説明

紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法

【課題】低密度化性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を容易に製造することができる紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法を提供する。
【解決手段】平均炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する2級アミンと、エピハロヒドリンとを反応して得られるアミノ化合物を含有することを特徴とする紙用低密度化剤、及び、紙の製造に使用するパルプに、本発明の紙用低密度化剤を添加することを特徴とする低密度紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、低密度化性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を容易に製造することができる紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルプ資源の不足、パルプ価格の高騰、地球環境保護の必要性などによって、パルプの使用量をできるだけ抑えるために、紙製品の坪量を下げる努力がなされている。新聞用紙、印刷用紙、記録用紙、包装用紙、板紙、壁紙、襖用原紙、裏打ち紙などの紙製品の坪量を低減することにより、コスト低減はもちろん、森林資源の確保など、地球環境問題の解決に大きな効果をもたらすと考えられる。
また、一方では、印刷適性やボリューム感のある高品質の紙が求められており、紙の嵩を高くした密度の低い紙が要望されている。従来より、紙の嵩を高くする方法として、架橋パルプを用いる方法や、合成繊維との混抄、パルプ繊維に無機物を充填するなどの方法が行われている。しかし、架橋パルプを用いる方法や合成繊維との混抄による方法では、紙のリサイクルが難しく、コスト的にも高くなり、また、無機物の充填による方法では、紙の強度を著しく低下させるという欠点がある。これらの欠点を解消するために、抄紙時に有機化合物を添加して嵩を高くする低密度化剤が検討されている。
例えば、紙力を損なうことなく低密度化されたシートが得られる紙用低密度化剤として、油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤又は糖系非イオン界面活性剤を含有する紙用低密度化剤(特許文献1)、高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加物を含有する紙用低密度化剤(特許文献2)、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物を含有する紙用低密度化剤(特許文献3)が提案されている。
しかし、これらの化合物は、イオン性がないために紙に対する自己定着性が低く、使用量の割には紙の低密度化効果が低い。また、使用量を増加すると、定着性が低いために抄紙系中に低密度化剤が蓄積し、低密度化のコントロールが難しく、発泡、浮き種などの問題を起こしやすい。また、紙の強度、表面強度やサイズ度を低下させやすい。さらに、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物、高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加物、油脂系非イオン活性剤などには、分子内に親水性の高いポリアルキレンオキシド鎖が存在するために、サイズ度が著しく低下する。
サイズ剤の効果を損なうことなく低密度化されたシートが得られる紙用低密度化剤として、オキシアルキレン基を有する多価アルコール脂肪酸エステル化合物(特許文献4)が提案されている。
しかし、この化合物は、水とのなじみが悪く、そのままでは使用できないために、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤などの界面活性剤を使用しなければ、水や熱水に分散又は乳化させることが困難であり、この際に使用する界面活性剤によって、発泡や浮き種などの問題が発生する。また、紙の強度、表面強度、サイズ度も低下するといった問題があった。
【特許文献1】特開平11−200283号公報
【特許文献2】特開平11−200284号公報
【特許文献3】特再公表WO98/03730号公報
【特許文献4】特開平11−350380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、低密度化性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を容易に製造することができる紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、平均炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基を有する2級アミンとエピハロヒドリンとを反応して得られるアミノ化合物を、紙の製造に使用するパルプに添加することにより、優れた低密度化性を有し、サイズ度低下の少ない低密度紙を効率よく製造し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)平均炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する2級アミンと、エピハロヒドリンとを反応して得られるアミノ化合物を含有することを特徴とする紙用低密度化剤、
