説明

紙及び板紙用のASAサイジングエマルジョン

ASAサイジングエマルジョン、並びにでんぷん及びアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマーを含有するエマルジョン剤、並びにASA及び陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との共界面活性剤ブレンドを含有するASAブレンドが記載される。紙製品を該エマルジョンでサイジングする方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニル無水コハク酸(ASA)のエマルジョン、並びに紙及び板紙をサイジングするための該エマルジョンの使用に関する。本発明は、少なくともでんぷん及びアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマーを含有するASAエマルジョン剤に関する。また、本発明は、少なくとも陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との共界面活性剤(co-surfactant)ブレンド及びASAを含有するASAブレンド調合物に関する。ASAブレンドをASAエマルジョン剤と合わせて、ASAサイジングエマルジョンを形成することができる。
【0002】
本願は、2007年5月9日付で出願された先の米国仮特許出願第60/928,388号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
紙及び板紙の製造では、水溶液の浸透に対する耐性が向上した製品を得るために、或る特定のサイジング剤が使用されてきた。或る特定のASAエマルジョンを紙のサイジングに使用することは、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5に記載されている。ASAエマルジョンは製紙業において広く使用されているが、現在のASAサイジングエマルジョンには幾つか欠点がある。例えば、ASA材料は水溶性ではないため、該材料をパルプ繊維と十分に接触させて最終紙製品で所望のサイジング効果を達成するためには、紙パルプ中に均一に懸濁しなければならない。ASAは油性材料であり、サイジング剤として使用する前に或る時点で乳化しなければならない。この欠点に対処し、より有効なサイジングを得るために様々なカチオン性薬剤が採用されている。特許文献6は、ASAサイジング剤の乳化をもたらすための、カチオン荷電水溶性ビニル付加重合体及びカチオン荷電水溶性ビニル縮合重合体の使用に関する。特許文献7は、乳化剤としてカチオン性水溶性ポリマー及びカチオンでんぷんを用いたASAサイジングエマルジョンを記載している。該ポリマーは、水溶液系において、ASA液滴(粒子サイズ)がエマルジョン中に分散するのを助け、且つASA液滴が凝集し、さらに大きな液滴が形成されるのを防ぐために使用される。ASAサイジングエマルジョンの使用は増加しているが、依然としてその性能をさらに改善する必要がある。製造コストを抑えるために、標準的な剪断装置で調製することができる新規のエマルジョンが理想的である。
【0004】
また、アルキルケテンダイマー(AKD)及びロジンサイジング製品等の現在使用されている他の紙サイジング剤に対して魅力的な代替品が所望されている。例えば、AKDは、完全なサイジングを生み出すために貯蔵中に硬化させる必要があるというような欠点がある。以前は、ASAを乳化するためにでんぷんも使用されており、その後、ASAを繊維上に留めるのを助ける電荷をもたらすためにカチオンでんぷんも使用されてきた。しかしながら、これらは共に製紙設備(paper mill)においてその場で特殊な加熱装置を用いて調製しなければならず、不便であり、製造コストを増大させている。調製、取り扱い、貯蔵、及び使用がより容易なサイジング乳化剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,102,064号明細書
【特許文献2】米国特許第3,821,069号明細書
【特許文献3】米国特許第3,968,005号明細書
【特許文献4】米国特許第4,040,900号明細書
【特許文献5】米国特許第5,962,555号明細書
【特許文献6】米国特許第4,657,946号明細書
【特許文献7】米国特許第4,606,773号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の特徴は、高性能のASAサイジングエマルジョンを提供することである。別の特徴は、高いサイジング及び/又は高い耐水性をもたらすことのできる、ASA粒径(又は液滴サイズ)の小さいASAエマルジョンを提供することである。
【0007】
本発明のさらなる特徴及び利点を、以下の記載で部分的に説明するが、一部は記載から明らかであるか、又は本発明の実施により理解され得る。本発明の目的及び他の利点は、特に明細書及び添付の特許請求の範囲において指摘される要素及び組み合わせによって理解され、得られる。
【0008】
これら及び他の利点を達成するために、且つ本明細書中に具体化され、広く記載される本発明の目的に従って、本発明は、少なくともでんぷん及びアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマーを含有するASAエマルジョン剤に関する。このエマルジョン剤は、ASA及び水に添加するか、又はそれらと合わせてASAエマルジョンを形成することができる。エマルジョンは、陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤等の少なくとも1つの界面活性剤を任意に含有し得る。本発明はさらに、少なくともASA及び陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を含有するブレンドに関する。
【0009】
様々な実施の形態では、ASAサイジングエマルジョンは、エマルジョンの重量を基準として、約0.5重量%〜約3.0重量%のASA(又はASAブレンド)、約0.1重量%〜約1.5重量%のでんぷん、約0.1重量%〜約1.5重量%のターポリマー、及び約94重量%〜約99.3重量%の水を含み得る。ターポリマーは、ターポリマーの重量を基準として、1重量%〜99重量%のアクリルアミド、1重量%〜99重量%の第四級ジアリルアミン(diallyamine)、及び0.01重量%〜50重量%のグリオキサルを含み得る。特に指定のない限り、本明細書中に与えられる重量%は全て、エマルジョン又は調合物の全重量を基準とする。第四級アンモニウム化合物は、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウム塩モノマーであり得る。でんぷんは、例えばエトキシ化でんぷん等のカチオンでんぷんであり得る。ASAブレンドは、ASAブレンドの全重量を基準として、約90重量%〜約99重量%のASA、約0.1重量%〜約10重量%の陰イオン界面活性剤、及び約0.1重量%〜約10重量%の非イオン界面活性剤を含有し得る。陰イオン界面活性剤は、例えばスルホコハク酸ジオクチル及びその塩であり得る。