説明

紙コップ、及び紙コップを作るための方法と装置

【課題】 コップ套管とコップ套管に液密態様で連結された底とを持ち、スープなどの食品を受けかつ消費するために適した紙コップを提供する。
【解決手段】 このコップ套管は底と底に対向する端部との間の少なくともある部分で紙コップの中心縦軸に対して10°より大きいかまたはそれに等しい角度、特に10°〜15°の角度で配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コップ套管とコップ套管に液密態様で連結された底とを持つ紙コップに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の紙コップは、折り曲げマンドレルを用いて切頭体形状に巻かれた紙切片から作られる。切頭体形状をしたコップ套管の上縁上への上部カールの形成によりかつコップ套管中に底を挿入することにより、液体を受けるための紙コップが提供される。もし熱い飲料が受け入れられることになるなら、紙コップは追加的に断熱外包を与えられることができる。上部カールの形成時及び底のコップ套管への全周底縁での連結時に、コップ套管の紙材料は少なくとも180°程カールされまたは丸く折り曲げられなければならない。そうするために、紙材料は底縁の領域内で圧縮され、かつ上部カールの領域内で部分的に伸張されかつ部分的に圧縮されなければならない。圧縮は過剰の紙材料に導き、従って幾分波打った表面に導く。これは底縁の内側では容認されることができるが、波打った表面は上部カールでは容認されることができない。結果として、滑らかな表面を持つ上部カールを作るために上部カールの領域内で多数の方策が取られなければならない。カール時または丸く折り曲げる時の紙材料の圧縮または伸張は、コップ套管の円錐角が増えるとそれだけ大きい。上部カールの例を用いると、円筒状管の場合にはコップ套管の上縁はカール時に伸張され、それが360°程カールされるとすぐに、従って実質的にその初期位置に戻るが、実質的な材料伸張または材料圧縮はない。これは切頭体形状套管では事実ではない。なぜならコップ套管の上縁は上部カールの付与時にある位置に動かされ、その位置では上縁の当初直径と比べてより小さな直径が得られるからである。360°程の上縁のカール工程後にまた、上縁の紙材料は従ってしわなしに永久の材料圧縮に耐えることができなければならない。コップ套管の円錐角が大きい程、この直径差は大きくなり、上部カールの作成時及び底縁の作成時にしわになる傾向が大きくなる。この理由のため、通常の紙コップは最大9°のコップ套管の円錐角を持って作られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、液体を受けるためだけでなく、食品、例えばスープを受けかつ消費するためにも適した紙コップを提供することを意図される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、コップ套管とこのコップ套管に液密態様で連結された底とを持つ紙コップであって、コップ套管が、底と底に対向する端部との間の少なくともある部分で紙コップの中心縦軸に対して10°より大きいかまたは10°に等しい角度、特に10°〜15°または10°〜25°の角度で配置される、紙コップが提供される。
【0005】
コップ套管のより大きな円錐角を設けることにより、特にスープまたは他の食品を受けるために十分に適したボウル状紙コップが得られる。ここで実質的な特徴は、通常の紙コップと比べたとき本発明による紙コップのより平坦な側壁であり、紙コップからの食品の消費を著しく容易にする。特に紙コップのより広い開口角のおかげで紙コップの容量が過剰に大きくなることなく比較的広いコップ開口を提供することができる。これはまた、本発明による紙コップからの直接的な食品消費を容易にする。なぜなら例えばこのコップ開口はコップの容積内でスプーンを動かすのに十分な大きさであるからである。
【0006】
本発明の一実施態様では、コップ套管は全周縁により液密態様で底に連結され、そこではこの縁は中心縦軸に平行に配置されるかまたは底から縁の端部にフレアーするように設計される。
【0007】
底縁のためのこのタイプの実施態様により、まず本発明による紙コップの魅力あるボウル状外観が達成される。なぜなら縁の円筒状または逆円錐形設計は一種のベースの光学効果を持ち、さらに立ち表面は紙コップの厳密に切頭体形状の設計と比べて拡大されているからである。
【0008】
本発明の一実施態様では、上部カールはコップ套管の底に対向した上縁上に形成される。
【0009】
