説明

紙成形体の製造方法、紙成形体の製造装置及び紙成形体

【課題】つなぎ目のない紙成形体を製造することができる、紙成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】立体形状にされた網3を、紙原料を分散した溶液M中に浸漬した状態にし、網3の表面に紙Pを抄くようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙成形体の製造方法、紙成形体の製造及び紙成形体に関し、特に、つなぎ目のない紙成形体を容易に繰り返して製造することができる、紙成形体の製造方法、紙成形体の製造装置及び紙成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙成形体の製造方法としては、例えば、図4に示すような方法が、既に提案されている。
【0003】
この方法では、破壊可能な素材からなる、所望の立体形状を有する原型101の表面に、表面が毛羽たった、複数の紐状部材102を交差させて配置し、この表面に、植物繊維103及びネリを含む紙料液を付着させ、この表面に、植物繊維103及びネリを含む紙料液を付着させ、紐状部材102と植物繊維103を乾燥して、上記原型101を破壊して和紙成形体の内部から、破壊した原型101を取り出すようにしている。
【特許文献1】特開平05−156594号公報(第2頁〜第3頁、図1)
【0004】
また、「ダルマ」のようなものを製造する際には、外網割抄紙法がある。この方法は、まず、ダルマの形状の半体部を成形した一対の成形型(一対の成形体を閉じた状態にすると内部に、ダルマの外形形状の凹部が形成されるようになっている。)を用意する。一対の成形型には、紙料液注入管と、紙料液排出管とが設けられており、一対の成形型を閉じた状態にして、紙料液注入管から、閉じた状態にされている一対の成形型内に紙料液を注入したり、閉じた状態にされている一対の成形型内に注入された紙料液を紙料液排出管から排出できるようになっている。
【0005】
次に、一対の成形型の各々の内部に網を成形型の凹部に沿うように取り付けた後、一対の成形型を閉じた状態にする。
【0006】
次に、閉じた状態にされている一対の成形型と網との間内に紙料液を注入し、網の内側から紙料液を吸引排出し、一対の成形型内に取り付けられた網の表面に紙料液を付着・乾燥させた後、一対の成形型を開いて、紙製のダルマを取り出すようにしている。
【0007】
また、従来、筒状形状の紙成形体は、平面形状の紙(通常の紙)の対向配置される一対の辺の一方の表面にのりしろ面を形成し、一方の辺の表面及び/又は他方の辺の裏面にのりを付け、一方の辺の表面にのりしろ面に他方の辺の裏面を接着する等の方法により作製されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図4に示すような方法により、紙成形体を製造した場合には、紙成形体に繊維及び/又は繊維束の不均一な重なりが生じる、といったような問題がある。
【0009】
また、だるまの製造方法を用いて、紙成形体を製造した場合には、一対の成形型の接触面に対応する箇所に線が形成される、といったような問題がある。
【0010】
また、上記した従来の筒状形状の紙成形体は、例えば、これを照明器具のシェードとして用いた場合、照明器具のランプを点灯すると、紙を筒状形状にする際ののりしろ面部分が他の側周面と異なって現れ、見栄えが悪いという問題がある、
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、小さい成形体のみならず、大きな紙成形体を製造することができ、しかも、紙成形体に繊維及び/又は繊維束の不均一な重なりが生じることがなく、その表面に線が形成されることがない、シームレスな紙成形体を容易に繰り返して製造できる紙成形体の製造方法及びそのような紙成形体を容易に繰り返して製造するのに適した紙成形体の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の紙成形体の製造方法は、立体形状にされた網を、紙原料を分散した溶液中に浸漬した状態にし、網の表面に紙を抄くようにした。
【0012】
ここに、本明細書で用いる用語、「網の表面に紙を抄く」には、網を用いて網上に紙原料を堆積させる工程及び/又は予め紙原料を分散させた溶液中に網を浸漬した状態にする工程を含む。
【0013】
また、本明細書で用いる用語、「網の表面に紙を抄く」には、網を用いて網上に紙原料を堆積させ、その時、網下に水を濾過する工程を含む。
【0014】
