説明

紙葉類取扱装置

【課題】引き出された下部ユニットを金庫筐体に収納する際、その下部ユニットの収納過程で高精度の位置決めを完結させて高さ調整が不要となる収納構造を可能にし、これに基づいて品質の向上及び生産性の向上を図ることができる紙葉類取扱装置を提供する。
【解決手段】下部ユニット1cを金庫筐体106の収納位置へと戻す復帰過程で、該下部ユニット1cを下部ユニットレール204より引き上げ、該下部ユニット1cの引き上げ動作に基づいて下部ユニットレール204での下部ユニット1cに対する支持を解除し、該下部ユニット1cが収納位置に至った時点で受渡し搬送路1bの搬送接続部の上下間を位置決め規制機構200より位置決め規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関やコンビニエンスストア等に設置される現金自動取引装置に備えられるような紙葉類取扱装置に関し、さらに詳しくは装置内部に収納される下部ユニットの位置決め性能を高めた紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣、明細票、金券、有価証券、用紙、カード等の価値情報備えた紙葉を総称して紙葉類とし、その紙葉類を扱う装置の一例に以下、紙幣を扱う紙幣取扱装置について説明する。
【0003】
この紙幣取扱装置は、紙幣の入出金を許容する入出金口と、紙幣を判別する紙幣判別部と、該紙幣判別部を通過した紙幣を搬送する紙幣搬送路と、入金された紙幣を一旦収納する一時保管庫とを備えた上部搬送機構と、さらに入出金兼用の紙幣を収納または繰り出すリサイクル庫と、リサイクル庫に収納しない入金紙幣を収納する入金庫とを備えた下部搬送機構を組み合わせて構成している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ここに用いられるリサイクル庫は、利用者からの出金要求に応えるため取引される金種別の紙幣を大量に収納している。このため、リサイクル庫や入金庫を備えた下部搬送機構はセキュリティ性を確保するために厚い鉄板等で構成されるとともに、紙幣取扱装置内の保管状態においても銀行内の限られた係員しかアクセスが許されない鍵付きの金庫内に収納させて管理している。
【0005】
一方で入出金口、紙幣判別部、一時保管庫などの上部搬送機構では利用者が入金した流通紙幣が損傷していた場合、例えば部分的に切れていたり、流通に不適な皺状態になっている場合であっても搬送処理及び集積処理する必要があるためジャムが発生しやすくなっていた。
【0006】
このようなことから、上部搬送機構を金庫の外側に配置し、紙詰り(ジャム)が発生した場合は、店舗の係員によって速やかにジャムを除去できるようにして装置の稼働率を上げている。
【0007】
また、下部搬送機構は係員がリサイクル庫にアクセスしたり下部搬送機構で発生した搬送路のジャムを除去するなどの機器へのアクセスをするために、金庫から引出可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−172946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように構成された紙幣取扱装置は、上部搬送機構と下部搬送機構のほかに、これらの上下部の搬送機構を接続する紙幣受渡し用の金庫搬送機構も実装されている。
【0010】
さらに、この金庫搬送機構と下部搬送機構の接続部分では、紙幣を確実に受渡しすることに加えて下部搬送機構を引き出せるように両搬送機構の接続部分を離間可能に且つ精度の良い位置決めができるように凹凸対応させて構成している。
【0011】
しかし、紙幣取扱装置の前後方向に下部搬送機構を引き出せるようにレールで支持して構成しているが、このような支持構成ではレールによる高さ方向の精度が不安定なことから下部搬送機構の高さを高精度に設定することが難しくなっていた。
【0012】
例えば、下部搬送機構の位置が下がって紙幣受渡し部での金庫搬送機構と下部搬送機構との上下に対向する両搬送機構の対向隙間が大きくなり、ジャムの発生が多くなる。この結果、下部搬送機構に対しては高さ方向の位置調整が必要となるため生産性が悪く、また位置調整が悪いとジャムが発生し、品質が悪くなるという問題があった。
【0013】
この種の問題を解決するには、下部搬送機構の高さ位置を高精度に調整する必要がある。ところが、下部搬送機構を前後方向に走行許容させるレールにより引き出す構成において、高さ方向に対しても位置調整可能な機構を加えることは構造が複雑化し、狭い金庫内での高さ位置の調整作業に制約を受けて調整機構が複雑で高価なものとなってしまったり、紙幣取扱装置の設置作業が難しくなってしまう。
【0014】
