説明

紙葉類検出装置

【課題】 搬送を利用しながら紙葉類を搬送方向に対し直交する方向に走査して情報検出を行うことができ、その上で、紙葉類の搬送方向における大型化を防止することができる紙葉類検出装置の提供。
【解決手段】 紙葉類15の搬送方向に対して斜めに配置された複数のセンサ28を、紙葉類15の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置することで、紙葉類15の搬送方向における大型化を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類を検出する紙葉類検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣等の紙葉類において偽造防止や金種識別等の目的からセキュリティスレッドを設けることがある。つまり、例えば所定の磁気的性質を有するセキュリティスレッドを紙葉類に設けておくことで、このセキュリティスレッドの検出の有無で紙葉類の真偽等を識別したり、その磁気的性質から金種を識別したりするのである。
【0003】
このようなセキュリティスレッドには、磁気の強弱等でコード化された情報を長さ方向に配列して設けたものがある。このようにセキュリティスレッドにその長さ方向に配列して情報を設けると、検出側は、セキュリティスレッドを長さ方向に走査して検出を行う必要がある。セキュリティスレッドが紙葉類の搬送方向に沿っている場合は、セキュリティスレッドの通過位置に磁気センサ装置を設ければ、この磁気センサ装置で紙葉類の搬送を利用した走査が可能となる。しかし、セキュリティスレッドが紙葉類の搬送方向に対し直交している場合には、このような磁気センサ装置では紙葉類の搬送を利用した走査ができない。このため、直線状の磁気センサ装置を紙葉類の搬送方向に対して斜めに配置することで、セキュリティスレッドが紙葉類の搬送方向に対し直交している場合でも、紙葉類の搬送を利用した走査を可能とする技術がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−24686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、直線状の磁気センサ装置を紙葉類の搬送方向に対して斜めに配置するものでは、磁気センサ装置の配置スペースが特に紙葉類の搬送方向に広がってしまうため、装置の大きさがこの方向に大型化してしまうという問題があった。このような問題は、上記したセキュリティスレッドの検出に関わらず、搬送を利用しながら紙葉類を搬送方向に対し直交する方向に走査して情報検出を行う場合において生じる共通の問題である。
【0005】
したがって、本発明は、搬送を利用しながら紙葉類を搬送方向に対し直交する方向に走査して情報検出を行うことができ、その上で、紙葉類の搬送方向における大型化を防止することができる紙葉類検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、紙葉類の搬送方向に対して斜めに配置された複数のセンサを、紙葉類の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置してなることを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記複数のセンサの傾斜方向が全て同一とされ、隣り合う前記センサ同士が、紙葉類の搬送方向から見て連続していることを特徴としている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記各センサの出力信号をそれぞれ記憶する複数のメモリ手段と、これらメモリ手段からの信号を、連続的な信号として合成する合成手段と、該合成手段によって合成された信号に基づき、紙葉類の真偽を識別する識別手段とを有することを特徴としている。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2に係る発明において、隣り合う前記センサ同士が、紙葉類の搬送方向から見て互いに近接する端部同士を重ね合わせていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記各センサの出力信号をそれぞれ記憶する複数のメモリ手段と、これらメモリ手段からの信号を、隣り合うセンサ同士の一部重なり合ったデータのいずれか一方または両方の一部を用いて連続的な信号として合成する合成手段と、該合成手段によって合成された信号に基づき、紙葉類の真偽を識別する識別手段とを有することを特徴としている。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、前記識別手段は、さらに、前記一部重なり合ったデータ同士の一致度を識別することを特徴としている。