説明

紙幣識別装置

【課題】基準紙である反射部材を紙幣投入口から投入して紙幣搬送路内を搬送させることなく、反射型光センサーの出力調整を行うことができ、またこれにより任意の場所や時期に該出力調整を行うことができる紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】紙幣識別装置1の紙幣識別用の光センサーA、Bをミラーモードと透明モードとに選択可能な調光ミラーガラス21、26で覆っている。この紙幣識別センサーA、Bは反射型光センサーとして紙幣搬送路2に相対するように一対に配置されており、一方のセンサーAの出力を調整する場合は、該センサーAを覆う調光ミラーガラス21を透明モードにするとともに他方の反射型光センサーBを覆う調光ミラーガラス26をミラーモードにし、一方のセンサーAから照射する光を、他方のセンサーBのミラーモードの調光ミラーガラス26に照射させ、その反射光により前記出力を調整するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機、両替機、パチンコ玉貸機、メタル貸機等(以下、「自動販売機等」という。)に使用される紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に紙幣(クーポン券等を含む)を取り扱う自動販売機等の機器本体内には、紙幣挿入口から挿入された紙幣の濃淡を検出して該紙幣の真偽を判別する紙幣識別装置が配設されている。
この従来の紙幣識別装置には、反射型光センサーを具えてなるものがある(例えば、特許公報1参照。)。
この反射型光センサーは発光素子と受光素子とからなり、従来の紙幣識別装置では、該反射型光センサーは紙幣挿入口に連通する紙幣搬送路に配設されている。
この紙幣識別装置では、反射型光センサーの発光素子から、紙幣搬送路を通過している紙幣に光を照射し、該紙幣からの反射光を反射型光センサーの受光素子で検出して紙幣の真偽を判別する。
【0003】
また従来から紙幣識別装置を出荷する場合には、搭載される反射型光センサーの出力電圧を規定内とする作業、すなわち、いわゆる出力調整作業を行うようにしている。
この出力調整を行うには、まず紙幣投入口から基準紙である反射部材、例えば白色紙を投入し、紙幣搬送路内を搬送させる。次に、反射型光センサーの発光素子を規定の駆動電流によって駆動して、紙幣搬送路を通過している反射部材に光を照射し、該反射部材により反射した光を受光素子によって検出する。そして、この検出結果に基づき、発光素子の出力電圧が規定内にない場合には、発光素子の駆動電流の値を変更して発光素子の出力電圧が規定内になるようにする。
なお、発光素子の出力電圧が規定内にある場合には発光素子の駆動電流の値は変更しないようにする。
このように出力調整された後の駆動電流によって紙幣の真偽判別を行うと該紙幣の真偽判別が可及的に正確に行われる。
【特許文献1】特開2004−227093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の紙幣識別装置では、反射型光センサーの出力調整を行うには、紙幣投入口から基準紙である反射部材を投入し紙幣搬送路内を搬送させる必要があった。そのため、反射型光センサーの出力調整作業が煩雑であり、またその調整作業は工場において紙幣識別装置の出荷前にしか行うことができないという難点があった。
【0005】
上述した事情に鑑み、この発明は、基準紙である反射部材を紙幣投入口から投入して紙幣搬送路内を搬送させることなく、反射型光センサーの出力調整を行うことができ、これにより任意の場所や時期に該出力調整を行うことができる紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、この発明の紙幣識別装置は、紙幣識別センサーにより紙幣の正偽を識別する紙幣識別装置において、紙幣識別用の光センサーを、ミラーモードと透明モードとに選択可能な調光ミラーガラスで覆うようにしている。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の紙幣識別装置は、紙幣識別用の光センサーを、ミラーモードと透明モードとに選択可能な調光ミラーガラスで覆うようにしているから、調光ミラーガラスをミラーモードにして、該紙幣識別用の光センサーから照射する光をミラーモードの調光ミラーガラスに照射させ、該照射による反射光によって、該紙幣識別用の光センサーの出力を調整することができ、該出力調整作業には、基準紙である反射部材を紙幣挿入口から投入し紙幣搬送路内を搬送させる動作を必要としない。したがって、任意の場所や時期に該出力調整作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の紙幣識別装置の実施例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、この発明の第一実施例の紙幣識別装置の要部概念断面図であり、特に第一の紙幣識別用の光センサーの出力調整をする動作を示す図である。