殊に、下部搬送機構は大容量の紙幣を保管する金種別のリサイクル庫を複数有しているため、重量があり、この下部搬送機構の取り扱いが簡単ではないため高さ方向の調整が難しくなっていた。さらに、1台ずつ金庫筐体のレールを基準に下部搬送機構の高さ位置を調整して位置決めしているが、高精度の位置決めを必要とするため高さ調整に多くの作業労力及び熟練者を必要としていた。
【0015】
そこでこの発明は、上述した問題に鑑み、引き出された下部搬送機構としての下部ユニットを金庫筐体に収納する際に、その収納過程で高精度の位置決めを完結して高さ調整が不要となる構造を可能にし、これに基づいて品質及び生産性の向上を図ることができる紙葉類取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、金庫筐体に支持されて紙葉類を受入処理または紙葉類を放出処理する上部ユニットと、前記金庫筐体の内部に収納され、前記上部ユニットから供給された紙葉類を収納する収納庫に収納処理または前記収納庫に収納されている紙葉類を前記上部ユニットに繰出処理する下部ユニットと、前記上部ユニットと前記下部ユニットを接続して紙葉類を上下に受渡し搬送する搬送接続部を上下に離間可能に対応させて紙葉類を上下方向に受渡し処理する受渡し搬送路と、前記下部ユニットを前記金庫筐体から引き出し可能に支持する引出機構とを備えた紙葉類取扱装置であって、前記下部ユニットを前記金庫筐体の収納位置へと戻す復帰過程で、該下部ユニットを前記引出機構の支持部より引き上げ、該下部ユニットの引き上げ動作に基づいて前記引出機構での前記下部ユニットに対する支持を解除し、該下部ユニットが収納位置に至った時点で前記受渡し搬送路の搬送接続部の上下間を位置決め規制する位置決め規制手段を備えて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、引き出された下部ユニットを金庫筐体に収納する際に、その収納過程で高精度の位置決めを完結して高さ調整が不要となる構造を可能にし、これに基づいて品質及び生産性の向上を図ることができる紙葉類取扱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の現金自動取引装置の外観を示す斜視図。
【図2】実施例1の現金自動取引装置の制御部を示すブロック図。
【図3】実施例1の紙幣入出金機の制御関係を示すブロック図。
【図4】実施例1の紙幣入出金機の内部構造を示す概略側面図。
【図5】実施例1の紙幣入出金機の内部構造を示す要部正面図。
【図6】実施例1の紙幣入出金機の内部構造を示す要部側面図。
【図7】実施例1の下部ユニットの開放状態を示す要部斜視図。
【図8】実施例1の下部ユニットの収納位置への移行状態を示す側面図。
【図9】実施例2の紙幣入出金機の内部構造を示す要部正面図。
【図10】実施例3の下部ユニットの収納位置への移行状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は紙葉類取扱装置として扱われる紙幣入出金機1を搭載した現金自動取引装置101を示す外観斜視図である。この現金自動取引装置101は縦長の直方体状を有する装置筐体101bにより構成されている。
【0021】
この装置筐体101bの上部左側には、取引内容を表示及び入力させる顧客操作部105が備えられ、上部右側には、該装置筐体101bの上部正面板101aに設けられたカードスロット102aと連通して利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構102が備えられている。
【0022】
さらに、装置筐体101bの上部正面板101aには、入出金口(紙幣スロット)21が設けられている。さらに、現金自動取引装置101の内部には、本発明を適用した紙幣を処理する紙幣入出金機1が備えられている。
【0023】
この紙幣入出金機1は、数十mmの厚い鉄板で囲まれた金庫筐体106で構成されている。この金庫筐体106は装置筐体101bよりもさらに堅固な構造にしてセキュリティを高めている。ここで、現金自動取引装置101は、カード、紙幣、明細票を取引媒体とし、紙幣の預入、支払、振込等の処理を行うことができる。
【0024】
図2は現金自動取引装置101の制御内容を示す制御ブロック図である。この現金自動取引装置101はカード・明細票処理機構102、顧客操作部105及び紙幣入出金機1が備えられており、バス107aを介して本体制御部107と接続され、この本体制御部107の制御に基づいて必要な処理動作が実行される。
【0025】
本体制御部107は、インターフェース部107b、係員操作部107c、外部記憶装置107dがバス107aを介して接続されており、必要なデータのやりとりを行う。なお、図2に示す101eは、前記した各機構、構成部分に電力を供給する電源部である。
【0026】