また、本明細書で用いる用語、「紙」には、和紙、西洋紙、和紙と西洋紙との混合紙、または、これらに、樹脂繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維等を混ぜた混合紙その他の紙が含まれる。
【0015】
請求項2に記載の紙成形体の製造方法は、請求項1に記載の紙成形体の製造方法で用いる、立体形状にされた網が、袋形状又は筒状形状である。
【0016】
ここに、本明細書で用いる用語、「袋形状」は、球形形状、ラグビーボールや卵型等の平面視した場合、略楕円体形状、また、立方体形状、直方体形状その他の多角体形状、三角錐、四角錐、その他の多角錐体、円錐、楕円錐及び底面が自由曲線で形成されたその他の錐体や、手袋のような形状等、側周面が自由曲線で形成された中空部を有する形状を意味する。
【0017】
また、本明細書で用いる用語、「筒状形状」は、円く細長く中空になっているものであって、その外観形状が四角柱、円柱状、略円柱状、又は、側周面が自由曲線で形成された中空部を有する形状を意味する。
【0018】
請求項3に記載の紙成形体の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の紙成形体の製造方法で用いる、立体形状にされた網が、形状記憶材料で製されている。
【0019】
網としては、形状記憶材料で製されていれば、特に限定されることはなく、紙を抄く工程において、球形その他の袋形状や円筒形状その他の立体形状に復元されるものが好ましい。
【0020】
また、本明細書で用いる用語、「形状記憶材料」は、形状記憶樹脂であっても形状記憶合金であってもよい。
【0021】
請求項4に記載の紙成形体の製造方法は、請求項3に記載の紙成形体の製造方法の、形状記憶材料が、形状記憶合金又は形状記憶樹脂である。
【0022】
請求項5に記載の紙成形体の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の紙成形体の製造方法で用いる、立体形状にされた網が、複数のパーツから構成され、組み立て・分解可能にされている。
【0023】
請求項6に記載の紙成形体の製造装置は、紙原料を分散した溶液を収容する溶液貯蔵槽と、溶液貯蔵槽内に設けられた、網を取り付ける網取付部とを備え、網取付部に、立体形状にされた網を取り付け、その後、溶液貯蔵槽内に、紙原料を分散した溶液を収容し、前記網の表面に紙を抄くようにした。
【0024】
請求項7に記載の紙成形体の製造装置は、請求項6に記載の紙成形体の製造装置で用いる、立体形状にされた網が、袋形状又は筒状形状である。
【0025】
請求項8に記載の紙成形体の製造装置は、請求項6又は請求項7に記載の紙成形体の製造装置で用いる、立体形状にされた網が、形状記憶材料で製されている。
【0026】
請求項9に記載の紙成形体の製造装置は、請求項8に記載の紙成形体の製造装置で用いる、立体形状にされた網の形状記憶材料が、形状記憶合金又は形状記憶樹脂である。
【0027】
請求項10に記載の紙成形体の製造装置は、請求項6又は請求項7に記載の紙成形体の製造装置で用いる、立体形状にされた網が、複数のパーツから構成され、組み立て・分解可能にされている。
【0028】
請求項11に記載の紙成形体は、シームレスで且つ袋形状又は筒状形状を有する。
【0029】
ここで、本明細書で用いる用語、「シームレス」は、紙成形体に、立体形状にするためのつなぎ目や接合面が無い、ということを意味する。
【0030】
また、本発明に係る紙成形体は、紙原料を分散させた溶液を網を用いて抄く紙抄き工程により形成されているので、紙原料繊維が、成形される紙の厚さ方向に対し垂直方向又は概ね垂直方向に積層されている。
【発明の効果】
【0031】
請求項1に記載の紙成形体の製造方法では、立体形状にされた網を用いている、紙を抄く工程において、網を球形その他の立体形状に保持するようにし、紙原料を分散した溶液中に浸漬した状態にし、網の表面に紙を抄くようにしているので、所望の立体形状の網の表面に、所望の立体形状の紙成形体を製造することができる。
【0032】
また、網の表面に紙を抄くようにしているので、シームレスな紙成形体を製造できる。
【0033】
請求項2に記載の紙成形体の製造方法では、袋形状又は筒状形状の網を用いているので、シームレスな袋形状又は筒状形状の紙成形体を製造できる。
【0034】
請求項3に記載の紙成形体の製造方法では、網として形状記憶材料のものを用いているので、熱により、網を元の立体形状に戻すことができる。
【0035】
