説明

紙成形体の製造装置、紙成形体の製造方法及び紙成形体

【課題】シームレスな円筒形状の紙成形体を製造する、紙成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】円筒形状の網6の側周面により紙を抄くようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙成形体の製造装置、紙成形体の製造方法及び紙成形体に関し、特に、シームレスな円筒形状その他種々の断面形状を有する筒状の紙成形体を製造するための紙成形体の製造装置、そのような紙成形体を製造する紙成形体の製造方法及び紙成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙成形体の製造方法としては、例えば、図8に示すような方法が、既に提案されている。
【0003】
この方法では、破壊可能な素材からなる、所望の立体形状を有する原型101の表面に、表面が毛羽たった、複数の紐状部材102を交差させて配置し、この表面に、植物繊維103及びネリを含む紙料液を付着させ、紐状部材102と植物繊維103を乾燥して、上記原型101を破壊して和紙成形体の内部から取り出すようにしている。
【特許文献1】特開平05−156594号公報(第2頁〜第3頁、図1)
【0004】
また、「ダルマ」のようなものを製造する際には、外網割抄紙法がある。この方法は、まず、ダルマの形状の半体部を成形した一対の成形型(一対の成形体を閉じた状態にすると内部に、ダルマの外形形状の凹部が形成されるようになっている。)を用意する。一対の成形型には、紙料液注入管と、紙料液排出管とが設けられており、一対の成形型を閉じた状態にして、紙料液注入管から、閉じた状態にされている一対の成形型内に紙料液を注入したり、閉じた状態にされている一対の成形型内に注入された紙料液を紙料液排出管から排出できるようになっている。
【0005】
次に、一対の成形型の各々の内部に網を成形型の凹部に沿うように取り付けた後、一対の成形型を閉じた状態にする。
【0006】
次に、閉じた状態にされている一対の成形型と網との間内に紙料液を注入し、網の内側から紙料液を吸引排出し、一対の成形型内に取り付けられた網の表面に紙料液を付着・乾燥させた後、一対の成形型を開いて、紙製のダルマを取り出すようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、円柱体形状の紙成形体は、四角形の紙の対向する辺と辺との各々の一部を貼り合わせれば作製できるため、上記したような紙成形体の製造方法や、外網割抄紙法のような製造方法上の工夫は、円柱体形状の紙成形体の製造方法では、本発明者等の知る限りにおいては、なされていない。
【0008】
また、円柱体形状の紙成形体は、四角形の紙の対向する辺と辺との各々の一部を貼り合わせれば作製できるものの、このようにして作製した、円柱体形状の紙成形体を、例えば、ランプシェードのような照明機器の傘として用いた場合には、ランプを点灯した場合に、貼り合わせ部が、他の部分と異なって見えるため、見栄えが悪いといったような問題があり、シームレスな円筒形状の紙成形体を容易に製造する技術が長年望まれている。
【0009】
また、例えば、ランプシェードのような照明機器の傘や、置物、インテリア、装飾品等として、紙製の種々の形状の筒状のシームレスの紙成形体に対する需要がある。
【0010】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであって、シームレスな円筒形状その他種々の断面形状を有する筒状の紙成形体を製造するのに適した紙成形体の製造装置、そのような紙成形体の製造方法及び紙成形体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の紙成形体の製造装置は、紙原料供給手段から、円筒形状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、円筒形状の網の側周面を利用して紙を抄くようにした。
【0012】
尚、本明細書において用いる用語、「側周面」は、側周面の内表面と外表面との双方を含む。
【0013】
請求項2に記載の紙成形体の製造装置は、回転駆動手段と、回転駆動手段により、回転可能にされた、一対の回転ローラと、一対の回転ローラ上に、一対の回転ローラから所定の距離をおくようにして設けられた押さえ部材と、紙原料を分散した溶液を供給する紙原料供給手段とを備え、一対の回転ローラ上に、円筒形状の網を載置し、一対の回転ローラ上に載置した円筒形状の網を押さえ部材により上方から押さえ、回転駆動手段を駆動して、一対の回転ローラを回転することで、円筒形状の網を回転させ、紙原料供給手段から、円筒形状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、円筒形状の網の側周面を利用して紙を抄くようにした。
【0014】
請求項3に記載の紙成形体の製造装置は、請求項2に記載の紙成形体の製造装置の、円筒形状の網の側周面の両端部の各々の外方に突出するように、リング体を設け、押さえ部材の両端部の各々に回転ローラ部を設け、一対の回転ローラ上に、円筒形状の網を載置した際に、円筒形状の網の側周面の両端部の各々の外方に突出するように設けられているリング体の側周面の外表面が、一対の回転ローラの各々の側周面の外表面に接するようにし、且つ、一対の回転ローラ上に載置した円筒形状の網を押さえ部材により上方から押さえた際に、円筒形状の網の側周面の両端部の各々の外方に突出するように設けられているリング体の側周面の外表面が、押さえ部材の両端部の各々に設けられている回転ローラ部の各々の側周面の外表面に接するようにした。
【0015】
請求項4に記載の紙成形体の製造装置は、請求項2又は請求項3に記載の紙成形体の製造装置の、円筒形状の網の側周面の一端部に突出するように、円錐台形状又は概ね円錐台形状の、紙原料を分散した溶液を受ける紙原料受け部を設け、紙原料供給手段から、円錐台形状又は概ね円錐台形状の、紙原料を分散した溶液を受ける紙原料受け部の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、円筒形状の網の側周面の内表面上に紙原料を分散した溶液を供給し、円筒形状の網の側周面の内表面上で紙を抄くようにした。
【0016】
請求項5に記載の紙成形体の製造装置は、請求項2〜4のいずれかに記載の紙成形体の製造装置の、円筒形状の網の側周面の外表面に当接、又は、近接するように設けられた吸水手段を有する。
【0017】
請求項6に記載の紙成形体の製造装置は、請求項2又は請求項3に記載の紙成形体の製造装置の、円筒形状の網の内部に、種々の断面形状を有する筒状の網を設け、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面を利用して紙を抄くようにした。
【0018】
請求項7に記載の紙成形体の製造装置は、請求項6に記載の紙成形体の製造装置の、円筒形状の網の代わりに、円筒形状の治具を用いた。
【0019】
請求項8に記載の紙成形体の製造方法は、円筒形状の網の側周面により紙を抄くようにした。
【0020】
請求項9に記載の紙成形体の製造方法は、請求項8に記載の紙成形体の製造方法の、円筒形状の網の側周面により紙を抄く際に、円筒形状の網を回転させ、回転している円筒形状の網の側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、円筒形状の網の側周面の内表面上で紙を抄くようにした。
