説明

紙葉類処理方法と紙葉類処理システム

【課題】1枚の紙葉類に対して複数のセンサからのセンサデータを用いて、1つのCPUが処理を実行するシステムにおいて、処理プログラムが内蔵メモリの要領を超える場合であっても、処理効率の低下を抑制することができる。
【解決手段】1枚の紙葉類に対して複数のセンサからのセンサデータを用いて、1つのCPUが処理を実行するシステムにおいて、高速CPUが処理ごとに用いる処理プログラムを外部メモリに備え、各処理の実行時に、低速CPUが外部メモリから高速CPU内の内蔵メモリにローディングするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類が1枚ずつ搬送路にそって搬送される際に、1枚の紙葉類に対して複数のセンサにより取込んだセンサデータを用いて、CPUが処理を実行するシステムにおける紙葉類処理方法と紙葉類処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙葉類の搬送路の搬送方向に沿って設けられている複数のセンサからのデータを処理する際、各センサごとにCPUを設けて処理を行うか、1つのCPUで処理を実行するシステムが開発されている。(特許文献1)
しかし、各センサごとにCPUを設けた場合、コストがかかるという問題がある。また、1つのCPUで処理を実行する場合、1つのCPUで種種の処理を行うために、CPUの外部に大容量のメモリを設け、処理プログラムに使用した場合、処理時間がかかり、CPUの性能を十分に引き出すことができないという欠点がある。
【特許文献1】特開2001−216551(図2、図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、1枚の紙葉類に対して複数のセンサからのセンサデータを用いて、1つのCPUが処理を実行するシステムにおいて、処理プログラムが内蔵メモリの要領を超える場合であっても、処理効率の低下を抑制することができる紙葉類処理方法と紙葉類処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、紙葉類を1枚ずつ搬送路によって搬送するステップと、このステップにより1枚の紙葉類が搬送されている際に、上記搬送路上に沿って設けられる複数のセンサによって上記紙葉類からの情報を順に取込むステップと、このステップにより各センサによって上記紙葉類からの情報を取込む前に、その取込みデータに対する処理プログラムを選択的にロードするステップと、このロードした処理プログラムの処理を上記取込まれる上記紙葉類からの情報に基づいて実行するステップとを有する。
【0005】
この発明は、紙葉類を1枚ずつ搬送路によって搬送する搬送手段と、この搬送手段により1枚の紙葉類が搬送されている際に、上記搬送路上に沿って設けられる複数のセンサによって上記紙葉類からの情報を順に取込む取込手段と、この取込手段により各センサによって上記紙葉類からの情報を取込む前に、あらかじめに記憶されている処理プログラムを、その取込みデータに対する処理プログラムを、選択的に外部の記憶媒体から内部の記憶媒体にロードするロード手段と、このロードした処理プログラムの処理を上記取込まれる上記紙葉類からの情報に基づいて実行する実行手段とを有する。
【0006】
この発明は、紙葉類を1枚ずつ搬送路によって搬送する搬送手段と、この搬送手段により1枚の紙葉類が搬送されている際に、上記搬送路上に沿って設けられる複数のセンサによって上記紙葉類からの情報を順に取込む取込手段と、内蔵するRAMに対して処理プログラムを選択的にロード可能なCPUと、このCPUの外部に設けられ、前記各センサからの情報を処理する処理プログラムが各センサ毎に分割して記憶されている外部記憶手段と、上記取込手段による各センサからの情報を取込む前に、そのセンサに対応する処理プログラムを内部RAMに対してロードするロード手段と、このロードした処理プログラムの処理を上記取込まれる上記紙葉類からの情報に基づいて実行する実行手段とを有する。
【発明の効果】
【0007】
上記した手段により、1枚の紙葉類に対して複数のセンサからのセンサデータを用いて、1つのCPUが処理を実行するシステムにおいて、処理プログラムが内蔵メモリの要領を超える場合であっても、処理効率の低下を抑制することができる紙葉類処理方法と紙葉類処理システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、この発明に係わる紙葉類の一例として紙幣の処理装置1を示し、図2は、図1の処理装置1の制御回路の構成を示すものである。
【0010】
図1に示すように、処理装置1は、1枚ずつ搬送される紙幣の金種、真偽を判断するものであり、紙幣を所定の取出位置へ順次供給する供給部2を備えている。紙幣の取出位置には、供給部2にて供給された紙幣を搬送路3に沿って1枚づつ取出す取出部4が配設されている。
【0011】
また、処理装置1には搬送路3に沿って可視光検知器(センサ1)11、紫外線検知器(センサ2)11、磁気検知器(センサ3)11が配設されている。
【0012】
可視光検知器(センサ1)11は、透過光により得られる紙幣の形状やサイズにより、券種を判定するためのセンサデータを出力するものである。また、反射光により得られるパターンにより、券種を判定するためのセンサデータを出力するものである。
【0013】
