説明

紙葉類処理装置、及び辞書作成方法

【課題】 より効率的に高い精度で紙葉類を識別する紙葉類処理装置、及び紙葉類処理装置により用いられる辞書の作成方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る紙葉類処理装置は、領域結合パラメータを予め記憶するパラメータ記憶部と、紙葉類を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記紙葉類から入力画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記入力画像を第1の数の領域に分割する画像分割部と、前記画像分割部により分割された前記第1の数の領域を前記パラメータ記憶部により記憶されている前記領域結合パラメータに基づいて、第2の数の結合領域に結合する領域結合部と、前記領域結合部により結合された前記第2の数の結合領域に基づいて、前記紙葉類を識別する識別部と、前記識別部の識別結果に基づいて、前記紙葉類を区分する区分処理部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類処理装置、及び紙葉類処理装置により用いられる辞書の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の紙葉類の検査を行う紙葉類処理装置が実用化されている。紙葉類処理装置は、紙葉類の画像を読み取る画像読取装置を有する。紙葉類処理装置は、投入部に投入された紙葉類を1枚ずつ取り込み、画像読取装置に搬送する。
【0003】
画像読取装置は、搬送される紙葉類から、紙葉類の光学的な特徴(特徴量)を検知する。紙葉類処理装置は、予め設定される種々のパラメータと、検知された特徴量との比較を行うことにより、紙葉類を識別する。例えば、紙葉類処理装置は、紙葉類の種類(category)、例えば券種(denomination)、汚損の度合の識別、紙葉類の真偽(authentication)の識別、及び/または紙葉類が再流通可能(recirculation)であるか否かの正損(fitness)の識別を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−73035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、高い精度で紙葉類の判別を行う場合、より高い解像度で紙葉類から画像を取得する必要がある。しかし、高い解像度で紙葉類から画像を取得する場合、上記の比較処理での計算量が嵩む。
【0006】
画像を複数の領域に分割し、各領域毎に識別結果を得て、この複数の識別結果の論理的な組み合わせに基づいて紙葉類の識別を行うことにより、計算量を削減することができる。この方法によると、紙葉類処理装置は、紙葉類を券種または汚損の度合いに応じて複数のクラスに分け、クラス間の違いが顕著な領域に基づいて紙葉類の識別を行う。
【0007】
しかし、クラスの分け方によっては、クラス間の違いが顕著な領域の特定が困難になる場合がある。この結果、紙葉類の識別の精度がバラつくという課題を有する。
【0008】
そこで、より効率的に高い精度で紙葉類を識別する紙葉類処理装置、及び紙葉類処理装置により用いられる辞書の作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る紙葉類処理装置は、領域結合パラメータを予め記憶するパラメータ記憶部と、紙葉類を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記紙葉類から入力画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記入力画像を第1の数の領域に分割する画像分割部と、前記画像分割部により分割された前記第1の数の領域を前記パラメータ記憶部により記憶されている前記領域結合パラメータに基づいて、第2の数の結合領域に結合する領域結合部と、前記領域結合部により結合された前記第2の数の結合領域に基づいて、前記紙葉類を識別する識別部と、前記識別部の識別結果に基づいて、前記紙葉類を区分する区分処理部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、一実施形態に係る紙葉類処理装置について説明するための図である。
【図2】図2は、一実施形態に係る紙葉類処理装置について説明するための図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る紙葉類処理装置により処理される紙葉類の例について説明するための図である。
【図4】図4は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の処理について説明するための図である。
【図5】図5は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の処理について説明するための図である。
【図6】図6は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の処理について説明するための図である。
【図7】図7は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の処理について説明するための図である。
【図8】図8は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の処理について説明するための図である。
【図9】図9は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の処理について説明するための図である。
【図10】図10は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の処理について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る紙葉類処理装置、及び紙葉類処理装置により用いられる辞書の作成方法について詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る紙葉類処理装置100の構成例を示す。
紙葉類処理装置100は、供給部20、分離ローラ25、搬送系30、第1のゲート31、第1のスタッカ32、第2のゲート33、第2のスタッカ34、画像取得部35、制御部40、処理結果記憶部50、パラメータ記憶部60、操作部70、表示部80、及び入出力部90を備える。また、紙葉類処理装置100は、第2のゲート33の後段に図示しない裁断部を備える。
【0013】
制御部40は、紙葉類処理装置100の各部の動作を統合的に制御する。制御部40は、CPU、バッファメモリ、プログラムメモリ、及び不揮発性メモリなどを備える。CPUは、種々の演算処理を行う。バッファメモリは、CPUにより行われる演算の結果を一時的に記憶する。プログラムメモリ及び不揮発性メモリは、CPUが実行する種々のプログラム及び制御データなどを記憶する。制御部40は、CPUによりプログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を行うことができる。
【0014】
供給部20は、紙葉類処理装置100に取り込む紙葉類10をストックする。供給部20は、重ねられた状態の紙葉類10をまとめて受け入れる。
【0015】
分離ローラ25は、供給部20の下端に設置される。供給部20に紙葉類10が投入される場合、投入された紙葉類10の集積方向の下端に接する。分離ローラ25は、回転することにより、供給部20にセットされる紙葉類10を集積方向の下端から1枚ずつ紙葉類処理装置100の内部に取り込む。
【0016】
分離ローラ25は、たとえば、1回転するごとに1枚の紙葉類10を取り込むように機能する。これにより、分離ローラ25は、紙葉類10を一定のピッチで取り込む。分離ローラ25により取り込まれた紙葉類10は、搬送系30に導入される。
【0017】
搬送系30は、紙葉類10を紙葉類処理装置100内の各部に搬送する搬送部である。搬送系30は、図示しない搬送ベルト及び図示しない駆動プーリなどを備える。搬送系30は、図示しない駆動モータにより駆動プーリを駆動する。搬送ベルトは、駆動プーリにより動作する。
【0018】
搬送系30は、分離ローラ25により取り込む紙葉類10を搬送ベルトにより一定速度で搬送する。なお、搬送系30において分離ローラ25に近い側を上流側、逆側を下流側として説明する。
【0019】
画像取得部35は、搬送計30により搬送される紙葉類10から画像を取得する。画像取得部35は、例えば、2つの光学センサを備える。2つの光学センサは、搬送系30を挟んで互いに対向するように配置される。光学センサは、紙葉類10の光学的特徴情報を検出する。即ち、画像取得部35は、光学センサにより、搬送系30により搬送される紙葉類10の両面の画像を読み取る。
【0020】
