説明

紙葉類集積繰出し機構

【課題】ステージ21を上下させて複数のフィードローラ31を回転駆動して紙幣等の紙葉類を集積または繰り出す紙葉類集積繰出し機構において、紙葉類がステージ21とゲートガイド26の隙間へ入り込まないようにする。
【解決手段】ステージ21の長手方向のゲートガイド26側の側面に、隣接した2つのフィードローラ31の間にステージ21の中央を避けてステージ21の長手方向に対称に複数の突起を設け、さらに複数の突起と噛み合うようにゲートガイド26にゲートガイドリブ28を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステージ上に紙幣等の紙葉類を集積して収納し当該ステージを上下させて紙葉類を集積または繰り出す紙葉類集積繰出し機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙幣などの紙葉類を取り扱う現金自動預払機等では、入金取引にて入金された紙葉類を識別して金種ごとに収納部に集積して収納し、出金取引等にて収納部から繰り出して出金できるように紙葉類集積繰出し機構を備えている。
【0003】
そして、従来の紙葉類集積繰出し機構は、紙葉類を集積して上下方向に移動可能なステージとステージ前後にゲートガイドおよびリアガイドを設けた収納部と、ステージ上に集積した紙葉類の最上位の面に圧接して繰り出すピックアップローラと、このピックアップローラによって繰り出されてきた紙葉類を前記収納部外へ繰り出すと共に外部搬送路より搬送されてきた紙葉類を収納部内に送り込むフィードローラと、フィードローラに対向圧接して常に紙葉類を収納部内に送り込む方向に回転するゲートローラと、前記各ローラを回転駆動する駆動手段と、を備える。
【0004】
そして、前記リアガイドにビルストッパを設け、外部搬送路より搬送されてきた紙葉類の先端が衝突する時の衝撃力を吸収してステージ上に紙葉類を整列させて集積させる技術はあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−12168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の紙葉類集積繰出し機構では、ステージが高い位置に上昇した状態で集積動作を行うと、ステージとゲートガイド間の隙間へ紙葉類が入り込み、ステージの下の空間へと落下し、ステージ残留センサにて検出できない位置に残留してしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題を解決するために次の構成を採用する。すなわち、紙葉類を集積して上下方向に移動可能なステージの紙葉類搬送方向の前後両端辺に沿って垂直方向に延在させて設けたゲートガイドおよびリアガイドを備えた収納部を具備し、前記ステージを上下させて複数のフィードローラを回転駆動して紙葉類を集積または繰り出す紙葉類集積繰出し機構において、前記ステージの長手方向のゲートガイド側の側面に、隣接した2つの前記フィードローラの間に前記ステージの中央を避けて前記長手方向に対称に複数の突起を設け、さらに前記複数の突起と噛み合うように前記ゲートガイドにゲートガイドリブを配置した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙葉類集積繰出し機構によれば、以上のように構成したので、ステージとゲートガイドの隙間へ紙幣が入り込むことがなく、ステージの下の空間へと落下してステージ残留センサにより検出できない位置に残留することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の紙葉類集積繰出し機構の構成図(側面図)である。
【図2】実施例1の紙葉類集積繰出し機構の要部構成図(側面図)である。
【図3】実施例1の紙葉類集積繰出し機構のステージ周辺の構成図(上面図)である。
【図4】実施例1の紙葉類集積繰出し機構の不具合動作説明図である。
【図5】実施例2の紙葉類集積繰出し機構の要部構成図(側面図)である。
【図6】実施例3の紙葉類集積繰出し機構の要部構成図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。なお、以下の説明では、取扱う紙葉類を紙幣として説明するが、紙葉類であれば紙幣以外の債券や証書などであってもよい。
【実施例1】
【0011】
(構成)
まず、実施例1の紙葉類集積繰出し機構の全体の構成を、図1の側面図を用いて以下詳細に説明する。なお、図1(a)は紙幣集積時の状態、図1(b)は紙幣繰出し時の状態を示している。
【0012】
