説明

紙幣認識ユニットのセンサ補正方法、及び紙幣認識ユニット

【課題】処理速度が変化する場合でも、処理速度の変化に対応して紙幣間補正を適切に行う。
【解決手段】紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサと、上流側に設けられた第2センサと、第2センサの上流側に設けられた媒体検知センサとを有する紙幣認識ユニットで実施される。先ず、第1出力信号の強度変化から、第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する。次に、媒体検知信号を用いて、媒体検知センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。媒体検知センサの観測領域に紙幣が無い場合は、第1センサ及び第2センサの補正を行い、紙幣が有る場合は、第2出力信号から、第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。第2センサの観測領域に紙幣が無い場合は、第1センサ及び第2センサの補正を行い、第2センサの観測領域に紙幣が有る場合は、処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣認識ユニットのセンサ補正方法、及び紙幣認識ユニットに関するものであって、現金処理機などで行われる、紙幣間でのセンサ補正に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、現金自動預け払い機(ATM)などの現金処理機は、紙幣の金種や真贋判定を行う認識ユニットを備えている。認識ユニットは、紙幣の寸法や印刷状態などの特徴量を抽出するためのセンサを備えている。これらのセンサは、例えば、ホトカプラ等の光学的検出手段で構成され、紙幣に対する反射光量又は透過光量を測定して、紙幣の特徴量を抽出する。
【0003】
例えば、センサとしてホトカプラを用いる場合、ホトカプラの電気的特性の個体差や、使用環境の相違等により、検出感度が異なる場合がある。そこで、紙幣の特徴量が最適に取得できるように、取引開始前にセンサの補正が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−243322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、現金処理機は、各センサの補正を取引開始前だけでなく、取引中の紙幣間でも補正が行われる。図1(A)及び(B)は、センサの補正の模式図である。図1(A)及び(B)では、横方向に時間軸を取って示し、縦軸に、センサの出力強度を取って示している。図1(A)は、取引前に行う補正を示している。また、図1(B)は、取引中の紙幣間に行う補正を示している。
【0006】
図1に示されているように、取引前に行う補正のみでは、センサの出力の変動により、紙幣の特徴量が最適に取得できない場合がある。従って、センサの補正は、取引前補正だけでなく、取引中の紙幣間にも補正が行われるのが好ましい。
【0007】
紙幣間における補正を行う場合、補正するセンサ上に紙幣があると正確な補正ができないため、紙幣の特徴量を抽出するセンサとは別に、媒体の到来を検知するセンサを配置し、この媒体検知センサを用いて、紙幣の有無を判定し、紙幣間における補正を実施する。
【0008】
しかしながら、図2に示すように、現金処理機では、夜間運用時など取引が少ない場合、障害の発生数を低減させるため、処理速度を低くする場合がある。図2は、センサ出力を示す模式図である。図2は、横方向に時間軸を取って示し、縦軸に、センサの出力強度を取って示している。
【0009】
図2に示されるように、低速処理を行う場合と、通常の処理を行う場合とでは、紙幣間隔が異なるため、補正するセンサと、媒体検知センサとの配置関係によっては、補正されるセンサの観測領域に紙幣が無いにもかかわらず、媒体検知センサの観測領域に紙幣があるために、紙幣間の補正を行わないことがありうる。
【0010】
この紙幣間の補正を行わないと、センサ出力が変動し、結果として、取引紙幣が正常券であるにもかかわらずリジェクトしてしまうなど、認識ユニットの性能が低下する恐れがある。
【0011】
一方、処理速度によって、補正するセンサと媒体検知センサの最適な配置関係が異なり、また、実装スペースには限りがあるので、処理速度の変化に対応して、紙幣間補正を行う認識ユニットの実現は困難である。
【0012】
また、各センサがそれぞれ、観測領域における紙幣の有無を判定して媒体間補正を行うことも考えられるが、各センサでの判定処理が認識ユニットに与える負荷が大きくなり、現金処理機での処理時間の増大につながる恐れもある。