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に係る発明において、前記複数のセンサが、紙葉類に設けられたセキュリティスレッドを検出するものであることを特徴としている。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に係る発明において、前記複数のセンサが、紙葉類の磁気インクを検出するものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、センサを紙葉類の搬送方向に対して斜めに配置することで、搬送を利用しながら紙葉類を搬送方向に対し直交する方向に走査して情報検出を行うことが可能となる。その際に、複数のセンサに分け、これら複数のセンサを紙葉類の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置することで、搬送方向における大型化を防止することができる。したがって、搬送を利用しながら紙葉類を搬送方向に対し直交する方向に走査して情報検出を行うことができ、その上で紙葉類の搬送方向における大型化を防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、隣り合うセンサ同士が、紙葉類の搬送方向から見て連続しているため、複数のセンサとしても、センサ間で読み取り不可な部分がなく、連続的なデータとして検出可能となる。しかも、複数のセンサの傾斜方向が全て同一とされていることから、複数のセンサを紙葉類の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置しても、センサ同士の干渉を防止しつつ、紙葉類の搬送方向から見て連続するように配置できる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、複数のメモリ手段が各センサの出力信号をそれぞれ記憶して、合成手段がこれらメモリ手段からの信号を連続的な信号として合成し、識別手段がこの合成された信号に基づいて紙葉類の真偽を識別する。したがって、紙葉類の搬送方向に対し直交する方向に走査した連続的なデータを作成でき、これに基づいて紙葉類の真偽を識別できる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、隣り合うセンサ同士が、紙葉類の搬送方向から見て互いに近接する端部同士を重ね合わせているため、複数のセンサとしても、センサ間で読み取り不可な部分がなく、しかも、一部重なり合ったデータで位相合わせを行うことができ、連続的なデータとして確実に検出可能となる。しかも、複数のセンサの傾斜方向が全て同一とされていることから、複数のセンサを紙葉類の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置しても、センサ同士の干渉を防止しつつ、紙葉類の搬送方向から見て近接する端部同士を重ね合わせるように配置できる。加えて、重なり合った部分の一致度を検出することも可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、複数のメモリ手段が各センサの出力信号をそれぞれ記憶して、合成手段がこれらメモリ手段からの信号を、一部重なり合ったデータのいずれか一方または両方の一部を用いて連続的な信号として合成し、識別手段がこの合成された信号に基づいて紙葉類の真偽を識別する。したがって、紙葉類の搬送方向に対し直交する方向に走査した連続的なデータを作成でき、これに基づいて紙葉類の真偽を識別できる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、識別手段が、一部重なり合ったデータ同士の一致度を識別するため、さらに詳しく紙葉類の真偽を識別することができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、複数のセンサが、紙葉類に設けられたセキュリティスレッドを検出するものであるため、紙葉類の搬送方向に大型化することなく、セキュリティスレッドの情報を検出することができる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、複数のセンサが、紙葉類の磁気インクを検出するものであるため、紙葉類の搬送方向に大型化することなく、磁気インクの分布情報等を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の第1実施形態の紙葉類検出装置を図1〜図4を参照して以下に説明する。
