説明

紙粉除去シート

【課題】自己粘着性を有する紙粉除去シートであって、シートに付着した紙粉は水洗等により容易に剥離でき、しかも自己粘着性を有する素材製であるため繰り返しかつ半恒久的に使用することができる上記シートを提供する。
【解決手段】シリコン樹脂90〜95重量%、二酸化ケイ素1〜5重量%、カーボン3〜7重量%を含む樹脂組成物を成型加工してなる、自己粘着性を有する紙粉除去シート。シリコン樹脂は下記一般式で表される。


(R1〜R3は炭素数1〜5のアルキル基、R4は末端にビニル基を有する炭素数0〜10のアルキレン基、mおよびnはm:n=4:1〜1:4を充足する正の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己粘着性を有する紙粉除去シートに関し、例えば型抜き前の段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙等に付着している紙粉を除去するのに適した自己粘着性を有する該シートに関する。
特に、このシートに付着した紙粉は水洗等により容易に剥離でき、しかも自己粘着性を有する素材製であるため、繰り返しかつ半恒久的に使用することができる上記シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、段ボール紙や、袋物あるいは箱物用の紙には、その製造過程や運搬過程において発生する紙粉が付着している。
また、これら段ボール紙や、袋物あるいは箱物用の紙は、型抜き工程にて、所定の形状や寸法に型抜きされ、組み立て、あるいは折り畳まれ、糊付けなどされて、所望の形状(箱や袋)に加工される。
この型抜き工程に移行される前に、上記用紙の表面には、内容物の表示や内容物のメーカーの表示のために、あるいは装飾などを目的として、段ボールの型抜きや各種の印刷が施される。
【0003】
ところで、上記した紙粉を付着させたままで、これらの紙の表面に印刷を施すと、紙粉が大量付着している場合は、印刷が不能となり、少量付着している場合は、印刷は可能であるが、印刷後に紙粉が脱落すると、紙粉の跡が印刷抜けとして残り、製品とならなかったり、製品品質を低下させる要因となる。
【0004】
このような事態を防ぐために、従来は、上記のような紙粉を粘着シートに粘着させて除去する手法が採られている。
この紙粉除去用の粘着シートとしては、これまで、一般の合成ゴム(例えば、「エチレンプロピレンゴム」等)を基材シートとし、この基材シートの表面に粘着層を設けたものが知られている。
【0005】
この粘着シートは、例えば、上記の段ボール紙あるいは紙袋や紙箱用の紙の表面に各種の印刷を施すのに先立ち、これらの紙の表面にある程度の圧を掛けて接触させ、該紙の表面に付着している紙粉を粘着層側に移行させることにより、紙粉除去を行うものである。
このとき、粘着シートの使用を簡便にするために、回転するロールの表面に粘着シートを巻き付け、該ロールを紙粉除去対象の上記段ボール紙や紙袋・紙箱用紙の表面に接触させるのが通例である。
また、粘着シートの粘着層に移行した紙粉は、ぬるま湯あるいは洗剤を含浸させたスポンジやタオルで、粘着層の表面をふき取ることにより、剥離することができるとされている。
【0006】
上記のように、従来の粘着シートは、合成ゴムからなる基材シートの表面に粘着層を設けたものであるため、紙粉の除去性能は、粘着層の粘着性能に依存し、該粘着層の粘着性能が劣化すれば、紙粉除去性能も劣化する。
この粘着層の寿命は、一般に、合成ゴム製の基材シートの寿命に比べて短く、従って、基材シートには問題がなくても、粘着層の粘着性能が経時劣化して、紙粉除去性能が低下したり、また作業環境下の温度や湿度の変化により、基材シートには何ら異常がなくても、粘着層の粘着性能が変化するなどの問題がある。
【0007】
これらの問題を解消するために、粘着層の成分組成を変更することも考えられるが、粘着層は、基材シートの表面に設けられるものであるため、基材シートすなわち合成ゴムとの、いわば親和性あるいは馴染み性と言った特性をも必須とし、この特性と上記の粘着性能の双方を充足する成分組成を開発するには、かなりの困難性を伴う。