【0013】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、処理速度が変化する場合でも、処理速度の変化に対応して紙幣間補正を適切に行うことができる、紙幣認識ユニットのセンサ補正方法、及び紙幣認識ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するために、この発明の紙幣認識ユニットにおけるセンサ補正方法は、紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサ、及び、上流側に設けられた第2センサと、第2センサの上流側に設けられた媒体検知センサとを有する紙幣認識ユニットで実施され、以下の過程を備えている。
【0015】
先ず、第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する。
【0016】
第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合には、媒体検知センサの出力信号に基づいて、媒体検知センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。
【0017】
この判定の結果、媒体検知センサの観測領域に紙幣が無い場合は、第1センサ及び第2センサの補正を行う。一方、媒体検知センサの観測領域に紙幣が有る場合は、第2センサの出力強度を示す第2出力信号を用いて、第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。
【0018】
この判定の結果、第2センサの観測領域に紙幣が無い場合は、第1センサ及び第2センサの補正を行う。一方、第2センサの観測領域に紙幣が有る場合は、処理を終了する。
【0019】
また、この発明の紙幣認識ユニットにおけるセンサ補正方法の他の好適実施形態によれば、紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサ、及び、上流側に設けられた第2センサを有する紙幣認識ユニットで実施され、以下の過程を備えている。
【0020】
先ず、搬送された複数の紙幣に対して、第1センサの観測領域を通過する紙幣の時間間隔を測定する。次に、第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する。第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合は、測定された時間間隔を用いた第2センサの観測領域における紙幣の有無を予測する。
【0021】
この予測の結果、第2センサの観測領域に紙幣が無いと予測された場合は、第2センサの出力強度を示す第2出力信号から、第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。
【0022】
判定の結果、第2センサの観測領域に紙幣が無い場合は、第1センサ及び第2センサの補正を行う。一方、第2センサの観測領域に紙幣が有る場合、又は、第2センサの観測領域に紙幣が有ると予測された場合は、処理を終了する。
【0023】
また、上述した目的を達成するために、この発明の紙幣認識ユニットは、紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサと、第1センサの上流側に設けられた第2センサと、第2センサの上流側に設けられた媒体検知センサと、紙幣認識部と、第1補正回路と、第2補正回路と、第1出力変換部と、第2出力変換部と、比較部とを備えて構成される。
【0024】
第1補正回路は、紙幣認識部からの信号に応答して、第1センサの出力強度を変化させる。第2補正回路は、紙幣認識部からの信号に応答して、第2センサの出力強度を変化させる。第1出力変換部は、第1センサの出力をディジタル信号に変換して紙幣認識部に送る。第2出力変換部は、第2センサの出力をディジタル信号に変換して紙幣認識部に送る。比較部は、媒体検知センサの出力をディジタル信号に変換して紙幣認識部に送る。
【0025】
紙幣認識部は、さらに、第1媒体有無判断手段と、媒体有無判断手段と、第2媒体有無判断手段と、第1補正値設定手段と、第2補正値設定手段とを備えて構成される。
【0026】
第1媒体有無判断手段は、第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する。媒体有無判断手段は、第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合に、媒体検知センサの出力である媒体検知信号から、媒体検知センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。第2媒体有無判断手段は、媒体検知センサの観測領域に紙幣がある場合に、第2センサの出力強度を示す第2出力信号の強度変化から、第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。
