説明

紙幣搬送装置における分離繰り出し機構を備えた搬送ケース

【課題】 遊技媒体貸出機など複数の投入機から投入される紙幣の搬送装置において、島全体として低コストと島幅を狭小に構成でき、しかも搬送路において重なった紙幣を分離させて計数可能に1枚ずつ搬送させる。
【解決手段】 搬送装置に接続された分離払い出し装置40は、区画壁43の両側に受け入れ室R1と分離繰り出し室R2を有し、上流から搬送された紙幣は室R1に一旦留め置かれ、移送手段によりR1からR2に移送され、今度は搬送されてきた後端より繰り出し手段により進行方向を変化させて1枚ずつ搬送傾斜通路に繰り出されるから、上流の搬送路で重なっても分離払い出し装置で分離されて、後続の装置に1枚ずつ搬送されて計数が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の投入機から投入される紙幣を回収部へ搬送する紙幣の搬送装置に用いる分離繰り出し機構を備えた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣の搬送装置として、例えば遊技店において遊技媒体貸出機に投入された紙幣を搬送ベルトに挟時して島端の回収装置へ搬送する紙幣搬送装置がある。
このような回収装置では、搬送されてきた紙幣の枚数を計数する必要がある。
しかし、遊技媒体貸出機が複数の遊技台に隣接して多数設置され、各遊技媒体貸出機から任意に紙幣が投入されたときには搬送ベルト上で複数の紙幣が重なったまま回収装置に入ってくるので、個別の紙幣を識別することができず、正確な計数が不可能になる。
【0003】
そこで、特開平5−290241号公報には、回収装置内に搬送されてきた紙幣をスタックして収納する手段と計数手段のほかに、重なっている紙幣を整列分離する分離手段とが複合して構成された装置が開示されている。
しかし、これでは回収装置が構造複雑となり、大型化を招いてコスト高となり、また、大サイズの回収装置を島端に設けると、その分だけ遊技台の設置スペースを奪うことになる。
さらに、紙幣が詰まったりしたときの修復作業も単なる店員には困難で、専門のメンテナンス担当者に修理をさせている間紙幣搬送装置全体の運転を中止せざるを得ないこととなる。
【0004】
一方、島端の回収装置を大サイズとしない例としては、遊技媒体貸出機から共通の搬送路へ紙幣を送り出す際に、搬送路上の紙幣と重ならないようにした装置が例えば特開平3−56354号公報に開示されている。
この装置では、図6に示すように、紙幣などの紙幣(以下、紙幣と呼ぶ)を遊技媒体貸出機11における紙幣鑑別機12から導入路80を経て搬送路82に合流させるようにした搬送装置において、搬送路82上の導入路80との合流点Pより上流側に第1検知器84を設け、導入路80には第2検知器86と一時滞留部88を設けている。
【0005】
そして、第2検知器86で紙幣Bを検知しており、かつ第1検知器84でも搬送路82を送られてくる紙幣Bを検知したときは、一時滞留部88において導入路80の図示しない搬送ベルトを非作動にして、第1検知器84で検知した紙幣Bの通過を待ち、導入路80からの紙幣Bが搬送路82上の紙幣に重ならないようにしている。
これにより、搬送路82に合流した紙幣はすべて互いに分離され、重ならないので、搬送路端の回収装置90で簡単に枚数を計数することができる。
なお、この装置では、紙幣Bの長さをL、第1検知器84から合流点Pまでの距離をL1、第2検知器86から合流点Pまでの距離をL2とするとき、L<L2<L1となるように設定してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−290241号公報
【特許文献2】特開平3−56354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の紙幣の搬送装置では、紙幣鑑別機12を通過して導入路80へ送り出される紙幣Bを一時的に滞留させる大サイズの一時滞留部88が必要となる。
すなわち、搬送路82の第1検知器84が検知しない間は紙幣鑑別機12からの紙幣Bは導入路80の搬送ベルトを作動させて合流点P方向へ送り出されるが、その途中で第1検知器84が合流点P上流の紙幣Bを検知すると、一時滞留部88は導入路80の搬送ベルトを非作動として導入路80途中の紙幣Bを搬送路82に合流させないようにする。
