説明

紙製容器

【課題】蓋体が自然剥離せず且つ容器本体の蓋体による接着封止を容易に実施できる紙製容器を得る。
【解決手段】蓋体10が、容器本体50と接合する天板部1aとスカート壁2の嵌合溝2f(図示せず)に嵌合する垂下部1bとから成る天壁1と、側面を形成する外周壁部2aと該嵌合溝2fを形成する上部折り代2bおよび下部折り代2cとから成るスカート壁2を具備して構成され、該上部折り代2bは外周壁部2aに全面圧着される一方、該下部折り代2cは外周壁部2aに部分圧着され、更に天壁1の垂下部1bがスカート壁2の嵌合溝2fに嵌合され圧着固定されることによって、蓋体10が剛に組み立てられている。そして、蓋体10および容器本体50は天壁1の天板部1aと胴体壁3のフランジ部3aが接合されて接着封止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器、特に剛に組み立てられ天板とスカート壁との自然剥離を困難にし、且つ積み重ね性に優れた蓋体を有し且つ容器本体の蓋体による封止を容易に行うことができる紙製容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アイスクリーム等の冷菓子または漬け物等の保存食を内部に収容する紙製容器が広く流通している。このような紙製容器の蓋は、円板状の天板と上端部が周方向に沿って内側に巻かれたカール部を有するスカート壁とから成り、天板をスカート壁内に嵌合して、その上面外周部を前記カール部に係合させた、いわゆる2ピース構成のものが公知である(例えば、特許文献1から3を参照。)。
これらの紙製容器では、容器本体への蓋の装着は、内容物が容器本体に充填された後、後加工により蓋のスカート壁の下部を内側に巻いてカール部を成形しながら容器本体のフランジ部にそのカール部を係合することによって行われるか、あるいは、スカート壁の下部を内側に折り込んで容器本体のフランジ下面またはカール部下面に係止するようにしている。または、当初からスカート壁の上部および下部の双方が内側に巻かれた上下カール部を成形しておき、その蓋を容器本体に押し込みながら容器本体のフランジ部下面にスカート壁の下カール部を係合することによって行っている。または、蓋の天板と容器本体のフランジ部を糊を介して接着することによって行っている。
【特許文献1】実公平04−30130号公報
【特許文献2】特開2004−123105号公報
【特許文献3】特開2004−217233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の紙製容器では、蓋が2ピース構成のものである場合、天板とスカート壁の固定は、天板を単にスカート壁内部に嵌合してカール部下面に係合させて、容器本体に装着した場合、天板の外周縁部をスカート壁のカール部と容器本体のフランジ部またはカール部とで上下から挟み込むことによって行われるか、あるいは、天板と上カール部を糊を介して接着することによって行われる。
しかし、上記紙製容器の内部には、冷物が充填されており、外気と紙製容器との間に所定の温度差が生じると紙製容器の外周面または内周面には結露した水分が付着し、その結露した水分が天板とカール部との接合箇所に溜まりながら内部に漸次浸透すると共に糊の接着力を劣化させ、あるいは形状保持力を劣化させる。その結果、曲げ形状から元の形状に戻ろうとする、いわゆる戻り変形が発生し、蓋を構成する天板とスカート壁が自然剥離する場合があった。
他方、上記紙製容器では、上述したように蓋の上部外周縁部にカール部が存在するため、蓋の外周縁部を上部から加熱抑圧して蓋を容器本体のフランジ部又はカール部上面にヒートシールすることができないという問題があり、前記のようにスカート壁下端部を後加工により折り曲げて容器本体への係止手段を講じなければならず、容器本体の蓋による封止に時間を要する問題点がある。
さらに、上記紙製容器の蓋は、積み重ねた際、上下への相互の係合手段を有していない為、積み重ねが不安定になりバラけ易く運搬時の収納安定性に問題もあった。