図3は紙幣入出金機1の制御内容を示す制御ブロック図である。
この紙幣入出金機1の制御部35は、現金自動取引装置101の本体制御部107とバス107aを介して通信接続され、本体制御部107からの指令及び紙幣入出金機1の状態を検出した結果に応じて紙幣入出金機1の制御を実行する。また、紙幣入出金機1の取引状態や処理状態を適宜、本体制御部107に送信する。
【0027】
紙幣入出金機1は、入出金口機構20、紙幣識別部30、一時保管庫40、紙幣搬送路501、入金庫60、取忘回収庫61、リサイクル庫80等を備え、これらの図示しない駆動モータや電磁ソレノイド及びセンサと電気的に接続されている。そして、取引に応じてセンサで処理状態を監視しながらアクチュエータを駆動制御する。
【0028】
図4は紙幣入出金機1の内部構造を示す構成図である。
この紙幣入出金機1は、利用者が紙幣を投入または取り出しを行わせるための入出金口機構20と、紙幣の識別を行う紙幣識別部30と、入金した紙幣を取引成立するまでの間、一旦収納して保管する一時保管庫40と、入金時取引が成立した紙幣を収納する入金庫60と、入金時及び出金時に利用者が取り忘れた紙幣を回収する取忘回収庫61と、入出金兼用のリサイクル庫80と、紙幣識別部30を通り、入出金口機構20、一時保管庫40、取忘回収庫61、リサイクル庫80に対し、紙幣を搬送する紙幣搬送路501と、その制御部35(図3)とから構成されている。
【0029】
また、紙幣搬送路501は、紙幣識別部30を双方向に通過し、入出金口機構20、一時保管庫40、取忘回収庫61、入金庫60、リサイクル庫80を接続している。なお、図4において、紙幣搬送路501を示している各矢印のうち、片方向矢印は、紙幣を矢印方向にのみ搬送する一方向紙幣搬送路であることを示している。また、両方向の矢印は、紙幣を双方向のいずれかに切り替えて搬送する双方向搬送路であることを示している。
【0030】
これらの紙幣搬送路501は、図示しない駆動モータで駆動し、取引処理毎に応じて駆動モータの回転方向を切り替える。さらに、紙幣搬送路501の分岐位置には、切り替えゲートをそれぞれ配置している。これらの分岐位置では振分方向を、符号aと符号bを付けて502aの紙幣搬送方向と、502bの紙幣搬送方向のように2方向を区分して表わしている。他の切り替えゲートについても、同様に503a,503bと、504a,504bと、505a,505bと表記して分岐した2方向の紙幣搬送方向を表わしている。
【0031】
紙幣入出金機1の内部に備えられている上部の搬送機構として扱われる上部ユニット1aは、入出金口機構20と、紙幣識別部30と、一時保管庫40と、取忘回収庫61と、紙幣搬送路501とを備えて構成される。
【0032】
また、紙幣入出金機1の内部に備えられている下部の搬送機構として扱われる下部ユニット1cは金庫筐体106の内部に実装されている。この下部ユニット1cは、入金庫60と、リサイクル庫80と、これらの上面に設置され、後述する金庫搬送機構として扱われる受渡し搬送路1bとの間を接続する水平搬送路1fと、金庫筐体106より下部ユニット1cを外部に引き出し、収納可能な引出機構1dとを備えて構成される。
【0033】
上述の受渡し搬送路1bは、上部ユニット1aと下部ユニット1cとの間を接続する搬送路であり、金庫筐体106の上面一側に上下方向に貫通して開けられた紙幣挿通孔304に配置されている。
【0034】
次に、利用者が入出金取引した際の紙幣入出金機1での入出金動作について説明する。
入金取引時の紙幣入出金機1は、入出金口21に投入された紙幣を、入出金口機構20により一枚ずつ分離し、紙幣識別部30に導いて紙幣の金種、真偽を判定する。識別できた場合は、搬送路上の切り替えゲート502b,503bを切り替え、紙幣を一時保管庫40まで搬送して一旦収納する。紙幣識別部30で識別できなかった場合や、紙幣の傾き異常や紙幣間の間隔異常となった場合については、当該紙幣を入金リジェクト紙幣とし、一時保管庫40には取り込まず、切り替えゲート502aを切り替えて入出金口21に戻し、利用者に返却する。
【0035】
取引が確定すると、一時保管庫40に保管された紙幣を、保管搬送時とは逆の方向に送り出し、紙幣識別部30を通過させ、搬送路上の切り替えゲート504a,505aを切り替え、入金庫60、リサイクル庫80へと搬送して紙幣を収納し、入金動作を終了する。
【0036】
出金取引時の紙幣入出金機1は、リサイクル庫80の金種毎の金庫から紙幣を繰り出し、紙幣識別部30で繰り出された紙幣の金種を識別し、出金される紙幣の確認をとって入出金口21に導き、利用者に紙幣を支払う。
【0037】
また、利用者が紙幣を取り忘れた際の自動回収動作について説明する。
