説明

紙幣識別装置

【課題】挿入される紙幣幅が異なる場合、紙幣が連続的に引き込まれないので違和感がある。
【解決手段】紙幣10,11が挿入される挿入口23と、この挿入口23に連結された通路24と、この通路24の挿入口23側に設けられた入口センサ27と、この入口センサ27下流側の通路24に設けられた搬送手段31と、通路24に設けられた識別センサ41と、入口センサ27と識別センサ41に接続された識別部45と、通路24側面に設けられた通路幅可変手段32とを備え、挿入口23から挿入された紙幣10,11の搬送中に紙幣幅を検出するとともに、通路幅可変手段32を用いて紙幣10,11幅に合致した通路幅とするものである。これにより、所期の目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等に搭載される紙幣識別装置にかかわり、更に詳しくは幅広紙幣と幅狭紙幣が共に識別可能な紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の幅広紙幣と幅狭紙幣が共に識別可能な紙幣識別装置1について説明する。従来の紙幣識別装置1は、図11に示すように、紙幣が挿入される挿入口2と、この挿入口2に連結された通路3と、この通路3の挿入口2側に設けられた入口センサ4と、この入口センサ4の下流側の通路3に設けられた搬送手段5と、通路3に設けられた識別センサ6と、入口センサ4と識別センサ6に接続された識別部7と、通路3の側面に設けられた通路幅可変手段8と、通路3の出口に転結されたスタッカ9とから構成されていた。
【0003】
以上のように構成された紙幣識別装置1の動作について以下に説明する。この紙幣識別装置1は、図12(a)に示す幅狭紙幣10と、図12(b)に示す幅広紙幣11の双方の紙幣が識別できるものである。幅狭紙幣10は横幅寸法10aが約69mmであり、長さ寸法10bが約143mmである。また、幅広紙幣11は横幅寸法11aが約77mmであり、長さ寸法11bが約151mmである。
【0004】
これらの紙幣10或いは11の何れかの紙幣が挿入口2から挿入される。挿入口2から挿入された紙幣10或いは11は、図13に示す入口センサ4で紙幣の挿入と紙幣の種類とが検知される。そのため入口センサ4は、通路3の両側面近傍に装着された2個の紙幣検知センサ4aと、この紙幣検知センサ4aの内側に装着された2個の紙幣挿入センサ4bとで構成されている。
【0005】
幅広紙幣11が挿入された場合には、紙幣検知センサ4aと紙幣挿入センサ4bの双方から合計4信号が得られる。幅狭紙幣10が挿入された場合には、紙幣挿入センサ4bからの2信号のみか、或いは幅狭紙幣10の挿入位置によっては、紙幣挿入センサ4bからの2信号と紙幣検知センサ4aの何れか一方のセンサから出力が得られ、合計3信号が得られる。即ち、幅広紙幣11が挿入された場合には、入口センサ4からは4信号が得られ、幅狭紙幣10が挿入された場合には、入口センサ4からは3信号か或いは2信号が得られる。
【0006】
このようにして、挿入口2から挿入された紙幣10,11の種類が判定される。紙幣10,11の種類が判定されたら、この紙幣10,11の横幅の寸法10a,11aに合うように、通路幅可変手段8で通路3の幅が可変される。即ち、幅狭紙幣10が挿入された場合には、可動壁8a,8bが内側へ移動して、通路3は点線で示すような幅狭通路3aとなる。幅広紙幣11が挿入された場合には、可動壁8a,8bは移動せず、実線で示すような幅広通路3bとなる。
【0007】
挿入口2から挿入された紙幣10,11の種類の相違に基づいて通路3の幅が制御された後、搬送手段5を構成する搬送ローラ5aが駆動して、紙幣10或いは11を、図11に示す識別センサ6方向に搬送する。識別センサ6では、紙幣10,11の種類の違いにより、幅の異なる通路3a,3bを搬送されるので、紙幣10,11の幅方向の位置は固定される。従って、紙幣10,11の横幅寸法10a,11aが異なっても予め定められた特定位置での紙幣特徴情報を正確に検知することができる。
【0008】
識別センサ6から出力されるこの紙幣特徴情報に基づいて、識別部7で紙幣10,11の真偽と種類が識別される。識別された紙幣10,11はスタッカ9に積層収納される。
【0009】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−338990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながらこのような従来の紙幣識別装置1では、挿入された紙幣10,11は、入口センサ4で紙幣幅を検知して、この紙幣幅に応じて通路幅可変手段8で通路幅を可変制御した後、始めて搬送ローラ5aで紙幣10或いは11を搬送することになる。
