説明

紙コーティングでの使用のためのビニルアルコールとイタコン酸との共重合体

本発明は、紙の表面をコーティングするために有用な組成物であって、40重量%未満の水を含み、かつ、少なくとも約95%加水分解されているポリビニルアルコール共重合体より本質的になる水溶液であるコーティング組成物、ならびにその調製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙コーティングでの使用のためのポリビニルアルコール共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
コート紙の製造方法では、紙コーティングがコート紙を得るために紙製品の表面に塗布される。紙コーティングは、ポリビニルアルコールをはじめとする様々な成分を含むことができる。他の成分には、炭酸カルシウム、カオリン種の含水ケイ酸アルミニウムまたは含水シリカ粘土のような粘土、二酸化チタン、沈降硫酸バリウム、リトポン、および硫化亜鉛が含まれてもよい。通常の紙コーティング組成物の他の成分には、例えば、鉱物顔料、顔料バインダー、増粘剤、潤滑剤、および滑剤が−すべて様々な割合で含まれ得る。コート紙を製造するために使用される紙コーティングは、高百分率の固形分を含むことができ、かかる固形分レベルは70%に迫ることができる。ポリビニルアルコールは、クリアコートとして、およびまたコート紙でラテックスと共にコバインダーとしても使用することができる。典型的には紙コーティング用途でポリビニルアルコールは、他の成分を典型的に含む水性組成物として使用され、塗布される。コート紙のより効率的な製造のために高固形分紙コーティングを使用することは望ましいことであり得るし、多くの場合望ましい。
【0003】
しかしながら、ポリビニルアルコール(PVA)は30%固形分より多い水溶液として調製することが困難であり、かつ、このレベルの上ではポリビニルアルコールを水に分散させることは非常に困難になり、生じた溶液粘度は非常に高くなる。この程度の溶液を均一に得るために、PVAを含む水性混合物は完全な溶液を達成するべく典型的には加熱され、または「煮炊き」され、生じたPVA溶液が次に紙コーティング組成物に加えられる。紙コーティング用途で、PVA水溶液を配送するために必要とされる水の量は、紙コーティング組成物では有害であり、または少なくとも望ましくない。紙コーティング用途にとってはできるだけ少ない水を使用することがはるかに好ましく、結果として70%以上の水を有する混合物は紙コーティング用途では望ましくない。ポリビニルアルコールを水に溶解させることの困難さは、コーティングの塗布工程で問題を引き起こし得る。例えば、PVAがコーティング混合物中へ分散されて不溶PVAで紙表面上に均一に分配されることの困難さは存在し得る。
【0004】
米国特許公報(特許文献1)は、0.01〜1μmの平均粒径を有するPVAを用いて調製することができる紙コーティング剤としての微粒子PVAスラリーを記載している。該明細書に記載されるPVAスラリーは、スラリーとして紙に塗布された時に有用であると言われており、ここで、PVAは冷水に実質的に不溶であり、その後乾燥工程中に溶解して紙の表面上にフィルムを形成する。
【0005】
米国特許公報(特許文献2)は、追加の水なしに紙コーティング組成物に加えることができ、それによって紙コーティング組成物中の水の量を増やすのを回避する、部分的に加水分解されているPVAを記載している。しかしながら、部分的に加水分解されたPVAよりもむしろ十分に加水分解されたPVAを使用することは望ましいことであり得る。米国特許公報(特許文献2)に記載されるものより高分子量のPVAポリマーを使用することもまた望ましいことであり得る。これらの差異のそれぞれは、水中のPVAの溶解度を下げ、こうして乾燥PVAを高固形分紙コーティング組成物に溶解させる能力を無効にし得る。部分的に加水分解されたPVAが十分に溶解するための時間を与えられない場合には、コーティングまたはコート紙の品質問題に遭遇し得ることもまた認められる。
【0006】
米国特許公報(特許文献3)は水溶性PVA共重合体フィルム組成物を記載している。
【0007】
比較的高い重合度を有する十分に加水分解されたPVAを高固形分紙コーティング組成物に溶解させることは望ましいことであり得る。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,527,852号明細書
