説明

紙葉類集積繰出装置

【課題】押圧板を下降せずに、羽根車を回転させ、羽根車の羽を格納することのできる紙幣集積繰出装置を提供する。
【解決手段】ピックアップローラの位相を検知する位相検知センサにより、ピックアップローラの位相を検知し、ピックアップローラが紙幣を繰り出さない範囲のみ回転することで、押圧板を下降することなく羽根車の羽根を格納することで、繰り出し時に紙幣が羽根車に接触することなく繰り出しを行うことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納部に紙葉類を集積し、収納部に集積している紙葉類を繰り出す紙葉類集積繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現金自動取引装置(ATM)において、必要な紙幣を集積、繰り出しする紙幣集積繰出装置として、紙幣を搬送して集積部に放出する搬送口近傍にゴム材で形成した羽根車を備え、羽根車が集積処理時に作用して繰出処理時に退避する紙幣集積繰出装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−137015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の紙幣集積繰出装置では、繰り出し動作と同時に羽根車の格納を行っているため、紙幣に羽根車の羽根が当った状態から紙幣を繰り出す場合に抵抗となり、紙詰まりの原因となっていた。これを防ぐために、紙幣を繰り出す前にあらかじめ羽根車を格納する必要がある。
【0005】
しかし、紙幣集積繰出装置では集積後の状態から羽根車の羽根を格納するために、ピックアップローラを繰り出し方向に回転させると、ピックアップローラの回転停止位相が任意のため、紙幣を繰り出す場合がある。これを防ぐために、羽根車の羽根を格納する際に、ピックアップローラのゴム部が紙幣に接触しない位置まで押圧板を下降させる必要がある。
【0006】
このとき、装置内いっぱいに紙幣が集積された場合、紙幣を下方に移動できず、羽根車を格納せずに紙幣の繰り出しを行うため、紙幣に羽根車が当った状態から紙幣を繰り出す場合に抵抗となり、紙詰まりの原因となる。
【0007】
また、紙幣を下降させることで、上部空間が広くなることにより、折れぐせ紙幣の折れが戻ってしまい、紙幣繰り出し時に紙詰まりの原因となっていた。
【0008】
本発明の目的は、集積した紙幣を繰り出す際に、紙詰まりを防いで繰り出す紙葉類集積繰出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、ピックアップローラが集積部に集積されている紙葉類を繰り出し、前記搬送部と前記集積部との連結部近傍に位置し、前記ピックアップローラと連結された羽根車と、前記ピックアップローラの位相を検知する位相検知センサを備え、前記位相検知センサを用いて前記ピックアップローラの位相を検知したことに基づいて、前記ピックアップローラを紙葉類繰り出し方向に回転させ前記羽根車を格納する構成を採用した。
【発明の効果】
【0010】
この発明により、装置内いっぱいに紙幣が集積されていても、羽根車を格納することができるため、繰り出し時の紙詰まりを防止し、信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、紙幣入出金装置1を実装する現金自動取引装置(ATM)の外観を示す。現金自動取引装置101は、利用者の取引カードや取引明細票を処理するカード/明細票処理機構102と、通帳を処理する通帳処理機構103と、取引に必要な情報を表示および入力する利用者操作部(単に操作部とも言う)105と、紙幣を入出金する紙幣入出金装置1と、上記各部を覆う筐体104とで構成されている。
【0013】
図2は、現金自動取引装置101の制御関係を示すブロック図である。カード/明細票処理機構102、通帳処理機構103、利用者操作部105および紙幣入出金装置1は、バス110を介して本体制御部106と接続しており、本体制御部106の制御指令により必要な動作を行う。上記の他に、装置に外部ユニットを接続するためのインタフェース部107と、係員が操作し、種々の情報の入力及び出力を実行する係員操作部108と、外部記憶装置109ともバス110で接続しており、必要なデータのやり取りを行う。上記に示す各機構、構成要素は電源部111により電力を供給される。
【0014】
