説明

紙葉類送り異常検出装置

【課題】ローラの回転と紙葉類の送りとの間にズレが生じたとしても、それに影響されることなく紙葉類の送り異常を検出することができる装置を提供すること。
【解決手段】用紙Pの幅方向における一方の側端部分に当該用紙Pの送り方向Xに沿って斜行検知模様8が付けられているとともに、当該斜行検知模様8に対して用紙Pの幅方向において対向するように、用紙Pの幅方向における他方の側端部分に送り方向Xに沿って基準模様7が付けられている。送り異常検出装置1は、基準模様7を読み取り、読み取った当該基準模様を信号として出力する第1センサ2と、斜行検知模様8を読み取り、読み取った当該斜行検知模様を信号として出力する第2センサ3と、第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形と第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形とを比較することにより用紙Pの斜行を検出する斜行検出装置6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の紙葉類の送り異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関しては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。特許文献1には、トラクタ式印字装置の用紙セットミス防止機構という名称の発明が記載されている。この用紙セットミス防止機構は、左右のトラクタに取り付けた用紙センサのいずれか一方が紙無しを検出したことをもって用紙の斜行と認識するというものである。また、特許文献2には、用紙搬送異常検出方法という名称の発明が記載されている。この用紙搬送異常検出方法は、用紙の側端に一定間隔で印字したマークを、フォトセンサによりモータの回転と同期して監視し、マークが検出されないときは用紙搬送の異常が発生したと認識するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−1009号公報
【特許文献2】特開平2−305666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された用紙セットミス防止機構では、印字装置が用紙を取り込む際、その取り込む瞬間でしか用紙の斜行を検出することができない。すなわち、用紙の取り込み途中などにはもはや用紙の斜行を検出することはできない。トラクタ式の印字装置においては、トラクタで用紙が固定されるため、用紙を取り込む瞬間でのみ用紙の斜行を検出できれば、用紙の取り込み途中にその斜行を検出できなくても特に問題はないと考えられる。しかしながら、用紙の取り込みにローラを用いるタイプの印字装置においては、用紙の取り込み途中などに用紙が斜行することもある。
【0005】
一方、特許文献2に記載された用紙搬送異常検出方法では、印字機構部への用紙の取り込み途中などにおいても用紙の斜行を検出できる。しかしながら、モータ駆動によりローラが回転して印字機構部へ用紙が取り込まれる際などにおいて、ローラの回転と用紙の送りとの間にズレが生じることがある。この「ズレ」は、用紙の送り方向と直交する方向のズレ(スキュー)や、用紙の送り方向のズレなどがある。また、ローラと用紙との間に滑りなどが生じることが「ズレ」の原因である。ローラと用紙との間の「滑り」は、用紙の送り方向と直交する方向や、用紙の送り方向において生じる。そのため、フォトセンサによりモータの回転と同期して監視する特許文献2に記載された用紙搬送異常検出方法によると、ローラの回転と用紙の送りとの間にズレが生じた場合に、用紙搬送の異常を誤認識してしまうことが危惧される。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ローラの回転と紙葉類の送りとの間にズレが生じたとしても、それに影響されることなく紙葉類の送り異常を検出することができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ローラを介して印刷機構部へ取り込まれる紙葉類の送り異常検出装置であって、紙葉類の幅方向における一方の側端部分に当該紙葉類の送り方向に沿って斜行検知模様が付けられているとともに、当該斜行検知模様に対して紙葉類の幅方向において対向するように、紙葉類の幅方向における他方の側端部分に当該紙葉類の送り方向に沿って基準模様が付けられており、前記基準模様を読み取り、読み取った当該基準模様を信号として出力する第1センサと、前記斜行検知模様を読み取り、読み取った当該斜行検知模様を信号として出力する第2センサと、前記第1センサからの出力信号に基づく第1波形と前記第2センサからの出力信号に基づく第2波形とを比較することにより紙葉類の斜行を検出する斜行検出手段と、を備える紙葉類送り異常検出装置である。
【0008】
