説明

紙容器用積層材料及び液体用紙容器

【課題】シーラント層が接着剤層を介して他層に積層されている多層構成の紙容器用積層材料であって、接着剤層の接着剤に由来する成分がシーラント層を通過して内面側に移行しない紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器を提供することにある。
【解決手段】板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂層を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が内容物に接する側の最外面がポリエチレン樹脂層で、反対側の最外面が環状オレフィン樹脂層である多層フィルムからなるか、あるいは該シーラント層が環状オレフィン樹脂層の両側の最外面にポリエチレン樹脂層を有する多層フィルムからなり、液体用紙容器が前記紙容器用積層材料を用いて、シーラント層面が内容物に接するようにして製函したものからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
果汁飲料、ジュース、お茶類、コーヒー、乳飲料、スープ等のノンアルコール飲料や清酒、焼酎等のアルコール飲料を包装する容器に使用する紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙容器用積層材料としては、外側から順に、ポリオレフィン系樹脂層、基材層、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層が積層された多層構成のものが多く使用されており、前記シーラント層としては、通常、低密度ポリエチレン樹脂が使用され、前記接着剤層にはポリウレタン系接着剤が使用されている。シーラント層に低密度ポリエチレン樹脂を使用し、接着剤層にポリウレタン系接着剤を使用した構成の紙容器用積層材料を用いて製函した液体用紙容器は、中に液状の内容物を包装した場合、接着剤層に使用したポリウレタン系接着剤由来の成分がシーラント層を通過して内容物中に移行し、内容物の品質、特に、味覚を損なってしまうなどの問題があった。これらの問題を改善するべく、接着剤層を介さないでシーラント層を直接他の層に積層した構成の包装材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−192675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、シーラント層が接着剤層を介して他層に積層されている多層構成の紙容器用積層材料であって、接着剤層の接着剤に由来する成分がシーラント層を通過して内面側に移行しない紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る発明は、板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂層を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が内容物に接する側の最外面がポリエチレン樹脂層で、反対側の最外面が環状オレフィン樹脂層である多層フィルムからなることを特徴とする紙容器用積層材料である。
【0005】
本発明の請求項2に係る発明は、板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂層を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が環状オレフィン樹脂層の両側の最外面にポリエチレン樹脂層を有する多層フィルムからなることを特徴とする紙容器用積層材料である。
【0006】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2記載の紙容器用積層材料を用いて、シーラント層面が内容物に接するようにして製函したものからなることを特徴とする液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙容器用積層材料は、板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂層を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が内容物に接
する側の最外面がポリエチレン樹脂層で、反対側の最外面が環状オレフィン樹脂層である多層フィルムからなるか、あるいは、該シーラント層が環状オレフィン樹脂層の両側の最外面にポリエチレン樹脂層を有する多層フィルムからなっているので、シーラント層に含まれる環状オレフィン樹脂層が接着剤層の接着剤に由来する成分がシーラント層全体を通過して内面側に移行するのを防止する役割を果たす。また、液体用紙容器が前記紙容器用積層材料を用いて、シーラント層面が内容物に接するようにして製函したものからなっているので、接着剤由来の成分が充填包装した内容物中に移行せず、初期品質を良好に保持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の紙容器用積層材料を、実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。図1(a)は本発明の紙容器用積層材料の一実施形態を示す側断面図であり、紙容器用積層材料(20)は外側から厚み方向に順に、ポリオレフィン系樹脂層(2)、基材層(1)、接着性樹脂層(3)、ガスバリア層(4)、接着剤層(5)、シーラント層(10)が積層されており、前記シーラント層(10)は環状オレフィン樹脂層(6)とポリエチレン樹脂層(7)との二層フィルムからなっている。図1(b)は紙容器用積層材料の他の実施形態を示す側断面図であり、紙容器用積層材料(21)は外側から厚み方向に順に、ポリオレフィン系樹脂層(2)、基材層(1)、接着性樹脂層(3)、ガスバリア層(4)、接着剤層(5)、シーラント層(11)が積層されており、前記シーラント層(11)はポリエチレン樹脂層(7)とポリエチレン樹脂層(8)の間に環状オレフィン樹脂層(6)を有する三層フィルムからなっている。
【0009】
前記紙容器用積層材料(20、21)は、ガスバリア層(4)と接着剤層(5)の間に、さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムなどからなる補強フィルム層を接着剤を介して積層した構成でも構わない。
【0010】
前記基材層(1)は、坪量200〜500g/m2の板紙からなっている。
【0011】
前記ポリオレフィン系樹脂層(2)には、主に、厚みが3〜40μmの低密度ポリエチレン樹脂が使用され、積層方法は公知の溶融押出ラミネーション法で積層する。
【0012】
前記接着性樹脂層(3)には、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン・アクリル酸共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂、アイオノマー樹脂などが使用可能である。厚みは5〜50μmが好ましい。
【0013】