画像取得部35は、紙葉類10の券面を二次元的に撮像する。画像取得部35の光学センサは、例えば、Charge Coupled Device(CCD)などの受光素子と、光学系と、光源とを備える。光学センサは、搬送される紙葉類10に対して光源により光を投光し、反射光または透過光を光学系により受光する。光学センサは、光学系により受光した光をCCDに結像させ、電気信号(画像)を取得する。
【0021】
制御部40は、画像取得部35により取得した画像から特徴量を算出する。制御部40は、画像取得部35により撮像した画像に基づいて、紙葉類10の表面及び裏面の特徴量を算出する。
【0022】
特徴量は、例えば画素毎の輝度値である。また、画像取得部35の光センサが、カラーの画像を取得可能なセンサである場合、特徴量は、RGBの各色毎の値を有する。また、特徴量は、色合い、彩度、及び明るさを有するものであってもよいし、さらに他の要素を含むものであってもよい。なお、本実施形態では、画像取得部35によりカラー画像を取得し、RGBの各色毎の値を特徴量として用いる例について説明する。
【0023】
制御部40は、算出した特徴量に基づいて、紙葉類10の真偽(authentication)を識別する。即ち、制御部40は、紙葉類10が真券(genuine)であるか、偽券(counterfeit)であるか識別する。
【0024】
また、制御部40は、算出した特徴量に基づいて、紙葉類10の券種(category)を識別する。
【0025】
さらに、制御部40は、算出した特徴量に基づいて、紙葉類10の正損(recirculatable/unrecirculatable)を識別する。即ち、制御部40は、紙葉類10が再流通可能(recirculatable)な正券(fit sheet)であるか、再流通不可能(unrecirculatable)な損券(unfit sheet)であるかを識別する。
【0026】
第1のゲート31及び第2のゲート33は、搬送系30の画像取得部35より下流に設けられる。第1のゲート31及び第2のゲート33は、それぞれ制御部40の制御に基づいて動作する。制御部40は、紙葉類10に対する各種の識別の結果に応じて第1のゲート31及び第2のゲート33を制御する。
【0027】
第1のゲート31は、紙葉類10の搬送先を第1のスタッカ32と第2のゲート33とで切り替える。また、第2のゲート33は、紙葉類10の搬送先を第2のスタッカ34と裁断部とで切り替える。
【0028】
制御部40は、正券と判定した紙葉類10を第1のスタッカ32または第2のスタッカ34に搬送するように、第1のゲート31及び第2のゲート33を制御する。即ち、制御部40は、正券を種類毎に区分けして集積するように各部を制御する。
【0029】
また、制御部40は、損券と判定した紙葉類10を第2のゲート33の後段に設けられる裁断部に搬送するように、第1のゲート31及び第2のゲート33を制御する。即ち、制御部40は、損券と判定した紙葉類10を裁断部に搬送し、裁断部により裁断するように各部を制御する。
【0030】
処理結果記憶部50は、制御部40により算出された紙葉類10の特徴量を記憶する。また、処理結果記憶部50は、制御部40により実行される演算処理の結果などを記憶する。処理結果記憶部50は、制御部40のバッファメモリまたは不揮発性メモリなどにより代用されてもよい。
【0031】
パラメータ記憶部60は、上記の識別処理に用いられる辞書を記憶する。辞書は、種々のパラメータを有する。制御部40は、パラメータ記憶部60により記憶されている辞書のパラメータと、紙葉類10の画像から算出した特徴量とに基づいて、上記の識別処理を行う。
【0032】
操作部70は、オペレータによる各種操作入力を操作部により受け付ける。操作部70は、オペレータにより入力される操作に基づいて操作信号を生成し、生成した操作信号を制御部40に伝送する。表示部80は、制御部40の制御に基づいて種々の画面を表示する。例えば、表示部80は、オペレータに対して各種の操作案内、及び処理結果などを表示する。なお、操作部70と表示部80とは、タッチパネルとして一体に形成されていてもよい。
【0033】
入出力部90は、紙葉類処理装置100に接続される外部機器、または記憶媒体とデータの送受信を行う。例えば、入出力部90は、ディスクドライブ、USBコネクタ、LANコネクタ、またはデータの送受信が可能な他のインターフェースなどを備える。紙葉類処理装置100は、入出力部90に接続される外部機器、または記憶媒体からデータを取得することができる。また、紙葉類処理装置100は、入出力部90に接続される外部機器、または記憶媒体に処理結果を伝送することもできる。
【0034】
制御部40は、紙葉類10の特徴量とパラメータ記憶部60に記憶される辞書とに基づいて紙葉類10の識別を行う。即ち、紙葉類処理装置100は、紙葉類10の識別を行う場合、予め作成された辞書をパラメータ記憶部60により記憶しておく必要がある。
【0035】
本実施形態の紙葉類処理装置100は、紙葉類10の画像(入力画像)をn個の領域(画素、または画素の集合)に分割し、分割したn個の領域をm個(ただし、m<n)の結合領域に結合する。さらに、紙葉類処理装置100は、m個の結合領域ごとに識別結果を得て、結合領域ごとの識別結果に基づいて全体の識別結果を決定する。
【0036】
図2は、一実施形態に係る紙葉類処理装置100の構成例を示す。
図2に示すように、制御部40は、画像分割部41、領域識別部42、領域結合部43、結合領域識別部44、全体識別部45、及び結果出力部46を備える。
【0037】
また、処理結果記憶部50は、入力画像保存部51、画像分割結果保存部52、領域識別結果保存部53、領域結合結果保存部54、結合領域識別結果保存部55、及び全体識別結果保存部56を備える。
【0038】
また、パラメータ記憶部60は、画像分割パラメータ保存部61、領域識別パラメータ保存部62、領域結合パラメータ保存部63、結合領域識別パラメータ保存部64、及び全体識別パラメータ保存部65を備える。
【0039】
画像分割部41は、入力画像をn個の領域に分割し、結果(画像分割結果)を取得する。領域識別部42は、n個の領域ごとに識別結果(領域識別結果)を取得する。領域結合部43は、画像分割結果及び領域識別結果に基づいて、n個の領域をm個の結合領域に結合し、結果(領域結合結果)を取得する。ただし、m<nとする。
【0040】
結合領域識別部44は、領域結合結果に基づいて、m個の結合領域ごとの識別結果(結合領域識別結果)を取得する。全体識別部45は、結合領域識別結果に基づいて、全体の識別結果(全体識別結果)を決定する。結果出力部46は、全体識別結果を出力する。例えば、結果出力部46は、全体識別結果を表示部80に表示する、または、全体識別結果を入出力部90に接続される機器に出力する。
【0041】
入力画像保存部51は、入力画像を保存する。制御部40は、画像取得部35から受け取る画像(入力画像)を入力画像保存部51に保存する。また、制御部40は、入出力部90に接続される機器から画像を受け取る構成であってもよい。この場合、制御部40は、入出力部90に接続される機器から受け取る画像(入力画像)を入力画像保存部51に保存する。
【0042】
画像分割結果保存部52は、画像分割部41により取得される画像分割結果を保存する。領域識別結果保存部53は、領域識別部42により取得される領域識別結果を保存する。領域結合結果保存部54は、領域結合部43により取得される領域結合結果を保存する。
【0043】
結合領域識別結果保存部55は、結合領域識別部44により取得される結合領域識別結果を保存する。全体識別結果保存部56は、全体識別部45により取得される全体識別結果を保存する。
【0044】
画像分割パラメータ保存部61は、画像分割部41により実行される画像分割処理に用いられる画像分割パラメータを保存する。領域識別パラメータ保存部62は、領域識別部42により実行される領域識別処理に用いられる領域識別パラメータを保存する。領域結合パラメータ保存部63は、領域結合部43により実行される領域結合処理に用いられる領域結合パラメータを保存する。
【0045】
結合領域識別パラメータ保存部64は、結合領域識別部44により実行される結合領域識別処理に用いられる結合領域識別パラメータを保存する。全体識別パラメータ保存部65は、全体識別部45により実行される全体識別処理に用いられる全体識別パラメータを保存する。
【0046】
図3は、紙葉類処理装置100により処理される紙葉類10の例を示す。
ここでは、紙葉類10として紙幣を処理する例について説明する。しかし、紙葉類10は、紙幣に限られるものではなく、シート状のものであれば如何なるものであってもよい。図3は、画像取得部35により紙葉類10から読み取った画像(入力画像)Xを模式的に示す。
【0047】
図4は、図3に示す入力画像Xの構成の例を示す。図4は、入力画像Xが平面的に配置された複数の画素によって構成されることを示す。本実施形態では、画像取得部35は、カラーの入力画像Xを取得する。この為、入力画像Xの各画素xiは、色成分(たとえば、赤、緑、青)の値を有する。
【0048】
画素xiの赤の色成分の値をxi(r)とし、緑の色成分の値をxi(g)とし、青の色成分の値をxi(b)とする場合、画素xiは、数式1のような三次元のベクトルとして表される。
【数1】

