説明

紙幣入出金装置

【課題】 表裏反転機構を設けることなく紙幣の表裏を取り揃えることができ、装置の小型化、簡素化、低コスト化を図ることを可能とする。
【解決手段】 紙幣の収納部は複数の金種別収納部28、29、30と一つの一括収納部16とからなり、前記金種別収納部、前記一括収納部、および一括一時保留部27はそれぞれ紙幣の入口と出口とが同一とされて収納時と繰出し時とでは紙幣の移動方向が逆になる入出口部31、49を有し、これら各入出口部は一方向に紙幣を搬送するループ状をなす搬送路にそれぞれ連結し、前記一括一時保留部27の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する際に、表裏の一方側の紙幣は前記金種別収納部へ収納させ、表裏の他方側の紙幣は前記一括収納部16へ収納させるとともに、前記分類収納終了後または補充指令時に前記一括収納部16へ収納された表裏の他方側の紙幣を繰出して前記金種別収納部へ収納させる制御手段60を備え、前記各収納部内の紙幣の表裏を取り揃えるようにしたことにある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銀行等の金融機関で用いられ、紙幣の入金処理および出金処理を行なう紙幣入出金装置に係り、特に紙幣の表裏を反転させて表裏を取り揃えるための反転機構を有することなく表裏を取り揃えることができる紙幣入出金装置に関する。
【0002】
【従来の技術】紙幣の入金処理および出金処理を自動的に行なわせる紙幣入出金装置は、一般に入金紙幣を受入れて1枚ずつ繰込む入金口部と、繰込まれた紙幣を搬送する搬送路と、この搬送路中に設けられて紙幣の金種、真偽、表裏等を識別する識別部と、入金紙幣を一括あるいは金種別に分類した状態で一時保留する一時保留部と、紙幣を金種別に収納するとともに必要な紙幣を1枚ずつ繰出すことができる金種別収納部と、これら金種別収納部から繰出された出金紙幣を外部から取出し可能に投出する出金口部とを有し、前記入金口部に投入された紙幣を1枚ずつ繰込んで識別し、入金可能な紙幣のみを一時保留部に一時保留させ、入金承認指令によりその一時保留紙幣を金種別収納部へ収納する入金処理と、出金指令に基づいて金種別収納部から必要な紙幣を繰出して識別し、出金可能な紙幣のみを出金口部へ投出する出金処理とが行なえるようになっている。
【0003】また、金種別収納部が満杯状態になったときや業務が終了したときに金種別収納部から紙幣を回収する収納部として、あるいは金種別収納部の紙幣が不足したときや業務の始業時に紙幣を金種別収納部へ補充するための補充紙幣の収納部として使用される一括収納部が設けられている。
【0004】一方、銀行等の金融機関では、顧客に紙幣を手渡すとき、すべての紙幣を表向きに取り揃えて渡すことが慣例となっており、そのため金融機関で使用される紙幣入出金装置には紙幣搬送路の一箇所に紙幣の表裏を反転させて取り揃えるための表裏反転機構が設けられ、裏向きの紙幣が送られてきたときこれを分岐させてスイッチバック方式により表裏の反転を行ない、元の搬送路へ合流させることにより表裏が揃うようになされている。この表裏反転は、入金処理時か出金処理時のいずれかに行なわれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかるに従来の紙幣入出金装置では、紙幣の表裏を取り揃えることが必要な装置とする場合に搬送路の途中部に表裏反転機構を設けることが必須であり、この表裏反転機構は紙幣の搬送方向全域を一旦受入れるだけのスペースが必要となることなどから、搬送路の構造が複雑化するばかりでなく装置が大型化し、かつコストも嵩むものとなるなどの問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、表裏反転機構を設けることなく紙幣の表裏を取り揃えることができ、装置の小型化、簡素化、および低コスト化を図ることができる紙幣入出金装置を提供することを課題とするものである。