上部カールを持つコップは問題なしに口までもたらされることができ、使用するのが気持ちよい。さらに、コップ套管の上縁は実質的に上部カールにより安定化される。これは特に大きな直径を持つ紙コップのために重要である。
【0010】
本発明の一実施態様では、コップ套管は底と底に対向した端部との間で、コップの内部から見たときに少なくともある部分で外向きに曲がっている。
【0011】
この方法ではコップは非常に魅力的なボウル状形状を与えられる。さらに、外向きに曲がるコップ套管のおかげで例えばスプーンを使用して食べるために非常によく適したコップ形状を得ることができる。
【0012】
本発明の一実施態様では、コップ套管は、底と底に対向した端部との間で、コップの内部から見たときに少なくともある部分で内向きに曲がっている。
【0013】
コップ套管のこの凹状設計により、その広い開口にもかかわらず人間の手により非常に容易に握られかつ保持される形状が得られる。さらに、凹状コップ套管を持つかかる紙コップの容積は広い開口にもかかわらず小さく保たれることができる。
【0014】
本発明の一実施態様では、コップ套管の壁は、コップ套管が底の領域内及び底に対向した端部の領域内で中心縦軸に対して中心部分より低い角度にあるようにS形状断面を持って設計される。
【0015】
コップ套管のこのようなS形状設計のおかげで、上部カール及び底縁の造形は著しく容易にされる。なぜならコップ套管の中心部分における10°より大きいかまたは10°に等しい角度にもかかわらず、例えば10°未満の角度が底の領域内及び上縁の領域内に付与され、いずれにしても中間部におけるより低い角度が付与され、従って上部カール及び縁がいかなる問題もなしにかつ紙材料のいかなる過剰な波打ちまたは引裂きも恐れる必要なく造形されることができる。
【0016】
本発明の一実施態様では、コップ套管は全周縁により底に液密態様で連結され、縁はコップ套管の下方縁領域を底縁周りに、または底の下方縁領域をコップ套管の下方縁周りに折り曲げることにより形成され、コップ套管の下方縁領域または底の下方縁領域が紙材料の切り込みを備えている。
【0017】
紙材料の切り込みのおかげで、コップ套管の上方及び下方縁は実質的により容易に造形されることができ、特に紙材料の引裂きまたは過剰な波打ちが避けられる。
【0018】
本発明の一実施態様では、切り込みは底の縁からまたはコップ套管の縁から縁の高さの半分を越えないところまで延びる。
【0019】
この方法では、底縁の造形は、その信頼できる液密設計が危険にさらされることなく実質的に容易にされることができる。なぜなら縁の高さの半分まで、折り曲げられた紙材料は底の縁とまたはコップ套管の縁と全面接触状態にあり、従って全周の連続的な封止が達成されることができるからである。
【0020】
本発明の一実施態様では、コップ套管は、コップの内部中に突出する全周凹所を備えており、縁の下方縁は、縁の下方縁の外周が凹所での大きい方の直径より小さいかまたはそれに等しくかつ凹所での小さい方の直径より大きいような寸法をしている。
【0021】
縁及び凹所に対するこのタイプの設計により、幾つかのコップが積重ねられるときに縁が凹所上に載ることができる。結果として、幾つかのコップは上方コップの底縁が下方コップ内に粘着することなく積重ねられることができる。コップ套管が少なくともある部分で中心縦軸に対してとる広い角度のおかげで、幾つかの積重ねられたコップのコップ套管はそのときもはや互いに接触状態になく、従って多数の紙コップが積重ねられるときであっても粘着が懸念される必要がない。
【0022】
本発明の一実施態様では、コップは少なくともある部分で二重壁を持つように設計される。
【0023】
この方法では、断熱コップが設けられることができ、そこではヌードルスープのような非常に熱い食品であっても問題なく受け入れられることができ、かつそれにもかかわらず使用者の手にいかなる危険もなしに保持されることができる。
【0024】
本発明の根底にある問題はまた、コップ套管と底とを持つ紙コップを作るための方法であって、コップ套管がコップ套管の底に対向した端部に形成された上部カールを持ち、さらにコップ套管が底と底に対向した端部との間の少なくともある部分で紙コップの中心縦軸に対して10°より大きいかまたはそれに等しい角度、特に10°〜15°の角度で配置される方法によって解決される。
【0025】
本発明の一実施態様では、上部カールは少なくとも二つのカール付与工程で形成され、そこではコップ套管はカール付与工程時に少なくとも部分的に保持装置により異なる方法でつかまれる。
【0026】