本発明では、紙葉類の送り方向に沿って当該紙葉類に基準模様を付けている。この基準模様を読み取った第1センサからの出力信号に基づく第1波形は、紙葉類の送り状態を直接的に反映する。紙葉類の送り状態を直接的に反映するこの第1波形と、紙葉類に付けられた斜行検知模様を読み取った第2センサからの出力信号に基づく第2波形とを比較して紙葉類の斜行を検出することにより、ローラの回転と紙葉類の送りとの間にズレが生じたとしても、それに影響されることなく紙葉類の斜行(送り異常)を検出することができる。
【0009】
また、基準模様および斜行検知模様を紙葉類の幅方向における両端側部分に付けているので、紙葉類の主要な印刷部分である紙葉類の幅方向における中央部分およびその周辺の印刷面積を広く確保することができる。
【0010】
また本発明において、前記基準模様および前記斜行検知模様は、いずれも前記送り方向における紙葉類の先端部分に付けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によると、印刷機構部に紙葉類を取り込む際の(紙葉類セット時の)紙葉類の傾き(セット異常)を検出することができる。
【0012】
さらに本発明において、前記基準模様および前記斜行検知模様は、間隔をあけて付けられた複数のバーからなるバー模様とされていることが好ましい。
【0013】
この構成によると、紙葉類に斜行が生じた場合、第1センサからの出力信号に基づく第1波形に対して、第2センサからの出力信号に基づく第2波形の出力タイミングが早くなったり遅くなったりする。これにより、紙葉類の斜行を検出できる。
【0014】
さらに本発明において、前記基準模様は、間隔をあけて付けられた複数のバーからなるバー模様とされ、前記斜行検知模様は、蛇行部分を有するとともに前記送り方向に連続する所定の線模様とされていることが好ましい。なお、当該斜行検知模様は、紙葉類の送り方向において、不連続部分がまったくない連続的な線模様であってもよいし、所定の間隔を持つ(不連続部分を有する)連続的な線模様であってもよい。
【0015】
この構成によると、ローラの回転と紙葉類の送りとの間に少々のズレが生じたとしても、基本的には、上記斜行検知模様を読み取った第2センサからの出力信号に基づく第2波形により、紙葉類の斜行を検出できる。しかしながら、ローラの回転と紙葉類の送りとの間に比較的大きなズレが生じると、第2センサからの出力信号に基づく第2波形は、送り方向に伸びるので、設定によっては送り方向に伸びた波形パターンの変化を紙葉類の斜行と誤検知する可能性がある。ここで、ローラの回転と紙葉類の送りとの間のズレは、基準模様を読み取った第1センサからの出力信号に基づく第1波形に紙葉類の送り速度の変化として現れる。よって、第1センサからの出力信号に基づく第1波形により、ローラの回転と紙葉類の送りとの間のズレが原因で第2波形が伸びたことを把握できる。すなわち、本発明では、第1センサからの出力信号に基づく第1波形と第2センサからの出力信号に基づく第2波形とを比較することで紙葉類の斜行を検出するようにしているので、ローラの回転と紙葉類の送りとの間にズレが生じたとしても、第1センサおよび第2センサからの出力信号が互いに異なることを検出することができるため、生じたズレに影響されることなく紙葉類の斜行(送り異常)を正確に検出することができる。
【0016】
また本発明は、その第2の態様によれば、前記した紙葉類送り異常検出装置を備える紙葉類印刷機である。
【0017】
また本発明は、その第3の態様によれば、前記した紙葉類送り異常検出装置の斜行検出対象であって、前記基準模様および前記斜行検知模様が付けられた紙葉類である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ローラの回転と紙葉類の送りとの間にズレが生じたとしても、それに影響されることなく紙葉類の送り異常を検出することができる装置、およびそれを備えた紙葉類印刷機などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る紙葉類送り異常検出装置を示す概略の斜視図である。
【図2】図1に示したロール用紙の先端部分に付けた模様を説明するための図である。
【図3】第1実施形態におけるセンサ読取パターンを示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るロール用紙の先端部分に付けた模様を示す図である。
【図5】第2実施形態におけるセンサ読取パターンを示す図である。
【図6】第1実施形態の変形例に係るロール用紙の先端部分に付けた模様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。以下で説明する紙葉類送り異常検出装置は、自動券売機(紙葉類印刷機の1つ)に組み込まれるものを想定しているが、本発明の紙葉類送り異常検出装置は、これに限られるものではない。例えば、家庭用・オフィス用のプリンター(FAX機能などを有する複合機を含む)、現金自動預入払出機(ATM)などの紙葉類印刷機にも本発明の紙葉類送り異常検出装置を適用することができる。