【0007】上記課題を解決する手段として本発明は、入金口へ投入された紙幣を1枚ずつ繰込んで識別部で識別し、入金可能な紙幣のみを一括一時保留部へ収納し、入金承認指令によりその一括一時保留部内の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する入金処理と、出金指令に基づいて前記収納部から必要な紙幣を繰出して識別し、出金可能な紙幣のみを出金口へ投出する出金処理とを行う紙幣入出金装置において、前記複数の収納部は複数の金種別収納部と一つの一括収納部とからなり、前記金種別収納部、前記一括収納部、および前記一括一時保留部はそれぞれ紙幣の入口と出口とが同一とされて収納時と繰出し時とでは紙幣の移動方向が逆になる入出口部を有し、これら各入出口部は一方向に紙幣を搬送するループ状をなす搬送路にそれぞれ連結し、前記一括一時保留部の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する際に、表裏の一方側の紙幣は前記金種別収納部へ収納させ、表裏の他方側の紙幣は前記一括収納部へ収納させるとともに、前記分類収納終了後または補充指令時に前記一括収納部へ収納された表裏の他方側の紙幣を繰出して前記金種別収納部へ収納させる制御手段を備え、前記各収納部内の紙幣の表裏を取り揃えるようにしたことにある。
【0008】前記金種別収納部が満杯時の場合を考慮して、前記一括一時保留部の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する際に、各金種別収納部の収納可能量よりその金種別収納部へ収納すべき紙幣の量の方が多い場合にはその金種別収納部の紙幣を少なくともその金種別収納部へ収納すべき紙幣の量以上の枚数を繰出して前記一括収納部へ収納させたのちに前記各収納部への分類収納を行なわせるようにすることができる。
【0009】前記入金口からの補充時に表裏を取り揃えるようにする場合は、入金口へ投入された補充紙幣を複数の収納部へ分類収納する際に、表裏の一方側の紙幣は一括一時保留部へ収納させ、表裏の他方側の紙幣は前記金種別収納部へ収納させるとともに、前記分類収納終了後または補充指令時に前記一括一時保留部へ収納された表裏の他方側の紙幣を繰出して前記金種別収納部へ収納させるようにすることができる。
【0010】さらに一括一時保留部も一つの金種の収納部として兼用される場合は、一括一時保留部の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する際に、前記金種別収納部に金種設定がなされている金種の紙幣については、表裏の一方側の紙幣は前記金種別収納部へ収納させ、表裏の他方側の紙幣は前記一括収納部へ収納させ、金種別収納部に金種設定がなされていない金種の紙幣については、表裏両方の紙幣を前記一括収納部へ収納させるとともに、前記分類収納終了後に前記一括収納部へ収納された紙幣を繰出し、金種別収納部に金種設定がなされている金種の表裏の他方側の紙幣を前記金種別収納部へ収納させ、金種別収納部に金種設定がなされていない金種の紙幣は表裏の他方側の紙幣を前記一括一時保留部へ収納させて出金可能とし、表裏の一方側の紙幣をリジェクト回収部へ回収するようにすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して説明する。
【0012】図1は紙幣入出金装置の一実施形態の縦断側面視の概要図を示すもので、装置本体1の前面上部には入金口部2が設けられ、その紙幣入金口3に続いて入金繰込み部4が設けられている。この繰込み部4は、紙幣を水平方向に搬送するベルト5と、このベルト5の上面に転接され紙幣を1枚ずつに分離する逆転ローラ6と、上記搬送ベルト5の上面上の紙幣の浮き上がりを防ぐため先端がバネ7の付勢により奥側に向けて下降するよう枢支された押え板8等で構成され、上記搬送ベルト5の駆動は専用のモータMにより行なわれる。