本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、剛に組み立てられ天板とスカート壁との自然剥離を困難にし、且つ積み重ね性に優れた蓋体を有し且つ容器本体の蓋体による封止を容易に行うことができる紙製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため請求項1に記載の発明では、胴体壁と底壁を有し内容物が収納される容器本体と、天壁およびスカート壁を有し該容器本体を封止する蓋体とから成る紙製容器であって、前記蓋体の天壁は少なくとも周端部において水平面を有する天板部と周方向に沿って該天板部から垂下して形成された垂下部とを有し、前記蓋体のスカート壁は少なくとも下部において内側に折り返されて形成された下部折り代と側壁を形成する外周壁部とを有し、前記天壁の垂下部が前記スカート壁の外周壁部と下部折り代とによって形成される嵌合溝に嵌合されて圧着固定されていることを特徴とする。
上記構成の紙製容器では、蓋体を構成する天壁およびスカート壁は、天壁の周方向に沿って天板部から垂下して形成された垂下部をスカート壁の外周壁部および下部折り代とによって形成される嵌合溝に嵌合することによって圧着固定される。これにより、天壁とスカート壁の間に十分な接合面を確保しながら圧着固定することが可能となる。さらに天壁の垂下部およびスカート壁の嵌合溝にはカール等の曲げ形状は存在しないので、天壁とスカート壁は剛に固定される。その結果、蓋体を容器本体に固定した時に戻り変形が発生することがなくなり、内容物が外部に漏洩することがなくなる。また、天壁の天板部は周端部において水平面を有するので、容器本体に対し接合面を好適に確保することができると共にヒータ等の外部機器に対しても接合面を好適に確保することができる。これにより、容器本体の蓋体による封止を容易に行うことができるようになると共に結露した水分が内部に浸透しにくい密封性を有するようになる。
【0005】
請求項2に記載の発明では、前記スカート壁は、前記外周壁部の上部において内側に折り返され形成された上部折り代を有し、該上部折り代と前記下部折り代によって前記嵌合溝が形成されている。
上記構成の紙製容器では、嵌合溝が上部において内側に折り返され形成された上部折り代と下部において同下部折り代とによって形成されているので、嵌合される天壁の垂下部は好適に保持される。これにより、天壁とスカート壁の間に十分な接合面を確保しながら圧着固定することが可能となる。さらに天壁の垂下部およびスカート壁の嵌合溝にはカール等の曲げ形状は存在しないので、天壁とスカート壁は剛に固定される。その結果、蓋体を容器本体に固定した時に戻り変形が発生することがなくなり、内容物が外部に漏洩することがなくなる。また、天壁の天板部は周端部において水平面を有するので、容器本体に対し接合面を好適に確保することができると共にヒータ等の外部機器に対しても接合面を好適に確保することができる。これにより、容器本体の蓋体による封止を容易に行うことができるようになると共に結露した水分が内部に浸透しにくい密封性を有するようになる。
【0006】
請求項3に記載の上記構成の発明では、前記スカート壁の上部折り代は前記外周壁部の内周面に全面圧着され且つ前記スカート壁の下部折り代は該上部折り代と重複しない範囲内で前記外周壁部の内周面に部分圧着されている。
上記構成の紙製容器では、上部折り代が全面圧着されているスカート壁の箇所は鍛造されて強度が増す一方、下部折り代が部分圧着されているスカート壁も鍛造されて強度がより増加するようになる。また、下部折り代のうちスカート壁の内周面に圧着されない部分は天壁の垂下部が嵌合する嵌合溝の形成に好適に寄与することができる。これにより、天壁の垂下部がスカート壁に形成される嵌合溝に嵌合して圧着された時に、該嵌合部の結合度が密になり天壁およびスカート壁は容易に自然剥離しなくなる。
【0007】
請求項4に記載の上記構成の発明では、前記天壁の垂下部は前記スカート壁の上外周端部から突出し且つ最大外径は前記スカート壁の最大内径に略等しいか又はそれ以下である。
上記構成の紙製容器では、垂下部の最大外径は、前記スカート壁の最大内径に略等しいか又はそれ以下であるから、蓋体の天壁を他の蓋体のスカート壁の内側に合することが可能となる。これにより、複数の蓋体を安定して積み重ねることができる。
【0008】
請求項5に記載の上記構成の紙製容器では、前記天壁の垂下部は、最大外径が前記スカート壁の最大内径に略等しいか又はそれ以下である絞り部を有し且つ下方に拡径している。