(2)2級アミンが、平均炭素数12〜18のアルキル基を2個有する(1)に記載の紙用低密度化剤、及び、
(3)紙の製造に使用するパルプに、(1)又は(2)に記載の紙用低密度化剤を添加することを特徴とする低密度紙の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の低密度化剤及び低密度紙の製造方法によれば、低密度性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を容易に製造することができ、パルプ原料の使用量を低減し、地球環境保護に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の紙用低密度化剤は、平均炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する2級アミンと、エピハロヒドリンとを反応して得られるアミノ化合物を含有する。
本発明に用いられる平均炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する2級アミンのアルキル基としては、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基などを挙げることができる。アルケニル基としては、例えば、オレイル基などを挙げることができる。
このような平均炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する2級アミンとしては、例えば、ジラウリルアミン、ジミリスチルアミン、ジパルミチルアミン、ジステアリルアミン、ジエイコシルアミン、ジベヘニルアミン、メチルラウリルアミン、メチルミリスチルアミン、メチルパルミチルアミン、メチルステアリルアミン、メチルベヘニルアミンなどの2級アルキルアミン;ジヤシアミン、ジ牛脂アミン、ジ硬化牛脂アミンなどの混合2級アルキルアミン;ジオレイルアミンなどの2級アルケニルアミンなどを挙げることができる。混合アミンのアルキル基又はアルケニル基の平均炭素数は、各アミン成分のモル平均数より算出する。これらの2級アミンは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。用いる2級アミンのアルキル基又はアルケニル基の平均炭素数が12〜22の範囲内であれば、炭素数12未満のアルキル基又はアルケニル基を有する2級アミンや、炭素数が22を超えるアルキル基又はアルケニル基を有する2級アミンが含まれていてもよい。2級アミンのアルキル基又はアルケニル基の平均炭素数が12未満であると、製造される紙の低密度化性が低下し、サイズ度が低下するおそれがある。2級アミンのアルキル基又はアルケニル基の平均炭素数が22を超えると、得られるアミノ化合物の水に対する分散性又は乳化性が低下し、低密度化剤の分散に界面活性剤が必要になって、紙の低密度化性やサイズ度が低下するおそれがある。
【0007】
本発明において、2級アミンは、平均炭素数12〜18のアルキル基を2個有することが好ましい。平均炭素数12〜18のアルキル基を2個有する2級アミンからは、優れた低密度化性や、サイズ度低下の少ない低密度紙を容易に製造することができる。
本発明に用いるエピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどを挙げることができる。これらの中で、エピクロロヒドリンは、価格が安く、反応性が大きく、生成物の有用性に優れるので、好適に用いることができる。
本発明において、2級アミンとエピハロヒドリンを反応して得られるアミノ化合物を製造する方法に特に制限はなく、例えば、1種の2級アミンを単独で、若しくは、2種以上の2級アミンの混合物として、あるいは、エピハロヒドリンと反応可能な他の3級アミンとの混合物として、アミンに対して、エピハロヒドリンを好ましくは0.3〜5.0モル倍、より好ましくは0.4〜2.2モル倍、さらに好ましくは0.6〜1.6モル倍添加し、必要に応じて溶媒を用いて20〜100℃で反応させ、未反応のエピハロヒドリンを除去してアミノ化合物を製造することができる。この方法によれば、2級アミンとエピハロヒドリンとの反応により、アゼチジニウム環構造又はエポキシ構造が形成される場合もある。エピハロヒドリンの量がアミンに対して0.3モル倍未満であると、未反応のアミンが残存し、低密度化性や、サイズ度が低下するおそれがある。エピハロヒドリンの量がアミンに対して5.0モル倍を超えると、バッチスケールが大幅に低下し、生産性が低下するのみならず、エピハロヒドリン由来の不純物が多く生成するおそれがある。反応に用いる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを挙げることができる。エピハロヒドリンと反応可能な他の3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジメチルヤシアミン、ジメチル牛脂アミン、ジメチル硬化牛脂アミン、ジデシルメチルアミン、ジラウリルメチルアミン、ジ硬化牛脂メチルアミン、ジオレイルメチルアミンなどを挙げることができる。
【0008】
本発明において、アミノ化合物は、水や溶剤に乳化、分散又は溶解することを容易としたり、製品安定性を向上させる目的で、酸により塩として用いることができる。用いる酸に特に制限はなく、例えば、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸や、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を挙げることができる。これらの中で、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸を好適に用いることができる。酸により塩とするには、反応後のアミノ化合物に酸を添加して塩とすることができ、あるいは、酸の水溶液に、アミノ化合物を添加して塩とすることもできる。
