説明

紙幣取引装置及びこれを用いた自動取引装置

【課題】従来の紙幣取引装置では、紙幣の高速搬送時において紙幣搬送障害となる可能性が高いという課題があった。
【解決手段】金種別スタッカ25内における紙幣の収納状況を、紙幣管理テーブル40によって管理、把握することにより、利用者が入金した折れ癖やしわのある入金紙幣は、分離、集積、搬送異常になる可能性が高いので、分離、集積、搬送処理を低速で行うようにした。このため障害率が低下し安定した処理が可能になる。更に、補充された紙幣は、破損、汚れ、変形等が通常はないので高速で分離、搬送処理を行うようにした。このため処理時間の短縮を図ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者の操作によって取引を行う現金自動預け払い機(以下「ATM」という。)等の自動取引装置に関し、特に、入金紙幣の再利用について、信頼性を向上させた紙幣取引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣取引装置は、ATM等の自動取引装置に内蔵された装置であって、次に説明するように入金処理及び出金処理等を行う装置である。
【0003】
入金処理においては、利用者の操作により紙幣投入取出口に投入された紙幣は分離繰り出し機構により1枚ずつ分離されて繰り出され、紙幣の搬送路へ送り出される。紙幣の搬送路へ送り出された紙幣はその搬送路上に設けられた認識部により、金種が鑑別され、また、枚数が計数され、一時保留部へ搬送されて集積される。鑑別された紙幣の金額が利用者により確認されると一時保留部に集積された紙幣は分離繰り出し機構により1枚ずつ分離されて繰出され、紙幣の搬送路を経由して金種別スタッカへ搬送されて収納される。
【0004】
出金処理においては、金種別スタッカに収納された紙幣は分離繰り出し機構により1枚ずつ分離されて繰出され、紙幣の搬送路へ送り出される。送り出された紙幣は認識部で金種が鑑別され、枚数が計数され、利用者により指定された金額に相当する紙幣が紙幣投入取出口へ搬送される。紙幣投入取出口へ搬送された紙幣は利用者により受取られる。
【0005】
前記紙幣の繰り出し搬送の速度を変更させる事例は、次の特許文献1,2に記載されている。特許文献1には、紙幣搬送時の障害の発生頻度を減少させるため、取引待ちの利用者数に応じて、紙幣の繰り出し及び搬送の速度を変える事例が記載されている。特許文献2には、通常の紙幣の繰り出し搬送は高速で行い、認識部においてリジェクトが発生したときは、低速に切り替え再度、紙幣認識を行う事例が記載されている。
【0006】
特許文献3には、金種別スタッカを、出金優先スタッカと入金優先スタッカに分け、入金優先の金種別スタッカに入金紙幣が収納されると、内部のステージを移動させて入金紙幣をプレス状態にして紙幣のカールや折れ癖を強制することができるのでその後の紙幣の繰り出し搬送を良好に行うことができる事例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−146194号公報
【0008】
【特許文献2】特開平10―302112号公報
【0009】
【特許文献3】特開2008−26976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の紙幣取引装置では、紙幣の繰り出し開始時の紙幣の特性を配慮して繰り出し搬送を行ってはいなかったため、高速搬送時において紙幣搬送障害となる可能性が高いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の紙幣取引装置は、利用者によって投入された紙幣を受け付ける接客部と、紙幣の分離、搬送及び集積を行う紙幣のハンドリング手段と、紙幣の補充回収を行う補充回収カセット部と、前記接客部に投入された入金紙幣及び前記補充回収カセット部から補充された補充紙幣を金種別に収納する金種別スタッカと、前記金種別スタッカに収納されている紙幣が前記入金紙幣であるか又は前記補充紙幣であるかを記録して管理する記録手段と、前記金種別スタッカから紙幣を繰り出すとき、前記記録手段を参照し、その紙幣が前記入金紙幣であったときは、前記ハンドリング手段に低速制御を指示し、その紙幣が前記補充紙幣であったときは、前記ハンドリング手段に高速制御を指示する主制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紙幣取引装置及びこれを用いた自動取引装置によれば、紙幣の繰り出し開始時にはその紙幣が入金された入金紙幣であるか、又は補充による補充紙幣であるかを判断して、入金紙幣のときは低速による紙幣の分離、搬送、集積を行い、補充紙幣のときは、高速による分離、搬送、集積を行うので、効率性を落とすことなく、紙幣搬送時の障害率を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施例1における紙幣取引装置の構成図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における自動取引装置(例えば、ATM)を示す外観図である。