図3は、現金自動取引装置101に実装される紙幣入出金装置1の構成を示す図であり、図4は収納放出庫5などの構造も含めた制御機構を示す図である。紙幣入出金装置1は、紙幣を出し入れする入出金口2と、紙幣の金種や搬送状態を判別する紙幣判別部(単に判別部ともいう)3と、入金した紙幣を取引成立までの間一時的に収納する一時スタッカ(一時保管部)4と、入金取引時に入出金口2から入金された紙幣を収納したり、出金取引時に紙幣を放出したりする金種別の収納放出庫(金種別収納庫、収納部ともいう)5a、5b、5c(本実施形態では3金種)とを有する。また、金種別の収納放出庫5に各金種紙幣を装填したり、または収納放出庫5から各金種紙幣を回収したりする装填回収庫(装填庫又は回収庫)6と、紙幣判別部3によって金種の読み取りが不可と判定された紙幣や搬送状態が搬送不可と判定された紙幣等を集積するリジェクト庫7と、紙幣入出金装置1の各構成要素を結び紙幣を搬送する搬送路8で構成される。
【0015】
更に、紙幣入出金装置1は、金種と紙幣サイズとの対応関係等を記憶した記憶部データベース9(紙幣判別部3の一機能として含むものでも良い)、本体制御部106とバス110を介して接続され、本体制御部106からの指令および紙幣入出金装置1の状態検出に応じて紙幣入出金装置1の制御を行い、紙幣入出金装置1の状態に関する情報を必要に応じて本体制御部に送る制御部10を有する。なお、本体制御部106、制御部10ともCPU、メモリ等から構成され、合わせて制御部ともいう。
【0016】
なお、図3は、紙幣入出金装置1の内部レイアウトについて説明する図である。入出金装置1は紙幣を高速に搬送して大量の紙幣を取り扱うことから紙幣の長手を基準に搬送する。紙幣の長手方向が紙幣の搬送方向に対して垂直になるように搬送することである。これにより搬送路から収納庫5、装填回収庫6などの各収納ボックスに収納する(集積する)とき、各収納ボックスから搬送路へ紙幣を放出する(繰り出す)ときの紙幣の姿勢も、その収納方向又は放出方向に対して紙幣の長手方向が垂直になるようにしている。言い換えると、紙幣の短手方向で搬送することである。
【0017】
ここで紙幣入出金装置1が取り扱う紙幣は、日本国内のみならず、ユーロ紙幣やドル紙幣などの海外紙幣も対象にしている。日本国内の紙幣は一万円券、五千円券、千円券などあるが、紙幣の寸法、特に短手寸法が略76mmに統一されているので、ボックスからの紙幣繰り出し動作などは金種ごとにそれほど相違はない。しかし、ユーロ紙幣は7金種あり、最小の5ユーロ紙幣の寸法は62×120mm、最大の500ユーロ紙幣は82×160mmあり、短手寸法で20mmの差がある。
【0018】
このようなことから、海外紙幣など、複数の金種を混合して収納する装填回収庫6は、図示するように紙幣を立位姿勢で収納する。つまり寸法の小さい紙幣も大きい紙幣もその紙幣の長手が収納部の底面に整然と並べることができ、それら紙幣の繰り出し、集積動作も安定したものとなる。一方、収納庫5のように紙幣を水平姿勢で収納するタイプでは寸法が大きく異なる紙幣を繰り出すために紙幣の長手部分を揃えるための特別な機構が必要となる。そのため機構が複雑な収納庫5となってしまう問題がある。
【0019】
従って、複数の金種の紙幣を同じ収納庫に収納する場合は装填回収庫6のように立位姿勢で収納可能な収納庫が望ましく、一金種の紙幣なら寸法も同じことから収納庫5のように水平姿勢で収納する収納庫が望ましい。
【0020】
また、リジェクト庫7は上述したとおり、紙幣判別部3による金種、真偽鑑別等により入金又は出金に適さない紙幣を収納する。
【0021】
紙幣入出金装置1の上部ユニットは入出金口2と判別部3と一時保管庫4とを配置し、下部ユニットには紙幣を収納する各収納庫を配置している。そして下部ユニットには、装填回収庫6を収納放出庫5a,5b,5cとリジェクト庫7の上部に配置している。装填回収庫6から繰り出された紙幣は一時保管庫4に一時的に保管され、金種に応じて各収納放出庫5a,5b,5cに振り分けられる。 搬送路8aは、紙幣を上下方向で、双方方向に搬送し、装填回収庫6から繰り出される紙幣又は装填回収庫6に集積する紙幣を搬送するためにも、装填回収庫6に隣接して、装置前側に実装される。また、収納放出庫5a、5b,5cやリジェクト庫7で構成される紙幣収納部(下部ユニット)と装填回収庫6より上の部位(上部ユニット)と一本で接続している構造となっている。
【0022】
搬送路14は、紙幣を水平方向で双方向に搬送し、収納放出庫5a,5b,5cから繰り出される紙幣又は、収納放出庫5a,5b,5cに集積する紙幣を搬送するため、また、リジェクト庫7に収納する紙幣を搬送するため収納放出庫5a,5b,5c、リジェクト庫7の上方に配置され、搬送路8aと接続する。
【0023】