【特許文献2】米国特許第5,057,570号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0186034号明細書
【非特許文献1】ティ.モリタニ(T.Moritani)およびジェー.ヤマウチ(J.Yamauchi)著、ポリマー(Polymer)、39巻(1998)、553−557ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、紙の表面をコーティングするために有用な組成物であって、コーティング組成物が40重量%未満の水を含み、かつ、少なくとも約95%加水分解されているポリビニルアルコール共重合体より本質的になる水性組成物である組成物である。
【0010】
別の態様では、本発明は、高固形分PVA含有紙コーティング組成物の調製方法であって、少なくとも約1モル%のイタコン酸をコモノマーとして含むPVA共重合体を乾燥固体成分として加える工程と、PVA共重合体を完全に溶解させる工程とを含む方法である。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、高固形分PVA含有紙コーティング組成物の調製方法であって、少なくとも約8モル%未満のイタコン酸をコモノマーとして含む三元重合体であるPVA共重合体を乾燥固体成分として加える工程を含む方法である。
【0012】
別の態様では、本発明は、ビニルアルコール、アクリル酸メチル、およびイタコン酸部分を含む三元重合体組成物であって、(i)三元重合体が約5モル%未満の酢酸ビニル部分を含み、(ii)アクリル酸メチル小部分が少なくとも約1モル%から約9モル%までの量で存在し、(iii)イタコン酸が少なくとも約1モル%から約9モル%までの量で存在し、かつ、(iv)アクリル酸メチルがラクトンの形にある組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一実施形態では、本発明は、十分に加水分解されたPVAを含む高固形分紙コーティング組成物である。本発明の目的のためには、「高固形分」は、用語が本明細書で用いられるところでは、固体材料を水に溶解させるまたは分散させることによって調製され、かつ、水が25℃および1気圧で液体である唯一の成分である水性組成物を意味するものとする。本発明の高固形分コーティング組成物は、約40重量%未満の水を含むものである。本発明の実施に際してはできる限り少ない水を使用することが望ましいことであり得るので、組成物がコーティング組成物の水相に完全に溶解している十分に加水分解されたPVA共重合体を含むという条件で、総コーティング組成物の約40重量%未満である任意の水の量が望ましい。
【0014】
本発明のコーティング組成物は、完全には溶解していない従ってコーティング懸濁液、スラリー、または分散系を与える、例えば、鉱物および顔料のような他の材料を含むまたは本質的にそれらからなることができる。本発明の目的のためには、懸濁液、スラリー、または分散系は何の区別もされず、それぞれは用語「コーティング組成物」に含まれると考えられるであろう。
【0015】
本発明のコーティング組成物は、紙コーティング用途での使用について公知であり慣習的である他の成分をさらに含むことができる。例えば、顔料、鉱物、フィラー、pH調節剤、界面活性剤、ラテックス、または染料(それらのいかなるものも紙コーティング用途に慣習的であると考えることができる)は、本発明の実施に際して有用であると考えられる。
【0016】
本発明のコーティング組成物は、PVA固形分をコーティングの鉱物部分の約20重量%まで含むことができる。一実施形態では、本発明のPVA固形分は、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合、引き続きPVA/酸共重合体をもたらすためのアセテート部分の完全な加水分解によって得られる共重合体より本質的になるPVA/酸共重合体である。本発明の目的のためには、完全な加水分解はアセテート部分の少なくとも約95%の加水分解を意味するものとする。好ましくは、コーティング組成物は顔料の重量に対して約0.5%〜約20重量%のPVA固形分を含む。より好ましくは、コーティング組成物は約1%〜約2重量%のPVA固形分を含む。
【0017】
本発明のPVA共重合体は、公知の通常の方法によって得ることができる。PVAは典型的には、酢酸ビニルモノマーの重合、引き続くビニルアルコールポリマーへの酢酸ビニルポリマーの転化によって得られる。PVA共重合体は1つまたは複数の追加のモノマーを酢酸ビニルと共に重合器へ導入することによって得られ、従って該用語は二元共重合体、三元重合体、および/またはより高度の共重合体を含む。三元重合体は3つのモノマーの共重合によって得られる。