驚くべきことに、コップ套管が中心縦軸に対して少なくともある部分でとる10°より大きいかまたはそれに等しい広い角度にもかかわらず、上部カールの造形が上部カールの形成を少なくとも二つのカール付与工程に分割することにより、さらにコップ套管を異なるカール付与工程時に異なる方法でつかむことにより可能であることが証明された。この目的は、コップ套管が異なるカール付与工程時の各場合にコップ套管の上方縁または既に部分的に完成した上部カールのちょうど下でつかまれるようにカール付与工程時にコップ壁のゆがみを防ぐことである。この繰返されるつかみのおかげで、上部カールは、コップ套管の膨らみまたはゆがみのいかなる懸念もなしに信頼性をもって造形されることができる。
【0027】
本発明の一実施態様では、上部カールを形成するために四つのカール付与工程が設けられる。有利には、各カール付与工程で最大180°のカールが付与される。また、第一カール付与工程で180°のカールが、続くカール付与工程で約90°のカールが設けられることができる。このタイプのカール付与の四工程への分割及び約180°の第一カール及び続いての約90°のカールへの分割は10°より大きくかつ15°までの角度の中心縦軸とコップ套管との間の非常に広い角度を持っても上部カールの工程信頼性のある造形を可能にする。
【0028】
本発明の一実施態様では、設けられた工程は、コップ套管を保持リング内に取り上げ、保持パンチをコップ套管中に動かし、コップ套管を保持リングと保持パンチの間でつかみ、そしてカール付与ツールをコップ套管の上方縁に適用することである。
【0029】
ここで少なくとも部分的に異なるカール付与ツール及び少なくとも部分的に異なる保持ツールが使用されることができる。一つの同じ保持リングの使用であるが異なる保持パンチとカール付与ツールの使用が有利である。もし必要なら、コップを閉じるダイヤフラムの取り付けのための封止表面を設けるために形成された上部カールもまた平坦にプレスされることができる。
【0030】
本発明の根底にある問題はまた、コップ套管と底とを持つ紙コップを作るための装置であって、コップ套管が底に対向するコップ套管の端部上に形成された上部カールを持ち、さらにコップ套管を底と底に対向した端部との間に配置するための手段が少なくともある部分で紙コップの中心縦軸に対して10°より大きいかまたはそれに等しい角度、特に10°〜15°の角度で設けられる装置により解決される。
【0031】
本発明の一実施態様では、コップ套管の上方縁上の少なくともある部分に上部カールの形成のための少なくとも一つのカール付与ツールの供給のための手段が設けられ、そこでは供給方向はカール付与ツールにより加工されるコップ套管の上方縁領域の部分に略平行である。
【0032】
カール付与ツールの供給方向はコップ套管の材料に略平行であるので、上部カールの形成時のコップ套管のゆがみまたは膨らみが避けられることができる。なぜなら紙材料はコップ套管の材料に略平行なスラスト荷重に対して非常に安定であり、従って高い加圧力であっても上部カールの形成時に套管に付与されることができるからである。
【0033】
本発明の一実施態様では、カール付与ツールは、コップ套管の上方周囲に渡って幾つかの部片に分割され、それらの部片はそれぞれの部片により加工されるコップ套管の上方縁領域の部分に平行に動くことができるようにそれぞれ配置される。
【0034】
カール付与ツールの幾つかの部片へのこの分割により、達成可能な結果は供給時のカール付与ツールの可変直径である。これは特に、コップ套管の材料に略平行であるカール付与ツールの供給方向を保証するために、中心縦軸に対して10°より大きいコップ套管の広い角度に対して特に有用である。
【0035】
本発明のさらなる特徴及び利点は、請求項中にかつ図面に関連した本発明の好適実施態様の以下の説明中に見出されることができる。種々の実施態様の個々の特徴はここでは本発明の範囲を越えることなく必要により互いに組合されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明による紙コップの第一実施態様の側面図を示す。
【0037】
【図2】図2は、本発明による紙コップの第二実施態様の側面図を示す。
【0038】
【図3】図3は、本発明による紙コップの第三実施態様の側面図を示す。
【0039】
【図4】図4は、本発明による紙コップの第四実施態様を示す。
【0040】
【図5】図5は、本発明による紙コップの第五実施態様を示す。
【0041】
【図6】図6は、本発明による紙コップの第六実施態様の断面図を示す。
【0042】
【図7】図7は、図6の紙コップの底縁の一部の拡大図を示す。
【0043】
【図8】図8は、互いに内側に積重ねられた図6による幾つかの紙コップの断面図を示す。
【0044】
【図9】図9は、図8の紙コップの一部の拡大図を示す。
【0045】
【図10】図10は、本発明による紙コップの第一実施態様の断面図を示す。
【0046】