【0049】
なお、xiは、入力画像Xを構成するn個のうちのi番目の画素を表すベクトルである。即ち、iは、1乃至nの自然数である。
【0050】
入力画像Xがn個の画素によって構成される場合、入力画像Xは、数式2のようなベクトルの行列として表される。
【数2】

【0051】
なお、ここで示されるは、ベクトルの転置を表す記号である。なお、本実施形態では、時刻tに入力された入力画像を、X(t)と表記して説明する。
【0052】
しかし、tは、単純に制御部40に入力される入力画像Xの数を示すものであってもよい。この場合、t番目に制御部40に入力される入力画像をX(t)と表記する。
【0053】
図5乃至9は、紙葉類処理装置100の動作の例を示す。図5乃至図8は、制御部40により実行される辞書作成処理の例を示す。また、図9は、制御部40により実行される紙葉類10の識別処理の例を示す。
【0054】
なお、画像分割部41は、画像分割パラメータ保存部61により保存される画像分割パラメータの値に応じて入力画像Xを複数の領域に分割する。例えば、画像分割パラメータの値が「1」である場合、画像分割部41は、1画素を1つの領域として入力画像Xを分割する。また、画像分割パラメータの値が「4」である場合、画像分割部41は、4画素を1つの領域として入力画像Xを分割する。
【0055】
即ち、画像分割部41により分割された領域は、画素あるいは画素の集合である。しかし、本実施形態では、説明を簡潔にする為に、画像分割部41により分割された1つの領域が1画素に対応すると仮定して説明する。即ち、入力画像Xは、n個の領域を含む。
【0056】
なお、画像分割パラメータの値と、画像分割部41により分割された領域との関係は、上記したものに限定されるものではない。入力画像Xを複数の領域に分割することが出来る手法であれば、画像分割パラメータ及び画像分割部41は、如何なる手法を用いるものであってもよい。
【0057】
まず、辞書作成処理について説明する。
図5は、領域識別パラメータ保存部62に領域識別パラメータを設定する処理の例を示す。
【0058】
制御部40は、まず、領域識別パラメータ保存部62により保存されている領域識別パラメータを初期化する(ステップS11)。領域識別パラメータは、領域識別部42により実行される領域識別処理に用いられる具体的な数値である。
【0059】
入力画像Xの色成分が時刻tによって変動する場合、領域識別パラメータは、領域毎に平均ベクトルμと標準偏差ベクトルσを含む。なお、n個の領域のうちのi番目の領域の平均ベクトルは、μiであり、n個の領域のうちのi番目の領域の標準偏差ベクトルは、σiである。即ち、iは、1乃至nの自然数である。
【0060】
i番目の領域の赤の色成分の平均値をμi(r)とし、i番目の領域の緑の色成分の平均値をμi(g)とし、i番目の領域の青の色成分の平均値をμi(b)とする場合、i番目の領域の平均ベクトルμiは、数式3のようなベクトルとして表される。
【数3】

