説明

紙塗工用塗工層強度改良剤及び紙塗工用組成物

【課題】 本発明の目的は、従来の塗工組成物よりも優れた塗工層強度(ドライピック強度)を有し、さらに優れた耐水性、インキ受理性、透気性を付与することができる紙塗工用塗工層強度改良剤、塗工組成物および前記塗工組成物を塗工した塗工紙を提供することにある。
【解決手段】(A)(メタ)アクリルアミド類と(B)重合可能なカチオン性モノマー及び(C)重合可能なアニオン性モノマーとの共重合体からなる紙塗工用塗工層強度改良剤及び前記紙塗工用塗工層強度改良剤と、顔料及びバインダーとを含む塗工組成物を原紙に塗工することにより、従来の塗工組成物よりも優れた塗工層強度を有し、さらに優れたインキ受理性、透気性、耐水性をも塗工紙に付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用塗工層強度改良剤に関するものである。さらに詳しくは、抄紙された原紙の表面に塗布することにより、塗工紙に優れた塗工層強度を付与することができ、かつ、塗工紙の耐水性、インキ受理性、透気性をも向上させることができる紙塗工用塗工層強度改良剤および前記塗工層強度改良剤を含有する紙塗工用組成物および前記紙塗工用組成物を塗工した塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙として広く用いられている塗工紙は、原紙の表面にクレー、炭酸カルシウム等の顔料やラテックス、澱粉等のバインダーを主成分とする紙塗工用組成物を塗布乾燥して製造されている。近年、オフセット印刷用塗工紙は、印刷の高速化や更に高まるビジュアル化傾向より、種々の印刷条件において、優れた印刷効果がでる高品質の塗工紙が要求されている。これら塗工紙要求物性の中では、基本となる塗工層強度、耐水強度、インキ受理性、透気性は非常に重要な項目であり、これら物性の向上が強く要求されている。
【0003】
そこで最近では、カチオン変性を加えた両方の性質を有する両性ラテックスを塗工層強度改良剤として用いることにより、顔料親和性を付与し塗工層強度を向上させると共に、塗工液の乾燥過程での不動化点を速めることにより、塗工層を嵩高にしインキ受理性と透気度を向上させることが提案されている。(特許文献1)しかしながら、両性ラテックスを用いた場合、得られる塗工紙のインキ受理性、透気性は向上するが、塗工層強度が不充分であったり、塗工層強度は向上するがインキ受理性、透気性の向上がみられない等、インキ受理性、透気性、塗工層強度の全ての性能を満足させるものはないため、これら全ての性能を満足させることができる塗工層強度改良剤の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭61-268709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の紙塗工用組成物よりも優れた塗工層強度(ドライピック強度)を有し、さらに優れた耐水性、インキ受理性、透気性を付与することができる紙塗工用塗工層強度改良剤、紙塗工用組成物および前記紙塗工用組成物を塗工した塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々の共重合体樹脂および共重合体樹脂組成物について鋭意検討した結果、(A)(メタ)アクリルアミド類と(B)重合可能なカチオン性モノマー及び(C)重合可能なアニオン性モノマーとの共重合体(以後(メタ)アクリルアミド系共重合体と称す)からなる紙塗工用塗工層強度改良剤及び前記紙塗工用塗工層強度改良剤と、顔料及びバインダーとを含有する紙塗工用組成物を原紙に塗工することにより、従来の紙塗工用組成物よりも優れた塗工層強度を有し、さらに優れたインキ受理性、透気性、耐水性をも塗工紙に付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における紙塗工用塗工層強度改良剤である(メタ)アクリルアミド系共重合体に用いられるモノマーのうち、(A)(メタ)アクリルアミド類としては、アクリルアミド類及びメタクリルアミド類があり、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アセトンアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等が挙げられる。これら(A)(メタ)アクリルアミド類は、1種類または2種類以上使用することができる。これらのうち、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセトンアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドが好ましく、アクリルアミドが更に好ましい。
