7)との間の接触が実現することにより、ロール(2)の伸長に沿って角度βが変化することになる。これは、本発明の好適な実施形態に基づく配置であり、図4乃至8に関連し、詳細は以下に説明することにする。
【0023】
ドクターブレード(6)は、ドクターブレードの出口側においてもクレーピング品質が十分であるように調節された速度で長手方向に供給され、これは、特定の磨耗(入口側よりも大きい)が生じるという事実に左右されない。クレーピングドクター装置の支持部材における溝(72)に誘導されたドクターブレード(6)は、ドクターブレード(66)に対して押圧するキャプスタン(66)によって供給される。キャプスタン(66)の下流では、消費されたドクターブレードが小片に切断される又はリールに巻かれる(再度使用できるように、任意で処理された後)。キャプスタン(66)、ストックリール(65)、及び収集装置(図示せず)は、これらがホルダー装置(7)の動きに付随する方法でドクター装置(5)に好適に連結される。磨耗と速度間の最適な均衡を達成するためには、駆動速度は可変的に調整可能であることが好ましい。駆動配置の制御は、好適には高速供給のための機能を含み、例えば、ドクターブレードの損傷部分が作動領域から取り出される必要がある場合などに使用される。
【0024】
図4は、本発明の一実施形態に係るクレーピングドクター装置(5)の側面図である。クレーピングドクター装置(5)は、上述では、固定部材(8)において回転可能に吊り下げられていたが、ここでは好ましくはシャフトジャーナルによって吊り下げられる。回転運動によって、クレーピングドクター装置(5)は、作動位置と離脱非作動位置にそれぞれ配される。クレーピングドクター装置は、細長本体部(75)からなるホルダー装置(7)を、シャフトジャーナルを目的としたアンカー手段(76)(例えば円形凹部等)とともに含む。本体部の上部分には、ホルダー部材(71)が機械継ぎ手(73)によって固定されたリップ部(77)が存在する。このホルダー部材(71)は本発明の好適な原理の根拠の1つを形成する。ここでドクターブレード(6)として定義されている物体は2つの部材からなり、それぞれ支持部材(65)と磨耗部材(64)である。本原理を好適に使用可能とすることを目的として、連結手段、即ち、ホルダー部材(71)と支持部材(65)の上部分(73)との間のピボットヒンジ(74)が、ピボット弾性ヒンジを形成するウエスト部(74)の形態で存在する。支持部材(65)の上部材(73)の上端部は、ドクターブレードの摺動部材(即ち磨耗部材(64))を位置付けることを目的とした細長溝(72)とともに設けられる。ピボットヒンジ(74)上方部分をピボットさせることで、ジャケット面(20)に対するドクターブレード(6)の接触が異なる角度βで提供される。リップ部(77)の反対側(ホルダー部材(71)の位置に関連する)に、押圧装置(9)が配される表面(70)が存在する。
【0025】
細長本体部(又は長手方向に分割/区分された本体部)(90)からなる押圧装置(9)は、略バナナ形状の断面を有しており、本体部の中心が、ピボット点(92)の周りでピボットする。ピボットシャフト(92)はブラケット部材(94)によって支持されており、本体部はホルダー部材(7)に平行して延出する水平軸周りをピボット可能である。押圧本体部の上端部には、押圧部材(91)(これは、細長形状、又は切片形状であることができる)が存在する。押圧部材(91)の端部は、支柱(74)上方の線に沿って支持部材(65)に対して負荷を受け、これは、押圧部材(91)による押圧がドクターブレード(6)のピボット(即ち、磨耗部材を備える支持部材(65))に影響を与えるようになされる。圧力負荷は、一以上の押圧手段(96)(好ましくは弾性インフレータブルホース)によって与えられることが可能である。この押圧手段(96)は、本体部(90)の低部とホルダー装置(7)の表面(70)との間に配置されるものである。したがって、圧力負荷は、押圧手段(96)を用いて制御可能であり、これは、押圧部材(91)が接触線(62)においてジャケット面(20)に対してドクターブレードの押圧負荷に影響を与えるように、本体部(90)をピボットヒンジ(92)周りにピボットさせることによりなされる。磨耗部材(64)は、軸方向に移動可能であり、支持部材(65)内におけるスロット部(72)内に摺動するように挟まれる。押圧部材(91)は、好適な分割切片からなり、これにより強固に適合した弾力性フィンガー部(91)が支持部材(65)上に圧力を及ぼすように形成される。フィンガー部の弾力特性のおかげで、シリンダ(2)は頂部蒸気圧によって真直度が変化する可能性があるという事実にもかかわらず、シリンダの全長にわたって均一な圧力が形成される。
【0026】