【0011】
即ち、図14に示すように、紙幣10,11を挿入した場合、時間12までかかって紙幣10,11の種類を検知し、挿入された紙幣が幅狭紙幣10であったとすると、可動壁8a,8bを移動させる時間13までかかって幅狭通路3aに切り替えた後、始めて紙幣10,11は搬送手段5で搬送されることになる。
【0012】
このように幅狭紙幣10の挿入においては、この幅狭紙幣10を挿入してから、搬送されるまで搬送が停止される時間(約400msec)を有しており、操作者にとっては違和感があった。
【0013】
そこで本発明は、この問題を解決したもので違和感のない紙幣挿入を実現する紙幣識別装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために本発明の紙幣識別装置は、挿入口から挿入された紙幣の搬送中に紙幣幅を検出するとともに、通路幅可変手段を用いて前記紙幣幅に合致した通路幅とするものである。これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、挿入口から挿入された紙幣の搬送中に紙幣幅を検出するとともに、通路幅可変手段を用いて前記紙幣幅に合致した通路幅とするものであり、紙幣の搬送中に紙幣幅を検知して通路幅を可変するので、紙幣を連続的に引き込むことができ、紙幣挿入時の違和感がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態における紙幣識別装置21の断面図である。図1において、22は、樹脂で形成された筐体であり、この筐体22の上方側面には突出した突出部22aが形成されており、この突出部22aに紙幣10,11(図12参照)が挿入される挿入口23が設けられている。
【0018】
この挿入口23には、紙幣10,11の通路24が連結している。この通路24の挿入口23近傍には、発光ダイオード25と受光トランジスタ26とで構成された入口センサ27が装着されている。
【0019】
この入口センサ27は4個の入口センサ27a,27b,27c,27d(図示せず)とで構成されている。即ち、入口センサ27aは、発光ダイオード25aとこの発光ダイオード25aに対向する受光トランジスタ26aで構成されている。
【0020】
以下同様に、入口センサ27bは、発光ダイオード25bとこの発光ダイオード25bに対向する受光トランジスタ26bで構成されており、入口センサ27cは、発光ダイオード25cとこの発光ダイオード25cに対向する受光トランジスタ26cで構成されている。また、入口センサ27dは、発光ダイオード25dとこの発光ダイオード25dに対向する受光トランジスタ26dで構成されている。
【0021】
そして、この入口センサ27のうち入口センサ27a,27dは、図2に示すように、通路24の両側近傍に装着されており、幅広紙幣11が挿入されたときに、この入口センサ27a,27dから出力信号が出力される。また、入口センサ27b,27cは、通路24の中央近傍に装着されており、幅狭紙幣10と幅広紙幣11が挿入されたとき、入口センサ27b,27cから出力信号が出力される。また、幅狭紙幣10の挿入位置によっては、入口センサ27a或いは27dからの出力信号も出力される場合がある。
【0022】
入口センサ27a,27d間の寸法27eは72mmであり、入口センサ27b,27c間の寸法27fは64mmとしている。これらの寸法27e,27fは共に通路24の中央から均等に振り分けられている。
【0023】
再び、図1に戻って、入口センサ27の下流には3角形に配置されたプーリ28a,28b,28cと、このプーリ28a,28b,28cに懸架された搬送ベルト29と、プーリ28a,28b,28cに対向して設けられたローラ30a,30b,30cとで紙幣10,11の搬送手段31を形成している。
【0024】
ここで、ローラ30aの押圧力は、他のローラ30b,30cと比べて押圧力を弱くして紙幣保持力を弱くしている。このように、入口センサ27近傍における搬送手段31の紙幣保持力を弱くすることは、搬送しながら紙幣を整列させるために重要なことである。
【0025】
また、この搬送手段31に沿って、通路24の幅を可変する通路幅可変手段32が設けられている。この通路幅可変手段32は、挿入口23に挿入された紙幣10,11の幅に基づいて、夫々の紙幣10,11に合致した通路24(24a,24b)にする働きを有するものである。
【0026】