図1で示すように、第一実施例の紙幣識別装置1には、図示せぬ紙幣挿入口に連通して紙幣搬送路2が配設されている。
この紙幣搬送路2には、第一の紙幣識別用の光センサーAと、第二の紙幣識別用の光センサーBとが配設されている。
【0010】
この第一の紙幣識別用の光センサー(以下、単に「第一のセンサー」という。)Aと第二の紙幣識別用の光センサー(以下、単に「第二のセンサー」という。)Bは、紙幣搬送路2を挟んで該紙幣搬送路2に相対するように一対に配置されている。
また、第一のセンサーAは、発光素子A1と受光素子A2とから構成された反射型光センサーからなる。また第二のセンサーBは、発光素子B1と受光素子B2とから構成された反射型光センサーからなる。この第一のセンサーAと第二のセンサーBは、互いに同一構造であり、第一のセンサーA及び第二のセンサーBの各発光素子はLEDから構成されている。
【0011】
また、第一のセンサーAは、電気的制御によりミラーモードと透明モードとに選択可能な第一の調光ミラーガラス21で覆われている。また、第二のセンサーBは、電気的制御によりミラーモードと透明モードとに選択可能な第二の調光ミラーガラス26で覆われている。
なお、第一の調光ミラーガラス21と第二の調光ミラーガラス26は、互いに同一構造である。
また、上記調光ミラーガラスは、エレクトロミック材料を使用したものであり、電気的制御により、照射光を反射するミラーモードと、照射光を透過する透明モードとの間を自由に変化させることができるものとして知られている。
【0012】
図2は、この発明の第一実施例の紙幣識別装置の制御系統の構成を示すブロック図であり、図2では図1と同一部分を同一符号で示している。
図2において、紙幣識別装置1は、制御部(MPU)3と、第一のセンサーA、第一のLED駆動回路12、第一のPD(Photo detector)出力増幅回路13、第一の調光ミラーガラス21、第一の調光ミラーガラス制御回路22、第二のセンサーB、第二のLED駆動回路17、第二のPD出力増幅回路18、第二の調光ミラーガラス26、第二の調光ミラーガラス制御回路27と、図示せぬメモリを具備して構成される。
【0013】
また、第一のLED駆動回路12は、第一のセンサーAの発光素子A1を駆動させる回路である。また、第一のPD出力増幅回路13は、第一のセンサーAの受光素子A2からの出力を増幅させる回路である。また、第一の調光ミラーガラス制御回路22は、第一の調光ミラーガラス21を、ミラーモード、透明モードのいずれか一方のモードにさせる回路である。
また、第二のLED駆動回路17は、第二のセンサーBの発光素子B1を駆動させる回路である。また、第二のPD出力増幅回路18は、第二のセンサーBの受光素子B2からの出力を増幅させる回路である。また、第二の調光ミラーガラス制御回路27は、第二の調光ミラーガラス26を、ミラーモード、透明モードのいずれか一方のモードにさせる回路である。
【0014】
なお、上記メモリには、第一のセンサーAの出力電圧の規定値、第一のセンサーAの駆動電流の規定範囲(正常に駆動する電流の値の範囲)、第二のセンサーBの出力電圧の規定値、および第二のセンサーBの駆動電流の規定範囲(正常に駆動する電流の値の範囲)が予め記憶されている。
また、上記メモリには、第一のセンサーAの発光素子A1を駆動する駆動電流の初期値が予め記憶されており、また第一のセンサーAの出力調整後は、該調整後の駆動電流値が記憶される。また、上記メモリには、第二のセンサーBの発光素子B1を駆動する駆動電流の初期値が予め記憶されており、また第二のセンサーBの出力調整後は、該調整後の駆動電流値が記憶される。
【0015】