紙幣入出金機1では、入金取引時及び出金取引時に、一定時間経過しても入出金口21より紙幣が取り出されない場合、本体制御部107は取忘れ紙幣の発生と判定し、その入出金口21に残された紙幣を一括して取忘回収庫61に自動的に回収する。
【0038】
次に、図5〜図8を用いて紙幣入出金機1の下部ユニット1cを高さ方向に位置決めする場合について説明する。
図5は上部ユニット1a、受渡し搬送路1b、下部ユニット1cが金庫筐体106に実装されているときの正面図であり、図6はその側面図である。また、図7は引き出された下部ユニット1cの斜視図であり、図8はその下部ユニット1cの引出状態から収納状態までを示す側面図である。
【0039】
上下方向に積層して配置される上部ユニット1aと、受渡し搬送路1bと、下部ユニット1cには、その上下方向の接続部分で、お互いに紙幣を受け渡す必要がある。このため、接続部分では図5及び図6にも示すように、紙幣の受渡しに適した後述する搬送ガイド板や搬送ロールが配置されている。
【0040】
上部ユニット1aには、紙幣受渡し用の上部ユニット搬送ガイド板404と上部ユニット搬送ローラ405が配置されている。また、受渡し搬送路1bには、受渡し搬送路上搬送ガイド板301と受渡し搬送路下搬送ガイド板302と受渡し搬送ローラ303が配置されている。さらに、下部ユニット1cには、下部ユニット搬送ガイド板212と下部ユニット搬送ローラ213とが上下方向にそれぞれ配置されている。
【0041】
これらの搬送ガイド板404,301,302,212は、紙幣入出金機1の上部では上部ユニット搬送ガイド板404と受渡し搬送路上搬送ガイド板301とが上下に対応し、下部では受渡し搬送路下搬送ガイド板302と下部ユニット搬送ガイド板212とが上下に対応して搬送ガイドする役目を持たせている。
【0042】
詳しくは、これらの搬送ガイド板404,301,302,212の上下方向に対向する接合部分を櫛歯状に凹凸対応させている。これにより、金庫筐体106に固定されて上下のユニット1a,1c間をつなぐ中間高さ位置の受渡し搬送路1bを基準に紙幣を円滑に受渡し搬送する搬送接続部を構成している。さらに、固定された受渡し搬送路1bに対し、上部ユニット1aと下部ユニット1cを前後方向にスライドさせるために搬送接続部で離間可能に構成している。
【0043】
上部ユニット1aは略直方体に構成され、図5に示すように、該上部ユニット1aの両側下部に対向する上部ユニットレール203により走行自由に支持されている。上部ユニットレール203は金庫筐体106の左右上面に固定されているL形状の上部ユニットトレイ201の内側面に備えられている。
【0044】
また、上部ユニットレール203は、上部ユニット1aの両外側面に略水平に平行して固定された凸形レール203aと、これらの凸形レール203aと対向して前記上部ユニットトレイ201の内側面に固定された凹形レール203bとをそれぞれ凹凸対応させて構成している。
【0045】
これにより、上部ユニット1aは上部ユニットレール203に支持され、金庫筐体106の前後方向に略水平にスライド許容されている。
【0046】
受渡し搬送路1bは、前記上部ユニットトレイ201に固定して設置され、金庫筐体106の上面を上下方向に貫通する紙幣挿通孔304に介在されている。そして、上部ユニット1aと下部ユニット1cに対し、上側と下側でそれぞれ上下方向に櫛歯状に接続される。また、この受渡し搬送路1bは、固定されているため受渡し搬送路1bが基準高さ位置となり、この受渡し搬送路1bに対して上部ユニット1aと下部ユニット1cが適切な高さに規制されて接続される。
【0047】
下部ユニット1cは略直方体に構成され、その両側下部に対向する引出機構としての下部ユニットレール204により走行自由に支持されている。下部ユニットレール204は金庫筐体106の内部底面の両側に立設されているL形状の下部レールブラケット205の内側面に備えられている。
【0048】
また、下部ユニットレール204は、下部ユニットトレイ202の両外側面に略水平に平行して固定された凸形レール204aと、これらの凸形レール204aと対向して前記下部ユニットレールブラケット205の内側面に固定された凹形レール204bとをそれぞれ凹凸対応させて構成している。これにより、下部ユニット1cは下部ユニットレール204に支持され、金庫筐体106の前後方向に略水平にスライド許容されている。
【0049】
上述の下部ユニットトレイ202は、下部ユニット1cの下部を下方より覆う凹形状を有して備えられ、下部ユニットレール204を介して金庫筐体106の下面両側に固定された下部ユニットレールブラケット205に固定されている。
【0050】