図5と図6は、シリンダ(2)とドクターブレード(6)との間の接触線/点(62)周囲の領域の拡大図である。ここで、図5は、非磨耗ドクターブレード(6)(即ち磨耗部分64)である場合の接触点の外観を示す。図6は、磨耗ドクターブレード(6)である場合の対応する状況を示す。ドクターブレードは、シリンダ状面(20)に対してなだらかであるべきであることも本発明の目的である。これを達成するには、ドクターブレード(6)の材料は、一実施形態によれば、シリンダ状面(20)よりも耐久性が低くなる。したがって、ドクターブレードとシリンダ状面との間の接触点(62)は、ドクターブレード(非磨耗)の入口側において図5に示されている縁部に似たものとなり、この一方で、接触点は、図6に示される如く、出口側において表面(63)(磨耗)へとなっていく。定数線形負荷Fでは、この状況は、出口側における領域一単位あたりの接触圧力が低くなるために、スクレーピング効果に負の影響を与える可能性がある。図6は、アンカー部材(8)(ドクターブレードホルダー)の特定傾斜によって負の影響を相殺する方法を示し、中央線(80)とシリンダ状面(20)との間の距離は、出口側a’が入口側aよりも大きくなる、即ちa’>aとなる。この傾斜により、ドクターブレード(6)とシリンダ状面(20)の間の角度βは、入口側から出口側に向かって徐々に大きくなることになる。この結果、圧縮負荷Fは磨耗表面(63)に分布しないだけでなく、磨耗表面の先端(62)に集中するという利点が得られる。本方法によると、スクレーピング効果は、その長さにわたってより均一なものとなり、ドクターブレード(6)の寿命をより長くすることができる。
【0027】
図7及び部分拡大図である図8は、本発明に係るクレーピングドクター配置の好適な実施形態を示す。原理は、基本的に上述したものと同じであり、例えば図4に関連している。したがって、以下の記述では、主に図4に対する差異に焦点をあてることにする。側面断面図を示す図7は、ホルダー装置(7)に固定されたホルダー部材(71)が、比較的薄く(好ましくは0.5−2mm)、固定部材と同じ断面形状においてリップ部(77)の上方に突出していることを図示している。さらに、材料の本部分は、さらに上方に向けて延出しているため、ロール(2)表面(20)の比較的近くに延出する上部分(71’)を形成している。リップ部(77)端部上方から特定距離且つ上部分(71’)のどちらかにおいて、プレート形状部材(73A)(73B)が配置されている。これにより、ヒンジ(74)はその低い方の端部の下方領域(少なくとも同じレベル)で、実際のホルダー部材(71)とその上部分(71’)との間に橋を構成する材質の一部において自然に形成されることになる。先端部では、プレート形状部材(73A)(73B)が上部分(71’)の上部を超えて延出する。これにより、溝(72)が、プレート(73A)(73B)の間の先端部において形成される。したがって、プレート形状部材(73A)(73B)は上部分(71’)とともに、支持部材(65)の上部分(73)を形成する。その後、溝(72)において、ドクターブレード(6)の移動可能な磨耗部材(64)が配置される。
【0028】
したがって、この好適な実施形態は、溝(72)と同様にヒンジ(74)を実現し、非常に費用効率性が高い方法である。外側のプレート形状部材(73B)は内部部材(73A)よりもさらに延出して有利に配されることにより、より狭い角度βが使用されることができる、及び/又は磨耗部材(64)がより低い高さとなることができる(図1に基づく同じ原理が適用される)。加えて、機能は上述したものと実質的に同じであることが実現される。しかしながら、本実施形態では、押圧装置(9)が、2つの要素に分けられる押圧部材(91)を有しており、これらは、押圧部材(91’’)を固定及び支持する機能を有する基部(91’)と、基部(91’)と押圧装置の正面部分との間に固定される押圧部材(91’’)の第2部品である。押圧部材(91’’)は実際の力伝達部材を形成する。
【0029】
上述の記載は、本発明の例示実施形態に関する。しかしながら、多数の変形実施形態が本発明の範囲内に存在する。
【0030】
当業者であれば、例えば、細長ドクターブレードを配置するには、上述した方法以外にも多数の様々な方法があることが理解できる。例えば、ドクターブレードを細長ループとして配置することが可能であり、例えば、ドクターブレードの両端が連結されている(例えば溶接によって)等が挙げられる。そして、ドクターブレードの継続的な供給は、磨耗が再利用不可能となるまで交換せずに、実施できる。(本方法では、ドクターブレードを半回転(即ち180°)させることによって、使用済スクレーピング表面(60)が入口側に戻った時に溝(62)において下方回転が可能となる。このようにして、完全に同一設置が前述の「ラップ部」として使用可能である。この理由は、ドクターブレードの断面幅がまだ完全に同じであるからである。)また、今上述した配置を使用し且つ幾つかの種類の機械加工を含むことが考えられ、これにより、例えば粉砕、研削、及び/又は設計単位によって、表面(60)が修繕される。このような単位は、ホルダー装置(7)内に有利に一体化されることができる。この理由は、クレーピング方法は、自動的にカウンター圧力を作り出し、機械加工の場所において最適なベアリング/接触を確実なものとすることができるからである。このような方法では、いくつかの種類の高さ調整機構も好適に配置される。各機械加工の高さ調整機構において、全体のホルダー装置(7)(又は突出ホルダー部材(71)のみ)は、ドクターブレードの幅が機械加工によって減少する速度と同じ速さで上方に上手く供給されるように安定する。このような方法における考えうる機械加工の他の種類は、再溶融及び再形成可能な熱処理であり、任意で材料を追加することである。これにより、ドクターブレード(6)を再度入れたときに磨耗前と完全に同じ断面形状を有することになる。