第1実施形態の紙葉類検出装置11は、図1に示すように、紙葉類として紙幣を取り扱う紙幣取扱機12に組み込まれ、この紙幣取扱機12の搬送部13で搬送される紙幣を検出するものである。第1実施形態の紙葉類検出装置11は、具体的には、図2に示すように紙幣15に設けられたセキュリティスレッド16を検出する。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態の紙葉類検出装置11が設けられる紙幣取扱機12は、例えば、投入口20に投入された紙幣を、一枚ずつに分離した状態で、搬送部13によってそれぞれの長手方向を搬送方向に沿わせた状態で搬送する。そして、搬送中に、紙幣を、紙葉類検出装置11で真偽および金種を識別し計数した後に、偽紙幣は返却口19へ返却させる一方、真紙幣は一時貯留部21に金種別に分類して一時貯留させ、その後、金種別に分類した状態で収納部22に収納する。
【0024】
紙幣15には、図2に示すように、その長手方向に直交する方向つまりその上下方向に沿って延在するように上記したセキュリティスレッド16が形成されている。紙幣15は上記のようにその長手方向に沿って搬送されることから、言い換えれば、紙幣15にはその搬送方向に対し直交する方向にセキュリティスレッド16が形成されている。このセキュリティスレッド16は、メタルスレッドであり、磁性の強弱等でコード化された情報が、その延在方向に配列されて保持されている。ここで、セキュリティスレッド16が保持する情報は、具体的には紙幣15の金種毎に異なる金種情報である。なお、一枚の紙幣15のセキュリティスレッド16には、同じ情報が、複数、その延在方向に繰り返すように並べられて保持されている。
【0025】
第1実施形態の紙葉類検出装置11は、図1に示すように、紙幣取扱機12の搬送部13における紙幣15を直線状に搬送させる部分に設けられて、直線状に移動する紙幣15を表裏方向の一側から検出する。紙葉類検出装置11は、図2に示すように、複数の同一構造の磁気センサ装置25を有するセンサアレイ26を備えている。各磁気センサ装置25は、図3に示すように、細長い長方形状をなす基板27上に、基板27よりも幅の狭い長方形状をなす検出コイル(センサ)28が、互いに長手方向を一致させて設けられており、基板27の検出コイル28とは反対側に励磁用磁石29が設けられている。
【0026】
センサアレイ26は、搬送部13で搬送される紙幣15の表面および裏面のいずれか一方の面に対向するように配置されるもので、図2に示すように、上記のような磁気センサ装置25を、複数(図示例は6個)、紙幣搬送方向に対し直交する方向に並べている。このとき、すべての磁気センサ装置25は、搬送部13で搬送される紙幣15の表面および裏面のいずれか一方の面にそれぞれの検出コイル28を対向させるように配置されることになる。また、すべての磁気センサ装置25は、それぞれの検出コイル28を、高さ位置を合わせ、紙幣搬送方向における位置を合わせて、紙幣搬送方向に対し直交する方向に等ピッチで並べている。
【0027】
しかも、すべての磁気センサ装置25は、長方形状の検出コイル28がその長手方向を紙幣搬送方向に対して所定角度(例えば45度)で傾斜させるように配置されることになる。以上により、紙幣15の搬送方向に対して斜めに配置された複数の検出コイル28が、紙幣15の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置されている。
【0028】
ここで、すべての検出コイル28は、紙幣搬送方向に対する傾斜方向および傾斜角度が同一とされる。しかも、すべての検出コイル28は、隣り合うもの同士が、紙幣搬送方向から見て互いに近接する側の末端同士の位置を一致させている。つまり、すべての検出コイル28は、紙幣15の搬送方向から見て隣り合うもの同士が連続するように配置されている。なお、最も両外側の検出コイル28は、搬送部13で搬送される紙幣15よりも両外側に突出するように配置される。
【0029】
そして、上記したセンサアレイ26のすべての磁気センサ装置25の検出コイル28が、図4に示すように、それぞれ個別の記憶部(メモリ手段)31に連結されている。これら複数の記憶部31は、対応する検出コイル28の出力信号をそれぞれ記憶する。
【0030】
すべての記憶部31は、信号合成部(合成手段)32に接続されており、信号合成部32は、搬送部13による紙幣15の搬送速度と、各検出コイル28の傾斜角度と、各検出コイル28による検出部分の長さとに基づいて、各記憶部31からの信号を、連続的な一つの信号として合成する。
【0031】