【図3】図3は本発明の実施例1における図1の紙幣取引装置20の機能ブロック図である。
【図4】図4は図3のRAM31c上に記憶された紙幣管理テーブルを示す構成図である。
【図5】図5は図1における実施例1の紙幣取引装置20の補充処理時の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は図1における実施例1の紙幣取引装置20の入金処理時の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は図1における実施例1の紙幣取引装置20の出金処理時の動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は図1における実施例2の紙幣取引装置20の出金処理時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0015】
(実施例1のATMの構成)
図2は、本発明の実施例1における自動取引装置(例えば、ATM)を示す外観図である。
【0016】
本実施例1のATM10は、銀行の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者自身の操作により、現金の預け入れ、現金の引き出し、振り込み、残高照会、通帳記入等の取引を行うためのものである。
【0017】
ATM10は、熱や衝撃に対し一定の強度を有する鉄材で作られたキャビネット11で覆われている。ATM10の前面には、利用者が操作するための操作面11aが略水平に利用者の方向に突き出している。操作面11aの奥方向には、操作面11aから連続して投入面11bが設置されている。更に、投入面11bに連続して挿入面11cが略垂直に立ち上がっている。
【0018】
前記操作面11aには、操作のためのガイダンスを表示し各種取引のための入力を行う入力操作部12が設けられている。投入面11bには、入出金取引等、現金を扱う取引で使用する紙幣投入取出口13と硬貨投入取出口14が設けられている。
【0019】
挿入面11cには、通帳取扱口15、キャッシュカード(以下単に「カード」という。)取扱口16及び音声等を出力するスピーカ17が設けられている。カードには、磁気ストライプが設けられており、磁気ストライプには、金融機関コードや顧客の口座番号、氏名等の顧客情報が記憶されている。
【0020】
(実施例1の紙幣取引装置の構成)
図1は、本発明の実施例1における紙幣取引装置の構成図である。
【0021】
紙幣取引装置20は、ATM10に内蔵され、紙幣の入金処理、出金処理、補充処理及び回収処理を行うものである。
【0022】
紙幣取引装置20の各機構部は、紙幣を移動する搬送手段である紙幣の搬送路21で接続されている。搬送路21は、紙幣を挟持して搬送するベルト及びローラ等で構成され、正逆双方向に搬送することができる機能を有している。この搬送路21の分岐点には図示しない切替ブレードが配置され、それを切り替えることにより紙幣の搬送先を変える構成になっている。又この紙幣の搬送路21には、適宜な間隔でセンサ等が配置され、紙幣の走行状態を感知する機能を有している。
【0023】
この紙幣取引装置20は、接客部22を有しており、この接客部22は、利用者により投入される紙幣を受付け、又利用者へ出金する紙幣を集積し、利用者との間で紙幣の受渡しを行う機構である。接客部22は、投入された紙幣を図示しない分離手段(例えば、分離ローラ機構)等で1枚ずつ分離して繰り出すことができ、又出金される紙幣を図示しない集積手段(例えば、集積ローラ機構)等で集積する機能を有している。なお、接客部22は、ATM10の紙幣投入取出口15に対応する機構である。
【0024】