【0027】
第1補正値設定手段は、第1センサの出力強度を変化させて、当該第1センサの補正を行う指示を、第1補正回路に送る。第2補正値設定手段は、第2センサの出力強度を変化させて、当該第2センサの補正を行う指示を、第2補正回路に送る。
【0028】
ここで、第1補正値設定手段及び第2補正値設定手段は、媒体検知センサの観測領域に紙幣が無い場合、あるいは、媒体検知センサの観測領域に紙幣があり、かつ、第2センサの観測領域に紙幣が無い場合に、それぞれ第1センサ及び第2センサの出力を変化させる。
【0029】
また、この発明の他の好適実施形態に係る紙幣認識ユニットは、紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサと、第1センサの上流側に設けられた第2センサと、紙幣認識部と、第1補正回路と、第2補正回路と、第1出力変換部と、第2出力変換部とを備えて構成される。
【0030】
第1補正回路は、紙幣認識部からの信号に応答して、第1センサの出力強度を変化させる。第2補正回路は、紙幣認識部からの信号に応答して、第2センサの出力強度を変化させる。第1出力変換部は、第1センサの出力をディジタル信号に変換して紙幣認識部に送る。第2出力変換部は、第2センサの出力をディジタル信号に変換して紙幣認識部に送る。
【0031】
紙幣認識部は、さらに、第1媒体有無判断手段と、紙幣間隔測定手段と、媒体有無予測手段と、第2媒体有無判断手段と、第1補正値設定手段と、第2補正値設定手段とを備えて構成される。
【0032】
第1媒体有無判断手段は、第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する。紙幣間隔測定手段は、搬送された複数の紙幣に対して、第1センサの観測領域を通過する紙幣の時間間隔を測定する。媒体有無予測手段は、第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合に、時間間隔を用いて、第2センサの観測領域における紙幣の有無を予測する。第2媒体有無判断手段は、第2センサの観測領域に紙幣が無いと予測された場合に、第2センサの出力強度を示す第2出力信号の強度変化から、第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定する。
【0033】
第1補正値設定手段は、第1センサの出力強度を変化させて、当該第1センサの補正を行う指示を、第1補正回路に送る。第2補正値設定手段は、第2センサの出力強度を変化させて、当該第2センサの補正を行う指示を、第2補正回路に送る。
【0034】
ここで、第1補正値設定手段及び第2補正値設定手段は、第2センサの観測領域に紙幣が無いと予測され、かつ、第2センサの観測領域に紙幣が無い場合に、それぞれ第1センサ及び第2センサの出力を変化させる。
【0035】
上述した紙幣認識ユニットの好適な実施形態によれば、第1補正値設定手段は、第1出力信号の強度と、予め定められている媒体無し状態での第1センサの出力強度を示す第1基準値とを比較して、第1出力信号の強度を第1基準値と一致させるために、第1センサの出力強度を変化させる指示を第1補正回路に送り、第2補正値設定手段は、第2出力信号の強度と、予め定められている媒体無し状態での第2センサの出力強度を示す第2基準値とを比較して、第2出力信号の強度を第2基準値と一致させるために、第2センサの出力強度を変化させる指示を第2補正回路に送るのが良い。
【発明の効果】
【0036】
この発明の紙幣認識ユニットのセンサ補正方法、及び紙幣認識ユニットによれば、媒体検知センサにより紙幣の有無を判定し、紙幣が有ると判定されたときに、第2センサの観測領域の紙幣の有無を判断する。
【0037】
このため、媒体検知センサの観測領域に紙幣が無い場合は、第2センサでの紙幣の有無の判断を行わないので、補正に係る処理負荷の増大を抑制することができる。また、媒体検知センサの観測領域に紙幣がある場合は、第2センサの観測領域の紙幣の有無を判断するので、紙幣間隔が短い場合であっても、紙幣間補正を行うことができる。
【0038】
また、この発明の紙幣認識ユニットのセンサ補正方法、及び紙幣認識ユニットの他の実施形態によれば、第2センサの観測領域での紙幣の有無を予測し、紙幣が無いと判定されたときに、第2センサの観測領域の紙幣の有無を判断する。第2センサの観測領域に紙幣があると予測された場合は、第2センサでの紙幣の有無の判断を行わないので、補正に係る処理負荷の増大を抑制することができる。また、センサの実装上、媒体検知センサを配置できない場合であっても、紙幣間隔の変化に対応して、紙幣間補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】センサの補正の模式図である。
【図2】センサ出力を示す模式図である。
【図3】第1実施形態の紙幣認識ユニットの概略構成図である。
