説明

紙容器の注出具

【課題】流通過程における紙容器側面の変形や傷付を防止する紙容器の注出具を提供する。
【解決手段】注出具6は円筒形状で紙容器1の開口予定部5に挿入するテーパー形状の挿入部8と開口予定部5に挿入しない注出部9から成る。挿入部8は内容液を導入する一対の開口部8aを備え、先端部に半筒状の突起8bを備える。注出具6は一対の半筒状部6a、6bの対向する一端部に凹係止部10aと凸係止部10bをそれぞれ備える一方、他端部はヒンジ部11で連結する。ヒンジ部11は注出具6の厚みTを一部切欠いて成る薄肉部である。そして、注出具6はその中心軸Lに沿って一対の半筒状部6a、6bに分割された開放状態で樹脂フイルムの収納袋7に収められ、紙容器1の裏面4bに固着される。このため、半筒状部6a、6bの裏面4bからの張出Mは、注出具6の筒状態での直径の1/2なので張出が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙容器の内容液を注出する注出具に関し、詳しくは紙容器の側面からの張出が少ない紙容器の注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳、清涼飲料等の液体食品を充填する紙容器の注出具に関する従来技術として特許文献1に掲載の内容が知られている。図10、図11に示すように、蓋30を備える注出部31と開口部32a、32bを備える挿入部33で形成された筒状の注出具34が紙容器35の側面35aに収納袋36に収めて取付けられる。この紙容器35であればスポーツや屋内外活動時等に手軽に持運びができて、収納袋36から取外した注出具34の挿入部33を頂面35bの開口予定部36に挿入し、紙容器35を傾けて内容液を注出できるので利便性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−182258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙容器35が消費者に届くまでの流通過程で、紙容器35の側面35aから張出す注出具34が隣接する紙容器や輸送用コンテナー等に押付けられて、注出具34に圧力が掛って側面35aが変形や傷付つくという問題があった。そこで、本発明はかかる従来技術の問題に鑑みなされたものであって、紙容器に取付けた注出具による流通過程での側面の変形や傷付が防止できる紙容器の注出具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、、内容液を注出する注出具が装着された紙容器の注出具であって、前記注出具は円筒形状で紙容器の開口予定部に挿入する挿入部と前記開口予定部に挿入しない注出部とで成る。さらに、前記挿入部は先端部に突起を備える一方で側面に内容液を導入する開口部を備える。そして、前記紙容器に前記注出具を装着する際に、前記注出具はその中心軸に沿って一対の半筒状注出具に分割された状態で前記紙容器に装着されることを特徴としている。
【0006】
この発明の好ましい態様では、挿入部はテーパー状の円筒形状である。
【0007】
この発明の好ましい態様では、一対の半筒状注出具の対向する両端部に凹型係止部と凸型係止部をそれぞれ備える。
【0008】
この発明の好ましい態様では、一対の半筒状注出具の対向する一端部に凹係止部と凸係止部をそれぞれ備える一方、他端部はヒンジ部で連結する。
【0009】
この発明の好ましい態様では、ヒンジ部は前記注出具の厚みを一部切欠いて成る薄肉部である。
【0010】
この発明の好ましい態様では、挿入部の周囲に螺旋状の突起を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、前記注出具は円筒形状で紙容器の開口予定部に挿入する挿入部と前記開口予定部に挿入しない注出部とから成り、前記注出具はその中心軸に沿って一対の半筒状注出具に分割されて前記紙容器に装着されるので、前記注出具を分割しない場合に比べて前記注出具の張出が半減する。このため、前記注出具が嵩張らないので、流通過程での紙容器の側面の変形や損傷の恐れを回避することができるので紙容器の品質を保持することができる。
挿入部は先端部に備える突起で前記開口予定部を容易且つ確実に破断できて、前記挿入部に備える開口部を介して内容液を容易に前記挿入部に導入して注出部から確実に注出することができる。
【0012】
好ましい態様によれば、挿入部はテーパー状の円筒形状なので、前記開口予定部を容易に破断しながら挿入できて、上述の効果が確実に得られることができる。
【0013】
好ましい態様によれば、一対の半筒状注出具の対向する両端部に凹型係止部と凸型係止部をそれぞれ備えるので、この凹型係止部と凸型係止部を係止することで容易に筒状の前記注出具に組立てることができて、上述と同様の効果が確実に得られる。
【0014】
好ましい態様によれば、一対の半筒状注出具の対向する一端部に凹係止部と凸係止部をそれぞれ備える一方、他端部はヒンジ部で連結するので、前記一対の半筒状注出具は離散することなく確実且つ容易に筒状に組立できて、上述と同様の効果が確実に得られる。
【0015】
好ましい態様によれば、ヒンジ部は前記注出具の厚みを一部切欠いて成る薄肉部なので、構造簡単で前記注出具のコストが低減できて、上述と同様の効果が確実に得られる。
【0016】