上記構成の紙製容器では、絞り部の最大外径がスカート壁の最大内径に略等しいか又はそれ以下であるから、蓋体の絞り部を他の蓋体のスカート壁の内側に合することが可能となる。これにより、複数個の蓋体を安定して積み重ねることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紙製容器によれば、蓋体を構成する天壁およびスカート壁の圧着固定に関し、天壁の周方向に沿って円板部に直交して形成された垂下部を、スカート壁の上部において折り返されてスカート壁の外周壁部に全面圧着されながら形成された上部折り代と、スカート壁の下部において折り返されてスカート壁の外周壁部に部分圧着されながら形成された下部折り代とによって形成される嵌合溝に嵌合することによって、天壁およびスカート壁は圧着固定されているので、天壁およびスカート壁から成る蓋体は剛に組み立てられて天壁およびスカート壁が自然剥離することはない。これにより、従来の紙製容器における蓋体のカール部の戻り変形による天板とスカート壁の剥離が生じることを防止することができるようになる。また、蓋体の天壁は少なくとも外周端部において水平であるから、蓋体は容器本体との接合面を好適に確保すると共にヒータ等の外部機器との接合面を好適に確保することができ、蓋体を容器本体のフランジ部に直接ヒートシールが可能となる。これにより、容器本体の蓋体による封止を容易に行うことができる共に結露した水分が内部に浸透しにくい密封性を有するようになる。さらに、天壁の垂下部または絞り部の最大外径は、スカート壁の最大内径に略等しいか又はそれ以下であることから、複数個の蓋体を安定して積み重ねることができる。これにより、大量の蓋体を積み重ねながら運搬することができるようになり、紙製容器の生産に対し有利になる。あるいは、蓋体の保管に対しても有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1にかかる蓋体10を示す断面図である。
この蓋体10は、上面を形成する天壁1と、側面を形成するスカート壁2とを具備して構成されている。更に詳しくは、天壁1は、上面を形成すると共に容器本体と接合する天板部1aとスカート壁2の嵌合溝2f(図示せず)と嵌合する垂下部1bとから成り、一方、スカート壁2は、側面を形成する外周壁部2aと天壁の垂下部1bと嵌合する嵌合溝2fを形成する上部および下部折り代2b,2cとから成る。
【0012】
天壁1は、例えば円板状の硬質紙に円筒状のパンチを押し当てながら成型することによって得られ、天板部1aの形状は円板状であり、垂下部1bの形状は円筒状である。また、スカート壁2は、例えば硬質のロール紙を適当な長さに切断し上外周端部2dおよび下部外周端部2eにおいて折り返し、その折り返しによって生じる上部折り代2bを全面にわたり外周壁部2aに圧着、例えばローレット加工によって圧着し、それに対し、同下部折り代2cを、詳細は図2で示されているが、下部の一部分のみを外周壁部2aに圧着、例えばローレット加工よって圧着することによって得られる。これにより、天壁1およびスカート壁2は、垂下部1bをスカート壁2の上外周端部2d近傍に形成される嵌合溝2fに挿入して圧着することによって圧着固定される。その結果、天壁1およびスカート壁2は接合面を十分に確保しながら圧着固定されるので、天壁1とスカート壁2との結合が強くなり、なお且つ上部折り代2bは外周壁部2aに対し全面圧着され、下部折り代2cは外周壁部2aに対し部分圧着されているので、蓋体10は剛に組み立てられる。その結果、蓋体10が紙製容器に使用された場合に蓋体10の戻り変形が起こることはなくなる。さらに、天壁1の天板部1aは容器本体のフランジ面と接触する部分が水平であるから容器本体との接着封止を好適に行うことができる。
【0013】
また、スカート壁2の最大内径D2は、天壁1の最大外径D1よりもわずかに大きくなるように調整されている。これにより、図3に示すような複数の蓋体10を安定して積み重ねる(スタック)ことが可能になり、大量の蓋体10を積み重ねながら運搬することができるようになり、紙製容器の生産に対し有利になる。あるいは、蓋体10の保管又は充填済み容器の保管や陳列に対しても有利になる。
【0014】
図2は、実施例2にかかる蓋体10のスカート壁2を示す部分断面図である。
スカート壁2は、上述した通り、例えば硬質のロール紙を適当な長さに切断し上外周端部2dおよび下外周端部2eにおいて内側に折り返し、そして上部折り代2bを外周壁部2aに対し全面圧着し、かつ下部折り代2cを外周壁部2aに対し部分圧着することによって得られる。また、上外周端部2dの近傍に上部折り代2bおよび下部折り代2cによって形成される嵌合溝2fを有している。図から、外周壁部2aの長さをL1と、上部折り代2bの長さをL2と、下部折り代2cの長さL3と、嵌合溝2fの長さをLとすると、垂下部1bが嵌合溝2fに嵌合されるためには、嵌合溝2fの長さL=(L2+L3)−L1>0が成り立たなければならず、望ましくは、(L2+L3)≧1.5×L1である。これにより、天壁1とスカート壁2は、接合面を十分に確保しながら剛に固定される。