【0021】
請求項10に記載の紙成形体の製造方法は、請求項8に記載の紙成形体の製造方法の、円筒形状の網の内部に、種々の断面形状を有する筒状の網を設け、円筒形状の網を回転させ、回転している円筒形状の網の内部に設けられている、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面の内表面上で紙を抄くようにした。
【0022】
請求項11に記載の紙成形体の製造方法は、請求項10に記載の紙成形体の製造方法の、円筒形状の網の代わりに、円筒形状の治具を用いた。
【0023】
請求項12に記載の紙成形体は、シームレスで、円筒形状を有する。
【0024】
ここで、本明細書で用いる用語、「シームレス」は、紙成形体に、円筒形状にするためのつなぎ目や接合面がない、ということを意味する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の紙成形体の製造装置では、網を円筒形状にし、円筒形状の網の側周面を利用して、紙を抄くようにしているので、シームレスの円筒形状の紙成形体を製造できる。
【0026】
請求項2に記載の紙成形体の製造装置では、網を円筒形状にし、円筒形状の網の側周面を利用して、紙を抄くようにしているので、請求項1に記載の紙成形体の製造装置と同様、シームレスの円筒形状の紙成形体を製造できる。
【0027】
また、この紙成形体の製造装置を用いれば、紙を抄く際に、円筒形状の網を回転させ、回転している円筒形状の網の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにすれば、遠心力と、重力との協働により、円筒形状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0028】
また、円筒形状の網の側周面の内表面上に紙成形体を抄いた場合には、円筒形状の網の側周面の内表面上に抄いた紙成形体は、乾燥させると、収縮して、円筒形状の網の側周面の内表面上から剥がれたり、又は、剥がれ易くなるので、この紙成形体の製造装置を用いれば、円筒形状の網の側周面の内表面上から円筒形状の網の側周面の内表面上に抄いた紙成形体を引き剥がす作業が、不要又は容易となる。即ち、この紙成形体の製造装置を用いれば、シームレスの円筒形状の紙成形体を容易に製造することができる。
【0029】
請求項3に記載の紙成形体の製造装置では、円筒形状の網の側周面の両端部の各々の外方に突出するように、リング体を設け、この一対のリング体が、一対の回転ローラ、押さえ部材の両端部の各々に設けた回転ローラ部に接触するようにし、円筒形状の網自体が、一対の回転ローラ及び押さえ部材には、接触しないようにしている。これにより、この紙成形体の製造装置を用いれば、一対の回転ローラ、押さえ部材の影響をうけることなく、円筒形状の網を用いて紙を抄くことができるので、外乱の影響の無い、高品質な紙成形体を製造することができる。
【0030】
請求項4に記載の紙成形体の製造装置では、紙を抄くための円筒形状の網の側周面の内表面上には、直接、紙原料を分散した溶液を供給するのではなく、円筒形状の網の側周面の一端部に紙原料受け部を設け、この紙原料受け部に、紙原料供給手段から、紙原料を分散した溶液を供給し、紙原料受け部経由で、円筒形状の網の側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにしているので、円筒形状の網の側周面の内表面上において作製されつつある紙には、直接、紙原料を分散した溶液が垂らされることがない。
【0031】
この結果、この紙成形体の製造装置を用いれば、円筒形状の網の側周面の内表面上において作製されつつある紙に、紙原料供給手段から、直接、紙原料を分散した溶液が垂らした場合に、紙に残る、紙原料供給手段から紙原料を分散した溶液を、直接、紙に垂らしたことが原因する痕跡の無い、高品質な紙成形体を製造することができる。
【0032】
請求項5に記載の紙成形体の製造装置では、円筒形状の網の側周面の外表面に当接、又は、近接するように吸水手段を設けているので、円筒形状の網を用いて、紙を抄く際に、水の分離を遠心力と重力との協働に加え、吸水手段の吸水力も利用しているので、円筒形状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0033】
請求項6に記載の紙成形体の製造装置では、円筒形状の網の内部に、種々の断面形状を有する筒状の網を設け、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面を利用して紙を抄くようにしているので、筒状の網の断面形状に応じたシームレスの種々の断面形状を有する筒状の紙成形体を製造できる。
【0034】
また、この紙成形体の製造装置を用い、紙を抄く際に、円筒形状の網を回転させ、回転している円筒形状の網の内部に設けた、種々の断面形状を有する筒状の網の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにすれば、遠心力と、重力との協働により、種々の断面形状を有する筒状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0035】
請求項7に記載の紙成形体の製造装置では、円筒形状の治具の内部に、種々の断面形状を有する筒状の網を設け、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面を利用して紙を抄くようにしているので、筒状の網の断面形状に応じたシームレスの種々の断面形状を有する筒状の紙成形体を製造できる。
【0036】
また、この紙成形体の製造装置を用い、紙を抄く際に、円筒形状の治具を回転させ、回転している円筒形状の治具の内部に設けた、種々の断面形状を有する筒状の網の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにすれば、遠心力と、重力との協働により、種々の断面形状を有する筒状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0037】
請求項8に記載の紙成形体の製造方法では、円筒形状の網を用いて紙を抄くようにしているので、その側周面を利用して紙を抄けば、網の形状に対応する、円筒形状の紙をシームレスな状態で製造できる。
【0038】
請求項9に記載の紙成形体の製造方法では、紙を抄く際に、円筒形状の網を回転させ、回転している円筒形状の網の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、遠心力と、重力との協働により、円筒形状の網の側周面の内表面上で紙を抄くようにしているので、円筒形状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0039】
また、円筒形状の網の側周面の内表面上に抄いた紙成形体は、乾燥させると、収縮して、円筒形状の網の側周面の内表面上から剥がれたり、剥がれ易くなるので、この紙成形体の製造方法を用いれば、円筒形状の網の側周面の内表面上から円筒形状の網の側周面の内表面上に抄いた紙成形体を引き剥がす作業が、不要又は容易となる。即ち、この紙成形体の製造方法を用いれば、シームレスの円筒形状の紙成形体を容易に製造することができる。