【図11】図11は、図10の紙コップの一部の拡大図を示す。
【0047】
【図12】図12は、互いに内側に積重ねられた図10による幾つかの紙コップの断面図を示す。
【0048】
【図13】図13は、図12からの一部の拡大図を示す。
【0049】
【図14】図14は、本発明による紙コップの第八実施態様の断面図を示す。
【0050】
【図15】図15は、図14からの一部の拡大図を示す。
【0051】
【図16】図16は、紙コップを作るための本発明による装置を示す。
【0052】
【図17】図17は、第一工程工程時の図16からの装置を示す。
【0053】
【図18】図18は、第二工程工程時の図16からの装置を示す。
【0054】
【図19】図19は、第三工程工程時の図16からの装置を示す。
【0055】
【図20】図20は、第四工程工程時の図16からの装置を示す。
【0056】
【図21】図21は、紙コップを作るための本発明による方法による上部カールの造形時の四つのカール付与工程の全体の概略図を示す。
【0057】
【図22】図22は、第九実施態様による本発明による紙コップの断面図を示す。
【0058】
【図23】図23は、図22の紙コップの一部の拡大図を示す。
【0059】
【図24】図24は、紙コップを作るための本発明による装置のさらなる実施態様の一部の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1の図は、本発明による第一紙コップ10の側面図を示す。この紙コップ10は切頭体形状のコップ套管12を持ち、その図1の上方端上に上部カール14が形成される。図1の下方のその端部に、紙コップ10は見えない底を備えており、それは同様に見えない底縁の領域内でコップ套管に連結されている。コップ套管12はコップの中心縦軸16に対して略11°の角度αを持つ。この角度αは、図1の図では、一点鎖線により示された中心縦軸16と図1の右に画かれたコップ壁と同じ傾斜を持つ点線18との間に描かれている。
【0061】
図2の図は、本発明によるさらなる紙コップ20を示し、それは図1に示された紙コップとは中心縦軸16に対するコップ套管22の壁の傾斜のみが異なる。紙コップ20においてもまた、コップ套管22は切頭体形状及びその上部縁に造形された上部カールを持つ。コップ套管22の円錐角βは略15°である。
【0062】
コップ套管12,22の円錐角は10°より大きいかまたはそれに等しく(例えば紙コップ10では11°であり、紙コップ20では15°である)、紙コップ10,20のボウル状外観を確保し、かつまた紙コップ10,20のそれぞれの上部カール14により取り囲まれた比較的広い開口がそれにもかかわらず低い容積を備えることができることを確保する。加えて、コップ套管の比較的斜めに走る内壁が問題なくスプーンを使用して紙コップ10,20から食物を食べることを可能にすることに貢献する。広い開口、及びコップ壁と中心縦軸16との間の広い角度α,βがスプーンを用いて紙コップ12,20から食物を食べることを容易にする。従って、紙コップ10,20は特に食物、例えばヌードルスープ等の液体食物のために適している。
【0063】
図3の図は、本発明によるさらなる紙コップ24を示す。認められるように、紙コップ24は凸状設計のコップ套管を持ち、従ってその内部からの外向き膨らみを持つ。このタイプの凸状設計により、非常に魅力的なボウル状形状が得られる。
【0064】
図4の図は、コップ套管30が凹状に設計された本発明によるさらなる紙コップ28を示す。従って、コップ套管30はその内部に対して内向きに曲がって設計されている。このタイプの凹状コップ套管30は特に容易にかつ快適に手の中に保持されることができる。
【0065】
図5の図は、コップ套管34がS状形状の断面を持つ壁を持つ本発明によるさらなる紙コップ32を示す。認められるように、上部カール36のすぐ下で中心縦軸16に対してコップ套管によりとられる角度は、底縁40と上部カール36の間の中心領域38で中心縦軸16に対してコップ套管によりとられる角度より小さい。いずれにせよ、中心縦軸16に対して中心領域38でコップ套管34によりとられる角度は10°より大きいかまたはそれに等しく、紙コップ32の示された実施態様ではこの角度は略15°である。領域38の下にあるコップ套管34の領域、従って底のすぐ上及び下では、コップ套管34は中心縦軸16に対して再度領域38より小さい角度をとる。これは、断面平面が中心縦軸16を含む縦方向断面、または紙コップ32のシルエットを見ると、コップ套管34のS形状縁をもたらす。図5の中心軸16の右の壁を見るとき、コップ套管34は上部カール36から出発して、まず数学的に負の曲率を持って、すなわち時計回り方向に曲がって、または一般的に中心縦軸16から見たとき外向きにまたは凸状に曲がって走る。紙コップ32の高さの半分でかつ領域38の略中間で、コップ套管34の曲率はその進路を逆転し、次いで図5の右手壁を見るとき紙コップ32の底縁に対して下に、数学的には正の向きで、すなわちは反時計回り方向に曲がってまたは一般的に内向きにまたは中心縦軸16から見たとき凹状に曲がって走る。
