紙葉類処理装置
【課題】環境変化が生じても正確な真贋判定処理が可能な紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】紙葉類処理装置は、紙葉類の挿入を検知するセンサ7と、紙葉類に対して光を照射する発光部80a,81bと、搬送路からの光を受光する受光部81aと、発光部での発光が無効にされた状態で、受光部81aで搬送路からの光を受光して、最も低い明度の基準値に設定する黒補正部233と、発光部が搬送路を移動する紙葉類に対して光を照射し、受光部で受光した光を、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とするように変換することで得られる複数の画素データと、真券に関する基準画素データとを、黒補正部233で設定された基準値に基づいて比較し真贋を判定する真贋判定処理部230とを有する。黒補正部233は、紙葉類が挿入される毎に、センサ7により紙葉類の挿入が検知されてから真贋判定処理部230で真贋判定する前に基準値の設定を行う。
【解決手段】紙葉類処理装置は、紙葉類の挿入を検知するセンサ7と、紙葉類に対して光を照射する発光部80a,81bと、搬送路からの光を受光する受光部81aと、発光部での発光が無効にされた状態で、受光部81aで搬送路からの光を受光して、最も低い明度の基準値に設定する黒補正部233と、発光部が搬送路を移動する紙葉類に対して光を照射し、受光部で受光した光を、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とするように変換することで得られる複数の画素データと、真券に関する基準画素データとを、黒補正部233で設定された基準値に基づいて比較し真贋を判定する真贋判定処理部230とを有する。黒補正部233は、紙葉類が挿入される毎に、センサ7により紙葉類の挿入が検知されてから真贋判定処理部230で真贋判定する前に基準値の設定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、商品券、クーポン券等(以下、これらを紙葉類と総称する)の真贋を判定する紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紙葉類の一態様である紙幣を取扱う紙幣処理装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣の真贋を判定し、真正と判定された紙幣価値に応じて、各種の商品やサービスを提供するサービス機器、例えば遊技場に設置されている遊技媒体貸出機、或いは、公共の場に設置されている自動販売機や券売機等に組み込まれている。
【0003】
上記した紙幣の真贋の判定は、例えば、特許文献1に開示されているように、紙幣搬送路を移動する紙幣に対して光を照射する発光部と、発光部から照射された光の透過光や反射光を受光する受光センサとを備えた真贋判定装置によって行われ、前記受光センサからの受光データを正規のデータと比較することで真贋の判定処理がなされる。
【0004】
ところで、上記した真贋判定装置の受光センサは、そのデバイス特性として、経時劣化することが知られており、このような経時劣化が生じると、出力値が低下して、紙幣の受光データが暗くなってしまうことがある。このため、最も明度が低い出力の基準値を補正する、いわゆる黒補正を所定の期間毎に行うようにしており、例えば、紙幣処理装置の電源を投入した際、前記発光部から光が照射されていない状態で受光センサからの出力を読取り、この読取った受光データを、最も明度が低い基準値として設定することが行われている。
【特許文献1】特開2001−357429号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した受光センサは、経時劣化以外にも環境変化、例えば、装置内部の温度変化や装置周辺の環境温度の変化によって特性が変化する可能性がある。具体的には、装置稼動中に内部温度が上昇すると、受光センサの出力値が低下する可能性があり、このような特性の変化によって、真の読取りレベルを維持できず、真券であっても偽券と識別してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に着目してなされたものであり、環境変化が生じても、正確に紙葉類の真贋の判定処理が可能な紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る紙葉類処理装置は、紙葉類が挿入される挿入口と、前記挿入口に対する紙葉類の挿入を検知するセンサと、前記挿入口に挿入された紙葉類を搬送する搬送路と、前記搬送路に対して光を照射する発光部と、前記搬送路からの光を受光する受光部と、前記発光部での発光が無効にされた状態で、前記受光部で前記搬送路からの光を受光して、最も低い明度の基準値に設定する黒補正部と、発光部が搬送路を移動する紙葉類に対して光を照射し、前記受光部で受光した光を、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とするように変換することで得られる複数の画素データと、真券に関する基準画素データとを、前記黒補正部で設定された基準値に基づいて比較し真贋を判定する真贋判定処理部と、を有し、前記黒補正部は、紙葉類が挿入される毎に、前記センサにより紙葉類の挿入が検知されてから前記真贋判定処理部で真贋判定する前に前記基準値の設定を行うことを特徴とする。
【0008】
上記した構成の紙葉類処理装置によれば、紙幣が挿入されて真贋判定処理が実施される前毎に、黒補正が実行されるため、装置稼動中に温度変化等の環境変化が生じて受光センサの特性が変化しても、正確な真贋判定処理が可能となる。
【0009】
また、請求項2に係る発明においては、前記基準値の設定を実行した後、前記変換された複数の画素データの明度と、所定の明度との比較結果に基づいて、前記挿入口に挿入された紙葉類が重なった状態にあるか否かを判定する重送判定部を有することを特徴とする。
【0010】
上記した構成の紙葉類処理装置によれば、重送判定部において、紙葉類が重送(複数枚重ねて挿入されている状態、及び紙幣が折れ重なっている状態を含む)になっているか否かの判定が実施される。この際、環境変化が生じて読取った紙葉類の受光データの明度が変化しても、その前に上記した黒補正を実施しているため、適正な紙葉類の挿入状態を誤って重送と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境変化が生じても、正確に紙葉類の真贋の判定処理が可能な紙葉類処理装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
図1から図5は、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、開閉部材を装置本体の本体フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、挿入口から挿入される紙幣の搬送経路を概略的に示した右側面図、図4は、紙幣収容部に配設される押圧板を駆動するための動力伝達機構の概略構成を示す右側面図、そして、図5は、紙幣搬送機構を駆動するための駆動源及び駆動力伝達機構の概略構成を示す左側面図である。
【0014】
本実施形態の紙幣処理装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機に組み込み可能に構成されており、装置本体2と、この装置本体2に設けられ、多数の紙幣などを積層、収容することが可能な収容部(収容スタッカ;金庫)100とを備えている。この収容部100は、装置本体2に対して着脱可能であっても良く、例えば、図示されていないロック機構が解除された状態で、前面に設けられた取っ手101を引くことで、装置本体2から取り外すことが可能となっている。
【0015】
前記装置本体2は、図2に示すように、本体フレーム2Aと、本体フレーム2Aに対して一端部を回動中心として開閉されるように構成された開閉部材2Bとを有している。そして、これら本体フレーム2A及び開閉部材2Bは、図3に示すように、開閉部材2Bを本体フレーム2Aに対して閉じた際、両者の対向部分に紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路3)が形成されると共に、両者の前面露出側に、前記紙幣搬送路3に一致するようにして、紙幣挿入口5が形成されるよう構成されている。なお、前記紙幣挿入口5は、紙幣の短い辺側から装置本体2の内部に挿入できるようにスリット状の開口となっている。
【0016】
また、前記装置本体2内には、前記紙幣搬送路3に沿って、紙幣を搬送する紙幣搬送機構6と、紙幣挿入口5に挿入された紙幣を検知する挿入検知センサ7と、挿入検知センサ7の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段8と、この紙幣読取手段8に対して、紙幣を正確に位置決めして搬送するスキュー補正機構10と、紙幣がスキュー補正機構を構成する一対の可動片を通過したことを検知する可動片通過検知センサ12と、紙幣が紙幣収容部100に排出されたことを検知する排出検知センサ18とが設けられている。
【0017】
以下、上記した各構成部材について、詳細に説明する。
前記紙幣搬送路3は、紙幣挿入口5から奥側に向けて延出しており、第1搬送路3Aと、前記第1搬送路3Aから下流側に向けて延出し、第1搬送路3Aに対して所定角度、下方側に向けて傾斜した第2搬送路3Bとを備えている。この第2搬送路3Bの下流側は、鉛直方向に向けて屈曲しており、その下流側端部には、紙幣収容部100に紙幣を排出する排出口3aが形成されて、ここから排出される紙幣は、鉛直方向に向けて、紙幣収容部100の導入口(受入口)103に送り込まれる。
【0018】
前記紙幣搬送機構6は、紙幣挿入口5から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能にすると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口5に向けて差し戻し搬送可能とする機構である。この紙幣搬送機構6は、装置本体2内に設置された駆動源であるモータ13(図5参照)と、このモータ13によって回転駆動され、紙幣搬送路3に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対(14A,14B)、(15A,15B)、(16A,16B)、及び(17A,17B)を備えている。
【0019】
前記搬送ローラ対は、紙幣搬送路3に一部が露出するように設置されて、いずれも紙幣搬送路3の下側に設置される搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bがモータ13によって駆動されるローラとなっており、上側に設置される搬送ローラ14A,15A,16A及び17Aが、これらのローラに対して従動するピンチローラとなっている。なお、紙幣挿入口5から挿入された紙幣を最初に挟持して奥側に搬送する搬送ローラ対(14A,14B)は、図2に示すように、紙幣搬送路3の中心位置に1箇所設置されており、その下流側に順次配置される搬送ローラ対(15A,15B)、(16A,16B)、及び(17A,17B)については、紙幣搬送路3の幅方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。
【0020】
また、上記した紙幣挿入口5の近傍に配置される搬送ローラ対(14A,14B)については、通常は、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bから離間した状態となっており、紙幣の挿入が挿入検知センサ7によって検知されると、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bに向けて駆動され、挿入された紙幣を挟持するようになっている。
【0021】
すなわち、上側の搬送ローラ14Aについては、駆動源であるローラ昇降用モータ70(図6参照)によって、下側の搬送ローラ14Bに対して、当接/離間するように駆動制御される。この場合、スキュー補正機構10によって、挿入された紙幣の傾きを無くし紙幣読取手段8に対して位置合わせする処理(スキュー補正処理)が行われる際には、上側の搬送ローラ14Aは、下側の搬送ローラ14Bから離間して紙幣に対する負荷を解除し、スキュー補正処理が終了すると、再び、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bに向けて駆動され、紙幣を挟持する。なお、駆動源については、モータ以外にもソレノイド等によって構成されていても良い。
【0022】
また、前記スキュー補正機構10は、スキューの補正を果たす左右一対の可動片10A(片側のみ図示)を備えており、スキュー補正機構用のモータ40を駆動することで、左右一対の可動片10Aを接近するように移動させ、これにより、紙幣に対するスキューの補正処理が成される。
【0023】
上記した紙幣搬送路3の下側に設置される搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは、図5に示すように、モータ13、及び各搬送ローラの駆動軸の端部に設置されるプーリ14C,15C,16C及び17Cを介して回転駆動される。すなわち、モータ13の出力軸には、駆動プーリ13Aが設置されており、上記した各搬送ローラの駆動軸の端部に設置されるプーリ14C,15C,16C及び17Cには、駆動プーリ13Aとの間で駆動ベルト13Bが巻回されている。なお、駆動ベルト13Bには、適所にテンションプーリが係合しており、弛みを防止している。
【0024】
上記した構成により、モータ13が正転駆動されると、前記搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは同期して正転駆動され、紙幣を挿入方向に向けて搬送し、モータ13が逆転駆動されると、前記搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは同期して逆転駆動され、紙幣を紙幣挿入口5側に向けて搬送する。
【0025】
前記挿入検知センサ7は、紙幣挿入口5に挿入された紙幣を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号が発せられると、モータ13が正転駆動され、紙幣を挿入方向に向けて搬送する。本実施形態の挿入検知センサ7は、搬送ローラ対(14A,14B)と、スキュー補正機構10との間に設置されており、光学式のセンサ、例えば、回帰反射型フォトセンサによって構成されているが、それ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0026】