【0008】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系共重合体に用いられるモノマーのうち、(B)重合可能なカチオン性モノマーとしては、ビニルアミン、ジ(メタ)アクリロイルオキシ(メチル)アミン、3−アミノ−3−メチル−1−ブチン等の1級アミン化合物及びそれらの塩、ジアリルアミン、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、iso−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミン化合物及びそれらの塩、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリル−n−プロピルアミン、ジアリル−iso−プロピルアミン、ジアリル−n−ブチルアミン、ジアリル−tert−ブチルアミン、ジアリルベンジルアミン、ジアリルシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルベンジルジメチルアミン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルピリジン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等の3級アミン化合物及びそれらの塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化塩、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化塩、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化塩、ビニルベンジルジメチルアミンの塩化メチル4級化塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル4級化塩等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これら(B)重合可能なカチオン性モノマーは、1種類または2種類以上使用することができる。これらのうち、ジアリルアミンまたはその塩、ジアリルメチルアミンまたはその塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはその塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化塩が好ましく、ジアリルアミンまたはその塩が更に好ましい。
【0009】
(B)重合可能なカチオン性モノマーの塩を得る方法としては、特に制限されるものではなく、重合可能なカチオン性モノマーを一般的な酸で中和すればよい。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸を挙げることができる。
【0010】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系共重合体に用いられるモノマーのうち、(C)重合可能なアニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、β−メチルクロトン酸、β−メチルチグリン酸、α−メチル−2−ペンテン酸、β−メチル−2−ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸及び不飽和モノカルボン酸の塩、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコンン酸、メサコン酸、グルタコン酸、α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸、2−メチルグルタコン酸、3−メチルグルタコン酸、2−メチル−α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチル−α−ジヒドロムコン酸等の不飽和ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸の酸無水物、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、不飽和ジカルボン酸の塩、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及び不飽和スルホン酸の塩が挙げられる。これら(C)重合可能なアニオン性モノマーは、1種類または2種類以上使用することができる。これらのうち、アクリル酸またはその塩が好ましい。
【0011】
(C)重合可能なアニオン性モノマーの塩を得る方法としては、特に制限されるものではなく、重合可能なアニオン性モノマーを一般的な塩基で中和すればよい。塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどの無機塩基、トリエチルアミン、アニリンなどの有機塩基を挙げることができる。
【0012】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系共重合体を構成するモノマー単位中、(A)(メタ)アクリルアミド類の占める割合は特に制限されないが、通常、30〜99モル%の範囲で、好ましくは50〜90モル%であり、(B)重合可能なカチオン性モノマーと(C)重合可能なアニオン性モノマーの合計は特に制限されないが、通常、1〜70モル%の範囲で、好ましくは10〜50モル%である。(B)、(C)がこの範囲内であれば、カラー流動性、塗工層強度、インキ受理性、透気性、耐水性の性能がバランス良く向上する傾向にあり、好ましい。また、(B)、(C)がこの範囲内にあり、(B)重合可能なカチオン性モノマーのモル%が増加すると、インキ受理性が向上する傾向にあり、好ましい。
【0013】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系重合体の合成