【0040】
請求項10に記載の紙成形体の製造方法では、紙を抄く際に、円筒形状の網を回転させ、円筒形状の網の内部に設けられている種々の断面形状を有する筒状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面を利用して紙を抄くようにしているので、筒状の網の断面形状に応じたシームレスの種々の断面形状を有する筒状の紙成形体を製造できる。
【0041】
また、この紙成形体の製造方法において、紙を抄く際に、円筒形状の網を回転させ、回転している円筒形状の網の内部に設けた、種々の断面形状を有する筒状の網の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにすれば、遠心力と、重力との協働により、種々の断面形状を有する筒状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0042】
請求項11に記載の紙成形体の製造方法では、紙を抄く際に、円筒形状の治具を回転させ、円筒形状の治具の内部に設けられている種々の断面形状を有する筒状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面を利用して紙を抄くようにしているので、筒状の網の断面形状に応じたシームレスの種々の断面形状を有する筒状の紙成形体を製造できる。
【0043】
また、この紙成形体の製造方法において、紙を抄く際に、円筒形状の治具を回転させ、回転している円筒形状の治具の内部に設けた、種々の断面形状を有する筒状の網の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにすれば、遠心力と、重力との協働により、種々の断面形状を有する筒状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0044】
請求項12に記載の紙成形体は、円筒形状の紙成形体が、シームレスになっているので、例えば、ランプシェードのような照明機器の傘として用いた場合、ランプを点灯した時に、貼り合わせ部が、他の部分と異なって見えるということが無いので、見栄えが良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明に係る紙成形体の製造装置及び紙成形体の製造方法の一例を、図面を参照しながら、更に、詳しく説明する。
(発明の実施の形態1)
ここでは、シームレスな円筒形状の紙成形体を製造する紙成形体の製造装置及びそのような紙成形体の製造方法を説明する。
【0046】
図1は、本発明に係る紙成形体の製造装置の一例を概略的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す紙成形体の製造装置を概略的に示す正面図であり、また、図3は、図1に示す紙成形体の製造装置を概略的に示す側面図である。
【0047】
この紙成形体の製造装置1は、回転駆動手段2と、回転駆動手段2により回転可能にされた、一対の回転ローラ3、3と、一対の回転ローラ3、3上に、一対の回転ローラ3、3から所定の距離をおくようにして設けられた押さえ部材4と、紙原料を分散した溶液を供給する紙原料供給手段5とを備える。
【0048】
尚、図1、図2及び図3の各々中、Fで示す部材は、回転駆動手段2、一対の回転ローラ3、3及び押さえ部材4を支持するフレーム部材を示しており、Bは、紙成形体の製造装置1をその上に設ける台座を示している。
【0049】
また、図1では、紙原料供給手段5については、想像線を用い、略図で表している。
【0050】
また、図2及び図3の各々においては、紙原料供給手段5についての図示は、省略している。
【0051】
回転駆動手段2は、回転駆動源2aと、回転駆動源2aの動力を回転ローラ3に伝達するベルト手段2bとを備える。
【0052】
回転駆動源2aとしては、例えば、電動モータを使用する。
【0053】
尚、この例では、一対の回転ローラ3、3の一方が、回転駆動源2aからの動力を受け、駆動するようにされており、他方は、動力フリーにされている。
【0054】
また、この例では、回転駆動手段2aは、その回転軸を、回転方向選択手段(図示せず。)により、順方向又は逆方向に回転できるようにされている。
【0055】
また、図1、図2及び図3の各々中、6で示す部材装置は、円筒形状の紙成形体を製造する(抄く)際に用いる、円筒形状の網6を示している。
【0056】
この例では、円筒形状の網6として、円筒形状の網6の側周面の両端部e6、e6の各々の外方に突出するように、リング体R6a、R6bを設けたものを用いている。
【0057】
リング体R6aは、筒状部Paと、図3に示す底面Pbとを備える。底面Pbには、図3に示す孔部hが形成されている。
【0058】
孔部hは、孔部hの直径をDhとし、円筒形状の網6の直径をD6とすると、D6>Dhの関係を満たすようにし、円筒形状の網6の内表面側に紙原料を分散した溶液が供給されるようにしている。
【0059】
更に、この例では、円筒形状の網6の一方端の、リング体R6bの外方に、捨て水手段7を設けている。
【0060】
捨て水手段7は、円錐台形状の捨て水本体容器部7aと、捨て水本体容器部7aの上底に設けられた捨て水口7bとを備える。
【0061】
また、この例では、回転ローラ3、3として、回転軸3axの両端の各々に、回転ローラ部3bを備えるものを用いている。
【0062】
回転ローラ部3bは、円筒形状の網6を一対の回転ローラ3、3上に回転可能に載置した際に、円筒形状の網6に設けられているリング体R6、R6の各々に接触し、円筒形状の網6を回転させる網回転部3c、3cと、網回転部3c、3cの各々に一体的に形成されている鍔体3f、3fとを備える。
【0063】
鍔体3fと鍔体3fとの間隔D3は、円筒形状の網6の長さL6と等しいかそれよりやや長くされており、円筒形状の網6は、回転ローラ3、3上に、円筒形状の網6を回転可能に載置した場合に、円筒形状の網6が、鍔体3fと鍔体3fとの間に収まるようにされている。
【0064】
この紙成形体の製造装置1では、円筒形状の網6が、鍔体3fと鍔体3fとの間に収まるように、回転ローラ3、3上に載置するようにしているので、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を、回転駆動手段2の回転駆動源2aを駆動し、回転ローラ3、3を回転させ、この回転ローラ3、3の回転により、回転させた場合に、円筒形状の網6が、回転ローラ3、3上から転げ落ちるのを防ぐことができるようになっている。
【0065】
押さえ部材4は、フレーム部材Fに回転可能に取り付けられている。
【0066】
また、図1中、H4で示す部材は、操作者が、押さえ部材4をフレーム部材Fに対して回転させる際に使用する操作ハンドルを示している。
【0067】
この例では、操作ハンドルH4として、シリンダー手段を用いている。
【0068】