また、前記可動片通過検知センサ12は、紙幣の先端が、スキュー補正機構10を構成する左右一対の可動片10Aを通過したことを検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号が発せられると、モータ13の駆動が停止され、スキュー補正処理が成される。本実施形態の可動片通過検知センサ12は、前記紙幣読取手段8の上流側に設置されており、前記挿入検知センサと同様、光学式のセンサや機械式のセンサによって構成される。
【0027】
また、前記排出検知センサ18は、通過する紙幣の後端を検知して、紙幣が紙幣収容部100に排出されたことを検知するものであり、第2搬送路3Bの下流側において、紙幣収容部100の受入口103の直前に配設されている。排出検知センサ18から検知信号が発せられると、モータ13の駆動が停止され、紙幣の搬送処理が終了する。この排出検知センサ18についても、前記挿入検知センサと同様、光学式のセンサや機械式のセンサによって構成される。
【0028】
前記紙幣読取手段8は、スキュー補正機構10によってスキューが補正された状態で搬送される紙幣について、その紙幣情報を読取り、その有効性(真贋)を識別する。本実施形態では、紙幣読取手段8は、搬送される紙幣の両面側から光を照射し、その透過光と反射光を受光部で検知することで読取を行うラインセンサを備えた構成になっており、前記第1搬送路3Aに設置されている。
【0029】
ここで、上記した紙幣読取手段8の構成について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
【0030】
上記した紙幣読取手段8は、開閉部材2B側に配設され、搬送される紙幣の上側に赤外光及び赤色光を照射可能とした第1発光部80aを具備した発光ユニット80と、本体フレーム2A側に配設された受発光ユニット81とを有している。
【0031】
この受発光ユニット81は、紙幣(紙幣搬送路)を挟むようにして第1発光部80aと対向する受光センサを具備した受光部81aと、受光部81aの紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、赤外光及び赤色光を照射可能とした第2発光部81bとを有している。
【0032】
前記受光部81aと対向配置された第1発光部80aは透過用の光源として機能する。この第1発光部80aは、図2に示すように、一端に取り付けたLED素子80bからの光を、内部に設けた導光体80cを通して発光する合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。このような構成の第1発光部は、受光部81a(受光センサ)と平行にライン状に配設されており、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して全体的に均一に照射することが可能となる。
【0033】
前記受発光ユニット81の受光部81aは、紙幣搬送路3に対して交差方向に伸延し、かつ受光部81aに設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。なお、前記受光センサは、受光部81aの厚み方向の中央に、複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にグリンレンズアレイ81cを配置した所謂ラインセンサとして構成されている。
【0034】
また、受発光ユニット81の第2発光部81bは反射用の光源として機能する。この第2発光部81bは、第1発光部80aと同様、一端に取り付けたLED素子81dからの光を、内部に設けた導光体81eを通して全体的に均一に照射可能とした合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。この第2発光部81bについても、受光部81a(ラインセンサ)と平行にライン状に配設して構成されている。
【0035】
前記第2発光部81bは、例えば45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部81aで受光するように配設されている。この場合、第2発光部81bから照射された光が受光部81aへ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、紙幣の表面に対して濃淡なく均一に光が照射できれば、その設置状態については適宜設定することができる。このため、第2発光部81b及び受光部81aの配置については、紙幣処理装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。
【0036】
また、前記第2発光部81bについては、受光部81aを挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部81bについては、片方のみに設置した構成であっても良く、上記した発光ユニット80、受発光ユニット81の構成や配置などは、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変形することが可能である。
【0037】
上記した受光部81aで取得される紙幣からの透過光(第1発光部80aの照射光)及び反射光(第2発光部81bの照射光)によって得られる画像データは、真券に関する画像データと比較することで真贋判定処理が成される。この場合、真正の紙幣には、照射する光の波長(例えば、可視光や赤外光)によって、取得される画像データが異なる領域があることから、本実施形態における真贋判定処理では、この点に着目し、複数の光源によって異なる波長(本実施形態では、赤色光及び赤外光を照射する)の光を紙幣に照射し、その透過光と反射光を検出することで、真贋の識別精度をより高めるようにしている。すなわち、赤色光と赤外光では、波長が異なることから、波長の異なる複数の光による透過光データや反射光データを紙幣の真贋判定に用いると、真券と偽札との特定領域を通過する透過光や特定領域から反射する反射光では、透過率、反射率がそれぞれ異なるという性質がある。このため、上記した発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)では、複数の波長の光源を用いることで紙幣の真贋の識別精度をより高めるようにしている。
【0038】
具体的な紙幣の真贋識別方法については、紙幣に照射する光の波長や照射領域により、様々な受光データ(透過光データ、反射光データ)を取得できるため、詳細に説明しないが、例えば、紙幣の透かし領域では、異なる波長の光でその領域の画像を見た場合、画像が大きく異なって見えることから、この部分を特定領域とし、当該特定領域における透過光データや反射光データを取得して、予めROM等の記憶手段に記憶してある真券の同じ特定領域における正規データと比較して、識別対象となる紙幣が真券であるか偽札であるかを識別することが考えられる。このとき、金種に応じて特定領域を定めておき、この特定領域における透過光データや反射光データに所定の重み付けを設定しておき、真贋識別精度のさらなる向上を図ることも可能である。
【0039】
また、上記した発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)は、所定の間隔で点灯制御され、紙幣が通過する際の透過光及び反射光が受光部(ラインセンサ)81aで検知される。この受光部(ラインセンサ)81aでは、その輝度に応じた濃淡データ(明るさの情報を含み所定の大きさを1単位とした複数の画素データ)を取得することが可能であり、この画素データから二次元画像を生成することが可能となっている。
【0040】
この場合、ラインセンサによって取得される画像データは、後述する変換部によって、画素毎に、明るさを有する色情報を含んだデータに変換される。ここで、変換部において変換される明るさを有する画素毎の色情報とは、濃淡値すなわち濃度値(輝度値)に対応するものであって、例えば、1バイト情報として、その濃度値に応じて、0から255の数値(例えば、0:白〜255:黒)が各画素に割り当てられたものである。
【0041】
このため、真贋判定処理では、紙幣の所定の領域を抽出し、その領域に含まれる画素情報(濃度値)と、真券の同じ領域の画素情報とを用い、これらを適宜の相関式に代入して演算した相関係数により、真贋を識別することが可能である。或いは、上記した以外にも、透過光データや反射光データから、例えばアナログ波形を生成し、この波形の形状同士の比較で、真贋を識別することも可能である。更には、紙幣の印刷領域の長さを検出し、この長さ情報を利用して真贋を識別する処理を備えていても良い。
【0042】
そして、上記した受光部(ラインセンサ)81aでは、搬送される紙幣の読取りを実行する前に、最も明度が低い出力の基準値を補正する黒補正が実行される。この黒補正は、後述するように、紙幣が挿入される毎に、紙幣挿入口5から挿入された紙幣が挿入検知センサ7によって検知されてから、実際に紙幣の読取開始前までに実行されるようになっている。
【0043】
前記黒補正は、受光部81aと接続される黒補正部(黒補正演算回路)で行われ、挿入された紙幣の読取り処理が実施される前に、発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)からの発光を無効にした状態、例えば、発光部が消灯制御されているときに、受光部81aからの出力を取得することで実施される。具体的には、受光部81aからの検知信号(発光部での発光が無効になっている状態で検知される検知信号)を画素情報に変換し、これを基準となる明度(基準値)として設定し記憶する。この黒補正部で設定された明度の基準値は、実際に受光部81aから紙幣の情報が検出されて画素情報に変換する際の最も明度が低い基準値とされ、受光部81aからの出力値を適正レベルに補正する。なお、発光部からの発光を無効にする手段として、いずれかの発光部が点灯していても、受光部81aにおいて発光部からの光を受光しないように、受光部を遮蔽するような構成にしても良い。
【0044】
このように、発光部を発光させない状態で、受光部81aにおいて黒補正を行うことにより、紙幣の読取り処理毎に、受光部81aで受光される光の明度に関し、最も低い明度の基準値が設定されるようになる。すなわち、受光部81aのデバイス特性や装置内部の環境変化等によって、受光部からの出力値が変化しても、上記した黒補正部で明度の基準値を補正(黒補正)して出力値が適正化されているため、取得された紙幣の読取り情報は、適切な明度に基づいて上記したような真贋判定処理を実施することが可能となる。
【0045】
実際の真贋判定処理では、ROM等により、予め記憶されている真正紙幣に関する基準画素データと、搬送される紙幣の表面の印刷領域に発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)から所定波長の光を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データ、並びに反射した光の反射光データを取得し、これを、適切な明度に黒補正した画素データとを比較することで成される。
【0046】
なお、本実施形態では、ラインセンサが紙幣の幅全体を読取り可能であり、紙幣の搬送に伴って二次元の画像を取得できることに着目し、ラインセンサによって読取られた紙幣の先端部分における画素毎の濃度値を、読取られた部分に対応する基準となる画素毎の濃度値と対比して、紙幣先端の折れ曲がり、及び紙幣が重送されているか否かを判別する重送判定部を備えている。
【0047】
このような重送判定部を設けておくことで、上述したように、環境変化などが生じて読取った紙幣の受光データの明度が変化しても、紙幣が挿入される毎に上記した黒補正を実施しているため、適正な紙幣の挿入状態を誤って重送と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【0048】
次に、上記した紙幣読取手段8で真性と識別された紙幣を順次、積層、収容する紙幣収容部100について説明する。
【0049】
図3から図5に示すように、紙幣収容部100を構成する本体フレーム100Aは、略直方体形状に構成されており、その前壁102aの内側には、付勢手段(付勢バネ)106の一端が取り付けられ、その他端には、上記した受入口103を介して送り込まれる紙幣を順次、積層する載置プレート105が設けられている。このため、載置プレート105は、前記付勢手段106を介して、後述する押圧板115側に向けて付勢された状態になっている。
【0050】
本体フレーム100A内には、受入口103に連続するように、落下する紙幣をそのまま待機、保持させる押圧待機部108が設けられている。押圧待機部108の載置プレート側の両サイドには、鉛直方向に延出して一対の規制部材110が配置されている。この一対の規制部材110の間には、載置プレート105上に紙幣が順次、積層されるに際して、押圧板115が通過するように、開口部が形成されている。
【0051】
さらに、本体フレーム100A内には、受入口103から押圧待機部108に落下した紙幣を載置プレート105に向けて押圧する押圧板115が配設されている。この押圧板115は、前記一対の規制部材110の間に形成された開口部を往復移動できる程度の大きさに構成されており、この開口部内に入り込んで、紙幣を載置プレート105に押し付ける位置(押圧位置)と、前記押圧待機部108を開放する位置(初期位置)との間で往復駆動される。この場合、押圧板115の押し込み動作によって、紙幣は撓みながら開口部を通過して、載置プレート105上に載置される。
【0052】
前記押圧板115は、本体フレーム100A内に配設される押圧板駆動機構120を介して、上記したように往復駆動される。押圧板駆動機構120は、押圧板115を図3及び図4の矢印A方向に往復移動可能となるように、両端が押圧板115に軸支された一対のリンク部材115a,115bを備えており、これらのリンク部材115a,115bはX字状に連結され、それぞれの反対側の端部は、垂直方向(矢印B方向)に移動可能に設置された可動部材122に軸支されている。この可動部材122には、ラックが形成されており、このラックには、押圧板駆動機構120を構成するピニオンが噛合している。
【0053】
このピニオンには、図4に示すように、押圧板駆動機構120を構成する収容部側ギヤトレイン124が連結されている。この場合、本実施形態においては、図45に示すように、上述した装置本体2内に、駆動源(モータ20)と、このモータ20に順次噛合する本体側ギヤトレイン21が配設されており、紙幣収容部100を装置本体2に装着すると、本体側ギヤトレイン21が収容部側ギヤトレイン124に連結するようになっている。すなわち、収容部側ギヤトレイン124は、ピニオンと同軸上に配設されるギヤ124B、及びこれに順次噛合するギヤ124C,124Dを備えており、紙幣収容部100を装置本体2のフレーム2Aに対して着脱する際、ギヤ124Dが、本体側ギヤトレイン21の最終ギヤ21Aと噛合、離間するよう構成されている。
【0054】
この結果、上記した押圧板115は、装置本体2に設けられたモータ20が回転駆動されることで、本体側ギヤトレイン21、及び押圧板駆動機構120(収容部側ギヤトレイン124、可動部材122に形成されるラック、及びリンク部材115a,115b等)を介して、矢印A方向に往復駆動される。
【0055】