即ち、請求項3に記載の紙成形体の製造方法では、網として、形状記憶材料のものを用いているので、網の表面に紙成形体を形成した後、網をその体積が小さくなるように折りたたんだり、潰したり、引っ張ったりなどして、紙成形体の内部から取り出すことで、紙成形体を得ることができる。
【0036】
且つ、この紙成形体の製造方法では、立体形状にされた網を形状記憶材料で製しているので、所望の立体形状の網の表面に、所望の立体形状の紙成形体が製された後は、網の形状を体積が小さくなるように潰し、所望の立体形状の紙成形体の内側から取り出すことができ、且つ、次の紙成形体を製造する際には、形状が潰された状態になっている網を、元の形状に復元し、次の紙成形体を、順次、本発明に従って製造することができる。
【0037】
即ち、この紙成形体の製造方法では、立体形状にされ、形状記憶材料で製された網を用いるようにしたので、形状記憶材料で製された網を繰り返し使用することで、立体形状の紙成形体を容易に繰り返して製造することができる。
【0038】
また、網の表面に紙を抄くようにしているので、シームレスな紙成形体を製造できる。
【0039】
請求項4に記載の紙成形体の製造方法では、立体形状にされ、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で製された網を用いるようにしたので、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で製された網を繰り返し使用することで、立体形状の紙成形体を簡単に製造することができる。
【0040】
即ち、網として形状記憶合金を用いた場合には、その体積が小さくなるように折りたたんだり、潰したり、引っ張ったりなどされている網を、室温から加熱し、変態開始温度を通過させることで、再び、所望の立体形状に復元し、その後、この発明に従って、紙成形体を製造する。
【0041】
また、形状記憶材料が、形状記憶樹脂の場合は、網の表面に、立体形状の紙成形体を形成した後、所定の温度に加熱することで、網が塑性変形させ、網をその体積が小さくなるように折りたたんだり、潰したり、引っ張ったりなどして、紙成形体の内部から取り出すことで、紙成形体を得ることができる。
【0042】
また、網として形状記憶樹脂を用いた場合には、その体積が小さくなるように折りたたんだり、潰したり、引っ張ったりなどされている網を室温から高温(ガラス転移温度Tg)以上に上げることで、網を元の立体形状に戻すことができる。
【0043】
請求項5に記載の紙成形体の製造方法では、網を複数のパーツから構成している。
【0044】
即ち、請求項5に記載の紙成形体の製造方法では、紙を抄く際には、複数の網を組み立てて、立体形状の網にして、紙を抄くことで、網を用いて紙成形体を作製し、紙成形体を作製した後は、網を複数のパーツに分解することで、所望の立体形状の紙成形体の内側から取り出すことができ、且つ、次の紙成形体を製造する際には、複数のパーツに分解された状態になっている網を、元の形状に組み立てし、次の紙成形体を、順次、製造することができる。
【0045】
即ち、この紙成形体の製造方法では、立体形状にされ網を複数のパーツから構成し、組み立て分解を可能にしたので、網を組み立てたり、複数のパーツに分解するといった繰り返し使用をすることで、立体形状の紙成形体を容易に繰り返して製造することができる。
【0046】
請求項6に記載の紙成形体の製造装置では、網として、立体形状にされたものを用いているので、紙を抄く工程において、球形その他の立体形状に保持するようにし、紙原料を分散した溶液中に浸漬した状態にし、網の表面に紙を抄くようにして、所望の立体形状の網の表面に、所望の立体形状の紙成形体を製造することができる。
【0047】
請求項7に記載の紙成形体の製造装置では、袋形状又は筒状形状の網を用いているので、シームレスな袋形状又は筒状形状の紙成形体を製造できる。
【0048】
請求項8に記載の紙成形体の製造装置では、網として、立体形状にされ、形状記憶材料で製されているものを用いているので、形状記憶材料で製された網を繰り返し使用することで、立体形状の紙成形体を容易に繰り返して製造することができる。
【0049】
また、網の表面に紙を抄くようにしているので、シームレスな紙成形体を製造できる。
【0050】
請求項9に記載の紙成形体の製造装置では、立体形状にされ、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で製された網を用いるようにしたので、形状記憶合金又は形状記憶樹脂で製された網を繰り返し使用することで、立体形状の紙成形体を簡単に製造することができる。
【0051】