図2(a)は、幅広紙幣11が挿入口23に挿入されたときの挿入口23近傍の平面図である。幅広紙幣11が挿入されると、4個の入口センサ27(27a,27b,27c,27d)の全てから出力信号が得られる。この場合は、通路幅可変手段32を構成する可動壁33a,33bは移動せず、挿入口23近傍の通路24と同じ通路幅となる。即ち、幅広通路24aとなる。
【0027】
図2(b)は、幅狭紙幣10が挿入口23に挿入されたときの挿入口23近傍の平面図である。幅狭紙幣10が挿入されると、2個の入口センサ27(27b,27c)から出力が得られる。この場合は、通路幅可変手段32を構成する可動壁33a,33bが矢印32a方向に移動し、挿入口23近傍の通路24より狭い通路幅となる。即ち、幅狭通路24bとなる。
【0028】
図3は、通路幅可変手段32の動作説明図である。可動壁33a,33bには、クランク状のカム溝34a,34bが形成されており、このカム溝34a,34b内をピン35aが植設されたスライダ35が摺動する。このスライダ35の中央には、スライダ溝35bが形成されており、このスライダ溝35b内を歯車36に植設されたピン36aが摺動する。また、この歯車36は、通路幅可変モータ37(図示せず)に連結している。従って、通路幅可変モータ37の回転により、歯車36が半回転する度に、可動壁33a,33bは移動し、幅広通路24a或いは幅狭通路24bとなる。
【0029】
図3(a)は、可動壁33a,33bで幅狭通路24bを形成した場合の例であり、図3(b)は、幅狭通路24bの状態から、歯車36を矢印32b方向に半回転させることにより、可動壁33a,33bを広げて幅広通路24aを形成した場合の例である。
【0030】
図4は、通路幅可変手段32を制御して、幅広通路24aと幅狭通路24bを形成したときの断面図である。図4(a)は、可動壁33a,33bを外側に移動させて幅広通路24aを形成した場合の例であり、図4(b)は、この幅広通路24aの状態から、可動壁33a,33bを内側に移動させて幅狭通路24bを形成した場合の例である。
【0031】
以上のようにして、挿入された紙幣10,11は、通路幅可変手段32で通路幅が可変されるとともに、搬送手段31で搬送される。なお、入口センサ27で紙幣10,11の幅が検知される通路24を紙幣幅検知領域としている。
【0032】
図1に戻り、通路24及び搬送手段31はプーリ28bで略90度方向を変える。方向を変えたプーリ28bとプーリ28c間の通路24途中の壁に、識別センサ41が設けられている。この識別センサ41は、発光ダイオード42とこの発光ダイオード42に対向して設けられた受光ダイオード43とで構成されている。
【0033】
この識別センサ41の出力は、識別部45に接続されている。この識別部45では、挿入された紙幣10,11の真偽と種類を識別する。識別した結果、偽紙幣の場合は、搬送手段31を逆転させて、挿入された紙幣を挿入口23に返却する。また、真紙幣10,11の場合は、搬送手段31を正転させて、スタッカ46へ搬送し、このスタッカ46に収納する。
【0034】
図5は、紙幣識別装置21の電気回路を中心とした紙幣識別装置21のブロック図である。紙幣10,11が挿入される挿入口23近傍の通路24には、この通路24を挟んで発光ダイオード25と受光ダイオード26とで構成された入口センサ27が装着されている。発光ダイオード25は、制御回路51の出力に接続されている。また、この発光ダイオード25に対向して設けられた受光ダイオード26は識別回路52に接続されている。
【0035】
入口センサ27の下流には搬送手段31が設けられており、この搬送手段31は、搬送用モータ53で駆動される。この搬送用モータ53は、制御回路51に接続されたモータ駆動回路53aで駆動される。
【0036】
入口センサ27の下流側の通路24には、この通路24を挟んで発光ダイオード42と受光ダイオード43とで構成された識別センサ41が設けられている。発光ダイオード42は、制御回路51に接続されて制御される。
【0037】
また、受光ダイオード43の出力は、対数増幅器55と、リニア増幅器56と、ADコンバータ57をこの順に介して識別回路52に接続されている。また、この識別回路52には、紙幣識別のための基準値が格納されたメモリ58が接続されている。
【0038】
受光ダイオード43で検知された紙幣10,11の検知データは、対数増幅器55とリニア増幅器56で増幅された後、ADコンバータ57でデジタルデータに変換され、メモリ58内に格納された基準値と比較されて紙幣10,11の真偽と種類が識別される。そして、その識別結果はこの識別回路52に接続された出力端子59から出力される。識別回路52と制御回路51間もお互いに接続され、制御回路51では識別回路52から出力される識別結果に基づいて制御する。ここで、対数増幅器55とリニア増幅器56とADコンバータ57と識別回路52とメモリ58とで識別部45を形成している。