【図4】第1実施形態の処理フローを示す図である。
【図5】第2実施形態の紙幣認識ユニットの概略構成図である。
【図6】第2実施形態の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0041】
(第1実施形態の紙幣認識ユニット)
図3を参照して、第1実施形態の紙幣認識ユニットについて説明する。図3は、第1実施形態の紙幣認識ユニットの概略構成図である。
【0042】
紙幣認識ユニット10は、紙幣100の搬送方向(I)に沿って、第1センサ20及び第2センサ30と、媒体検知センサ40とを備えている。また、紙幣認識ユニット10は、さらに、紙幣認識部50と、第1補正回路22と、第2補正回路32と、第1出力変換部(ADC1)26と、第2出力変換部(ADC2)36と、比較部(CMP)46とを備えて構成される。
【0043】
第1センサ20及び第2センサ30は、紙幣の寸法や印刷状態などの特徴量を抽出するためのセンサである。これらのセンサは、例えば、ホトカプラ等の光学的検出手段で構成され、紙幣に対する反射光量又は透過光量を測定して、紙幣の特徴量を抽出する。
【0044】
この第1センサ20及び第2センサ30は、取引前と、取引中の紙幣間とで補正することができる。なお、ここでは、紙幣認識ユニット10が、補正の対象となる、第1センサ20及び第2センサ30の2つのセンサを備える構成について説明するが、センサの個数は2つに限定されず、3つ以上備えていても良い。
【0045】
また、センサの配置関係については、認識する紙幣の寸法や、搬送速度等に応じて決定すれば良い。
【0046】
媒体検知センサ40は、第1センサ20及び第2センサ30の観測領域での紙幣の有無を判定するのに用いられ、従来周知のセンサを用いて構成することができる。
【0047】
第1センサ20は、紙幣100の搬送方向(I)に対して、下流側に設けられており、第2センサ30は、紙幣100の搬送方向(I)に対して、第1センサ20の上流側に設けられている。また、媒体検知センサ40は、補正対象のセンサよりも上流側、ここでは、第2センサ30の上流側に設けられている。
【0048】
紙幣認識部50は、例えば、中央処理装置(CPU)54と、RAMなどの記憶部52を備えている。
【0049】
第1補正回路22は、紙幣認識部50から第1センサ20の補正量を指示するディジタル信号を受信し、そのディジタル信号に応答して、第1センサ20の出力部に設けられている可変抵抗の抵抗値を調整して、第1センサ20の出力強度を変化させる。第1補正回路22は、ディジタル信号の受信に応答して、可変抵抗の抵抗値を変える機能を有していれば良く、従来周知の回路で構成することができる。
【0050】
第1センサ20からの出力信号は、第1増幅器(AMP1)24で増幅された後、第1出力変換部26に送られる。第1出力変換部26は、受け取った出力信号をディジタル信号(以下、第1出力信号と称することもある。)に変換した後、紙幣認識部50に送る。この第1増幅器24は、任意好適な従来周知の増幅回路とすることができる。また、第1出力変換部26は、任意好適な従来周知のアナログ−ディジタル変換回路(ADC)とすることができる。
【0051】
第2補正回路32は、紙幣認識部50から第2センサ30の補正量を指示するディジタル信号を受信し、そのディジタル信号に応答して、第2センサ30の出力部に設けられている可変抵抗の抵抗値を調整して、第2センサ30の出力強度を変化させる。この第2補正回路32は、第1補正回路22と同様の構成にすれば良い。
【0052】
第2センサ30からの出力信号は、第2増幅器(AMP2)34で増幅された後、第2出力変換部36に送られる。第2出力変換部36は、受け取った出力信号をディジタル信号(以下、第2出力信号と称することもある。)に変換した後、紙幣認識部50に送る。この第2増幅器34及び第2出力変換部36は、それぞれ第1増幅器24及び第1出力変換部36と同様の構成にすればよい。
【0053】
媒体検知センサ40からの出力信号は、増幅器(AMP)44で増幅された後、比較部46に送られる。比較部46は、増幅器44から受け取った出力信号を予め設定された基準値と比較する。比較部46は、増幅器44から受け取った出力信号の基準値に対する大小に基づいて、媒体の有無を示す2値信号(以下、媒体検知信号と称することもある。)を、紙幣認識部50に送る。媒体検知信号は、例えば、媒体が有る場合は“1”を示し、媒体が無い場合は“0”を示すディジタル信号とすることができる。
【0054】
増幅器44は、第1増幅器24及び第2増幅器34と同様の構成にすればよい。また、比較部46は、任意好適な従来周知のコンパレータとすることができる。
【0055】