【0013】前記搬送ベルト5の後端に続いて入金紙幣の金種、真偽、正損、表裏等を識別して入金の可否を判定する入金識別部9を有する識別搬送路10が側面視コ字状を画くようにベルト群により構成されており、この識別搬送路10の末端は装置本体1の前後方向中央位置まで延び、ここから垂直方向に配設された入金搬送路11に続いている。
【0014】上記入金搬送路11の下端は装置本体1の底部近くで折り返されて該搬送路11と平行して垂直方向上方に延びる出金搬送路12に続いており、その折り返し部の直後の出金搬送路12中に出金識別部13が設けられている。この出金搬送路12の上方は前記繰込み部4と入金識別部9との間の識別搬送路10の一部を構成するようになっていて、これらによりループ状の搬送系を構成している。そしてこれら搬送系は専用のモータMにより一方向にのみ駆動される。
【0015】前記紙幣入金口部2の直下位置には紙幣出金口部14が、さらにその直下位置にはリジェクト回収部15が配設され、このリジェクト回収部15の下方位置には紙幣の補充回収カセットを兼ねる一括収納部16が装置本体1の前扉17を開けて出し入れ可能に設けられている。
【0016】上記出金口部14は、装置本体1の前面に開口する出金口18の開口部上縁のレベルと略一致する位置が下部走行面とされ前後のプーリー間に張装されたベルト19と、このベルト19の直下位置にあって図示しないソレノイド等の駆動手段により駆動される昇降機構20を介して水平姿勢のまま上下動する受板21とを有し、上記出金口部14の入口側には上記受板21上に送入される紙幣の後端をはたき落として受板21上に良好に集積させるための羽根車22が設けられている。また上記受板21の前後位置には、周面の一部が受板21の上面から突出するようにローラ23,23が軸支されており、前記ベルト19の駆動により紙幣がスムーズに出金口18へその一部が突出して取出し可能に投出されるようになっている。
【0017】前記リジェクト回収部15は、上面が開放されたトレイ状の収納カセットからなっており、装置本体1の前扉17を開けることにより外部に引出せるようになっている。
【0018】上記リジェクト回収部15の入口部には、前記出金口部14のベルト19の入口側端部位置から切換爪24の切換えによって該出金口部14の紙幣を逆送して導くためのベルト25,26が設けられており、出金紙幣のリジェクト時にその紙幣をリジェクト回収部15内に収納することができるように構成されている。上記出金口部14のベルト19、羽根車22等は専用のモータMにより駆動される。
【0019】前記入金搬送路11に対し装置本体1の奥側には、紙幣の収納および1枚ずつの繰出しができる収納部27、28、29、30が上下方向に4個配設されている。これらの収納部27〜30は、紙幣の入口と出口が同一とされ、収納時と繰出し時とでは紙幣の移動方向が逆になる入出口部31を有し、これら各入出口部31は前記入金搬送路11に連結されている。
【0020】上記各収納部27〜30は、いずれも同じ構成を有するので、その収納部をどのように使用するか、あるいは、入金時の紙幣を一括して一時保留する一括一時保留部として使用するかというように自由に設定することができるようになっている。
【0021】各収納部の内部構造をその一つ(最上部の収納部27)を代表して概略を説明すると、筐体33内の略中央位置に正逆回転自在で周面に紙幣が巻付けられる単一の回転ドラム34が軸支され、この回転ドラム34の周縁に2種のテープ35,36が共に巻付けられ、これらテープのうち一方のテープ35は筐体33の入出口部31の内側上部に位置するプーリ37、中間プーリー38を経由して巻取軸39に巻付けられ、他方のテープ36は前記入出口部31の内側下部に位置するプーリー40、中間プーリー41を経由して別の巻取軸42に巻付けられている。そして各部は専用のモータM(M、M、M)により正逆駆動される。
【0022】したがって紙幣を収納するときは、回転ドラム34が正転(図1において反時計方向に回転)して入出口部31から送入される紙幣をテープ35,36間に挟み込み、回転ドラム34の周面に順次巻付けて収納し、紙幣を繰出すときは回転ドラム34が逆転駆動(時計方向に回転)してテープ35,36間に挟持されていた紙幣をプーリー37,40間から入出口部31へ送出するようになっている。