【0066】
紙コップ32の視覚的に非常に魅力的なボウル形態の他に、このS形状のコップ套管によって、上部カール36または底縁40が造形されているそれらの領域内で中心縦軸16に対してコップ套管34によりとられる角度が中間領域38の角度より小さいことが達成される。結果として、上部カールの造形及び底縁40の造形は極めて容易にされる。なぜなら中心縦軸16に対してコップ套管34の増大する角度を持つと、コップ套管34の紙材料はよりきびしく伸張されまたは圧縮されなければならず、従って引裂きまたは波打ちの危険が増えるからである。紙コップ32のコップ套管34のS形状のおかげで、平坦なコップ壁を持つボウル状コップの視覚的印象は結果として達成され、それにもかかわらず上部カール36と底40の両者は増大した波打ちまたは紙材料の引裂きの懸念もなしに造形されることができる。
【0067】
図6の図は、本発明によるさらなる紙コップ42を断面で示す。紙コップ42は、底44のすぐ上に内向きに突出する全周凹所46を持つ。加えて、紙コップ42は、紙コップ42の残りに対して逆円錐形に設計されている底縁48を備えている。実際、コップ套管50は全周凹所46までは底44に向けて下向きに先細りになる切頭体形態を持つ。全周凹所46から底44のレベルまで、コップ套管は積重ね力を信頼性を持って移動するために円筒状に設計されている。底44から、コップ套管50は次いで下向き方向に広がる円錐形を持つ。結果として、底縁48もまた、底44からコップ42の最下方縁である縁48の下方縁まで広がる形態を持つ。底縁48の下方縁の外周はここでは全周凹所46の大きい方の直径よりわずかに小さい。底縁48の外径は同時に全周凹所46の小さい方の直径より大きく、従って信頼性ある積重ねの分離が底縁48により可能である。
【0068】
図8及び9に示されるように、幾つかの紙コップ42が結果として互いの内側に積重ねられることができ、そこでは各場合において上方のコップの底縁48はその下のコップの全周凹所46上に載る。図8及び9では互いの内側に積重ねられたコップのコップ壁は触れていないことが認められることができる。結果として、多数のコップ42が、積重ねられたコップが一緒に粘着する懸念なしに積重ねられることができる。
【0069】
従って、多数の積重ねられたコップ42であっても問題なく再び分離されることができる。
【0070】
図7の図に見ることができるように、底縁48の構造はより正確に認められることができる。底44は、略90°で下向きに曲がった全周底縁52を持つ。コップ套管50はその下方縁により180°だけ丸く折り曲げられ、このようにしてポケットを形成し、その内側に全周底縁52がほとんど完全に受け入れられる。コップ套管50はこのようにして全周底縁52の外側及び内側の両方と接触する。底縁52及びそれと接触しているコップ套管50のそれらの領域は、底44のコップ套管50への液密連結を保証するために互いに熱融着されまたは接着される。
【0071】
図10の図は、本発明によるさらなる紙コップ54を断面で示す。紙コップ54では、底縁56は紙コップ54の中心縦軸に対してコップ套管58と同じ角度である。従って、紙コップ54は図10の断面で上部カール60を除き完全な台形を示す。
【0072】
図11の図では、底縁56の構造が拡大して示されている。コップ套管58はその下方縁で180°だけ丸く折り曲げられ、底62の底縁は得られたポケット中に挿入されている。底縁56のこの領域内で互いに接触している紙材料層は、その全てが少なくとも一方側でプラスチック被覆されているが、いわゆる熱封止または融着により液密態様で互いに連結されている。
【0073】
図12の図は、断面で互いの内側に積重ねられた合計で五つの紙コップ54を示し、図13の図は、これらの積重ねられたコップの底領域を通る断面の拡大図を示す。各場合で最下方コップ縁はその下に配置されたコップのそれぞれの底62上に載ることが認められることができる。それぞれのコップ套管58と中心縦軸との間の広い傾斜角度のため、積重ねられたコップのコップ套管は触れない。結果として、多数の積重ねられたコップ54であっても互いに粘着せずかつ問題なく分離されることができる。
【0074】
図14の図は、断面でさらなる紙コップ64を示し、図15は、紙コップ64の底領域の拡大図を示す。