本発明の低密度化剤の剤型に特に制限はなく、例えば、アミノ化合物をそのまま固体又は液状で用いることができ、あるいは、水や溶剤に乳化、分散又は溶解して用いることもできる。また、低密度化剤としての性能を損なわない範囲で、微量の界面活性剤などを用いて、水や溶剤に乳化、分散又は溶解して使用することもできる。
【0009】
本発明の低密度紙の製造方法においては、紙の製造に使用するパルプに、本発明の紙用低密度化剤を添加する。本発明の紙用低密度化剤をパルプに添加する工程としては、例えば、離解工程直後、叩解前後、薬品などを添加する紙料調成前後、抄紙前、古紙の再生処理前後などを挙げることができる。
本発明方法において、紙の製造に使用するパルプに対する紙用低密度化剤の添加量に特に制限はないが、パルプ100質量部に対しアミノ化合物量として0.01〜10.0質量部であることが好ましく、0.05〜5.0質量部であることがより好ましく、0.1〜3.0質量部であることがさらに好ましい。
本発明方法に使用するパルプに特に制限はなく、例えば、広葉樹、針葉樹などから得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹パルプ、古紙再生パルプなどの植物繊維、パルプモールドなどの繊維材料などを挙げることができる。また、本発明方法により製造する低密度紙は、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造したものであって、素材としてレーヨン、ポリエステルなどの合成高分子物質を用いて製造した合成紙や、繊維状無機材料を配合した紙なども含まれる。
【0010】
本発明方法により製造する低密度紙の種類に特に制限はなく、例えば、新聞用紙、印刷用紙、記録用紙、包装用紙、板紙、ライナー、中芯などのダンボール用紙、壁紙、襖紙原紙やその裏打ち紙、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの衛生用紙などの紙製品などを挙げることができる。紙の形態にも特に制限はなく、例えば、感熱記録紙、インクジェット記録紙、コート紙、アート紙、微コート紙などの塗被紙にも適用することができる。また、低密度化する目的にも特に制限はなく、例えば、めくりやすさ、印刷適性、ボリューム感、風合い、手触りなどの柔軟性、紙の割れ防止、層間剥離のしやすさ、吸水性、吸油性、吸樹脂性、不透明性、含水進伸度の低下、コスト低減、パルプ使用量の節減などを挙げることができる。
本発明方法においては、低密度化の性能を損なわない程度に、他の薬剤を添加することができる。他の薬剤としては、例えば、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤、澱粉、ポリビニルアルコールなどの紙力剤、ドライヤー剥離剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、脱墨剤、サイズ剤、紙質改善剤、填料、顔料、染料、消泡剤などを挙げることができる。これらの他の薬剤は、紙料調成工程において、単独に添加することができ、あるいは、あらかじめ本発明の紙用低密度化剤に混合して添加することもできる。
【実施例】
【0011】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、低密度紙の評価は下記の方法により行った。
(1)低密度化性
JIS P 8118:1998に従って、密度を測定し、下式により低密度化率を求めた。密度が小さいほど、低密度化率が大きいほど、低密度化性が良好である。
低密度化率(%)= {(A−B)/A} ×100
A:低密度化剤無添加時の密度
B:低密度化剤添加時の密度
(2)サイズ度
JIS P 8112:2004に従って、ステキヒト・サイズ度を測定した。
また、以下の実施例の文中において、平均炭素数はアミンの窒素原子に結合した1個のアルキル基又はアルケニル基の平均炭素数を表す。
【0012】
比較例1
広葉樹晒しクラフトパルプを、フリーネス440mLに叩解してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを、角型シートマシン[熊谷理機工業(株)]を用いて坪量80g/m2となるように抄紙し、プレス機[熊谷理機工業(株)]により0.7MPaで5分間プレスしたのち、ヤンキードライヤー[熊谷理機工業(株)]を用いて105℃で3分間乾燥して試験紙を得た。得られた試験紙の密度は0.610g/cm3であり、サイズ度は0であった。
実施例1
フラスコに、アルキル基の平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン[花王(株)、ファーミン(登録商標)D86]100.1g(0.2モル)を仕込み、エピクロロヒドリン18.5g(0.2モル)を、70℃で4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに4時間反応した。反応終了後、減圧にして6kPaの圧力下、50℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去してアミノ化合物を得た。次に、10質量%となるように水を添加して、乳化液状の低密度化剤を得た。