【0018】
本明細書で用いるところでは、用語完全な加水分解は十分な量の試薬が加えられて、ポリ酢酸ビニル共重合体のアセテート基の少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約97%、最も好ましくは少なくとも約99%を転化することを意味するものとする。本発明のPVA共重合体は、他のカルボン酸またはカルボン酸エステル官能基を含んでもよい。かかる共重合体で、ビニルアルコール部分は酸またはエステル基と反応してラクトン官能基を形成することができる。それ故、本発明の実施に際して、PVA加水分解の程度は、ビニルアルコールおよび/またはラクトン構造のどちらかまたは両方の存在によって表示される。本発明のPVA共重合体は、幾らかの残存する非加水分解アセテート部分を含むことができる。好ましくは、本発明のPVA共重合体は約5モル%未満、より好ましくは約3モル%未満、最も好ましくは約1モル%未満の残存アセテート部分を含む。
【0019】
本発明のPVA/酸共重合体は約1モル%〜約10モル%のイタコン酸を含む。好ましくは、PVA酸共重合体は約2〜約8モル%のイタコン酸、最も好ましくは約3〜約6モル%のイタコン酸を含む。
【0020】
PVA酸共重合体の重合度は約400〜約4000である。好ましくは、PVA共重合体の重合度は約500〜約2000である。
【0021】
別の実施形態では、本発明のPVA酸共重合体は、ビニルアルコールおよびイタコン酸成分を含み、アクリル酸単位かアクリル酸メチル単位かのどちらかである第2酸ポリマー成分をさらに含む三元重合体である。本発明のPVA混合酸三元重合体は幾つかのケースでは好ましいものであり得る。本発明の目的のためには、イタコン酸の機能性同等物には、イタコン酸のモノ−および/またはジエステルが含まれ得る。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、完全に加水分解されたPVA酸共重合体からの高固形分水性紙コーティング組成物の調製方法である。本発明の実施に際して、完全に加水分解されたPVA酸共重合体は、乾燥固体として水に加えることができ、またはあるいはまた、40重量%未満の水を含むPVA紙コーティング水溶液を提供するであろう任意のやり方で加えることができる。本発明の実施に際して、加熱工程は本明細書に記載されるPVA酸共重合体の効果的な溶解に必要とされない。
【0023】
PVA紙コーティング溶液組成物は約30℃未満の温度で調製することができる。具体的には、紙コーティング組成物は約15℃から約30℃の温度までおよびそれを含む温度で調製することができる。好ましくは、紙コーティング組成物は約18℃〜約30℃の温度で調製することができる。
【0024】
本発明の方法は、高固形分紙コーティングの調製方法で公知であるおよび/または慣習的である様々な他の工程または手順を含むことができる。組成物の混合または分散のような工程は慣習的であると考えられる。
【0025】
さらに別の実施形態では、本発明は、コート紙を含む物品であって、紙がPVA酸共重合体のコーティングを含み、共重合体がイタコン酸を含む物品である。
【0026】
さらに別の実施形態では、本発明は、三元重合体がビニルアルコール、アクリル酸アルキル、およびイタコン酸部分を含むポリビニルアルコール三元重合体組成物である。三元重合体は少なくとも約90モル%のビニルアルコールを含む。好ましくは、ビニルアルコールは少なくとも約91モル%の量で存在し、より好ましくは、ビニルアルコールは少なくとも約92モル%、最も好ましくは少なくとも約94モル%の量で存在する。三元重合体は少なくとも約1.0モル%から約9モル%までの量でイタコン酸をさらに含み、アクリル酸アルキルは少なくとも約1モル%から約9モル%までの量で存在する。
【0027】
イタコン酸の同等物は本発明の実施に際して有用であることができる。例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)は、本発明の実施に際してイタコン酸と同様に使用することができる商業的に入手可能なモノマーである。PVA/AMPS共重合体の製造は(非特許文献1)に記載されている。本発明の三元重合体は、共重合反応にアクリル酸アルキルを含めることによって得ることができる。AMPSの塩形が本発明の実施に際して好ましくは使用され、ナトリウム塩(SAMPS)が使用に好ましいが、任意の有機塩形も本明細書での使用に十分であろう。SAMPSのようなAMPS塩は1〜7モル%、好ましくは2モル%〜6モル%、最も好ましくは3モル%〜5モル%の量で含まれ得る。