【0008】
このためには、紙幣鑑別機12からの送り出し速度ならびに搬送路82での搬送速度と同期させてある導入路80の搬送ベルトを停止させる機構が必要となるとともに、紙幣鑑別機12からの送り出しを停止させないまま導入路80の搬送ベルトを停止させると導入路80で紙幣の詰まりも避けられない。
したがって、搬送ベルトの作動、非作動による紙幣の滞留制御は紙幣が紙幣鑑別機12から完全に離れたあとの区間でなさなければならない。
【0009】
この際、導入路80途中の紙幣の先端がすでに合流点Pに達し搬送路82の搬送ベルトに触れる状態になっていると、導入路80の搬送ベルトを非作動としたにもかかわらず、紙幣は搬送路82へ引きずり込まれて上流からの紙幣と重なってしまうおそれがある。
したがって、導入路80内の紙幣がどの位置まで進んでいても、第1検知器84からの検知信号を受けて導入路80の搬送ベルトを非作動としたとき、紙幣の先端が合流点Pに差し掛かっていないようにする必要がある。
以上より、紙幣Bの長さと第2検知器86から合流点Pまでの距離の関係L<L2を満足するだけでは足りず、導入路80を含む一時滞留部88は十分な長さを備えなければならない。
【0010】
以上のように、遊技媒体貸出機11の紙幣投入口と搬送路82の間の距離が大サイズの一時滞留部88を挟む分だけ大きくなって、とくに搬送路82の両側に遊技台10を設置する場合にはいわゆる島幅の広がりが顕著で、この場合も遊技店のスペース効率を低下させるという課題を残している。
また、各一時滞留部88は対応する遊技媒体貸出機11ごとに搬送ベルトを作動、および非作動にする制御機構も備えねばならず、構造複雑、かつ製造コストが高くなるという問題も有している。
従って本発明は、上記課題に鑑み、遊技媒体貸出機など複数の投入機から投入される紙幣の搬送装置において、島全体として低コストで、島幅を狭小に構成可能な、搬送路において重なった紙幣を分離する紙幣の搬送装置に用いる分離払い出し機構を備えた搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、請求項1の発明は、搬送機構を備えた搬送ケースと、上流側の搬送ケースから搬送される紙幣を1枚ずつ分離送出して次に連なる搬送路に搬送して受け渡す分離繰り出し機構を備えた搬送ケースと、を連結して搬送路を形成する紙幣搬送装置であって、分離繰り出し機構を備えた搬送ケースは、搬送方向に沿って受け入れ室と分離繰り出し室に区切る区画壁と、区画壁は、上流側には傾斜案内面を、下流側にはストッパ壁を備え、傾斜案内面によって搬送されてきた紙幣を斜行して受け入れ室に導き、ストッパ壁によって搬送紙幣を受け入れ室に一旦留め置き、一旦留め置かれた紙幣を区画壁を挟んで受け入れ室と並設された分離繰り出し室に移送させる移送手段と、分離繰り出し室に移送された紙幣は、区画壁と平行に設けられた固定壁上に一旦留め置かれ、分離繰り出し室の上流側に設けられて受け入れ室に導入されてきた紙幣の後端側より1枚ずつ繰り出し、該後端側を搬送進行方向を先頭とさせる繰り出し手段と、繰り出し手段から傾斜して設けられると共に、通路出口は傾斜方向を搬送ケース下流側の中央出口部に向けられて設けた搬送傾斜通路と、搬送傾斜通路に、紙幣を駆動ロータと転動ローラで厚さ方向に挟持して搬送するよう構成し、該転動ローラを楕円ローラとなすとともに、前記固定壁に転動ローラが分離繰り出し室内へ突出可能のローラ窓を設け、該転動ローラの回転に応じて該転動ローラの分離繰り出し室内への突出量を変化させて、分離繰り出し室に留め置かれた状態の紙幣に揺動を与えて重層紙幣間の分離を促進して紙幣が繰り出しローラに誘導されるように構成されたことを特徴とする紙幣搬送装置における分離繰り出し機構を備えた搬送ケースとした。
紙幣をその分離状態の如何にかかわらず一旦分離払い出し装置に受け入れてスタックし、これを1枚ずつ繰り出して下流側へ払い出すので、分離払い出し装置の介装位置が収納部と該収納部に最も近い投入機からの紙幣の合流点との間の搬送路であれば、その下流ですべての紙幣の枚数が正確に計数できる。