広葉樹晒しクラフトパルプを、フリーネス440mLに叩解してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを、ラボスターラー[ヤマト(株)]を用いて撹拌しながら、低密度化剤中のアミノ化合物量として対パルプ0.8質量%になるように低密度化剤を添加し、5分間撹拌した。次に、角型シートマシン[熊谷理機工業(株)]を用いて坪量80g/m2となるように抄紙し、プレス機[熊谷理機工業(株)]により0.7MPaで5分間プレスしたのち、ヤンキードライヤー[熊谷理機工業(株)]を用いて105℃で3分間乾燥して低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.555g/cm3、低密度化率9.0%であり、サイズ度は62であった。
実施例2
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、平均炭素数17.6の混合ジオレイルアミン[ライオン(株)、アーミン(商品名)2O]101.6g(0.2モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.556g/cm3、低密度化率8.9%であり、サイズ度は17であった。
実施例3
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、平均炭素数17.2の混合ジ硬化牛脂アミン[ライオン(株)、アーミン(商品名)2HT]100.1g(0.2モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.555g/cm3、低密度化率9.0%であり、サイズ度は57であった。
実施例4
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、平均炭素数12.7の混合ヤシアミン[ライオン(株)、アーミン(商品名)2C]74.7g(0.2モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.566g/cm3、低密度化率7.2%であり、サイズ度は23であった。
【0013】
実施例5
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン73.1g(0.14モル)と平均炭素数12.7の混合ヤシアミン22.4g(0.06モル)からなる平均炭素数15.9の混合アミンを使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.558g/cm3、低密度化率8.5%であり、サイズ度は52であった。
実施例6
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン80.1g(0.16モル)と50質量%ジメチルアミン水溶液3.6g(0.04モル)からなる混合アミンを使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.563g/cm3、低密度化率7.7%であり、サイズ度は20であった。
実施例7
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、メチルステアリルアミン56.7g(0.2モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.568g/cm3、低密度化率6.9%であり、サイズ度は27であった。
実施例8
使用するエピクロロヒドリンの量を27.8g(0.3モル)とした以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.559g/cm3、低密度化率8.4%であり、サイズ度は49であった。
実施例9
使用するエピクロロヒドリンの量を37.0g(0.4モル)とした以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.562g/cm3、低密度化率7.9%であり、サイズ度は27であった。
【0014】
実施例10
使用するエピクロロヒドリンの量を13.0g(0.14モル)とした以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.556g/cm3、低密度化率8.9%であり、サイズ度は58であった。
実施例11
使用するエピクロロヒドリンの量を9.3g(0.1モル)とした以外は、実施例1と同様にしてアミノ化合物を得た。次に、10質量%となるように蟻酸4.6g(0.1モル)を含む水を添加して、乳化液状の低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.556g/cm3、低密度化率8.9%であり、サイズ度は36であった。
実施例12
フラスコに、エピクロロヒドリン18.5g(0.4モル)を仕込み、溶融させたアルキル基の平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1g(0.2モル)を70℃で4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに4時間反応した。反応終了後、減圧にして6kPaの圧力下、50℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去してアミノ化合物を得た。次に、10質量%となるように水を添加して、乳化液状の低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.561g/cm3、低密度化率8.0%であり、サイズ度は61であった。
実施例13