このようなことから、上記のような紙粉除去のための新しい手法の開発要求が高まりつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の要求に応えるべくなされたものであって、例えば、印刷工程、さらには型抜き前の段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙等に付着している紙粉を、上記の従来の粘着シートと同様な使用態様により除去することができるばかりでなく、紙粉除去性能の寿命がシート自体の寿命と同じであり、従って移行させた紙粉の洗浄除去を行うことにより、繰り返しかつ半恒久的使用が可能である自己粘着性を有する紙粉除去シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、先ず、
(1)粘着層を設けるという従来の技術思想を脱却するために、シート自体を粘着性を有するものとすることができ、
(2)しかも、この自己粘着性を有するシートを、使用を簡便にするために、また従来の設備などをそのまま利用して紙粉除去を行うために、前記した従来の紙粉除去シートと同様の形態・使用態様とすることができる
素材を開発した。
次いで、この素材を基にさらなる検討を重ねた結果、
(3)容易にシート化できることはもちろん、
(4)移行させた紙粉を水などによる洗浄で容易に洗浄除去することができるため繰り返し、かつ半恒久的に使用することができることに加えて、
(5)例えば、回転ロール取り付け用フィルム(いわゆる「キャリアシート」)などに貼着すれば、このキャリアシート毎の取り付け、取外しが自在となり、「着脱自在に」使用することができる
紙粉除去用の自己粘着性シートを提供できるとの知見を得た。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、シリコン樹脂90〜95重量%、二酸化ケイ素1〜5重量%、カーボン3〜7重量%を含む樹脂組成物を成型加工してなる、自己粘着性を有することを特徴とする紙粉除去シートを要旨とする。
上記のシリコン樹脂は、下記一般式で表され、分子量が20万〜280万g/molであり、
上記の二酸化ケイ素は、平均粒子径10〜40nmの概略球形状であり、
上記のカーボンは、平均粒子径30〜50nmの概略球形状
であることが好ましい。
なお、本発明において、上記の分子量を充足するシリコン樹脂は、実際に使用されるシリコン樹脂にこの分子量範囲を外れるシリコンポリマーが副成分として少量含まれても、その重量平均分子量がこの範囲に入るものであってよい。
【0011】
【化1】

(式中、R1、R2、R3は炭素数1〜5のアルキル基で、これらは同じであっても、異なっていてもよく、R4は末端にビニル基を有する炭素数0〜10のアルキレン基、mおよびnはm:n=4:1〜1:4を充足する正の整数である。)
【0012】
また、本発明の紙粉除去シートは、JIS−K6253に規定される硬度が15〜25Hs、JIS−K6251に規定される切断時伸びが700〜900%、JIS−K6262に規定される圧縮永久歪が15〜25、体積固有抵抗値が0.1〜1.0Ω・m、自己粘着力が1〜2.5NTであることが好ましい。
さらに、本発明の紙粉除去シートは、回転するロールに取り付けられて使用することができ、このとき、回転ロールに一般的に設けられているシート取り付け溝に適合する取り合い部が両端に設けられた回転ロール取り付け用フィルムに、着脱自在に貼着されて使用することが、本発明の紙粉除去シートの使用を簡便にする上で好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の紙粉除去シートによれば、このシート自体が自己粘着性を有するため、またシートに粘着した紙粉は水などによる洗浄で容易に洗浄除去できるため、繰り返し使用することができ、しかもシートの自己粘着性が存続する限り半恒久的に使用することができる。