紙幣認識部50が備えるCPU54は、制御手段56が、記憶部52に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、機能手段として、第1媒体有無判断手段58、媒体有無判断手段62、第2媒体有無判断手段60、第1補正値設定手段64及び第2補正値設定手段66を実現する。
【0056】
第1媒体有無判断手段58は、第1出力信号の強度変化から、第1センサ20の観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する。媒体有無判断手段62は、第1センサ20の観測領域を紙幣が通過した場合に、媒体検知信号から、媒体検知センサ40の観測領域における紙幣の有無を判定する。第2媒体有無判断手段60は、媒体検知センサ40の観測領域に紙幣がある場合に、第2出力信号の強度変化から、第2センサ30の観測領域における紙幣の有無を判定する。
【0057】
第1補正値設定手段64は、第1センサ20の出力強度を変化させて、当該第1センサ20の補正を行う指示を、第1補正回路22に送る。
【0058】
すなわち、第1補正値設定手段64は、第1出力信号の強度と、記憶部52から読み出した第1基準値とを比較して、第1補正回路22で第1センサ20の出力強度を変化させることにより、第1出力信号の強度を第1基準値と一致させる。第1基準値は、媒体無し状態での第1センサ20の出力信号を測定することにより予め定められていて、記憶部52に読出し自在に格納されている。
【0059】
第2補正値設定手段66は、第2センサ30の出力強度を変化させて、当該第2センサ30の補正を行う指示を、第2補正回路32に送る。
【0060】
すなわち、第2補正値設定手段66は、第2出力信号の強度と、記憶部52から読み出した第2基準値とを比較して、第2補正回路32で第2センサ30の出力強度を変化させることにより、第2出力信号の強度を第2基準値と一致させる。第2基準値は、媒体無し状態での第2センサ30の出力信号を測定することにより予め定められていて、記憶部52に読出し自在に格納されている。
【0061】
ここで、第1補正値設定手段64及び第2補正値設定手段66は、媒体検知センサ40の観測領域に紙幣が無い場合、あるいは、媒体検知センサ40の観測領域に紙幣があり、かつ、第2センサ30の観測領域に紙幣が無い場合に、それぞれ第1センサ20及び第2センサ30の出力を変化させる。
【0062】
(第1実施形態の紙幣認識ユニットにおける補正方法)
図4を参照して、第1実施形態の紙幣認識ユニットにおける補正方法について説明する。図4は、第1実施形態の紙幣認識ユニットにおける補正方法の処理フローを示す図である。
【0063】
図3を参照して説明した紙幣認識ユニットを備える現金処理機で、複数の紙幣が処理される場合について説明する。
【0064】
一般の現金処理機では、取引前補正が行われる。この取引前補正は、例えば、利用者検知センサによる利用者の検知、あるいは、利用者によるキーボードあるいはタッチパネルなどの操作に応答して行われる。
【0065】
例えば、第1センサの観測領域に紙幣が無い状態でのセンサ出力を第1基準値として、記憶部に読出し自在に格納しておく。補正を行う際には、取引前の、観測領域に紙幣が無い状態でのセンサ出力と第1基準値とを比較する。この比較の結果に応じて、センサ出力が第1基準値より大きければ、補正によりセンサ出力を小さくし、センサ出力が第1基準値より小さければ、補正によりセンサ出力を大きくする。
【0066】
これに対し、第1実施形態の補正方法は、取引中での紙幣間における、センサの補正方法であり、例えば、一回の入金処理中に行われる補正である。以下、複数の紙幣が搬送される場合について説明する。
【0067】
先ず、第1媒体有無判断手段58は、第1センサ20からの出力信号から生成された第1出力信号の強度変化から、第1センサ20の観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する(S10)。
【0068】
第1センサ20を紙幣が通過していない場合(No)は、第1媒体有無判断手段58は、引き続き第1出力信号の強度変化を観測して、再びS10の処理を行う。第1センサ20の観測領域を紙幣が通過した場合(Yes)は、媒体有無判断手段62は、媒体検知センサ40の出力である媒体検知信号を用いて、媒体検知センサの観測領域について紙幣の有無を判定する(S20)。
【0069】
媒体有無判断手段62による判断の結果、媒体検知センサ40の観測領域に紙幣有りと判断された場合は、第2媒体有無判断手段60は、第2センサ30からの出力信号である第2出力信号の強度変化から、第2センサ30の観測領域の紙幣の有無を判断する(S30)。
【0070】
第2媒体有無判断手段60による判断の結果、第2センサ30の観測領域に紙幣無しと判断された場合は、続いて、第1センサ20及び第2センサ30の補正を行う(S40)。この第1センサ20及び第2センサ30の補正は、取引前補正と同様に行えばよい。すなわち、第1センサ20及び第2センサ30の観測領域に紙幣が無い状態でのセンサ出力を、それぞれ第1基準値及び第2基準値として、予め記憶部52に読出し自在に格納しておく。