MPU3は、上記メモリに記憶された発光素子A1の駆動電流の初期値、出力調整後の紙幣識別の際には調整後の駆動電流値を第一のLED駆動回路12にセットする。またMPU3は、上記メモリに記憶された発光素子B1の駆動電流の初期値、出力調整後の紙幣識別の際には調整後の駆動電流値を第二のLED駆動回路17にセットする。また、MPU3は、第一の調整ミラーガラス制御回路22および第二の調整ミラーガラス制御回路27を駆動する。また、MPU3には、第一のPD出力増幅回路13及び第二のPD出力増幅回路18から検出信号が入力される。
【0016】
次に、図3を参照して紙幣識別装置1の動作をさらに説明する。
図3は、本願発明の第一実施例の紙幣識別装置1の動作の流れを示すフローチャートであり、図3では、図1及び図2と同一部分を同一符号で示している。
【0017】
第一実施例の紙幣識別装置1では、第一のセンサーAと第二のセンサーBの双方の出力を調整するが、ここではまず、第一のセンサーAの出力を調整する。
第一のセンサーAの出力を調整する場合、MPU3(図2)は第一の調整ミラーガラス制御回路22を駆動し、これにより第一のセンサーAを覆う第一の調光ミラーガラス21を透明モードにセットする(ステップ101)。次に、MPU3は第二の調整ミラーガラス制御回路27を駆動し、これにより第二のセンサーBを覆う第二の調光ミラーガラス26をミラーモードにセットする(ステップ102)。
次に、MPU3は第一のLED駆動回路12を介し第一のセンサーAの発光素子A1を、初期値である所定の駆動電流値により駆動する(ステップ103)。
すると、図1で示すように発光素子A1から光Cが放射される。ここで、第一の調光ミラーガラス21は透明モードであるから、発光素子A1から放射された光Cは、第一の調光ミラーガラス21を透過する。また、第二の調光ミラーガラス26はミラーモードであるから、発光素子A1から放射された光Cは、第二の調光ミラーガラス26に照射して該第二の調光ミラーガラス26によって反射する。また、その反射光Cは、透明モードの第一の調光ミラーガラス21を透過する。そして、該反射光Cを受光素子A2が検出する。また、その検出結果は、第一のPD出力増幅回路13を介しMPU3に入力される。
次に、入力された検出結果に基づき、MPU3は第一のセンサーAの出力電圧が規定値であるか否かを判断する(ステップ104)。ここで、第一のセンサーAの出力電圧が規定値である場合には(ステップ104でYES)、第一のセンサーAの発光素子A1の駆動電流の値を変更する必要がないので、該駆動電流値を上記メモリにセーブ(記憶)する(ステップ107)。
そしてMPU3は、第一のLED駆動回路12に電流値ゼロをセットし、これにより第一のセンサーAの発光素子A1の発光を停止させる(ステップ108)。
なお、上記メモリにセーブされた発光素子A1の駆動電流の値は、紙幣のデータを測定し紙幣を識別する際の基準とされる。
【0018】
一方、第一のセンサーAの出力電圧が規定値でない場合(ステップ104でNO)、MPU3は、第一のセンサーAの発光素子A1の駆動電流の新たな値を算出する。
具体的には、第一のセンサーAの出力電圧が上記規定値より大きい場合は、MPU3は、その時点で第一のLED駆動回路12にセットされている電流の値よりも小さい値を算出する。第一のセンサーAの出力電圧が上記規定値より小さい場合は、MPU3による計算によって、その時点で第一のLED駆動回路12にセットされている電流の値よりも大きい値を算出する。
そして、MPU3は、算出した値が、第一のセンサーAを正常に駆動する電流値の範囲(規定範囲)内であるかを判断する(ステップ105)。そして、算出した値の駆動電流が上記範囲(規定範囲)内である場合には(ステップ105でYES)、算出した第一のセンサーAの発光素子A1の駆動電流の値を、第一のLED駆動回路12にセットして発光素子A1を駆動する(ステップ106)。次に、第一のセンサーAの出力電圧が規定値であるか否かをMPU3が判断する上記処理(ステップ104)に移行し、第一のセンサーAの出力電圧が規定値になるまでステップ104〜106の処理を行う。
【0019】
一方、MPU3において上記算出した値の駆動電流値が規定範囲内でない場合には(ステップ105でNO)、第一のセンサーAの発光素子A1の不具合又は第一のPD出力増幅回路13の不具合により異常状態であると判断して終了する。
【0020】
次に、第二のセンサーBの出力を調整する。
第二のセンサーBの出力を調整する場合、MPU3は第二の調整ミラーガラス制御回路27を駆動し、これにより第二のセンサーBを覆う第二の調光ミラーガラス26を透明モードにセットする(ステップ109)。次にMPU3は第一の調整ミラーガラス制御回路22を駆動し、これにより第一のセンサーAを覆う第一の調光ミラーガラス21をミラーモードにセットする(ステップ110)。