接客部22には、一時保留部23が搬送路21を介して接続されている。一時保留部23は、利用者により接客部22に投入された紙幣を、搬送路21を経由して搬送し、図示しない集積ローラ機構により一時的に集積しておくものである。この一時保留部23は、利用者により入金金額が確認されて入金取引が成立すると集積した入金紙幣を分離ローラ機構等で1枚ずつ分離して繰り出し、後述する金種別スタッカ25へ搬送して集積する機能を有している。一方、利用者により入金取引が取消された場合、集積した入金紙幣を分離ローラ機構等で1枚ずつ分離して繰り出し、搬送路21を経由して接客部22へ返却する構成になっている。
【0025】
接客部22には、紙幣の認識を行う認識手段(例えば、認識部)24が接続されて配置されている。この認識部24は、光学式センサ等により通過する紙幣の画像データ等の特徴を取得し、その画像データ等の特徴と図示しない紙幣鑑別データベースに予め登録された画像データ等の特徴とを照合して紙幣の真偽、金種等の鑑別及び計数を行う。
【0026】
認識部24には、金種別スタッカ25(=25a〜25d)が接続されており、万円券、千円券を金種別に収納するように構成されている。この金種別スタッカ25は、内部に図示しない昇降可能なステージや開閉して紙幣を下方に落とす機構等を備えている。収納された紙幣は金種別スタッカ25の上方に設けられた図示しない分離ローラ機構で1枚ずつ分離して繰り出すことができる。この金種別スタッカ25は、本実施例では、それぞれ同一構造の万券用金種別スタッカ25a及び25bと千円券用金種別スタッカ25c及び25dから構成されている。
【0027】
金種別スタッカ25には、補充回収カセット部26が搬送路21を介して接続されている。補充回収カセット部26は、取外し可能に構成された補充回収カセットを有している。この補充回収カセット部26は、図示しない昇降可能なステージ上に紙幣を集積させる集積ローラ機構、ステージ上の紙幣を分離する分離ローラ機構等で構成されており、金種別スタッカ25の紙幣を回収して収納し、又その分離ローラ機構により回収等された紙幣を1枚ずつ分離して繰り出し、金種別スタッカ25に補充する補充回収入出金部26aを有している。
【0028】
補充回収カセット部26の一部には、補充回収リジェクトカセット部27が形成されている。補充回収リジェクトカセット部27は、補充回収カセット部26から金種別スタッカ25への補充紙幣の補充動作時に認識部24が異常と判定した紙幣を格納する機能を有している。
【0029】
更に、紙幣取引装置20は、取り忘れカセット28、リジェクトカセット29a,29bを有している。取り忘れカセット28は、接客部22に集積した紙幣を利用者が取り忘れたときこれを回収して保管するカセットである。
【0030】
リジェクトカセット29a,29bは、入出金処理時にリジェクトされた紙幣を収納するカセットで、リジェクトカセット29a,29bのいずれか一方にリジェクトされた紙幣を収納し続け、そのカセットがフルになった時点で他方のカセットに紙幣の収納を行うように構成されている。
【0031】
図示しないが、金種別スタッカ25の上方には、金種別スタッカ25に収納された紙幣を1枚ずつ分離する分離ローラ機構や搬送路21から搬送された紙幣をステージ上に集積させるための集積ローラ機構等が設けられている。
【0032】
このように紙幣取引装置20は、搬送路21、接客部22、一時保留部23、認識部24、金種別スタッカ25、補充回収カセット部26、取り忘れカセット28、リジェクトカセット29a及び29b等で構成され入金処理、出金処理、補充処理及び回収処理を行うものである。
【0033】
ここで、入金処理とは紙幣処理装置20の接客部22に投入された紙幣を繰出して計数し、金種別スタッカ25へ収納する処理であり、出金処理とは、金種別スタッカ25に収納された紙幣を繰出して計数し、接客部22へ集積する処理である。
【0034】
補充処理とは、補充回収カセット部26に装填された紙幣を繰出して計数し、金種別スタッカ25へ収納する処理であり、回収処理とは金種別スタッカ25に収納された紙幣を繰出して計数し、補充回収カセット部26へ収納する処理である。
【0035】
図3は、本発明の実施例1における図1の紙幣取引装置20の機能ブロック図である。
【0036】
紙幣取引装置20は、主制御部31を有しており、主制御部31は、CPU(中央処理装置)31a、リードオンリーメモリ(以下「ROM」という。)31b等で構成されたプログラムメモリ及びランダムアクセスメモリ(以下、「RAM」という。)31cで構成されたデータメモリを有したマイクロコンピュータである。