また、本体フレーム100Aには、前記受入口103から搬入される紙幣に対して接触可能な搬送部材150が設置されている。この搬送部材150は、搬入される紙幣に接触して、安定して紙幣を押圧待機部108の適正位置(押圧板115で紙幣を押圧した際、紙幣が左右に片寄ることなく、安定して押圧できる位置)に案内する役目を果たす。本実施形態では、この搬送部材は、押圧待機部108に臨むように設置されたベルト状の部材(以下、ベルト150とする)によって構成されている。
【0056】
この場合、ベルト150は、紙幣に対して搬入方向に沿って延在するように設置されており、搬入方向の両端部に回転可能に支持された一対のプーリ150A,150Bに巻回されている。また、ベルト150は、受入口103の領域に回転可能に支持された軸方向に延出する搬送ローラ150Cと当接しており、受入口103に搬入された紙幣を挟持して、紙幣をそのまま押圧待機部108に案内するようにしている。さらに、本実施形態では、前記ベルト150は、紙幣の両サイドの表面に接触可能となるように、上記した押圧板115を挟むようにして左右一対設けられている。なお、ベルト150は、両端におけるプーリ150A,150Bの巻回以外に、中間位置でテンションプーリを当て付け、弛みを防止するようにしても良い。
【0057】
前記一対のベルト150は、装置本体2内に設置される上述した複数の搬送ローラを駆動するモータ13によって駆動されるようになっている。具体的には、図5に示すように、モータ13によって駆動される上述した駆動ベルト13Bは、駆動力伝達用のプーリ13Dに巻回されており、このプーリ13Dに順次設置される動力伝達用のギヤトレイン13Eには、受入口103側に回転可能に支持されているプーリ150Aの支軸の端部に設置されたギヤトレイン153が噛合するようになっている。すなわち、紙幣収容部100が装置本体2に装着された際、ギヤトレイン13Eの最終ギヤには、ギヤトレイン153の入力ギヤが噛合するようになっており、一対のベルト150は、モータ13の回転駆動により、上述した紙幣搬送用の搬送ローラ14B,15B,16B,17Bと一体的に回転駆動されるようになっている。
【0058】
上述したように、紙幣が紙幣挿入口5を介して内部に挿入されると、紙幣は、上記した紙幣搬送機構6によって、紙幣搬送路3内で移動して行く。紙幣搬送路3は、図3に示すように、紙幣挿入口5から奥側に向けて延出した第1搬送路3Aと、前記第1搬送路3Aから下流側に向けて延出し、第1搬送路3Aに対して所定角度傾斜した第2搬送路3Bとを備えている。
【0059】
そして、この第2搬送路3Bには、紙幣を紙幣挿入口5側に向けて移動するのを防止する引抜防止部材(シャッタ部材)170が設置されている。この引抜防止部材170は、支軸170aを介して、図3の矢印方向(第2搬送路3Bを閉塞する方向)に回動付勢されており、紙幣が紙幣収容部100側に向けて移動する際、付勢力に抗して第2搬送路を開放するように回動し、一旦紙幣が通過すると、その付勢力によって、矢印方向に回動され、第2搬送路3Bを閉塞する。すなわち、紙幣の後端が引抜防止部材170を通過すると、引抜防止部材170によって第2搬送路3Bは閉塞され、紙幣の引抜ができないようになっている。
【0060】
なお、このような引抜防止部材は、紙幣読取手段8の下流側の搬送経路に沿って、複数箇所設置されていても良い。また、その設置位置に関しては、紙幣の真贋判定処理を行っている際に紙幣が停止する位置(エスクロ位置;本実施形態では、紙幣読取手段8の下流側、約13mmの位置とされる)よりも下流側にあれば良い。
【0061】
次に、上述した紙幣搬送機構6、紙幣読取手段8等の駆動部材の駆動を制御する制御手段200について、図6のブロック図を参照して説明する。
【0062】
図6のブロック図に示す制御手段200は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御基板210を備えており、この制御基板210上には、各駆動装置の駆動を制御すると共に、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)220と、ROM(Read Only Memory)222と、RAM(Random Access Memory)224と、真贋判定処理部230とが実装されている。
【0063】
前記ROM222には、紙幣搬送機構用のモータ13、押圧板駆動用のモータ20、スキュー補正機構用のモータ40、ローラ昇降用のモータ70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定処理部230における真贋判定プログラム、及び紙幣の先端部分における折れや重送を判定する重送判定プログラムのような各種プログラム等、恒久的なデータが記憶されている。
【0064】
前記CPU220は、ROM222に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート240を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣処理装置の全体的な動作制御を行う。すなわち、CPU220には、I/Oポート240を介して、紙幣搬送機構用のモータ13、押圧板駆動用のモータ20、スキュー補正機構用のモータ40、ローラ昇降用のモータ70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM222に格納された作動プログラムに従って、CPU220からの制御信号により動作が制御される。また、CPU220には、I/Oポート240を介して、挿入検知センサ7、可動片通過検知センサ12、排出検知センサ18からの検知信号が入力されるようになっており、これら検知信号に基づいて、上記した各種駆動装置の駆動制御が行われる。
【0065】
また、CPU220には、I/Oポート240を介して、上述した紙幣読取手段8における受光部81aから、識別対象物である紙幣に向けて照射された光の透過光や反射光に基づく検知信号が入力されるようになっている。これら紙幣読取手段8における第1発光部80a及び第2発光部81bは、上記したROM222に格納された動作プログラムに従い、CPU220からの制御信号によって、発光制御回路260を介して、点灯間隔、及び消灯が制御される。
【0066】
さらに、CPU220には、I/Oポート240を介して、上述した紙幣読取手段8における受光部81aから、後述する黒補正を行うに際して、発光部(第1発光部80a,第2発光部81b)からの発光を無効にした状態で受光部81aからの検知信号、すなわち、便宜上発光部での発光がない状態で搬送路からの光を受光して、その検知信号が入力されるようになっている。
【0067】
前記RAM224には、CPU220が作動する際に用いるデータやプログラムが一時的に記憶されると共に、識別対象物である紙幣の受光データ(複数の画素によって構成される画像データ)を取得して一時的に記憶する機能を備えている。
【0068】
前記真贋判定処理部230は、搬送される紙幣が真正なものであるか否かを判定する機能、及び搬送された紙幣の先端が折れ曲がっていたり、或いは、重送されていないかを判別する機能を有する。この真贋判定処理部230は、前記RAM224に格納された識別対象物の受光データに関し、画素毎に、明るさを有する色情報(濃度値)を含んだ画素情報に変換する変換部231と、この変換部231で変換された画素情報を基に画像データを取得する画像データ処理部232と、紙幣が紙幣挿入口5から挿入されてから読取開始がされる前までに、黒補正を実施する黒補正部233とを備えている。
【0069】
黒補正部233では、発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)からの発光を無効にした状態、例えば、発光制御回路260において、発光部が消灯制御されているときに、受光部81aからの検知信号を取得することで実施され、これにより、紙幣の読取り処理毎に、受光部81aにおいて受光される光の明度に関し、最も低い明度の基準値が設定される。
【0070】
また、真贋判定処理部230は、真正な紙幣に関する基準データ(真正な紙幣に関する画素データ)を格納した基準データ記憶部234と、前記画像データ処理部232において黒補正がされた紙幣の画像データ(画素データ)と前記基準データ記憶部234に格納されている基準データ(基準画素データ)とを比較し、搬送される紙幣が真正であるか否かの判別処理を行う比較判定部235と、を備えている。
【0071】
この場合、基準データ記憶部234には、上記した真贋判定処理を実施するに際して用いられる真正紙幣に関する画像データが記憶されており、それ以外にも、例えば、真正紙幣に関する印刷長の基準値等、真贋判定に際して用いられる各種の基準データが金種毎に記憶されている。なお、このような基準となるデータについては、専用の基準データ記憶部233に記憶させているが、これを上記したROM222に記憶させておいても良い。
【0072】
また、前記比較判定部235は、受光部81aによって読取られた紙幣の先端部分における画素毎の濃度値を、読取られた部分に対応する基準となる画素毎の濃度値(基準データ記憶部234に格納されている濃度値)と対比して、紙幣先端の折れ曲がり、及び紙幣が重送されているか否かを判別する重送判定部236を備えている。
【0073】
上記した真贋判定処理部230における実際の真贋判定処理では、搬送される紙幣の表面の印刷領域に発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)から所定波長の光を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データ並びに反射した光の反射光データを、変換部231において明るさを有する色情報を含み所定の大きさを1単位とする複数の画素データに変換し、これを基準データ記憶部234に予め記憶されている真正紙幣に関する基準画素データと比較することで成される。この場合、変換部231で変換される複数の画素データにおける個々の明るさについては、黒補正部233で適切な明度に設定された基準値に基づいて補正されていることから、比較判定する際に誤って偽と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【0074】
すなわち、画像データ処理部232において取得される画像データ(明るさ情報を含む複数の画素データ)については、その読取り処理が成される前に、黒補正部233で明度の基準値が補正(黒補正)されており、この黒補正された基準値に基づく画像データが真贋判定処理に用いられる。このため、例えば、装置稼動中において、環境温度が高くなる等の要因により受光センサである受光部81aからの出力が弱くなって取得される紙幣の画像データが暗くなっても、受光部の明度の基準値もそれに応じて補正されているため、適切な真贋判定処理を実施することが可能となる。
【0075】
次に、上述した制御手段200によって実行される紙幣処理装置1における紙幣の処理動作について、図7〜図13のフローチャートに従って説明する。
【0076】
操作者が紙幣を紙幣挿入口5に挿入する際、紙幣挿入口の近傍に設置される搬送ローラ対(14A,14B)は、初期状態において離間した状態にある(後述するST18,ST58参照)。また、押圧板115は、押圧板115を駆動する一対のリンク部材115a,115bが押圧待機部108に位置しており、紙幣が一対のリンク部材115a,115bによって受入口103から押圧待機部108に搬入できない待機位置に設定されている。すなわち、この状態では、一対の規制部材110の間に形成された開口部に押圧板115が入り込んでいるため、開口部を介して紙幣収容部内に収容されている紙幣を抜き取ることができない状態となっている。
【0077】
さらに、搬送ローラ対(14A,14B)の下流側に位置するスキュー補正機構10を構成する一対の可動片10Aは、初期状態において、あらゆる紙幣の引き抜きができないように最小幅(例えば一対の可動片10Aの間隔が52mm;後述するST17,ST59参照)に移動した状態にある。
【0078】
上記した搬送ローラ対(14A,14B)の初期状態では、皺のある紙幣であっても、操作者は容易に挿入することができる。そして、挿入検知センサ7によって紙幣の挿入が検知されると(ST01)、発光部80a,81bの発光状態を無効にした状態で受光部81aからの検知信号を取得して黒補正処理が行われる(ST02)。なお、この黒補正処理を実行するタイミングについては、後述するラインセンサによる紙幣読取処理が行われる(ST14)までに実行されていれば良い。
【0079】
上述した押圧板115の駆動用のモータ20を所定量逆転駆動し(ST03)、押圧板115を初期位置に移動させる。すなわち、挿入検知センサ7によって紙幣の挿入が検知されるまでは、前記押圧板115は、一対の規制部材110の間に形成された開口部に移動された状態となっており、開口部を介して紙幣が通過できないように設定されている。
【0080】
押圧板115が待機位置から初期位置に移動されると、押圧待機部108は開放状態となり(図4参照)、紙幣は、紙幣収容部100内に搬入可能な状態となる。すなわち、モータ20を所定量逆転駆動することで、押圧板115は、本体側ギヤトレイン21、及び押圧板駆動機構120(収容部側ギヤトレイン124、可動部材122に形成されるラック、及びリンク部材115a,115b)を介して、前記待機位置から初期位置に移動される。
【0081】
また、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、上側の搬送ローラ14Aを下側の搬送ローラ14Bに当接するように移動させる。これにより、挿入された紙幣は搬送ローラ対(14A,14B)によって挟持される(ST04)。
【0082】
次いで、紙幣搬送路の開放処理が成される(ST05)。この開放処理は、図10に示すフローチャートに示すように、述したスキュー補正機構用のモータ40を逆転駆動することで、一対の可動片10Aを互いに離間する方向に駆動することで成される(ST100)。このとき、一対の可動片10Aの位置を検知する可動片検知センサによって、一対の可動片10Aが所定位置(最大幅位置)に移動したことが検知されると(ST101)、モータ40の逆転駆動が停止される(ST102)。この搬送路開放処理により、一対の可動片10A内に紙幣が進入できる状態になっている。なお、このST05の前段階では、紙幣搬送路3は、後述する搬送路閉鎖処理(ST17,ST59)によって閉鎖された状態にあるが、このように、紙幣挿入前に紙幣搬送路3を閉じておくことで、例えば、不正目的などで紙幣挿入口から板状の部材を挿入して、ラインセンサなどの素子を破損させることを防止することができる。
【0083】
次いで、紙幣搬送用のモータ13が正転駆動される(ST06)。紙幣は、搬送ローラ対(14A,14B)によって装置内部に搬送され、スキュー補正機構10よりも下流側に配設されている可動片通過検知センサ12が紙幣の先端を検知すると、紙幣搬送用のモータ13は停止される(ST07,ST08)。このとき、紙幣は、スキュー補正機構10を構成する一対の可動片10A間に位置している。