下部ユニットレール204は入金庫60、リサイクル庫80の引出動作の操作性の観点から金庫下面に配置される。さらに、下部ユニット1cの両側面には略水平な案内ピン210を突設しており、これらの案内ピン210が下部ユニットトレイ202の両側面に開口している縦長の昇降ガイド孔211に挿入されている。通常は、下部ユニット1cの重さにより該下部ユニット1cと一体の案内ピン210が昇降ガイド孔211の下端に下がった状態で支えられている。
【0051】
つまり、下部ユニット1cは下部ユニットトレイ202に対して上下方向に昇降ガイド孔211の高さ分だけ上動許容させる軸支構造を有している。この上動許容される寸法は後述する位置決め規制機構200での高さ方向の位置合わせに必要な長さ、例えば5mm程度の長さに設定するとよい。
【0052】
上述の位置決め規制機構200は、下部ユニット1cに対する位置決め規制手段として備えられる。この位置決め規制機構200は、基準ローラ207と基準プレート208とを組み合わせて下部ユニット1cの両側を支持するように構成される。例えば、下部ユニット1cの両側で且つ収納引出方向の前後の合計4箇所の位置で各基準ローラ207と基準プレート208とが対応するようにバランス良く配置している。
【0053】
基準ローラ207は、下部ユニット高さの位置決め規制ローラとして設けられ、下部ユニット1cの上部両側面に小さなローラを略水平に突出させて構成される。基準ローラ207の高さ位置は、下部ユニット1cが金庫筐体106の内部に収納された時点で、後述する基準プレート208により下部ユニット1cの高さが規制されて、図5に示すように、受渡し搬送路1bでの櫛歯状の適切な基準高さに位置決めされる距離T1に設定されている。
【0054】
上述の基準プレート208は下部ユニット1cの位置決め規制レールとして設けられ、前記基準ローラ207に対応する下部ユニット上部トレイ202aの下端に形成されている。この下部ユニット上部トレイ202aは、上部ユニットトレイ201の下面に垂設された状態に固定され、金庫筐体106の上面に設けられた小さい穴を貫通させて金庫筐体106の内部に突き出している連結シャフト206に強固に支持されている。さらに、下部ユニット上部トレイ202aは金庫内上面にあるため連結シャフト206の長さは短く、また、加工上の観点から長さの精度が良い。
【0055】
そして、両側の下部ユニット上部トレイ202aの下端を内向きに折曲し、この折曲部分を基準プレート208として左右両側に設けている。そして、これらの基準プレート208の上面に、前記基準ローラ207が転がり接触するように配置している。基準プレート208は、基準ローラ207と対応したとき、受渡し搬送路1bを固定している上部ユニットトレイ201から該基準プレート208までの距離T2が適切な基準高さ位置になるように設置されている。
【0056】
詳しくは、下部ユニット1cが金庫筐体106の内部に収納された収納完了時点で、下部ユニット1cの高さが基準プレート208により規制されて、図5に示すように、受渡し搬送路1bでの櫛歯状の上下間隔が適切な対応状態に位置決めされる距離T2に設定している。
【0057】
さらに、位置決め規制機構200は、図6に示すように、下部ユニット1cを金庫筐体106に収納完了する直前から局部的に配置して構成することができる。つまり、下部ユニット1cの収納過程の全長に渡って配置するのではなく、収納直前位置から部分的に施せばよい。このため、基準ローラ207は下部ユニット1cの側面前方側と側面後方側とに部分的に配置し、また基準プレート208は金庫筐体106の側面前方側と側面後方側とに局部的に短く、且つ下部ユニットレール204と同じく前後方向に走行ガイドするように配置すればよい。このため、位置決め規制機構200をコンパクトに構成できる。
【0058】
さらに、基準プレート208の形状は例えば平板状の金属プレートや樹脂プレートを用いて引き出し側の一部を高さ調整用に傾斜させた傾斜レール面208aとして設け、収納側を高さ位置決め後の規制面となる水平レール面208bとして設けている。
【0059】
前記傾斜レール面208aを設けることにより、下部ユニット1cは収納完了直前で基準ローラ207が傾斜レール面208aに乗り上げる。これにより、該下部ユニット1cは下方の下部ユニットレール204から上方の基準プレート208に引き上げられる。よって、下部ユニット1cは支持位置が下部から上部へと切り替えられる。これにより、下部ユニット1cは収納完了直前で位置決め規制機構200が下部ユニット1cの重量を吊支状態に支持して走行許容させ、傾斜レール面208aによる下部ユニット1cの引き上げ動作を可能にして、該下部ユニット1cの高さ位置の変更が可能になる。
【0060】
このため、予め水平レール面208bの高さを最適な高さ位置に定めておけば、下部ユニットレール204側の高さ変動の影響を受けずに精度のよい位置合わせができる。
【0061】