法に関しては公知の水溶性ポリマーの重合方法に従えばよく、特に制約はないが、ラジカル重合が好ましく、通常はラジカル重合開始剤の存在下、重合溶液を所定温度範囲に保つことにより重合を行う。重合方法としては、全モノマーを反応容器に一括で仕込み、重合する回分重合、単量体モノマーの一部を重合中に連続で添加する半回分重合法のどちらの方法でも良いが、半回分重合法の方が好まれる。重合中、同一温度に保つ必要はなく、重合の進行にともない適宣変えてよく、必要に応じて加熱あるいは除熱しながら行う。重合温度は使用するモノマーの種類や重合開始剤の種類などにより異なり、単一開始剤の場合には概ね10〜100℃の範囲であり、レドックス系重合開始剤の場合にはより低く、一括で重合を行う場合には概ね−5〜+50℃であり、逐次添加する場合には概ね30〜90℃である。重合時間には特に限定はないが、概ね1〜40時間であるが、好ましくは、単一開始剤で40〜90℃の温度で1〜20時間程度行われる。重合器内の雰囲気は特に限定はないが、一般には窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気中で行うのが好ましい。
【0014】
重合溶剤としては、通常、水を用いるが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール等の他の水溶性溶媒と水との混合物であっても差支えない。またこの水系溶媒中に、後述する重合開始剤、連鎖移動剤が存在することはもちろん可能である。
【0015】
2種以上のモノマーを用いて重合を行う場合、半回分重合法では、それぞれのモノマーの添加速度は、同じであっても異なっていてもよい。また、2種類以上のモノマーの添加開始時期は、同時であっても異なっていてもよいが、少なくとも1種類のモノマーの添加が終了する前に、添加を開始するのが好ましい。
【0016】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系重合体を合成する際に必要に応じて使用する界面活性剤(乳化剤)については特に制限はなく、ノニオン系、アニオン系、両性イオン系および重合性界面活性剤を使用することができる。具体的には、ドデシル硫酸ナトリウムなどの高級アルコールの硫酸エステル塩、(ジ)アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホン酸塩型アニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルフェノールエーテル、アルキルエーテルなどのノニオン系界面活性剤などを使用することができる。両性イオン系界面活性剤としては、アニオン部としてカルボン酸塩、リン酸塩、リン酸エステル塩をもち、カチオン部としてアミン塩、第四級アンモニウム塩をもつものなどを挙げることができる。具体的にはベタイン型、グリシン型等の両性イオン系界面活性剤などが挙げられる。重合性界面活性剤の例として具体的には、プロペニル−2−エチルヘキシルスルホコハク酸エステルナトリウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルリン酸エステル等のアニオン性の重合性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性の重合性界面活性剤等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。添加量は、モノマーに対して、通常、0.1〜2.0重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜1.0重量%である。
【0017】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系重合体を合成する際に必要に応じて使用する重合開始剤としては、一般の水溶性の開始剤が使用できる。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)−プロパンおよびその塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸およびその塩等のアゾ化合物が挙げられる。この場合、単独でも使用できるが、亜硫酸塩のような還元性物質や、アミン類等を組合せてレドックス型の開始剤にして使用することも可能である。この場合の還元剤の例として、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、更にアルドース、ケトース等の還元糖を挙げることができる。また、上記した重合開始剤を2種類併用することも可能である。重合開始剤の添加量は、モノマーに対して、通常は0.00001〜10.0重量%であり、好ましくは0.5〜2.0重量%の範囲である。また、レドックス系の場合には、重合開始剤に対して還元剤の添加量はモル基準で0.1〜100%、好ましくは0.2〜80%である。
【0018】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系重合体を合成する際に必要に応じて使用する重合開始剤は、モノマーを添加すべき水系溶媒中に予め添加しておいてもよいし、また各モノマーと同時に、連続的に反応系へ添加していってもよいが、水系溶媒中に予め添加しておくのが好ましい。