【0061】
また、i番目の領域の赤の色成分の標準偏差をσi(r)とし、i番目の領域の緑の色成分の標準偏差をσi(g)とし、i番目の領域の青の色成分の標準偏差をσi(b)とする場合、i番目の領域の標準偏差ベクトルσiは、数式4のようなベクトルとして表される。
【数4】

【0062】
ここでは、全ての領域識別パラメータの初期値をゼロとする。即ち、制御部40は、領域識別パラメータを初期化する場合、平均ベクトルμi=(0,0,0)、及び標準偏差ベクトルσi=(0,0,0)を領域識別パラメータ保存部62に領域識別パラメータとして格納する。
【0063】
制御部40は、画像取得部35、または入出力部90から時刻tの入力画像X(t)を受け取る(ステップS12)。
【0064】
画像分割部41は、入力画像X(t)をn個の領域に分割し、画像分割結果を取得する(ステップS13)。なお、前述の通り、本実施形態では、画像分割部41は、1画素を1つの領域として分割する。この為、分割された領域の番号は、画素の番号と1対1で対応する。しかし、複数の画素が1つの領域として分割される場合、分割された領域の番号は、その領域に含まれる複数の画素の番号と1対多で対応する。
【0065】
領域識別部42は、入力画像X(t)の画像分割結果に基づいて、領域識別パラメータを更新する(ステップS14)。この場合、領域識別部42は、領域識別パラメータ保存部62により領域識別パラメータとして保存されているベクトルμi及びσiと、入力画像X(t)のi番目の領域の各色成分の値x(t)i(r)、x(t)i(g)、及びx(t)i(b)に基づいて、領域識別パラメータを更新する。
【0066】
まず、領域識別部42は、次の数式5に基づいて、μi=(μi(r),μi(g),μi(b))を更新する。
【数5】

【0067】
また、領域識別部42は、次の数式6に基づいて、σi=(σi(r),σi(g),σi(b))を更新する。
【数6】

【0068】
領域識別部42は、この領域識別処理の終了条件が満たされたかどうか判断する(ステップS15)。例えば、領域識別部42は、紙葉類処理装置100への紙葉類10の供給が停止されたか否か、または、入出力部90により外部機器から受け取った入力画像を全て処理したか否か、などに基づいて、終了条件が満たされたか否かを判断する。終了条件が満たされていないと判断した場合、領域識別部42は、ステップS12に移行し、次の入力画像X(t)に基づいてステップS12乃至ステップS14の処理を行う。
【0069】
終了条件が満たされたと判断した場合、領域識別部42は、次の数式7及び数式8に基づいて、領域識別パラメータのベクトルμi及びσiを算出し、算出した領域識別パラメータを領域識別パラメータ保存部62に保存する(ステップS16)。
【数7】

【0070】
【数8】

【0071】
なお、上記の数式7及び数式8のdは、制御部40に入力された入力画像Xの数を示す。即ち、tを入力画像の数とする場合、t=dとなる。
【0072】
なお、本実施形態において記述される平均ベクトル及び標準偏差ベクトルは、それぞれ統計的な平均及び標準偏差を表す。当然のことながら、統計的な平均及び標準偏差が得られる方法であれば、領域識別部42は、上記と異なる方法を用いて領域識別パラメータを算出する構成であってもよい。
【0073】
図6は、領域結合パラメータ保存部63に領域結合パラメータを設定する処理の例を示す。
【0074】
制御部40の領域結合部43は、まず、領域結合パラメータ保存部63により保存されている領域結合パラメータkiを初期化する(ステップS21)。領域結合パラメータkiは、n個の領域をm個の結合領域に結合する領域結合処理に用いられる具体的な数値である。
【0075】
領域結合パラメータkiは、n個の分割領域のうちのi番目の領域の領域結合パラメータを示す。即ち、iは、1乃至nの自然数である。また、領域結合パラメータkiは、1乃至mのうちの値である。
【0076】
ここでは、領域結合部43は、全ての領域結合パラメータkの初期値をランダムに設定する。ただし、領域結合部43は、全ての結合領域番号(1乃至m)が必ず1回以上出現するように、設定する。
【0077】
領域結合部43は、中心パラメータvを算出する(ステップS22)。中心パラメータvは、ある結合領域に含まれる領域の領域識別パラメータの中心(平均)を示す。m個の結合領域のうちのj番目の結合領域に含まれる領域の数をnjとすると、j番目の結合領域の中心パラメータvjは、次の数式9により表される。
【数9】