【0071】
第1センサ20の補正を行う際には、第1出力信号の強度と第1基準値とを比較する。この比較の結果に応じて、第1出力信号の強度が第1基準値より大きければ、補正により第1センサ20の出力強度を小さくし、第1出力信号が第1基準値より小さければ、補正により第1センサ20の出力強度を大きくする。
【0072】
同様に、第2センサ30の補正を行う際には、第2出力信号の強度と第2基準値とを比較する。この比較の結果に応じて、第2出力信号の強度が第2基準値より大きければ、補正により第2センサ30の出力強度を小さくし、第2出力信号が第2基準値より小さければ、補正により第2センサ30の出力強度を大きくする。
【0073】
S30での第2媒体有無判断手段60による判断の結果、第2センサ30の観測領域に紙幣有りと判断された場合は、第1センサ20及び第2センサ30の補正を行わずに処理を終了する。
【0074】
また、S20での媒体有無判断手段62による判断の結果、媒体検知センサ40の観測領域に紙幣無しと判断された場合は、第1センサ20及び第2センサ30の補正を行う(S40)。
【0075】
第1実施形態の紙幣認識ユニットのセンサ補正方法によれば、媒体検知センサにより紙幣の有無を判定し、紙幣が有ると判定されたときに、第2センサの観測領域の紙幣の有無を判断する。
【0076】
このため、媒体検知センサの観測領域に紙幣が無い場合は、第2センサでの紙幣の有無の判断を行わないので、補正に係る処理負荷の増大を抑制することができる。また、媒体検知センサの観測領域に紙幣がある場合は、第2センサの観測領域の紙幣の有無を判断するので、紙幣間隔が短い場合であっても、紙幣間補正を行うことができる。
【0077】
(第2実施形態の紙幣認識ユニット)
図5を参照して、第2実施形態の紙幣認識ユニットについて説明する。図5は、第2実施形態の紙幣認識ユニットの概略構成図である。
【0078】
第2実施形態の紙幣認識ユニット11は、媒体検知センサを備えない点と、紙幣認識ユニット11を構成する紙幣認識部51が、CPU55が実現する機能手段として媒体有無予測手段63及び紙幣間隔測定手段68を備える点が、第1実施形態の紙幣認識ユニットと異なっている。それ以外の構成は、第1実施形態と紙幣認識ユニットと同様であるので、重複する説明は省略する場合がある。
【0079】
紙幣間隔測定手段68は、搬送された複数の紙幣に対して、第1センサ20の観測領域を通過する紙幣の時間間隔(以下、紙幣間隔と称する。)を測定する。紙幣間隔測定手段68は、測定した紙幣間隔を、記憶部に読み出し自在に格納する。
【0080】
媒体有無予測手段63は、第1センサ20の観測領域を紙幣が通過した場合に、記憶部52から読み出した紙幣間隔を用いて、第2センサ30の観測領域における紙幣の有無を予測する。1回の取引中は、紙幣認識ユニット11が処理する複数の紙幣は、一定の速度で搬送される。したがって、紙幣間隔と、紙幣の搬送速度から紙幣間距離が求められる。この紙幣間距離を用いれば、第1センサ20の観測領域をある紙幣が通過した時点で、次に処理される紙幣が、第2センサ30の観測領域にあるか否かが予測できる。
【0081】
(第2実施形態の紙幣認識ユニットにおける補正方法)
図6を参照して、第2実施形態の紙幣認識ユニットにおける補正方法について説明する。図6は、第2実施形態の紙幣認識ユニットにおける補正方法の処理フローを示す図である。
【0082】
先ず、搬送された複数の紙幣に対して、第1センサの観測領域を通過する紙幣間隔を測定する(S5)。この測定した紙幣間隔は、記憶部52に読み出し自在に格納される。
【0083】
次に、第1媒体有無判断手段58は、第1センサ20からの出力信号である第1出力信号の強度変化から、第1センサ20の観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する(S10)。
【0084】
第1センサ20を紙幣が通過していない場合(No)は、引き続き第1出力信号の強度変化を観測して、再びS10の処理を行う。第1センサ20の観測領域を紙幣が通過した場合(Yes)は、媒体有無予測手段63が、記憶部52から読み出した紙幣間隔を用いて、第2センサ30の観測領域について紙幣の有無を予測する(S25)。
【0085】
媒体有無予測手段63による予測の結果、第2センサ30の観測領域に紙幣無しと予測された場合は、第2媒体有無判断手段60は、第2出力信号の強度の変化から、第2センサ30の観測領域における紙幣の有無を判定する(S35)。
【0086】
S35での第2媒体有無判断手段60による判断の結果、第2センサ30の観測領域に紙幣無しと判断された場合は、第1センサ20及び第2センサ30の補正を行う(S40)。この第1センサ20及び第2センサ30の補正は、第1実施形態と同様に行えばよい。