【0019】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤における(メタ)アクリルアミド系重合体を合成する際に必要に応じて使用する連鎖移動剤の制限は特にないが、水溶性の連鎖移動剤が好ましい。開始剤の具体的な例として、次亜リン酸および次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩類、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸およびそれらのナトリウム塩もしくはカリウム塩等のアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩、アリルアミン、アリルアルコール等のアリル化合物、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸等のメルカプタン類、システアミン等が挙げられる。
【0020】
また、(メタ)アクリルアミド系重合体の合成反応終了後、必要に応じてpH調整が行われる。pH調整には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア、塩酸および硫酸等が使用され、これらのうち水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸が好ましい。
【0021】
本発明における紙塗工用塗工層強度改良剤は、上述の合成法で得られた(メタ)アクリルアミド系重合体にさらに塗工層強度の向上(ドライピック強度)や耐水性(ウェットピック強度)、インキ受理性の向上、透気性の向上などの本来の性質を阻害しない範囲で種々の化合物を添加する事ができる。
【0022】
本発明の紙塗工用組成物とは、このようにして得られる紙塗工用塗工層強度改良剤、顔料および水性バインダーからなるものである。
本発明の紙塗工用組成物を調製するにあたり、顔料と水性バインダーの組成割合は、用途や目的に応じて決定され、当業界で一般に採用されている組成と特に異なるところはない。両者の好ましい組成割合は、顔料100重量部に対して、水性バインダーが1〜200重量部程度、より好ましくは5〜50重量部程度である。紙塗工用塗工層強度改良剤の固形分は、顔料100重量部に対し、0.05〜10重量部程度配合するのが好ましく、更に好ましくは、0.1〜5重量部程度である。
【0023】
本発明の紙塗工用組成物の成分となる顔料は、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、白色無機顔料及び白色有機顔料が使用できる。白色無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、炭酸カルシウム(重質又は軽質)、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、酸化チタンなどが挙げられる。また白色有機顔料としては、例えば、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらの顔料は、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
水性バインダーも、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、水溶性のバインダーや水乳化系のバインダーが使用できる。水溶性バインダーとしては、例えば、酸化でんぷんやリン酸エステル化でんぷんをはじめとする無変性の、又は変性されたでんぷん類、ポリビニルアルコール、カゼインやゼラチンをはじめとする水溶性プロテイン、カルボキシメチルセルロースをはじめとする変性セルロース類などが挙げられる。また水乳化系バインダーとしては、例えば、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、メチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。これらの水性バインダーは、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
本発明の紙塗工用組成物は、紙塗工用塗工層強度改良剤に加えて、他の耐水化剤や印刷適性向上剤などの樹脂成分を必要に応じて含有させることもできる。さらには、その他の成分として、例えば、分散剤、粘度・流動性調整剤、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、保水剤、また染料や有色顔料のような着色剤などを、必要に応じて配合させることができる。
【0026】
本発明の紙塗工用組成物は、従来より公知の方法、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、キャストコーターなど、公知の各種コーターを用いる方法により、紙に塗布される。その後必要な乾燥を行い、さらに必要に応じてスーパーカレンダーなどで平滑化処理を施すことにより、本発明の塗工紙を製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の紙塗工用塗工層強度改良剤を含有する紙塗工用組成物を用いることにより、従来の紙塗工用組成物よりも優れた塗工層強度や耐水性、インキ受理性、透気性が付与された塗工紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、含有量又は使用量を表す%及び部は、特に断らないかぎり重量基準である。