そして、シリンダー手段H4の伸縮部(ピストン部)H4aを伸ばした状態にすると、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を、押さえ部材4により上方から押さえ込むことができるようになっており、シリンダー手段H4の伸縮部(ピストン部)H4aを縮めた状態にすると、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を上から押さえ込んでいる押さえ部材4を上方に移動させることで、円筒形状の網6を回転ローラ3、3上に載置する際に、押さえ部材4が邪魔にならないようにしたり、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を回転ローラ3、3上から取り外す際に、押さえ部材4が邪魔にならないようにしたりすることできるようになっている。
【0069】
また、シリンダー手段H4の伸縮部(ピストン部)H4aを伸ばした状態にして、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を、押さえ部材4により上方から押さえ込むことで、回転駆動手段2の回転駆動源2aを駆動し、回転ローラ3、3を回転させ、この回転ローラ3、3の回転により、円筒形状の網6を回転させた場合に、円筒形状の網6が、回転ローラ3、3上から転げ落ちるのを防ぐことができるようになっている。
【0070】
また、この例では、押さえ部材4として、その両端部の各々に、回転ローラ部R4、R4を備えるものを用いている。
【0071】
回転ローラ部R4、R4は、円筒形状の網6を一対の回転ローラ3、3上に回転可能に載置した際に、円筒形状の網6に設けられているリング体R6a、R6bの各々に接触するようになっている。
【0072】
紙原料供給手段5は、紙原料収容槽5aと、紙原料収容槽5aに収容された、紙原料を分散した紙原料を紙成形体の製造装置1に供給する供給管5bと、供給管5bの先端に設けられた紙原料供給ノズル手段5cとを備える。尚、図1中、Vで示す部材装置は、紙原料収容槽5aから紙成形体の製造装置1への紙原料を分散した紙原料の供給と停止を行うための開閉バルブを示している。
【0073】
また、図1中、8で示す部材装置は、円筒形状の網6を傾斜させるためのシリンダー手段を示している。
【0074】
シリンダー手段8は、円筒形状の網6を回転ローラ3、3上に載置した際に、シリンダー手段8の伸縮部(ピストン部)8aを伸ばせば、円筒形状の網6の捨て水手段7が設けられている側と反対側を持ち上げることができるようになっている。
【0075】
シリンダー手段8は、円筒形状の網6の側周面に、紙原料を分散した溶液を満遍なく行き渡す際や、円筒形状の網6の側周面を利用して紙を抄いた後、円筒形状の網6の内部側に残っている紙原料を分散した溶液を捨てる際に、その伸縮部(ピストン手段)8aを伸ばし、円筒形状の網6を傾斜させる際に用いる。
【0076】
また、9で示す部材は、紙を抄く際に発生する、水を目的とする場所に誘導する樋を示している。
【0077】
次に、この紙成形体の製造装置1を用いて、円筒形状の紙成形体を製造する(抄く)、紙成形体の製造方法の一例を説明する。
【0078】
円筒形状の紙成形体を製造する(抄く)際には、まず、円筒形状の網6を回転ローラ3、3上に載置する。
【0079】
次に、操作ハンドルH4を用いて、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を、押さえ部材4により上方から押さえ込むようにする。
【0080】
また、開閉バルブVが閉じた状態にし、紙原料収容槽5a内に、紙原料を分散した溶液を収容する。
【0081】
また、紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を、円筒形状の網6に設けられているリング体R6a、R6bの中、捨て水手段7が設けられている側と反対側のリング体R6aの内表面上に位置させる。
【0082】
次に、開閉バルブVを開いた状態にし、紙原料収容槽5aから、リング体R6a経由で、円筒形状の網6の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給する。
【0083】
また、この作業とともに、回転駆動手段2の回転駆動源2aを駆動して、一対の回転ローラ3、3を所定の速度で回転させることで、一対の回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を所定の速度で回転させる。
【0084】
また、円筒形状の網6の内表面上に形成されてくる紙の状態を見ながら、回転駆動源2aの回転方向を順方向、逆方向に適宜切り替え、例えば、円筒形状の網6の内表面上に形成されてくる紙の厚さが一定となるように調整したり、意識的に、紙の一部の厚さを他の部分より厚くしたりしてもよい。
【0085】
円筒形状の網6の内表面上に供給された、紙原料を分散した溶液は、円筒形状の網6により、溶液中の紙原料が、円筒形状の網6の内表面上に残り、溶液中の水分が、円筒形状の網6の回転による遠心力と、重力との協働により、円筒形状の網6外へ排出されることで、円筒形状の網6の内表面上に紙が抄かれていく。
【0086】
また、円筒形状の網6の内表面上に供給された、紙原料を分散した余分量の溶液は、捨て水本体容器部7aの上底に設けられた捨て水口7bから円筒形状の網6外へ排出される。
【0087】
円筒形状の網6の内表面上に所定の厚さの紙が抄かれたら、回転駆動手段2の回転駆動源2aを停止して、一対の回転ローラ3、3の回転を停止する。一対の回転ローラ3、3の回転を停止させることで、一対の回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6の回転も、減速後、停止する。
【0088】
尚、この時、円筒形状の網6の回転が急激に停止することで、円筒形状の網6の内表面上に形成されている紙に乱れが生じないようにするため、回転駆動手段2に減速手段(図示せず。)を設け、回転駆動手段2の回転駆動源2aを停止する際に、減速手段(図示せず。)を用い、一対の回転ローラ3、3の回転が次第にゆっくりと停止するようにしてもよい。
【0089】
円筒形状の網6の回転が停止したら、操作ハンドルH4を用いて、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を上方から押さえ込んでいる押さえ部材4を上方に上げ、回転ローラ3、3上から、その内表面に紙が抄かれている円筒形状の網6を取り外す。
【0090】
回転ローラ3、3上から取り外した円筒形状の網6は、その後、乾燥工程に送ることで、円筒形状の網6の内表面に抄かれている紙(シームレスな円筒形状の紙成形体)を乾燥させる。
【0091】
尚、シームレスな円筒形状の紙成形体を製造する工程において、必要により、シリンダー手段8の伸縮部(ピストン手段)8aを伸縮し、円筒形状の網6の側周面に、紙原料を分散した溶液を満遍なく行き渡したり、円筒形状の網6の側周面を利用して紙を抄いた後、円筒形状の網6の内部側に残っている紙原料を分散した溶液を捨てる際に、その伸縮部(ピストン手段)8aを伸ばして、円筒形状の網6を傾斜させたりする。
【0092】
この紙成形体の製造方法では、網として円筒形状の網6を用い、円筒形状の網の側周面を利用して紙を抄くようにしているので、シームレスの円筒形状の紙成形体を製造できる。
【0093】
また、この紙成形体の製造方法では、上述したように、紙を抄く際に、円筒形状の網6を回転させ、回転している円筒形状の網6の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにしているので、遠心力と、重力との協働により、円筒形状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0094】