【0015】
図3は、実施例1にかかる蓋体10のスタックを示す説明図である。
この図は、3個の蓋体10,10,10がスタックされた状態を示している。最下位の第1蓋体10の垂下部1bが、その上に位置する第2蓋体10のスカート壁2の内周面に嵌合して、第2蓋体10が第1蓋体10上に固定される。そして、第2蓋体10の垂下部1bが、その上に位置する第3蓋体10のスカート壁2の内周面に嵌合して、第3蓋体10が第2蓋体10上に固定される。このようにして、天壁1とスカート壁2の内周面が好適に嵌合するのでスタック姿勢が安定する。その結果、大量の蓋体10を安定して積み重ねながら包装することができるようになり、紙製容器の生産に対し有利になる。あるいは、蓋体10の保管や充填済み容器の保管や陳列に対しても有利になる。
【0016】
図4は、実施例1にかかる紙製容器100を示す断面図である。
この紙製容器100は、天板部1aと垂下部1bとから成る天壁1ならびに外周壁部2aと上部折り代2bと下部折り代2cとから成るスカート壁2が圧着固定された上記蓋体10と、内容物が充填され胴体壁3および底壁4から成る容器本体50とを具備して構成される。
【0017】
胴体壁3は、例えば、逆半円錐状のテーパ壁と、その上端において外側かつ略90°(詳しくは90°からテーパ角を減じた角度)に折り曲げられて成型されたフランジ部3aと、その下端において内側に180°折り曲げられて成型された内折り曲げ部3bとを有する。なお、胴体壁3の下端は、内折り曲げ部3bに代えて、内側に巻かれたカール部に成型しても良い。
【0018】
底壁4は、例えば、円板形の底板と、その周端部において外側かつ略90°(詳しくは90°にテーパ角を加えた角度)に折り曲げられて成型された外折り曲げ部4aを有している。
【0019】
容器本体50は、胴体壁3の内折り曲げ部3bと底壁4の外折り曲げ部4aが係合して圧着、例えば、ローレット加工されることによって固定される。容器本体50には、例えばアイスクリーム等の冷菓または漬け物等の保存食が充填される。
【0020】
上記紙製容器100によれば、天壁1の下垂部1bが上部折り代2bおよび下部折り代2cによって形成される嵌合溝2fに好適に嵌合することによって天壁1とスカート壁2が接合面を十分に確保しながら圧着固定されており、なお且つ蓋体10のスカート壁2は上部折り代2bが外周壁部2aに全面圧着ならびに下部折り代2cが外周壁部2aに部分圧着されているので、蓋体10は剛に固定され戻り変形が起こることはない。さらに、蓋体10は容器本体50と接合する天板部1aを有するので、ヒータ等の外部機器を直に接触させることが可能となり蓋体10と容器本体50との接着封止が容易となると共に結露した水分が内部に浸透しにくい密封性を有するようになる。
【0021】
図5は、実施例1にかかる蓋体10および容器本体50の接着封止を示す要部説明図である。
蓋体10および容器本体50の接着封止は、天壁1とフランジ部3aとの間に付着されている糊N又はヒートシール性樹脂をコンベヤのバケット等フランジ下面に係合する容器支持枠PおよびヒータHで圧着溶融することによってなされる。これにより、従来は蓋体の上部が内側にカールした形状であることにより、ヒータHを糊が付着されている箇所に直に接触させることはできなかったが、該紙製容器100に対してはヒータHを糊が付着されている箇所に直に接触することができるので、蓋体10と容器本体50との接着封止が容易となり、それと共に内容物充填作業の生産効率が好適に向上する。また、該紙製容器100は結露した水分が内部に浸透しにくい密封性を有するようになる。
【実施例2】
【0022】
図6は、実施例2にかかる蓋体20を示す断面図である。
この蓋体20は、上面を形成する天壁1と、側面を形成するスカート壁2とを具備して構成されている。更に詳しくは、天壁1は、上面を形成すると共に容器本体と接合する天板部1aとスカート壁2の嵌合溝2f(図示せず)と嵌合する垂下部1bと、他の蓋体20のスカート壁2の内周面に嵌合する絞り部1cとから成り、一方、スカート壁2は、側面を形成する外周壁部2aと天壁の垂下部1bと嵌合する嵌合溝2fを形成する上部および下部折り代2b,2cとから成る。