【0075】
図14及び15から、コップ套管66が内向きに180°だけ折り曲げられたその領域68内に幾つかのいわゆる切り込み70を備えていることが認められることができる。これらの切り込み70は、各場合において、材料中に突出する三角形の一つの先端を持つ三角形で設計されている。これらの切り込み70は、底縁を形成するための折り曲げ時にコップ套管66の材料の圧縮を容易にする。特に切り込み70は中心縦軸とコップ套管66の間の広い角度の場合であっても、底縁の領域内で発生する紙材料の過剰な波打ちまたはしわさえも防ぐことができる。
【0076】
しかしまた、三角形切り込み70は底縁の高さの半分だけ延びることが認められることができる。従って、切り込み70の下に、底72のコップ套管66に対する信頼性ある液密連結を保証するためにコップ套管66と底72の間の全周及び完全な封止のための十分に大きな材料部分が利用できる。
【0077】
図16〜20の図は、本発明によるコップ74上への上部カールの造形の幾つかの工程を示す。上部カールの造形のための装置は切頭体形状の内部表面を持つ保持リング76を持ち、その内部表面の傾斜角度は紙コップ74のコップ套管の傾斜角度に正確に一致している。保持リング76は、その上方縁に断面が略半円形の全周溝78を持つ。上部カールの造形時に既に底72を備えた紙コップ74を保持リング76の内側に確実かつ不動に保持するために、上からコップ74中に挿入される保持パンチ80が設けられている。保持パンチ80は円盤状切頭体形状を持ち、それはまた、紙コップ74の傾斜角度に一致している。保持パンチ80は円盤状切頭体に対して中心に案内棒を備えている。円盤状第一カール付与ツール82はこの案内棒上で紙コップ74の中心縦軸に平行に紙コップ74の上方縁84に供給されることができるように案内される。第一カール付与ツール82は、紙コップ74に面するその側面に略半円形断面を持つ全周カール付与溝86を備えている。紙コップ74から見ると、円錐壁87はカール付与溝86に変わり、そこでは円錐壁87の傾斜角度は紙コップ74のコップ套管の傾斜角度に相当する。
【0078】
上方縁84の第一カール付与工程は図17に示される。第一カール付与ツール82は、第一カール付与ツール82のカール付与溝86内の上方縁84が略180°だけ丸く曲げられ、今やコップ底72の方向に下向きに向くまでコップ74の上方縁84に供給される。上方コップ縁84のまたはそれに隣接したコップ套管の領域の脱出はここではカール付与溝86に変わる第一カール付与ツール82上の円錐壁87により防がれる。加えて、コップ套管の脱出は保持パンチ80及び保持リング76により防がれる。
【0079】
図18の図は、第二カール付与ツール88による第二カール付与工程の実施後の紙コップ74を示す。紙コップ74はこの第二カール付与工程時もまた保持リング76及び保持パンチ80により変わらずに保持される。第二カール付与ツール88は第一カール付与ツール82とはそのより深く切り込まれたカール付与溝90の点で異なる。カール付与溝90により、略180°だけ既に丸く折り曲げられた紙コップ74の上方縁84は略さらに90°だけ折り曲げられる。第二カール付与ツール88もまた、紙コップ84の中心縦軸に対して平行に既に部分的にカール付与された上方縁84上に供給される。
【0080】
図19の図は、上部カールを形成するための第三カール付与工程を示す。紙コップ74はここでは保持リング76により保持されるが、そこでは第一保持パンチ80よりわずかに小さい外径を持つ第二保持パンチ92が紙コップ74を内方から保持リング76に対して押圧するために使用される。第二保持パンチ92の切頭体形状の円盤のより小さな直径のおかげで、第二保持パンチ92は保持リング76の上方縁の下にあり、従って第三カール付与ツール94はさらに保持リング76の方向に供給されることができる。第三カール付与工程に対しても第三カール付与ツール94の代わりに第二カール付与ツール88を使用することも可能である。しかし、カール付与ツール94の保持リング76の方向へのさらなる供給を可能にするために異なる保持パンチが使用されなければならない。
【0081】
紙コップ74の上方縁84は、図19に示された第三カール付与工程によりさらに90°丸く折り曲げられる。第三カール付与工程の完了後に、上方コップ縁84はこのようにして略360°だけ折り曲げられている。
【0082】
図20の図は、第四の最終カール付与工程を示し、そこでは上部カール96が完成される。そうするために、第四カール付与ツール98が使用され、それはカール付与ツール82,88及び94とはカール付与溝の異なる設計により区別される。しかし、第四カール付与工程でもまた、紙コップ74は保持リング76及び第二保持パンチ92により保持される。第四カール付与ツール98は今や上部カールが保持リングの全周溝78の内側にその下方領域を持つまで紙コップ74の上方縁84に向けて供給される。上部カール96はこれにより上から第四カール付与ツール98のカール付与溝によりかつ下から保持リング76の溝78により造形される。