また、下部ユニット1cが位置決め規制機構200で引き上げられる場合、各基準ローラ207と基準プレート208が4箇所の位置でそれぞれ同時に接触対応するように設定している。これにより、下部ユニット1cが傾かず、水平状態を保ったまま引き上げられるようにしている。
【0062】
また、下部ユニット1cが引き出される場合、収納引出方向の前側の基準ローラ207が後側の基準プレート208に当接しないように、前側と後側での位置規制高さを異ならせて配置している。これにより、下部ユニット1cは引出時に他部材との接触を避けた引出動作を可能にしている。
【0063】
なお、下部ユニット1cを金庫筐体106に収納した状態での背面側には図示しない留め具等のロック機構が備えられており、該下部ユニット1cを収納位置で金庫筐体106に固定できるように構成されている。さらに、下部ユニット1cを金庫筐体106に収納した後は金庫筐体106の背面側に備えられている金庫扉106aにより金庫筐体106の開口された背面側が閉じられる。
【0064】
このように構成された下部ユニット1cを、まず金庫筐体106から引き出した状態について図7を参照して説明する。
下部ユニット1cは、下部ユニット水平搬送路1fでのジャム処理、入金庫60やリサイクル庫80でのジャム処理、入金庫60からの紙幣の取り出し、リサイクル庫80への紙幣の装填、回収、保守点検等の目的で例えば現金自動取引装置101の後方に引出自由に構成されている。
【0065】
下部ユニット1cを金庫筐体106から引き出した後は(図中、引き出された下部ユニットを1dで示す)、この引き出された下部ユニット1dは下部ユニット水平搬送路1fによって覆われている。そして、この引き出された下部ユニット1dの上面を開閉するリンク片209によって接続されている下部ユニット水平搬送路1fを矢印602方向に開閉することができる。これにより、入金庫60やリサイクル庫80を矢印603方向に取り出し可能となる。なお、図7では下部ユニット水平搬送路1fと入金庫60とリサイクル庫80は直方体で図示し、細かな紙幣の搬送接続部分は省略して示している。
【0066】
入金庫60やリサイクル庫80は紙幣が満杯になった場合、非常に重くなることから、該下部ユニット1cの入金庫60やリサイクル庫80の取出側となる一側面上部を凹部601に切り欠いて設けている。これにより、係員は入金庫60やリサイクル庫80を上方まで持ち上げることなく、凹部601まで持ち上げた後、斜め方向に引き出せるようにした取出操作性が良い構造となっている。
【0067】
次に、下部ユニット1cを金庫筐体106から引き出した状態から金庫筐体106に収納するときの動作を、図8を参照して説明する。
下部ユニット1cが、下部ユニットレール204(図7)により引き出されている状態では引き出された下部ユニット1dは基準ローラ207が基準プレート208より外れて外部に引き出されている。このため、引き出された下部ユニット1dは自重により下がり、下部ユニットトレイ202上に降りて下部ユニットレール204で支持されて前後方向にスライド自由な状態に支持されている。
【0068】
引き出された下部ユニット1dが再び収納される場合、該引き出された下部ユニット1dは矢印604方向に押され、収納直前の位置では図8に実線で示すように基準ローラ207が基準プレート208の傾斜レール面208aに接触しながら矢印605方向に持ち上げられる(図中持ち上げられる下部ユニットを1eで示す)。持ち上げられた下部ユニット1eが完全に収納された状態では、図5に示すように基準ローラ207が基準プレート208の水平レール面208bに乗り上がることで下部ユニット1cが下部ユニットトレイ202から浮き上がる(図8に浮き上がった下部ユニット1cを2点鎖線で示す)。
【0069】
これにより、下部ユニット1cを下部ユニットレール204よりも上部の位置決め規制機構200で支持させて、該位置決め規制機構200で下部ユニット1cを変位させて下部ユニット1cを適正な高さに位置決め規制することができる。
【0070】
また、下部ユニット1cは紙幣が装填されて重量があると、その影響を受けて下部ユニットレール204は下がりやすく、下部ユニット1cは重量によって高さ位置が変化しやすい傾向にあるが、下部ユニット1cの支持位置を位置決め規制機構200に切り替え可能にすることにより、下部ユニット1cは重量の影響を受け難い位置決め構造となる。
【0071】
すなわち、下部ユニット1cを金庫筐体106の収納位置へと戻す復帰過程で、該下部ユニット1cを下部ユニットレール204より引き上げ、該下部ユニット1cの引き上げ動作に基づいて下部ユニットレール204での下部ユニット1cに対する支持を解除し、該下部ユニット1cが収納位置に至った時点で位置決め規制機構200が受渡し搬送路1bの搬送接続部の上下の櫛歯間を位置決め規制する構成を有している。
【0072】