【0021】
また、紙葉類とは、紙、樹脂製フィルムなどのことをいう。ロール状の紙葉類であってもよいし、ロール状ではないたんなる帯状の紙葉類であってもよい。すなわち、以下に示した斜行検知模様および基準模様を、紙、樹脂製フィルムなどの紙葉類に広く適用することができる。
【0022】
図1に示したように、例えば、紙葉類の1つであるロール状の用紙Pは、取込ローラ4と取込ローラ5との間に挟まれながら、ローラの回転により印刷機構部(不図示)へ取り込まれる。
【0023】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る紙葉類送り異常検出装置(以下、送り異常検出装置と呼ぶ)の構成について、図1、2を参照しつつ説明する。最初に、ロール状の用紙Pについて説明する。図1、2に示すように、ロール状の用紙Pの送り方向(用紙を送る方向)先端部分には、斜行検知模様8および基準模様7が付けられている。斜行検知模様8および基準模様7は、いずれも用紙Pの送り方向Xに沿って所定区間(所定距離)、用紙Pに付けられている。斜行検知模様8および基準模様7の付けられた区間長さ(距離)は相互に等しい。斜行検知模様8と基準模様7とは、用紙Pの幅方向において対向する位置に付けられている。さらには、斜行検知模様8は、用紙Pの幅方向において用紙Pの一方の側端部分に沿って付けられ、これに対して基準模様7は、反対側の他方の側端部分に沿って付けられている。
【0024】
なお、斜行検知模様8および基準模様7の付けられた区間長さ(距離)は、必ずしも同じ長さにする必要はなく、相互に異なっていてもよい。また、斜行検知模様8と基準模様7とが対向するようにされていればよく、斜行検知模様8および基準模様7を用紙Pの側端部分に付ける必要は必ずしもない。本実施形態では、斜行検知模様8および基準模様7を用紙Pの幅方向における両側端部分に付けているので、用紙Pの主要な印刷部分の面積を広く確保することができている。
【0025】
(基準模様)
基準模様7は、相互に等しい間隔をあけて用紙Pに付けられた複数のバー(線形状または棒形状)からなるバー模様とされている。なお、複数のバーの間隔は相互に異なっていてもよい。
【0026】
(斜行検知模様)
斜行検知模様8は、蛇行部分8bを有するとともに送り方向Xに連続する所定の太さの線模様とされている。具体的には、斜行検知模様8は、用紙Pの先端側から順に、直線部分8a、蛇行部分8bを有し、最後にもう一度、直線部分8aを有する。蛇行部分8bは、2つの山を有し、直線部分8aをそのまま延長させた仮想の直線を少なくとも1回、横切るようにされている。なお、斜行検知模様は図2に示した模様に限られることはない。
【0027】
(読取センサ)
送り異常検出装置1は、基準模様7を読み取り、読み取った基準模様7を信号として出力する第1センサ2と、斜行検知模様8を読み取り、読み取った斜行検知模様8を信号として出力する第2センサ3とを備える。第1センサ2および第2センサ3は、静止した部材・部品(不図示)に固定される。
【0028】
これら2つのセンサ(2、3)としては、例えば、透過型センサ、反射センサを挙げることができる。センサ(2、3)として透過型センサを用いた場合は、用紙Pの厚み(透かしなど)、不可視などの特殊インクなどにより、基準模様7および斜行検知模様8を用紙Pに付ければ当該模様をほぼ見えなくすることができる。また、センサ(2、3)として反射センサを用いた場合は、基準模様7および斜行検知模様8を用紙P表面に光沢として付けることで当該模様をほぼ見えなくすることができる。このように、目でみえる基準模様7および斜行検知模様8とする必要はない。
【0029】
(斜行検出装置)
図1に示した斜行検出装置6(斜行検出手段)は、第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形と第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形とを比較することにより用紙Pの斜行を検出するためのもの(例えば、マイクロコンピュータ)である。
【0030】
まず、用紙Pが真直ぐ送られる場合の第1波形・第2波形について、図2、3を参照しつつ説明する。ここで、図2に示した仮想のラインLは、用紙Pが真直ぐ送られている場合の第2センサ3の検知中心の軌跡を示す線である。図3(a)は、用紙Pが真直ぐ送られている場合(送り方向Xに対する用紙Pの傾きが許容範囲内である場合も含む)の第1波形・第2波形を示す図である。なお、図3において横軸は時間である。
【0031】
第1センサ2は、図2に示した基準模様7(バー模様)を検知すると、信号(例えば、1という信号)を出力し、模様がない部分ではセンサ出力がゼロとなる。その結果、第1波形は、図3(a)のうち上段に示したようなくし形の波形となる。このように、第1センサ2のセンサ出力は、0(ゼロ)または1とされる。