【0078】
なお、jは、1乃至mの値である。
【0079】
また、j番目の結合領域に含まれる領域の数をnjは、数式10により表される。
【数10】

【0080】
さらに、領域結合部43は、数式11に基づいて、領域結合パラメータkを更新する(ステップS23)。
【数11】

【0081】
数式11に示されるように、領域結合部43は、i番目の領域の領域結合パラメータkiを、i番目の領域の領域識別パラメータに最も近い中心パラメータの結合領域番号に更新する。即ち、領域結合部43は、i番目の領域の領域識別パラメータと最もベクトル空間における距離が短い中心パラメータを特定し、特定した中心パラメータの結合領域番号を領域結合パラメータ保存部63により保存されている領域結合パラメータkiに上書きする。
【0082】
領域結合部43は、この領域結合処理の終了条件が満たされたかどうか判断する(ステップS24)。例えば、領域結合部43は、領域結合パラメータkiの変化を確認することにより、終了条件が満たされたかどうか判断する。領域結合部43は、全ての領域の領域結合パラメータkiが更新の前後で変化しなくなったことを確認した場合、または、変化した領域結合パラメータkiの数が予め設定される所定値未満である場合、終了条件が満たされたと判断する。
【0083】
終了条件が満たされていないと判断した場合、領域結合部43は、ステップS22に移行し、ステップS22乃至ステップS23の処理を行う。
【0084】
終了条件が満たされたと判断した場合、領域結合部43は、領域結合パラメータkiを領域結合パラメータ保存部63に保存する(ステップS25)。
【0085】
この処理を繰り返すことにより、領域結合部43は、より領域識別パラメータが近い複数の領域により、結合領域を形成することが出来る。
【0086】
即ち、領域結合処理は、n個の領域の領域識別パラメータを特徴ベクトルとし、n個の領域をm個のクラスタ(結合領域)に結合する処理(クラスタリング)を示す。したがって、領域結合部43は、上記とは異なる方法を用いてクラスタリングを行う構成であってもよい。
【0087】
図7は、結合領域識別パラメータ保存部64に結合領域識別パラメータを設定する処理の例を示す。
【0088】
制御部40の結合領域識別部44は、まず、結合領域識別パラメータ保存部64により保存されている結合領域識別パラメータを初期化する(ステップS31)。結合領域識別パラメータは、結合領域識別部44により実行される結合領域識別処理に用いられる具体的な数値である。
【0089】
入力画像Xの色成分が時刻tによって変動する場合、結合領域識別パラメータは、結合領域毎に平均ベクトルμ´と標準偏差ベクトルσ´とを含む。なお、m個の結合領域のうちのj番目の結合領域の平均ベクトルは、μ´jであり、m個の結合領域のうちのj番目の結合領域の標準偏差ベクトルは、σ´jである。即ち、jは、1乃至mの自然数である。
【0090】
j番目の結合領域の赤の色成分の平均値をμ´j(r)とし、j番目の結合領域の緑の色成分の平均値をμ´j(g)とし、j番目の結合領域の青の色成分の平均値をμ´j(b)とする場合、j番目の結合領域の平均ベクトルμ´jは、数式12のようなベクトルとして表される。
【数12】

【0091】
また、j番目の結合領域の赤の色成分の標準偏差をσ´j(r)とし、j番目の結合領域の緑の色成分の標準偏差をσ´j(g)とし、j番目の結合領域の青の色成分の標準偏差をσ´j(b)とする場合、j番目の結合領域の標準偏差ベクトルσ´jは、数式13のようなベクトルとして表される。
【数13】

【0092】
ここでは、全ての結合領域識別パラメータの初期値をゼロとする。即ち、結合領域識別部44は、結合領域識別パラメータを初期化する場合、平均ベクトルμ´j=(0,0,0)、及び標準偏差ベクトルσ´j=(0,0,0)を結合領域識別パラメータ保存部64に結合領域識別パラメータとして格納する。
【0093】
制御部40は、画像取得部35、または入出力部90から時刻tの入力画像X(t)を受け取る(ステップS32)。
【0094】
画像分割部41は、入力画像X(t)をn個の領域に分割し、画像分割結果を取得する(ステップS33)。なお、前述の通り、本実施形態では、画像分割部41は、1画素を1つの領域として分割する。この為、分割された領域の番号は、画素の番号と1対1で対応する。しかし、複数の画素が1つの領域として分割される場合、分割された領域の番号は、その領域に含まれる複数の画素の番号と1対多で対応する。
【0095】
領域結合部43は、画像分割結果と、領域結合パラメータ保存部63により保存されている領域結合パラメータとに基づいて、領域結合結果を取得する(ステップS34)。即ち、領域結合部43は、画像分割処理により分割されたn個の領域を、領域結合パラメータkに基づいてm個の結合領域に結合する。
【0096】
なお、図6の説明で述べた通り、領域結合処理は、領域の領域識別パラメータを特徴ベクトルとした領域のクラスタリングを示す。本実施形態によると、領域結合結果である結合領域は、領域識別パラメータが近い複数の領域により形成される領域であり、単なる「画素の集合」とは異なる性質を有する。
【0097】
m個のうちのj番目の結合領域の赤の色成分の値をx´j(r)とし、j番目の結合領域の緑の色成分の値をx´j(g)とし、j番目の結合領域の青の色成分の値をx´j(b)とする場合、j番目の結合領域を表すベクトルx´jは、たとえば、数式14のように表される。
【数14】

【0098】
結合領域識別部44は、領域結合結果に基づいて、結合領域識別パラメータを更新する(ステップS35)。この場合、結合領域識別部44は、結合領域識別パラメータ保存部64により結合領域識別パラメータとして保存されているベクトルμ´j及びσ´j、並びにj番目の結合領域の各色成分の値x´(t)j(r)、x´(t)j(g)、及びx´(t)j(b)に基づいて、結合領域識別パラメータを更新する。
【0099】
まず、結合領域識別部44は、次の数式15に基づいて、μ´j=(μ´j(r),μ´j(g),μ´j(b))を更新する。
【数15】