【0037】
主制御部31には、上位装置であるATM10の制御部と信号の送受信を行うための通信制御部32と、搬送路21の紙幣の走行を感知するセンサを制御するセンサ制御部33と、接客部22を制御する接客部制御部34とが接続されている。
【0038】
更に、主制御部31には、一時保留部23を制御する一時保留部制御部35と、認識部24を制御する認識部制御部36と、搬送路21に設けられた搬送用ベルトやローラのモータを制御する搬送モータ制御部37と、紙幣を1枚ずつ分離する分離ローラ機構や搬送された紙幣をステージ上に集積させるための集積ローラ機構を制御する分離集積モータ制御部38が接続されている。
【0039】
図4は、図3のRAM31c上に記憶された紙幣管理テーブルを示す構成図である。
【0040】
本紙幣管理テーブル40は、金種別スタッカ25a〜25dごとに設けられ、金種別スタッカ25a〜25dは、同一の構成をなしている。紙幣管理テーブル40は、金種別スタッカ25に収納されている紙幣の状況を表しており、収納されている紙幣が、接客部22から入金された入金紙幣か、補充回収カセット部26から補充された補充紙幣であるかを区分して記録している記録手段である。
【0041】
金種別スタッカ25に収納される紙幣の位置に対応して、紙幣管理テーブル40は、収納アドレス41を有している。図4の例では、金種別スタッカ25の最下部(ボトム)の位置を収納アドレス41の1番地とし、最上部を3000番地としている。入金紙幣、補充紙幣及び空きの3つの状態を表すためには、2ビットの情報量があればよいので、1番地当たり2ビットを割りあてる。1ワードが16ビットのCPUの場合であれば、1ワードで8番地が割り当てられる。例えば、補充紙幣を表すコードとして、2進法で“01”、入金紙幣には“10”、空きには“00”を割り当てることができる。
【0042】
図4の例では、1〜5番地に補充紙幣が格納され、6と7番地に入金紙幣が格納され、8番地以降は空きであることを示している。スタックポインタ42は、収納されている紙幣の最上位の格納アドレス41を示すポインタである。
【0043】
(実施例1の紙幣取引装置の動作)
本実施例1の紙幣取引装置の動作については、(1)紙幣取引装置の補充処理、(2)紙幣取引装置の入金処理、(3)紙幣取引装置の出金処理に分けて説明する。
【0044】
(1) 紙幣取引装置の補充処理
図5は、図1における実施例1の紙幣取引装置20の補充処理時の動作を示すフローチャートである。
【0045】
本実施例1における紙幣取引装置20の補充処理時の動作は、以下のステップS11〜S14に従って処理が行われる。
【0046】
係員により補充回収カセット部26に紙幣を装填した補充回収カセットをセットして補充処理が開始される。
【0047】
ステップS11において、補充回収カセット部26の紙幣を分離して搬送路21へ繰り出す。ステップS12において、認識部24で紙幣の真偽が判別され、枚数がカウントされる。ステップS13において、万円券、千円券の金種別に金種別スタッカ25a〜25dに収納される。
【0048】
ステップS14において、主制御部31は、認識部24の図示しないカウンタから金種別スタッカ25に収納した紙幣の枚数を読み出し、スタックポインタ42の示す収納アドレス41の次の収納アドレス41から紙幣管理テーブル40に補充紙幣を表すコードを、収納した枚数分だけ書き込み、スタックポインタ42に収納枚数分を加えて更新する。
【0049】
例えば、図4において、スタックポインタ42が収納アドレス41の0番地を示しているとき、補充処理の結果、5枚の紙幣が金種別スタッカ25aに収納されたとすると、収納アドレス41の1番地〜5番地には、補充紙幣を示すコード、例えば、2進法の“01”が記入される。スタックポインタ42には、“5”が加えられ“5”に更新される。
【0050】
(2) 紙幣取引装置の入金処理
図6は、図1における実施例1の紙幣取引装置20の入金処理時の動作を示すフローチャートである。
【0051】
本実施例1における紙幣取引装置20の入金時の動作は、以下のステップS21〜S29に従って処理が行われる。
【0052】
ATM10において利用者が入力操作部12を使用して入金取引を行い、接客部22に紙幣が投入され、ATM10の図示しない制御部から紙幣取引装置20の主制御部31へ紙幣の取り込み指示が送信されることにより、紙幣取引装置20の入金処理動作が開始される。
【0053】