しかも、本発明の紙粉除去シートによれば、優れた自己粘着性を有するため、一度付着した紙粉を保持し続けると同時に、新たな紙粉を付着させることができ、この結果として、紙粉の介在による印刷品質の低下がなく、良好な印刷品質を保持することができる。
また、本発明の紙粉除去シートは、従来の紙粉除去シートと同様の使用ができるため、既存の設備をそのまま使用して、段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙の紙粉除去ができる。
さらに、本発明の紙粉除去シートは、適度な導電性を有しているため、これらの用紙に帯電している静電気を除去することもできる。
加えて、本発明の紙粉除去シートは、該シートの周囲に飛散し、浮遊している紙粉をも電気的に吸い寄せ、キャッチすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における紙粉除去用自己粘着性シートの素材は、シリコン樹脂90〜95重量%、二酸化ケイ素1〜5重量%、カーボン3〜7重量%を含むものである。
このうち、シリコン樹脂は、上記した一般式で表され、好ましくは、R1、R2、R3が、メチル基、R4が、エチレン基であり、nとmは当該樹脂の分子量が20万〜280万g/molとなる数であって、好ましくは40万〜140万g/molである。mとnの数の比はm:n=4:1〜1:4が好ましく、更に好ましくはm:n=2:1〜1:3であり、おおよそm:n=1:2であるシリコン樹脂が特に好ましい。シリコン樹脂はブロック共重合体、ランダム共重合体、その他いずれの形態を有する共重合体であってよい。シリコン樹脂は市販品を容易に入手することが可能であり、本発明では市販品を好適に使用することができる。
シリコン樹脂は、分子量が20万〜280万の範囲内のものは、特に容易にシート化できることはもちろん、適度な自己粘着性を発現して、段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙などに付着している紙粉を、これらの紙にある程度の圧を掛けて、あるいは圧を掛けずに、接触させることで、容易に粘着移行させることができ、移行した紙粉は水などによる洗浄で容易に洗浄除去することができ、しかもこの自己粘着性はシリコン樹脂の寿命と共にあるため、紙粉除去作用は紙粉の洗浄除去により、繰り返しかつ半恒久的に持続することができる。
【0015】
また、上記の二酸化ケイ素は、一般にシリカ、シリカゲルまたはホワイトカーボン等、様々に呼称されることがある珪素と酸素よりなるいわゆる非晶質シリカであって、多孔質であってもよい。また、粒子表面は、無処理のほか、特に親水性・疎水性のいずれの処理がなされていてもよい。更に、電子顕微鏡で観察・計測した各サンプル抽出粒子の平均粒子径が10〜40nmの概略球形状が好ましく、この程度の大きさであれば取り扱いが容易であるばかりか、大きさに加えて形状が概略球形であるため、上記したシリコン樹脂への均一混合を極めて良好に行うことができる。
この二酸化ケイ素微粒子は、主に本発明の紙粉除去シートに付着した紙粉を水などによる洗浄で容易に除去できる性質を付与するために、また副次的には、シート化を容易にしたり、あるいはフィラーとして配合するものである。
【0016】
さらに、上記のカーボンは、一般にカーボンブラック等、様々に呼称されることがある無定形炭素であって、例えば石炭クレオソート、アセチレン等の炭化水素を熱分解して製造されるものであってよい。電子顕微鏡で観察・計測した各サンプル抽出粒子の平均粒子径が30〜50nmの概略球形状が好ましく、上記の酸化ケイ素と同様に、この程度の大きさであれば取り扱いが容易であり、この大きさに加えて形状が概略球形であるため、二酸化ケイ素と共に、上記したシリコン樹脂への均一混合を極めて良好に行うことができる。
このカーボン微粒子は、主に本発明の紙粉除去シートを黒色に着色するためのに配合するものであって、本発明のシートに移行した紙粉を肉眼で容易に確認できるようにするものである。
また、副次的には、本発明のシートに適度の導電性を付与し、紙粉除去対象の段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙表面に帯電している静電気を除去したり、あるいは本発明のシートの周囲に飛散し浮遊している紙粉を電気的に吸い寄せ、粘着除去するなどのために配合するものである。