請求項10に記載の紙成形体の製造装置では、網を複数のパーツから構成している。
【0052】
即ち、請求項10に記載の紙成形体の製造装置では、紙を抄く際には、複数の網を組み立てて、立体形状の網にして、紙を抄くことで、網を用いて紙成形体を作製し、紙成形体を作製した後は、網を複数のパーツに分解することで、所望の立体形状の紙成形体の内側から取り出すことができ、且つ、次の紙成形体を製造する際には、複数のパーツに分解された状態になっている網を、元の形状に組み立てし、次の紙成形体を、順次、製造することができる。
【0053】
即ち、この紙成形体の製造装置では、立体形状にされ網を複数のパーツから構成し、組み立て分解を可能にしたので、網を組み立てたり、複数のパーツに分解するといった繰り返し使用をすることで、立体形状の紙成形体を容易に繰り返して製造することができる。
【0054】
請求項11に記載の紙成形体は、袋形状又は筒状形状の紙成形体が、シームレスになっているので、例えば、照明器具のシェードとして用いた場合、従来の紙成形体のように照明器具のランプを点灯すると、紙を筒状形状にする際ののりしろ面部分が他の側周面と異なって現れるということが無いので、見栄えが良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明に係る紙成形体の製造方法及び紙成形体の製造装置について、図面を参照しながら、更に詳しく説明する。
【0056】
図1は、本発明に係る紙成形体の製造装置を概略的に示す構成図である。図1は、網3を用いて紙を抄くために、網3を、予め調整した紙原料を分散させた溶液Mに浸漬した状態を示している。
【0057】
網3は、形状記憶材料で製されている。
【0058】
網3としては、立体の紙成形体を製造する場合には、立体形状のものを用いる。
【0059】
また、網3は、紙を抄く工程で、所望の立体形状を保持できるようにされている。
【0060】
この紙成形体の製造装置1は、紙原料を分散した溶液Mを収容する溶液貯蔵槽2と、溶液貯蔵槽2内に設けられた、網取付部4とを備える。
【0061】
この網取付部4は、網3を取り付けるための台である。
【0062】
網3は、網取付部4に着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0063】
この例では、網取付部4として、円筒体形状又は概ね円筒体形状をしているものを用いているが、網取付部4の形状は、特に限定されることはなく、三角柱形状、四角柱形状等の角柱形状その他の形状であっても良い。
【0064】
網取付部4の開口部は、水を供給したり排水したりする供給排水管t1に接続されている。
【0065】
供給排水管t1は、排水管t2に接続されており、排水管t2には、溶液貯蔵槽2内に貯留された溶液の排水を停止したり、排水量を調整したりするための、排水量調整バルブv1が設けられている。
【0066】
また、供給排水管t1と排水管t2の間には、T字接手Cを介して、給水管t3が接続されている。
【0067】
給水管t3には、溶液貯蔵槽2内へ水の供給を停止したり、給水量を調整したりする給水量調整バルブv2が設けられている。
【0068】
また、紙成形体の製造装置1の溶液貯蔵槽2は、溶液貯蔵槽2内に貯留されている液を排出するための、排水管t4を備える。
【0069】
排水管t4には、溶液貯蔵槽内排水用バルブv3が設けられている。
【0070】
次に、本発明に係る紙成形体を製造する方法を、この紙成形体の製造装置1を用いて、紙成形体を製造する場合を例にとって説明する。
【0071】
ここでは、説明を容易とするため、球状の紙成形体を製造する場合を例にとって説明する。
【0072】
まず、この紙成形体の製造装置1を用いて、紙成形体を製造する場合、網3として、形状記憶材料で製された、図2(a)に、その断面を模式的に示したような球状の網を用意する。
【0073】
また、必要により、網3の表面に、その形状が立体形状(この例では、球状)の、通常の紙を抄く時に用いる抄網3cをかぶせる。
【0074】
次に、網3を取付具4に取り付ける。
【0075】
次に、溶液貯蔵槽2内に、予め調整していた紙原料を分散した溶液Mの注入を開始する。
【0076】
また、給水量調整バルブv2を所望の開口量にし、溶液貯蔵槽2内に、予め調整していた紙原料を分散した溶液Mの注入を開始した際に、網3の水位と溶液貯蔵槽2内の水位とが概ね同じように維持されるようにする。
【0077】
この作業は、網3が溶液貯蔵槽2内の溶液M中に水没するまで行う。
【0078】
給水量調整バルブv2は、網3が溶液貯蔵槽2内の溶液M中に水没した後、閉じた状態にする。