【0023】したがって、紙幣をこれらの収納部に一旦収納して繰出すことによって、紙幣自体は収納時の先端側と繰出し時の先端側が逆になり、スイッチバック方式に表裏反転されることになる。
【0024】前記筐体33にはコネクタ43が設けられており、装置本体1側のコネクタ44と接続されている。
【0025】上記各収納部27〜30はいずれも専用のモータM,M,M,M、センサ類、およびこれらの制御部を備えた独立したユニット構成とされており、したがって前記のコネクタ43,44により接続することにより他のユニットと自由に変換が可能とされている。また前述の入金繰込み部4、紙幣出金部14、一括収納部16もユニット化されており、前記と同様にコネクタにより接続されている。
【0026】前記一括収納部16は、各収納部27〜30と同様に、紙幣の入口と出口が同一とされ、収納時と繰出し時では紙幣の移動方向が逆になる入出口部49を有し、この入出口部49は前記出金搬送路12に連結されている。その内部構造は、モータMにより昇降されるステージ45を有し、このステージ45上に紙幣Pが集積状態に収納されるもので、上方部には紙幣Pを繰出すためのベルト46が水平方向に配設され、その前端のプーリー47とその下部のローラ48との間を通して入出口部49からの紙幣の受入れまたは繰出しがなされるようになっており、このベルト46はモータMにより駆動される。したがって、この一括収納部16も紙幣を一旦収納して繰出すことにより紙幣の表裏反転がなされるようになっている。
【0027】前記各収納部27〜30の各入出口部31,31…および一括収納部16の入口部49には、入金搬送路11および出金搬送路12に連通、非連通とする切換機構50がそれぞれ設けられている。また51は入金搬送路11と出金搬送路12を最短で結ぶショートカット通路52への切替爪であり、最上段の収納部27を一括一時保留部として使用した場合に、一時保留紙幣を返却するのに最短コースを通って出金部14へ搬送したり、入金時のリジェクト紙幣を最短コースを通って出金部14へ搬送することができるようになっている。
【0028】制御部60は、前記入金識別部9および出金識別部13で識別される紙幣の金種と表裏を各収納部に収納される順番と対応させて記憶する記憶部61を有し、各収納部の紙幣を繰出して別の収納部へ移動させるとき前記記憶部61に記憶された金種と表裏およびその順番とに応じて紙幣を対応する収納部へ収納させる制御を行なう。
【0029】図1において△印は各部に設けられて紙幣の通過を検知し、所定の信号を得るためのセンサを示す。
【0030】次に、本発明の第1実施形態として前記各収納部の使用方法を図2に示すように設定した場合について説明する。すなわち、最上段の収納部27を一括一時保留部として設定し、他の3個の収納部28、29、30を金種別収納部として上から順に万円収納部、5千円収納部、千円収納部に金種別設定がなされている。図3、図4はその紙幣の入出金時、補充時の流れを太線で示している。また以下の説明において、本発明における紙幣の『表裏の一方側』を「表」、同『他方側』を「裏」と略称して説明することとする。
【0031】図3(A)は入金時における一括一時保留までの流れを示し、入金口3に挿入された紙幣は1枚ずつ繰込まれて識別部9で金種および表裏が識別されるとともに繰込み順が記憶部61に記憶されて一括一時保留部27へ順次送り込まれる。なお金種が特定できない紙幣等はリジェクト紙幣として点線で示すようにショートカット通路52を通じて出金口18へ返却される。
【0032】一時保留後入金承認指示があると、図3(B)のように一括一時保留部27から紙幣が1枚ずつ繰出され、入金繰込み時に記憶されている金種およびその表裏の内容にしたがって各収納部へ分類収納される。すなわち入金時に「表」が上となっていた紙幣については、万円紙幣は収納部28へ、5千円紙幣は収納部29へ、千円紙幣は収納部30へそれぞれ分類収納される。一方、入金時に「表」が上となっていた紙幣は全金種とも一括収納部16へ収納される。