【0031】
本発明の範囲内におけるその他の変更箇所は、ドクターブレード(6)が複合構造(即ち、組み合わされた複数種類の材料からなる)であることである。これは、例えば、ドクターブレード(6)の角部分のみが、研磨性が低い材料からなり(例えば、より軟らかい及び/又はより摩擦に強い)、例えば、スクレーピングとクレーピングに好適なポリマーが適応可能となるように好適な断面形状と表面構造を有するスチール構造形状等が挙げられる。出願人は、本発明に記載された変更箇所に関して分割出願を出願する権利を保持している。例えば、「2つに分けたドクターブレード」(磨耗部材(64)と支持部材(65)それぞれ)に制限を与えることなく、独立方法クレームに基づく原理を保護する装置クレーム等が挙げられる。当業者であれば、加工費は、材料の購入費によって制御されるだけでなく、供給速度の減少、生産量低減の減少、取り扱いの簡素化(廃棄物の取り扱いも含む)等のパラメータによっても制御され、これが加工費低減の一因となることは理解できることである。
【0032】
また、溝(72)は、摺動させるために様々な異なる方法で固定可能である。例えば、単純にドクターブレード(6)を良好に摺動可能な材料(例えばPTFE)で作ることによって、及び/又は溝内に特定種類の潤滑剤を配することによって、及び/又は特別なベアリング(例えば、ローラー・ベアリング)を配することによって固定され、及び任意で、特定用途における溝の幅と深さを有利に調節可能に配されることができる。ホルダー部材(71)は、様々な方法、即ち、上述したような別個の部材を形成するか、ホルダー部材(7)に一体化した部材を形成するかのいずれかの方法で配置されることができる。同様に、ピボットヒンジ(74)は、本質的に公知の様々な方法で配置可能であり、これにより、例えば本質的に公知の原理を用いてそれぞれ個別の部材を形成することができる。同様に、押圧装置は、様々な異なる方法で変更可能であり、例えば、分割押圧部材(91)有り又は無し、及び/又は図1と2に記載されているような分割(押圧をホルダー装置(7)自身と一体になるように配する)が挙げられる。即ち、アンカー部材(8)が、シリンダの伸長に沿って、違った種類の押圧力/位置付け角度をそれぞれ達成するように回転される/位置付けられることによって、分割ホルダー装置(7)を有するということである。最終的に、対応する方法において、上述発明に関連して含まれる又は採択されるその他多数の部材は、様々な異なる方法で修正可能であり、例えば、アンカー部材としての固定手段(81、82)等が挙げられる。また、アンカー部材の設計は、当然、上述した以外の多数の他の断面形状でも使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シリンダ(2)から稼働ペーパー・ウェブ(1)をスクレーピング及びクレーピングするためのクレーピングドクター装置であって、
サスペンション手段(8、81、82)と、
前記サスペンション手段(8、81、82)内に配されるとともに、連続又は分割した長手方向に移動可能なドクターブレード(6)を支持するように配されるホルダー装置(7)とを備え、
前記ドクターブレード(6)が、前記シリンダ(2)の少なくとも2倍を超える長さを有するとともに、スクレーピング面(60)並びに接触線(62)及び/又は接触面(63)と一緒に設けられ、
前記接触線(62)及び/又は接触面(63)が、特定の線形負荷において前記回転シリンダ(2)のジャケット面(20)を支えることを目的としており、
前記ドクターブレード(6)が、個別の支持部材(65)と該支持部材(65)に対して移動可能な摩耗部材(64)を含み、
前記支持部材(65)が、前記ホルダー装置(7)に分離可能に固定されるホルダー部材(71)を含むことを特徴とするクレーピングドクター装置。
【請求項2】
前記磨耗部材(64)の断面積が2−75mm、好ましくは3−50、より好ましくは5−30mmであることを特徴とする請求項1記載のクレーピングドクター装置。
【請求項3】
前記支持部材(65)が、前記ドクターブレード(6)と略平行に延出するピボットヒンジ(74)とともに設けられ、
前記ヒンジ(74)が好ましくは弾性を有することを特徴とする請求項1又は2記載のクレーピングドクター装置。
【請求項4】
前記ヒンジ(74)が、前記支持部材(65)と一体化した部材であり、好ましくはホルダー部材(71)と一体化した部材であることを特徴とする請求項3記載のクレーピングドクター装置。
【請求項5】
前記接触線(62)及び/又は接触面(63)によって前記線形負荷を達成するように、押圧装置(9)が配されることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載のクレーピングドクター装置。
【請求項6】
前記押圧装置(9)が、支柱(92)周りをピボット可能な本体部(90)を含み、
前記本体部(90)が、前記ホルダー装置(7)にアンカー固定され、
前記押圧装置(9)が、押圧部材(91)と加圧手段(96)を含み、
前記押圧部材(91)が、好ましくは少なくとも部分的に分割されることによって、独立押圧部材が互いに隣接可能であることを特徴とする請求項5記載のクレーピングドクター装置。