【0079】
以上の工程により、紙成形体の製造装置1は、図1に示したような状態になる。
【0080】
次に、水流調製バルブv1を所定の開口量にし、網3の内側から水を排出するようにする。
【0081】
紙原料を分散した溶液Mは、網3を通過する際に、網3の表面(又は、網3の表面にかぶせた紙を抄く抄網3c)に紙層(図3に示す紙層Pを参照。)を形成する。
【0082】
網3の表面に紙層(図3に示す紙層Pを参照。)が、溶液貯蔵槽2内に貯留された紙原料を分散した溶液Mから露呈した状態になった際に、網3(又は、網3の表面にかぶせた紙を抄く抄網3c)の表面に紙層(図3に示す紙層Pを参照。)が所望の厚さより薄い場合には、溶液貯蔵槽2内に貯留された紙原料を分散した溶液Mを追加し、網3(又は、網3の表面にかぶせた紙を抄く抄網3c)の表面に紙層(図3に示す紙層Pを参照。)が所望の厚さになるまで、抄紙作業を繰り返す。
【0083】
また、この工程は、連続して行なうこともできる。
【0084】
網3(又は、網3の表面にかぶせた紙を抄く抄網3c)の表面に紙層(図3に示す紙層Pを参照。)が所望の厚さになった時点で、溶液貯蔵槽内排水用バルブv3を開き、所望の排水量になるように調整する。これにより、溶液貯蔵槽2内に貯留された紙原料を分散した溶液Mが、排水管t4から排出される。
【0085】
そして、溶液貯蔵槽2内の紙原料を分散した溶液Mが空になり次第、排水管t4に設けられている溶液貯蔵槽内排水用バルブv3を閉じた状態にする。
【0086】
尚、溶液貯蔵槽2内に貯留された紙原料を分散した溶液Mを、溶液貯蔵槽内排水用バルブv3を開いた状態にして、排水管t4から排出する工程においては、網3内の水位が、溶液貯蔵槽2内の水位に比べ、常に、同じかやや低いように調整し、網3(又は、網3の表面にかぶせた紙を抄く抄網3c)の表面に紙層(図3に示す紙層Pを参照。)が、網3(又は、網3の表面にかぶせた紙を抄く抄網3c)から剥がれ落ちるのを防止するようにする。
【0087】
次に、紙層Pを乾燥させた後、網3(網3の表面に紙を抄く抄網3cをかぶせた場合にあっては、網3と抄網3c)を体積が小さくなるように潰し、紙層Pの内部から網3(網3の表面に紙を抄く抄網3cをかぶせた場合にあっては、網3と抄網3c)を取り出すことで、紙成形体を得る。
【0088】
尚、次の紙成形体を製造する際には、網3が形状記憶合金で製されている場合には、形状が潰された状態になっている網3を高温から冷却し変態開始温度を通過させることで、再び、所望の立体形状に復元し、その後、この発明に従って、紙成形体を製造する。
【0089】
また、網3が形状記憶樹脂で製されている場合には、紙層Pを乾燥させた後、その表面に紙層Pが形成されている網3(網3の表面に紙を抄く抄網3cをかぶせた場合にあっては、網3と抄網3c)を所定の温度に加熱し、網3が可塑性を有する状態にした後、網3(網3の表面に紙を抄く抄網3cをかぶせた場合にあっては、網3と抄網3c)を体積が小さくなるように潰し、紙層Pの内部から網3(網3の表面に紙を抄く抄網3cをかぶせた場合にあっては、網3と抄網3c)を取り出すことで、紙成形体を得る。
【0090】
尚、次の紙成形体を製造する際には、網3が形状記憶樹脂で製されている場合には、形状が潰された状態になっている網3を室温から所定の高温にし、変態開始温度を通過させることで、再び、所望の立体形状に復元し、その後、この発明に従って、紙成形体を製造する。
【0091】
本発明に係る紙成形体の製造装置及び/又は紙成形体の製造方法を用いれば、網3の形状を、球形形状、ラグビーボールや卵型等の平面視した場合、略楕円体形状、また、手袋のような形状等、種々の袋のようになっている形状とすることで、そのような立体形状を有するシームレスな紙成形体を製造することができる。
【0092】
更にまた、網3の形状を、筒状形状とすれば、筒状形状のシームレスな紙成形体を製造することができる。
【0093】
また、網3の形状を、凹凸や種々曲面を有する形状(自由曲面形状)にすれば、網3の形状に対応した、凹凸や種々曲面を有する形状(自由曲面形状)を有する紙成形体を製造できる。
【0094】
また、上記した発明を実施するための最良の形態では、網3として、形状記憶材料で製されたものを用いた例を中心に説明したが、本発明では、網3として、網を複数のパーツで構成し、嵌合手段等により組み立て・分解を可能にした網を用いてもよい。
【0095】