払い出し路における搬送用の転動ローラを楕円としローラ窓から分離繰り出し室へ突出させることにより、固定壁上の紙幣に揺動運動を起こさせるから、紙幣が円滑に繰出しローラへ誘導されるとともに、繰り出し前の紙葉類間の分離も促進される。
また、分離払い出し装置の介装位置が最下流の搬送路でなくても、その下流側の搬送路に紙幣を合流させる投入機についてだけ別途の重なり防止装置を設ければよいから、全体の構成が簡単となる。
【0012】
請求項2の発明は、繰り出し手段が、さらに固定壁上にスタックされた紙幣の端部を繰出しローラに押圧付勢する端部付勢手段を備えるものとした。
端部付勢手段により紙幣が繰出しローラに押圧されるので、すべりが低減し、順次速やかに紙幣が繰り出される。
【0013】
請求項3の発明は、繰出しローラが紙幣の幅中間部分に対応して設けられ、端部付勢手段は高さ方向において繰出しローラからオフセットした位置で紙葉類に当接可能に回転するばね材を備えているものとした。
分離繰り出し室にある紙幣をばね材が押さえている間に移送手段により移送された次の紙幣がスタックされても、ばね材は回転してあらためて新しい紙幣の上からスタック室の紙幣全部を押圧する。
【0014】
請求項4の発明は、繰出しローラが分離繰り出し室の上流側端部に配置され、固定壁は上流側の搬送路と払い出し口とを結ぶ中心線に対してオフセットして配置され、固定壁の上流側端部には搬送路から送り込まれる紙幣を受け入れ室へ案内する案内面が形成されているものとした。
区画壁を中心線からオフセットさせることにより、比較的大径を要する繰出しローラを分離繰り出し室とともに中心線へ近寄せることができる。
これにより、横幅を小さくでき、搬送路の途中に簡便に設置できる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、本発明の紙幣の搬送装置は、収納部に近い搬送路に、紙幣を一時スタックし該スタックした紙幣を1枚ずつ分離して払い出す分離繰り出し機構を備えた搬送装置を介装してあるものとしたので、各投入機から随意に紙幣が投入されて複数の紙幣が重なっても分離繰り出し機構で1枚ずつ分離して下流側へ払い出すので、別途の重なり防止装置を不要あるいは最小限として、正確に枚数が計数できる。
したがって、搬送路に接続される個々の投入機ごとに搬送路への合流の際の紙幣重なりを防止する装置を設置するものと比較して、紙幣の搬送装置全体を構造簡単で低コストにできる。
【0016】
また本発明の紙幣の分離繰り出し機構を備えた搬送装置は、区画壁をはさんで並列の受け入れ室と分離繰り出し室とを有し、搬送路から受け入れ室に受け入れた紙幣を移送手段で分離繰り出し室へ移し変えたうえ、繰り出し手段で1枚ずつ繰り出し、これを払い出し路を経て払い出し口へ導く構成としたので、例えば搬送路の最下流に配置するだけですべての紙幣を分離し、その後正確に枚数が計数できる。
また、受け入れ室と分離繰り出し室とを並列に隣接させているので、狭小に構成される。
【0017】
なお、繰り出し手段がさらに固定壁上にスタックされた紙幣の端部を繰出しローラに押圧付勢する端部付勢手段を備えるものとしたときには、すべりが低減し、順次速やかに紙幣を繰り出しできるという利点が得られる。
とくに、端部付勢手段を高さ方向において繰出しローラからオフセットした位置で紙幣に当接可能に回転するばね材を備えているものとすることにより、新しい紙幣が受け入れ室から追加されてもばね材が回転してあらためて新しい紙幣の上から押圧するので、分離繰り出し室の紙幣全部が適切に繰出しローラへ付勢される。
【0018】
さらにまた、払い出し路に駆動ロータと楕円の転動ローラを設けて紙幣を挟持搬送するとともに、転動ローラがローラ窓から分離繰り出し室内へ突出可能とすることにより、その突出量が変動する転動ローラによって分離繰り出し室の紙幣に揺動運動を起こさせ、紙幣が円滑に繰出しローラへ誘導されるとともに、繰り出し前の紙幣間の分離も促進される。
【0019】