【0023】
天壁1は、例えば円板状の硬質紙を絞り成型することによって得られ、天板部1aの形状は円板状であるのに対し、垂下部1bおよび絞り部1cの形状は円筒状でありながら絞り部1cから垂下部1bにかけて緩やかに拡口している。また、スカート壁2は、例えば硬質のロール紙を適当な長さに切断し上外周端部2dにおいて折り返して上部折り代2bを形成して外周壁部2aに圧着し、次いで下部外周端部2eにおいて折り返して下部折り代2cを形成すると共に嵌合溝2fを形成することによって得られる。これにより、天壁1およびスカート壁2は、垂下部1bをスカート壁2の上外周端部2d近傍に形成される嵌合溝2fに挿入し、嵌合部を内側より圧着することによって圧着固定される。その結果、天壁1およびスカート壁2は接合面を十分に確保しながら圧着固定されるので、天壁1とスカート壁2との結合が強くなり、なお且つ上部折り代2bは外周壁部2aに対し全面圧着されているので、蓋体20は剛に組み立てられる。その結果、蓋体20が紙製容器に使用された場合に蓋体20の戻り変形が起こることはなくなる。さらに、天壁1の天板部1aは容器本体のフランジ面と接触する部分が水平であるから容器本体との接着封止を好適に行うことができる。
【0024】
また、天壁1の絞り部1cの最大外径D3は、スカート壁2の最大内径D2よりもわずかに大きくなるように調整されている。これにより、図8に示すような複数の蓋体20を積み重ねる(スタック)ことが可能になり、大量の蓋体20を安定して積み重ねながら運搬することができるようになり、紙製容器の生産に対し有利になる。あるいは、蓋体20の保管や充填済み容器の保管や陳列に対しても有利になる。
【0025】
図7は、実施例2にかかる蓋体20のスカート壁2を示す部分断面図である。
スカート壁2は、上述した通り、例えば硬質のロール紙を適当な長さに切断し上外周端部2dおよび下外周端部2eにおいて折り返し、そして上部折り代2bを外周壁部2aに対し全面圧着することによって得られる。また、上外周端部2dの近傍に上部折り代2bおよび下部折り代2cによって形成される嵌合溝2fを有している。図から、外周壁部2aの長さをL1と、上部折り代2bの長さをL2と、下部折り代2cの長さL3と、嵌合溝2fの長さをLとすると、垂下部1bが嵌合溝2fに嵌合されるためには、嵌合溝2fの長さL=(L2+L3)−L1>0が成り立たなければならず、望ましくは、L3≒L1かつ0≦L2<L1が成り立たなければならず、さらに望ましくは、L2≧0.5×L1かつL3≧0.8×L1である。これにより、天壁1とスカート壁2は、接合面を十分に確保しながら剛に固定される。
【0026】
図8は、蓋体20のスタックを示す説明図である。
この図は、3個の蓋体20,20,20がスタックされた状態を示している。最下位の第1蓋体20の垂下部1bが、その上に位置する第2蓋体20のスカート壁2の内周面に嵌合して、第2蓋体20が第1蓋体20上に固定される。そして、第2蓋体20の垂下部1bが、その上に位置する第3蓋体20のスカート壁2の内周面に嵌合して、第3蓋体20が第2蓋体20上に固定される。このようにして、天壁1とスカート壁2の内周面が好適に嵌合するのでスタック姿勢が安定する。その結果、大量の蓋体20を安定して積み重ねながら包装することができるようになり、紙製容器の生産に対し有利になる。あるいは、蓋体20の保管や充填済み容器の保管や陳列に対しても有利になる。
【実施例3】
【0027】
図9は、実施例3にかかる蓋体30を示す断面図である。
この蓋体30は、上面を形成する天壁1と、側面を形成するスカート壁2とを具備して構成されている。更に詳しくは、天壁1は、上面を形成すると共に容器本体と接合する天板部1aとスカート壁2の嵌合溝2f(図示せず)と嵌合する垂下部1bとから成り、一方、スカート壁2は、側面を形成する外周壁部2aと天壁の垂下部1bと嵌合する嵌合溝2fを形成する上部および下部折り代2b,2cとから成る。
【0028】