【0017】
上記のシリコン樹脂と二酸化ケイ素粒子とカーボン粒子の配合量は、シリコン樹脂が90〜95重量%、二酸化ケイ素粒子が1〜5重量%、カーボン粒子が3〜7重量%とする。
二酸化ケイ素粒子が1重量%未満では、二酸化ケイ素微粒子を配合する技術的意義が発現せず、よって上記の役割を果たすことができず、5重量%より多くても、この効果は飽和するのみならず、シリコン樹脂の自己粘着性能を低下させたり、二酸化ケイ素微粒子がシリコン樹脂に十分に保持されなくなって該粒子の剥落が懸念される。
カーボン粒子が3重量%未満では、同様に、カーボン微粒子を配合する技術的意義が発現せず、よって上記の役割、とりわけ適度な導電性付与作用が不十分となり、特に周囲に飛散し浮遊している紙粉の電気的吸い寄せ作用を果たすことができない。逆に、7重量%より多くても、この効果は飽和し、また二酸化ケイ素粒子が多すぎる場合と同様に、シリコン樹脂の自己粘着性能を低下させたり、カーボン粒子がシリコン樹脂に十分に保持されなくなって該粒子の剥落が懸念される。
【0018】
本発明においては、上記の3つの成分以外に、本発明の目的を損なわず、また効果を助長する範囲内で、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、防菌・防かび剤、セラミック、金,銀,銅,その他の金属粉末、難燃剤、香料、粘着材などの成分を、適宜の量で配合することもできる。
【0019】
以上の成分は、適宜のミキサーやニーダーなどにより混合され、混合順序は特に制限されず、全成分を同時に混合してもよいし、先ずシリコン樹脂、次いで二酸化ケイ素粒子、続いてカーボン粒子の順で混合してもよい。あるいは、二酸化ケイ素粒子とカーボン粒子を適宜の量のシリコン樹脂に混合し十分混練していわゆるマスターバッチを作製しておき、このマスターバッチをシリコン樹脂に上記配合量となるように混合してもよい。
上記3成分以外の成分を配合する場合には、同時でも、最後でもよいし、あるいは上記のマスターバッチか、逆にシリコン樹脂側に、予め混合しておいてもよい。
なお、混合・混練時の温度は、特に制限しないが、通常は90〜110℃程度が好ましい。
本発明で使用されるシリコン樹脂は反応性ビニル基を有しており、次のシート化に際して適度に架橋されるのが好ましく、加硫剤が当該混合において添加されてよい。使用可能な加硫剤としては当該技術分野で一般に使用され得る加硫剤であってよく、有機過酸化物が好ましい。当該混練温度および次のシート成型温度との関係で、加硫剤が選定され、上記温度で混練し、170〜180℃で成型する場合は、例えば、パーオキサイドタイプあるいは付加タイプ等が好適に使用される。
【0020】
上記のようにして調製される本発明におけるシリコン樹脂素材は、次にシート化される。シート化の手法は特に制限されないが、一般には、カレンダー成形法やプレス成形法が採用される。
これらの成形法によりシート化するに際して、鏡面処理されたカレンダーロールや金型を使用し、少なくとも紙粉をキャッチする側の面が鏡面になるようにすることが好ましい。鏡面にすることにより、紙粉キャッチの際に、段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙がある程度の圧が掛けられて本発明のシートに接触しても、これらの紙面に傷が付くことはない。
なお、上記成型法による成形時の温度や圧力も、特に制限はないが、通常、温度は170〜180℃程度が好ましく、圧力は所望のシート厚が得られる程度でよく、カレンダー成形法では各カレンダーロール間の隙間寸法をこの厚さに合うように適宜調整し、プレス成形法でもプレス型の押圧をこの厚さとなるよう適宜調整すればよい。この成型に際して、シリコン樹脂を架橋させる場合には、成型と同時に架橋反応もが進行することとなる。
【0021】