【0032】
一方、第2センサ3は、図2に示した斜行検知模様8を検知すると、読取範囲に対する検知部分の割合を信号として出力する。例えば、模様がない部分ではセンサ出力はゼロとなり、読取範囲の全てに模様が入っている場合のセンサ出力は1となり、読取範囲に模様と模様がない部分とがある場合のセンサ出力は、0<センサ出力<1となる。その結果、第2波形は、図3(a)のうち下段に示したような矩形の山部を3つ有する波形となる。
【0033】
次に、斜行検出装置6による用紙Pの斜行検出原理について説明する。ここで、図2に示した仮想のラインL1は、紙送り中に、用紙Pの図2中右側が図2中下側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合の第2センサ3の検知中心の軌跡を示す線であり、そのときの波形を図3(b)の下段に示している。また、図2に示した仮想のラインL2は、紙送り中に、用紙Pの図2中右側が図2中上側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合の第2センサ3の検知中心の軌跡を示す線であり、そのときの波形を図3(c)の下段に示している。
【0034】
図3(b)、(c)のうちそれぞれの上段に示したように、送り方向Xに対して用紙Pが傾いて送られている場合、第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形は、用紙Pが真直ぐ送られている場合と同様、くし形の波形となる。
【0035】
一方、送り方向Xに対して用紙Pの図2中右側が図2中下側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合、第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形は、初期の蛇行部分8bを第2センサ3が検知する割合が増加する結果(または、第2センサ3が蛇行部分8bを検知する位置が変わる結果)、図3(b)のうち下段に示したような、凹凸のある長い山部を1つ有する波形となる。
【0036】
また、送り方向Xに対して用紙Pの図2中右側が図2中上側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合、第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形は、第2センサ3が蛇行部分8bを検知する位置が変わる結果、図3(c)のうち下段に示したような、矩形の山部を2つ有する波形となる。
【0037】
ここで、用紙Pが真直ぐ送られている場合と、用紙Pの図2中右側が図2中下側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合と、用紙Pの図2中右側が図2中上側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合とで、図3(a)、(b)、(c)のそれぞれの下段に示したように、第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形が異なるので、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの実際の送りとの間に少々のズレが生じたとしても、基本的には、斜行検出装置6は、斜行検知模様8を読み取った第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形により、用紙Pの斜行を検出することができる。
【0038】
すなわち、用紙Pが真直ぐ送られている場合の図3(a)の下段に示した第2波形以外の波形パターンのときに、斜行と判断するようにプログラムしておくことで、用紙Pが傾いていることを検出することができる。
【0039】
しかしながら、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの実際の送りとの間に比較的大きなズレが生じると、第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形は、送り方向に伸びるので、設定によっては送り方向に伸びた第2波形の波形パターンの変化を用紙Pの斜行と斜行検出装置6が誤検知する可能性がある。
【0040】