【0039】
また、制御回路51の出力はモータ駆動回路37aを介して、通路幅可変モータ37に接続されている。通路幅可変モータ37は、歯車36を介して可動壁33a,33bに機構的に接続されている。従って、入力センサ27から出力される出力信号に基づいて、制御回路51で可動壁33a,33bが制御される。
【0040】
以上のように構成された紙幣識別装置21の動作について、図6を参照しながら以下に説明する。先ず、挿入口23に紙幣10,11が挿入されると、ステップ61において、入口センサ27が働き紙幣10,11の挿入を検知する。紙幣10,11が検知されると、ステップ62に移行し挿入された紙幣10,11は搬送手段31で低速搬送(80mm/sec)される。
【0041】
紙幣が約10mm搬送された時点で、ステップ63に移行し、再び入口センサ27の出力信号の数を検知する。入力センサ27の出力信号の数を検知したらステップ64に移行する。入口センサ27の出力が3個以下であれば、挿入された紙幣は幅狭紙幣10と判断する。そして、ステップ65に移行し、通路幅可変手段32を動作させて、通路幅を幅狭通路24bにする。
【0042】
通路幅を幅狭通路24bに切り替えた後、ステップ66に移行し、搬送手段31を高速搬送(150mm/sec)にする。なお、ステップ64で幅広紙幣11と判断したときは、ステップ66に直接移行し高速搬送される。
【0043】
次にステップ67に移行し、紙幣10,11の真偽と金種が識別センサ41と識別部45で識別される。次に、ステップ68に移行し、識別された結果、紙幣が真紙幣であったならば、ステップ69に移行し、紙幣の種類の信号を出力端子59から出力する。そしてステップ70に移行し、真紙幣と識別された紙幣10,11をスタッカ46へ搬送し、スタッカ46に積層収納する。
【0044】
そして、ステップ71に移行する。ステップ71では、通路24の幅が幅狭通路24bであれば、ステップ72に移行する。ステップ72では通路幅可変手段32を動作させて通路24を幅広通路24aにして終了する。また、ステップ71で既に幅広通路24aになっていればそのまま終了する。
【0045】
また、ステップ68において、挿入された紙幣が偽紙幣であったなら、ステップ73に移行し、その偽紙幣は搬送手段31を逆転させて挿入口23に返却する。そしてステップ71に移行する。何れにしても、終了段階で通路24は幅広通路24aとなっている。
【0046】
図7は、搬送手段31を構成する搬送モータ53のタイミングチャートである。図7(a)は、通路幅切り替えが必要な場合のタイミングチャートである。即ち、時点75において入口センサ27が紙幣10,11を検出すると搬送モータ53がパルス駆動74aされる。搬送モータ53をパルス駆動74aすることにより、搬送速度が低速で搬送される。このパルス幅を制御することにより、DC電力で駆動する搬送モータ53の回転数が制御される。このパルス幅の可変により搬送速度が制御される。このようにパルス幅で回転数が制御されるので、制御が容易であり、低価格の制御手段を実現することができる。
【0047】
入口センサ27で紙幣を制御した後、紙幣を約10mm搬送した時点76において、再度入口センサ27の出力信号の数を検知する。ここで、幅狭紙幣10と判断すると通路幅可変手段32が動作して紙幣通路24を幅狭通路24bとする。77は通路幅可変手段32の動作の時間である。この動作の時間77の間も低速搬送が継続されており、予め定められた時間78が経過したら搬送モータ53には直流電圧(パルス幅100%)74bが供給される。直流電圧74bの供給により、搬送手段31は高速搬送となる。この高速搬送の途中に紙幣10が識別される。
【0048】
図7(b)は、幅広紙幣11が挿入された場合のタイミングチャートである。時点75において、入口センサ27で紙幣を検知すると、搬送モータ53をパルス駆動74aさせて低速搬送する。そして、紙幣を約10mm搬送した時点76において、再度入口センサ27の出力信号の数を検知する。ここでは、幅広紙幣11と判断するので通路幅可変手段32が動作することなく、幅広通路24aのままである。この場合は、予め定められた時間79が経過したら搬送モータ53には直流電圧(パルス幅100%)74bが供給され、搬送手段31は高速搬送となる。この高速搬送の途中に紙幣10が識別される。
【0049】