同図に示したように、33は紙葉類としての紙幣、8は紙幣収納部、21は図示しない駆動機構により上下動可能な紙幣集積用ステージである。ステージ21は、集積時には矢印G方向に下げて集積するための空間を確保し、繰り出し時には矢印H方向に上げてステージ21上の紙幣33をピッカローラ3に押し付けるものである。
【0013】
31は、集積時に矢印A方向に回転して紙幣を矢印C方向にフィードするフィードローラ、3は、繰出し時に矢印E方向に回転して紙幣33を矢印Fのように繰り出すピッカローラであり、ピッカアーム9の一端に回転可能に軸支され、ピッカアーム9の他端はフィードローラ31の回転軸にその回転を受けないように取り付けられている。
【0014】
10は、フィードローラ31の回転軸に取り付けられた歯付きのプーリとピッカローラ3の軸に取り付けられた同じ歯数の歯付きプーリに掛け渡された無端状の駆動ベルトで、この駆動ベルト10によりフィードローラ31の回転がピッカローラ3に伝達されるものとなっている。
【0015】
32は、集積時に矢印B方向に回転して紙幣を矢印C方向にフィードするゲートローラで、フィードローラ31と共に紙幣収納部8の紙幣出入口に配置されている。フィードローラ31は後述の図3のように回転軸に対して2個設けられ、また、ゲートローラ32はフィードローラ31の下側にフィードローラ31に対向して2個配置されている。フィードローラ31とゲートローラ32はそれぞれ外周全域に溝を有しており、互いの溝により非接触状態で噛み合わせている。
【0016】
38は、ステージ21上に集積される紙幣33の集積方向とほぼ直交する方向を向くように紙幣収納部8の紙幣出入口側に設けられた搬送路で、羽根車5とゲートローラ32は紙幣収納部8の紙幣出入口側でかつ搬送路38の下側に位置するように配置されており、紙幣収納部8の紙幣出入口側には、羽根車5の回転時に羽根先端を紙幣収納部8内に入り込ませるための溝または穴等が設けられている。
【0017】
12は搬送路38を通過する紙幣33を光学的に検知する走行センサ、22は紙幣収納部8の紙幣出入口と対向するように紙幣収納部8の後部内面に設けたビルストッパ、13はステージ21上に残留する紙幣33を光学的に検知するステージ残留センサである。
【0018】
なお、ビルストッパ22はフィードローラ31及びゲートローラ32により紙幣収納部8内に送り込まれる紙幣33を衝突させて止めるもので、図示しないスプリング等が設けられており、衝突した紙幣の運動エネルギーが吸収されるようになっている。
【0019】
5は、集積時に紙幣を叩き落すための羽根車である。羽根車5は図示しない駆動機構により、紙幣の集積時には図1(a)のように羽根車5のローラをフィードローラ31と同軸に配置されたローラに押し当て、フィードローラ31から駆動力をもらって矢印B方向に回転し、フィードローラ31により集積空間に放出される紙幣33の後端を羽根車5の羽根で叩き落とし紙幣33を引き寄せて整列させる。また、紙幣33の繰出し時には図1(b)のように搬送の妨げにならないよう、図示しない駆動機構により所定の位置に退避できるようになっている。
【0020】
次に、紙幣集積繰出し装置の要部構成を図2の側面図および図3の上面図を用いて以下詳細に説明する。同図に示したようにステージ21はステージシャフト21a、21bによって支えられ、これに沿って図示しない駆動機構により上下動する。
【0021】
紙幣収納部8は、紙幣出入口側に備えられたゲートガイド26と、紙幣出入口側とは反対の後ろ側に備えられたリアガイド23と、搬送方向に左右に備えられたサイドガイド24aおよびサイドガイド24bとから構成されている。
【0022】
ゲートガイド26は、繰り出し時に紙幣33の先端が引っかからないように上部がなだらかにゲートローラまで続いている。リアガイド23には紙幣集積時に紙幣33を衝突させるためのビルストッパ22が設けられている。
【0023】
また、ステージ21とゲートガイド26は、それぞれステージリブ27とゲートガイドリブ28が備えられており、これらを互い違いに配置し噛み合うようにし、ステージ21とゲートガイド26の隙間へ紙幣33が落ち込まないようになっている。
【0024】
また、リアガイド23に備えたビルストッパ22を紙幣出入口側方向に突出させ、ステージ21の後端をリブ状にして、これらを互い違いに配置し噛み合うようにし、ステージ後端からも落下しないようにしている。
【0025】
(動作)
以上の構成にて実施例1の紙葉類集積繰出し機構1は、以下のように動作する。この動作を、前述の図2および図3を用いて以下詳細に説明する。なお、以下の説明では本発明に関係する集積時の動作を主として説明し、繰り出し動作については簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0026】