前記ガスバリア層(4)は、単層構成又は積層構成の材料からなっており、単層構成の材料としては、ニ軸延伸ポリエステルフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、アルミニウム箔などが使用され、積層構成の材料としては、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に少なくとも、酸化珪素若しくは酸化アルミニウムなどの無機酸化物の蒸着薄膜層を積層したガスバリア性フィルムなどが使用される。
【0014】
前記接着剤層(5)は、ポリウレタン系接着剤からなっており、水酸基を持った主剤とイソシアネート基を持った硬化剤とを2液混合して使用する2液型の接着剤が使用され、塗布量は1〜5g/m2(乾燥状態)が良い。
【0015】
前記シーラント層(10)は、環状オレフィン樹脂層(6)とポリエチレン樹脂層(7)との二層フィルムからなっており、前記二層フィルムは環状オレフィン樹脂とポリエチレン樹脂を使用して、二層共押出法で押し出して、製膜し作成する。環状オレフィン樹脂層(6)とポリエチレン樹脂層(7)との厚み比率は、環状オレフィン樹脂層(6)/ポリエチレン樹脂層(7)=1/1〜9/1(厚み比率)が好ましく、総厚は30〜90μmが好ましい。積層方法は公知のドライラミネーションで積層する。
【0016】
前記シーラント層(11)は、ポリエチレン樹脂層(7)とポリエチレン樹脂層(8)との間に環状オレフィン樹脂層(6)を有する三層フィルムからなっており、前記三層フィルムはポリエチレン樹脂と環状オレフィン樹脂を使用して、三層共押出法で押し出して製膜し、作成する。この場合の各層の厚み比率は、ポリエチレン樹脂層(7)/環状オレフィン樹脂層(6)/ポリエチレン樹脂層(8)=1/1/1〜3/1/3が好ましく、総厚は30〜90μmが好ましい。
【0017】
前記環状オレフィン樹脂層(6)に使用される樹脂の種類としては、例えば、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体樹脂、環状オレフィンの開環共重合体の水素化物樹脂、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性樹脂、環状オレフィンの開環共重合体のグラフト変性樹脂などがある。
【0018】
本発明の紙容器用積層材料は、上記記載の如く、シーラント層の構成の中に環状オレフィン樹脂層を含んでいるので、その環状オレフィン樹脂層が、接着剤層に使用した接着剤由来の成分がシーラント層を通過して内側に移行するのを防止する作用効果を果たす特徴を有している。
【0019】
本発明の液体用紙容器は、前記紙容器用積層材料(20)または紙容器用積層材料(21)を用いて、それぞれシーラント層(10)又はシーラント層(11)面が内容物に接するように製函したものからなっており、充填包装した内容物の味などの初期品質を良好に保持する。液体用紙容器の形態としては、特に限定されないが、例えば、フラットトップタイプあるいはゲーベルトップタイプの角型の液体用紙容器などがある。
【0020】
本発明の紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器を具体的な実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0021】
基材層(1)として、坪量400g/m2の板紙を使用し、ポリオレフィン系樹脂層(2)及び接着性樹脂層(3)の樹脂として、低密度ポリエチレン樹脂を使用し、ガスバリア層(4)として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に厚さ50nmの酸化珪素薄膜層、ポリビニルアルコール樹脂を主成分とする厚さ0.5μmの乾燥皮膜からなるガスバリ性被膜層を積層したガスバリア性フィルムを使用し、接着剤層(5)として、ポリウレタン系接着剤を使用し、シーラント層(10)として、エチレン・環状オレフィンランダム共重合体樹脂層/ポリエチレン樹脂層=9/1(厚み比率)の総厚60μmの二層共押出フィルムを使用して、低密度ポリエチレン樹脂(20μm)/板紙(坪量400g/m2)/低密度ポリエチレン樹脂(30μm)/ガスバリア性フィルム/ポリウレタン系接着剤(乾燥塗布量5g/m2)/二層共押出フィルム(60μm)の構成の本発明の紙容器用積層材料(20)を作成した。前記紙容器用積層材料(20)を用いて紙容器製造機で内容量1000mlのゲーベルトップタイプの本発明の液体用紙容器を作成した。
【0022】
以下に、本発明の比較用の実施例について説明する。
【実施例2】
【0023】
シーラント層として、厚み60μmの低密度ポリエチレンフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較用の紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器を作成した。
【0024】
〈評価〉
実施例1の本発明の液体用紙容器及び実施例2の比較用の液体用紙容器に蒸留水を充填、密封し、60℃で24時間保存後に、中の蒸留水の味覚の良否を評価した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

表1に示すように、実施例1の本発明の液体用紙容器に充填された蒸留水には接着剤由来の異味が含まれていなかった。一方、実施例2の比較用の液体用紙容器に充填された蒸留水には接着剤由来の異味が含まれていた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明の紙容器用積層材料の一実施形態を示す側断面図であり、(b)は紙容器用積層材料の他の実施形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…基材層
2…ポリオレフィン系樹脂層
3…接着性樹脂層
4…ガスバリア層
5…接着剤層
6…環状オレフィン樹脂層
7,8…ポリエチレン樹脂層
10,11…シーラント層
20,21…紙容器用積層材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂層を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が内容物に接する側の最外面がポリエチレン樹脂層で、反対側の最外面が環状オレフィン樹脂層である多層フィルムからなることを特徴とする紙容器用積層材料。
【請求項2】
板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂層を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が環状オレフィン樹脂層の両側の最外面にポリエチレン樹脂層を有する多層フィルムからなることを特徴とする紙容器用積層材料。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の紙容器用積層材料を用いて、シーラント層面が内容物に接するようにして製函したものからなることを特徴とする液体用紙容器。

【図1】
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【公開番号】特開2008−221606(P2008−221606A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63126(P2007−63126)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】