以上のように、入口センサ27で紙幣10,11を検知した時点から連続して搬送モータ53は回転するので、紙幣10,11は連続して搬送される。即ち、搬送中に紙幣10,11の幅を検知して、通路24幅を幅広通路24a或いは幅狭通路24bに切り替える。従って、挿入される紙幣が幅狭紙幣10であっても幅広紙幣11であっても連続して引き込まれることになり、紙幣挿入時の違和感はない。
【0050】
また、紙幣10,11の検知と通路幅変更手段32の動作は、低速搬送されるので、短い搬送距離で通路幅を切り替えることができる。従って、紙幣識別装置21の挿入方向(奥行き方向)の幅を狭くするとができ、紙幣識別装置21の薄型化が可能となる。
【0051】
更に、入口センサ27で検知する時間を予め定められた時間隔てて2回検知することにより、紙幣10,11の挿入検知と紙幣幅の検知を併せて行っている。従って、低価格の入口センサ27が実現できる。
【0052】
更にまた、搬送手段31を構成する入口センサ27側のローラ30aの押圧力(紙幣保持力)は、ローラ30b,30cの押圧力(紙幣保持力)より、弱くしているので、挿入口23近傍で素早く紙幣10を整列させることができる。
【0053】
図8は、折れ曲がりがない紙幣10,11が、挿入口23に挿入された場合の紙幣幅検知の様子を示したものである。図8(a)において、幅広紙幣11が挿入口23に挿入された場合には、入口センサ27a,27b,27c,27dの全ての入口センサ27から紙幣11の検知信号が出力される。
【0054】
一方、幅狭紙幣10が挿入口23に挿入された場合には、入口センサ27b,27cの中央に位置する2つの入口センサ27から紙幣10の検知信号が出力される。
【0055】
図8(b)は、幅狭紙幣10が挿入口23のどちらか一方の端に寄って挿入された場合の紙幣幅検知の様子を示したものである。図8(b)において、紙幣10が通路24の上方(図面において)の端に沿って挿入された場合には、入口センサ27b,27c,27dの3個の入口センサ27から紙幣10の検知信号が出力される。逆に紙幣10が通路24の下方(図面において)の端に沿って挿入された場合には、入口センサ27a,27b,27cの3個の入口センサ27から紙幣10の検知信号が出力される。
【0056】
このようにして、入力センサ27の全てから検知信号が出力された場合は、幅広紙幣11が入力されたと判定する。入力センサ27の出力信号が3個以下の場合は、幅狭紙幣10が入力されたと判定する。
【0057】
図9は、コーナーの折り曲げられた紙幣11が挿入された場合の判定の様子を示したものである。図9(a)は、幅広紙幣11の両端11c,11dが共に折り曲げられた紙幣11が挿入された場合である。
【0058】
この場合、最初2個の入口センサ27b,27cの検知信号が出力される。しかし、その後、約10mmの距離進んだ後の検知において、4個の入口センサ27a,27b,27c,27dの検知信号が出力される。従って、幅広紙幣11と判断することができる。
【0059】
図9(b)は、一方のみ折り曲げられた紙幣11が挿入された場合の例である。紙幣11の端11cのみが折り曲げられた場合、最初3個の入口センサ27a,27b,27cの検知信号が出力される。しかし、その後、約10mmの距離進んだ後の検知において、4個の入口センサ27a,27b,27c,27dの検知信号が出力される。従って、幅広紙幣11と判断することができる。
【0060】
また、紙幣11の端11dのみが折り曲げられた場合も同様に、最初3個の入口センサ27b,27c,27dの検知信号が出力される。しかし、その後、約10mmの距離進んだ後の検知において、4個の入口センサ27a,27b,27c,27dの検知信号が出力されるので、幅広紙幣11と判断することができる。
【0061】
このように、本実施の形態では、図7に示すように入口センサ27が時点75と76で示す予め定められた時間を隔てて検知するので、例え折れ曲がった紙幣11であっても検知することができる。
【0062】
図10は、折り曲げられた紙幣10が挿入された場合の判断の様子を示したものである。図10(a)は、幅狭紙幣10の両端10c,10dが共に折り曲げられた紙幣10の場合である。
【0063】
この場合、紙幣10の先端は入口センサ27で検知できないことがある。しかし、次に2個の入口センサ27b,27cの検知信号が出力される。その後、約10mmの距離進んだ後の検知において2個の入口センサ27b,27cの検知信号が出力される。従って、幅狭紙幣10と判断することができる。
【0064】