詳しくは、下部ユニット1cを引き出した位置から金庫筐体106に収納する際、下部ユニット1cの基準ローラ207が基準プレート208に追従することで下部ユニット1cは引き上げられ、この引き上げ動作に基づいて下部ユニットレール204での下部ユニット1cに対する支持が解除される。このため、該下部ユニット1cの重量が下部ユニットレール204のレール部分より浮き上がった収納構造となる。
【0073】
したがって、下部ユニットレール204でのレール部分は下部ユニット1cの負荷をほとんど受けず、上方の位置決め規制機構200では下方の下部ユニットレール204による高さ位置精度の不安定な影響を受けない。この結果、下部ユニット1cを正規の基準高さ位置に高精度に位置決めして収納させることができる。
【0074】
さらに、下部ユニット1cが収納引出方向及び高さ方向に変位許容して位置決め規制される際、互いに接して位置決め規制し合う規制部材同士の一方を基準ローラ207で構成することにより、下部ユニット1cを金庫筐体106の収納位置へと収納させる際に、基準ローラ207を基準プレート208上に走行させるため下部ユニット1cを円滑にスライド移送させることができる。なお、金庫筐体106側に基準ローラ207を付し、下部ユニット側に基準プレート208を備えて上下逆に配置して接触対応させて構成しても同様の作用効果が得られる。
【実施例2】
【0075】
図9は下部ユニット1cの他の支持構成例を示し、引出機構としての下部ユニットレール204を位置決め規制機構200の近傍となる上部に配置して構成したものである。これにより、精度の良い下部ユニットレール204の引出構造が得られるようにした点が実施例1と異なる。よって、異なる点のみを記載し、他の同一の構成部分は同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
下部ユニットレール204を、金庫下面に固定する下部ユニットレールブラケット205ではなく、位置決め規制機構200の直ぐ下側の下部ユニット上部トレイ202aに直接取り付けることで、さらに受渡し搬送路1bと下部ユニット1cの上下方向の高さ位置の精度が安定して得られる構成である。
【0077】
つまり、下部ユニットレール204を位置決め規制機構200の近傍に配置して構成した場合は、高さ方向の精度が正確に得られる下部ユニット上部トレイ202aに下部ユニットレール204を支持させるため高さ方向の位置精度に対する誤差が少なくなり、下部ユニット1cに対して一層精度の良い支持構造となる。
【実施例3】
【0078】
図10は位置決め規制機構200の他の構成例を示し、収納引出方向の前方側にのみ基準ローラ207と基準プレート208を配置して構成したものである。これにより、位置決め規制機構200の高さ位置規制部分を4箇所から2箇所に削減して構造をさらに簡素化した点が実施例1と異なる。よって、異なる点のみを記載し、他の同一の構成部分は同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
位置決め規制機構200は下部ユニット1cの前部側でのみ位置規制される。このため、下部ユニット1cが収納された時点では下部ユニット1cの基準ローラ207が基準プレート208に乗り上げる。これにより、下部ユニット1cは前部側のみが前上がりに傾斜して収納される。一方、下部ユニット1cが引き出された時点では引き出し初期時に位置決め規制機構200との規制が解除されて外部に引き出される。このため、下部ユニット1cは水平状態を保って引き出される。
【0080】
このような位置決め規制機構200を備えても、下部ユニット1cに対する位置決め規制を施して実施例1と同様な作用効果を得ることができる。なお、下部ユニット1cは傾斜しても、その高さは5mm程度なので大きく傾斜することがない。また、傾斜角度を考慮して受渡し搬送路1bに接続される下部ユニット1cの上向きに突出する櫛歯部分1gは、収納完了時に受渡し搬送路1bの真下に垂直に接続されるように予め下部ユニット1cの上面より傾斜させた傾斜代を見込んで設けている。
【0081】
以上説明したように、受渡し搬送路1bを固定している上部ユニットトレイ201に、公差精度がよい連結シャフト206を介して、下部ユニット上部トレイ202aが支持されている。そして、この下部ユニット上部トレイ202aに設けられた基準プレート208に対して、下部ユニット1cの基準ローラ207が収納位置で常に基準プレート208に接触対応するように、下部ユニット1cが収納動作されるため、受渡し搬送路1bの搬送ガイド板302と下部ユニットの搬送ガイド板212との上下間の距離が常に紙幣の受渡しに適した上下間隔に設定される。
【0082】