【0100】
また、結合領域識別部44は、次の数式16に基づいて、σ´j=(σ´j(r),σ´j(g),σ´jb))を更新する。
【数16】

【0101】
結合領域識別部44は、この結合領域識別処理の終了条件が満たされたかどうか判断する(ステップS36)。例えば、結合領域識別部44は、紙葉類処理装置100への紙葉類10の供給が停止されたか否か、または、入出力部90により外部機器から受け取った入力画像を全て処理したか否か、などに基づいて、終了条件が満たされたか否かを判断する。終了条件が満たされていないと判断した場合、結合領域識別部44は、ステップS32に移行し、次の入力画像X(t)に基づいてステップS32乃至ステップS35の処理を行う。
【0102】
終了条件が満たされたと判断した場合、結合領域識別部44は、次の数式17及び数式18に基づいて、結合領域識別パラメータのσ´i及びμ´iを算出し、算出した結合領域識別パラメータを結合領域識別パラメータ保存部64に保存する(ステップS37)。
【数17】

【0103】
【数18】

【0104】
なお、上記の数式17及び数式18のdは、制御部40に入力された入力画像Xの数を示す。即ち、tを入力画像の数とする場合、t=dとなる。
【0105】
なお、本実施形態において記述される平均ベクトル及び標準偏差ベクトルは、それぞれ統計的な平均及び標準偏差を表す。当然のことながら、統計的な平均及び標準偏差が得られる方法であれば、結合領域識別部44は、上記と異なる方法を用いて結合領域識別パラメータを算出する構成であってもよい。
【0106】
図8は、全体識別パラメータ保存部65に全体識別パラメータを設定する処理の例を示す。
【0107】
制御部40の全体識別部45は、まず、全体識別パラメータ保存部65により保存されている全体識別パラメータを初期化する(ステップS41)。全体識別パラメータは、全体識別部45により実行される全体識別処理に用いられる具体的な数値である。
【0108】
全体識別パラメータw´jは、如何なる数字であってもよい。即ち、全体識別パラメータw´jは、数式19に表される条件内で設定される。
【数19】

【0109】
ここでは、m個の結合領域のうちのj番目の結合領域の全体識別パラメータをw´jとする。全体識別部45は、全体識別パラメータを初期化する場合、数式20に示すw´jを全体識別パラメータ保存部65に全体識別パラメータの初期値として格納する。
【数20】

【0110】
制御部40は、画像取得部35、または入出力部90から時刻tの入力画像X(t)を受け取る(ステップS42)。
【0111】
画像分割部41は、入力画像X(t)をn個の領域に分割し、画像分割結果を取得する(ステップS43)。なお、前述の通り、本実施形態では、画像分割部41は、1画素を1つの領域として分割する。この為、分割された領域の番号は、画素の番号と1対1で対応する。しかし、複数の画素が1つの領域として分割される場合、分割された領域の番号は、その領域に含まれる複数の画素の番号と1対多で対応する。
【0112】
領域結合部43は、画像分割結果と、領域結合パラメータ保存部63により保存されている領域結合パラメータkiとに基づいて、領域結合結果を取得する(ステップS44)。即ち、領域結合部43は、画像分割処理により分割されたn個の領域を、領域結合パラメータkiに基づいてm個の結合領域に結合する。
【0113】
結合領域識別部44は、入力画像X(t)に基づいて取得された領域結合結果x´jと、結合領域識別パラメータのベクトルμ´i及びσ´iと、次の数式21とに基づいて、結合領域識別結果o´jを取得する(ステップS45)。
【数21】

【0114】
なお、o´jは、m個の結合領域のうちのj番目の結合領域の結合領域識別結果を示す。
【0115】
全体識別部45は、結合領域識別結果o´jと、全体識別パラメータw´jと、次の数式22と、に基づいて全体識別結果Y´を取得する(ステップS46)。
【数22】

【0116】
なお、Y´(t)は、制御部40に入力された入力画像X(t)に基づいて上記の画像分割処理、領域結合処理、結合領域識別処理、及び全体識別処理が行われた結果を示すものである。
【0117】
さらに、全体識別部45は、全体識別結果Y´(t)と、次の数式23とに基づいて、時刻tの結合誤差パラメータを算出する(ステップS47)。
【数23】

【0118】
なお、ε´(t)は、結合誤差パラメータを示す。また、R´(t)は、全体識別結果の望ましい(理想の)値であり、固定値である。即ち、全体識別結果Y´(t)とR´(t)とが近いほど結合誤差パラメータε´(t)の値が小さくなる。即ち、結合誤差パラメータε´(t)の値が小さいほど、全体識別結果Y´(t)が良好であると判断することが出来る。
【0119】
またさらに、全体識別部45は、全体識別結果Y´(t)と、次の数式24とに基づいて、全体識別パラメータw´jを更新する(ステップS48)。
【数24】