紫外線検知器(センサ2)11は、紫外線の検知位置あるいは検知部分により、真偽を判定するためのセンサデータを出力するものである。
【0014】
磁気検知器(センサ3)11は、磁気の検知位置あるいは検知部分により、券種を判定するためのセンサデータを出力するものである。
【0015】
上記可視光検知器(センサ1)11、紫外線検知器(センサ2)11、磁気検知器(センサ3)には、それぞれA/D変換部12、12、12と選択回路13を介して高速CPU14が接続されている。選択回路13は紙幣の搬送位置に基づいて、すなわち搬送制御部18からの信号により、可動端子を固定端子a、b、c、…に切り換えるものであり、上記可視光検知器(センサ1)11に紙幣が対向している際、可動端子が固定端子a側に設定され、紫外線検知器(センサ2)11に紙幣が対向している際、可動端子が固定端子b側に設定され、磁気検知器(センサ3)に紙幣が対向している際、可動端子が固定端子c側に設定される。
【0016】
搬送制御部18は、図示しないセンサにより搬送路3上を搬送される紙幣の搬送位置を検出し、この位置に基づく切換え信号を出力するものである。
【0017】
高速CPU14には、低速CPU15、外部ROM16、外部RAM17が接続されている。
【0018】
高速CPU14は、制御用のCPUコア21、制御プログラム等のデータ記憶用の内蔵RAM22、DMA23により構成されている。内蔵RAM22は、図2に示すように、制御プログラム記憶領域22a、処理プログラム記憶領域22b、処理結果記憶領域22cにより構成されている。処理プログラム記憶領域22bにおいて、開始アドレスを固定し、センサデータ位置を固定し、各処理プログラムが登録される。処理結果記憶領域22cには各処理プログラムごとの処理結果が記憶される。
【0019】
低速CPU15は、高速CPU14からの処理プログラム書き換え要求に基づいて、外部ROM16に記憶されている各センサに対応した処理プログラムを読出し、高速CPU14に出力するものである。
【0020】
外部ROM16は、たとえば、第1のエリア16aに処理1として透過光検知処理のプログラムデータが登録され、第2のエリア16bに処理2として紫外線検知処理のプログラムデータが登録され、第3のエリア16cに処理3として磁気検知処理のプログラムデータが登録されている。
【0021】
外部RAM17は、選択回路13からのセンサデータを登録し、各処理の実行時に読み出されるものである。
【0022】
次に、上記のような構成の処理装置について、図3に示すフローチャートと、図4に示す説明図を参照しつつ説明する。
【0023】
たとえば今、処理を行う紙幣を供給部2にセットし、図示しないスタートキーを投入する。これにより、CPU14のCPUコア21は、高速CPU14内の初期化を行い(ST1)、処理プログラム書き換え要求を低速CPU15に出力する(ST2)。これにより、低速CPU15は外部ROM16の第1のエリア16aに記憶されている可視光検知処理(処理1)の処理プログラムを読出し、高速CPU14に出力する。
【0024】
すると、高速CPU14のCPUコア21は供給される可視光検知処理の処理プログラムを内蔵RAM22の処理プログラム記憶領域22bに記憶する(ST3)。これにより、処理1に対する処理プログラムが外部ROM16から内蔵RAM22にダウンロードされる。
【0025】
また、上記スタートキーの投入にともなって、供給部2の紙幣が取出部4によって1枚取り出され、搬送路3によって搬送される。これにより、紙幣の先端が可視光検知器11の検知位置に対向した際、搬送制御部18からの切換信号により、選択回路13の可動端子をa端子側に切換る。この切換により、可視光検知器11からのセンサデータがA/D変換器12、選択装置13を介して高速CPU14に供給される。
【0026】
これにより、高速CPU14のCPUコア21は、その供給される可視光検知器11からのセンサデータを外部RAM17のセンサデータ記憶領域17aに記憶する(ST4)。この記憶終了時に、高速CPU14のCPUコア21は内蔵RAM22にダウンロードされた可視光検知処理の処理プログラムを実行することにより(ST5)、上記透過光によるセンサデータ、あるいは反射光によるセンサデータにより券種を検出し(ST6)、この検出した券種を処理結果として内蔵RAM22の処理結果記憶領域22cに記憶する(ST7)。
【0027】
ついで、高速CPU14のCPUコア21は、可視光検知処理が終了した際、処理プログラム書き換え要求を低速CPU15に出力する(ST8)。これにより、低速CPU15は外部ROM16の第2のエリア16bに記憶されている紫外線検知処理の処理プログラムを読出し、高速CPU14に出力する。
【0028】
すると、高速CPU14のCPUコア21は供給される紫外線検知処理の処理プログラムを内蔵RAM22の処理プログラム記憶領域22bに記憶する(ST9)。これにより、処理2に対する処理プログラムが外部ROM16から内蔵RAM22にダウンロードされる。
【0029】
そして、上記搬送路3により、搬送される紙幣の先端が紫外線検知器11の検知位置に対向した際、搬送制御部18からの切換信号により、選択回路13の可動端子をb端子側に切換る。この切換により、紫外線検知器11からのセンサデータがA/D変換器12、選択装置13を介して高速CPU14に供給される。
【0030】