具体的に、ある紙幣15が搬送部13で搬送されてセンサアレイ26を通過する際に、複数の検出コイル28によりセキュリティスレッド16が延在方向において複数の検出部分に分割されて検出されることになる。このとき、各検出コイル28は、それぞれの傾斜によってセキュリティスレッド16の検出部分をその延在方向に沿って走査することになる。
【0032】
つまり、セキュリティスレッド16の各検出部分は、紙幣15の搬送にしたがって、対応する検出コイル28の搬送方向上流となる上流部28aの側から下流部28bの側に向けて移動することになり、そのときに、検出コイル28が傾斜していることから、検出コイル28との交差部分を延在方向の一側(上流部28a側、図2右側)から延在方向の逆側(下流部28bの側、図2左側)に移動させることになる。このようにして、セキュリティスレッド16の各検出部分が各検出コイル28でそれぞれ延在方向に走査される。
【0033】
そして、すべての検出コイル28のうち、セキュリティスレッド16の延在方向において、一つの検出コイル28で下流部28bに対し上流部28aが配置される側(図2右側)の端部に配置される検出コイル28の信号から、逆側(図2左側)の端部に配置される検出コイル28の信号まで、搬送部13による紙幣15の搬送速度と、検出コイル28の傾斜角度と、検出コイル28による検出部分の長さと、検出コイル28の順番とに基づいた時間分、位相をずらしながら、信号を順次繋ぎ合わせる。これにより、セキュリティスレッド16を延在方向に連続的に走査した信号と同様の信号を得る。この信号は、セキュリティスレッド16が保持するコード化された磁気情報と対応するパターンの信号波形となる。
【0034】
このようにして、信号合成部32で連続的な一つの信号として合成された信号が、識別部(識別手段)33に導入されることになり、識別部33では、この導入された信号に基づいて、セキュリティスレッド16の読み取ったコード等から、紙幣15の真偽および金種を識別し、その結果を紙幣取扱機12側の図示略の制御部に出力する。この制御部では、センサアレイ26で検出された紙幣が偽紙幣である場合、返却口19に返却させることになり、センサアレイ26で検出された紙幣が真紙幣である場合、その金種から計数等を行って一時貯留部21に一時貯留させ、その後、収納部22に収納させることになる。
【0035】
以上に述べた第1実施形態の紙葉類検出装置11によれば、検出コイル28を紙幣15の搬送方向に対して斜めに配置することで、搬送を利用しながら紙幣15を搬送方向に対し直交する方向に走査してセキュリティスレッド16の情報検出を行うことができる。その際に、複数の検出コイル28に分け、これら複数の検出コイル28を紙幣15の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置することで、搬送方向における大型化を防止することができる。したがって、搬送を利用しながら紙幣15を搬送方向に対し直交する方向に走査して情報検出を行うことができ、その上で紙幣15の搬送方向における大型化を防止することができる。
【0036】
また、隣り合う検出コイル28同士が、紙幣15の搬送方向から見て連続しているため、複数の検出コイル28としても、検出コイル28間で読み取り不可な部分がなく、連続的なデータとして検出可能となる。具体的には、複数の記憶部31が各検出コイル28の出力信号をそれぞれ記憶して、信号合成部32がこれら記憶部31からの信号を連続的な信号として合成し、識別部33がこの合成された信号に基づいて紙幣15の真偽および金種を識別する。したがって、セキュリティスレッド16を紙幣15の搬送方向に対し直交する方向に走査した連続的なデータを作成でき、これに基づいて紙幣15の真偽を識別できる。
【0037】
しかも、複数の検出コイル28の傾斜方向が全て同一とされていることから、複数の検出コイル28を紙幣15の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置しても、検出コイル28同士の干渉を防止しつつ、紙幣15の搬送方向から見て検出コイル28を連続させるように配置できる。
【0038】
さらに、複数の検出コイル28が、紙幣15に設けられたセキュリティスレッド16を検出するものであるため、紙幣15の搬送方向に大型化することなく、セキュリティスレッド16の情報を検出することができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態の紙葉類検出装置11を主に図5を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0040】
第2実施形態の紙葉類検出装置11は、第1実施形態に対しセンサアレイ26が異なっている。