【0083】
第四カール付与工程の完了後に、上部カール96が紙コップ74上に完成される。
【0084】
図21の図は、四つの個々のカール付与工程時の紙コップ74の上方縁84を概略的に示す。説明したように、上方縁84は位置100の第一カール付与工程後に略180°だけ丸く折り曲げられる。位置102に示された第二カール付与工程後に、上方縁84はさらに90°だけ丸く折り曲げられる。位置104で示された第三カール付与工程後に、上方縁84はさらに90°だけ丸く折り曲げられ、こうしてその初期位置から見たとき全体で略360°だけ丸く折り曲げられる。位置106で示された最終第四カール付与工程後に、そこでは90°だけのさらなるカール付与操作が起こるが、上部カール96がそのとき完成し、全体で略450°の角度を持つカールを示す。
【0085】
本発明によれば、上方縁にできるだけ接近したコップ74の上方領域のつかみとともに、上部カールの形成を幾つかの工程、例えば四工程に分割したおかげで、コップ壁の広い傾斜角度にもかかわらず上部カールを形成することが可能である。上方コップ領域の膨らみまたはゆがみはここでそれぞれのカール付与ツールに合ったコップ74の可変つかみによりかつ個々のカール付与工程に異なるカール付与ツールを少なくとも部分的に使用することにより防がれる。
【0086】
図22の図は、本発明によるさらなる紙コップ106を示す。図14の紙コップ64と違って、紙コップ106では上部カール108は第四カール付与工程の終了後に平坦に押圧される。これはまた、図23の一部の拡大された図中に容易に認識されることができる。上部カール108の平坦押圧に加えて、上部カール108の個々の層は互いに熱的に封止されている。平坦押圧及び封止の後、全周表面110がこのようにしてコップの上部に設けられ、この表面に対して例えばコップ開口を閉じるためのダイヤフラムが融着または接着されることができる。
【0087】
図24の図は、本発明による紙コップ114上に上部カールを形成するための装置112を概略的に示し、それは同様にその上方縁領域のある部分でのみ示されている。紙コップ114は、示された保持パンチ116によりかつ同様に示された保持リング118によりその上方縁のすぐ下に保持される。カール付与ツール120は幾つかの部片122,124を持ち、それらは紙コップ114の上方縁に面するそれらの側面上にそれぞれ半円形の断面の溝を備えている。部片122,124はそれぞれ紙コップ114の上方縁のただ一部分にカール付与することを意図されている。しかし、カール付与ツール120の部片への分割のおかげで、各場合に個々の部片122,124を紙コップ114の壁の傾斜に平行に供給することが可能である。部片124の例を用いると、これは部片124の紙コップ114に向けての供給方向を象徴する矢印126により示される。そのコップ壁に平行に、紙コップ114の紙材料は比較的高い剛性を持ち、従って紙コップ114上の上部カールは紙コップ114の上方縁のいかなるゆがみまたは膨らみの懸念を持つこともなく形成されることができる。上部カールの形成はこの方法では単一工程でまたは紙コップ114の中心縦軸に平行なカール付与ツールの供給によるより少ない部分工程でより容易に可能である。
【0088】
従って、カール付与ツール120は、個々の部片122,124に分割されているおかげで、可変直径のカール付与溝を持つ。カール付与ツール129の部片122,124の完全な供給後に、部片122,124はそれらの側壁により接触状態にあることができかつカール付与溝の閉じられた完全な円を形成することができる。重大な因子は、個々の部片122,124の供給が紙コップ114の上方縁の傾斜角度に略平行に起こることである。というのもそのとき紙コップ114の上方縁はカール付与ツールの上方縁への非平行供給の場合に許容されるよりさらに保持パンチ116及び保持リング118を越えて突出することができるからである。これは、カール付与ツールの非平行供給によれば、カール付与ツールの使用時にねじれたりまたは膨らむ紙コップ114の上方領域の傾向が図24に示される矢印126により示されたカール付与ツール120の平行供給によるより実質的により大きいからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コップ套管とコップ套管に本質的に液密態様で連結された底とを持つ紙コップにおいて、コップ套管が、底と底に対向する端部との間の少なくともある部分で紙コップの中心縦軸に対して10°より大きいかまたはそれに等しい角度、特に10°〜25°の角度で配置されることを特徴とする紙コップ。