【0028】
本発明の実施に際して使用に好適なアクリル酸アルキルは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を含む。かかるアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソ−ブチル、n−ブチル、およびt−ブチルをはじめとするブチル異性体、ならびにペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルアルキル基の異性体よりなる群から選択することができる。好ましくは、アルキル基は1〜4個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有し、最も好ましくは、アルキル基はメチルである。
【0029】
本明細書に記載されるような三元重合体組成物は、約25℃未満またはそれに等しい温度で冷水溶液に可溶である。理論に縛られることなく、三元重合体は、酸またはカルボキシレート形でよりもむしろラクトン形で本質的に存在するアクリル酸アルキルを含む。本発明の組成物で、イタコン酸は、三元重合体の化学的環境に依存して、酸、塩、ラクトン、またはこれらの形の任意の組合せのような様々な形で存在することができる。様々な化学的条件下で形を変える三元重合体の能力は本明細書では熟慮されており、本明細書に記載されるおよび実施されるような今特許請求される本発明の機能を無効にしない。
【実施例】
【0030】
実施例は例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
これらの実施例、比較例番号は表1に対応する。
【0034】
(比較例1(C1))
非コート原紙を輝度、白色度、ハンター色(Hunter Color)、およびTAPPI(パルプ製紙業界技術協会)蛍光(Fluorescence)について試験し、表1に示す結果を与えた。
【0035】
(比較例2(C2))
コーティングを、ベースシートに塗布されるいかなるポリビニルアルコールも蛍光染料もなしに作った。
【0036】
(比較例3(C3))
非コート原紙基材の表面を、蛍光染料およびCMC入りだがポリビニルアルコール促進剤なしの表2に記載するコーティングで12g/mでコートした。コート紙を輝度、白色度、色、および蛍光について試験し、表1に示す結果を与えた。
【0037】
(比較例4(C4))
さらに百部当たり1.0部のセルボル(Celvol)203S溶液が混合物に含まれたことを除いては比較例C3の方法を繰り返した。
【0038】
(比較例5(C5))
さらに百部当たり1.5部のセルボル203S溶液が混合物に含まれたことを除いては比較例C3の方法を繰り返した。
【0039】
(比較例6(C6))
さらに百部当たり2.0部のセルボル103溶液が混合物に含まれたことを除いては比較例C3の方法を繰り返した。
【0040】
(実施例1)
さらに百部当たり1.0部の6.4モル%イタコン酸共重合体、60%中和が混合物に乾燥状態で加えられたことを除いては比較例C3の方法を繰り返した。
【0041】
(実施例2)
さらに百部当たり1.0部の4.2モル%イタコン酸共重合体、60%中和が乾燥成分として混合物中に含まれたことを除いては比較例C3の方法を繰り返した。
【0042】
(実施例3)
さらに百部当たり1.0部の1.8モル%イタコン酸共重合体、40%中和が混合物に乾燥状態で加えられたことを除いては比較例C3の方法を繰り返した。
【0043】
(実施例4)
さらに百部当たり1.0部の2.7モル%イタコン酸、2.9モル%アクリル酸メチル共重合体、30%中和が混合物に乾燥状態で加えられたことを除いては比較例C3の方法を繰り返した。
【0044】
(実施例5)