送り込まれる紙幣を受け入れ室へ案内する案内面を形成することにより、比較的大径を要する繰出しローラを分離繰り出し室とともに中心線へ近寄せることができ、これにより、搬送路を形成する搬送ケースと同等レベルに横幅が小さくなり、搬送路に分離繰り出し機構を備えた搬送装置を介装することによって島幅を増大させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を紙幣搬送装置に適用した実施例の全体構成を示す図である。
【図2】分離払い出し装置の内部分離繰り出し機構を示す拡大平面図である。
【図3】図2におけるA−A矢視図である。
【図4】図3におけるC−C矢視図である。
【図5】受けプッシャ板の作動状態を示す説明図である。
【図6】従来例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に示した実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明を複数の遊技媒体貸出機からの紙幣を共通の収納部へ搬送する紙幣搬送装置に適用した実施例の全体構成を示す図である。
【0022】
遊技媒体貸出機11は複数の遊技台10(例えばパチンコ台あるいはパチスロ台等)に隣接して設置されたパチンコ台間玉貸機やメダル台間貸機であって、搬送路20の両側に背中合わせに設けられている。
各遊技媒体貸出機11は内部に紙幣鑑別機12を備え、紙幣鑑別機12と搬送路20は導入路15により接続されている。
遊技媒体貸出機11は発明における投入機に該当する。
【0023】
搬送路20は各遊技媒体貸出機11に対応する合流ボックス22と、合流ボックス22間を連結する搬送ケース24とからなり、導入路15は合流ボックス22内に形成されている。
搬送路20の端末には紙幣鑑別機12を通過して導入路15から搬送路20へ送られた紙幣を整列して収納する収納部18が設けられている。
収納部18と直前の合流ボックス22の間には、他の合流ボックス22間の搬送ケース24とは異なり、短縮された搬送ケース26、26間に分離繰り出し機構を備えた分離払い出し装置40が設けられ、下流側の搬送ケース26に紙幣カウンタ17が設けられている。
【0024】
図2は分離繰り出し機構を備えた分離払い出し装置40まわりの内部詳細を示す拡大平面図であり、図3は図2におけるA−A矢視図である。
分離払い出し装置40が接続される搬送ケース26内には、それぞれ搬送機構30が備えられている。
搬送機構30は、搬送ケース26の通路28にそって、長手方向に複数のプーリ32により支持されて延びる丸ベルト34と、各プーリ32に相対向して丸ベルト34を所定圧で挟むように配置された複数のローラ36を備え、丸ベルト34とローラ36が協働して紙幣の幅中間部分を紙厚方向から挟持して、プーリ32の回転駆動による丸ベルト34の移動とともに当該紙幣を搬送ケース26の長手方向へ搬送する。
【0025】
合流ボックス22間の搬送ケース24も同様の搬送機構を備えている。
合流ボックス22には、弧状の導入路15にモータ駆動される図示省略の搬送ベルトあるいは搬送ローラを備え、また上流および下流の搬送ケース24あるいは26の通路を結ぶ直線部にも同様に図示省略の搬送ベルトあるいは搬送ローラを備えている。
搬送路20にはさらに分離払い出し装置40の上流に紙幣を検出する第1検出器38が設置されている。
第1検出器38は、とくに詳細図示しないが、搬送ケース26の通路28を挟んで対向して設けた発光素子と受光素子からなる光電式である。
【0026】
分離払い出し装置40のケーシング41内には、上流、下流の搬送ケース26、26の通路28の中心を結ぶ中心線Sに対して所定量だけオフセットさせて区画壁43が長手方向に設けられている。
区画壁43は図3に仮想線で示す紙幣Bの上縁部および下縁部と重なるように上下に配置された上壁44と下壁45からなり、上壁44と下壁45の間が窓Wを形成している。
また、区画壁43の下流側端には紙幣Bの端縁を受けるストッパ壁46が設けられている。
【0027】
区画壁43の上流側端部は、図2において中心線Sを越えるまで滑らかに傾斜して延び、上流側搬送ケース26の通路28から送り込まれる紙幣に対する案内面47を形成している。
ケーシング41の上流側端部には図示しないモータで駆動される駆動ローラ50と該駆動ローラ50に対向する転動ローラ53とが設置され、上流側搬送ケース26から案内面47に入ってきた紙幣の幅の中間部分を紙厚方向に挟持して取り込むようになっている。