【0084】
引き続き、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、紙幣を挟持した状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させる(ST09)。このとき、紙幣には、何等、負荷が作用していない状態となる。
【0085】
そして、この状態でスキュー補正作動処理を行う(ST10)。このスキュー補正作動処理は、上述したスキュー補正機構用のモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを互いに接近する方向に駆動することで成される。すなわち、このスキュー補正作動処理は、図11のフローチャートに示すように、上述したモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを、互いに接近する方向に移動する(ST110)。この可動片の移動は、制御手段における基準データ記憶部に登録されている紙幣の最小幅(例;幅62mm)となるまで実行され、これにより、紙幣は、両側に当て付く可動片10Aによって、スキューが補正され、正確な中心位置となるように位置決めされる。
【0086】
上述したようなスキュー補正作動処理が終了すると、引き続き、搬送路開放処理が実行される(ST11)。これは、上述したスキュー補正機構用のモータ40を逆転駆動することで、一対の可動片10Aを離間する方向に移動することで成される(図10のST100〜ST102参照)。
【0087】
続いて、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、上側の搬送ローラ14Aを下側の搬送ローラ14Bに当接するように移動させ、紙幣を搬送ローラ対(14A,14B)に挟持させる(ST12)。その後、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動して紙幣を装置内部に向けて搬送し、紙幣が紙幣読取手段8を通過する際に、紙幣の読取処理を開始する(ST13,ST14)。
【0088】
この紙幣の読取処理の開始に伴って、重送判定部236において、紙幣の重送判定処理が実行される(ST15)。この重送判定処理は、図13のフローチャートに示すように、最初に紙幣を所定の長さ読取ったか否かが判断され(ST150)、この所定長の読取りが終了した段階で、取得された紙幣の先端領域における透過光による画素の合計濃度値が算出される(ST151)。ここで算出される濃度値については、上述した黒補正処理(ST02)で設定された基準値に基づいて明度が適正に補正されている。
【0089】
そして、制御手段200の真贋判定処理部230は、取得された紙幣の先端領域における画素データの合計濃度値と、基準データ記憶部234に格納された同じ領域の基準データの濃度値とを対比し、所定の閾値に基づいて、紙幣が重送されているか(先端が折れ曲がっているか)について判別処理を実行する(ST152)。
【0090】
通常、この判別処理を実施する際、環境温度の変化等の要因によって受光部81aからの出力値が低下していると、正しい状態で紙幣を挿入しても、画像の明度が暗くなってしまい誤って重送と判別する可能性もあるが、上記した黒補正処理によって、受光部81aからの出力値が適正レベルに補正されているため、正確な重送判定を実施することが可能となる。
【0091】
このST152の処理において、重送が生じていると判別された場合、CPU220は、その紙幣を直ちに紙幣挿入口5から排出するように、紙幣搬送用モータ13を逆転駆動する(ST152、No,ST53〜ST55)。すなわち、このST152の処理において、紙幣の読取処理が終了する前に、重送が生じていると判別されると、以後の紙幣の読取処理を行うことなく、その紙幣は直ちに逆搬送され、紙幣挿入口5から排出されて、その紙幣の一連の処理は終了する(ST53〜ST60)。
【0092】
そして、上記した判別処理(ST152)において、紙幣が重送されていないと判別された場合、そのまま紙幣の読取処理が継続される(ST16)。
【0093】
そして、搬送される紙幣が紙幣読取手段8を通過して、紙幣の後端が、可動片通過検知センサ12によって検知されると(ST16)、紙幣搬送路3の閉鎖処理が実行される(ST17)。この処理においては、まず、図12のフローチャートに示すように、紙幣の後端が、可動片通過検知センサ12によって検知された後、上述したモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを、互いに接近する方向に移動する(ST130)。次に、可動片検知センサによって、可動片10Aが所定位置(最小幅位置、例えば52mm)に移動したことが検知されると(ST131)、モータ40の正転駆動が停止される(ST132)。
【0094】
この搬送路閉鎖処理により、一対の可動片10Aは、挿入可能なあらゆる紙幣の幅よりも狭い最小幅位置(幅52mm)に移動されており、これにより、紙幣の引き抜きを効果的に防止するようにしている。すなわち、このような紙幣搬送路の閉鎖処理を実行することで、挿入された紙幣の幅よりも、可動片10A間の距離が狭くなり、操作者が不正目的で紙幣を挿入口方向に向けて引き抜く等の行為を効果的に防止することが可能となる。
【0095】
上記した搬送路閉鎖処理(ST17)に引き続いて、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、紙幣を挟持可能な状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させる搬送ローラ対離間処理が行われる(ST18)。この搬送ローラ対離間処理を行うことで、操作者が誤って紙幣を追加投入(二重投入)しても、紙幣は、搬送ローラ対(14A,14B)による送り動作を受けることはなく、また、ST17において接近した状態にある一対の可動片10Aの前面に突き当たることから、紙幣の二重投入動作を確実に防止することができる。
【0096】
上記した紙幣搬送路の閉鎖処理と共に、紙幣読取手段8が紙幣の後端までデータを読取ると、紙幣搬送用のモータ13を所定量駆動し、紙幣を所定位置(エスクロ位置;紙幣読取手段8の中心位置から13mm紙幣が下流側に搬送された位置)で停止させ、このときに、制御手段200の真贋判定処理部230において、基準データ記憶部234に記憶されている基準データを参照し、比較判定部235で紙幣の真贋判定処理を実行する(ST19〜ST22)。
【0097】
上記したST22の真贋判定処理において、紙幣が真券であると判定されると(ST23;Yes)、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動する(ST24)。この紙幣の搬送に際しては、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知されるまで紙幣搬送用のモータ13は正転駆動され(ST25)、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知されてから、紙幣搬送用のモータ13は所定量だけ正転駆動される(ST26,ST27)。
【0098】
このST26、及びST27における紙幣搬送用のモータ13の正転駆動処理は、紙幣が、装置本体2の紙幣搬送路3の下流側にある排出口3aから紙幣収容部100の受入口103に搬入され、前記一対のベルト150が、搬入される紙幣の両側表面に接触して安定して、押圧待機部108に案内される駆動量に対応している。すなわち、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知された後、更に、所定量、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動することで、前記一対のベルト150は、搬入される紙幣に接触しつつ紙幣送り方向に駆動され、紙幣を安定した状態で押圧待機部108に案内する。
【0099】
そして、上記した紙幣搬送用のモータ13が停止した後、紙幣を載置プレート105上に載置すべく押圧板115の駆動処理を実行し(ST28)、押圧処理が終了すると、押圧板115は再び待機位置に移動され、その位置で停止される。
【0100】
また、上述した処理手順のST23において、挿入された紙幣が真券でないと判別された場合、搬送路開放処理を実行し(ST51、図10のST100〜ST102参照)、その後、紙幣搬送用のモータ13を逆転駆動し、搬送ローラ対(14A,14B)の挟持処理を実行した後、エスクロ位置に待機している紙幣を、紙幣挿入口5に向けて搬送する(ST52,53)。
【0101】
なお、本実施形態の構成では、読取った紙幣が真券でない判別されても、直ちに装置外に排出するのではなく、以下の工程のように、所定回数(3回)、読取処理を繰り返すようにしている。
【0102】
すなわち、上記ST53によって紙幣が紙幣挿入口5に向けて搬送され、挿入検知センサ7が紙幣挿入口5に向けて差し戻される紙幣の後端を検知した際、紙幣搬送用のモータ13の逆転駆動を停止する(ST54,ST55)。このとき、上述した紙幣の重送判定処理で、重送と判別されなければ(ST56、No)、紙幣の真贋判定処理が3回実施されたか否かを判別し(ST57)、真贋判定処理が3回実施されていなければ(ST57、No)、上述したST06以降の処理を実行する(このリトライ処理は2回実行される)。そして、真贋判定処理が3回実施されていれば(ST57、Yes)、その紙幣については、これ以上、真贋判定処理を実施することなく、排出処理を行う。
【0103】
この排出処理は、前記ローラ昇降用モータ70を駆動することで、前記ST52において紙幣を挟持した状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させることで実行される(ST58)。そして、その後、搬送路閉鎖処理を実施する(ST59,図12のST130〜ST132参照)と共に、押圧板115の駆動用のモータ20を所定量正転駆動して(ST60)、初期位置にある押圧板115を待機位置に駆動して一連の処理が終了する。
【0104】
なお、上述したように、重送と判別された紙幣については、読取動作中に紙幣搬送用モータ13を逆転駆動することで、紙幣挿入口5から直ちに排出処理が実行され(ST53〜ST55)、その後、ST57の合計3回の真贋判定処理を実施することなく(ST56、Yes)、そのまま、排出処理を行って、一連の処理を終了させるようにしている(ST58〜ST60)。
【0105】
上記した構成の紙幣処理装置によれば、紙幣が挿入されて真贋判定処理が実施される前毎に、紙幣からの検知光を受光する受光部81aで検知される光の明度に関し、黒補正が実行されるため、例えば、装置稼動中に温度変化等の環境変化が生じて受光部81aの特性が変化しても、正確な真贋判定処理を実施することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態では、ラインセンサが紙幣の幅全体を読取り可能であり、紙幣の搬送に伴って二次元の画像を取得できることに着目し、ラインセンサによって読取られた紙幣の先端部分における画素毎の濃度値を、読取られた部分に対応する基準となる画素毎の濃度値と対比して、紙幣先端の折れ曲がりや紙幣が重送されているか否かを判別する重送判定部を備えている。
【0107】
このような重送判定部を設けておくことで、上述したように、環境変化などが生じて読取った紙幣の受光データの明度が低くなっても、紙幣が挿入される毎に上記した黒補正を実施しているため、適正な紙幣の挿入状態を誤って重送と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することが可能である。
【0109】
本発明は、紙幣が挿入されて読取り処理が実行される前毎に、紙幣読取手段を構成する受光部の黒補正処理を行うことに特徴があり、それ以外の構成については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、紙幣の読取手段8の構成、配設位置等については、適宜、変形することが可能である。また、黒補正を実施するタイミングについても、適宜変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、紙幣処理装置に限定されることはなく、クーポン券やサービス券など、紙葉類が挿入されたことで、各種の商品やサービスを提供する装置に組み込むことが可能である。特に、本発明の構成によれば、バーコードを印刷したサービス券等の真贋判定処理を実行する紙葉類処理装置では、真贋の判定精度の低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、全体構成を示す斜視図。
【図2】開閉部材を装置本体の本体フレームに対して開いた状態を示す斜視図。
【図3】挿入口から挿入される紙幣の搬送経路を概略的に示した右側面図。
【図4】紙幣収容部に配設される押圧板を駆動するための動力伝達機構の概略構成を示す右側面図。
【図5】紙幣搬送機構を駆動するための駆動源及び駆動力伝達機構の概略構成を示す左側面図。
【図6】紙幣搬送機構、紙幣読取手段等の駆動部材の駆動を制御する制御手段の構成を示すブロック図。
【図7】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その1)。
【図8】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その2)。
【図9】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その3)。
【図10】搬送路開放処理手順を説明するフローチャート。
【図11】スキュー補正作動処理手順を説明するフローチャート。
【図12】搬送路閉鎖処理手順を示すフローチャート。
【図13】重送判定処理を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0112】
1 紙幣処理装置
2 装置本体
3 紙幣搬送路
5 紙幣挿入口
6 紙幣搬送機構
8 紙幣読取手段
10 スキュー補正機構
80a 第1発光部
81 受発光ユニット
81a 受光部
81b 第2発光部
200 制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、商品券、クーポン券等(以下、これらを紙葉類と総称する)の真贋を判定する紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紙葉類の一態様である紙幣を取扱う紙幣処理装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣の真贋を判定し、真正と判定された紙幣価値に応じて、各種の商品やサービスを提供するサービス機器、例えば遊技場に設置されている遊技媒体貸出機、或いは、公共の場に設置されている自動販売機や券売機等に組み込まれている。