本実施形態における紙葉類集積繰出装置は、上記の構成のうち、収納放出庫5、および装填回収庫6にあたる。収納放出庫5は紙幣を水平姿勢で収納しており、装填回収庫6は紙幣を立位姿勢で収納しているが、本発明の紙幣集積繰出装置は、どちらの収納姿勢にも適用できる。以下に、収納放出庫5の形態の紙幣放出装置について説明する。
【0024】
図5は、紙幣集積繰出装置は、紙幣210を集積する集積動作時は、フィードローラ204を集積方向に回転させ、その回転力で紙幣210を搬送路213で搬送する。このとき、羽根車207は集積方向に回転しており、該回転の遠心力によって羽根207aが広がった状態となっている。このため、前記搬送路213を搬送した紙幣210を押圧板202の上に放出すると、該紙幣210を前記羽根車207が叩き落とし、紙幣2をスムーズに昇降板11の上に平積みしていく。
【0025】
集積動作終了後は、繰出時に前記羽根車207の羽根207aが紙広がった状態のまま紙幣210の繰り出しを開始したときに、ピックアップローラ203を繰り出し方向(209b)に回転させることで、羽根車207が連動して繰り出し方向(209c)に回転し、羽根車207の羽根207aを格納する。
【0026】
以上のようにして、従来の紙幣集積繰出装置1’は集積動作終了後に羽根車207を格納することで、繰出し時に羽根車207と紙幣210がぶつかり紙詰まりとなることを防いでいる。
【0027】
図6は、紙幣を水平に集積し、水平姿勢で集積されている紙幣を繰り出す紙幣集積繰出装置である紙幣収納放出庫5の側面断面図である。図6において、201は紙葉類である紙幣210を堆積して収納する紙幣カートリッジである。202は、紙幣カートリッジ201の底板として機能する押圧板であり、上下動自在に取り付けられている。この押圧板202は、図示していない駆動部により上下動される。また、この駆動部は本体の制御部により制御される。収納されている紙幣210は、押圧板202の上に堆積されている。
【0028】
図7は、前記紙幣集積繰出装置において、紙幣の集積動作を説明する図である。204はフィードローラ、205はゲートローラ、207は羽根車である。フィードローラ204とゲートローラ205はギア比2:1で逆方向に回転する。フィードローラ204とゲートローラ205を集積方向(209d、209e)に回転させ、その回転力で紙幣210を押圧板202に集積する。このとき、羽根車207はゲートローラ204の回転軸に固定されているため、ゲートローラ204に連動して集積方向(209f)に回転しており、該回転の遠心力によって羽207aが広がった状態となっている。このため、紙幣210を前記羽207aが叩き落とし、紙幣210をスムーズに押圧板の上に平積みしていく。
【0029】
図8は、前記紙幣集積繰出装置において、紙幣210の繰り出し動作を説明する図である。203は紙幣カートリッジ201に収納されている最上面の紙幣210を繰り出すピックアップローラである。ピックアップローラ203はフィードローラ205と同一方向に連動して回転する。また、ピックアップローラ203は、上下方向に揺動する機構を備えており、上方に押し上げられると下方に荷重を発生する機構となっている。
【0030】
フィードローラ204とゲートローラ205とがピックアップローラ203により繰り出された紙幣210を挟持して送出する。このとき羽207aは広がった状態であるため、繰り出し動作時に紙幣とぶつかり、紙詰まりとなる場合がある。そのため、繰り出し動作前に羽207を格納する必要がある。
【0031】
図9は羽207aの格納方法を説明する図である。208はフィードローラ204とピックアップローラ203の位相を検出する位相検知センサ、206はフィードローラ204の回転軸に固定された遮蔽板である。紙幣集積後、位相検知センサ208と遮蔽板206によって、ピックアップローラ203の位相を検知する。集積終了時、ピックアップローラ203のゴム部308aを位相検知センサが遮蔽板206を検知しない位置(図7の位置)で停止させる。この位置からピックアップローラ203を繰り出し方向(209b)に位相検知センサが遮蔽板206を検知し、再び検知しない位置(図9の位置)まで回転することで、羽根車207の羽207aを格納する。このときピックアップローラ203は1/2回転するが、ピックアップローラ203と羽根車207のギア比が2:1であるため、羽根車207は1回転し、羽207aを格納するのに十分な回転数を得られる。
【0032】
この構造により、羽根車207が繰り出し紙幣の端面にあたって紙幣が繰り出されずに詰まるのを防止できる。
【0033】