pHは、ガラス電極式水素イオン濃度計[東亜電波工業社製]を用い、調製直後の試料のpHを25℃にて測定した値である。
紙塗工用塗工層強度改良剤の粘度は、B型粘度計[東京計器社製、BL型]を用い、1号ローター12rpm、25℃で、調整直後の試料の粘度を測定した値である。
紙塗工用組成物の粘度は、B型粘度計[東京計器社製、BL型]を用い、4号ローター60rpm、25℃で、調整直後の試料の粘度を測定した値である。
【0029】
(合成例1)
<ジアリルアミン塩酸塩(B1)の合成>
温度計、還流冷却器を備えた四つ口フラスコにイオン交換水981.0gを仕込み、毎分200mlの流量で1時間窒素を流し脱気及び反応容器内の窒素置換を行った。合成中は窒素を流し続けた。36%塩酸534.5g(5.4モル)を仕込んだ後、ジアリルアミン(広栄化学社製)520g(5.4モル)を3時間かけて滴下した。36%塩酸でpHを2.5に調整した後、イオン交換水0.4gを添加し、モノマー成分35%のジアリルアミンの塩酸塩(B1)を得た。
【実施例1】
【0030】
温度計、還流冷却器を備えた四つ口フラスコにイオン交換水67.4gを仕込み、毎分300mlの流量で30分間窒素を流し脱気及び反応容器内の窒素置換を行った。合成中は窒素を流し続けた。70℃で過硫酸アンモニウム0.71gを添加した。そこへ(A)(メタ)アクリルアミド類である50%アクリルアミド水溶液91.55g(0.64モル)に次亜リン酸ナトリウム1.17gを溶解させたものと、(C)重合可能なアニオン性モノマーであるアクリル酸13.3g(0.18モル)を、系内の温度を70℃に保ちながら5時間かけて滴下した。この滴下開始と同時に、(B)重合可能なカチオン性モノマーであるジアリルアミンの塩酸塩(B1)35.1g(0.09モル)の滴下を開始し、系内の温度を70℃に保ちながら滴下を続け、3時間後に滴下を終了した。滴下終了後、系内の温度70℃のままで4時間保温した後、系内温度を30℃以下まで降温した。水酸化ナトリウムでpHを5.2に調整した後、イオン交換水20.0gを添加し希釈を行い、ポリマー成分30%で、不揮発分32.1%、25℃におけるB型粘度が153mPa・s、pH5.2の紙塗工用塗工層強度改良剤S1を得た。
【0031】
(実施例2〜3)
実施例1における(A)(メタ)アクリルアミド類、(B)重合可能なカチオン性モノマー、(C)重合可能なアニオン性モノマー、過硫酸アンモニウム、次亜リン酸ナトリウムおよびイオン交換水の量を表1に示したとおり変更する以外は、実施例1と同様の操作を行ない、紙塗工用塗工層強度改良剤S2〜S3を得た。
以上の実施例1〜3で得られた、紙塗工用塗工層強度改良剤S1〜S3の不揮発分(%)、粘度(25℃)およびpHを表1に示す。
【0032】
(比較例1)
温度計、還流冷却器を備えた四つ口フラスコにイオン交換水62.2gを仕込み、毎分300mlの流量で30分間窒素を流し脱気及び反応容器内の窒素置換を行った。合成中は窒素を流し続けた。70℃で過硫酸アンモニウム0.85gを添加した。そこへ(B)重合可能なカチオン性モノマーであるジアリルアミンの塩酸塩(B1)160.0g(0.42モル)に次亜リン酸ナトリウム1.07gと、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物0.013gを溶解させたものを、系内の温度を70℃に保ちながら3時間かけて滴下した。この滴下開始と同時に、(A)(メタ)アクリルアミド類である50%アクリルアミド水溶液58.91g(0.42モル)の滴下を開始し、系内の温度を70℃に保ちながら滴下を続け、5時間後に滴下を終了した。滴下終了後、系内の温度70℃のままで4時間保温した後、系内温度を30℃以下まで降温した。水酸化ナトリウムでpHを5.3に調整した後、イオン交換水1.35gを添加し希釈を行い、ポリマー成分30%で、不揮発分31.3%、25℃におけるB型粘度が34mPa・s、pH5.3の紙塗工用塗工層強度改良剤S4を得た。
【0033】
(比較例2)
温度計、還流冷却器を備えた四つ口フラスコにイオン交換水82.7gを仕込み、毎分300mlの流量で30分間窒素を流し脱気及び反応容器内の窒素置換を行った。合成中は窒素を流し続けた。70℃で過硫酸アンモニウム0.62gを添加した。そこへ(A)(メタ)アクリルアミド類である50%アクリルアミド水溶液61.1g(0.43モル)に次亜リン酸ナトリウム1.09gを溶解させたものを、系内の温度を70℃に保ちながら5時間かけて滴下した。この滴下開始と同時に、(C)重合可能なアニオン性モノマーであるアクリル酸31.0g(0.43モル)の滴下を開始し、系内の温度を70℃に保ちながら滴下を続け、5時間後に滴下を終了した。滴下終了後、系内の温度70℃のままで4時間保温した後、系内温度を30℃以下まで降温した。水酸化ナトリウムでpHを5.2に調整した後、イオン交換水20.0gを添加し希釈を行い、ポリマー成分30%で、不揮発分31.4%、25℃におけるB型粘度が131mPa・s、pH5.2の紙塗工用塗工層強度改良剤S5を得た。
以上の比較例1〜2で得られた、紙塗工用塗工層強度改良剤S4〜S5の不揮発分(%)、粘度(25℃)およびpHを表1に示す。
【0034】
(実施例4)
<紙塗工用組成物の製造例>