なお、モータなどの駆動源は床壁48と天井壁49に挟まれる空間に設置できるが、そのほか床壁48の下部空間や天井壁49の上部空間にモータや駆動力伝達機構を配することができる。
【0028】
区画壁43に対して所定間隔をもって平行に受けプッシャ板55が配置され、区画壁43と受けプッシャ板55間に受け入れ室R1を形成している。
受けプッシャ板55は電磁ソレノイド58により駆動されるパンタグラフ57に支持されている。
電磁ソレノイド58は制御装置59により制御される。なお、図3ではパンタグラフ57および電磁ソレノイド58は省略している。
【0029】
駆動ローラ50の上下にはそれぞれ外周面に歯を形成した叩きローラ51が設けられ、駆動ローラ50と一体に回転して、区画壁43と受けプッシャ板55の間の受け入れ室R1に送り込んだ紙幣Bの後端縁を叩いて当該紙幣を受けプッシャ板55側へ付勢するようになっている。
なお、図3におけるC−C矢視図である図4に示すように、転動ローラ53は上下の叩きローラ51、51に挟まれた領域で駆動ローラ50と接触している。
受けプッシャ板55の上流側端縁と叩きローラ51の間には間隙が設けられて、叩きローラ51の歯で付勢された紙幣の端縁が撓み可能となっている。
受けプッシャ板55の幅(高さ)寸法は区画壁43の窓幅より若干小さく設定され、パンタグラフ57の作動により区画壁43との平行姿勢を保持したまま区画壁43の窓Wから反対側の後述する分離繰り出し室R2へ変位可能となっている。
【0030】
これにより、案内面47から駆動ローラ50と転動ローラ53により取り込まれた紙幣Bは、叩きローラ51によりその後端縁を叩かれて受けプッシャ板55側へ付勢されることにより、連続して取り込まれる次の紙幣の進入の妨げにならない。
こうして取り込まれた紙幣は受け入れ室R1内、とくに受けプッシャ板55上に一時滞留される。
受けプッシャ板55の上流側端縁と叩きローラ51間の間隙には、第1検出器38と同様の光電式の第2検出器39が設けられ、受けプッシャ板55上の紙幣Bを検出するようになっている。
とくに接続線は図示しないが、第1検出器38と第2検出器39は電磁ソレノイド58を制御する制御装置59に接続されている。
【0031】
区画壁43を挟んで受けプッシャ板55と反対側には、区画壁43と平行に固定壁61が設けられ、区画壁43との間に分離繰り出し室R2を形成している。
受けプッシャ板55を区画壁43を越えて変位させることにより、受けプッシャ板55上の紙幣は分離繰り出し室R2へ移し変えられ、固定壁61上にスタックされた状態となる。
受けプッシャ板55、パンタグラフ57および電磁ソレノイド58は、発明の移送手段を構成している。
【0032】
固定壁61の上流側端部には固定壁61上の紙幣の高さ幅中央部の端部に当接可能に、図示しないモータにより駆動される大径の繰出しローラ64が設けられるとともに、この繰出しローラ64に対向して、紙幣1枚のみを通過させる所定間隙(例えば紙幣の厚みの1.5枚分)をもって非回転の固定ロッド66が設けられている。
繰出しローラ64と固定ロッド66で発明の繰り出し手段を構成している。
さらに固定ロッド66を挟んでその上下には、図示しないモータにより駆動される繰出し押えばね68が設けられている。
繰出し押えばね68は回転ボス69から外方へ延びるスプリング細片70を備え、その回転に伴って紙幣の幅の上下を繰出しローラ64方向へ押える。
繰出し押えばね68は発明の端部付勢手段を構成している。
【0033】
繰出しローラ64の周面にそって、回転方向に固定ロッド66の近傍から下流方向に向くまでガイド72が設けられている(図2参照、図4では省略している)。
さらに、ガイド72に続いて、搬送通路73がケーシング41の下流側端部まで延びている。
図2の平面図上、搬送通路73はその終端が下流側の搬送ケース26の通路28に向かって中心線S近傍になっており、中心線Sから離れたガイド72の出口とを結んで、中心線Sに対して傾斜している。
とくに図示しないが、ガイド72および搬送通路73の高さは床壁48から任意の高さに設定され、天井壁49まで延ばしてもよい。
ガイド72と搬送通路73とで発明の払い出し路を形成している。