上記のようにしてシート化される本発明の紙粉除去シートは、JIS−K6253に規定される硬度が15〜25Hs、JIS−K6251に規定される切断時伸びが700〜900%、JIS−K6262に規定される圧縮永久歪が15〜25、体積固有抵抗値が0.1〜1.0Ω・m、自己粘着力が1.0〜2.5NTであることが好ましい。
【0022】
本発明の紙粉除去シートは、硬度が高過ぎれば。紙粉キャッチの際に、段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙の表面に傷を付ける可能性があるばかりでなく、これらの用紙への接触が不十分となる可能性もあり、十分な紙粉キャッチを行うことができなくなる。逆に、硬度が低過ぎると、取り扱い性が低下し、特に、本発明の紙粉除去シートを、従来の紙粉除去シートと同様に、回転するロールへ取り付けて使用する際には、取り付け作業を困難にすることはもとより、取り付けた後にもシートが垂れ下がり、用紙への接触が不十分となって、十分な紙粉キャッチを行うことができなくなるなどの不具合を招くことがある。
よって、本発明では、JIS−K6253に規定される硬度で15〜25Hsとすることが適している。
【0023】
また、本発明の紙粉除去シートは、上記のように回転するロールへ取り付けて使用する際に、該シートに外力が加わると、該シートを破損する惧れがあり、これを防止して恒久的に使用可能とするためには、切断時伸びが大きいことが好ましく、本発明では、JIS−K6251に規定される切断時伸びで700〜900%とすることが適している。
この程度の切断時伸びを有していれば、前述した従来の紙粉除去シートと同様に回転ロールに巻き付けて使用したり、該ロールから取り外して洗浄するなどの通常の使用態様において破損することはなく、粘着した紙粉を水洗除去するなどにより、繰り返し。かつ恒久的に使用することができる。
【0024】
さらに、本発明の紙粉除去シートは、圧縮永久歪が小さ過ぎると、ある程度の圧を加えて段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙の紙粉をキャッチする際に、これらの紙の表面に傷を付ける可能性があり、逆に大き過ぎると、紙粉キャッチ後にもこの歪が残り、以後の紙粉キャッチを不十分なものとする。
よって、本発明では、JIS−K6262に規定される圧縮永久歪が15〜25とすることが適している。
【0025】
本発明の紙粉除去シートは、段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙の紙粉キャッチの際に、これらの紙に帯電している静電気をも除去することが好ましく、このために、体積固有抵抗値が0.1〜1.0Ω・mであることが好ましい。
【0026】
そして、本発明の紙粉除去シートは、自己粘着力が1.0〜2.5NTであることが好ましい。この自己粘着力は、径10mmのプローブを、押し付け圧力0.8NTで、本発明の紙粉除去シートに押し付け、該プローブを引き上げ速度10mm/分で引き上げるときに、引き上げに要する力である。
この程度の粘着力があれば、本発明の紙粉除去シートを、段ボール紙や、袋物あるいは箱物用紙の表面と接触させるのみで、該表面上に存在する紙粉を容易に本発明の紙粉除去シート側に移行させ該シート上に固着させることができる。
【0027】
上記の特性を有する本発明の紙粉除去シートは、前述した従来の紙粉除去シートと同様に、回転するロールに取り付けられて使用することができる。
例えば、図1に示すように、矢印方向に回転するロール10に、本例では、本発明の紙粉除去シート1を巻付け、該シート1を回転ロール10と共に回転させる。
この回転するロール10の上方、下方、側方の適宜箇所、本例で下方に、紙粉除去対象の段ボール紙や、袋物あるいは箱物などの用紙(以下、紙粉除去対象紙と記すこともある)20を、適度な圧が加わるように接触させて通過させる。
なお、この圧力は、特には加える必要はなく、本発明の紙粉除去シートが上記程度の自己粘着力を有すれば、紙粉除去対象紙20と接触させるのみでも、十分に紙粉キャッチを行うことができる。
これにより、紙粉除去対象紙20の表面に付着している紙粉が、本発明の紙粉除去シート1でキャッチされ、粘着除去される。