これにより、下部ユニットレール204を金庫筐体106内の下部ユニットレールブラケット205に設置するときに高さ方向の位置を簡単な調整で済む。もしくは、下部ユニットレール204の高さ方向の位置調整を省略した製作が可能になる。これにより、下部ユニット1cを組み込む作業において生産効率がよい現金自動取引装置101を提供できる。
【0083】
殊に、この実施例では下部ユニット1cの全体の上下方向の位置を精度良くするという支持構成ではなく、受渡し搬送路1bと下部ユニット1cとの櫛歯状のつなぎ部分だけの上下方向の位置決めを精度良く合わせる構造になっており、重量物である下部ユニット1cを効率的に上下方向に位置合わせすることができる。
【0084】
なお、上部ユニット1aは上部ユニットレール203によりスライドさせて引出可能に構成されている。この際、上部ユニット1aの上部ユニット搬送ガイド板404と、受渡し搬送路1bの受渡し搬送路上搬送ガイド板301との上下方向の接続関係は、もともとお互いの機構の距離が近いことからこのような構成を設ける必要はないが、位置決め規制機構200と同様な構成を設けることでさらに信頼性の高い装置を提供することもできる。
【0085】
この発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて多くの実施の形態を得ることができる。例えば、上述の実施例では紙幣のみを取引する現金自動取引装置101を例にとって示したが、硬貨取引機構を併用した現金自動取引装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1a…上部ユニット
1b…受渡し搬送路
1c,1d,1e…下部ユニット
101…現金自動取引装置
106…金庫筐体
200…位置決め規制機構
202…下部ユニットトレイ
202a…下部ユニット上部トレイ
204…下部ユニットレール
207…基準ローラ
208…基準プレート
210…案内ピン
211…昇降ガイド孔
212…下部ユニット搬送ガイド板
302…受渡し搬送路下搬送ガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金庫筐体に支持されて紙葉類を受入処理または紙葉類を放出処理する上部ユニットと、
前記金庫筐体の内部に収納され、前記上部ユニットから供給された紙葉類を収納する収納庫に収納処理または前記収納庫に収納されている紙葉類を前記上部ユニットに繰出処理する下部ユニットと、
前記上部ユニットと前記下部ユニットを接続して紙葉類を上下に受渡し搬送する搬送接続部を上下に離間可能に対応させて紙葉類を上下方向に受渡し処理する受渡し搬送路と、
前記下部ユニットを前記金庫筐体から引き出し可能に支持する引出機構とを備えた紙葉類取扱装置であって、
前記下部ユニットを前記金庫筐体の収納位置へと戻す復帰過程で、該下部ユニットを前記引出機構の支持部より引き上げ、該下部ユニットの引き上げ動作に基づいて前記引出機構での前記下部ユニットに対する支持を解除し、該下部ユニットが収納位置に至った時点で前記受渡し搬送路の搬送接続部の上下間を位置決め規制する位置決め規制手段を備えて構成した
紙葉類取扱装置。
【請求項2】
前記位置決め規制手段を、
前記金庫筐体に前記下部ユニットが収納引出方向及び高さ方向に変位許容して位置決め規制される際に、互いに接して位置決め規制し合う規制部材同士の一方をローラで構成した
請求項1に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項3】
前記位置決め規制手段を、
前記ローラと対向する他方の位置決め規制する規制部材を位置決め規制レールで構成した
請求項2に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項4】
前記位置決め規制手段を、
前記金庫筐体に前記下部ユニットを収納させる収納位置の直前に前記位置決め規制レールを局部的に配置して構成した
請求項3に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項5】
前記受渡し搬送路の搬送接続部を、離間可能に上下に櫛歯状に凹凸対応させ、該上下の櫛歯状の対向面間を位置決めする構成とした
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項6】
前記引出機構を、
前記位置決め規制手段の近傍に配置して構成した
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−93980(P2012−93980A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241086(P2010−241086)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】