ウルトラホワイト90(顔料、米国エンゲルハードミネラルズ社製のクレー)60重量部、カービタル90(顔料、富士カオリン(株)製の炭酸カルシウム)40重量部、ポリアクリル酸系顔料分散剤0.2重量部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(水性バインダー)9.5重量部及び市販のリン酸エステル化でんぷん3量部を混合し、水を加えて、固形分64.5%となるようにマスターカラーを調製した。続いて、マスターカラーの顔料100重量部に、前記実施例に記載した紙塗工用塗工層強度改良剤(S1)の固形分が0.6重量部となる割合で添加し、固形分を60.0%に調整し、紙塗工用組成物T1を得た。
【0035】
(実施例5〜6)
実施例4における紙塗工用塗工層強度改良剤S1を表2に記載の紙塗工用塗工層強度改良剤に変更する以外は実施例4と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T2〜T3を得た。
【0036】
(比較例3)
実施例4において紙塗工用塗工層強度改良剤S1を配合しない以外は、実施例4と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T4を得た。
【0037】
(比較例4)
実施例4における紙塗工用塗工層強度改良剤S1を表3に記載の紙塗工用塗工層強度改良剤に変更する以外は実施例4と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T5を得た。
得られた紙塗工用組成物T5は、著しい粘度上昇がみられたため、塗工を断念した。
【0038】
(比較例5)
実施例4における紙塗工用塗工層強度改良剤S1を表3に記載の紙塗工用塗工層強度改良剤に変更する以外は実施例4と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T6を得た。
【0039】
(比較例6)
実施例4において紙塗工用塗工層強度改良剤S1を配合する代わりに、実施例4で使用したスチレン−ブタジエン系ラテックスの固形分が0.6重量部となる割合で添加する以外は、実施例4と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T7を得た。
【0040】
<塗工紙の製造例および試験方法>
実施例4〜6、比較例3および比較例5〜6で得られた紙塗工用組成物T1〜3、T4、T6およびT7を、米坪量82g/mの上質紙の片面に、ワイヤーロッドを用いて塗工量が15g/mとなるように塗布した。塗布後ただちに、130℃にて10秒間熱風乾燥し、さらに温度60℃、線圧60kN/mの条件で1回スーパーカレンダー処理を施して、塗工紙を得た。こうして得た塗工紙につき、塗工層強度(ドライピック法)及び耐水性(ウェットピック法)、インキ受理性(A法,B法)、透気度を測定し、測定結果を表2〜3に示す。なお、測定方法は以下のとおりである。
【0041】
<塗工層強度>(ドライピック法)
RI試験機(明製作所製)を使用して印刷し、紙むけ状態を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
塗工層強度 (劣)1〜5(優)
【0042】
<耐水性>(ウェットピック法)
RI試験機(明製作所製)を使用して、塗工面を給水ロールで湿潤させた後に印刷し、紙むけ状態を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
耐水性 (劣)1〜5(優)
【0043】
<インキ受理性>(A法)
RI試験機(明製作所製)を使用して、塗工面を給水ロールで湿潤させた後に印刷し、インキの受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
【0044】
<インキ受理性>(B法)
RI試験機(明製作所製)を使用して、金属ロールとゴムロールの間にわずかな間隙をあけ、その間隙に水を注いだ後速やかに印刷し、インキの受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
【0045】
<透気度>
Messmer Buchel社製パーカプリントサーフ ラフネステスターModel M590を用い、作成した塗工紙の透気度を測定した。透気度は数値が低いほど透気性が良好である。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリルアミド類と(B)重合可能なカチオン性モノマー及び(C)重合可能なアニオン性モノマーとの共重合体を含有することを特徴とする、紙塗工用塗工層強度改良剤。
【請求項2】
(B)がジアリルアミンまたはその塩および/または(C)がアクリル酸またはその塩であることを特徴とする、請求項1記載の紙塗工用塗工層強度改良剤。
【請求項3】
請求項1〜2に記載の紙塗工用塗工層強度改良剤と、顔料及びバインダーを含有することを特徴とする紙塗工用組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の紙塗工用組成物を紙に塗工してなる塗工紙。

【公開番号】特開2008−81889(P2008−81889A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263422(P2006−263422)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】