また、円筒形状の網6の側周面の内表面上に紙成形体を抄いた場合には、円筒形状の網6の側周面の内表面上に抄いた紙成形体は、乾燥させると、収縮して、円筒形状の網6の側周面の内表面上から剥がれたり、剥がれ易くなるので、この紙成形体の製造方法を用いれば、円筒形状の網6の側周面の内表面上から円筒形状の網6の側周面の内表面上に抄いた紙成形体を引き剥がす作業が、不要又は容易となる。即ち、この紙成形体の製造方法を用いれば、シームレスの円筒形状の紙成形体を容易に製造することができる。
【0095】
また、この紙成形体の製造装置1では、円筒形状の網6の側周面の両端部の各々の外方に突出するように、リング体R6a、R6bを設け、この一対のリング体R6a、R6bが、一対の回転ローラ3、3、押さえ部材4の両端部の各々に設けた回転ローラ部R4、R4に接触するようにし、円筒形状の網6自体が、一対の回転ローラ3、3及び押さえ部材4には、直接、接触しないようにしている。これにより、この紙成形体の製造装置1を用いれば、一対の回転ローラ3、3、押さえ部材4の影響をうけることなく、円筒形状の網6を用いて紙を抄くことができるので、外乱の影響の無い、高品質な紙成形体を製造することができる。
【0096】
更に、この紙成形体の製造装置1では、紙を抄くための円筒形状の網6の側周面の内表面上には、直接、紙原料を分散した溶液を供給するのではなく、円筒形状の網6の側周面の一端部に紙原料受け部R6aを設け、その紙原料受け部R6aに、紙原料供給手段5から、紙原料を分散した溶液を供給し、紙原料受け部R6a経由で、円筒形状の網6の側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにしているので、円筒形状の網6の側周面の内表面上において作製されつつある紙には、直接、紙原料を分散した溶液が垂らされることがない。
【0097】
この結果、この紙成形体の製造装置1を用いれば、円筒形状の網6の側周面の内表面上において作製されつつある紙に、紙原料供給手段5から、直接、紙原料を分散した溶液が垂らした場合に、紙に残る、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を、直接、紙に垂らしたことが原因する痕跡の無い、高品質な紙成形体を製造することができる。
【0098】
また、この紙成形体の製造装置1では、一対の回転ローラ3、3上に載置した後に、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を押さえ部材4により上方から押さえるようにしているので、回転駆動手段2の回転駆動源2aを駆動し、回転ローラ3、3を回転させ、この回転ローラ3、3の回転により、円筒形状の網6を回転させた場合に、円筒形状の網6が、回転ローラ3、3上から転げ落ちるのを防ぐことができる。
【0099】
また、この紙成形体の製造装置1では、一対の回転ローラ3、3の各々として、鍔体3f、3fを設け、円筒形状の網6が、鍔体3fと鍔体3fとの間に収まるようにしているので、回転駆動手段2の回転駆動源2aを駆動し、回転ローラ3、3を回転させ、この回転ローラ3、3の回転により、円筒形状の網6を回転させた場合に、円筒形状の網6が、回転ローラ3、3上から転げ落ちるのを防ぐことができる。
【0100】
尚、上記の発明の実施の形態1では、紙成形体の製造方法として、円筒形状の網6の側周面の内表面上に紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を設け、円筒形状の網6の側周面の内表面上に、紙原料受け部R6経由で、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を供給し、円筒形状の網6の側周面の内表面上に、紙を抄いた例を中心に説明したが、これは、単に、本発明の好ましい例を示したに過ぎず、本発明には、円筒形状の網6の側周面の内表面上に紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を設け、円筒形状の網6の側周面の内表面上に、直接、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を供給し、円筒形状の網6の側周面の内表面上に、紙を抄く、紙成形体の製造装置や紙成形体の製造方法も含まれる。
【0101】
更にまた、円筒形状の網6の側周面の外表面上に、紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を設け、円筒形状の網6の側周面の外表面上に、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を直接又は紙原料受け部R6a経由で供給し、円筒形状の網6の側周面の外表面上に紙を抄く、紙成形体の製造装置や紙成形体の製造方法も、本発明に含まれる。
【0102】
尚、上記の発明の実施の形態1では、円筒形状の網6を用いたものについて説明したが、円筒形状の網6の機械的強度が弱い場合には、円筒形状の網6の外側に接する形状保持のためのパンチングメタル等の貫通穴を有する、円筒形状の形状保持部材(図示せず。)を設けても良い。
【0103】
また、円筒形状の網6の側周面に所望の厚さの紙を抄く際に、円筒形状の網6を前後、左右に揺動したり、円筒形状の網6を傾斜させても良い。
【0104】
更に、円筒形状の網6で紙を抄く際に、水はけをよくするための吸水手段を、円筒形状の網6の側周面の外表面に当接、又は近接するように設けても良い。
【0105】
図4は、図1に示す紙成形体の製造装置1に、そのような吸水手段を設けた装置の一例を模式的に示す構成図である。
【0106】
尚、図4中、図1に示す紙成形体の製造装置1の構成部材に相当する構成部材については、図1に示す紙成形体の製造装置1の構成部材に付した参照符号と同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0107】
図4に示す紙成形体の製造装置1Aは、円筒形状の網6で紙を抄く際に、水はけをよくするための吸水手段10を備える。この吸水手段10は、例えば、吸水用スポンジロール等で構成されており、円筒形状の網6の側周面の外表面下部に当接するように設けられている。
【0108】
この紙成形体の製造装置1Aでは、円筒形状の網6が回転することによって、吸水手段10が回転し、紙を抄く際に発生する水を吸水するようにしている。
【0109】
尚、吸水手段10は、上記した例に限定されることはなく、例えば、円筒形状の網6の回転に同期するように、他の回転駆動手段(図示せず。)により、回転させ、紙を抄く際に発生する水を吸水するようにしても良い。
【0110】
上記の吸水手段10を用いれば、円筒形状の網6の側周面の外表面下部に、当接するように吸水手段10を設けているので、円筒形状の網6を用いて、紙を抄く際に、水の分離を遠心力と重力との協働に加え、吸水手段の吸水力も利用しているので、円筒形状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0111】
図5は、図1に示す紙成形体の製造装置1に、吸水手段10とは異なる吸水手段を設けた装置の一例を模式的に示す構成図であり、図5(a)は側面図であり、図5(b)は分解斜視図である。