【0033】上記作用において、図3(A)で入金口3へ紙幣の「表」を上にして挿入された紙幣は一括一時保留部27へは同じく「表」が上(外面側)となって巻付けられて収納される。図3(B)の分類収納時には、一括収納部16へ「裏」が上となって集積状態に収納される。
【0034】一方、図3(A)で入金口3へ紙幣の「裏」を上にして挿入された紙幣は一括一時保留部27へは同じく「裏」が上(外面側)となって巻付けられて、図3(B)の分類収納時には、各収納部28、29、30へは一括収納部16へ「裏」が上となって集積状態に収納される。
【0035】なお、一括一時保留部27に一時保留されたのち入金不承認指示があったときは、図3(C)のようにショートカット通路52を通って出金口18へ返却される。この場合は、一括一時保留部27からそのまま出金口18へ直接投出されるので表裏の取り揃えは行われず、入金時の状態のまま投出される。
【0036】また金種別収納部28、29、30の各収納可能量よりその金種別収納部へ収納すべき紙幣の量のほうが多い場合には、図3(D)のように前記分類収納動作に入る前に該当する収納部28〜30の紙幣を少なくともその収納部へ収納すべき紙幣の量以上の枚数を繰出して一括収納部16へ回収し、その後に図3(B)の分類収納を行なう。この一括収納部16への送入は「裏」が上となって収納されるので、図3(B)の一括一時保留部27からの分類収納時に一括収納部16へ収納された紙幣(入金時に「裏」が上となっていた紙幣)と表裏が取り揃えられて収納されることになる。
【0037】次の出金の場合について説明する。
【0038】図4(A)は、出金指令に基づいて各金種別収納部28、29、30から出金される紙幣の流れを示し、各収納部28、29、30から繰出された紙幣は出金識別部13を通って識別されたのち出金口部14の受板21上にすべて「裏」が上となって集積される。この場合、前記入金時の分類収納(図3(B)示)の際に裏紙幣は金種別収納部28、29、30へは送入されず、一括収納部16に収納するように仕分けられているので、各収納部28〜30から繰出される紙幣はすべて「裏」が上(外面側)となって巻取られて収納されていることにより出金口部14へ送入される出金紙幣はすべて「裏」が上となって集積されることになり、出金口18から抜きとったのち反転させればすべて「表」が上の状態になる。
【0039】図4(B)は、金種別収納部28、29、30内の紙幣の収納量が減少したとき一括収納部16内の紙幣を各収納部28、29、30へ戻して補充する際の流れを示すもので、一括収納部16内に「裏」が上となって収納されている紙幣を繰出して識別部9を通し、各識別された紙幣と対応する金種別収納部28〜30へ分類収納する。このとき紙幣は「裏」が上となって繰出されるので、各収納部28〜30へは「裏」が外面側となって巻取られて収納され、図3(B)の分類収納時と同じ状態になる。
【0040】図4(C)は、入金口3から補充する場合を示すもので、紙幣の「表」を上にして入金口3へ挿入されたときは、紙幣の流れとしては図3(A)、(B)の入金→分類収納と同様に一旦一括一時保留部27へ収納し(「表」が外面側)、次いでここから繰出して識別部9を通じ記憶されている金種と順番とに基づいて各金種別収納部28〜30へ分類補充される(「裏」が外面側となって収納)。
【0041】入金口3へ紙幣の「裏」を上として挿入された場合は、図4(D)のように一括一時保留部27へは送入せずに直接金種別収納部28、29、30へ分類補充する。これにより各金種別収納部28〜30へは図3(B)および図4(C)と同じく「裏」が外面側となって収納される。
【0042】したがって入金時および補充時とも金種別収納部28、29、30へは紙幣の表裏がすべて同じ向きで収納され、各収納部28〜30からの出金時に表裏が混在することがない。