ステップS21において、利用者の操作により接客部22に投入された紙幣は分離繰り出し機構により1枚ずつ分離されて繰出され、搬送路21へ送り出される。
【0054】
ステップS22において、搬送路21へ送り出された紙幣は、その搬送路21上に設けられた認識部24により、紙幣の真贋の鑑別、金種の識別及び枚数の計数がなされる。ステップS23において、紙幣は、一時保留部23へ搬送されて集積される。ステップS24において、鑑別された紙幣の金額が利用者により確認される。利用者により金額不一致を示すボタンが押下されたときはステップS25へ進む。
【0055】
ステップS25において、一時保留部23に集積された紙幣は分離繰り出し機構により1枚ずつ分離されて繰り出され、搬送路21で再度、接客部22にセットされ利用者の判断により取引を終了するか、再度、入金処理を行うかが判断される。
【0056】
前記ステップS24において、利用者により入金取引の成立が確認されたときは、ステップS26へ進む。ステップS26において、一時保留部23に集積された紙幣は分離繰り出し機構により1枚ずつ分離されて繰出され、認識部24で金種が判別される。ステップS28において、金種別に分類された紙幣は、該当の金種別スタッカ25へ搬送されて金種別に収納される。
【0057】
ステップS29において、主制御部31は、認識部24の図示しないカウンタから金種別スタッカ25に収納した紙幣の枚数を読み出し、スタックポインタ42の示す収納アドレス41の次の収納アドレス41から紙幣管理テーブル40に入金紙幣のコードを、収納した枚数だけ書き込み、スタックポインタ42に収納枚数分を加えて更新する。
【0058】
例えば、図4において、スタックポインタ42が収納アドレスの5番地を示しているとき、入金処理の結果、2枚の紙幣が金種別スタッカ25aに収納されたとすると、収納アドレス41の6番地、7番には、入金紙幣を示すコード、例えば、2進法の“10”が記入される。スタックポインタ42には、“2”が加えられ“7”に更新される。
【0059】
(3) 紙幣取引装置の出金処理
図7は、図1における実施例1の紙幣取引装置20の出金処理時の動作を示すフローチャートである。
【0060】
本実施例1における紙幣取引装置20の出金時の動作は、以下のステップS31〜S39に従って処理が行われる。
【0061】
ATM10において利用者が入力操作部12を使用して出金取引を行い、ATM10の図示しない制御部から紙幣取引装置20の主制御部31へ紙幣の出金指示が送信されることにより、紙幣取引装置20の出金処理動作が開始される。
【0062】
ステップS32において、主制御部31は、紙幣管理テーブル40を参照し、スタックポインタ42が示す収納アドレス41のコードを読み出す。ステップS33において、前記読み出したコードは、入金紙幣か補充紙幣かを判定する。ステップS33において、前記コードが入金紙幣を示しているときは(YES)、ステップS34へ進む。補充紙幣を示しているときは(NO)、ステップS35へ進む。
【0063】
ステップS34において、主制御部31は、搬送モータ制御部37及び分離集積モータ制御部38に低速動作用の指示信号を出力する。ステップS35において、主制御部31は、搬送モータ制御部37及び分離集積モータ制御部38に高速動作用の指示信号を出力する。ステップS36において、紙幣取引装置20では、紙幣の分離、繰り出し、集積及び搬送処理において、主制御部31で指示されたとおり、低速又は高速の処理がなされる。
【0064】
ステップS37において、一連の入金紙幣又は補充紙幣の分離、集積、搬送処理が終了したか判断される。終了していないときはステップS36に戻り(NO)、分離、集積、搬送処理が継続される。終了したときは(YES)、ステップS38へ進む。
【0065】
ステップS38においては、紙幣管理テーブル40の入金紙幣又は補充紙幣を表すコードを出金した枚数分だけ空きを表すコードに置き換え、スタックポインタ42の値を出金枚数だけ減算して更新する。
【0066】
ステップS39において、ATM10の制御部から受信した出金指示の紙幣枚数を出金し終えたかが判定され、終了していないときは(NO)、ステップS31へ戻り、再度、紙幣管理テーブル40が参照される。出金指示の紙幣枚数を出金し終えたときは処理を終了する(YES)。
【0067】
(実施例1の効果)