【0112】
尚、図5中、図1に示す紙成形体の製造装置1の構成部材に相当する構成部材については、図1に示す紙成形体の製造装置1の構成部材に付した参照符号と同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0113】
図5に示す紙成形体の製造装置1Bは、円筒形状の網6で紙を抄く際に、水はけをよくするための吸水手段11を備える。この吸水手段11は、円筒形状の網6の側周面の外表面下部に開口部を有する吸水ヘッド部11aを備える。
【0114】
尚、図5中、11bで示す部材は、吸水ヘッド部11aを円筒形状の網6に接触させた際に、円筒形状の網6の回転に影響を及ぼすのを防ぐための摺動部材であり、この例では、枠状の樹脂部材又はゴム部材を示している。ゴム部材としては、以下の物に限定されることはないが、例えばウレタンゴム等を用いる。
【0115】
また、吸水ヘッド部11aには、吸引ポンプ又はブロア等の吸引装置(図示せず。)が接続されるようになっている。
【0116】
この紙成形体の製造装置1Bでは、円筒形状の網6が回転しながら、吸水手段11で強制的に吸水することで、紙を抄く際に発生する水を吸水するようにしている。
【0117】
上記の吸水手段11を用いれば、円筒形状の網6の側周面の下部に、吸水手段11を設けているので、円筒形状の網6を用いて、紙を抄く際に、水の分離を遠心力と重力との協働に加え、吸水手段の吸水力も利用しているので、円筒形状の紙成形体の製造を効率良く行える。
(発明の実施の形態2)
ここでは、シームレスな、種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体を製造する紙成形体の製造装置及びそのような紙成形体の製造方法を説明する。
【0118】
図6は、シームレスな、種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体を製造する際に用いる網を例示的に示す図であり、図6(a)は、シームレスな、種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体を製造する際に用いる網の一例を、その一部を切り欠いて、模式的に示す正面図であり、また、図6(b)は、図6(a)に示す網のA−A線に従う、模式的な断面図である。
【0119】
尚、図6(a)では、紙原料供給手段5については、想像線を用い、略図で表し、図6(b)では、紙原料供給手段5の図示を省略している。
【0120】
この網6Aは、円筒形状の網6と、種々の断面形状を有する筒状の網6Bとを備える。
【0121】
種々の断面形状を有する筒状の網6Bは、円筒形状の網6の内部に設けられている。
【0122】
尚、図6中、Pで示す部材は、種々の断面形状を有する筒状の網6Bを、円筒形状の網6の内部に取り付ける際に用いる支持部材を示している。
【0123】
筒状の網6Bは、断面形状が異なっている以外は、円筒形状の網6と同様の構成を備えるので、筒状の網6Bの構成部材中、円筒形状の網6の構成部材に相当する構成部材については、円筒形状の網6の構成部材に付した参照符号と同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0124】
円筒形状の網6の両端には、リング体R6a、R6bが設けられている。
【0125】
このリング体R6a、R6bは、筒状の網6Bで紙を抄く際に、水はけを良くするためのものであって、単なるリング体で良い。
【0126】
次に、この網6Aを用いて、シームレスな、種々の断面形状を有する紙成形体を製造する(抄く)、紙成形体の製造方法の一例を説明する。
【0127】
この網6Aを用いて、シームレスな、種々の断面形状を有する紙成形体を製造する(抄く)際には、図1に示す紙成形体の製造装置1の一対の回転ローラ3、3上に、円筒形状の網6の代わりに、網6Aを回転可能に載置する。
【0128】
次に、操作ハンドルH4を用いて、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を、押さえ部材4により上方から押さえ込むようにする。
【0129】
また、開閉バルブVが閉じた状態にし、紙原料収容槽5a内に、紙原料を分散した溶液を収容する。
【0130】
また、紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を、筒状の網6Bに設けられているリング体R6a1、R6b1の中、捨て水手段7が設けられている側と反対側のリング体R6a1の内表面上に位置させる。
【0131】
尚、この例では、リング体R6a1、R6b1の底面に設ける孔部hの形状を、筒状の網6Bの断面形状より小さい関係を満たす相似形又は類似形状にすることで、筒状の網6Bの内表面側に紙原料を分散させた溶液が供給されるようにしている。
【0132】
次に、開閉バルブVを開いた状態にし、紙原料収容槽5aから、リング体R6a1経由で、円筒形状の網6の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給する。
【0133】
以下、発明の実施の形態1に示した方法と同様にして、円筒形状の網6を回転させ、回転している円筒形状の網6の内部に設けられている、種々の断面形状を有する筒状の網6Bの側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、種々の断面形状を有する筒状の網6Bの側周面の内表面上で紙を抄く。
【0134】
筒状形状の網6Bの内表面上に所定の厚さの紙が抄かれたら、回転駆動手段2の回転駆動源2aを停止して、一対の回転ローラ3、3の回転を停止する。一対の回転ローラ3、3の回転を停止させることで、一対の回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6の回転も停止する。
【0135】
円筒形状の網6の回転が停止したら、操作ハンドルH4を用いて、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を上方から押さえ込んでいる押さえ部材4を上方に上げ、回転ローラ3、3上から、その内表面に紙が抄かれている円筒形状の網6を取り外す。
【0136】
回転ローラ3、3上から取り外した円筒形状の網6は、その後、乾燥工程に送ることで、円筒形状の網6の内部に設けられている、種々の断面形状を有する筒状の網6Bの側周面の内表面に抄かれている紙(シームレスな、種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体)を乾燥させる。
【0137】
尚、シームレスな、種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体を製造する工程において、必要により、シリンダー手段8の伸縮部(ピストン手段)8aを伸縮し、筒状形状の網6Bの側周面に、紙原料を分散した溶液を満遍なく行き渡したり、筒状形状の網6Bの側周面を利用して紙を抄いた後、円筒形状の網6の内部側及び/又は筒状形状の網6Bの内部側に残っている紙原料を分散した溶液を捨てる際に、その伸縮部(ピストン手段)8aを伸ばして、円筒形状の網6を傾斜させたりする。
【0138】