【請求項2】
コップ套管が、底と底に対向する端部との間の少なくともある部分でコップの内部から見たときに外向きに曲がっていることを特徴とする請求項1に記載の紙コップ。
【請求項3】
コップ套管が、底と底に対向する端部との間の少なくともある部分でコップの内部から見たときに内向きに曲がっていることを特徴とする請求項1に記載の紙コップ。
【請求項4】
コップ套管が、コップ套管が底の領域内及び底に対向する端部の領域内で中心縦軸に対して中心部分より低い角度であるようにS形状断面を持って設計されていることを特徴とする請求項1に記載の紙コップ。
【請求項5】
コップ套管が全周縁により底に液密態様で連結され、縁がコップ套管の下方縁領域を底縁周りにまたは底の下方縁領域をコップ套管の下方縁周りに折り曲げることにより形成されること、及びコップ套管の下方縁領域または底の下方縁領域が紙材料の切り込みを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の紙コップ。
【請求項6】
切り込みが底の下方縁からまたはコップ套管の下方縁から縁の高さの半分を越えないところまで延びることを特徴とする請求項5に記載の紙コップ。
【請求項7】
コップ套管がコップの内部中に突出する全周凹所を備えており、縁の下方縁が、縁の下方縁の外周が凹所の大きい方の直径より小さいかまたはそれに等しくかつ凹所の小さい方の直径より大きいような寸法をしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の紙コップ。
【請求項8】
コップ套管と底とを持つ紙コップを作る方法であって、コップ套管が底に対向するコップ套管の端部に形成された上部カールを持つものにおいて、底と底に対向する端部との間の少なくともある部分でコップ套管を紙コップの中心縦軸に対して10°より大きいかまたはそれに等しい角度、特に10°〜25°の角度で配置することを特徴とする方法。
【請求項9】
上部カールを少なくとも二つのカール付与工程で形成し、そこではコップ套管がカール付与工程時に少なくとも部分的に保持装置により異なる方法でつかまれることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上部カールを形成するために四つのカール付与工程が設けられることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
各カール付与工程で最大180°のカールが与えられることを特徴とする請求項8,9または10に記載の方法。
【請求項12】
第一カール付与工程で180°のカールが与えられ、続くカール付与工程で約90°のカールが与えられることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コップ套管を保持リング内に取り上げ、保持パンチをコップ套管中に動かしてコップ套管を保持リングと保持パンチの間でつかみ、そしてカール付与ツールをコップ套管の上方縁に適用することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
コップ套管と底とを持つ紙コップを作るための装置であって、コップ套管が底に対向するコップ套管の端部に形成された上部カールを持つものにおいて、底と底に対向する端部との間の少なくともある部分でコップ套管を紙コップの中心縦軸に対して10°より大きいかまたはそれに等しい角度、特に10°〜25°の角度で配置するための手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項15】
コップ套管の上方縁の少なくともある部分に上部カールの形成のための少なくとも一つのカール付与ツールの供給のための手段が設けられ、その供給方向がカール付与ツールにより加工されるコップ套管の上方縁領域の部分に略平行であることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
カール付与ツールがコップ套管の上方周囲の上に複数の部片を持ち、それらの部片のそれぞれはそれぞれの部片により加工されるコップ套管の上方縁領域の部分に略平行に動くことができるように配置されていることを特徴とする請求項15に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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