非イオン界面活性剤は、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテルであり得る。ASAブレンドがターポリマー及びでんぷんを含有するASAサイジングエマルジョンの一部である場合、ASAサイジングエマルジョンは全体で、約0.5重量%〜約3重量%のASAブレンドを含有し、ASAブレンドはASAサイジングエマルジョン全体で約0.6重量%〜約2.4重量%のASA、及び約0.1重量%〜約0.3重量%の陰イオン界面活性剤、及び約0.1重量%〜約0.3重量%の非イオン界面活性剤に相当し得る。1つ又は複数の実施の形態では、本発明のASAサイジングエマルジョンは、100%OCCのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも1000秒、特に少なくとも1500秒のHST値を有し得る。1つ又は複数の実施の形態では、ASAサイジングエマルジョンは、#30亜硫酸パルプのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも10秒のHST値を有し得る。付加的又は代替的には、ASAサイジングエマルジョンは、板紙に関して、1分当たり約20メートル坪量〜約100メートル坪量(又は紙に関して50gsm〜約200gsm)の範囲のCobbサイジング値を有し得る。
【0010】
1つ又は複数の実施の形態では、表面サイジング又はストックサイジング(stock sizing)に本発明のASAエマルジョンの少なくとも1つを使用することを含む、紙をサイジングする方法が提供される。様々な実施の形態では、方法は、本発明のASAサイジングエマルジョンの1つを用いて、湿潤紙パルプ中に分散させること、又はかかるパルプを紙に変換した後、水性媒体中でサイジングエマルジョンで処理することを含む。本発明のASAエマルジョンは、事務用紙、石こうボード原紙、段ボール紙、封筒用紙、及び他の紙製品等の紙及び板紙製品の製造におけるサイジングに使用することができる。
【0011】
さらなる利点及び利益のうち、でんぷん及びターポリマー乳化剤から作製される本発明のASAエマルジョンは、標準的な高剪断処理(make-down)装置で調製することができる。陰イオン/非イオン共界面活性剤ブレンドを含有するASAエマルジョンにより、よりコストの低い低剪断処理装置で小さいASA粒径(又は液滴サイズ)を得ることができる。これらのASAサイジングエマルジョンはまた、取り扱いが容易であり、製紙設備内で調製する必要はなく、特別な貯蔵手段を要しない。例えば、本発明のASAエマルジョンは、以前ASAエマルジョンにカチオンでんぷんを使用していた場合とは違って、製紙設備内に特殊な加熱装置を必要としない。例えば、本明細書中に与えられる実施例に示すように、本発明のASAエマルジョンでは、グラフト化でんぷん乳化剤、又は個々の乳化剤成分のみ、又はより少ない(lesser included)乳化剤成分の組み合わせを用いる比較用ASA製品で達成される結果よりも、サイジング性能の向上が有意に優れている。また、本明細書中に与えられる実施例に示すように、本発明のASAエマルジョンは、従来のポリアクリルアミド共重合体を用いて調合した従来のASAエマルジョンによってサイジングした同様の紙製品と比較して、耐水性、MD引張強度、及びCD引張強度等の特性に関して向上した紙製品を提供する。本発明のASAエマルジョンを用いて得られるサイジングの改善はまた、個々の乳化剤成分の単なる相加効果を超えると見なされる。
【0012】
前述の概要及び以下の詳細な説明は共に、単に例示的及び説明的なものであり、クレームされるように本発明をさらに説明するに過ぎないことを理解されたい。
【0013】
本願に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態の幾つかを示し、明細書と共に本発明の原理を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に従うASAエマルジョン、及び本教示に従うASAエマルジョンに使用されるターポリマーの代わりにポリアクリルアミド共重合体を用いて調合した比較用ASAエマルジョンでサイジングした、石こうボード原紙に関する経時的なCobb値を示すグラフである。
【図2】本発明の実施形態に従うASAエマルジョン、及び本教示に従うASAエマルジョンに使用されるターポリマーの代わりにポリアクリルアミド共重合体を用いて調合した比較用ASAエマルジョンでサイジングした、石こうボード原紙に関する経時的なMD引張値を示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態に従うASAエマルジョン、及び本教示に従うASAエマルジョンに使用されるターポリマーの代わりにポリアクリルアミド共重合体を用いて調合した比較用ASAエマルジョンでサイジングした、石こうボード原紙に関する経時的なCD引張値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、紙及び板紙のサイジングのための組成物に関する。本明細書中で使用される場合、用語「紙」は、全てのグレードの紙及び板紙を包含する。用語「エマルジョン剤」及び「乳化剤」は交換可能に使用され、文脈に応じて、異なる成分の物理的及び/又は化学的組み合わせ、又は個々の成分を称し得る。本発明の目的のために、エマルジョン剤は、ASA粒子の水性媒体中への懸濁を補助し得る。本発明は、少なくとも1つのでんぷん及び少なくとも1つのアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマーを含むエマルジョン剤に一部関する。エマルジョン剤はASA、又はASAブレンド等のASAを含有する調合物を乳化するために使用することができる。ASAブレンドは、ASAとブレンドした少なくとも1つの陰イオン界面活性剤と少なくとも1つの非イオン界面活性剤との共界面活性剤ブレンドであり得るが、これは好ましくは紙及び板紙に対する有意に改善したサイジング性能を与えることのできる、ASA粒径(ASA液滴サイズ)の小さいASAエマルジョンをもたらすと見出されている。したがって、本発明は、本発明のエマルジョン剤であるASA(又はASAブレンド)及び水を含有するASAエマルジョンにも関するが、ここでASAブレンドは、本発明のASAとの共界面活性剤のブレンドであり得る。
【0016】