第2実施形態の紙葉類検出装置11のセンサアレイ26は、第1実施形態と同様の磁気センサ装置25を、複数(図示例は9個)、第1実施形態と同様に検出コイル28を並べて構成されているが、すべての検出コイル28は、隣り合うもの同士が、紙幣15の搬送方向から見て互いに近接する端部同士を所定長重ね合わせている。つまり、この第2実施形態においても、すべての検出コイル28は、隣り合うもの同士が紙幣15の搬送方向から見て連続するように配置されていることになる。
【0041】
第2実施形態では、隣り合う検出コイル28同士が、紙幣15の搬送方向から見て互いに近接する端部同士を所定長重ね合わせていることから、隣り合う検出コイル28の信号は、紙幣15の搬送方向から見て互いに重なり合う端部で検出される一部のデータが、同じデータとなる(この隣り合う検出コイル28同士の一部重なり合ったデータ部分を重なりデータ部と称す)。
【0042】
そして、第2実施形態においても、信号合成部32が、各検出コイル28に接続された各記憶部31からの信号を、搬送部13による紙幣15の搬送速度等に基づいて、連続的な一つの信号として合成することになるが、その際に、重なりデータ部を用いて信号の位相合わせを行い、その後、重なりデータ部のいずれか一方を用いて連続的な信号として合成する。なお、重なりデータ部の両方の一部を用いて連続的な信号として合成しても良い。
【0043】
具体的に、すべての検出コイル28のうち、セキュリティスレッド16の延在方向において、一つの検出コイル28で下流部28bに対し上流部28aが配置される側(図5右側)の端部に配置される検出コイル28の信号から、逆側(図5左側)の端部に配置される検出コイル28の信号まで、搬送部13による紙幣15の搬送速度と、検出コイル28の傾斜角度と、検出コイル28による検出部分の長さと、検出コイル28の順番とに基づいた時間分、位相をずらしつつ、重なりデータ部の位相を合わせるようにした後、重なりデータ部のうち予め設定された側の重なりデータ部を除去するようにして、信号を順次繋ぎ合わせる。これにより、セキュリティスレッド16を延在方向に連続的に走査した信号と同様の、セキュリティスレッド16が保持するコード化された磁気情報に対応するパターンの信号を得る。
【0044】
このようにして、信号合成部32で連続的な一つの信号として合成された信号が、識別部33に導入されることになり、識別部33では、この導入された信号に基づいて、セキュリティスレッド16の読み取ったコード等から、紙幣15の真偽および金種を識別し、その結果を紙幣取扱機12側の図示略の制御部に出力する。このとき、識別部33は、重なりデータ部同士の一致度を、すべての重なりデータ部について識別し、少なくともいずれか一つの一致度が所定値を下回れば、検出したセキュリティスレッド16に何らかの異常があり偽紙幣の可能性があると判定してエラー信号を紙幣取扱機12側の制御部に出力する。
【0045】
以上に述べた第2実施形態の紙葉類検出装置11によれば、紙幣15の搬送方向から見て隣り合う検出コイル28が互いに近接する端部同士を所定長重ね合わせているため、複数の検出コイル28としても、検出コイル28間で読み取り不可な部分がなく、重なりデータ部で位相合わせをすることで、連続的なデータとして確実に検出可能となる。具体的に、複数の記憶部31が各検出コイル28の出力信号をそれぞれ記憶して、信号合成部32が、これら記憶部31からの信号を、重なりデータ部のいずれか一方を用いて連続的な信号として合成し、識別部33がこの合成された信号に基づいて紙幣の真偽および金種を識別する。したがって、第1実施形態と同様に、セキュリティスレッド16を紙幣15の搬送方向に対し直交する方向に走査した連続的なデータを作成でき、これに基づいて紙幣15の真偽を識別できる。
【0046】
しかも、複数の検出コイル28の傾斜方向が全て同一とされていることから、第1実施形態と同様、複数の検出コイル28を紙幣15の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置しても、検出コイル28同士の干渉を防止しつつ、紙幣15の搬送方向から見て近接する端部同士を所定長重ね合わせるように配置できる。
【0047】
その上、識別部33が、重なりデータ部同士の一致度を識別するため、さらに詳しく紙幣15の真偽を識別することができる。
【0048】
なお、以上の第1,第2実施形態の紙葉類検出装置11においては、複数の検出コイル28が磁気情報を保持するセキュリティスレッド16を検出する場合を例にとり説明したが、磁気情報を保持する部分があれば、例えば磁気インクの印刷パターンを検出することも勿論可能である。この場合も、紙幣搬送方向に大型化することなく、磁気インクの分布情報等を検出することができる。
【0049】