次に、MPU3は第二のLED駆動回路17を介し第二のセンサーBの発光素子B1を、初期値である所定の駆動電流値により駆動する(ステップ111)。
すると、図4で示すように発光素子B1から光Cが放射される。ここで、第二の調光ミラーガラス26は透明モードであるから、発光素子B1から放射された光Cは、第二の調光ミラーガラス26を透過する。また、第一の調光ミラーガラス21はミラーモードであるから、発光素子B1から放射された光Cは、第一の調光ミラーガラス21に照射して該第一の調光ミラーガラス21によって反射する。また、その反射光Cは、透明モードの第二の調光ミラーガラス26を透過する。そして、該反射光Cを受光素子B2が検出する。また、その検出結果は、第二のPD出力増幅回路18を介しMPU3に入力される。
次に、入力された検出結果に基づき、MPU3は第二のセンサーBの出力電圧が規定値であるか否かを判断する(ステップ112)。ここで、第二のセンサーBの出力電圧が規定値である場合には(ステップ112でYES)、第二のセンサーBの発光素子B1の駆動電流の値を変更する必要がないので、該駆動電流値を上記メモリにセーブする(ステップ115)。そして、MPU3は、第二のLED駆動回路17に電流値ゼロをセットし、これにより第二のセンサーBの発光素子B1の発光を停止させる(ステップ116)。
なお、上記メモリにセーブされた発光素子B1の駆動電流の値は、紙幣のデータを測定し紙幣を識別する際の基準とされる。
【0021】
なお、発光素子B1の発光停止の後、紙幣の識別処理に備えるため、MPU3は第一の調光ミラーガラス制御回路22を介し第一のセンサーAの調光ミラーガラス21を透明モードにする(ステップ117)。
【0022】
一方、第二のセンサーBの出力電圧が規定値でない場合(ステップ112でNO)、MPU3は、第二のセンサーBの発光素子B1の駆動電流の新たな値を算出する。
具体的には、第二のセンサーBの出力電圧が規定値より大きい場合は、MPU3は、その時点で第二のLED駆動回路17にセットされている電流の値よりも小さい値を算出する。第二のセンサーBの出力電圧が規定値より小さい場合は、MPU3による計算によって、その時点で第二のLED駆動回路17にセットされている電流の値よりも大きい値を算出する。
そして、MPU3は、算出した値が、第二のセンサーBを正常に駆動する電流の値の範囲(規定範囲)内であるかを判断する(ステップ113)。そして、算出した値の駆動電流が上記範囲(規定範囲)内である場合には(ステップ113でYES)、算出した第二のセンサーBの発光素子B1の駆動電流の値を、第二のLED駆動回路17にセットして発光素子B1を駆動する(ステップ114)。次に、第二のセンサーBの出力電圧が規定値であるか否かをMPU3が判断する上記処理(ステップ112)に移行し、第二のセンサーBの出力電圧が規定値になるまでステップ112〜114の処理を行う。
【0023】
一方、MPU3において算出した値の駆動電流値が規定範囲内でない場合には(ステップ113でNO)、第二のセンサーBの発光素子B1の不具合又は第二のPD出力増幅回路18の不具合により異常状態であると判断して終了する。
なお、上記した図4は、この発明の第一実施例の紙幣識別装置の要部概念断面図であり、特に第二のセンサーの出力調整をする動作を示す図である。
【0024】
また、上述したように第一のセンサーA及び第二のセンサーBの出力調整を行った後、この紙幣識別装置1では、紙幣の識別処理を行う。
その紙幣の識別処理は、まず発光素子A1から、透明モードにされた第一の調光ミラーガラス21を介し紙幣搬送路を通過している紙幣に光を照射し、該紙幣からの反射光を受光素子B1で検出する。次に、第二の調光ミラーガラス26を透明モードにセットし、発光素子B1から、該第二の調光ミラーガラス26を介し、紙幣搬送路を通過している紙幣に光を照射し該紙幣からの反射光を受光素子B2で検出する。そして受光素子A2及び受光素子B2からの各検出結果からMPU3は紙幣の真偽を判別する。
また、その紙幣の真偽の判別では、上記出力調整作業によって調整され上記メモリに記憶された第一のセンサーAの駆動電流値、第二のセンサーBの駆動電流値によりそれぞれ駆動された第一のセンサーA、第二のセンサーBによって、紙幣のデータが検出されるので、紙幣の真偽判別が可及的に正確に行われる。