【0043】図5は本発明の第2実施形態としての各収納部の使用方法を示すもので、最上段の収納部27を一括一時保留部と5千円紙幣(使用量が最も少ない紙幣)の収納部とに兼用し、金種別収納部として収納部28、29を共に万円紙幣(使用量が最も多い紙幣)の収納部30を千円紙幣の収納部として金種設定されている。一括一時保留部と5千円紙幣の収納部を兼用にした収納部27は、回転ドラム34の中心に近いところに5千円紙幣を収納しておき、その収納箇所より後側を一括一時保留部として使用するものである。
【0044】図6(A)は入金時における一括一時保留までの流れを示し、入金口3に挿入された紙幣は1枚ずつ繰込まれて識別部9で金種および表裏が識別されるとともに繰込み順が記憶部61に記憶されて一括一時保留部27へ順次送り込まれる。金種が特定できない紙幣等はりリジェクト紙幣として点線で示すようにショートカット通路52を通って出金口18へ返却される。
【0045】一時保留後入金承認指示があると、図6(B)のように一括一時保留部27から紙幣が1枚ずつ繰出され、入金繰込み時に記憶されている金種およびその表裏の内容にしたがって、入金口3へのセット時に「表」が上であった万円紙幣は金種別収納部28または29へ分配収納し、同じく「表」が上であった千円紙幣は金種別収納部30へ収納される。
【0046】入金口3へのセット時に「裏」が上となっていた万円、千円紙幣と、金種別収納部として金種設定がなされていない5千円紙幣については表裏に関係なくいずれも一括収納部16へ送り込まれる。したがって金種別収納部28、29、30へは万円紙幣、千円紙幣がいずれも「裏」が外面側となって巻取られて収納され、一括収納部16では万円、千円紙幣は「裏」が上、5千円紙幣は表裏混在の状態で収納される。
【0047】図6(C)は5千円紙幣を出金に要しない場合の出金紙幣の流れを示すもので、各金種別収納部28、29、30から出金に必要な紙幣(万円、千円)が繰出され、出金識別部13を通って出金口部14へ送り込まれ、受板21上にすべて「裏」が上となって集積され、出金口18から出金される。また、出金時に生じたリジェクト紙幣は点線で示すように該当するリジェクト紙幣のみが一括一時保留部27へ収納される。
【0048】出金処理の終了後、一括一時保留部27内のリジェクト紙幣を出金口部14へ戻し、リジェクト回収部15へ回収し、出金をやり直す。
【0049】図6(D)は5千円紙幣を含む出金の場合を示すもので、5千円紙幣は一括一時保留部27から繰出し、万円、千円の紙幣は図6(C)と同様に収納部28、29、30から繰出して出金口部14へ集積する。このとき出金識別部13でリジェクト紙幣と判断された紙幣が混在した場合には、出金口部14から点線で示すようにすべての紙幣を一括してリジェクト回収部15へ回収し、出金をやり直す。
【0050】図7(A)は、一括収納部16内の紙幣を一括一時保留部27の5千円を含み金種別収納部28、29、30へ補充する場合を示すもので、一括収納部16内の万円、千円紙幣は「裏」が上になっているので収納部28、29、30へは「裏」が外面側となって巻取られて収納され、5千円紙幣については表裏が混在しているため一括収納部16内で「裏」が上となっている5千円紙幣は一括一時保留部27内に収納し、「表」が上になっていた5千円紙幣およびリジェクト紙幣は点線で示すように一旦出金口部14へ入れたのちリジェクト回収部15へ回収される。なおこのとき搬送路が一部重複するので、「表」が上になった5千円紙幣およびリジェクト紙幣が入金識別部9で識別された時点で、一括収納部16からの繰出しを一時停止して紙幣の回収を優先的に行なうようになっている。
【0051】図7(B)〜(D)は入金口3から一括一時保留部27への5千円紙幣の補充を行なう場合を示すもので、入金口3へ5千円紙幣の「表」を上として挿入された場合は図7(B)のように一旦一括収納部16内に収納し(「裏」が上となって収納)、次いで一括収納部16から繰出して図7(C)のように一括一時保留部27へ収納する。したがって一括一時保留部27では「裏」が外面側となって巻付けられる。
【0052】入金口3に「裏」が上となって挿入された5千円紙幣は、図7(D)のようにそのまま直接一括一時保留部27へ送り込まれ、「裏」が外面側となって巻取られて収納される。