【0120】
なお、αは、学習定数と呼ばれる定数である。αは、一般に、正の小さな値(例えば、0.1など)に設定されることが望ましい。
【0121】
学習定数αは、1回の繰り返し(学習)でどの程度全体識別パラメータw´jを更新するかを制御するための値である。学習定数αが大きな値である場合、1回で大きく全体識別パラメータw´jを更新することができるが、最適な値に定まりにくくなる可能性がある。逆に、学習定数αが小さすぎる値である場合、全体識別パラメータw´jを最適な値に近づける為に繰り返す学習の回数が嵩む可能性がある。そこで、学習定数αは、上記したような適切な値に設定されることが望ましい。
【0122】
全体識別部45は、この全体識別処理の終了条件が満たされたかどうか判断する(ステップS49)。例えば、全体識別部45は、結合誤差パラメータε´(t)が予め設定された閾値(スレッショルドレベル)未満の値になったか否か、などに基づいて、終了条件が満たされたか否かを判断する。
【0123】
終了条件が満たされていないと判断した場合、全体識別部45は、ステップS42に移行し、次の入力画像X(t)に基づいてステップS42乃至ステップS48の処理を行う。
【0124】
終了条件が満たされたと判断した場合、全体識別部45は、上記の数式24により算出した全体識別パラメータw´jを全体識別パラメータ保存部65に保存する(ステップS50)。
【0125】
上記したように、制御部40により実行された辞書作成処理により、領域結合パラメータkiが領域結合パラメータ保存部63に保存され、結合領域識別パラメータのベクトルσ´i及びμ´iが結合領域識別パラメータ保存部64に保存され、全体識別パラメータw´jが全体識別パラメータ保存部65に保存される。
【0126】
次に、紙葉類10の識別処理について説明する。
紙葉類処理装置100は、上記した処理によりパラメータ記憶部60に保存された各種のパラメータ(辞書)に基づいて、紙葉類10の券種、真偽、及び正損などの識別を行う。
【0127】
図9は、紙葉類処理装置100により実行される紙葉類10の識別処理の例を示す。
制御部40は、画像取得部35、または入出力部90から時刻tの入力画像X(t)を受け取る(ステップS51)。
【0128】
画像分割部41は、入力画像X(t)をn個の領域に分割し、画像分割結果を取得する(ステップS52)。なお、前述の通り、本実施形態では、画像分割部41は、1画素を1つの領域として分割する。この為、分割された領域の番号は、画素の番号と1対1で対応する。しかし、複数の画素が1つの領域として分割される場合、分割された領域の番号は、その領域に含まれる複数の画素の番号と1対多で対応する。
【0129】
領域結合部43は、画像分割結果と、領域結合パラメータ保存部63により保存されている領域結合パラメータkiとに基づいて、領域結合結果x´jを取得する(ステップS53)。即ち、領域結合部43は、画像分割処理により分割されたn個の領域を、領域結合パラメータkiに基づいてm個の結合領域に結合する。
【0130】
結合領域識別部44は、入力画像X(t)に基づいて取得された領域結合結果x´jと、結合領域識別パラメータのベクトルμ´i及びσ´iとに基づいて、結合領域識別結果o´jを取得する(ステップS54)。
【0131】
全体識別部45は、結合領域識別結果o´jと、全体識別パラメータw´jと、に基づいて全体識別結果Y´を取得する(ステップS55)。
【0132】
結果出力部46は、全体識別部45により取得された全体識別結果Y´を出力する(ステップS56)。例えば、結果出力部46は、全体識別結果Y´を表示部80に表示する。また、例えば、結果出力部46は、全体識別結果Y´を入出力部90に接続される機器に出力する。
【0133】
制御部40は、紙葉類10の識別処理の終了条件が満たされたかどうか判断する(ステップS57)。例えば、制御部40は、紙葉類処理装置100への紙葉類10の供給が停止されたか否かなどに基づいて、終了条件が満たされたか否かを判断する。終了条件が満たされていないと判断した場合、制御部40は、ステップS51に移行し、次の入力画像X(t)に基づいてステップS51乃至ステップS56の処理を行う。
【0134】
終了条件が満たされたと判断した場合、制御部40は、紙葉類10の識別処理を終了する。
【0135】
図10は、紙葉類処理装置100により実行される紙葉類10の識別処理のデータの流れを示す。
【0136】
まず、紙葉類処理装置100は、紙葉類10から入力画像Xを取得する。紙葉類処理装置100は、入力画像XからX1乃至Xnの領域に分割する。
【0137】
さらに、紙葉類処理装置100は、領域識別パラメータのベクトルμ1乃至μn、及びσ1乃至σnに基づいて、領域X1乃至Xnを、X´1乃至X´mの結合領域にクラスタリングする。
【0138】
またさらに、紙葉類処理装置100は、結合領域識別パラメータのベクトルμ´1乃至μ´n、及びσ´1乃至σ´nと、結合領域X´1乃至X´mとに基づいて、結合領域識別結果o´1乃至o´mを取得する。
【0139】
またさらに、紙葉類処理装置100は、結合領域識別結果o´1乃至o´mと、全体識別パラメータw´1乃至w´mとに基づいて、全体識別結果Yを取得する。
【0140】
次に、分割された領域の数を示すnと、結合領域の数を示すmの範囲条件について説明する。
【0141】
従来技術における1領域当りの領域識別処理の計算コストをciとし、1領域当りの全体識別処理の計算コストをdiとする。この場合、ci及びdiは、次の数式25及び26のように表される。
【数25】

【0142】
【数26】

【0143】
また、上記の実施形態に係る紙葉類処理装置100における1結合領域当りの結合領域識別処理の計算コストをc´jとし、1領域当りの全体識別処理の計算コストをd´jとし、領域結合処理の計算コストをe´iとする。この場合c´j、d´j、及びe´iは、次の数式27、28、及び29のように表される。
【数27】

【0144】
【数28】

【0145】
【数29】

【0146】
なお、本実施形態における結合領域識別処理と従来技術における領域識別処理とは、同様の処理であり、計算コストに差異がない。また、本実施形態における全体識別処理と従来技術における全体識別処理とは、同様の処理であり、計算コストに差異がない。この為、上記の数式27及び28に示すように、c´j=ci、及びd´j=diが成り立つ。
【0147】
従来技術における紙葉類10の識別処理の総計算コストは、次の数式30のように表される。
【数30】

【0148】
また、上記の実施形態における紙葉類10の識別処理の総計算コストは、次の数式31のように表される。
【数31】

【0149】
ただし、
【数32】

【0150】
は、それぞれ、(結合)領域識別処理、全体識別処理、及び領域結合処理の1領域あたりの平均計算コストを示す。
【0151】
L´とLとの関係が、
【数33】

【0152】
であれば、上記の実施形態は、従来の実施形態より高速に紙葉類10の識別処理を行うことができる。
【0153】
数式33のL´に数式31を代入し、Lに数式30を代入すると、
【数34】