【0025】
以上で説明したように、この第一実施例の紙幣識別装置1では、第一のセンサーAにより紙幣の正偽を識別する紙幣識別装置において、該第一のセンサーAを、ミラーモードと透明モードとに選択可能な調光ミラーガラスで覆うようにしているから、第一のセンサーAの出力調整作業を、基準紙である反射部材を紙幣投入口から投入して紙幣搬送路2内を搬送させる従来の動作をすることなく行うことができ、そのため該調整作業を任意の場所や時期に行うことができる。
なお、第二のセンサーBも、第一のセンサーAと同様に、調光ミラーガラス26で覆うようにしたから、第二のセンサーBの出力調整作業を、反射部材を紙幣投入口から投入して紙幣搬送路2内を搬送させる従来の動作をすることなく行うことができ、そのため該調整作業を任意の場所や時期に行うことができる。
【0026】
また、第一実施例の紙幣識別装置1では、第一のセンサーA及び第二のセンサーBにより紙幣の正偽を識別する紙幣識別装置において、第一のセンサーAと第二のセンサーBを、反射型光センサーとして紙幣搬送路に相対するように一対に配置するとともに、該第一のセンサーA及び第二のセンサーBをいずれも調光ミラーガラスで覆うようにしているから、第一のセンサーAの出力を調整する場合は、該第一のセンサーAを覆う第一の調光ミラーガラス21を透明モードにするとともに第二のセンサーBを覆う第二の調光ミラーガラス26をミラーモードにし、第一のセンサーAから照射する光を、第二のセンサーBのミラーモードの調光ミラーガラス26に照射させ、該照射による反射光により前記出力を調整することができ、また第二のセンサーBの出力を調整する場合は、該第二のセンサーBを覆う第二の調光ミラーガラス26を透明モードにするとともに第一のセンサーAを覆う第一の調光ミラーガラス21をミラーモードにし、第二のセンサーBから照射する光を、第一のセンサーAのミラーモードの調光ミラーガラス21に照射させ、該照射による反射光により前記出力を調整することができる。
そして、この第一のセンサーAの出力調整作業、第二のセンサーBの出力調整作業は、いずれも基準紙である反射部材を紙幣投入口から投入して紙幣搬送路2内を搬送させる従来の動作を必要としない。したがって、任意の場所や時期に、第一のセンサーAの出力調整作業、第二のセンサーBの出力調整作業をそれぞれ行うことができる。
【0027】
なお、第一の実施例の紙幣識別装置1では、第一のセンサーAの発光素子A1及び受光素子A2とは、紙幣搬送路2に対し同じ側に配置されていればよく互いの設置角度に限定はないが、図1で示すように第一のセンサーAの出力調整の際、第二の調光ミラーガラス26からの反射光Cが受光素子A2の面となす角度が略90度となるように発光素子A1及び受光素子A2を配置すると、受光素子A2は多くの反射光を取り込むことができるので効率的である。同様に、第二のセンサーBの発光素子B1及び受光素子B2とは、紙幣搬送路2に対し同じ側に配置されていればよく互いの設置角度に限定はないが、図4で示すように第二のセンサーBの出力調整の際、第一の調光ミラーガラス21からの反射光Cが受光素子B2の面となす角度が略90度となるように発光素子B1及び受光素子B2を配置すると、受光素子B2は多くの反射光を取り込むことができるので効率的である。
【0028】
また、第一実施例の紙幣識別装置1は、出力調整手段の構成要素である調光ミラーガラス21、26によって紙幣搬送路2の一部を構成することができ、また出力調整手段として複雑な可動機構も必要としない点で有効である。
【0029】
また、第一のセンサーAと第一の調光ミラーガラス21とをユニット化することができ、また第二のセンサーBと第二の調光ミラーガラスAとをユニット化することもできる。
【0030】
なお、第一実施例の紙幣識別装置1では、反射型光センサーである第一センサーAおよび第二のセンサーBを紙幣搬送路2に相対するように一対に配置することとしたが、この発明の紙幣識別装置では、反射型光センサーの配設する数は限定がなく、たとえば、下記に示す第二実施例の紙幣識別装置31のように、紙幣識別センサーを紙幣搬送路2の片側に一つ配置するようにしたものであってもよい。
【実施例2】
【0031】
図5は、この発明の第二実施例の紙幣識別装置の要部概念断面図であり、図5では図1乃至図4と同一部分を同一符号で示している。
【0032】