エマルジョン中に存在するASAに関して、当該技術分野で既知のASAは、一般式:R1−R−C(O)−O−C(O)を有するアルケニル無水コハク酸(ASA)化合物群である。該一般式において、Rはジメチレニル基又はトリメチレニル基であり、R1は炭素原子数が5以上の疎水性基である。R1は、例えばアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアラケニル基であり得る。一実施形態では、製紙目的のために、このモノマーの成分は、5員無水環及び14個〜20個の−CH2−基を有する直鎖を含み、この反応性の環は鎖に対して様々な位置に位置することができる。市販のASAはこれらの異性体の混合物を含み得る。ASAは典型的には、油性のモノマーの形態で得られる。該製品は、例えば淡琥珀色の油として供給され、取り扱われ得る。しかしながら、任意のASA材料を本発明によるASAサイジングエマルジョンに使用してもよい。ASAの供給元としては、例えばAlbermarle Corporation(Baton Rouge、La.)及びDixie Chemical Company(Houston、Texas)が挙げられる。ASAの他の例は、文献、例えば米国特許第4,545,856号明細書、同第4,606,773号明細書、同第4,849,131号明細書、及び同第4,695,401号明細書(参照により本明細書中に援用される)において与えられる。ASAサイジング剤(size)は例えばパルプスラリー中で繊維表面に分配する前に、最初に乳化しなければならない。エマルジョンは、本発明の実施形態に従うでんぷん及びアクリルアミドターポリマーと共に、連続相の水溶液中にASA油の小さい液滴を含み得る。本発明では、ASAは(エマルジョン中、及び/又はパルプ又は紙を含有するプロセス流中で)約0.5ミクロン〜1.5ミクロンの範囲の平均粒子(液滴)サイズを有し得る。好ましくは、平均粒径は0.5ミクロン〜1ミクロン、又は0.2ミクロン〜0.5ミクロン、又は0.3ミクロン〜0.85ミクロン、又は0.4ミクロン〜0.7ミクロンの範囲であるが、1ミクロン未満であってもよい。他の粒径も可能である。粒径はHoriba LA−300粒径分析器により測定される数平均粒径である。
【0017】
様々な実施形態では、少なくともでんぷん及びアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマーを含む、ASAに対するエマルジョン剤が与えられる。一実施形態では、でんぷん及びターポリマーのみがASA又はASAブレンドを乳化するために使用される。
【0018】
このエマルジョン剤は、ASA又はASAブレンドを乳化することによりASAサイジングエマルジョンを調製するために使用され得る。例えば、エマルジョンは、ASAエマルジョンの全重量を基準として、約0.5重量%〜約3重量%のASA(又はASAブレンド)、約0.1重量%〜約1.5重量%のでんぷん、約0.1重量%〜約1.5重量%のターポリマー、及び約94重量%〜約99.3重量%の水を含有し得る。ASAエマルジョンは少なくとも、約1重量%〜約2重量%のASA(又はASAブレンド)、約0.5重量%〜約1重量%のでんぷん、約0.5重量%〜約1重量%のターポリマー、及び約95重量%〜約99重量%の水を含有し得る。「ブレンドしたASA」又は「ASAブレンド」への言及は、2つの異なるタイプの界面活性剤等の少なくとも1つの界面活性剤とブレンドしたASAへの言及である。界面活性剤は、少なくとも1つの陰イオン界面活性剤、少なくとも1つの非イオン界面活性剤、その組み合わせ、及び/又は1つ又は複数の他の界面活性剤であり、上記又は下記に挙げた特許に記載される要素の1つ又は複数のような他の任意の要素/成分が存在し得る。
【0019】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のエマルジョン剤を、少なくとも1つの乾燥強度ターポリマー及び少なくとも1つのでんぷんと合わせる。このエマルジョン剤のポリマー−でんぷんブレンドは、ASAの乳化及び紙のサイジングについて現在既知の製品より実質的に良好に機能する。これらのエマルジョン剤により、ASAエマルジョンの平均ASA粒径を小さく、HST(Hercules Size Testing)により測定されるようなサイジングをより高く、及び/又は標準的な高剪断処理装置を用いて標準的なCOBB法により測定されるような耐水性をより高くすることができる。このエマルジョン剤はまた、AKD及びロジンサイジング製品、並びに他の現行のでんぷん、DMDDAAC−アクリルアミド共重合体、及びAKDとグラフト化でんぷんとの組み合わせ等のASAの乳化方法と競合する、取り扱いの容易なASAサイジングエマルジョンを提供することができる。別の利点は、でんぷんの場合に必要とされるように、特殊な加熱装置を用いて設備内で作製する必要がないということである。別の利点は、完全なサイジングを生み出すために貯蔵中に硬化させる必要があるアルキルケテンダイマー(AKD)サイジングエマルジョンを、ASAはその必要がないため置き換えることができるということである。エマルジョン剤は、ピッチ制御、細粒及び陰イオン性夾雑物の貯留、他の製紙添加物の貯留等の他の用途を有し得る。また、エマルジョン剤はFDA及びTSCAの両方により個々に許可されており、商業生産への導入を促進し得る一般的な紙添加物である。
【0020】
ターポリマーの成分に関して、用語「アクリルアミド」は、本明細書中で使用される場合、アクリルアミドモノマー及び/又は小分子量オリゴマーを指す。アクリルアミドモノマーは、アクリルアミド自体だけでなく、メタクリルアミド、エチルアクリルアミド、クロトナミド、N−メチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等の置換アクリルアミドも含む第一級ビニルアミドを含み得る。アクリルアミドモノマーから作製されるポリマーであるポリアクリルアミドは、これらの様々な化合物の少なくとも幾つかに由来する反復単位を含み得る。アクリルアミドオリゴマーは、最大で約500ダルトン(例えば10ダルトン〜500ダルトン)の重量平均分子量を有し得る。アクリルアミドが、本発明のエマルジョン剤で有用なポリマーの調製に使用される非イオンモノマーに好ましいが、他の非イオンモノマー、例えばメタクリルアミド、又は上記で例示した他のモノマー、又はさらにはアクリル酸、メタクリル酸、様々なスルホン化水溶性ビニル付加モノマー等の或る特定の陰イオン的に帯電したモノマーを使用することができる。American Cyanamid製のアクリルアミド50等の市販の材料に由来するアクリルアミドモノマー及び/又はオリゴマーを利用してもよい。
【0021】
一部がターポリマーを形成する第四級アンモニウム化合物は、例えば第四級アンモニウム塩モノマーであり得る。第四級アンモニウム化合物は、例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DMDAAC)、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド第四級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロリド第四級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド第四級塩、又はジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロリド第四級塩等の単独、又はその任意の組み合わせであり得る。第四級アンモニウム化合物は特に、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DMDAAC)等のジアリルアンモニウムモノマーであり得る。また、これらのモノマーの対イオンは、塩化物の他、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、メチル硫酸塩、リン酸塩等であってもよい。
【0022】
ターポリマーの一部であるグリオキサルは、一般構造:CHOCHOを有する既知のアルデヒドである。