【0053】また、万円紙幣と千円紙幣の入金口3からの補充については、第1実施形態の場合と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0054】なお、第1時実施形態、第2実施形態ともに一括収納部16から金種別収納部あるいは一括一時保留部(5千円)へ紙幣を補充するタイミングとしては、各収納部の紙幣の収納量が減少して補充指令が出された場合に行なうか、あるいは一括一時保留部27の紙幣の各収納部への分配収納が終了する都度行なう場合があり、いすれの場合でも設定することができる。
【0055】これにより一括一時保留部27内の5千円紙幣、金種別収納部28、29、30内の万円、千円紙幣はいずれも「裏」が外面側となって巻取られて収納されることになり、出金時にはいずれの紙幣も同一面が揃った状態で投出することができる。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、一括一時保留部、金種別収納部、一括収納部を有し、これら各部の紙幣の入口と出口とを同一の構成とし、これら各部に紙幣を出入りさせることで表裏を反転させるようにしたことにより、従来紙幣の表裏を取り揃えるために必須とされていた表裏反転機構を設ける必要がなく、これにより紙幣入出金装置の構成、特に紙幣の搬送系の構成を著しくシンプルにでき、かつスペースも省略することができるので装置全体を小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による紙幣入出金装置の一実施形態を示す略示縦断側面図。
【図2】本発明の第1実施形態の模式図。
【図3】(A)〜(D)は図2の作用説明図。
【図4】(A)〜(D)は図2の作用説明図。
【図5】本発明の第2実施形態を示す模式図。
【図6】(A)〜(D)は図5の作用説明図。
【図7】(A)〜(D)は図5の作用説明図。
【符号の説明】
2 紙幣入金口部
3 入金口
4 入金繰込み部
9 入金識別部
10 識別搬送路
11 入金搬送路
12 出金搬送路
13 出金識別部
14 紙幣出金口部
15 リジェクト回収部
16 一括収納部
18 出金口
27 一括一時保留部
28、29、30 金種別収納部
31、32、49 入出口部
50 切換機構
52 ショートカット通路
60 制御部
61 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】入金口へ投入された紙幣を1枚ずつ繰込んで識別部で識別し、入金可能な紙幣のみを一括一時保留部へ収納し、入金承認指令によりその一括一時保留部内の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する入金処理と、出金指令に基づいて前記収納部から必要な紙幣を繰出して識別し、出金可能な紙幣のみを出金口へ投出する出金処理とを行う紙幣入出金装置において、前記複数の収納部は複数の金種別収納部と一つの一括収納部とからなり、前記金種別収納部、前記一括収納部、および前記一括一時保留部はそれぞれ紙幣の入口と出口とが同一とされて収納時と繰出し時とでは紙幣の移動方向が逆になる入出口部を有し、これら各入出口部は一方向に紙幣を搬送するループ状をなす搬送路にそれぞれ連結し、前記一括一時保留部の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する際に、表裏の一方側の紙幣は前記金種別収納部へ収納させ、表裏の他方側の紙幣は前記一括収納部へ収納させるとともに、前記分類収納終了後または補充指令時に前記一括収納部へ収納された表裏の他方側の紙幣を繰出して前記金種別収納部へ収納させる制御手段を備え、前記各収納部内の紙幣の表裏を取り揃えるようにしたことを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項2】前記一括一時保留部の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する際に、各金種別収納部の収納可能量よりその金種別収納部へ収納すべき紙幣の量の方が多い場合にはその金種別収納部の紙幣を少なくともその金種別収納部へ収納すべき紙幣の量以上の枚数を繰出して前記一括収納部へ収納させたのちに前記各収納部への分類収納を行なわせる請求項1記載の紙幣入出金装置。