【0087】
S35での第2媒体有無判断手段60による判断の結果、第2センサ30の観測領域に紙幣有りと判断された場合は、第1センサ20及び第2センサ30の補正を行わずに処理を終了する。
【0088】
また、S25での媒体有無予測手段63による予測の結果、第2センサ30の観測領域に紙幣有りと判断された場合も、第1センサ20及び第2センサ30の補正を行わずに処理を終了する。
【0089】
この第2実施形態の紙幣認識ユニットのセンサ補正方法によれば、第2センサの観測領域での紙幣の有無を予測し、紙幣が無いと判定されたときに、第2センサの観測領域の紙幣の有無を判断する。第2センサの観測領域に紙幣があると予測された場合は、第2センサでの紙幣の有無の判断を行わないので、補正に係る処理負荷の増大を抑制することができる。また、センサの実装上、媒体検知センサを配置できない場合であっても、紙幣間隔の変化に対応して、紙幣間補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0090】
10、11 紙幣認識ユニット
20 第1センサ
22 第1補正回路
24 第1増幅器(AMP1)
26 第1出力変換部(ADC1)
30 第2センサ
32 第2補正回路
34 第2増幅器(AMP2)
36 第2出力変換部(ADC2)
40 媒体検知センサ
44 増幅器(AMP)
46 比較部(CMP)
50、51 紙幣認識部
52 記憶部
54、55 中央処理装置(CPU)
56 制御手段
58 第1媒体有無判断手段
60 第2媒体有無判断手段
62 媒体有無判断手段
63 媒体有無予測手段
64 第1補正値設定手段
66 第2補正値設定手段
68 紙幣間隔測定手段
100 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサ、及び、上流側に設けられた第2センサと、前記第2センサの上流側に設けられた媒体検知センサとを有する紙幣認識ユニットにおけるセンサ補正方法であって、
前記第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、前記第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する過程と、
前記第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合に行われる、媒体検知センサの出力信号に基づいて、媒体検知センサの観測領域における紙幣の有無を判定する過程と
を備え、
前記媒体検知センサの観測領域に紙幣が無い場合は、前記第1センサ及び第2センサの補正を行い、
前記媒体検知センサの観測領域に紙幣が有る場合は、前記第2センサの出力強度を示す第2出力信号を用いて、前記第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定し、
前記第2センサの観測領域に紙幣が無い場合は、前記第1センサ及び第2センサの補正を行い、
前記第2センサの観測領域に紙幣が有る場合は、処理を終了する
ことを特徴とするセンサ補正方法。
【請求項2】
紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサ、及び、上流側に設けられた第2センサを有する紙幣認識ユニットにおけるセンサ補正方法であって、
搬送された複数の紙幣に対して、前記第1センサの観測領域を通過する紙幣の時間間隔を測定する過程と、
前記第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、前記第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する過程と、
前記第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合に行われる、前記測定された時間間隔を用いて第2センサの観測領域における紙幣の有無を予測する過程と、
前記第2センサの観測領域に紙幣が無いと予測された場合は、前記第2センサの出力強度を示す第2出力信号を用いて、前記第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定し、
前記第2センサの観測領域に紙幣が無い場合は、前記第1センサ及び第2センサの補正を行い、
前記第2センサの観測領域に紙幣が有る場合、又は、前記第2センサの観測領域に紙幣が有ると予測された場合は、処理を終了する
ことを特徴とするセンサ補正方法。
【請求項3】
紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサと、
前記第1センサの上流側に設けられた第2センサと、
前記第2センサの上流側に設けられた媒体検知センサと、
紙幣認識部と、