ここで、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの送りとの間のズレは、基準模様7を読み取った第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形に用紙Pの送り速度の変化として現れる。例えば、取込ローラ(4、5)と用紙Pとの間に滑りが生じると、用紙Pの送り速度が低下して第1波形の隣り合う線の出現間隔が大きくなる。この出現間隔の変化により、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの送りとの間のズレが原因で第2波形が伸びたことを把握できる。この出現間隔の変化を補正項として斜行検出装置6に入力しておくことで、用紙Pの斜行(送り異常)を正確に検出することができる。すなわち、本発明では、第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形と第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形とを比較することで用紙Pの斜行を検出するようにしているので、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの送りとの間にズレが生じたとしても、それに影響されることなく用紙Pの斜行(送り異常)を正確に検出することができる。
【0041】
このように、基準模様7を読み取った第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形は、用紙Pの送り状態を直接的に反映する。用紙Pの送り状態を直接的に反映するこの第1波形と、斜行検知模様8を読み取った第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形とを比較して用紙Pの斜行を検出することにより、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの送りとの間にズレが生じたとしても、それに影響されることなく用紙Pの斜行(送り異常)を検出することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、図4、5を参照しつつ本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と第2実施形態との主な相違点は、斜行検知模様の模様である。
【0043】
本実施形態の斜行検知模様9は、基準模様7と同じであり、相互に等しい間隔をあけて用紙Pに付けられた複数のバー(線形状または棒形状)からなるバー模様とされている。また、斜行検知模様9における複数のバーの間隔、バー太さ、およびバー長さと、基準模様7における複数のバーの間隔、バー太さ、およびバー長さとは等しい。なお、斜行検知模様9と基準模様7とでバー長さは相互に異なっていてもよい。
【0044】
また、本実施形態の第2センサ3は、第1センサ2と同様に、図4に示した斜行検知模様9(バー模様)を検知すると、信号(例えば、1という信号)を出力し、模様がない部分ではセンサ出力がゼロとなる。その結果、第2波形は、例えば図5(a)のうち下段に示したようなくし形の波形となる。このように、第2センサ3のセンサ出力は、第1センサ2と同様に、0(ゼロ)または1とされる。なお、第1センサ2のセンサ出力、および本実施形態の第2センサ3のセンサ出力は、0(ゼロ)または1に限られず、0(ゼロ)、1以外の所定の数値であってもよい。
【0045】
次に、本実施形態における用紙Pの斜行検出原理について説明する。ここで、図4に示した仮想のラインL1は、紙送り中に、用紙Pの図4中右側が図4中下側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合の第2センサ3の検知中心の軌跡を示す線であり、そのときの波形を図5(b)の下段に示している。また、図4に示した仮想のラインL2は、紙送り中に、用紙Pの図4中右側が図4中上側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合の第2センサ3の検知中心の軌跡を示す線であり、そのときの波形を図5(c)の下段に示している。なお、図5において横軸は時間である。
【0046】
図5に示したように、送り方向Xに沿って用紙Pが真直ぐ送られている場合(図5(a))であっても、送り方向Xに対して用紙Pが傾いて送られている場合(図5(b)、(c))であっても、第1センサ2および第2センサ3からの出力信号に基づく第1波形および第2波形は、いずれも、くし形の波形となる。
【0047】
ここで、図4に示した仮想のラインLに沿って、すなわち、用紙Pが真直ぐ送られている場合、図5(a)に示したように、くし形の第1波形とくし形の第2波形とはほぼ同時に出現する。
【0048】
一方、送り方向Xに対して用紙Pの図4中右側が図4中下側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合、図5(b)に示したように、くし形の第1波形よりもくし形の第2波形のほうが早く出現する。
【0049】
また、送り方向Xに対して用紙Pの図4中右側が図4中上側へ傾いた状態で用紙Pが送られている場合、図5(c)に示したように、くし形の第1波形よりもくし形の第2波形のほうが遅く出現する。
【0050】