【0003】
上記した紙幣の真贋の判定は、例えば、特許文献1に開示されているように、紙幣搬送路を移動する紙幣に対して光を照射する発光部と、発光部から照射された光の透過光や反射光を受光する受光センサとを備えた真贋判定装置によって行われ、前記受光センサからの受光データを正規のデータと比較することで真贋の判定処理がなされる。
【0004】
ところで、上記した真贋判定装置の受光センサは、そのデバイス特性として、経時劣化することが知られており、このような経時劣化が生じると、出力値が低下して、紙幣の受光データが暗くなってしまうことがある。このため、最も明度が低い出力の基準値を補正する、いわゆる黒補正を所定の期間毎に行うようにしており、例えば、紙幣処理装置の電源を投入した際、前記発光部から光が照射されていない状態で受光センサからの出力を読取り、この読取った受光データを、最も明度が低い基準値として設定することが行われている。
【特許文献1】特開2001−357429号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した受光センサは、経時劣化以外にも環境変化、例えば、装置内部の温度変化や装置周辺の環境温度の変化によって特性が変化する可能性がある。具体的には、装置稼動中に内部温度が上昇すると、受光センサの出力値が低下する可能性があり、このような特性の変化によって、真の読取りレベルを維持できず、真券であっても偽券と識別してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に着目してなされたものであり、環境変化が生じても、正確に紙葉類の真贋の判定処理が可能な紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る紙葉類処理装置は、紙葉類が挿入される挿入口と、前記挿入口に対する紙葉類の挿入を検知するセンサと、前記挿入口に挿入された紙葉類を搬送する搬送路と、前記搬送路に対して光を照射する発光部と、前記搬送路からの光を受光する受光部と、前記発光部での発光が無効にされた状態で、前記受光部で前記搬送路からの光を受光して、最も低い明度の基準値に設定する黒補正部と、発光部が搬送路を移動する紙葉類に対して光を照射し、前記受光部で受光した光を、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とするように変換することで得られる複数の画素データと、真券に関する基準画素データとを、前記黒補正部で設定された基準値に基づいて比較し真贋を判定する真贋判定処理部と、を有し、前記黒補正部は、紙葉類が挿入される毎に、前記センサにより紙葉類の挿入が検知されてから前記真贋判定処理部で真贋判定する前に前記基準値の設定を行うことを特徴とする。
【0008】
上記した構成の紙葉類処理装置によれば、紙幣が挿入されて真贋判定処理が実施される前毎に、黒補正が実行されるため、装置稼動中に温度変化等の環境変化が生じて受光センサの特性が変化しても、正確な真贋判定処理が可能となる。
【0009】
また、請求項2に係る発明においては、前記基準値の設定を実行した後、前記変換された複数の画素データの明度と、所定の明度との比較結果に基づいて、前記挿入口に挿入された紙葉類が重なった状態にあるか否かを判定する重送判定部を有することを特徴とする。
【0010】
上記した構成の紙葉類処理装置によれば、重送判定部において、紙葉類が重送(複数枚重ねて挿入されている状態、及び紙幣が折れ重なっている状態を含む)になっているか否かの判定が実施される。この際、環境変化が生じて読取った紙葉類の受光データの明度が変化しても、その前に上記した黒補正を実施しているため、適正な紙葉類の挿入状態を誤って重送と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境変化が生じても、正確に紙葉類の真贋の判定処理が可能な紙葉類処理装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
図1から図5は、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、開閉部材を装置本体の本体フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、挿入口から挿入される紙幣の搬送経路を概略的に示した右側面図、図4は、紙幣収容部に配設される押圧板を駆動するための動力伝達機構の概略構成を示す右側面図、そして、図5は、紙幣搬送機構を駆動するための駆動源及び駆動力伝達機構の概略構成を示す左側面図である。
【0014】
本実施形態の紙幣処理装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機に組み込み可能に構成されており、装置本体2と、この装置本体2に設けられ、多数の紙幣などを積層、収容することが可能な収容部(収容スタッカ;金庫)100とを備えている。この収容部100は、装置本体2に対して着脱可能であっても良く、例えば、図示されていないロック機構が解除された状態で、前面に設けられた取っ手101を引くことで、装置本体2から取り外すことが可能となっている。
【0015】
前記装置本体2は、図2に示すように、本体フレーム2Aと、本体フレーム2Aに対して一端部を回動中心として開閉されるように構成された開閉部材2Bとを有している。そして、これら本体フレーム2A及び開閉部材2Bは、図3に示すように、開閉部材2Bを本体フレーム2Aに対して閉じた際、両者の対向部分に紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路3)が形成されると共に、両者の前面露出側に、前記紙幣搬送路3に一致するようにして、紙幣挿入口5が形成されるよう構成されている。なお、前記紙幣挿入口5は、紙幣の短い辺側から装置本体2の内部に挿入できるようにスリット状の開口となっている。
【0016】
また、前記装置本体2内には、前記紙幣搬送路3に沿って、紙幣を搬送する紙幣搬送機構6と、紙幣挿入口5に挿入された紙幣を検知する挿入検知センサ7と、挿入検知センサ7の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段8と、この紙幣読取手段8に対して、紙幣を正確に位置決めして搬送するスキュー補正機構10と、紙幣がスキュー補正機構を構成する一対の可動片を通過したことを検知する可動片通過検知センサ12と、紙幣が紙幣収容部100に排出されたことを検知する排出検知センサ18とが設けられている。
【0017】
以下、上記した各構成部材について、詳細に説明する。
前記紙幣搬送路3は、紙幣挿入口5から奥側に向けて延出しており、第1搬送路3Aと、前記第1搬送路3Aから下流側に向けて延出し、第1搬送路3Aに対して所定角度、下方側に向けて傾斜した第2搬送路3Bとを備えている。この第2搬送路3Bの下流側は、鉛直方向に向けて屈曲しており、その下流側端部には、紙幣収容部100に紙幣を排出する排出口3aが形成されて、ここから排出される紙幣は、鉛直方向に向けて、紙幣収容部100の導入口(受入口)103に送り込まれる。
【0018】
前記紙幣搬送機構6は、紙幣挿入口5から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能にすると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口5に向けて差し戻し搬送可能とする機構である。この紙幣搬送機構6は、装置本体2内に設置された駆動源であるモータ13(図5参照)と、このモータ13によって回転駆動され、紙幣搬送路3に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対(14A,14B)、(15A,15B)、(16A,16B)、及び(17A,17B)を備えている。
【0019】
前記搬送ローラ対は、紙幣搬送路3に一部が露出するように設置されて、いずれも紙幣搬送路3の下側に設置される搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bがモータ13によって駆動されるローラとなっており、上側に設置される搬送ローラ14A,15A,16A及び17Aが、これらのローラに対して従動するピンチローラとなっている。なお、紙幣挿入口5から挿入された紙幣を最初に挟持して奥側に搬送する搬送ローラ対(14A,14B)は、図2に示すように、紙幣搬送路3の中心位置に1箇所設置されており、その下流側に順次配置される搬送ローラ対(15A,15B)、(16A,16B)、及び(17A,17B)については、紙幣搬送路3の幅方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。
【0020】
また、上記した紙幣挿入口5の近傍に配置される搬送ローラ対(14A,14B)については、通常は、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bから離間した状態となっており、紙幣の挿入が挿入検知センサ7によって検知されると、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bに向けて駆動され、挿入された紙幣を挟持するようになっている。
【0021】
すなわち、上側の搬送ローラ14Aについては、駆動源であるローラ昇降用モータ70(図6参照)によって、下側の搬送ローラ14Bに対して、当接/離間するように駆動制御される。この場合、スキュー補正機構10によって、挿入された紙幣の傾きを無くし紙幣読取手段8に対して位置合わせする処理(スキュー補正処理)が行われる際には、上側の搬送ローラ14Aは、下側の搬送ローラ14Bから離間して紙幣に対する負荷を解除し、スキュー補正処理が終了すると、再び、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bに向けて駆動され、紙幣を挟持する。なお、駆動源については、モータ以外にもソレノイド等によって構成されていても良い。
【0022】
また、前記スキュー補正機構10は、スキューの補正を果たす左右一対の可動片10A(片側のみ図示)を備えており、スキュー補正機構用のモータ40を駆動することで、左右一対の可動片10Aを接近するように移動させ、これにより、紙幣に対するスキューの補正処理が成される。
【0023】
上記した紙幣搬送路3の下側に設置される搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは、図5に示すように、モータ13、及び各搬送ローラの駆動軸の端部に設置されるプーリ14C,15C,16C及び17Cを介して回転駆動される。すなわち、モータ13の出力軸には、駆動プーリ13Aが設置されており、上記した各搬送ローラの駆動軸の端部に設置されるプーリ14C,15C,16C及び17Cには、駆動プーリ13Aとの間で駆動ベルト13Bが巻回されている。なお、駆動ベルト13Bには、適所にテンションプーリが係合しており、弛みを防止している。
【0024】
上記した構成により、モータ13が正転駆動されると、前記搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは同期して正転駆動され、紙幣を挿入方向に向けて搬送し、モータ13が逆転駆動されると、前記搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは同期して逆転駆動され、紙幣を紙幣挿入口5側に向けて搬送する。
【0025】
前記挿入検知センサ7は、紙幣挿入口5に挿入された紙幣を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号が発せられると、モータ13が正転駆動され、紙幣を挿入方向に向けて搬送する。本実施形態の挿入検知センサ7は、搬送ローラ対(14A,14B)と、スキュー補正機構10との間に設置されており、光学式のセンサ、例えば、回帰反射型フォトセンサによって構成されているが、それ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0026】
また、前記可動片通過検知センサ12は、紙幣の先端が、スキュー補正機構10を構成する左右一対の可動片10Aを通過したことを検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号が発せられると、モータ13の駆動が停止され、スキュー補正処理が成される。本実施形態の可動片通過検知センサ12は、前記紙幣読取手段8の上流側に設置されており、前記挿入検知センサと同様、光学式のセンサや機械式のセンサによって構成される。
【0027】
また、前記排出検知センサ18は、通過する紙幣の後端を検知して、紙幣が紙幣収容部100に排出されたことを検知するものであり、第2搬送路3Bの下流側において、紙幣収容部100の受入口103の直前に配設されている。排出検知センサ18から検知信号が発せられると、モータ13の駆動が停止され、紙幣の搬送処理が終了する。この排出検知センサ18についても、前記挿入検知センサと同様、光学式のセンサや機械式のセンサによって構成される。
【0028】
前記紙幣読取手段8は、スキュー補正機構10によってスキューが補正された状態で搬送される紙幣について、その紙幣情報を読取り、その有効性(真贋)を識別する。本実施形態では、紙幣読取手段8は、搬送される紙幣の両面側から光を照射し、その透過光と反射光を受光部で検知することで読取を行うラインセンサを備えた構成になっており、前記第1搬送路3Aに設置されている。
【0029】
ここで、上記した紙幣読取手段8の構成について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
【0030】
上記した紙幣読取手段8は、開閉部材2B側に配設され、搬送される紙幣の上側に赤外光及び赤色光を照射可能とした第1発光部80aを具備した発光ユニット80と、本体フレーム2A側に配設された受発光ユニット81とを有している。
【0031】
この受発光ユニット81は、紙幣(紙幣搬送路)を挟むようにして第1発光部80aと対向する受光センサを具備した受光部81aと、受光部81aの紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、赤外光及び赤色光を照射可能とした第2発光部81bとを有している。
【0032】
前記受光部81aと対向配置された第1発光部80aは透過用の光源として機能する。この第1発光部80aは、図2に示すように、一端に取り付けたLED素子80bからの光を、内部に設けた導光体80cを通して発光する合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。このような構成の第1発光部は、受光部81a(受光センサ)と平行にライン状に配設されており、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して全体的に均一に照射することが可能となる。
【0033】