ケーシング41の搬送ケース26との接続部には、案内傾斜面29が形成され、搬送通路73から送り出される紙幣を滑らかに通路28内へ案内するようになっている。
【0034】
搬送通路73の両端に、紙幣の幅中間部分を紙厚方向から挟むように図示しないモータで駆動される駆動ローラ75とこれに対向する転動ローラ76が設けられている。
また、搬送通路73の中間部には、駆動ローラ75と転動ローラ77が設けられている。
とくに、中間部の転動ローラ77はその軸78が搬送通路73に対して直角方向の長孔79に支持されるとともに対向する駆動ローラ75側へ付勢された楕円ローラとされ、その長径面が駆動ローラ75と当接したとき当該当接面と反対の側が固定壁61に設けた窓62からスタック室R2へ突出するようになっている。
【0035】
つぎに、以上のように構成された分離払い出し装置40の分離繰り出し機構の動作について説明する。
まず、通常状態においてパンタグラフ57は折り畳まれていて、受けプッシャ板55は図2に示した位置で前述のように区画壁43との間に受け入れ室R1を形成している。
この状態で、上流側搬送ケース26から丸ベルトとローラの搬送機構30によって区画壁43の上流端の案内面47に入ってきた紙幣は、駆動ローラ50と転動ローラ53により挟持して取り込まれ、その後端が駆動ローラ50と転動ローラ53から離脱するまで受け入れ室R1内に進入する。
この際、叩きローラ51の歯が紙幣の後端縁を叩いて紙幣を受けプッシャ板55側へ付勢する。
なお、駆動ローラ50と転動ローラ53から離脱したばかりの紙幣はその前端がストッパ壁46に当接して、それ以上長手方向には移動しない。
【0036】
搬送ケース26から送り出されてきた紙幣が複数枚重なっている場合にも、そのうちの先に受け入れ室R1に取り込まれた紙幣は駆動ローラ50と転動ローラ53から離脱したとき前端がストッパ壁46に当接して移動を停止する一方、その後に続く紙幣は継続して駆動ローラ50と転動ローラ53により取り込まれるので、順次に上記受け入れ室R1内で受けプッシャ板55上に重ねられていく。
【0037】
搬送ケース26内の紙幣は第1検出器38で検出され、受けプッシャ板55上の紙幣は第2検出器39で検出される。
第1検出器38で紙幣が検出されている間は、制御装置59は電磁ソレノイド58を作動させず、パンタグラフ57は折り畳まれたままである。
また、第2検出器39で紙幣が検出されていない間も、パンタグラフ57は折り畳まれたままである。
【0038】
つぎに受けプッシャ板55上に1枚または複数枚の紙幣が滞留され、第2検出器39で紙幣が検出されている状態になると、制御装置59は、第1検出器38で紙幣が検出されなくなってから所定時間T1が経過するまでその第1検出器38の非検出状態が継続したときに、電磁ソレノイド58を作動させて、図5に示すように、パンタグラフ57を伸長させる。
上記の所定時間T1は、紙幣の後端が第1検出器38を通過してから受け入れ室R1に入るまで、すなわち駆動ローラ50と転動ローラ53を離脱するまでに要する時間に若干の余裕代を加えて設定されている。
【0039】
これにより、受けプッシャ板55上に滞留された紙幣は、受けプッシャ板55に押されて区画壁43の窓Wを通過し分離繰り出し室R2へ移し変えられる。
このあと、制御装置59は電磁ソレノイド58を非作動としてパンタグラフ57を折り畳ませ、受けプッシャ板55は元の位置へ戻る。
なお、パンタグラフ57の伸長、折り畳みによる受けプッシャ板55の分離繰り出し室R2への往復時間は、紙幣の前端が第1検出器38から受け入れ室R1の入口まで搬送される搬送時間よりも十分短かく設定され、受けプッシャ板55の往復作動中に次の紙幣が受けプッシャ板55の往復軌跡内に取り込まれることはない。
【0040】
分離繰り出し室R2へ移された紙幣は、その後端が繰出し押えばね68のスプリング細片70によって繰出しローラ64へ押さえつけられる。
これにより、最も固定壁61寄りで繰出しローラ64に接触している紙幣が、回転する当該繰出しローラ64によりガイド72にそって引き出される。