好ましい態様によれば、挿入部の周囲に螺旋状の突起を備えるので、前記注出具を回転することで開口予定部に挿入容易であるとともに、破断した開口予定部の破断片が螺旋状の突起に絡むので、前記注出具が開口予定部に安定して保持されて液漏れが防止できるので内容液の注出性が向上し、上記と同様の効果が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態における、注出具6が一対の半筒状注出具6a、6bに分割されてヒンジ部11で連結した状態で直方体形状の紙容器本体1aの裏面4bに装着された状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態における、一対の半筒状注出具6a、6bの凹係止部10aと凸係止部10bを係合して注出具6が形成された状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態における、図2の注出具6の注出部9におけるA−A断面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態における、図2の注出具6の挿入部8におけるB−B断面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態における、紙容器本体1aの展開図である。
【図6】本発明の第一の実施形態における、図5の開口予定部5のC−C断面図である。
【図7】本発明の第一の実施形態における、紙容器本体の開口予定部5に挿入した注出具6の状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第二の実施形態における、一対の半筒状注出具6a、6bの両端部の凹係止部10aと凸係止部10bをそれぞれ係合し組立てた筒状の注出具6の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第三の実施形態における、注出具6の一対の半筒状注出具6a、6bの一端部がヒンジ11で他端部は凹係止部10aと凸係止部10bで係合して成る注出具6の挿入部8の周囲に螺旋状突起Hを設けた状態を示す斜視図である。
【図10】従来例における、紙容器35の側面35aに注出具34を取付けた状態を示す斜視図である。
【図11】従来例における、紙容器35の頂面35bに形成された開口予定部36に注出具34を挿入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本発明の実施形態>
以下に、本発明の第一の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0019】
<紙容器の注出具の構成>
【0020】
図1、図2、図3、図4に示すように、紙容器1は矩形の頂面2と底面3と四側面4(正面4a、裏面4b、側面4c、側面4d)で外観が直方体形状に形成された紙容器本体1aにジュース等の内容液が充填される。頂面2には円形の開口予定部5が直径G=8mmで形成される。
【0021】
内容液を注出するための注出具6は熱可塑性樹脂で成形され、樹脂フイルムの収納袋7に収めて紙容器1の裏面4bに熱溶着又は接着剤で固着される。このとき、筒状の注出具6はその中心軸Lに沿って一対の半筒状部6a、6bに分割されて開放状態で紙容器1に装着される。このため、注出具6の筒状態における最大直径S1に対して、半筒状部6a、6bの裏面4bからの張出Mは最大直径S1の1/2である。
【0022】
より詳しくは、注出具6は全長L=45mm、厚みT=0.5mmの円筒形状で紙容器1の開口予定部5に挿入するテーパー形状の挿入部8(長さL1=25mm、直径S2=8mm、直径S3=5mm)と開口予定部5に挿入しない注出部9(長さL2=15mm、直径S1=15mm)とから成る。挿入部8は内容液を挿入部8の内部に導入する一対の楕円形の開口部8aを備える。さらに、挿入部8の先端部は半筒状の突起8b(長さL3=5mm)を備えて開口8cが形成される。
【0023】
一対の半筒状部6a、6bの対向する一端部に凹係止部10aと凸係止部10bをそれぞれ備える一方、他端部はヒンジ部11で連結する。ヒンジ部11は注出具6の厚みTを一部切欠いて成る薄肉部である。
【0024】
「紙容器の構成」
図5、図6に示すように、紙容器を形成する帯状の包材20には紙容器本体1aを成型容易とするための複数の折り目が形成され、紙容器一個分に該当する領域Eにおいて、縦方向の折り目21、22、23、24、横方向の折り目25、26、27、28、斜め方向の8本の折り目29、がそれぞれ形成される。上記紙容器本体1aの裏面4bの頂面2に対応する位置に内容液を注出するための円形の開口予定部5が形成される。
【0025】
包材20の構成は、外側から内側にかけて順に、外側層20a、紙基材20b、接着層20c、バリヤー層20d、二層の内側層20eから成り、紙基材20bの外側面にデザイン等20fが予め印刷される。外側層20a、内側層20eは低密度ポリエチレン樹脂、接着層20cはポリエチレン或いはエチレン共重合体等の樹脂、バリヤー層20dはアルミ箔等で形成される。開口予定部5は開口容易とするために紙基材20bが直径G=8mmの円形に切り抜かれる。
【0026】
「紙容器の製造工程の説明」
図示しない充填機において、帯状包材20を下方に搬送しながら両端部を重ねて筒状に縦線シールして内容液を充填した後に、横線シールして紙容器一個分に該当する領域Eを切離して原型容器を形成し、縦方向の折り目21、22、23、24、横方向の折り目25、26、27、28、及び斜め方向の複数の折り目29を折り曲げて、矩形の頂面2と底面3と四側面4から成る外観直方体形状の紙容器本体1aが連続形成される。
【0027】
<紙容器の注出具の作用>