また、羽207aが格納された状態であっても、繰り出し動作前に押圧板を上昇させる際、図10のように紙幣210が羽207aを噛み込む場合があるが、ピックアップローラ207が紙幣210を繰り出すまで、θの余裕があり、この分繰り出し前に羽根車207が集積方向(209c)に回転し、羽根車207を紙幣から逃がすことができるため、紙詰まりの発生を防止できる。
【0034】
以上、紙幣を水平姿勢で収納する収納放出庫5における実施形態について述べたが、図12のような構成とすることで、紙幣を立位姿勢で収納する装填回収庫6においても本発明を実施することが可能である。
【0035】
なお、上記実施形態では、紙幣繰出装置を例にして本発明を説明したが、複写機やプリンタ等、紙葉類を取り扱う他の機器についても本願発明を適用することで、紙葉類の繰り出しにかかる精度の向上が図れる。
【0036】
また、紙幣を下げないことにより、折れぐせ紙幣に対して、折れが戻ることなく分離できることで、紙詰まりに対して信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】現金自動取引装置の一実施例の外観を示す斜視図である。
【図2】現金自動取引装置の一実施例の制御機構を示す図である。
【図3】紙幣入出金装置の構成を示す図である。
【図4】紙幣入出金装置の制御機構を示す図である。
【図5】従来の紙幣集積繰出装置の側面断面図である。
【図6】この発明の実施形態である、紙幣を水平姿勢で収納する紙幣繰出装置の側面断面図である。
【図7】この発明の実施形態である紙幣繰出装置における集積動作を説明する図である。
【図8】この発明の実施形態である紙幣繰出装置における繰り出し動作を説明する図である。
【図9】羽根車の羽の格納方法を説明する図である。
【図10】押圧板上昇時に発生する紙幣噛み込みの防止方法を説明する図である。
【図11】この発明の実施形態である、紙幣を立位姿勢で収納する紙幣繰出装置の側面断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…紙幣入出金装置、2…入出金口、3…紙幣判別部、4…一時スタッカ、5a、5b、5c…収納放出庫、6…装填回収庫、7…リジェクト庫、8、8a…搬送路、9…記憶部データベース、10…制御部、11…取り忘れ回収庫、12…装填リジェクト庫、13…扉、101…現金自動取引装置、102…カード/明細票処理機構、103…通帳処理機構、104…筐体、105…利用者操作部、106…本体制御部、107…インタフェース部、108…係員操作部、109…外部記憶装置、110…バス、201…紙幣カートリッジ、202…押圧板、203…ピックアップローラ、204−フィードローラ、205…ゲートローラ、206…遮蔽板、207…羽根車、208…位相検知センサ、209…回転方向、213…押圧検知レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を集積する集積部と、
前記集積部に集積されている紙葉類を繰り出す際に該紙葉類に当接するピックアップローラと、
前記ピックアップローラによって繰り出された紙葉類を搬送する搬送部と、
前記搬送部と前記集積部との連結部近傍に位置し、前記ピックアップローラと連結された羽根車と、
前記ピックアップローラの位相を検知する位相検知センサを備え、
前記位相検知センサを用いて前記ピックアップローラの位相を検知したことに基づいて、前記ピックアップローラを紙葉類繰り出し方向に回転させ前記羽根車を格納することを特徴とする紙葉類集積繰出装置。
【請求項2】
前記ピックアップローラに取り付けられたゴム部が紙葉類集積空間に露出しない範囲で、前記ピックアップローラを紙葉類繰り出し方向に回転することを特徴とする請求項1記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項3】
紙葉類繰出処理前に、前記羽根車が収納された状態で前記押圧板上昇時に紙葉類が前記羽根車に噛み込んでも、前記位相センサを用いて紙葉類を繰り出す前に前記羽根車を格納できる位置に前記ピックアップローラの位相を設定することを特徴とする前記請求項1記載の紙葉類集積繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−91438(P2007−91438A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285878(P2005−285878)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】