本実施例1の紙幣取引装置20及びこれを用いたATM10によれば、金種別スタッカ25内における紙幣の収納状況を、紙幣管理テーブル40によって管理、把握することにより、利用者が入金した折れ癖やしわのある入金紙幣は、分離、集積、搬送異常になる可能性が高いので、分離、集積、搬送処理を低速で行うようにした。このため障害率が低下し安定した処理が可能になる。更に、補充された紙幣は、破損、汚れ、変形等が通常はないので高速で分離、集積、搬送処理を行うようにした。このため処理時間の短縮を図ることが可能になる。
【実施例2】
【0068】
(実施例2の構成)
本発明の実施例2における紙幣取引装置20及びATM10の構成は、実施例1を示す図1及び図2の構成と同様である。
【0069】
(実施例2の紙幣取引装置の動作)
図8は、図1における実施例2の紙幣取引装置20の出金処理時の動作を示すフローチャートであり、実施例1を示す図7中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0070】
実施例2の紙幣取引装置20の補充処理時及び入金処理時の動作は、実施例1と同様である。実施例2の出金処理時の動作では、以下のように実施例1の出金処理時の処理と同様のステップS31〜S36と本実施例の特徴であるステップS41〜S46とに従って処理が行われる。
【0071】
ATM10において利用者が入力操作部12を使用して出金取引を行い、ATM10の図示しない制御部から紙幣取引装置20の主制御部31へ紙幣の出金指示が送信されることにより、紙幣取引装置20の出金処理動作が開始される。
【0072】
以下、ステップS31の紙幣管理テーブル40参照処理、ステップS32の入金紙幣か補充紙幣かを識別処理、ステップS33の紙幣は入金紙幣か?処理、ステップS34の搬送モータ制御部37、分離集積モータ制御部38に低速制御を指示処理、ステップS35の搬送モータ制御部37、分離集積モータ制御部38に高速制御を指示処理、及びステップS36の分離、搬送の実行処理が行われる。
【0073】
ステップS41において、金種別スタッカ25から分離され繰り出された紙幣は、搬送路21で搬送され、認識部24で紙幣の鑑別が行われる。このとき、認識部24で紙幣の重走(複数の紙幣が重なった状態で搬送されること)が検出されたかが判断される。重走が検出されたときは、ステップS42へ進み、重走が検出されないときは、ステップS44へ進む。
【0074】
ステップS42において、重走が検出された紙幣を出金リジェクトスタッカ29aへ搬送して格納する。ステップS43において、紙幣管理テーブル40の入金紙幣又は補充紙幣を表すコードをリジェクトした枚数分だけ空きを表すコードに置き換え、スタックポインタ42の値をリジェクト枚数だけ減算して更新する。
【0075】
ステップS44において、一連の入金紙幣又は補充紙幣の分離、搬送処理が終了したか判断される。終了していないときはステップS36に戻り(NO)、分離、集積、搬送処理が継続される。終了したときは(YES)、ステップS45へ進む。
【0076】
ステップS45においては、紙幣管理テーブル40の入金紙幣又は補充紙幣を表すコードを出金した枚数分だけ空きを表すコードに置き換え、スタックポインタ42の値を出金枚数だけ減算して更新する。
【0077】
ステップS46において、出金処理がATM10の制御部から受信した出金指示の紙幣枚数を出金し終えたかが判定され、終了していないときは(NO)、ステップS31へ戻り、再度、紙幣管理テーブル40が参照される。出金指示の紙幣枚数を出金し終えたときは処理を終了する(YES)。
【0078】
(実施例2の効果)
本実施例2の紙幣取引装置20及びこれを用いたATM10によれば、実施例1の効果に加え、認識部24において紙幣の重走を検出したときは、当該紙幣を出金リジェクトカセット29aへ搬送、格納する。そして、紙幣管理テーブル40を、更新して管理するので出金処理動作を中断することなく継続できる。このため、安定した出金処理及び処理時間の短縮が可能となる。
【0079】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(f)のようなものがある。
【0080】
(a) 実施例1及び2の紙幣取引装置20は、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置されるATM10に内蔵される例で説明したがこれに限定されない。利用者による操作で取引を行う装置で、紙幣を扱う装置であれば広く適用できる。例えば、駅などに設置される券売機、空港などに設置される航空券発行機、スーパーマーケットに設置されるセルフレジ等が考えられる。