2Lポリマー反応釜を、オーバーヘッド撹拌機、2つのシリンジポンプおよびNバブラーにさらに取り付けられたタップ−HO冷却器に連結されたマルチ入口付属品付きクライゼン(Claisen)ヘッド、熱電対デバイス付きオーバーヘッド・サーモウェルならびにセプタムで組み立てた。かき混ぜ機は単一PTFE櫂であり、撹拌速度は80rpmにセットした。反応釜に1000gの酢酸ビニル(アルドリッチ・ケミカル社、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI,USA))、401gのMeOH(イーエム・サイエンス(EM Science))、1.5gのイタコン酸(アルドリッチ)、および0.6gのアクリル酸メチル(アルドリッチ)をチャージし、次にスパージング管を使って室温で20分間脱ガスした。反応釜を次に油浴で還流(約65℃)に加熱した。シリンジポンプ#1にニートのアクリル酸メチルをチャージした。シリンジポンプ#2にMeOH中のイタコン酸の24.7重量%溶液をチャージした。100gのMeOHに溶解した2gのヴァゾ(VAZO)−64(本願特許出願人)を反応器に加えた。シリンジポンプ#1を次に作動させて0.0262cc/分でフィードし、シリンジポンプ#2を作動させて0.46cc/分でフィードした。重合液を159分間還流させ、次に80gのMeOH中の亜硝酸ナトリウム(アルドリッチ)の溶液を一度に加えて重合を停止させた。固形分はこの時点で17.8%であると測定された。ポリマーはこうして4.1モル%イタコン酸および1.6モル%アクリル酸メチルである。ポリ酢酸ビニル三元重合体を3Lの丸底フラスコに移した。フラスコをロータリー・エバポレーターに取り付け、MeOH/酢酸ビニル共沸物を減圧で除去した。500gのMeOHの添加、それに続く共沸蒸留を3回繰り返し、その時点で酢酸ビニルの除去は実質的に完了したと判断された。ポリ酢酸ビニルを700gのMeOHに溶解させ、1ガロン防爆ステンレススチール・ブレンダー(エバーバッハ社、ミシガン州アン・アーバー(Eberbach Corp.,Ann Arbor,MI))にチャージした。ブレンダーを10,000rpmで撹拌するようにセットし、次にメタノール中の430gの25重量%ナトリウムメトキシド(アルドリッチ)をブレンダーのカバー中の小さな穴を通して加えた。生じた不均一混合物を10分間撹拌し、次に143gの氷酢酸(イーエム・サイエンス)をゆっくり加えた。混合物を2分撹拌し、次に濾過した。ポリマー生成物をMeOHで3回、アセトンで1回リンスし、次に真空オーブン中80℃で一晩乾燥させた。151gの白色三元重合体粉末を単離した。粘度は21.8mPa−秒(cP)であると測定された(4%固形分水溶液がホエップラー落球法(Hoeppler falling ball method)で20℃(68°F)で測定されて)。ポリマーのATRモードでの赤外分析は、1745cm−1にラクトンカルボニル・ピーク、1705cm−1に酸カルボキシル、および1572cm−1にカルボン酸ナトリウムの存在を示した。
【0045】
(実施例6〜10)
実施例6〜10は、重合時間が175分であり、イタコン酸(IA)およびアクリル酸メチル(MA)のプレチャージおよびフィード速度を表3に示されるように加減したことを除いては、実施例5について記載するのと同じように製造した。
【0046】
(実施例11)
実施例11のイタコン酸共重合体は、容器に1.41gのIAおよび1.46gのMAをプレチャージし、次にIA:MA:MeOHの21.3:14.4:64.3溶液の混合物を0.393cc/分で163分間フィードすることによって製造した。
【0047】
(実施例12〜14)
実施例12〜14のイタコン酸共重合体は、重合をそれぞれ175、134、および159分後に停止させたことを除いては実施例5に記載されたように製造した。実施例1および2の共重合体は、IAコモノマーをそれぞれ6.4および4.2モル%コモノマーを与えるための速度でフィードして、20リットル規模で製造した。
【0048】
【表3】

【0049】
(実施例15)
ポリマーの溶解性試験
樹脂の冷水溶解性は、20mLバイアルに50mgのポリマー、磁気撹拌バー、および3.0mLの脱イオン水をチャージすることによって測定した。混合物を22〜25℃で撹拌し、ポリマーの>95%が溶解するまでの時間を測定した。結果を表4にまとめる。
【0050】
C7は、>99%加水分解された、17〜23cP粘度の5〜6モル%アクリル酸メチル・ポリビニルアルコール共重合体である。
【0051】
C8は、冷水に可溶であり、セルボル203Sに同等である、約88%加水分解された、商業的に入手可能なポリビニルアルコールホモポリマーである。
【0052】
C9は、27〜33cP粘度の>99%加水分解されたポリビニルアルコールホモポリマーである。
【0053】
アクリル酸メチル共重合体またはホモポリマーは冷水に可溶ではない。