これにより、高速CPU14のCPUコア21は、その供給される紫外線検知器11からのセンサデータを外部RAM17のセンサデータ記憶領域17bに記憶する(ST10)。この記憶終了時に、高速CPU14のCPUコア21は紫外線検知処理の処理プログラムを実行することにより(ST11)、上記紫外線によるセンサデータにより券の真偽を検出し(ST12)、この検出した真偽を処理結果として内蔵RAM22の処理結果記憶領域22cに記憶する(ST13)。
【0031】
ついで、高速CPU14のCPUコア21は、紫外線検知処理が終了した際、処理プログラム書き換え要求を低速CPU15に出力する(ST14)。これにより、低速CPU15は外部ROM16の第2のエリア16cに記憶されている磁気検知処理の処理プログラムを読出し、高速CPU14に出力する。
【0032】
すると、高速CPU14のCPUコア21は供給される磁気検知処理の処理プログラムを内蔵RAM22の処理プログラム記憶領域22bに記憶する(ST15)。これにより、処理3に対する処理プログラムが外部ROM16から内蔵RAM22にダウンロードされる。
【0033】
そして、上記搬送路3により、搬送される紙幣の先端が磁気検知器11の検知位置に対向した際、搬送制御部18からの切換信号により、選択回路13の可動端子をc端子側に切換る。この切換により、磁気検知器11からのセンサデータがA/D変換器12、選択装置13を介して高速CPU14に供給される。
【0034】
これにより、高速CPU14のCPUコア21は、その供給される磁気検知器11からのセンサデータを外部RAM17のセンサデータ記憶領域17bに記憶する(ST16)。この記憶終了時に、高速CPU14のCPUコア21は磁気検知処理の処理プログラムを実行することにより(ST17)、上記磁気によるセンサデータにより券の真偽を検出し(ST18)、この検出した真偽を処理結果として内蔵RAM22の処理結果記憶領域22cに記憶する(ST19)。
【0035】
上記したように、1枚の紙葉類に対して複数のセンサからのセンサデータを用いて、1つのCPUが処理を実行するシステムにおいて、高速CPUが処理ごとに用いる処理プログラムを外部メモリに備え、各処理の実行前に、外部メモリから高速CPU内の内蔵メモリにローディングすることにより、処理の高速化が図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施形態を説明するための紙幣処理装置の概略構成を示す図。
【図2】紙幣処理装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】紙幣処理装置の処理を説明するためのフローチャート。
【図4】紙幣処理装置の処理を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0037】
1…紙幣処理装置 3…搬送路 11…センサ 14…高速CPU 15…低速CPU 16…外部ROM 21…CPUコア 22…内蔵RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を1枚ずつ搬送路によって搬送するステップと、
このステップにより1枚の紙葉類が搬送されている際に、上記搬送路上に沿って設けられる複数のセンサによって上記紙葉類からの情報を順に取込むステップと、
このステップにより各センサからの情報を取込む前に、その取込みデータに対する処理プログラムを選択的にロードするステップと、
このロードした処理プログラムの処理を上記取込まれる上記紙葉類からの情報に基づいて実行するステップと、
を有することを特徴とする紙葉類処理方法。
【請求項2】
紙葉類を1枚ずつ搬送路によって搬送する搬送手段と、
この搬送手段により1枚の紙葉類が搬送されている際に、上記搬送路上に沿って設けられる複数のセンサによって上記紙葉類からの情報を順に取込む取込手段と、
この取込手段による各センサからの情報を取込む前に、あらかじめ記憶されている処理プログラムを、その取込みデータに対する処理プログラムを、選択的に外部の記憶媒体から内部の記憶媒体にロードするロード手段と、
このロードした処理プログラムの処理を上記取込まれる上記紙葉類からの情報に基づいて実行する実行手段と、
を具備したことを特徴とする紙葉類処理システム。
【請求項3】
紙葉類を1枚ずつ搬送路によって搬送する搬送手段と、
この搬送手段により1枚の紙葉類が搬送されている際に、上記搬送路上に沿って設けられる複数のセンサによって上記紙葉類からの情報を順に取込む取込手段と、
内蔵するRAMに対して処理プログラムを選択的にロード可能なCPUと、
このCPUの外部に設けられ、上記各センサからの情報を処理する処理プログラムが各センサ毎に分割して記憶されている外部記憶手段と、
上記取込手段による各センサからの情報を取込む前に、そのセンサに対応する処理プログラムを内部RAMに対してロードするロード手段と、
このロードした処理プログラムの処理を上記取込まれる上記紙葉類からの情報に基づいて実行する実行手段と、
を具備したことを特徴とする紙葉類処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−293625(P2006−293625A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112389(P2005−112389)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】