【0023】
でんぷんは任意のタイプのでんぷん、例えばカチオンでんぷんであり得る。本発明で有用なカチオンでんぷんは、米国特許第4,606,773号明細書、同第4,029,885号明細書、同第4,146,515号明細書、同第3,102,064号明細書、及び同第3,821,069号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に開示されている。本発明に有用な特定のでんぷんは、エトキシ化でんぷん、カチオンジャガイモでんぷん、カチオントウモロコシでんぷん、カチオンタピオカでんぷん等である。これらのタイプのでんぷん材料は市販されている。
【0024】
エマルジョン剤は以下のように調製した後、ASAの乳化に使用することができる。ターポリマーのアクリルアミド成分及び第四級アンモニウム化合物成分は、単一ポット操作として個々にグリオキサルと反応させてもよく、又は代替的には、アクリルアミド成分と第四級アンモニウム化合物成分とを共重合してから、グリオキサルとさらに反応させ、ターポリマーを形成してもよい。アクリルアミドと、第四級アンモニウム化合物と、グリオキサルとの重合反応は、過硫酸アンモニウム(例えば希釈過硫酸アンモニウム)等又は他の適切な開始剤を用いて開始させることができる。共重合反応は概して、当業者に一般に知られているフリーラジカル重合開始剤を用いて開始される。過硫酸塩、過酸化物重合開始剤、アゾ開始剤(azostarters)、レドックス系触媒等の主に水溶性ラジカルを形成する化合物が重合開始剤として適切である。これらのタイプの開始剤を単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。例えば、過硫酸アンモニウムを使用してもよい。重合速度は、開始剤の濃度及び反応温度を含む様々な変数に影響され得る。重合速度は概して、これらの変数の各々と正の関係を有する。例えば、より高い開始剤濃度又はより高い温度は、必ずしも常にというわけではないが通常は重合速度の増大をもたらす。重合反応では概して約50℃〜約100℃、特に約65℃〜約85℃の温度が与えられ、維持されるのが好ましい。過硫酸アンモニウムは概して、水中で不安定であり、或る期間にわたって増加的に添加するのが好ましい。様々なモノマーを得られる共重合体中に良好に分布させるために、反応混合物を反応中よく混合し続けるのが好ましい。しかしながら、高分子生成物の分解が起こるほど強く混合しないように注意を払う必要がある。重合反応の反応溶媒として好ましくは水が使用されるが、これに限定されない。水を反応溶媒として使用する場合、反応は減圧下で行なわれ得るが、これに限定されない。ターポリマーの調製において、完成したターポリマーのアクリルアミド成分、第四級アンモニウム化合物成分、及びグリオキサル成分のモル比は、それぞれ0.1〜99:0.1〜99:0.01〜50であり得る。具体的な例としては、それぞれ1〜90:1〜90:1〜45、又は5〜80:5〜80:5〜40、又は10〜75:10〜70:15〜30、又は20〜50:20〜50:20〜25、又は30〜40:30〜40:20〜25が挙げられる。
【0025】
でんぷんは概して、エマルジョンの他の成分と組み合わせる前に水溶液中で、でんぷんに応じて例えば約40℃〜約100℃に加熱される(又は変換される)。でんぷんはグリオキサルの付加前、その間、及び/又は後に水溶液中でアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物共重合体と合わせてもよい。
【0026】
本発明の一態様では、ASAと共に陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との共界面活性剤ブレンドを含有する、ASAブレンドを調製及び使用することができる。
【0027】
ASAブレンドはASAブレンドの重量を基準として、約90重量%〜約99重量%のASA、約0.1重量%〜約10重量%の陰イオン界面活性剤、及び約0.1重量%〜約10重量%の非イオン界面活性剤を含有し得る。例えば、ASAブレンドはASAブレンドの全重量%を基準として、約95重量%〜約99重量%のASA、約1重量%〜約5重量%の陰イオン界面活性剤、及び約1重量%〜約5重量%の非イオン界面活性剤を含有し得る。陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤は、等しい重量比、又は0.75:1.25〜1.25:0.75の重量比で存在することができる。
【0028】
陰イオン界面活性剤はスルホコハク酸エステル、例えば、通常6個〜20個の炭素原子を含むアルコールとのスルホコハク酸のエステルであり、スルホコハク酸ジオクチル(DOSS)、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシル等のジアルキルスルホコハク酸塩、及びスルホコハク酸ジシクロヘキシル等のジシクロアルキルスルホコハク酸塩、又はその塩が例示される。特定の実施形態では、陰イオン界面活性剤はスルホコハク酸ジオクチル又はその塩、例えば水及び/又はエタノール中でのDOSSのナトリウム塩であり得る。DOSSの商業的供給源としては、例えばASCO(登録商標)DOSS等が挙げられる。他の陰イオン界面活性剤を使用してもよく、例えば米国特許第5,962,555号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0029】
非イオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン化合物であり、少なくとも8個の炭素、とりわけ8個〜最大36個の炭素原子を有する疎水性部分を含み得る。疎水性部分は、該部分が全体的な疎水性の特徴を有する限りは、炭素及び水素以外の原子を含有し得る。疎水性部分は、芳香族官能基を適切に含有する直鎖、分岐、非分岐、飽和、又は不飽和の炭化水素(又はその組み合わせ)、例えば芳香族環系又は縮合芳香族環系であり、芳香族系は主要炭化水素構造の一部又は分岐若しくは非分岐の主要炭化水素構造に連結したペンダント(pendent)基であり得る。好ましくは、疎水性部分は8個〜最大36個の炭素原子、適切には10個〜最大20個の炭素原子、及び最も好ましくは10個〜最大15個の炭素原子を含有し得る非分岐飽和炭化水素鎖であり得る。ポリオキシアルキレン化合物は、2個〜最大30個の同じタイプ又は異なるタイプのアルキレンオキシド単位、一般に5個〜最大10個のアルキレンオキシド単位、好ましくは5個〜最大8個のアルキレンオキシド単位を有し得る。最も具体的には、ポリオキシアルキレン化合物は、エチレンオキシド単位及び/又はプロピレンオキシド単位を含有し、例えばエチレンオキシド単位を5個〜最大10個のエチレンオキシド単位、好ましくは5個〜最大7個のエチレンオキシド単位の量で含有し得る。ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量は最大4000、適切には200〜最大2300であり得る。適切には、ポリオキシアルキレン化合物はポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、テトラ(エチレングリコール)ウンデシルエーテル、ペンタ(エチレングリコール)ウンデシルエーテル、ヘキサ(エチレングリコール)ウンデシルエーテル、ヘプタ(エチレングリコール)ウンデシルエーテル、及び/又はデカ(エチレングリコール)ウンデシルエーテルであり得る。使用され得るポリオキシアルキレンアルキルエーテルの非限定的な例は、BRIJ 98として市販されているポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテルとも称される)である。