【請求項3】入金口へ投入された紙幣を1枚ずつ繰込んで識別部で識別し、入金可能な紙幣のみを一括一時保留部へ収納し、入金承認指令によりその一括一時保留部内の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する入金処理と、出金指令に基づいて前記収納部から必要な紙幣を繰出して識別し、出金可能な紙幣のみを出金口へ投出する出金処理とを行う紙幣入出金装置において、前記複数の収納部は複数の金種別収納部と一つの一括収納部とからなり、前記金種別収納部、前記一括収納部、および前記一括一時保留部はそれぞれ紙幣の入口と出口とが同一とされて収納時と繰出し時とでは紙幣の移動方向が逆になる入出口部を有し、これら各入出口部は一方向に紙幣を搬送するループ状をなす搬送路にそれぞれ連結し、入金口へ投入された補充紙幣を複数の収納部へ分類収納する際に、表裏の一方側の紙幣は一括一時保留部へ収納させ、表裏の他方側の紙幣は前記金種別収納部へ収納させるとともに、前記分類収納終了後に前記一括一時保留部へ収納された表裏の他方側の紙幣を繰出して前記金種別収納部へ収納させる制御手段を備え、前記各収納部内の紙幣の表裏を取り揃えるようにしたことを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項4】入金口へ投入された紙幣を1枚ずつ繰込んで識別部で識別し、入金可能な紙幣のみを一括一時保留部へ収納し、入金承認指令によりその一括一時保留部内の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する入金処理と、出金指令に基づいて前記収納部から必要な紙幣を繰出して識別し、出金可能な紙幣を出金口へ投出させるとともに出金不可の紙幣はリジェクト回収部へ回収する出金処理とを行う紙幣入出金装置において、前記複数の収納部は金種設定がなされた複数の金種別収納部と金種設定がなされていない一つの一括収納部とからなり、前記金種別収納部、前記一括収納部、および前記一括一時保留部はそれぞれ紙幣の入口と出口とが同一とされて収納時と繰出し時とでは紙幣の移動方向が逆になる入出口部を有し、これら各入出口部は一方向に紙幣を搬送するループ状をなす搬送路にそれぞれ連結し、前記一括一時保留部の紙幣を繰出して複数の収納部へ分類収納する際に、前記金種別収納部に金種設定がなされている金種の紙幣については、表裏の一方側の紙幣は前記金種別収納部へ収納させ、表裏の他方側の紙幣は前記一括収納部へ収納させ、金種別収納部に金種設定がなされていない金種の紙幣については、表裏両方の紙幣を前記一括収納部へ収納させるとともに、前記分類収納終了後または補充指令時に前記一括収納部へ収納された紙幣を繰出し、金種別収納部に金種設定がなされている金種の表裏の他方側の紙幣を前記金種別収納部へ収納させ、金種別収納部に金種設定がなされていない金種の紙幣は表裏の他方側の紙幣を前記一括一時保留部へ収納させて出金可能とし、表裏の一方側の紙幣をリジェクト回収部へ回収する制御手段を備え、前記各収納部内の紙幣の表裏を取り揃えるようにしたことを特徴とする紙幣入出金装置。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−11238(P2000−11238A)
【公開日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−175997
【出願日】平成10年6月23日(1998.6.23)
【出願人】(000001432)グローリー工業株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】