【0028】
このとき、紙粉除去対象紙20に帯電している静電気も、カーボン粒子を含み、上記の体積固有抵抗値を有する本発明の紙粉除去シート1側に移行し、該カーボン粒子による導電性により除去される。
さらには、紙粉除去対象紙20や回転ロール10、あるいは本発明の紙粉除去シート1の周囲に飛散し浮遊している紙粉も、上記の体積固有抵抗値を有する本発明の紙粉除去シートに電気的に吸い寄せられ、粘着除去される。この事実は、本発明の紙粉除去シート1の幅より小さい幅寸法を有する紙粉除去対象紙20の紙粉除去作業中に、該紙粉除去対象紙20に接触しない部分の紙粉除去シート1にも、多くの紙粉が粘着していることが観察されることから、確認されている。
【0029】
また、図2に示すように、本発明の紙粉除去シート1は、例えば、図1に示す回転ロール10などに一般的に設けられているシート取り付け溝(図示省略)に適合する取り合い部31が両端に設けられた回転ロール取り付け用フィルム30に、着脱自在に貼着しておいてもよい。
この態様においては、図1に示す回転ロール10の上記シート取付け溝に、取り合い部31を装着することにより、本発明の紙粉除去シート1を回転ロール10に取付けることができる。
また、図示はしないが、図2に示すような取り合い部31を、本発明の紙粉除去シート1に直接設けることもでき、このようにすることで、上記のフィルム30の使用を省略することもできる。
【実施例】
【0030】
〔実施例1〕
一般式で表されるシリコン樹脂(R1、R2、R3がメチル基、R4がエチレン基、m:n≒1:2、GPCで測定した重量平均分子量50万g/mol)92重量%、二酸化ケイ素(平均粒子径15〜30nmの概略球形状)3重量%、カーボン(平均粒子径40nmの概略球形状)5重量%、加硫剤(信越化学株式会社の加硫材C−8A)0.4重量%を、ニーダーを用い、シリコン樹脂→加硫剤→二酸化ケイ素→カーボンの順で、100℃で混合・混練し、175℃でプレス成形して、本発明の紙粉除去シートを得た。
【0031】
この紙粉除去シートについて、硬度(JIS−K6253)、切断時伸び(JIS−K6251)、圧縮永久歪(JIS−K6262)、体積固有抵抗値、自己粘着力を測定した。
この結果を表1にまとめて示す。
【0032】
〔比較例1〜2〕
比較のために、前述した従来一般に市販されている「エチレンプロピレンゴムを基材シートとし、その表面に粘着層を設けた紙粉除去マット」(比較例1のシート)と、紙粉除去を目的とせず主に電子機器部品用として市販されている導電性シリコンシート(タイガースポリマー社製商品名“ESRシート”)(比較例2のシート)についても、上記の同様の特性を測定した。
これらの結果も表1に合わせて示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から明らかなように、本発明の実施例1によれば、各種特性において、比較例1,2のシートに比べて、紙粉除去用シートとして極めて良好な値を示している。
【0035】
上記実施例1の紙粉除去シートを、図2に示す態様の回転ロール取り付け用フィルム(PET製)30に貼着し、該フィルム30の両端に設けられている取り合い部(塩ビ製)31で、図1に示す回転ロール10の、該フィルム30取り付け用溝に嵌合した。
この回転ロール10を200回/分の速度で回転させ、図1のように、該回転ロール10の下方を通過する段ボール紙20の紙粉キャッチを行ったところ、該段ボール紙20上の紙粉を殆どキャッチすることができた。
そして、このまま10000枚程度まで対刷性(紙粉キャッチ力)が落ちることなく該段ボール紙20上の紙粉を殆どキャッチすることができ、その後その表面を水で洗い流し吹き上げる(表面に付着している水分をウェス等でふき取る)ことにより素材自身が持つ自己粘着性が復活し、購入時と変わらずほとんど新品と同様に紙粉を付着することが確認できた。
【0036】
また、段ボール紙20と接触していない部分の上記回転ロール10の本発明の紙粉除去シート1にも、大量の紙粉がキャッチされていた。