一対の半筒状部6a、6bに分割された開放状態の注出具6を収納袋7から取出し、ヒンジ部11を中心に回転して一対の半筒状部6a、6bの対向する一端部に備える凹係止部10aと凸係止部10bを係合して円筒状の注出具6に組立てる。開口予定部5は直径G=8mmで紙基材20bが円形に切り抜かれるので、挿入部8の先端部に備える半筒状の突起8bによって、開口予定部5の薄肉部は容易に破断されて挿入部8が挿入する。このとき、挿入部8の円周縁から若干突出する凹係止部10aと凸係止部10bが開口予定部5に食込むので注出具6は開口予定部5に安定して保持される。そして、紙容器1を傾斜すると、挿入部8の側面に形成された一対の開口部8aと先端部の開口8cから内容液が挿入部8の内部に導入して注出部9から容易に注出できる。
【0028】
このように、注出具6は一対の半筒状部6a、6bに分割された開放状態で紙容器1に取付けられるので、紙容器1の側面である裏面4bからの張出は注出部9の直径S1=15mmから張出M=7.5mmに半減する。このように、注出具6が嵩張らないので、紙容器1を消費者まで搬送する間の輸送ダメージによる裏面4b或いは注出具6の変形や損傷発生を確実に低減することができるので、紙容器としての品質性が向上する。
<本発明の第二の実施形態>
【0029】
本発明の第二の実施形態を図8に基づいて説明するが、図3と同様の構成に関しては同符号を用いて重複する説明を省く。図1、図2、図4とは全く同じ構成なのでその説明を省く。
【0030】
注出具6は一対の半筒状部6a、6bに分離分割した状態で紙容器1に取付けられ、一対の半筒状部6a、6bの対向する両端部にそれぞれ設けた凹型係止部10aと凸型係止部10bを係合して注出具6を筒状に組立てることができる。このように、一対の半筒状部6a、6bは完全に分離分割された状態で紙容器1に取付けられて、本発明の第一の実施状態と同様の効果を得ることができる。
<本発明の第三の実施形態>
【0031】
本発明の第三の実施形態を図9に基づいて説明するが、図1、図2、図3、図4と同様の構成に関しては同符号を用いて重複する説明を省く。
【0032】
注出具6の一対の半筒状注出具6a、6bの一端部がヒンジ11で、他端部は凹係止部10aと凸係止部10bで係合し、挿入部8の周囲にはヒンジ11と凹凸係止部10a、10bに干渉しないように螺旋状突起Hを設ける。挿入部8と注出部9は同直径で連結する一方で注出部9側に鍔部9aを備え、この鍔部9aは開口予定部5より大径で形成される。さらに、挿入部8の先端部は傾斜8cが形成される。紙容器の開口予定部5に挿入部8を矢印Qに示すように回転して挿入すると、開口予定部5の薄肉樹脂は容易に螺旋状突起Hに絡みながら破断するので内容液が漏れることなく注出できる。そして、注出具6は一対の半筒状部6a、6bに分割して紙容器に取付けられるので、本発明の第一の実施状態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、挿入部8のテーパー形状の傾斜角度は自由に選定できるし、テーパー無し筒状でもよい。本体8の先端部の突起8bは半円周より狭い領域に形成しても構わない。突起8bの代わりに挿入部8の先端自体を斜め筒状に切断する形状でも構わない。注出部9に蓋を付けることもできる、この場合、袋7の中に独立した蓋を挿入するか、或いは、一対の半筒状部6a、6bのどちらか一方にヒンジを介して蓋を連結することもできる。蓋をヒンジで連結する場合は、蓋を含む注出部9の裏面4bからの張出を出来るだけ抑えるように形成される。本発明の一対の半筒状注出具に分割する注出具6の構成は従来の様々な形態の注出具に適応可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 紙容器
4b 裏面
5 開口予定部
6 注出具
6a 半筒状部
6b 半筒状部
7 収納袋
8 挿入部
8a 開口部
8b 突起
9 注出部
10a 凹係止部
10b 凸係止部
11 ヒンジ部
L 中心軸
M 張出

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を注出する注出具が装着された紙容器の注出具であって、
前記注出具は円筒形状で紙容器の開口予定部に挿入する挿入部と前記開口予定部に挿入しない注出部とから成り、前記挿入部は先端部に突起を備える一方で側面に内容液を導入する開口部を備え、
前記注出具はその中心軸に沿って一対の半筒状注出具に分割されて前記紙容器に装着されることを特徴とする紙容器の注出具。
【請求項2】
請求項1に記載の紙容器の注出具であって、前記挿入部はテーパー状の円筒形状であることを特徴とする紙容器の注出具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の紙容器の注出具であって、前記一対の半筒状注出具の対向する両端部に凹型係止部と凸型係止部をそれぞれ備えることを特徴とする紙容器の注出具。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の紙容器の注出具であって、前記一対の半筒状注出具の対向する一端部に凹係止部と凸係止部をそれぞれ備える一方、他端部はヒンジ部で連結することを特徴とする紙容器の注出具。
【請求項5】
請求項4に記載の紙容器の注出具であって、前記ヒンジ部は前記注出具の厚みを一部切欠いて成る薄肉部であることを特徴とする紙容器の注出具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の紙容器の注出具であって、前記挿入部の周囲に螺旋状の突起を備えることを特徴とする紙容器の注出具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−219129(P2011−219129A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89896(P2010−89896)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】