図5で示すように、第二実施例の紙幣識別装置31には、第一のセンサーAのみが紙幣搬送路2の片側に配設されている。この第一のセンサーAは調光ミラーガラス21で覆われている。また、この第一のセンサーAは、反射型光センサーとして用いられる。
【0033】
この第一のセンサーAの出力を調整するには、調光ミラーガラス21をミラーモードにし、第一のセンサーAから照射する光を、ミラーモードの調光ミラーガラス21に照射させ、該照射による反射光により、反射型光センサーAの出力を調整する。
【0034】
このように第二実施例の紙幣識別装置31では、第一のセンサーAにより紙幣の正偽を識別する紙幣識別装置において、該第一のセンサーAを調光ミラーガラスで覆うようにしているから、第一のセンサーAの出力調整作業を、基準紙である反射部材を紙幣投入口から投入して紙幣搬送路2内に搬送させる従来の動作をすることなく行うことができ、そのため該調整作業を任意の場所や時期に行うことができる。
【0035】
また、第二実施例の紙幣識別装置31では、出力調整手段の構成要素である調光ミラーガラス21によって紙幣搬送路2の一部を構成することができる点、および出力調整手段として複雑な可動機構も必要としない点、第一のセンサーAと第一の調光ミラーガラス21とをユニット化することができる点は、第一実施例の紙幣識別装置1と同様である。
【0036】
なお、第二実施例の紙幣識別装置31又は第一実施例の紙幣識別装置1において、反射型光センサーの出力調整作業は、紙幣が該反射型光センサーに達していなければいつでもよく、例えば紙幣識別装置の紙幣挿入口に紙幣が挿入されたことを検知した直後であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、自動販売機等の機器本体内に配置され、内部に反射型光センサーの出力調整手段を具えた紙幣識別装置であって、任意の場所や時期に該出力調整を行うことができるものとして有用である。また、本願発明は紙幣に限らず紙葉類を識別する識別装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、この発明の第一実施例の紙幣識別装置の要部概念断面図であり、特に第一のセンサーの出力を調整する動作を示す図である。
【図2】図2は、この発明の第一実施例の紙幣識別装置の制御系統の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、この発明の第一実施例の紙幣識別装置の動作の流れを示すフローチャートでる。
【図4】図4は、この発明の第一実施例の紙幣識別装置の要部概念断面図であり、特に第二のセンサーの出力調整をする動作を示す図。
【図5】図5は、この発明の第二実施例の紙幣識別装置の要部概念断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1、31…紙幣識別装置
2…紙幣搬送路
21、26…調光ミラーガラス
21…一方の反射型光センサーを覆う調光ミラーガラス(第一の調光ミラーガラス)
26…他方の反射型光センサーを覆う調光ミラーガラス(第二の調光ミラーガラス)
A、B…紙幣識別センサー
A、B…反射型光センサー
A…一方の反射型光センサー(第一の紙幣識別用の光センサー)
B…他方の反射型光センサー(第二の紙幣識別用の光センサー)
C…光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣識別センサーにより紙幣の正偽を識別する紙幣識別装置において、
紙幣識別用の光センサーを、ミラーモードと透明モードとに選択可能な調光ミラーガラスで覆うようにしたことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記紙幣識別センサーは、反射型光センサーとして紙幣搬送路に相対するように一対に配置されており、
このうちの一方の反射型光センサーの出力を調整する場合は、該一方の反射型光センサーを覆う調光ミラーガラスを透明モードにするとともに他方の反射型光センサーを覆う調光ミラーガラスをミラーモードにし、前記一方の反射型光センサーから照射する光を、前記他方の反射型光センサーのミラーモードの調光ミラーガラスに照射させ、該照射による反射光により、前記出力を調整するようにしたことを特徴とする請求項(1)記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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