この際、搬送通路73における中間部の楕円の転動ローラ77がその回転にしたがって固定壁61の窓62から分離繰り出し室R2へ突出して、間欠的に固定壁61上の紙幣を押して揺動させるので、スタックされた紙幣同士の離れが円滑に行なわれ、また滑らかに繰出しローラ64へ誘導される。
【0041】
また、繰出しローラ64とこれに対向する固定ロッド66間の間隙が紙幣1枚のみの通過を許す値に設定されているので、紙幣は分離繰り出し室R2に複数枚あっても1枚ずつしか引き出されない。
分離繰り出し室R2から引き出された紙幣は今度はその後端を進行方向先端として、搬送通路73にそって駆動ローラ75と転動ローラ76、77により付勢されて、下流側搬送ケース26の案内傾斜面29が形成された通路28の入口へ向けて搬送される。
【0042】
本実施例は以上のように構成され、分離払い出し装置40において、上流側搬送ケース26からの紙幣を一旦受け入れ室R1に受け入れ、受け入れ室R1に滞留する紙幣と後続の紙幣との間隔が所定以上開いたときに滞留した紙幣を分離繰り出し室R2へ移し変え、ここから繰出しローラ64により1枚ずつ引き出して下流側の搬送ケース26へ送り出すものとしたので、この下流側搬送ケース26に紙幣カウンタ17を設けることにより、正確に収納部18へ回収される紙幣の枚数が計数される。
【0043】
また、分離払い出し装置40を搬送路20の途中に介挿するものとし、区画壁43を前後の搬送ケースの通路28、28を結ぶ中心線Sからオフセットさせることにより、分離繰り出し室R2とともに比較的大径の繰出しローラ64を中心線Sへ近寄せたので、分離払い出し装置40のケーシング41の横幅を搬送ケース26と同等レベルに小さくでき、島幅を大きくすることなく簡便に設置できるという利点を有している。
同じく、本実施例の分離払い出し装置40は搬送路20の途中、望ましくは収納部18直前に設置するだけでよく、従来の搬送路と導入路の合流部ごとに重なり防止機構を設けるものに比較して全体構造が簡単で安価なものとなる。
【0044】
納部内、あるいは分離払い出し装置40内の搬送通路73に設けることもできる。
したがって本発明において、計数手段を設ける部位としての分離払い出し装置の下流とは、本実施例では繰り出しローラ64で紙幣が1枚ずつ繰り出されたあとの搬送通路73以降を含むものである。
【0045】
さらに、下流側搬送ケース26への搬送通路73に設けた搬送用の楕円ローラ(転動ローラ77)を分離繰り出し室R2に臨ませ、その回転に応じて固定壁61からの突出量を変化させるので、部品点数を増すことなく分離繰り出し室R2内の紙幣に間欠的な刺激を与えて揺動させ、これにより、分離繰り出し室R2内の紙幣同士の分離が促進されるとともに、繰出しローラ64へ滑らかに誘導される。
【0046】
なお、実施例では、分離払い出し装置40を収納部18と該収納部直前の合流ボックスの間、すなわち最下流の搬送路に介装したものとしたが、最下流の搬送路でなくても、収納部に近い搬送路であれば、それより下流側の搬送路に導入路が合流する少数の遊技媒体貸出機に対応してのみ別途の重なり防止装置を設ければよいから、全体の構成が簡単となる。
【0047】
なおまた、実施例ではパンタグラフ57の駆動源として電磁ソレノイド58を用いたものを示したが、これに限定されず、例えば電動モータやエアシリンダにより駆動するものとしてもよい。
また、繰出し押えばね68はモータにより駆動されるものとしたが、これに限定されず、例えば受けプッシャ板55がストロークしたときに当該受けプッシャ板55によって1方向のみ回転可能とした繰出し押えばねを回動させ、ストロークごとにあらたに紙幣上へ回動してくるスプリング細片70によって紙幣全部を押えるように構成してもよい。
【0048】
さらに、実施例は遊技台10に付設される遊技媒体貸出機11との組み合わせを示したが、本発明は、その他の種々の料金支払い機などにも適用できる。また紙幣として紙幣の搬送について説明したが、他の規格化されたサイズの紙片や撓み性を有するプラスチックカードの搬送にも適用される。
【符号の説明】
【0049】
10 遊技台
11 遊技媒体貸出機
12 紙幣鑑別機
15 導入路
17 紙幣カウンタ
18 収納部
20 搬送路
22 合流ボックス
24、26 搬送ケース
28 通路
29 案内傾斜面
30 搬送機構
32 プーリ
34 丸ベルト