同図に示したように、紙幣を集積する場合、搬送路33から搬送されてくる紙幣33は、矢印A方向に回転するフィードローラ31とこれに圧接され矢印B方向に回転するゲートローラ32間に挟まれて矢印Cのように紙幣収納部8の入口に到来する。
【0027】
このとき、図2のように先端が垂れた紙幣33の場合、その先端がステージ21とゲートガイド26間の隙間に入り込もうとするが、ステージ21とゲートガイド26にはそれぞれステージリブ27とゲートガイドリブ28が設けられており、これらを互い違いに配置し噛み合うようにしているので、ステージ21とゲートガイド26の隙間へ紙幣33が入り込むことがなく、ステージ21の下の空間へと落下してステージ残留センサ13により検出できない位置に残留することもない。
【0028】
また、リアガイド23より突出させて備えたビルストッパ22とステージ21の後端のリブを互い違いに配置し噛み合うようにしているのでステージ後端からも落下することがない。
【0029】
(実施例1の効果)
以上のように、実施例1の紙葉類集積繰出し機構によれば、集積紙幣を上下に移動させるステージと紙幣出入口に設けたゲートガイドにそれぞれステージリブとゲートガイドリブを設けて噛み合うようにしたので、ステージとゲートガイドの隙間へ紙幣が入り込むことがなく、ステージの下の空間へと紙幣が落下してステージ残留センサにより検出できない位置に残留することを防止することができる。
【実施例2】
【0030】
ところで、実施例1の紙葉類集積繰出し機構では、例えば、集積紙幣が少ないときの繰り出し動作中の異常で戻し処理を行う場合などでは、図4(a)のようにステージ21が矢印H方向に上昇してさらに高い位置に上がり、ステージリブ27の上部がゲートガイドリブ28と噛み合う部分がなくなった状態で紙幣33が搬送路38から戻ってくる場合がある。
【0031】
このような場合、ゲートガイド26の上部がなだらかにゲートローラ32まで続いているため、実施例1の紙葉類集積繰出し機構では、図4(b)のようにステージリブ27と傾斜しているゲートガイドリブ28の噛み合う部分にV字状の隙間30xが発生する。
【0032】
このV字状の隙間30xに紙幣33が、くさび状に押し込まれると、紙幣33がステージリブ27とゲートガイドリブ28の互い違いの形状に合わせて変形し、ステージリブ27とゲートガイドリブ28の間に入ってしまう。
【0033】
この状態でさらに押し込まれると、噛み合う部分が十分に機能せず、紙幣33がステージ21とゲートガイド26の間を通過し、ステージ21の下へ落下してしまう場合があった。
【0034】
(構成)
上記不具合を解消するために、実施例2の紙葉類集積繰出し機構では、図5(a)、(b)に示したようにステージリブ27の側面に切欠き部27xを設けている。
【0035】
なお、ステージリブ切欠き27xは、紙幣33の先端が引っかかる程度の小さなものでよいが、ステージ21が図5(a)のように上昇した状態で、切欠き部下部27yがゲートガイドリブ28と噛み合うようにしている。その他の構成は実施例1の紙葉類集積繰出し機構と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0036】
(動作)
以上の構成にて実施例2の紙葉類集積繰出し機構1は以下のように動作する。この動作を前出図5を用いて以下詳細に説明する。すなわち、集積紙幣が少ないときの繰り出し動作中の異常で戻し処理を行う場合などのように、ステージ21がさらに高い位置に上昇した状態で紙幣33が搬送路38からもどってくる場合、紙幣33がステージリブ27とゲートガイドリブ28の噛み合う部分の隙間30xに沿ってくさび状に押し込まれる。
【0037】
このとき、押し込まれた紙幣33は切欠き部27xにひっかかり、さらに押し込まれてもステージ21の下側の空間へ落下することがない。
【0038】
(実施例2の効果)
以上のように、実施例2の紙葉類集積繰出し機構によれば、ステージリブに紙幣先端を引っ掛ける切欠き部を設けたので、実施例1の紙葉類集積繰出し機構の効果に加え、ステージがさらに上昇しゲートガイドリブとステージリブの噛み合う部分に隙間が発生し当該隙間に紙幣先端が入り込んでも、前記切欠き部にて紙幣を停止させ、紙幣がステージの下の空間へと落下してステージ残留センサにより検出できない位置に残留することがない。
【実施例3】
【0039】
(構成)