前記受発光ユニット81の受光部81aは、紙幣搬送路3に対して交差方向に伸延し、かつ受光部81aに設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。なお、前記受光センサは、受光部81aの厚み方向の中央に、複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にグリンレンズアレイ81cを配置した所謂ラインセンサとして構成されている。
【0034】
また、受発光ユニット81の第2発光部81bは反射用の光源として機能する。この第2発光部81bは、第1発光部80aと同様、一端に取り付けたLED素子81dからの光を、内部に設けた導光体81eを通して全体的に均一に照射可能とした合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。この第2発光部81bについても、受光部81a(ラインセンサ)と平行にライン状に配設して構成されている。
【0035】
前記第2発光部81bは、例えば45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部81aで受光するように配設されている。この場合、第2発光部81bから照射された光が受光部81aへ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、紙幣の表面に対して濃淡なく均一に光が照射できれば、その設置状態については適宜設定することができる。このため、第2発光部81b及び受光部81aの配置については、紙幣処理装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。
【0036】
また、前記第2発光部81bについては、受光部81aを挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部81bについては、片方のみに設置した構成であっても良く、上記した発光ユニット80、受発光ユニット81の構成や配置などは、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変形することが可能である。
【0037】
上記した受光部81aで取得される紙幣からの透過光(第1発光部80aの照射光)及び反射光(第2発光部81bの照射光)によって得られる画像データは、真券に関する画像データと比較することで真贋判定処理が成される。この場合、真正の紙幣には、照射する光の波長(例えば、可視光や赤外光)によって、取得される画像データが異なる領域があることから、本実施形態における真贋判定処理では、この点に着目し、複数の光源によって異なる波長(本実施形態では、赤色光及び赤外光を照射する)の光を紙幣に照射し、その透過光と反射光を検出することで、真贋の識別精度をより高めるようにしている。すなわち、赤色光と赤外光では、波長が異なることから、波長の異なる複数の光による透過光データや反射光データを紙幣の真贋判定に用いると、真券と偽札との特定領域を通過する透過光や特定領域から反射する反射光では、透過率、反射率がそれぞれ異なるという性質がある。このため、上記した発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)では、複数の波長の光源を用いることで紙幣の真贋の識別精度をより高めるようにしている。
【0038】
具体的な紙幣の真贋識別方法については、紙幣に照射する光の波長や照射領域により、様々な受光データ(透過光データ、反射光データ)を取得できるため、詳細に説明しないが、例えば、紙幣の透かし領域では、異なる波長の光でその領域の画像を見た場合、画像が大きく異なって見えることから、この部分を特定領域とし、当該特定領域における透過光データや反射光データを取得して、予めROM等の記憶手段に記憶してある真券の同じ特定領域における正規データと比較して、識別対象となる紙幣が真券であるか偽札であるかを識別することが考えられる。このとき、金種に応じて特定領域を定めておき、この特定領域における透過光データや反射光データに所定の重み付けを設定しておき、真贋識別精度のさらなる向上を図ることも可能である。
【0039】
また、上記した発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)は、所定の間隔で点灯制御され、紙幣が通過する際の透過光及び反射光が受光部(ラインセンサ)81aで検知される。この受光部(ラインセンサ)81aでは、その輝度に応じた濃淡データ(明るさの情報を含み所定の大きさを1単位とした複数の画素データ)を取得することが可能であり、この画素データから二次元画像を生成することが可能となっている。
【0040】
この場合、ラインセンサによって取得される画像データは、後述する変換部によって、画素毎に、明るさを有する色情報を含んだデータに変換される。ここで、変換部において変換される明るさを有する画素毎の色情報とは、濃淡値すなわち濃度値(輝度値)に対応するものであって、例えば、1バイト情報として、その濃度値に応じて、0から255の数値(例えば、0:白〜255:黒)が各画素に割り当てられたものである。
【0041】
このため、真贋判定処理では、紙幣の所定の領域を抽出し、その領域に含まれる画素情報(濃度値)と、真券の同じ領域の画素情報とを用い、これらを適宜の相関式に代入して演算した相関係数により、真贋を識別することが可能である。或いは、上記した以外にも、透過光データや反射光データから、例えばアナログ波形を生成し、この波形の形状同士の比較で、真贋を識別することも可能である。更には、紙幣の印刷領域の長さを検出し、この長さ情報を利用して真贋を識別する処理を備えていても良い。
【0042】
そして、上記した受光部(ラインセンサ)81aでは、搬送される紙幣の読取りを実行する前に、最も明度が低い出力の基準値を補正する黒補正が実行される。この黒補正は、後述するように、紙幣が挿入される毎に、紙幣挿入口5から挿入された紙幣が挿入検知センサ7によって検知されてから、実際に紙幣の読取開始前までに実行されるようになっている。
【0043】
前記黒補正は、受光部81aと接続される黒補正部(黒補正演算回路)で行われ、挿入された紙幣の読取り処理が実施される前に、発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)からの発光を無効にした状態、例えば、発光部が消灯制御されているときに、受光部81aからの出力を取得することで実施される。具体的には、受光部81aからの検知信号(発光部での発光が無効になっている状態で検知される検知信号)を画素情報に変換し、これを基準となる明度(基準値)として設定し記憶する。この黒補正部で設定された明度の基準値は、実際に受光部81aから紙幣の情報が検出されて画素情報に変換する際の最も明度が低い基準値とされ、受光部81aからの出力値を適正レベルに補正する。なお、発光部からの発光を無効にする手段として、いずれかの発光部が点灯していても、受光部81aにおいて発光部からの光を受光しないように、受光部を遮蔽するような構成にしても良い。
【0044】
このように、発光部を発光させない状態で、受光部81aにおいて黒補正を行うことにより、紙幣の読取り処理毎に、受光部81aで受光される光の明度に関し、最も低い明度の基準値が設定されるようになる。すなわち、受光部81aのデバイス特性や装置内部の環境変化等によって、受光部からの出力値が変化しても、上記した黒補正部で明度の基準値を補正(黒補正)して出力値が適正化されているため、取得された紙幣の読取り情報は、適切な明度に基づいて上記したような真贋判定処理を実施することが可能となる。
【0045】
実際の真贋判定処理では、ROM等により、予め記憶されている真正紙幣に関する基準画素データと、搬送される紙幣の表面の印刷領域に発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)から所定波長の光を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データ、並びに反射した光の反射光データを取得し、これを、適切な明度に黒補正した画素データとを比較することで成される。
【0046】
なお、本実施形態では、ラインセンサが紙幣の幅全体を読取り可能であり、紙幣の搬送に伴って二次元の画像を取得できることに着目し、ラインセンサによって読取られた紙幣の先端部分における画素毎の濃度値を、読取られた部分に対応する基準となる画素毎の濃度値と対比して、紙幣先端の折れ曲がり、及び紙幣が重送されているか否かを判別する重送判定部を備えている。
【0047】
このような重送判定部を設けておくことで、上述したように、環境変化などが生じて読取った紙幣の受光データの明度が変化しても、紙幣が挿入される毎に上記した黒補正を実施しているため、適正な紙幣の挿入状態を誤って重送と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【0048】
次に、上記した紙幣読取手段8で真性と識別された紙幣を順次、積層、収容する紙幣収容部100について説明する。
【0049】
図3から図5に示すように、紙幣収容部100を構成する本体フレーム100Aは、略直方体形状に構成されており、その前壁102aの内側には、付勢手段(付勢バネ)106の一端が取り付けられ、その他端には、上記した受入口103を介して送り込まれる紙幣を順次、積層する載置プレート105が設けられている。このため、載置プレート105は、前記付勢手段106を介して、後述する押圧板115側に向けて付勢された状態になっている。
【0050】
本体フレーム100A内には、受入口103に連続するように、落下する紙幣をそのまま待機、保持させる押圧待機部108が設けられている。押圧待機部108の載置プレート側の両サイドには、鉛直方向に延出して一対の規制部材110が配置されている。この一対の規制部材110の間には、載置プレート105上に紙幣が順次、積層されるに際して、押圧板115が通過するように、開口部が形成されている。
【0051】
さらに、本体フレーム100A内には、受入口103から押圧待機部108に落下した紙幣を載置プレート105に向けて押圧する押圧板115が配設されている。この押圧板115は、前記一対の規制部材110の間に形成された開口部を往復移動できる程度の大きさに構成されており、この開口部内に入り込んで、紙幣を載置プレート105に押し付ける位置(押圧位置)と、前記押圧待機部108を開放する位置(初期位置)との間で往復駆動される。この場合、押圧板115の押し込み動作によって、紙幣は撓みながら開口部を通過して、載置プレート105上に載置される。
【0052】
前記押圧板115は、本体フレーム100A内に配設される押圧板駆動機構120を介して、上記したように往復駆動される。押圧板駆動機構120は、押圧板115を図3及び図4の矢印A方向に往復移動可能となるように、両端が押圧板115に軸支された一対のリンク部材115a,115bを備えており、これらのリンク部材115a,115bはX字状に連結され、それぞれの反対側の端部は、垂直方向(矢印B方向)に移動可能に設置された可動部材122に軸支されている。この可動部材122には、ラックが形成されており、このラックには、押圧板駆動機構120を構成するピニオンが噛合している。
【0053】
このピニオンには、図4に示すように、押圧板駆動機構120を構成する収容部側ギヤトレイン124が連結されている。この場合、本実施形態においては、図45に示すように、上述した装置本体2内に、駆動源(モータ20)と、このモータ20に順次噛合する本体側ギヤトレイン21が配設されており、紙幣収容部100を装置本体2に装着すると、本体側ギヤトレイン21が収容部側ギヤトレイン124に連結するようになっている。すなわち、収容部側ギヤトレイン124は、ピニオンと同軸上に配設されるギヤ124B、及びこれに順次噛合するギヤ124C,124Dを備えており、紙幣収容部100を装置本体2のフレーム2Aに対して着脱する際、ギヤ124Dが、本体側ギヤトレイン21の最終ギヤ21Aと噛合、離間するよう構成されている。
【0054】
この結果、上記した押圧板115は、装置本体2に設けられたモータ20が回転駆動されることで、本体側ギヤトレイン21、及び押圧板駆動機構120(収容部側ギヤトレイン124、可動部材122に形成されるラック、及びリンク部材115a,115b等)を介して、矢印A方向に往復駆動される。
【0055】
また、本体フレーム100Aには、前記受入口103から搬入される紙幣に対して接触可能な搬送部材150が設置されている。この搬送部材150は、搬入される紙幣に接触して、安定して紙幣を押圧待機部108の適正位置(押圧板115で紙幣を押圧した際、紙幣が左右に片寄ることなく、安定して押圧できる位置)に案内する役目を果たす。本実施形態では、この搬送部材は、押圧待機部108に臨むように設置されたベルト状の部材(以下、ベルト150とする)によって構成されている。
【0056】
この場合、ベルト150は、紙幣に対して搬入方向に沿って延在するように設置されており、搬入方向の両端部に回転可能に支持された一対のプーリ150A,150Bに巻回されている。また、ベルト150は、受入口103の領域に回転可能に支持された軸方向に延出する搬送ローラ150Cと当接しており、受入口103に搬入された紙幣を挟持して、紙幣をそのまま押圧待機部108に案内するようにしている。さらに、本実施形態では、前記ベルト150は、紙幣の両サイドの表面に接触可能となるように、上記した押圧板115を挟むようにして左右一対設けられている。なお、ベルト150は、両端におけるプーリ150A,150Bの巻回以外に、中間位置でテンションプーリを当て付け、弛みを防止するようにしても良い。
【0057】
前記一対のベルト150は、装置本体2内に設置される上述した複数の搬送ローラを駆動するモータ13によって駆動されるようになっている。具体的には、図5に示すように、モータ13によって駆動される上述した駆動ベルト13Bは、駆動力伝達用のプーリ13Dに巻回されており、このプーリ13Dに順次設置される動力伝達用のギヤトレイン13Eには、受入口103側に回転可能に支持されているプーリ150Aの支軸の端部に設置されたギヤトレイン153が噛合するようになっている。すなわち、紙幣収容部100が装置本体2に装着された際、ギヤトレイン13Eの最終ギヤには、ギヤトレイン153の入力ギヤが噛合するようになっており、一対のベルト150は、モータ13の回転駆動により、上述した紙幣搬送用の搬送ローラ14B,15B,16B,17Bと一体的に回転駆動されるようになっている。
【0058】
上述したように、紙幣が紙幣挿入口5を介して内部に挿入されると、紙幣は、上記した紙幣搬送機構6によって、紙幣搬送路3内で移動して行く。紙幣搬送路3は、図3に示すように、紙幣挿入口5から奥側に向けて延出した第1搬送路3Aと、前記第1搬送路3Aから下流側に向けて延出し、第1搬送路3Aに対して所定角度傾斜した第2搬送路3Bとを備えている。
【0059】