天壁1は、例えば円板状の硬質紙に円筒状のパンチを押し当てながら成型することによって得られ、天板部1aの形状は円板状であるのに対し、垂下部1bの形状は円筒状である。また、スカート壁2は、例えば硬質のロール紙を適当な長さに切断し上外周端部2dおよび下外周端部2eにおいて折り返すことによって得られ、その折り返しによって生じる上部折り代2bは全面にわたり外周壁部2aに圧着、例えばローレット加工または糊付けによって圧着され、それに対し、同下部折り代2cは、外周壁部2aに圧着されていない。これにより、天壁1およびスカート壁2は、垂下部1bをスカート壁2の上外周端部2d近傍に形成される嵌合溝2fに挿入することによって圧着固定される。その結果、天壁1およびスカート壁2は接合面を十分に確保しながら圧着固定されるので、天壁1とスカート壁2との結合が強くなり、なお且つ上部折り代2bは外周壁部2aに対し全面圧着されているので、蓋体30は剛に組み立てられる。その結果、蓋体30が紙製容器に使用された場合に蓋体30の戻り変形が起こることはなくなる。さらに、天壁1の天板部1aは容器本体のフランジ面と接触する部分が水平であるから容器本体との接着封止を好適に行うことができる。
【実施例4】
【0029】
上記実施例1から3において、蓋体の天板部は円形であり、容器本体の胴体壁は逆半円錐形であるが、これらの形状に限らず、蓋体の天板部は矩形または中央が凸形で周辺が平らな帽子型であり、容器本体の胴体壁は逆四角錐形またはフランジ部を有する半球形であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
保存食、冷菓子、冷蔵品または冷凍品等の食品保存または食品貯蔵の他、衣類または小物の収納物あるいは商品の包装としても好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1にかかる蓋体を示す断面図である。
【図2】実施例1にかかる蓋体のスカート壁を示す部分断面図である。
【図3】実施例1にかかる蓋体のスタックを示す説明図である。
【図4】実施例1にかかる紙製容器を示す要部断面説明図である。
【図5】実施例1にかかる蓋体および容器本体の接着封止を示す要部説明図である。
【図6】実施例2にかかる蓋体を示す断面図である。
【図7】実施例2にかかる蓋体のスカート壁を示す部分断面図である。
【図8】実施例2にかかる蓋体のスタックを示す説明図である。
【図9】実施例3にかかる蓋体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 天壁
1a 天板部
1b 垂下部
1c 絞り部
2 スカート壁
2a 外周壁部
2b 上部折り代
2c 下部折り代
3 胴体壁
4 底壁
10,20,30 蓋体
100 紙製容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体壁と底壁を有し内容物が収納される容器本体と、天壁およびスカート壁を有し該容器本体を封止する蓋体とから成る紙製容器であって、前記蓋体の天壁は少なくとも周端部において水平面を有する天板部と周方向に沿って該天板部から垂下して形成された垂下部とを有し、前記蓋体のスカート壁は少なくとも下部において内側に折り返されて形成された下部折り代と側壁を形成する外周壁部とを有し、前記天壁の垂下部が前記スカート壁の外周壁部と下部折り代とによって形成される嵌合溝に嵌合されて圧着固定されていることを特徴とする紙製容器。
【請求項2】
前記スカート壁は、前記外周壁部の上部において内側に折り返され形成された上部折り代を有し、該上部折り代と前記下部折り代によって前記嵌合溝が形成されている請求項1に記載の紙製容器。
【請求項3】
前記スカート壁の上部折り代は前記外周壁部の内周面に全面圧着され且つ前記スカート壁の下部折り代は該上部折り代と重複しない範囲内で前記外周壁部の内周面に部分圧着されている請求項2に記載の紙製容器。
【請求項4】
前記天壁の垂下部は前記スカート壁の上外周端部から突出し且つ最大外径は前記スカート壁の最大内径に略等しいか又はそれ以下である請求項1から3のいずれかに記載の紙製容器。
【請求項5】
前記天壁の垂下部は、最大外径が前記スカート壁の最大内径に略等しいか又はそれ以下である絞り部を有し且つ下方に拡径している請求項1から4のいずれかに記載の紙製容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−315689(P2006−315689A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137278(P2005−137278)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000146375)上田印刷紙工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】