【0154】
【数35】

【0155】
【数36】

【0156】
となる。
【0157】
上記したように、n及びmは、
【数37】

【0158】
という条件を満たす。
【0159】
したがって、分割された領域数n及び結合領域数mは、次の数式38を満たす範囲で設定されることが望ましい。
【数38】

【0160】
数式38の条件を満たすように領域数n及び結合領域数mが設定される場合、本実施形態に係る紙葉類処理装置100は、従来技術より高速に紙葉類10の識別処理を行うことができる。
【0161】
数式31に示されるように、紙葉類処理装置100は、結合領域数mが少ないほど処理が高速になる。しかし、数式38に示されるように、n/(n−m)は、領域識別処理の1領域あたりの平均計算コストと全体識別処理の1領域あたりの平均計算コストとの和と、領域結合処理の1領域あたりの平均計算コストとの比を超えてはならない。
【0162】
また、数式38に示されるように、領域結合処理の1領域あたりの平均計算コストは、領域識別処理の1領域あたりの平均計算コストと全体識別処理の1領域あたりの平均計算コストとの和よりも小さい値であることが必要である。
【0163】
このような条件を満たす領域数n及び結合領域数mが設定された紙葉類処理装置100によると、より高速、且つ効率的に紙葉類10の識別処理を行うことができる。また、紙葉類処理装置100は、特徴ベクトルの近い領域同士で結合領域を形成する。これにより、より高い精度で紙葉類10の識別処理を行うことができる。
【0164】
上記した実施形態によると、より効率的に高い精度で紙葉類を識別する紙葉類処理装置、及び紙葉類処理装置により用いられる辞書の作成方法を提供することができる。
【0165】
なお、上述の各数式は、制御部40のROMまたは不揮発性メモリなどに記憶され、CPUにより実行されるデータである。即ち、上述の各数式に関する演算処理は、制御部40のCPUにより実行される。
【0166】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0167】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0168】
20…供給部、25…分離ローラ、30…搬送系、31…第1のゲート、32…第1のスタッカ、33…第2のゲート、34…第2のスタッカ、35…画像取得部、40…制御部、41…画像分割部、42…領域識別部、43…領域結合部、44…結合領域識別部、45…全体識別部、46…結果出力部、50…処理結果記憶部、51…入力画像保存部、52…画像分割結果保存部、53…領域識別結果保存部、54…領域結合結果保存部、55…結合領域識別結果保存部、56…全体識別結果保存部、60…パラメータ記憶部、61…画像分割パラメータ保存部、62…領域識別パラメータ保存部、63…領域結合パラメータ保存部、64…結合領域識別パラメータ保存部、65…全体識別パラメータ保存部、70…操作部、80…表示部、90…入出力部、100…紙葉類処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
辞書としての領域結合パラメータを予め記憶するパラメータ記憶部と、
紙葉類を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記紙葉類から入力画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記入力画像を第1の数の領域に分割する画像分割部と、
前記画像分割部により分割された前記第1の数の領域を前記パラメータ記憶部により記憶されている前記領域結合パラメータに基づいて、第2の数の結合領域に結合する領域結合部と、
前記領域結合部により結合された前記第2の数の結合領域に基づいて、前記紙葉類を識別する識別部と、
前記識別部の識別結果に基づいて、前記紙葉類を区分する区分処理部と、
を具備する紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記領域結合パラメータは、前記画像分割部により分割された前記第1の数の領域毎に、それぞれの領域が対応する結合領域を示す情報を含み、
前記結合領域を示す情報は、前記領域結合部により、前記領域結合部により結合された前記第2の数の結合領域毎に前記結合領域に含まれる領域の特徴ベクトルの中心パラメータが算出され、前記第1の数の領域毎に最も近い中心パラメータが特定され、最も近い中心パラメータに応じて更新される、
請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
入力画像を取得し、
取得された前記入力画像を第1の数の領域に分割し、
分割された前記第1の数の領域毎に特徴ベクトルを取得し、
前記第1の数の領域毎の特徴ベクトルに基づいてクラスタリングを行い、前記第1の数の領域を第2の数の結合領域に結合し、
結合結果に基づいて、前記第1の数の領域毎に辞書としての領域結合パラメータを更新する、
紙葉類処理装置により用いられる辞書の作成方法。
【請求項4】
前記クラスタリングは、
分割された前記第1の数の領域毎に、それぞれの領域が対応する結合領域を示す前記領域結合パラメータを任意またはランダムに設定することと、
分割された前記第1の数の領域を前記領域結合パラメータに基づいて、第2の数の結合領域に結合することと、
結合した前記第2の数の結合領域毎に、前記結合領域に含まれる領域の前記特徴ベクトルの中心パラメータを算出することと、
前記第1の数の領域毎に最も近い前記中心パラメータを特定することと、
特定した前記中心パラメータに応じて、前記第1の数の領域を第2の数の結合領域に結合することと、
を有する請求項3に記載の辞書の作成方法。
【請求項5】
結合された前記第2の数の結合領域を識別し、結合領域識別結果を取得することと、
前記第2の数の結合領域の識別結果に基づいて全体識別結果を取得することと、
をさらに有し、
前記第1の数n及び前記第2の数mは、前記結合領域識別結果を取得する処理の計算コストをcとし、前記全体識別結果を取得する処理の計算コストをdとし、前記第1の数の領域を第2の数の結合領域に結合する処理の計算コストをeとする場合、
1<n/(n−m)<(c+d)/eを満たす数である、
請求項4に記載の辞書の作成方法。
【請求項6】
前記領域結合パラメータkは、前記特徴ベクトルが有する平均ベクトルをμとし、前記特徴ベクトルが有する標準偏差ベクトルをσとし、前記中心パラメータをvとした場合、k=argmin{||(μ,σ)−v||}により算出される、
請求項4に記載の辞書の作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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