斜行検出装置6は、くし形の第1波形の出力タイミングと、くし形の第2波形の出力タイミングとの時間差が、所定値を超えたら用紙Pの斜行と判断する。このように、用紙Pに斜行が生じた場合、第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形に対して、第2センサ3からの出力信号に基づく第2波形の出力タイミングが早くなったり遅くなったりする。これにより、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの送りとの間のズレに影響されることなく用紙Pの斜行を検出できる。
【0051】
なお、取込ローラ(4、5)の回転と用紙Pの送りとの間の比較的大きなズレは、基準模様7を読み取った第1センサ2からの出力信号に基づく第1波形に用紙Pの送り速度の変化として現れる。例えば、取込ローラ(4、5)と用紙Pとの間に滑りが生じると、用紙Pの送り速度が低下して第1波形の隣り合う線の出現間隔が大きくなる。この出現間隔の変化を補正項として斜行検出装置6に入力しておくことで、用紙Pの斜行(送り異常)をより正確に検出することができる。すなわち、用紙Pの許容範囲内の斜行(送り異常)に起因する、くし形の第1波形の出力タイミングと、くし形の第2波形の出力タイミングとの時間差は、用紙Pの送り速度が低下するとこれに起因して大きくなるが、上記補正項を斜行検出装置6に入力しておくことで、用紙Pの斜行(送り異常)誤検知を防止することができる。
【0052】
(第1実施形態の変形例)
次に、図6を参照しつつ第1実施形態の変形例について説明する。図2には、蛇行部分8bを有するとともに送り方向Xにおいて不連続部分がまったくない連続的な所定の太さの斜行検知模様8を示したが、図6に示したように、蛇行部分を有するとともに送り方向Xにおいて所定の間隔を持つ(不連続部分を有する)連続的な所定の太さの斜行検知模様10としてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0054】
1:紙葉類送り異常検出装置
2:第1センサ
3:第2センサ
4、5:取込ローラ
6:斜行検出装置(斜行検出手段)
7:基準模様
8:斜行検知模様
P:用紙(紙葉類)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラを介して印刷機構部へ取り込まれる紙葉類の送り異常検出装置であって、
紙葉類の幅方向における一方の側端部分に当該紙葉類の送り方向に沿って斜行検知模様が付けられているとともに、当該斜行検知模様に対して紙葉類の幅方向において対向するように、紙葉類の幅方向における他方の側端部分に当該紙葉類の送り方向に沿って基準模様が付けられており、
前記基準模様を読み取り、読み取った当該基準模様を信号として出力する第1センサと、
前記斜行検知模様を読み取り、読み取った当該斜行検知模様を信号として出力する第2センサと、
前記第1センサからの出力信号に基づく第1波形と前記第2センサからの出力信号に基づく第2波形とを比較することにより紙葉類の斜行を検出する斜行検出手段と、
を備える、紙葉類送り異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙葉類送り異常検出装置において、
前記基準模様および前記斜行検知模様は、いずれも前記送り方向における紙葉類の先端部分に付けられていることを特徴とする、紙葉類送り異常検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の紙葉類送り異常検出装置において、
前記基準模様および前記斜行検知模様は、間隔をあけて付けられた複数のバーからなるバー模様とされていることを特徴とする、紙葉類送り異常検出装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の紙葉類送り異常検出装置において、
前記基準模様は、間隔をあけて付けられた複数のバーからなるバー模様とされ、
前記斜行検知模様は、蛇行部分を有するとともに前記送り方向に連続する所定の線模様とされていることを特徴とする、紙葉類送り異常検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の紙葉類送り異常検出装置を備える紙葉類印刷機。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の紙葉類送り異常検出装置の斜行検出対象であって、前記基準模様および前記斜行検知模様が付けられた紙葉類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28135(P2013−28135A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167114(P2011−167114)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】