【0030】
本発明のASAブレンドは、従来のASAエマルジョンの調製に使用されてきた従来使用される大規模高剪断装置を必要とせずに乳化することが容易なASA製品を提供することができる。ASAと陰イオン/非イオン界面活性剤の共界面活性剤ブレンドとは、より低コストな低剪断装置で乳化又は均質化することができる。エマルジョン剤及び/又はASAブレンド、又はそれらの組み合わせにより好ましくは、ASAエマルジョンのASA粒子(液滴)サイズが小さく、HST(Hercules Size Testing)により測定されるようなサイジングがより高く、及び/又は標準的な高剪断処理装置を用いて標準的なCOBB法により測定されるような耐水性がより高くなる。エマルジョン剤及び/又は本発明のASAブレンドはまた、AKD及びロジンサイジング製品、並びに他の現行のでんぷん、DMDDAAC−アクリルアミド共重合体、及びAKDとグラフト化でんぷんとの組み合わせ等のASAの乳化方法と競合する、取り扱いが容易なASAサイジングエマルジョンの形成を可能にする。別の利点は、でんぷんの場合に必要とされるように、特殊な加熱装置を用いて設備内で作製する必要がないということである。別の利点は、完全なサイジングエマルジョンを生み出すために貯蔵中に硬化する必要があるアルキルケテンダイマー(AKD)サイジングを、ASAはその必要がないため置き換えることができるということである。共界面活性剤ブレンド(ASAを含まない)は、消泡剤の乳化、ピッチ制御、細粒及び陰イオン性夾雑物の貯留、AKD及びロジンサイジング等の他の製紙添加物の貯留等の他の用途を有し得る。また、このブレンドはFDA及びTSCAの両方により個々に許可されており、商業生産への導入を促進し得る一般的な紙添加物である。
【0031】
本発明のASAサイジングエマルジョンは、当該技術分野で既知の技法を用いて調製され得る。エマルジョンは記載される様々な成分を混合し、混合物を乳化又は均一化することにより作製され得る。
【0032】
でんぷん及びターポリマーから作製されるエマルジョン剤は、標準的な高剪断処理装置で調製することができる。陰イオン/非イオン共界面活性剤ブレンドとエマルジョン剤とのASAブレンドは、よりコストの低い、低剪断処理装置で作製することができる。ASAエマルジョンを低剪断条件で均一化する低剪断装置の例としては、例えばNorchem製のBTA−05−APユニットが挙げられる。得られるエマルジョンは特別な加熱手段又は貯蔵手段を必要としない。本発明の目的で、低剪断はASAエマルジョン(又はエマルジョンを形成する要素の組み合わせ)等の液体を、背圧が50psi以下、より好ましくは35psi以下、さらにより好ましくは10psi以下、例えば1psi〜10psiのポンプで圧送する能力を指す。高剪断では、標準的なASAエマルジョン等の液体を圧送するのに、概して150psi〜300psiの背圧を必要とする。本発明は、ASAブレンド及び水と組み合わせた本発明のエマルジョン剤を用いて、製紙設備内のサイジングを行なう位置へと容易に圧送されるASAエマルジョンの生成を可能とする。さらに、本発明では、様々な成分を混合してASAエマルジョンを形成するのにポンプのみで十分であり、したがって低剪断条件が用いられる。本発明の少なくとも1つの実施形態では、ASAエマルジョンを形成する様々な成分、例えば本発明のエマルジョン剤成分、及びASAブレンド成分を単に容器に入れた後、製紙設備内のサイジングを行なう所望の位置へと圧送することができ、ポンプ(例えば、背圧が50psi以下の)は単独で、要素を十分に混合して本発明に有用なASAエマルジョンを形成することができる。したがって、本発明によって、ASAエマルジョンをポンプ等の単純な装置で容易に調合し、エマルジョン中のASAの平均粒径が小さいことを含む、所望の特性を有する所望のASAエマルジョンをさらに達成することが可能である。
【0033】
本発明のASAサイジングエマルジョンは、紙及び板紙用の内部サイジング組成物及び/又は表面サイジング組成物として使用され得る。エマルジョンはウエットエンドで添加され、及び/又は繊維状シートの表面を処理するために使用され得る。また、ウエットエンドで使用され得るサイジング剤のタイプは、表面サイジング組成物として使用されるASAエマルジョンと異なっていてもよく、又は逆もまた同様である。内部サイジング組成物として使用される場合、ASAエマルジョンは製紙プロセスにおける紙シート形成工程の前に添加され得る。サイジングエマルジョンは、例えばパルプをヘッドボックス、ビーター、ハイドロパルパー(hydropulper)、又はストックチェスト(stock chest)等に入れた状態でパルプに添加してもよい。サイジングエマルジョンはほとんどの場合、抄紙機のヘッドボックスの直前で添加されるが、製紙プロセスにおいて濃厚原液(thick stock)としてさらに前で添加してもよい。当該技術分野で既知のように、サイジングエマルジョンは繊維上での適切な分布を確実にするように添加すべきである。適切な分布を確実にするために、サイジングエマルジョンは一般に固形分約0.1%〜2%に希釈した後、篩又はファンポンプの前、パルプスラリーがヘッドボックスに入る直前に添加され得る。この希釈に続く篩及び/又はファンポンプによる分散は、紙繊維への均一な分布を達成するためにサイジングエマルジョンを分配するのに役立つ。エマルジョンは、少なくとも約0.1ポンド、特に約1ポンド〜約15ポンド、より具体的には約2ポンド〜約8ポンド又は2ポンド〜4ポンド又は6ポンド〜8ポンドの投与量(乾燥紙1トン当たりのASA(ポンド))で内部サイジング用途で使用され得る。ASAエマルジョンはよく分散し、処理されたパルプ繊維上に留まる。
【0034】
別の実施形態では、ASAサイジングエマルジョンは、形成される紙匹の表面に適用することができる。ASAエマルジョンは、少なくとも約0.1ポンド、特に約1ポンド〜約10ポンド、より具体的には約2ポンド〜約8ポンド又は2ポンド〜4ポンド又は6ポンド〜8ポンドの投与量(乾燥紙1トン当たりのASA(ポンド))で表面サイジング用途で使用してもよい。
【0035】
様々な実施形態では、本発明のASAエマルジョンは、100%OCCのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも100秒、例えば少なくとも500秒、又は少なくとも1000秒、又は少なくとも1500秒(例えば、500秒〜4500秒)のHST値をもたらす。様々な実施形態では、サイジングエマルジョン(a)は、#30亜硫酸パルプのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも10秒のHST値をもたらす。該エマルジョンはまた、板紙に関して、1分当たり約20メートル坪量〜約100メートル坪量(又は紙に関して50gsm〜約200gsm)のCobbサイジング値をもたらす。