36 ローラ
38 第1検出器
39 第2検出器
40 分離払い出し装置
41 ケーシング
43 区画壁
44 上壁
45 下壁
46 ストッパ壁
47 案内面
48 床壁
49 天井壁
50 駆動ローラ
51 叩きローラ
53 転動ローラ
55 受けプッシャ板
57 パンタグラフ
58 電磁ソレノイド
59 制御装置
61 固定壁
62 窓
64 繰出しローラ
66 固定ロッド
68 繰出し押えばね
69 回転ボス
70 スプリング細片
72 ガイド
73 搬送通路
75 駆動ローラ
76、77 転動ローラ
B 紙幣
R1 受け入れ室
R2 分離繰り出し室
S 中心線
W 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送機構を備えた搬送ケースと、上流側の搬送ケースから搬送される紙幣を1枚ずつ分離送出して次に連なる搬送路に搬送して受け渡す分離繰り出し機構を備えた搬送ケースと、を連結して搬送路を形成する紙幣搬送装置であって、
分離繰り出し機構を備えた搬送ケースは、
搬送方向に沿って受け入れ室と分離繰り出し室に区切る区画壁と、
区画壁は、上流側には傾斜案内面を、下流側にはストッパ壁を備え、
傾斜案内面によって搬送されてきた紙幣を斜行して受け入れ室に導き、ストッパ壁によって搬送紙幣を受け入れ室に一旦留め置き、
一旦留め置かれた紙幣を区画壁を挟んで受け入れ室と並設された分離繰り出し室に移送させる移送手段と、
分離繰り出し室に移送された紙幣は、区画壁と平行に設けられた固定壁上に一旦留め置かれ、
分離繰り出し室の上流側に設けられて受け入れ室に導入されてきた紙幣の後端側より1枚ずつ繰り出し、該後端側を搬送進行方向を先頭とさせる繰り出し手段と、
繰り出し手段から傾斜して設けられると共に、通路出口は傾斜方向を搬送ケース下流側の中央出口部に向けられて設けた搬送傾斜通路と、
搬送傾斜通路に、
紙葉類を駆動ロータと転動ローラで厚さ方向に挟持して搬送するよう構成し、該転動ローラを楕円ローラとなすとともに、前記固定壁に転動ローラが分離繰り出し室内へ突出可能のローラ窓を設け、
該転動ローラの回転に応じて該転動ローラの分離繰り出し室内への突出量を変化させて、分離繰り出し室に留め置かれた状態の紙幣に揺動を与えて重層紙幣間の分離を促進して紙幣が繰り出しローラに誘導されるように構成されたことを特徴とする紙幣搬送装置における分離繰り出し機構を備えた搬送ケース。
【請求項2】
前記繰り出し手段は、さらに前記固定壁上に一旦留め置かれた紙幣の端部を前記繰出しローラに押圧付勢する端部付勢手段を備えることを特徴とする請求項1記載の紙幣搬送装置における分離繰り出し機構を備えた搬送ケース。
【請求項3】
前記繰出しローラは紙幣の幅中間部分に対応して設けられ、前記端部付勢手段は、高さ方向において繰出しローラからオフセットした位置で紙幣に当接可能に回転するばね材を備えていることを特徴とする請求項2記載の紙幣搬送装置における分離繰り出し機構を備えた搬送ケース。
【請求項4】
前記繰出しローラが前記分離繰り出し室の上流側端部に配置され、前記固定壁は上流側の搬送路と前記払い出し口とを結ぶ中心線に対してオフセットして配置され、固定壁の上流側端部には搬送路から送り込まれる紙幣を前記受け入れ室へ案内する案内面が形成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の紙幣搬送装置における分離繰り出し機構を備えた搬送ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−137994(P2010−137994A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62467(P2010−62467)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【分割の表示】特願2000−160427(P2000−160427)の分割
【原出願日】平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願人】(591164554)シルバー電研株式会社 (19)
【Fターム(参考)】