【請求項7】
前記支柱(92)が前記ピボットヒンジ(74)と略平行に延伸することを特徴とする請求項6記載のクレーピングドクター装置。
【請求項8】
前記ドクターブレード(6)の長さが、前記シリンダ長さの2−150倍であって、より好ましくは前記シリンダ長さの10−50倍であることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載のクレーピングドクター装置。
【請求項9】
前記接触線(62)及び/又は接触面(63)は、前記シリンダ(2)の表面(20)上における磨耗特性が一般的なドクターブレード材料よりも大幅に低い材料からなることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項に記載のクレーピングドクター装置。
【請求項10】
前記ホルダー装置(7)が、細長部材(8)において固定されており、
前記細長部材(8)の前記固定手段(81,82)は、シリンダ状(2)のジャケット面(20)への距離(a)に対して前記部材(8)の中心線(80)を位置付ける配置が可能となるように配されることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項に記載のクレーピングドクター装置。
【請求項11】
稼働ペーパーウェブをスクレーピング及びクレーピングするための方法であって、
回転シリンダ(2)上及びその周りに誘導される稼働ウェブ(1)を配置する工程と、
前記回転シリンダ(2)から前記稼働ペーパーウェブを前記スクレーピング及びクレーピングするためのクレーピングドクター装置(5)を配置する工程とを含み、
前記クレーピングドクター装置(5)が、サスペンション手段(81、82、8)を含み、
前記サスペンション手段が、連続又は分割した長手方向に移動可能なカウンター位置ドクターブレード(6)を支持可能となるように配されたホルダー装置(7)を支持し、
前記ドクターブレードが、前記シリンダ(2)の少なくとも2倍を超える長さを有するように配され、
前記ドクターブレードが、スクレーピング面(60)と一緒に設けられるとともに、接触線(62)及び/又は接触面(63)において前記回転シリンダ(2)のジャケット面(20)を支えるように配され、
前記接触線(62)及び/又は接触面(63)が、特定の線形負荷において前記ジャケット面(20)を支えるように配され、
前記方法はさらに、
個別の支持部材(65)と該支持部材(65)に対して移動可能な摩耗部材(64)を備えるドクターブレードを提供する工程と、
前記ホルダー装置(7)に分離可能に固定されるホルダー部材(71)を備える前記支持部材(65)を提供する工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ドクターブレード(6)に略平行に伸長するピボットヒンジ(74)を備える前記支持部材(65)を提供する工程を備え、
前記ドクターブレード(6)が、その伸長に沿って変化する角度(β)で前記ジャケット面(20)を支えるように配され、好ましくは、前記接触角度(β’)が、出口側では、入口側における対応角度(β)よりも大きい、即ちβ’>βであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
所望の線形負荷及び所望の角度(β)を達成する押圧装置(9)との相互作用によって前記ホルダー装置(7)の位置を変更することにより、その伸長に沿ってねじれを加えることが可能となるように前記ドクターブレード(6)を配する工程を備えることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
使用後且つ駆動装置(66)下方位置において、前記ドクターブレード(6)の少なくとも磨耗部材(64)を小片に切断することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記シリンダ(2)の表面(20)上における磨耗特性が一般的なドクターブレード材料よりも大幅に低い材料である前記接触線(62)及び/又は接触面(63)を提供する工程を備え、及び/又は製造過程の材料費が一般的なドクターブレード材料を用いた時よりも大幅に低いことを特徴とする請求項11乃至14いずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−8】
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【公表番号】特表2010−519424(P2010−519424A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550849(P2009−550849)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050084
【国際公開番号】WO2008/103115
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509237251)シーエス プロダクション アクチエボラグ (1)
【Fターム(参考)】