【0054】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙の表面をコーティングするために有用な組成物であって、該コーティング組成物が40重量%未満の水を含み、かつ、少なくとも約90モル%のビニルアルコールと約1〜約10モル%のイタコン酸とを含むポリビニルアルコール(PVA)酸共重合体を含む水性コーティング組成物であり、該共重合体が約5モル%未満の残存酢酸ビニル部分を含み、そして該PVA共重合体が該コーティング組成物の水相に完全に溶解していることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記PVA酸共重合体が約1モル%〜約9モル%のイタコン酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PVAが約3モル%未満の残存酢酸ビニル部分と約2モル%〜約8モル%のイタコン酸とを含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記PVAが約1モル%未満の残存酢酸ビニル部分と約3モル%〜約6モル%のイタコン酸とを含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記PVA共重合体が約1モル%〜約9モル%のイタコン酸と約1モル%〜約9モル%のアクリル酸アルキルとを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記PVA共重合体が約2モル%〜約8モル%のイタコン酸と約1モル%〜約9モル%のアクリル酸アルキルとを含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記PVA共重合体が約3モル%〜約6モル%のイタコン酸と約1モル%〜約9モル%のアクリル酸アルキルとを含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記コーティング組成物が40重量%未満の水を含み、かつ、少なくとも約90モル%のビニルアルコールと約1〜約10モル%のイタコン酸とを含むポリビニルアルコール(PVA)酸共重合体を含む水性コーティング組成物であり、該共重合体が約5モル%未満の残存酢酸ビニル部分を含み、そして該PVA共重合体が該コーティング組成物の水相に完全に溶解している紙コーティング組成物の調製方法であって、少なくとも約1モル%のイタコン酸をさらに含むPVA共重合体を乾燥固体成分として加える工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
(1)少なくとも約1モル%のイタコン酸を含むPVA/イタコン酸共重合体を乾燥固体成分として水性コーティング組成物に加えることによって高固形分PVA含有紙コーティング組成物を調製する工程と、(2)水性PVA含有紙コーティングを紙物品の表面に塗布する工程とを含むことを特徴とする紙物品のコーティング方法。
【請求項10】
ビニルアルコール、アクリル酸メチル、およびイタコン酸部分を含む三元重合体組成物であって、(i)該三元重合体が約5モル%未満の酢酸ビニル部分を含み、(ii)該アクリル酸メチル・コモノマーが少なくとも約1モル%から約9モル%までの量で存在し、(iii)該イタコン酸コモノマーが少なくとも約1モル%から約9モル%までの量で存在し、かつ、(iv)該三元重合体のアクリル酸メチルがラクトンの形で存在することを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の共重合体組成物を含むことを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の水溶性フィルムを含むことを特徴とする物品。
【請求項13】
請求項10に記載の組成物を含むことを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項14】
請求項13に記載の水溶性フィルムを含むことを特徴とする物品。

【公表番号】特表2007−514075(P2007−514075A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545397(P2006−545397)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/042156
【国際公開番号】WO2005/059248
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】