このことから、本発明の紙粉除去シート1によれば、回転ロール10の周囲に飛散し浮遊している紙粉をもキャッチできることが判る。
【0037】
さらに、上記回転ロール10通過後の段ボール紙20の静電気の量を確認するために、上記回転ロール10通過前の段ボール紙20から集めた紙粉を、通過後の段ボール紙20の表面上に散布し、直ちに該段ボール紙20を反転させたところ、散布した紙粉の大部分が落下し、静電気が殆どないことが判った。
【0038】
比較のために、比較例1および2のシートを、図1、図2と同様の態様で使用し、上記と同様の紙粉除去実験を行ったところ、5000枚程度まで対刷性が落ちることなく該ダンボール紙20上の紙粉をキャッチすることができたがその後性能低下が見られ、特に比較例1のシートではその後その表面を水で洗い流し吹き上げるもののシート表面の粘着力が元通りにまで復活はしなかった。
⇒同上です。
また、上記と同様の静電気量の確認試験を行い、段ボール紙20上の紙粉は除去できたが、この紙粉除去後の段ボール紙20の表面上に、上記と同様にして紙粉を散布し、直ちに反転させたが、散布した紙粉は大部分が段ボール紙20上に残っており、従来の紙粉除去シートでは、紙粉のキャッチはできても、静電気までは除去できないことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の紙粉除去シートの使用態様の一例を説明するための図である。
【図2】図1に示す態様で本発明の紙粉除去シートを使用する際に用いる取り付け用フィルムの一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
1 本発明の紙粉除去シート
10 本発明の紙粉除去シートを取り付けた回転ロール
20 紙粉除去対象紙
30 回転ロール取り付け用フィルム
31 回転ロールへの取り合い部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン樹脂90〜95重量%、二酸化ケイ素1〜5重量%、カーボン3〜7重量%を含む樹脂組成物を成型加工してなる、自己粘着性を有することを特徴とする紙粉除去シート。
【請求項2】
シリコン樹脂が、下記一般式で表され、分子量が20万〜280万g/mol、
二酸化ケイ素が、平均粒子径10〜40nmの概略球形状、
カーボンが、平均粒子径30〜50nmの概略球形状
であることを特徴とする請求項1に記載の紙粉除去シート。
【化1】

(式中、R1、R2、R3は炭素数1〜5のアルキル基で、これらは同じであっても、異なっていてもよく、R4は末端にビニル基を有する炭素数0〜10のアルキレン基、mおよびnはm:n=4:1〜1:4を充足する正の整数である。)
【請求項3】
JIS−K6253に規定される硬度が15〜25Hs、JIS−K6251に規定される切断時伸びが700〜900%、JIS−K6262に規定される圧縮永久歪が15〜25、体積固有抵抗値が0.1〜1.0Ω・m、自己粘着力が1.0〜2.5NTであることを特徴とする請求項1または2に記載の紙粉除去シート。
【請求項4】
回転するロールに取り付けられて使用される請求項1〜3のいずれかに記載の紙粉除去シート。
【請求項5】
回転ロールのシート取り付け溝に適合する取り合い部が両端に設けられた回転ロール取り付け用フィルムに貼着されて、着脱自在に使用される請求項4に記載の紙粉除去シート

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−110304(P2008−110304A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294920(P2006−294920)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(506136243)ダイソーケミカル株式会社 (5)
【出願人】(506365223)株式会社池田製作所 (1)
【出願人】(592051442)大東ポリマー工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】