【0081】
(b) 図4の紙幣管理テーブル40の収納アドレス41は3000番地を最大値としたが、これに限定されない、金種別スタッカ25の容量に応じ任意に設定が可能である。
【0082】
(c) 実施例1では、出金処理時に金種別スタッカ25から紙幣を繰り出す際に、その紙幣が入金紙幣か補充紙幣かを判定し搬送モータ制御部37及び分離集積モータ制御部38に低速又は高速の制御を指示することで説明したが、入金処理時に一時保管部23に収納されている紙幣を金種別スタッカ25に格納するときは、入金紙幣なので低速制御を行うようにしてもよい。
【0083】
(d) 紙幣管理テーブル40において、収納アドレス41ごとに入金紙幣か補充紙幣かの区分に加え、収納した時刻を記録するようにし、紙幣の分離、繰り出し時に一定時間を越えて収納されていた入金紙幣は、高速制御で動作させるようにしてもよい。
【0084】
(e) 接客部22に光センサを設け、入金紙幣の分離繰り出し時にこの光センサにより入金紙幣の表面のしわ等の変形を感知し、変形の度合いが閾知以下であれば、この入金紙幣を補充紙幣として扱うこともできる。
【0085】
(f) 実施例1、2では、補充紙幣及び入金紙幣にコードを割り付け金種別スタッカ25に収納されている紙幣ごとに紙幣管理テーブル40に書き込んで記録し管理したが、入金紙幣が格納されている金種別スタッカ25の先頭位置と最終位置を記録し管理するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ATM
12 入力操作部
20 紙幣取引装置
21 搬送路
22 接客部
23 一時保留部
24 認識部
25 金種別スタッカ
26 補充回収カセット部
28 取り忘れカセット
29a,29b リジェクトカセット
31 主制御部
32 通信制御部
37 搬送モータ制御部
38 分離集積モータ制御部
40 紙幣管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者によって投入された入金紙幣を受け付ける接客部と、
補充紙幣の補充、及び前記入力紙幣と前記補充紙幣の回収を行う補充回収カセット部と、
指示信号に基づき、高速動作と低速動作とを切り替えて、前記入金紙幣及び/又は前記補充紙幣の分離、搬送及び集積を行うハンドリング手段と、
前記入金紙幣及び前記補充紙幣を金種別に収納する金種別スタッカと、
前記金種別スタッカに収納されている前記入金紙幣及び前記補充紙幣を記録して管理する記録手段と、
前記金種別スタッカから前記入金紙幣又は補充紙幣を繰り出すとき、前記記録手段の記録内容を参照し、その参照結果が前記入金紙幣であったときは、前記低速動作用の前記指示信号を出力して前記ハンドリング手段に与え、前記補充紙幣であったときは、前記高速動作用の前記指示信号を出力して前記ハンドリング手段に与える主制御部と、
を有することを特徴とする紙幣取引装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙幣取引装置は、更に、
前記入金紙幣又は補充紙幣の真贋及び異常を判定する認識手段を有し、前記金種別スタッカから繰出した前記入金紙幣又は前記補充紙幣が前記認識手段において異常と判定されたときは、前記記録手段は、異常とされた前記入金紙幣又は前記補充紙幣の記録を削除する機能を有することを特徴とする紙幣取引装置。
【請求項3】
前記異常が前記入金紙幣又は前記補充紙幣の重走であったときは、前記記録手段は、重走となった前記入金紙幣又は補充紙幣の記録を削除する機能を有することを特徴とする請求項2記載の紙幣取引装置。
【請求項4】
前記ハンドリング手段は、前記入金紙幣又は前記補充紙幣を移動する搬送手段と、収納された前記入金紙幣又は前記補充紙幣を分離して搬送手段に繰り出す分離手段と、搬送された前記入金紙幣又は前記補充紙幣を集積させる集積手段とを有し、前記指示信号に基づき、前記高速動作と前記低速動作とを切り換えて動作するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙幣取引装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙幣取引装置を有することを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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