前記紙幣認識部からの信号に応答して、前記第1センサの出力強度を変化させる第1補正回路と、
前記紙幣認識部からの信号に応答して、前記第2センサの出力強度を変化させる第2補正回路と、
前記第1センサの出力信号をディジタル信号に変換して前記紙幣認識部に送る第1出力変換部と、
前記第2センサの出力信号をディジタル信号に変換して前記紙幣認識部に送る第2出力変換部と、
前記媒体検知センサの出力信号に基づいて、前記媒体検知センサの観測領域における紙幣の有無を示す媒体検知信号を生成して、該媒体検知信号を前記紙幣認識部に送る比較部と
を備え、
前記紙幣認識部は、
前記第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、前記第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する第1媒体有無判断手段と、
前記第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合に、前記媒体検知センサの出力が変換された媒体検知信号から、前記媒体検知センサの観測領域における紙幣の有無を判定する媒体有無判断手段と、
前記媒体検知センサの観測領域に紙幣が有る場合に、前記第2センサの出力強度を示す第2出力信号の強度変化から、前記第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定する第2媒体有無判断手段と、
前記第1センサの出力強度を変化させて該第1センサの補正を行う指示を、前記第1補正回路に送る第1補正値設定手段と、
前記第2センサの出力強度を変化させて該第2センサの補正を行う指示を、前記第2補正回路に送る第2補正値設定手段と、
を備え、
前記第1補正値設定手段及び第2補正値設定手段は、前記媒体検知センサの観測領域に紙幣が無い場合、あるいは、前記媒体検知センサの観測領域に紙幣があり、かつ、前記第2センサの観測領域に紙幣が無い場合に、それぞれ前記第1センサ及び前記第2センサの出力強度を変化させる
ことを特徴とする紙幣認識ユニット。
【請求項4】
紙幣の搬送方向に対して、下流側に設けられた第1センサと、
前記第1センサの上流側に設けられた第2センサと、
紙幣認識部と、
前記紙幣認識部からの信号に応答して、前記第1センサの出力強度を変化させる第1補正回路と、
前記紙幣認識部からの信号に応答して、前記第2センサの出力強度を変化させる第2補正回路と、
前記第1センサの出力信号をディジタル信号に変換して前記紙幣認識部に送る第1出力変換部と、
前記第2センサの出力信号をディジタル信号に変換して前記紙幣認識部に送る第2出力変換部と
を備え、
前記紙幣認識部は、
前記第1センサの出力強度を示す第1出力信号の強度変化から、前記第1センサの観測領域を紙幣が通過したか否かを判定する第1媒体有無判断手段と、
搬送された複数の紙幣に対して、前記第1センサの観測領域を通過する紙幣の時間間隔を測定する紙幣間隔測定手段と、
前記第1センサの観測領域を紙幣が通過した場合に、前記時間間隔を用いて、第2センサの観測領域における紙幣の有無を予測する媒体有無予測手段と、
前記第2センサの観測領域に紙幣が無いと予測される場合に、前記第2センサの出力強度を示す第2出力信号の強度変化から、前記第2センサの観測領域における紙幣の有無を判定する第2媒体有無判断手段と、
前記第1センサの出力強度を変化させて該第1センサの補正を行う指示を、前記第1補正回路に送る第1補正値設定手段と、
前記第2センサの出力強度を変化させて該第2センサの補正を行う指示を、前記第2補正回路に送る第2補正値設定手段と、
を備え、
前記第1補正値設定手段及び第2補正値設定手段は、前記第2センサの観測領域に紙幣が無いと予測され、かつ、前記第2センサの観測領域に紙幣が無い場合に、それぞれ前記第1センサ及び前記第2センサの出力を変化させる
ことを特徴とする紙幣認識ユニット。
【請求項5】
前記第1補正値設定手段は、前記第1出力信号の強度と、予め定められている媒体無し状態での第1センサの出力強度を示す第1基準値とを比較して、前記第1出力信号の強度を前記第1基準値と一致させるために、前記第1センサの出力強度を変化させる指示を前記第1補正回路に送り、
前記第2補正値設定手段は、前記第2出力信号の強度と、予め定められている媒体無し状態での第2センサの出力強度を示す第2基準値とを比較して、前記第2出力信号の強度を前記第2基準値と一致させるために、前記第2センサの出力強度を変化させる指示を前記第2補正回路に送る
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の紙幣認識ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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