【0036】
上記に記載されるように、本発明は少なくとも、上記に記載されるASAブレンド、又は上記に記載されるエマルジョン剤、又は上の1つ又は複数を含有するエマルジョンを用いた様々な実施形態に関する。上述のように、ASAエマルジョンは本発明のASAブレンドを含有し得る。ASAエマルジョンは、本発明のエマルジョン剤と共に本発明のASAブレンドを含有し得る。本発明のASAエマルジョンは、当該技術分野で常用の任意のASA又はASAの従来のブレンドと共に本発明のエマルジョン剤を含有し得る。ASAブレンド、エマルジョン剤、又は上記で記載されるエマルジョンのいずれかを、製紙設備に導入して、パルプ及び/又は紙のサイジングを達成する(又はそれに寄与する)ことができる。ASAブレンド、エマルジョン剤、及び/又はエマルジョンは紙流、形成される紙匹の表面、又は紙匹形成前のパルプへと導入する前に形成することができる。また、任意でASAブレンド、エマルジョン剤、及び/又はエマルジョンは、1つ又は複数の供給流、又はパルプ流、又は形成される紙匹の表面上でその場で形成することができる。本発明のASAブレンド、エマルジョン剤、及び/又はエマルジョンは、紙形成プロセスへの導入前、導入中、及び/又は導入後に形成することができる。任意で、ASAブレンドを形成する、エマルジョン剤を形成する、及び/又はエマルジョンを形成する1つ又は複数の要素を、連続して、まとめて、又は様々な組み合わせで導入して、最終的に本発明のASAブレンド、エマルジョン剤、及び/又はエマルジョンを形成することができる。ここでこの連続導入、又は他のタイプの導入/供給は、紙形成プロセス流への導入前、その間、及び/又は後でASAサイジングのタイプ(内部サイジング及び/又は表面サイジング)に応じて適切な位置で行うことができる。ASAブレンド、エマルジョン剤、及び/又はエマルジョンの形成は、バッチによるか、連続的、又は半連続的であり得る。
【0037】
本発明を以下の実施例によりさらに明確にするが、実施例は純粋に本発明の例示として意図され、特に指定のない限り、部とは重量による割合である。
【実施例】
【0038】
実施例1:乳化剤の調製
初めにターポリマーを調製した後、変換した(すなわち、分散させ加熱した)でんぷんとブレンドした。アクリルアミド−DMDAACポリマーの40%溶液は、アクリルアミド90%及びDMDAAC10%の重量比で調製した。両モノマーを固体濃度40%で水に添加し、80℃に加熱し、希釈過硫酸アンモニウム溶液を2時間かけて添加した。冷却後、溶液を固形分7%に希釈し、pHを8〜8.5に調節した後0.1%グリオキサルを添加し、室温で2時間反応させて、ターポリマーを得た。エトキシ化でんぷんであるPenford(登録商標)Gum 280を、水中で15%変換させ、80℃で30分間加熱した後、上記ターポリマーと混合して、固形分15%の溶液を得た。混合物をキッチンブレンダーを用いて30秒間の低速剪断により乳化させた。
【0039】
実施例2:乳化剤の調製
ターポリマー−でんぷんブレンドを実施例1とは異なる順序で、すなわちエトキシ化でんぷんを熱水に溶解した後、同様に調製したアクリルアミド−DMDAAC共重合体を添加し、50℃に加熱した後、組成物/調合物の重量を基準として0.1重量%のグリオキサルを添加することにより調製した。
【0040】
実施例3:乳化剤の調製
ターポリマー−でんぷんブレンドを別の順序で、すなわち(組成物/調合物の重量を基準として)7.5重量%のでんぷんを85℃で水に溶解させ、次にアクリルアミドモノマー(6.8重量%)を添加した後、DMDAACモノマー(0.8重量%)を添加し、70℃に加熱し、0.1重量%の過硫酸アンモニウムを2時間かけて添加した後、0.1重量%のグリオキサルを添加することにより調製した。
【0041】
実施例4:OCCでのサイジング性能
この実施例では、本発明によるASAサイジングエマルジョンの調製及び使用を実証する。比較目的で、製紙業において現在製造されているASAサイジングエマルジョンを対照として使用した。特に、製紙設備からの100%再生OCC(段ボール古紙(old corrugated containers))を、数部の量(parts amount)の市販のグラフト化でんぷん乳化剤、又は本発明の実施例1のターポリマー−でんぷんブレンド乳化剤で乳化した異なる投与量のASAを用いて処理した。サイジング効率を測定するために、Hercules Size Test Ink #2を採用した。これらの試験に関して、0.5%稠度に希釈した、製紙設備により供給される100%OCCを、設備のプロセス水と共に使用した。また、歩留り向上剤(retention aid)であるBUFLOC(登録商標)590製品を、この手漉き紙(handseet)研究に使用した。BUFLOC(登録商標)590製品は、分子量が1000万を上回るカチオン化アクリレート基を有するカチオンアクリルアミド共重合体を有するエマルジョンポリマーであり、Buckman Laboratories, Inc.(Memphis、Tenn)から入手可能である。この手漉き紙研究に関して、油性BUFLOC(登録商標)590製品は、混合しながら水に入れ(let down in)、固体分0.1%に希釈して使用した。幾つかの異なる試験において使用したASAサイジングエマルジョンの投与量を下記の表1に示した。歩留り向上剤は1.5gの手漉き紙に2ポンド/トン含まれていた。手漉き紙を一度50psiで加圧し、250゜Fで8分間乾燥させた。
【0042】
表1の結果により示されているように、ターポリマー−でんぷん乳化剤はHercules Size Testing(HST)により測定したところ、グラフト化でんぷん乳化剤に対して3つの異なるASA投与量レベルでサイジングの実質的な増大をもたらした(結果は秒(sec.)で示す)。HST値は結果の平均である。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例5:亜硫酸パルプに対するサイジング性能
製紙設備からの100%亜硫酸パルプを、等量のグラフト化でんぷん乳化剤又はターポリマー−でんぷんブレンド乳化剤で乳化した、異なる投与量のASAで処理した。それぞれのエマルジョンは先の実施例4で試験したものと同様であった。サイジングエマルジョンは、表2に示すエマルジョン投与量レベルを用いて導入した。これはサイジングエマルジョンの内部適用であった。表2の結果により示されているように、ターポリマー−でんぷん乳化剤は、HSTにより測定したところサイジングにおいて実質的な増加をもたらした。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例6:100%OCCに対するサイジング性能
実施例4の試験とは異なる、製紙設備から得た100%OCCを、実施例5と同様の乳化組成物を有する数部の量のグラフト化でんぷん乳化剤又はターポリマー−でんぷんブレンド乳化剤で乳化した、異なる投与量のASAで処理した。ターポリマー−でんぷん乳化剤は、HSTにより測定したところサイジングにおいて実質的な増加をもたらした。エマルジョン粒径は同様にHoriba LA−300で求めた。表3の結果に示されているように、2つの試験したエマルジョンの粒径は、下記に示すように同様であった。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例7:AKDと比較した亜硫酸パルプに対するサイジング性能