実施例3の紙葉類集積繰出し機構の構成を示す図6を用いて以下詳細に説明する。同図に示したように、実施例3の紙葉類集積繰出し機構1では、実施例2の紙葉類集積繰出し機構のステージリブ27に備えた切欠き部27xに替えて、鋸歯状波形状27zを備えている。なお、鋸歯状波形状27zも紙幣33先端が引っかかる程度の小さなものでよい。その他の構成は実施例1の紙葉類集積繰出し機構と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0040】
(動作)
以上の構成にて実施例3の紙葉類集積繰出し機構1は、以下のように動作する。この動作を前出図6を用いて以下詳細に説明する。すなわち、集積紙幣が少ないときの繰り出し動作中の異常で戻し処理を行う場合など、ステージ21がさらに高い位置に上昇した状態で紙幣33が搬送路38から戻ってくる場合、紙幣33がステージリブ27とゲートガイドリブ28の噛み合う部分の隙間30xに沿ってくさび状に押し込まれる。
【0041】
このとき、押し込まれた紙幣33の先端は鋸歯状波形状27zにひっかかり、さらに押し込まれてもステージ21の下側の空間へ落下することがない。
【0042】
(実施例3の効果)
以上のように、実施例3の紙葉類集積繰出し機構によれば、ステージリブに紙幣先端を引っ掛ける鋸歯状波形状を設けたので、実施例2の紙葉類集積繰出し機構の効果と同様、ステージがさらに上昇しゲートガイドリブとステージリブの噛み合う部分に隙間が発生し当該隙間に紙幣先端が入り込んでも、前記鋸歯状波形状にて紙幣を停止させ、紙幣がステージの下の空間へと落下してステージ残留センサにより検出できない位置に残留することがない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上述べたように、本発明は、入金等された紙幣を識別して金種ごとに収納部に集積して収納し、収納された紙幣を収納部から繰り出して出金する紙葉類集積繰出し機構を備えた現金自動預払機等に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 紙葉類集積繰出し機構
5 羽根車
8 紙幣収納部
12 走行センサ
13 ステージ残留センサ
21 ステージ
22 ビルストッパ
23 リアガイド
24a、24b サイドガイド
26 ゲートガイド
27 ステージリブ
27x 切欠き部
27y 切欠き部下部
27z 鋸歯状波形状
28 ゲートガイドリブ
31 フィードローラ
31a 回転軸
32 ゲートローラ
33 紙幣
38 搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を集積して上下方向に移動可能なステージの紙葉類搬送方向の前後両端辺に沿って垂直方向に延在させて設けたゲートガイドおよびリアガイドを備えた収納部を具備し、前記ステージを上下させて複数のフィードローラを回転駆動して紙葉類を集積または繰り出す紙葉類集積繰出し機構において、
前記ステージの長手方向のゲートガイド側の側面に、隣接した2つの前記フィードローラの間に前記ステージの中央を避けて前記長手方向に対称に複数の突起を設け、さらに前記複数の突起と噛み合うように前記ゲートガイドにゲートガイドリブを配置したことを特徴とする紙葉類集積繰り出し機構。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記ゲートガイド側の上部を面取りしたことを特徴とする請求項1記載の紙葉類集積繰出し機構。
【請求項3】
前記ステージ上の紙葉類が集積される領域の外側に、該ステージを上下方向に移動可能に支持するステージシャフトを設けたことを特徴とする請求項1記載の紙葉類集積繰出し機構。
【請求項4】
前記リアガイドは、ビルストッパを備え、
前記ビルストッパを前記リアガイドより突出させ、前記ステージの前記リアガイド側にリブを設け、前記ビルストッパと前記リアガイド側のリブを互い違いに噛み合わせるようにしたことを特徴とする請求項1記載の紙葉類集積繰出し機構。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれか記載の紙葉類集積繰出し機構を備えたことを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58255(P2013−58255A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−270826(P2012−270826)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2010−226422(P2010−226422)の分割
【原出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】