この紙成形体の製造方法では、紙を抄く網として、種々の断面形状の筒状形状の網6Bを用い、筒状形状の網6Bの側周面を利用して紙を抄くようにしているので、種々の断面形状の筒状形状の網6Bに対応した、シームレスの、筒形状の紙成形体を製造できる。
【0139】
また、この紙成形体の製造方法では、紙を抄く際に、円筒形状の網6を回転させ、回転している円筒形状の網6の内部に設けた、種々の断面形状を有する筒状の網6Bの内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにしているので、遠心力と、重力との協働により、種々の断面形状を有する筒状の紙成形体の製造を効率良く行える。
【0140】
また、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に紙成形体を抄いた場合には、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に抄いた紙成形体は、乾燥させると、収縮して、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上から剥がれたり、剥がれ易くなるので、この紙成形体の製造方法を用いれば、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上から、種々の断面形状を有する筒状形状の網6の側周面の内表面上に抄いた紙成形体を引き剥がす作業が、不要又は容易となる。即ち、この紙成形体の製造方法を用いれば、シームレスの筒状形状の紙成形体を容易に製造することができる。
【0141】
更に、この紙成形体の製造方法では、紙を抄くための筒状形状の網6Bの側周面の内表面上には、直接、紙原料を分散した溶液を供給するのではなく、筒状形状の網6Bの側周面の一端部に紙原料受け部(筒状形状の網6Bに設けられているリング体)R6a1、R6b1を設け、その紙原料受け部(筒状形状の網6Bに設けられているリング体)R6a1に、紙原料供給手段5から、紙原料を分散した溶液を供給し、紙原料受け部(筒状形状の網6Bに設けられているリング体)R6a1経由で、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給するようにしているので、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上において作製されつつある紙には、直接、紙原料を分散した溶液が垂らされることがない。
【0142】
この結果、この紙成形体の製造方法を用いれば、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上において作製されつつある紙に、紙原料供給手段5から、直接、紙原料を分散した溶液が垂らした場合に、紙に残る、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を、直接、紙に垂らしたことが原因する痕跡の無い、高品質な紙成形体を製造することができる。
【0143】
また、この紙成形体の製造方法では、一対の回転ローラ3、3上に載置した後に、回転ローラ3、3上に載置した円筒形状の網6を押さえ部材4により上方から押さえるようにしているので、回転駆動手段2の回転駆動源2aを駆動し、回転ローラ3、3を回転させ、この回転ローラ3、3の回転により、円筒形状の網6を回転させた場合に、円筒形状の網6が、回転ローラ3、3上から転げ落ちるのを防ぐことができる。
【0144】
また、この紙成形体の製造方法では、一対の回転ローラ3、3の各々として、鍔体3f、3fを設け、円筒形状の網6が、鍔体3fと鍔体3fとの間に収まるようにしているので、回転駆動手段2の回転駆動源2aを駆動し、回転ローラ3、3を回転させ、この回転ローラ3、3の回転により、円筒形状の網6を回転させた場合に、円筒形状の網6が、回転ローラ3、3上から転げ落ちるのを防ぐことができる。
【0145】
尚、上記の発明の実施の形態2では、紙成形体の製造方法として、円筒形状の網6の内部に設けた、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を設け、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に、紙原料受け部(筒状形状の網6Bに設けられているリング体)R6a1経由で、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を供給し、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に、紙を抄いた例を中心に説明したが、これは、単に、本発明の好ましい例を示したに過ぎず、本発明には、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を設け、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に、直接、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を供給し、筒状形状の網6Bの側周面の内表面上に、紙を抄く、紙成形体の製造装置や紙成形体の製造方法も含まれる。
【0146】
また、円筒形状の網6の内部に設けた、筒状形状の網6Bの側周面の外表面上に、紙原料供給手段5の紙原料供給ノズル手段5cのノズル口を設け、筒状形状の網6Bの側周面の外表面上に、紙原料供給手段5から紙原料を分散した溶液を直接又は紙原料受け部(筒状形状の網6Bに設けられているリング体)R6a1経由で供給し、筒状形状の網6Bの側周面の外表面上に紙を抄く、紙成形体の製造装置や紙成形体の製造方法も、本発明に含まれる。
【0147】
更にまた、この例では、円筒形状の網6の内部に筒状形状の網6Bを設けた例を示したが、円筒形状の網6に代えて、図7に示すように、リング体R6aとリング体R6bとの間をパイプ部材Pi・・・を接続した、円筒形状の治具6Cを用いるようにしてもよい。
【0148】
尚、本発明により製造する紙成形体は、和紙であってもよく、西洋紙であってもよく、和紙と西洋紙の混合紙であってもよく、樹脂繊維や植物繊維やセラミックス繊維や炭素繊維その他の繊維を含む、和紙や西洋紙や和紙と西洋紙の混合紙であってもよいことを、付記しておく。
【0149】
また、筒状形状の網6Bの側周面や、筒状形状の網6Bの側周面に種々の凹凸パターン、曲面その他の自由形状を設ければ、これらの形状に対応した種々の凹凸パターン、曲面その他の自由形状を有する筒状の紙成形体を製造できる。
【0150】
また、筒状形状の網6Bの形状を、球形形状、略球形形状、ラグビーボール形状、三角錐その他の角錐形状、縦断面が台形形状の角錐台形状、円錐、円錐台、ピーナツ形状その他の形状にすれば、これらの形状に対応した種々の凹凸パターン、曲面その他の自由形状を有する筒状の紙成形体を製造できる。
【0151】
本発明に係る紙成形体の製造装置及び製造方法を用いれば、和紙その他の紙の持つ独特の風合を活かしたシームレスなものを照明器具のシェード、その他種々の造形物として市場に提供できる。
【0152】