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン80.1g(0.16モル)と30質量%トリメチルアミン水溶液7.9g(0.04モル)からなる混合アミンを使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.562g/cm3、低密度化率7.9%であり、サイズ度は26であった。
実施例14
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン80.1g(0.16モル)とラウリルジメチルアミン[花王(株)、ファーミン (登録商標)DM0898]8.5g(0.04モル)からなる混合アミンを使用した以外は、実施例1と同様にしてアミノ化合物を得た。次に、10質量%となるように蟻酸3.7g(0.08モル)を含む水を添加して、乳化液状の低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.557g/cm3、低密度化率8.7%であり、サイズ度は57であった。
【0015】
比較例2
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、ジデシルアミン59.5g(0.2モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.571g/cm3、低密度化率6.4%であり、サイズ度は2であった。
比較例3
平均炭素数17.2の混合ジステアリルアミン100.1gの代わりに、ラウリルジメチルアミン42.7g(0.2モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして低密度化剤を得た。
得られた低密度化剤を用い、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.573g/cm3、低密度化率6.1%であり、サイズ度は0であった。
比較例4
低密度化剤として、ステアリルアルコールのエチレンオキシド5モル付加物を、水により10質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.588g/cm3、低密度化率3.6%であり、サイズ度は0であった。
比較例5
低密度化剤として、ペンタエリスリトールトリステアレート/ラウリルアルコールのエチレンオキシド10モル・プロピレンオキシド7.5モルランダム付加物(質量比90/10)を、水により10質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.576g/cm3、低密度化率5.6%であり、サイズ度は0であった。
比較例6
低密度化剤として、エチレンジアミンジオレイルアミド酢酸塩/ラウリルアルコールのエチレンオキシド10モル・プロピレンオキシド7.5モルランダム付加物(質量比90/10)を、水により10質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行って、低密度紙を得た。得られた低密度紙の密度は0.575g/cm3、低密度化率5.7%であり、サイズ度は0であった。
実施例1〜14及び比較例2〜3で用いた低密度化剤の合成に用いたアミン及びエピハロヒドリンの種類と量を第1表に、比較例1及び比較例4〜6で用いた低密度化剤を第2表に、実施例1〜14及び比較例1〜6で得られた低密度紙の密度、低密度化率及びサイズ度を第3表に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
第3表に見られるように、本発明の低密度化剤を用いて製造した実施例1〜14の低密度紙は、密度が低く、低密度化性が良好であり、サイズ度が高い。これに対して、アルキル基の炭素数が10である2級アミンとエピクロロヒドリンとの反応物を用いて製造した比較例2の低密度紙及び3級アミンとエピクロロヒドリンとの反応物を用いて製造した比較例3の低密度紙では、低密度化効果は多少得られるものの、サイズ度が全く得られていない。また、従来の低密度化剤であるステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物を用いた比較例4の低密度紙、従来の低密度化剤であるペンタエリスリトールトリステアレートと非イオン界面活性剤を併用した比較例5の低密度紙、従来の低密度化剤であるエチレンジアミンジオレイルアミド酢酸塩と非イオン界面活性剤を併用した比較例6の低密度紙では、いずれも低密度化効果は多少得られるものの、サイズ度が全く得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の低密度化剤及び低密度紙の製造方法によれば、低密度性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を容易に製造することができ、パルプ原料の使用量を低減し、地球環境問題に寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する2級アミンと、エピハロヒドリンとを反応して得られるアミノ化合物を含有することを特徴とする紙用低密度化剤。
【請求項2】
2級アミンが、平均炭素数12〜18のアルキル基を2個有する請求項1に記載の紙用低密度化剤。
【請求項3】
紙の製造に使用するパルプに、請求項1又は請求項2に記載の紙用低密度化剤を添加することを特徴とする低密度紙の製造方法。

【公開番号】特開2008−127685(P2008−127685A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309972(P2006−309972)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】