実施例5の試験手順を、比較用エマルジョンとしてAKDを用いた以外は同様に繰り返した。表4の結果に示されているように、ターポリマー−でんぷんブレンドを含むASAのエマルジョンは、AKDと比較して亜硫酸パルプに対するサイジングの改善をもたらした。
【0049】
【表4】

【0050】
実施例8:ASA/陰イオン界面活性剤/非イオン界面活性剤のブレンド
ASA、陰イオン界面活性剤、及び非イオン界面活性剤の混合物を含有する2つの界面活性剤ブレンドを調製した。ASAブレンドAに関しては、界面活性剤ブレンドはASA97%、陰イオン界面活性剤としてスルホコハク酸ジオクチル又はDOSS(商業的供給元:Chemax)1.5%、及び非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(BRIJ 98)1.5%であった。ASAブレンドBは、表5に示すように、これらの同じ成分を別の比率で含んでいた。ブレンドを背圧が50psi未満の低剪断作動条件で作動させたNorchemの剪断装置を用いて均質化した後、粒径をHoriba LA−300で求めた。比較用界面活性剤ブレンドを同様に、ASA及び1%DOSS又は1%BRIJ 98のいずれか(両方ではない)を含有するように作製し、試験したが、より大きな粒径で示されるように、より質の悪いエマルジョンを生じた。表5の結果により示されているように、本発明の(inventive)ASAブレンドにより粒径の減少が観察された。表6は本発明を用いたHSTの改善を示す。
【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
実施例9:石こうボード原紙に対するサイジング性能
製紙設備から得たOCCで作製した石こうボード原紙を、連続製造中のウエットエンドで、連続製造のモニタリング期間の異なる時点で、本発明の実施形態に従うASAエマルジョン、指定のASAエマルジョン1、及び別個に従来のASAエマルジョン、指定の比較用ASAエマルジョンAで処理した。従来の装置配置及び石こうボード原紙製造用の原紙(liner)組成物をこの実験に使用した。
【0054】
本発明を代表するASAエマルジョン1を、実施例1で記載されるものと同様の乳化剤を用いて調合した。乳化剤及びASA油(約C18のアルキル鎖)を従来の低剪断機械式ミキサーでブレンドして、エマルジョンを形成した。比較用ASAエマルジョンAを、ターポリマーの代わりに従来のポリアクリルアミド共重合体を用いて乳化剤を形成した以外はASAエマルジョン1と同様に調製した。エマルジョンは、0.5:1のポリマー対サイジングエマルジョン比で調製した。エマルジョン試料を、Horiba LS 300粒径分析器を用いて粒径について分析した。粒径分析に基づくと、本発明のASAエマルジョン1(「1」)は、表7に示すように比較用ASAエマルジョンA(「CA」)と同様の条件下で、同様の粒径をもたらした。
【0055】
異なるエマルジョンを、図1〜図3に示すように、石こうボード原紙製造工程のウエットエンドで異なる期間で別個に添加した。図1〜図3に示す時間単位は、24時間の時間:分の規則を基準としており、任意に24:00の時点で再開した。ASA投与量は実験の間、試験したエマルジョン全てに関して7.0ポンド/トン(乾燥紙1トン当たりのASA(ポンド))に一定に保った。製造のモニタリング期間中、原紙を水の浸透に関して標準的なCobbサイジング試験により定期的に試験し、60秒での吸水度(g/m)として測定したが、結果を図1に示す。また、原紙のMD引張特性及びCD引張特性をInstronの引張試験機で定期的に測定したが、結果を図2及び図3に示す。引張特性はポンド(lbs.)単位で求め、値は前部(「F」)、中央部(「C」)、及び後部(「B」)について測定した。
【0056】
図1に示す結果を参照すると、Cobbサイジング性能に基づいて、ASAエマルジョン1で処理した原紙は、比較用ASAエマルジョンAで処理した原紙と同様の性能を示した。また、図2及び図3に示す結果を参照すると、試験結果から、比較用ASAエマルジョンAで処理した原紙と比較して、ASAエマルジョン1で処理した原紙はMD引張値が7%増加し、CD引張値が2%増加したことが観察された。
【0057】
同じ石こうボード原紙系で行なった原紙製造の別の製造期間中に、別のASAエマルジョン、ASAエマルジョン2(「2」)を、7ポンド/トンの一定のASA投与速度でウエットエンドで添加した。ASAエマルジョン2は、異なるASA(約C16のアルキル鎖)成分を使用した以外は上記で記載されるASAエマルジョン1と同様の配合であった。このASAエマルジョン2の試料5ガロンを従来の低剪断ミキサーで調製した。また、表7に示されるように、粒径の結果により、作製されたこのASAエマルジョン2は、ASAエマルジョン1よりも粒径がわずかに小さく、品質がさらに向上したエマルジョンであることが示される。
【0058】
【表7】

【0059】
出願人は、全ての引用文献の全内容をこの開示に具体的に援用する。また、或る量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターが範囲、好ましい範囲、又は好ましい最大の値及び好ましい最小の値の羅列として与えられる場合、範囲が別個に開示されるかどうかにかかわらず、任意の上限の範囲又は好ましい値と、任意の下限の範囲又は好ましい値との任意の対から成る全ての範囲を具体的に開示すると理解される。数値の範囲が本明細書中に列挙される場合、特に指定のない限り、この範囲はその端点並びに範囲内の全ての整数値及び分数値を含むことが意図される。本発明の範囲が、範囲を規定する際に列挙される具体的な値に限定されないことが意図される。
【0060】
当業者には、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形を本発明の実施形態に加えることができることは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限り本発明の他の変更形態及び変形形態を包含すると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASAサイジングエマルジョンであって、ASA、少なくとも1つのでんぷん、少なくとも1つのアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマー、及び水を含む、ASAサイジングエマルジョン。
【請求項2】
少なくとも1つの陰イオン界面活性剤及び少なくとも1つの非イオン界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項3】
前記ASAが、0.5ミクロン〜1ミクロンの平均粒径を有するASA粒子として存在する、請求項2に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項4】