図10(b)は、一方のみ折り曲げられた紙幣10が挿入された場合の例である。紙幣10の端10cのみが折り曲げられた場合、最初2個の入口センサ27b,27cの検知信号が出力される。その後、約10mm後の検知において、3個の入口センサ27b,27c,27dの検知信号が出力される。従って、幅狭紙幣10と判断することができる。
【0065】
また、紙幣10の端10dのみが折り曲げられた場合も同様に、最初2個の入口センサ27b,27cの検知信号が出力される。しかし、その後、約10mmの距離進んだ後の検知において、3個の入口センサ27a,27b,27cの検知信号が出力される。従って、幅狭紙幣10と判断することができる。
【0066】
このように、本実施の形態では、図7に示すように時点75と76の予め定められた2時点で検知するので、例え折れ曲がった紙幣10であっても検知することができる。
【0067】
従って、紙幣10,11の挿入検知と紙幣幅の検知を、コーナー部の折れ曲がりの影響を受けることなく、正しく判定できる紙幣識別装置を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の紙幣識別装置は、紙幣幅の異なる紙幣でも、紙幣幅検知のために停止することなく連続して引き込まれるので、紙幣挿入において挿入の違和感はなく、幅広紙幣と幅狭紙幣を扱う紙幣識別装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施の形態における紙幣識別装置の断面図
【図2】(a)は同、幅広紙幣が挿入された場合の平面図、(b)は同、幅狭紙幣が挿入された場合の平面図
【図3】(a)は同、通路幅可変手段の第1状態の動作説明図、(b)は同、第2状態の動作説明図
【図4】(a)は同、幅広通路の断面図、(b)は同、幅狭通路の断面図
【図5】同、紙幣識別装置の電気回路を中心としたブロック図
【図6】同、動作説明図
【図7】(a)は同、通路幅を切り替える場合のタイミングチャート、(b)は同、通路切り替えが必要ない場合のタイミングチャート
【図8】(a)は同、紙幣が通路の中央に挿入された場合の関係平面図、(b)は同、幅狭紙幣が何れかの端に寄った場合の関係平面図
【図9】(a)は同、紙幣の挿入方向の両端が折れ曲がった場合の関係平面図、(b)は同、紙幣の何れか一方の端が折れ曲がった場合の関係平面図
【図10】(a)は同、紙幣の挿入方向の両端が折れ曲がった場合の関係平面図、(b)は同、紙幣の何れか一方の端が折れ曲がった場合の関係平面図
【図11】従来の紙幣識別装置の断面図
【図12】(a)は同、幅狭紙幣の平面図、(b)は同、幅広紙幣の平面図
【図13】従来の通路近傍の動作平面図
【図14】同、タイミングチャート
【符号の説明】
【0070】
10 幅狭紙幣
11 幅広紙幣
21 紙幣識別装置
23 挿入口
24 通路
24a 幅広通路
24b 幅狭通路
27 入口センサ
31 搬送手段
32 通路幅可変手段
41 識別センサ
45 識別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣が挿入される挿入口と、この挿入口に連結された通路と、この通路の前記挿入口側に設けられた入口センサと、この入口センサ下流側の前記通路に設けられた搬送手段と、前記通路に設けられた識別センサと、前記入口センサと前記識別センサに接続された識別部と、前記通路側面に設けられた通路幅可変手段とを備え、前記挿入口から挿入された前記紙幣の搬送中に紙幣幅を検出するとともに、前記通路幅可変手段を用いて前記紙幣幅に合致した通路幅とする紙幣識別装置。
【請求項2】
搬送手段の搬送速度は、紙幣識別時より紙幣幅検出時の搬送速度を遅くした請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
入口センサは複数個のセンサで形成し、この入口センサで紙幣の挿入検知と、予め定められた時間後に前記入口センサで紙幣幅の検知を行う請求項1に記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
搬送手段は、識別センサ近傍の紙幣保持力よりも入口センサ近傍の紙幣幅検知領域での紙幣保持力を弱くした請求項1に記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−134679(P2008−134679A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318247(P2006−318247)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】