また、プラスチック等の原料は石油製品などの化石燃料であり、有限なものであって枯渇するものに対し、本発明は紙原料を使用している。植物を育てることにより得られる物を主な原料としているので、原料が枯渇することが無く循環型の再生可能な資源であり、環境にやさしいということに利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明に係る紙成形体の製造装置及び本発明に係る紙成形体の製造方法を用いれば、シームレスな円筒形状や種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体を製造できるので、本発明に係る紙成形体の製造装置及び本発明に係る紙成形体の製造方法は、例えば、ランプを点灯した際に、シームレスで、見栄えの良い、円筒形状や種々の断面形状を有する筒状形状のランプシェードその他各種のオブジェ等の紙成形体を製造する製造用装置や、そのような紙成形体の製造方法として幅広く用いることができ、そのような紙成形体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明に係る紙成形体の製造装置の一例を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す紙成形体の製造装置を概略的に示す正面図である。
【図3】図1に示す紙成形体の製造装置を概略的に示す側面図である。
【図4】図1に示す紙成形体の製造装置に、吸水手段を設けた装置の一例を模式的に示す構成図である。
【図5】図1に示す紙成形体の製造装置に、図4の吸水手段とは異なる吸水手段を設けた装置の一例を模式的に示す構成図であり、図5(a)は側面図であり、図5(b)は分解斜視図である。
【図6】シームレスな、種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体を製造する際に用いる網を例示的に示す図であり、図6(a)は、シームレスな、種々の断面形状を有する筒状形状の紙成形体を製造する際に用いる網の一例を、その一部を切り欠いて、模式的に示す正面図であり、また、図6(b)は、図6(a)に示す網のA−A線に従う、模式的な断面図である。
【図7】本発明で用いる、円筒形状の治具の他の例を例示的に示す斜視図である。
【図8】従来の紙成形体の製造方法を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0155】
1 紙成形体の製造装置
2 回転駆動手段
3 回転ローラ
4 押さえ部材
5 紙原料供給手段
6 円筒形状の網
6A 網
6B 種々の断面形状を有する筒状形状の網
R6 リング体

























【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙原料供給手段から、円筒形状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、前記円筒形状の網の側周面を利用して紙を抄くようにした、紙成形体の製造装置。
【請求項2】
回転駆動手段と、
前記回転駆動手段により、回転可能にされた、一対の回転ローラと、
前記一対の回転ローラ上に、前記一対の回転ローラから所定の距離をおくようにして設けられた押さえ部材と、
紙原料を分散した溶液を供給する紙原料供給手段とを備え、
前記一対の回転ローラ上に、円筒形状の網を載置し、
前記一対の回転ローラ上に載置した円筒形状の網を前記押さえ部材により上方から押さえ、
前記回転駆動手段を駆動して、前記一対の回転ローラを回転することで、前記円筒形状の網を回転させ、
前記紙原料供給手段から、前記円筒形状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、前記円筒形状の網の側周面を利用して紙を抄くようにした、紙成形体の製造装置。
【請求項3】
前記円筒形状の網の側周面の両端部の各々の外方に突出するように、リング体を設け、
前記押さえ部材の両端部の各々に回転ローラ部を設け、
前記一対の回転ローラ上に、前記円筒形状の網を載置した際に、前記円筒形状の網の側周面の両端部の各々の外方に突出するように設けられているリング体の側周面の外表面が、前記一対の回転ローラの各々の側周面の外表面に接するようにし、且つ、
前記一対の回転ローラ上に載置した円筒形状の網を前記押さえ部材により上方から押さえた際に、前記円筒形状の網の側周面の両端部の各々の外方に突出するように設けられているリング体の側周面の外表面が、前記押さえ部材の両端部の各々に設けられている回転ローラ部の各々の側周面の外表面に接するようにした、請求項2に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項4】
前記円筒形状の網の側周面の一端部に突出するように、紙原料を分散した溶液を受ける紙原料受け部を設け、前記紙原料供給手段から、紙原料を分散した溶液を受ける紙原料受け部の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、前記円筒形状の網の側周面の内表面側に紙原料を分散した溶液を供給し、前記円筒形状の網の側周面の内表面上で紙を抄くようにした、請求項2又は請求項3に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項5】
前記円筒形状の網の側周面の外表面に当接、又は、近接するように設けられた吸水手段を有する、請求項2〜4のいずれかに記載の紙成形体の製造装置。
【請求項6】
前記円筒形状の網の内部に、種々の断面形状を有する筒状の網を設け、前記種々の断面形状を有する筒状の網の側周面に紙原料を分散した溶液を供給し、前記種々の断面形状を有する筒状の網の側周面を利用して紙を抄くようにした、請求項2又は請求項3に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項7】
前記円筒形状の網の代わりに、円筒形状の治具を用いた、請求項6に記載の紙成形体の製造装置。
【請求項8】
円筒形状の網の側周面により紙を抄くようにした、紙成形体の製造方法。
【請求項9】
前記円筒形状の網の側周面により紙を抄く際に、前記円筒形状の網を回転させ、回転している前記円筒形状の網の側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、前記円筒形状の網の側周面の内表面上で紙を抄くようにした、請求項8に記載の紙成形体の製造方法。
【請求項10】
前記円筒形状の網の内部に、種々の断面形状を有する筒状の網を設け、前記円筒形状の網を回転させ、回転している前記円筒形状の網の内部に設けられている、種々の断面形状を有する筒状の網の側周面の内表面上に、紙原料を分散した溶液を供給し、前記種々の断面形状を有する筒状の網の側周面の内表面上で紙を抄くようにした、請求項8に記載の紙成形体の製造方法。
【請求項11】
前記円筒形状の網の代わりに、円筒形状の治具を用いた、請求項10に記載の紙成形体の製造方法。
【請求項12】
シームレスで、円筒形状を有する、紙成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−9201(P2006−9201A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189317(P2004−189317)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(592072791)鳥取県 (19)
【出願人】(502411676)谷口和紙株式会社 (4)
【Fターム(参考)】