尚、上記の発明を実施するための最良の形態では、「紙」という用語を用いているが、本発明に係る紙成形体の製造装置及び/又は紙成形体の製造方法において、「紙」には、和紙、西洋紙、和紙と西洋紙との混合紙、または、これらに、樹脂繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維等を混ぜた混合紙その他の紙が含まれる。
【0096】
また、上記した紙成形体の製造方法で得た、紙成形体を、更に折り曲げ加工したり、絵付けをしたりして、使用するようにしてもよいことは、言うまでもない。
【0097】
本発明に係る紙成形体の製造装置及び本発明に係る紙成形体の製造方法を用いれば、和紙その他の紙の持つ独特の風合を活かしたシームレスなものを照明器具のシェード、マネキンその他人形の種々の造形物として、市場に提供できる。
【0098】
また、プラスチック等の原料は石油製品などの化石燃料であり、有限なものであって枯渇するものに対し、本発明は紙原料を使用している。植物を育てることにより得られるものを主な原料としているので、原料が枯渇することが無く循環型の再生可能な資源であり、環境にやさしいということに利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る紙成形体の製造装置及び本発明に係る紙成形体の製造方法を用いれば、シームレスな紙成形体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る紙成形体の製造装置を概略的に示す構成図である。
【図2】本発明に係る紙成形体の製造方法の要部を模式的に説明する説明図であり、図2(a)は、網の上に、紙を抄く場合を、また、図2(b)は、網の上に更に紙を抄く、抄き網を設けて、紙を抄く場合を示している。
【図3】本発明に係る紙成形体の製造方法の要部を模式的に説明する説明図である。
【図4】従来の紙成形体の製造方法を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1 紙成形体の製造装置
2 溶液貯蔵槽
3 網
4 網取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状にされた網を、
紙原料を分散した溶液中に浸漬した状態で、前記網の表面に紙を抄くようにした、紙成形体の製造方法。
【請求項2】
前記立体形状にされた網が、袋形状又は筒状形状である、請求項1に記載の紙成形体の製造方法。
【請求項3】
前記立体形状にされた網が、形状記憶材料で製されている、請求項1又は請求項2に記載の紙成形体の製造方法。
【請求項4】
前記形状記憶材料が、形状記憶合金又は形状記憶樹脂である、請求項3に記載の紙成形体の製造方法。
【請求項5】
前記立体形状にされた網が、複数のパーツから構成され、組み立て・分解可能にされている、請求項1又は請求項2に記載の紙成形体の製造方法。
【請求項6】
紙原料を分散した溶液を収容する溶液貯蔵槽と、
前記溶液貯蔵槽内に設けられた、網を取り付ける網取付部とを備え、
前記網取付部に、立体形状にされ網を取り付け、その後、前記溶液貯蔵槽内に、前記紙原料を分散した溶液を収容し、前記網の表面に紙を抄くようにした、紙成形体の製造装置。
【請求項7】
前記立体形状にされた網が、袋形状又は筒状形状である、請求項6に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項8】
前記立体形状にされた網が、形状記憶材料で製されている、請求項6又は請求項7に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項9】
前記形状記憶材料が、形状記憶合金又は形状記憶樹脂である、請求項8に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項10】
前記立体形状にされた網が、複数のパーツから構成され、組み立て・分解可能にされている、請求項6又は請求項7に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項11】
シームレスで且つ袋形状又は筒状形状を有する、紙成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−9203(P2006−9203A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189361(P2004−189361)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(592072791)鳥取県 (19)
【出願人】(502411676)谷口和紙株式会社 (4)
【Fターム(参考)】