さらに、第1,第2実施形態の紙葉類検出装置11について、磁気情報を保持するセキュリティスレッド16ではなく、図6に示すように、紙幣37において光学的な情報を保持するセキュリティスレッド38を検出するように変更することもできる。この場合は、長方形状をなす光源40および受光部(センサ)41を長さ方向の位置を合わせて隣り合うように基板42に設けた光学センサ装置43を、光源40および受光部41が上記した検出コイル28と同様の状態になるように配置すれば良い。例えばプラスチックのセキュリティスレッドに蛍光塗料がパターン状に塗布されたものを検出する場合は、光源40として紫外線源を用いて受光部41で蛍光の発光を検出することになる。
【0050】
また、第1,第2実施形態の紙葉類検出装置11のいずれにおいても、搬送方向に沿って延在するセキュリティスレッドを備えた紙幣が混在する場合についても、このセキュリティスレッドをも延在方向に走査できる。
【0051】
さらに、第1,第2実施形態の紙葉類検出装置11のいずれにおいても、複数の検出コイル28を上記した姿勢となるように一つの基板に設けても良い。
加えて、紙幣を検出するものに限らず、他の種々の紙葉類を検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態の紙葉類検出装置が適用された紙幣取扱機を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の紙葉類検出装置のセンサアレイと紙幣を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の紙葉類検出装置の磁気センサを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の紙葉類検出装置の全体構成を示すブロック図である
【図5】本発明の第2実施形態の紙葉類検出装置のセンサアレイと紙幣を示す平面図である。
【図6】本発明の紙葉類検出装置のセンサアレイの別の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
15,37 紙幣(紙葉類)
16,38 セキュリティスレッド
28 検出コイル(センサ)
31 記憶部(メモリ手段)
32 信号合成部(合成手段)
33 識別部(識別手段)
41 受光部(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送方向に対して斜めに配置された複数のセンサを、紙葉類の搬送方向に対して直交する方向に一列状に配置してなることを特徴とする紙葉類検出装置。
【請求項2】
前記複数のセンサの傾斜方向が全て同一とされ、隣り合う前記センサ同士が、紙葉類の搬送方向から見て連続していることを特徴とする請求項1記載の紙葉類検出装置。
【請求項3】
前記各センサの出力信号をそれぞれ記憶する複数のメモリ手段と、これらメモリ手段からの信号を、連続的な信号として合成する合成手段と、該合成手段によって合成された信号に基づき、紙葉類の真偽を識別する識別手段とを有することを特徴とする請求項2記載の紙葉類検出装置。
【請求項4】
隣り合う前記センサ同士が、紙葉類の搬送方向から見て互いに近接する端部同士を重ね合わせていることを特徴とする請求項2記載の紙葉類検出装置。
【請求項5】
前記各センサの出力信号をそれぞれ記憶する複数のメモリ手段と、これらメモリ手段からの信号を、隣り合うセンサ同士の一部重なり合ったデータのいずれか一方または両方の一部を用いて連続的な信号として合成する合成手段と、該合成手段によって合成された信号に基づき、紙葉類の真偽を識別する識別手段とを有することを特徴とする請求項4記載の紙葉類検出装置。
【請求項6】
前記識別手段は、さらに、前記一部重なり合ったデータ同士の一致度を識別することを特徴とする請求項5記載の紙葉類検出装置。
【請求項7】
前記複数のセンサが、紙葉類に設けられたセキュリティスレッドを検出するものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の紙葉類検出装置。
【請求項8】
前記複数のセンサが、紙葉類の磁気インクを検出するものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の紙葉類検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−171953(P2006−171953A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361140(P2004−361140)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】