そして、この第2搬送路3Bには、紙幣を紙幣挿入口5側に向けて移動するのを防止する引抜防止部材(シャッタ部材)170が設置されている。この引抜防止部材170は、支軸170aを介して、図3の矢印方向(第2搬送路3Bを閉塞する方向)に回動付勢されており、紙幣が紙幣収容部100側に向けて移動する際、付勢力に抗して第2搬送路を開放するように回動し、一旦紙幣が通過すると、その付勢力によって、矢印方向に回動され、第2搬送路3Bを閉塞する。すなわち、紙幣の後端が引抜防止部材170を通過すると、引抜防止部材170によって第2搬送路3Bは閉塞され、紙幣の引抜ができないようになっている。
【0060】
なお、このような引抜防止部材は、紙幣読取手段8の下流側の搬送経路に沿って、複数箇所設置されていても良い。また、その設置位置に関しては、紙幣の真贋判定処理を行っている際に紙幣が停止する位置(エスクロ位置;本実施形態では、紙幣読取手段8の下流側、約13mmの位置とされる)よりも下流側にあれば良い。
【0061】
次に、上述した紙幣搬送機構6、紙幣読取手段8等の駆動部材の駆動を制御する制御手段200について、図6のブロック図を参照して説明する。
【0062】
図6のブロック図に示す制御手段200は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御基板210を備えており、この制御基板210上には、各駆動装置の駆動を制御すると共に、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)220と、ROM(Read Only Memory)222と、RAM(Random Access Memory)224と、真贋判定処理部230とが実装されている。
【0063】
前記ROM222には、紙幣搬送機構用のモータ13、押圧板駆動用のモータ20、スキュー補正機構用のモータ40、ローラ昇降用のモータ70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定処理部230における真贋判定プログラム、及び紙幣の先端部分における折れや重送を判定する重送判定プログラムのような各種プログラム等、恒久的なデータが記憶されている。
【0064】
前記CPU220は、ROM222に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート240を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣処理装置の全体的な動作制御を行う。すなわち、CPU220には、I/Oポート240を介して、紙幣搬送機構用のモータ13、押圧板駆動用のモータ20、スキュー補正機構用のモータ40、ローラ昇降用のモータ70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM222に格納された作動プログラムに従って、CPU220からの制御信号により動作が制御される。また、CPU220には、I/Oポート240を介して、挿入検知センサ7、可動片通過検知センサ12、排出検知センサ18からの検知信号が入力されるようになっており、これら検知信号に基づいて、上記した各種駆動装置の駆動制御が行われる。
【0065】
また、CPU220には、I/Oポート240を介して、上述した紙幣読取手段8における受光部81aから、識別対象物である紙幣に向けて照射された光の透過光や反射光に基づく検知信号が入力されるようになっている。これら紙幣読取手段8における第1発光部80a及び第2発光部81bは、上記したROM222に格納された動作プログラムに従い、CPU220からの制御信号によって、発光制御回路260を介して、点灯間隔、及び消灯が制御される。
【0066】
さらに、CPU220には、I/Oポート240を介して、上述した紙幣読取手段8における受光部81aから、後述する黒補正を行うに際して、発光部(第1発光部80a,第2発光部81b)からの発光を無効にした状態で受光部81aからの検知信号、すなわち、便宜上発光部での発光がない状態で搬送路からの光を受光して、その検知信号が入力されるようになっている。
【0067】
前記RAM224には、CPU220が作動する際に用いるデータやプログラムが一時的に記憶されると共に、識別対象物である紙幣の受光データ(複数の画素によって構成される画像データ)を取得して一時的に記憶する機能を備えている。
【0068】
前記真贋判定処理部230は、搬送される紙幣が真正なものであるか否かを判定する機能、及び搬送された紙幣の先端が折れ曲がっていたり、或いは、重送されていないかを判別する機能を有する。この真贋判定処理部230は、前記RAM224に格納された識別対象物の受光データに関し、画素毎に、明るさを有する色情報(濃度値)を含んだ画素情報に変換する変換部231と、この変換部231で変換された画素情報を基に画像データを取得する画像データ処理部232と、紙幣が紙幣挿入口5から挿入されてから読取開始がされる前までに、黒補正を実施する黒補正部233とを備えている。
【0069】
黒補正部233では、発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)からの発光を無効にした状態、例えば、発光制御回路260において、発光部が消灯制御されているときに、受光部81aからの検知信号を取得することで実施され、これにより、紙幣の読取り処理毎に、受光部81aにおいて受光される光の明度に関し、最も低い明度の基準値が設定される。
【0070】
また、真贋判定処理部230は、真正な紙幣に関する基準データ(真正な紙幣に関する画素データ)を格納した基準データ記憶部234と、前記画像データ処理部232において黒補正がされた紙幣の画像データ(画素データ)と前記基準データ記憶部234に格納されている基準データ(基準画素データ)とを比較し、搬送される紙幣が真正であるか否かの判別処理を行う比較判定部235と、を備えている。
【0071】
この場合、基準データ記憶部234には、上記した真贋判定処理を実施するに際して用いられる真正紙幣に関する画像データが記憶されており、それ以外にも、例えば、真正紙幣に関する印刷長の基準値等、真贋判定に際して用いられる各種の基準データが金種毎に記憶されている。なお、このような基準となるデータについては、専用の基準データ記憶部233に記憶させているが、これを上記したROM222に記憶させておいても良い。
【0072】
また、前記比較判定部235は、受光部81aによって読取られた紙幣の先端部分における画素毎の濃度値を、読取られた部分に対応する基準となる画素毎の濃度値(基準データ記憶部234に格納されている濃度値)と対比して、紙幣先端の折れ曲がり、及び紙幣が重送されているか否かを判別する重送判定部236を備えている。
【0073】
上記した真贋判定処理部230における実際の真贋判定処理では、搬送される紙幣の表面の印刷領域に発光部(第1発光部80a及び第2発光部81b)から所定波長の光を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データ並びに反射した光の反射光データを、変換部231において明るさを有する色情報を含み所定の大きさを1単位とする複数の画素データに変換し、これを基準データ記憶部234に予め記憶されている真正紙幣に関する基準画素データと比較することで成される。この場合、変換部231で変換される複数の画素データにおける個々の明るさについては、黒補正部233で適切な明度に設定された基準値に基づいて補正されていることから、比較判定する際に誤って偽と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【0074】
すなわち、画像データ処理部232において取得される画像データ(明るさ情報を含む複数の画素データ)については、その読取り処理が成される前に、黒補正部233で明度の基準値が補正(黒補正)されており、この黒補正された基準値に基づく画像データが真贋判定処理に用いられる。このため、例えば、装置稼動中において、環境温度が高くなる等の要因により受光センサである受光部81aからの出力が弱くなって取得される紙幣の画像データが暗くなっても、受光部の明度の基準値もそれに応じて補正されているため、適切な真贋判定処理を実施することが可能となる。
【0075】
次に、上述した制御手段200によって実行される紙幣処理装置1における紙幣の処理動作について、図7〜図13のフローチャートに従って説明する。
【0076】
操作者が紙幣を紙幣挿入口5に挿入する際、紙幣挿入口の近傍に設置される搬送ローラ対(14A,14B)は、初期状態において離間した状態にある(後述するST18,ST58参照)。また、押圧板115は、押圧板115を駆動する一対のリンク部材115a,115bが押圧待機部108に位置しており、紙幣が一対のリンク部材115a,115bによって受入口103から押圧待機部108に搬入できない待機位置に設定されている。すなわち、この状態では、一対の規制部材110の間に形成された開口部に押圧板115が入り込んでいるため、開口部を介して紙幣収容部内に収容されている紙幣を抜き取ることができない状態となっている。
【0077】
さらに、搬送ローラ対(14A,14B)の下流側に位置するスキュー補正機構10を構成する一対の可動片10Aは、初期状態において、あらゆる紙幣の引き抜きができないように最小幅(例えば一対の可動片10Aの間隔が52mm;後述するST17,ST59参照)に移動した状態にある。
【0078】
上記した搬送ローラ対(14A,14B)の初期状態では、皺のある紙幣であっても、操作者は容易に挿入することができる。そして、挿入検知センサ7によって紙幣の挿入が検知されると(ST01)、発光部80a,81bの発光状態を無効にした状態で受光部81aからの検知信号を取得して黒補正処理が行われる(ST02)。なお、この黒補正処理を実行するタイミングについては、後述するラインセンサによる紙幣読取処理が行われる(ST14)までに実行されていれば良い。
【0079】
上述した押圧板115の駆動用のモータ20を所定量逆転駆動し(ST03)、押圧板115を初期位置に移動させる。すなわち、挿入検知センサ7によって紙幣の挿入が検知されるまでは、前記押圧板115は、一対の規制部材110の間に形成された開口部に移動された状態となっており、開口部を介して紙幣が通過できないように設定されている。
【0080】
押圧板115が待機位置から初期位置に移動されると、押圧待機部108は開放状態となり(図4参照)、紙幣は、紙幣収容部100内に搬入可能な状態となる。すなわち、モータ20を所定量逆転駆動することで、押圧板115は、本体側ギヤトレイン21、及び押圧板駆動機構120(収容部側ギヤトレイン124、可動部材122に形成されるラック、及びリンク部材115a,115b)を介して、前記待機位置から初期位置に移動される。
【0081】
また、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、上側の搬送ローラ14Aを下側の搬送ローラ14Bに当接するように移動させる。これにより、挿入された紙幣は搬送ローラ対(14A,14B)によって挟持される(ST04)。
【0082】
次いで、紙幣搬送路の開放処理が成される(ST05)。この開放処理は、図10に示すフローチャートに示すように、述したスキュー補正機構用のモータ40を逆転駆動することで、一対の可動片10Aを互いに離間する方向に駆動することで成される(ST100)。このとき、一対の可動片10Aの位置を検知する可動片検知センサによって、一対の可動片10Aが所定位置(最大幅位置)に移動したことが検知されると(ST101)、モータ40の逆転駆動が停止される(ST102)。この搬送路開放処理により、一対の可動片10A内に紙幣が進入できる状態になっている。なお、このST05の前段階では、紙幣搬送路3は、後述する搬送路閉鎖処理(ST17,ST59)によって閉鎖された状態にあるが、このように、紙幣挿入前に紙幣搬送路3を閉じておくことで、例えば、不正目的などで紙幣挿入口から板状の部材を挿入して、ラインセンサなどの素子を破損させることを防止することができる。
【0083】
次いで、紙幣搬送用のモータ13が正転駆動される(ST06)。紙幣は、搬送ローラ対(14A,14B)によって装置内部に搬送され、スキュー補正機構10よりも下流側に配設されている可動片通過検知センサ12が紙幣の先端を検知すると、紙幣搬送用のモータ13は停止される(ST07,ST08)。このとき、紙幣は、スキュー補正機構10を構成する一対の可動片10A間に位置している。
【0084】
引き続き、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、紙幣を挟持した状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させる(ST09)。このとき、紙幣には、何等、負荷が作用していない状態となる。
【0085】
そして、この状態でスキュー補正作動処理を行う(ST10)。このスキュー補正作動処理は、上述したスキュー補正機構用のモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを互いに接近する方向に駆動することで成される。すなわち、このスキュー補正作動処理は、図11のフローチャートに示すように、上述したモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを、互いに接近する方向に移動する(ST110)。この可動片の移動は、制御手段における基準データ記憶部に登録されている紙幣の最小幅(例;幅62mm)となるまで実行され、これにより、紙幣は、両側に当て付く可動片10Aによって、スキューが補正され、正確な中心位置となるように位置決めされる。
【0086】
上述したようなスキュー補正作動処理が終了すると、引き続き、搬送路開放処理が実行される(ST11)。これは、上述したスキュー補正機構用のモータ40を逆転駆動することで、一対の可動片10Aを離間する方向に移動することで成される(図10のST100〜ST102参照)。
【0087】
続いて、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、上側の搬送ローラ14Aを下側の搬送ローラ14Bに当接するように移動させ、紙幣を搬送ローラ対(14A,14B)に挟持させる(ST12)。その後、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動して紙幣を装置内部に向けて搬送し、紙幣が紙幣読取手段8を通過する際に、紙幣の読取処理を開始する(ST13,ST14)。
【0088】
この紙幣の読取処理の開始に伴って、重送判定部236において、紙幣の重送判定処理が実行される(ST15)。この重送判定処理は、図13のフローチャートに示すように、最初に紙幣を所定の長さ読取ったか否かが判断され(ST150)、この所定長の読取りが終了した段階で、取得された紙幣の先端領域における透過光による画素の合計濃度値が算出される(ST151)。ここで算出される濃度値については、上述した黒補正処理(ST02)で設定された基準値に基づいて明度が適正に補正されている。