前記ASAサイジングエマルジョンがエマルジョン(a)であり、且つ約0.5重量%〜約3重量%のASA、約0.1重量%〜約1.5重量%のでんぷん、約0.1重量%〜約1.5重量%のターポリマー、及び約94重量%〜約99.3重量%の水を含む、請求項1に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項5】
前記ターポリマーが1重量%〜99重量%のアクリルアミド、1重量%〜99重量%の第四級アンモニウム化合物、及び0.01重量%〜50重量%のグリオキサルを含む、請求項1に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項6】
前記第四級アンモニウム化合物が第四級アンモニウム塩モノマーである、請求項1に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項7】
前記第四級アンモニウム塩モノマーがジメチルジアリルアンモニウムクロリドである、請求項6に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項8】
該でんぷんがカチオンでんぷんである、請求項1に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項9】
該サイジングエマルジョンが、100%OCCのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも1000秒のHST値をもたらす、請求項1に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項10】
該サイジングエマルジョンが、100%OCCのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも1500秒のHST値をもたらす、請求項2に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項11】
該サイジングエマルジョンが、#30亜硫酸パルプのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも10秒のHST値をもたらす、請求項2に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項12】
該サイジングエマルジョンが、100%OCC板紙に関して、1分当たり約20メートル坪量〜約100メートル坪量の範囲のCobbサイジング値をもたらす、請求項2に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項13】
約0.6重量%〜約2.4重量%のASA、約0.1重量%〜約0.3重量%の陰イオン界面活性剤、及び約0.1重量%〜約0.3重量%の非イオン界面活性剤を含む、請求項2に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項14】
前記陰イオン界面活性剤がスルホコハク酸ジオクチル又はその塩である、請求項2に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項15】
前記非イオン界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、請求項2に記載のASAサイジングエマルジョン。
【請求項16】
紙をサイジングする方法であって、湿潤紙パルプ又は紙を請求項1に記載のASAサイジングエマルジョンで処理することを含む、紙をサイジングする方法。
【請求項17】
紙をサイジングする方法であって、湿潤紙パルプ又は紙を請求項2に記載のASAサイジングエマルジョンで処理することを含む、紙をサイジングする方法。
【請求項18】
該サイジングエマルジョンが、100%OCCのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも1000秒のHST値をもたらす、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
該サイジングエマルジョンが、100%OCCのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも1500秒のHST値をもたらす、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
該サイジングエマルジョンが、#30亜硫酸パルプのサイジングにおいて4ポンド/トンで投与した場合に、少なくとも10秒のHST値をもたらす、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ASAサイジングエマルジョンを、低剪断条件下で該ASA、該でんぷん、及び該アクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマー、及び水をブレンドすることにより形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記低剪断条件が、背圧が50psi以下のポンプにより達成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ASAサイジングエマルジョンが、該ASAを前記陰イオン界面活性剤及び前記非イオン界面活性剤と予め合わせてASAブレンドを形成し、これを前記でんぷん及び前記アクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマーから形成されるエマルジョン剤と合わせた後、低剪断条件下でブレンドして前記ASAサイジングエマルジョンを形成することにより形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ASAブレンドであって、ASA並びに少なくとも1つの陰イオン界面活性剤及び少なくとも1つの非イオン界面活性剤を含む、ASAブレンド。
【請求項25】
エマルジョン剤であって、少なくとも1つのでんぷん及び少なくとも1つのアクリルアミド/第四級アンモニウム化合物/グリオキサルターポリマーを含む、エマルジョン剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−526945(P2010−526945A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507663(P2010−507663)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/063072
【国際公開番号】WO2008/141093
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(590003238)バックマン・ラボラトリーズ・インターナショナル・インコーポレーテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】BUCKMAN LABORATORIES INTERNATIONAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】