【0089】
そして、制御手段200の真贋判定処理部230は、取得された紙幣の先端領域における画素データの合計濃度値と、基準データ記憶部234に格納された同じ領域の基準データの濃度値とを対比し、所定の閾値に基づいて、紙幣が重送されているか(先端が折れ曲がっているか)について判別処理を実行する(ST152)。
【0090】
通常、この判別処理を実施する際、環境温度の変化等の要因によって受光部81aからの出力値が低下していると、正しい状態で紙幣を挿入しても、画像の明度が暗くなってしまい誤って重送と判別する可能性もあるが、上記した黒補正処理によって、受光部81aからの出力値が適正レベルに補正されているため、正確な重送判定を実施することが可能となる。
【0091】
このST152の処理において、重送が生じていると判別された場合、CPU220は、その紙幣を直ちに紙幣挿入口5から排出するように、紙幣搬送用モータ13を逆転駆動する(ST152、No,ST53〜ST55)。すなわち、このST152の処理において、紙幣の読取処理が終了する前に、重送が生じていると判別されると、以後の紙幣の読取処理を行うことなく、その紙幣は直ちに逆搬送され、紙幣挿入口5から排出されて、その紙幣の一連の処理は終了する(ST53〜ST60)。
【0092】
そして、上記した判別処理(ST152)において、紙幣が重送されていないと判別された場合、そのまま紙幣の読取処理が継続される(ST16)。
【0093】
そして、搬送される紙幣が紙幣読取手段8を通過して、紙幣の後端が、可動片通過検知センサ12によって検知されると(ST16)、紙幣搬送路3の閉鎖処理が実行される(ST17)。この処理においては、まず、図12のフローチャートに示すように、紙幣の後端が、可動片通過検知センサ12によって検知された後、上述したモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを、互いに接近する方向に移動する(ST130)。次に、可動片検知センサによって、可動片10Aが所定位置(最小幅位置、例えば52mm)に移動したことが検知されると(ST131)、モータ40の正転駆動が停止される(ST132)。
【0094】
この搬送路閉鎖処理により、一対の可動片10Aは、挿入可能なあらゆる紙幣の幅よりも狭い最小幅位置(幅52mm)に移動されており、これにより、紙幣の引き抜きを効果的に防止するようにしている。すなわち、このような紙幣搬送路の閉鎖処理を実行することで、挿入された紙幣の幅よりも、可動片10A間の距離が狭くなり、操作者が不正目的で紙幣を挿入口方向に向けて引き抜く等の行為を効果的に防止することが可能となる。
【0095】
上記した搬送路閉鎖処理(ST17)に引き続いて、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、紙幣を挟持可能な状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させる搬送ローラ対離間処理が行われる(ST18)。この搬送ローラ対離間処理を行うことで、操作者が誤って紙幣を追加投入(二重投入)しても、紙幣は、搬送ローラ対(14A,14B)による送り動作を受けることはなく、また、ST17において接近した状態にある一対の可動片10Aの前面に突き当たることから、紙幣の二重投入動作を確実に防止することができる。
【0096】
上記した紙幣搬送路の閉鎖処理と共に、紙幣読取手段8が紙幣の後端までデータを読取ると、紙幣搬送用のモータ13を所定量駆動し、紙幣を所定位置(エスクロ位置;紙幣読取手段8の中心位置から13mm紙幣が下流側に搬送された位置)で停止させ、このときに、制御手段200の真贋判定処理部230において、基準データ記憶部234に記憶されている基準データを参照し、比較判定部235で紙幣の真贋判定処理を実行する(ST19〜ST22)。
【0097】
上記したST22の真贋判定処理において、紙幣が真券であると判定されると(ST23;Yes)、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動する(ST24)。この紙幣の搬送に際しては、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知されるまで紙幣搬送用のモータ13は正転駆動され(ST25)、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知されてから、紙幣搬送用のモータ13は所定量だけ正転駆動される(ST26,ST27)。
【0098】
このST26、及びST27における紙幣搬送用のモータ13の正転駆動処理は、紙幣が、装置本体2の紙幣搬送路3の下流側にある排出口3aから紙幣収容部100の受入口103に搬入され、前記一対のベルト150が、搬入される紙幣の両側表面に接触して安定して、押圧待機部108に案内される駆動量に対応している。すなわち、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知された後、更に、所定量、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動することで、前記一対のベルト150は、搬入される紙幣に接触しつつ紙幣送り方向に駆動され、紙幣を安定した状態で押圧待機部108に案内する。
【0099】
そして、上記した紙幣搬送用のモータ13が停止した後、紙幣を載置プレート105上に載置すべく押圧板115の駆動処理を実行し(ST28)、押圧処理が終了すると、押圧板115は再び待機位置に移動され、その位置で停止される。
【0100】
また、上述した処理手順のST23において、挿入された紙幣が真券でないと判別された場合、搬送路開放処理を実行し(ST51、図10のST100〜ST102参照)、その後、紙幣搬送用のモータ13を逆転駆動し、搬送ローラ対(14A,14B)の挟持処理を実行した後、エスクロ位置に待機している紙幣を、紙幣挿入口5に向けて搬送する(ST52,53)。
【0101】
なお、本実施形態の構成では、読取った紙幣が真券でない判別されても、直ちに装置外に排出するのではなく、以下の工程のように、所定回数(3回)、読取処理を繰り返すようにしている。
【0102】
すなわち、上記ST53によって紙幣が紙幣挿入口5に向けて搬送され、挿入検知センサ7が紙幣挿入口5に向けて差し戻される紙幣の後端を検知した際、紙幣搬送用のモータ13の逆転駆動を停止する(ST54,ST55)。このとき、上述した紙幣の重送判定処理で、重送と判別されなければ(ST56、No)、紙幣の真贋判定処理が3回実施されたか否かを判別し(ST57)、真贋判定処理が3回実施されていなければ(ST57、No)、上述したST06以降の処理を実行する(このリトライ処理は2回実行される)。そして、真贋判定処理が3回実施されていれば(ST57、Yes)、その紙幣については、これ以上、真贋判定処理を実施することなく、排出処理を行う。
【0103】
この排出処理は、前記ローラ昇降用モータ70を駆動することで、前記ST52において紙幣を挟持した状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させることで実行される(ST58)。そして、その後、搬送路閉鎖処理を実施する(ST59,図12のST130〜ST132参照)と共に、押圧板115の駆動用のモータ20を所定量正転駆動して(ST60)、初期位置にある押圧板115を待機位置に駆動して一連の処理が終了する。
【0104】
なお、上述したように、重送と判別された紙幣については、読取動作中に紙幣搬送用モータ13を逆転駆動することで、紙幣挿入口5から直ちに排出処理が実行され(ST53〜ST55)、その後、ST57の合計3回の真贋判定処理を実施することなく(ST56、Yes)、そのまま、排出処理を行って、一連の処理を終了させるようにしている(ST58〜ST60)。
【0105】
上記した構成の紙幣処理装置によれば、紙幣が挿入されて真贋判定処理が実施される前毎に、紙幣からの検知光を受光する受光部81aで検知される光の明度に関し、黒補正が実行されるため、例えば、装置稼動中に温度変化等の環境変化が生じて受光部81aの特性が変化しても、正確な真贋判定処理を実施することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態では、ラインセンサが紙幣の幅全体を読取り可能であり、紙幣の搬送に伴って二次元の画像を取得できることに着目し、ラインセンサによって読取られた紙幣の先端部分における画素毎の濃度値を、読取られた部分に対応する基準となる画素毎の濃度値と対比して、紙幣先端の折れ曲がりや紙幣が重送されているか否かを判別する重送判定部を備えている。
【0107】
このような重送判定部を設けておくことで、上述したように、環境変化などが生じて読取った紙幣の受光データの明度が低くなっても、紙幣が挿入される毎に上記した黒補正を実施しているため、適正な紙幣の挿入状態を誤って重送と判定する可能性を低くすることが可能となる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することが可能である。
【0109】
本発明は、紙幣が挿入されて読取り処理が実行される前毎に、紙幣読取手段を構成する受光部の黒補正処理を行うことに特徴があり、それ以外の構成については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、紙幣の読取手段8の構成、配設位置等については、適宜、変形することが可能である。また、黒補正を実施するタイミングについても、適宜変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、紙幣処理装置に限定されることはなく、クーポン券やサービス券など、紙葉類が挿入されたことで、各種の商品やサービスを提供する装置に組み込むことが可能である。特に、本発明の構成によれば、バーコードを印刷したサービス券等の真贋判定処理を実行する紙葉類処理装置では、真贋の判定精度の低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、全体構成を示す斜視図。
【図2】開閉部材を装置本体の本体フレームに対して開いた状態を示す斜視図。
【図3】挿入口から挿入される紙幣の搬送経路を概略的に示した右側面図。
【図4】紙幣収容部に配設される押圧板を駆動するための動力伝達機構の概略構成を示す右側面図。
【図5】紙幣搬送機構を駆動するための駆動源及び駆動力伝達機構の概略構成を示す左側面図。
【図6】紙幣搬送機構、紙幣読取手段等の駆動部材の駆動を制御する制御手段の構成を示すブロック図。
【図7】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その1)。
【図8】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その2)。
【図9】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その3)。
【図10】搬送路開放処理手順を説明するフローチャート。
【図11】スキュー補正作動処理手順を説明するフローチャート。
【図12】搬送路閉鎖処理手順を示すフローチャート。
【図13】重送判定処理を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0112】
1 紙幣処理装置
2 装置本体
3 紙幣搬送路
5 紙幣挿入口
6 紙幣搬送機構
8 紙幣読取手段
10 スキュー補正機構
80a 第1発光部
81 受発光ユニット
81a 受光部
81b 第2発光部
200 制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類が挿入される挿入口と、
前記挿入口に対する紙葉類の挿入を検知するセンサと、
前記挿入口に挿入された紙葉類を搬送する搬送路と、
前記搬送路に対して光を照射する発光部と、
前記搬送路からの光を受光する受光部と、
前記発光部での発光が無効にされた状態で、前記受光部で前記搬送路からの光を受光して、最も低い明度の基準値に設定する黒補正部と、
発光部が搬送路を移動する紙葉類に対して光を照射し、前記受光部で受光した光を、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とするように変換することで得られる複数の画素データと、真券に関する基準画素データとを、前記黒補正部で設定された基準値に基づいて比較し真贋を判定する真贋判定処理部と、
を有し、
前記黒補正部は、紙葉類が挿入される毎に、前記センサにより紙葉類の挿入が検知されてから前記真贋判定処理部で真贋判定する前に前記基準値の設定を行うことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記基準値の設定を実行した後、前記変換された複数の画素データの明度と、所定の明度との比較結果に基づいて、前記挿入口に挿入された紙葉類が重なった状態にあるか否かを判定する重送判定部を有することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項1】
紙葉類が挿入される挿入口と、
前記挿入口に対する紙葉類の挿入を検知するセンサと、
前記挿入口に挿入された紙葉類を搬送する搬送路と、
前記搬送路に対して光を照射する発光部と、
前記搬送路からの光を受光する受光部と、
前記発光部での発光が無効にされた状態で、前記受光部で前記搬送路からの光を受光して、最も低い明度の基準値に設定する黒補正部と、
発光部が搬送路を移動する紙葉類に対して光を照射し、前記受光部で受光した光を、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とするように変換することで得られる複数の画素データと、真券に関する基準画素データとを、前記黒補正部で設定された基準値に基づいて比較し真贋を判定する真贋判定処理部と、
を有し、
前記黒補正部は、紙葉類が挿入される毎に、前記センサにより紙葉類の挿入が検知されてから前記真贋判定処理部で真贋判定する前に前記基準値の設定を行うことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記基準値の設定を実行した後、前記変換された複数の画素データの明度と、所定の明度との比較結果に基づいて、前記挿入口に挿入された紙葉類が重なった状態にあるか否かを判定する重送判定部を有することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−26850(P2010−26850A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188363(P2008−188363)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】
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