説明

紙製容器

【課題】複雑な形状の容器板であっても、容器板と側板との間の隙間を覆うことができ、尚且つ側板の取り付けが容易である紙製容器を提供すること。
【解決手段】
側板1を容器板2に取り付けて形成する紙製容器10であって、前記側板1の一端部1aに、これを頂点として傾動可能に接続されて、前記紙製容器10内側に配置される第一内側板3を有し、この第一内側板3の他端部3bと前記側板1の他端部1bとを離間させた状態で、前記側板1の他端部1bを前記容器板2の周縁2aに取り付けたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、側板を容器板に取り付けて形成する紙製容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の紙製容器として、例えば、図4の(a)に示す円柱形状の紙製容器50や、図4の(b)に示すハート型筒形状の紙製容器60が知られている。これらの紙製容器は、側板(41、51)の下端縁(41a、51a)と上端縁(41b、51b)でそれぞれ折り返される下側折返片(43a、53a)及び上側折返片(43b、53b)を有しており、前記下側折返片(43a、53a)の端縁と上側折返片(43b、53b)の端縁との間に形成された溝部(41c、51c)に、容器板(42、52)の周縁を嵌入しつつ、側板(41、51)を取り付けて形成されている。このように形成されるため、容器板(42、52)と側板(41、51)とは強固に固定される。なお、「容器」とは、底板を有する容器本体も、天板を有する蓋体も含む概念であり、「容器板」とは、底板の場合も、天板の場合も含むものである。
【0003】
ところが、これら従来から知られているものは、上記の円型やハート型のような緩やかな円弧と線分とを組み合わせた簡単な形状の容器板(42、52)に側板(41、51)を取り付けて容器を形成するものであり、キャラクターや星型等の複雑な形状をした容器板に側板を取り付けて容器を形成する場合の問題点について言及したものはなかった。
【0004】
上記問題点とは、例えば、図1の(a)に示すような連続する凹凸を多数有する複雑な形状の容器板の場合に、側板の他端部と容器板の周縁、特に凹部分の中央付近との間に隙間が生じやすく、この隙間を通して容器内へ異物が混入することや、内容物が流出することである。また、隙間が生じやすいため、容器自体の見栄えも悪くなってしまう。
【0005】
ここで、隙間が出来る原因について説明する。容器板が凹凸を多数有する複雑な形状であるため、その周縁に取り付けられるべき側板の他端部は、狭く湾曲している凹部の中央まで、確実に取り付けられない。そうすると、紙製容器70の凹部中央の断面を示した図4の(c)からわかるように、凹部周辺では、側板61の他端部61bと容器板62の周縁62a(凹部の中央)とが離れ、隙間Hが生じてしまうのである。
【0006】
そこで、図4の(d)に示す引用文献3の側板71の一端部71aがカールした形状を採用した紙製容器80であれば、隙間Hを埋めることができる。しかし、このカール部分は、側板71を補強するためのもので、そのカールした形状を維持しようと作用する。そのため、側板71の他端部71bを複雑な形状をした容器板72の周縁72aに取り付けようとすると、側板71を屈曲させるのが困難で、取り付け作業が煩雑となってしまう。そればかりか、隙間Hが生じた箇所か否かに関わらず、容器板72の周縁72a全体に亘って、カール部分が容器内側にはみ出し、内容物を収容する収容体積が、そのはみ出した分だけ減ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3028765号
【特許文献2】特願平7−34340号
【特許文献3】特願2002−357679号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願発明は上記問題に鑑み、複雑な形状の容器板であっても、容器板と側板との間の隙間を覆うことができ、尚且つ側板の取り付けが容易である紙製容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の紙製容器は、側板を容器板に取り付けて形成する紙製容器であって、前記側板の一端部に、これを頂点として傾動可能に接続されて、前記紙製容器内側に配置される第一内側板を有し、この第一内側板の他端部と前記側板の他端部とを離間させた状態で、前記側板の他端部を前記容器板の周縁に取り付けたことを特徴としている。
【0010】
なお、本明細書において、「容器」とは、底板を有する容器本体も、天板を有する蓋体も含む概念であり、「容器板」とは、底板の場合も、天板の場合も含むものである。
【0011】
上記特徴によれば、容器板の周縁に側板の他端部を取り付けても、紙製容器内側に配置した第一内側板の他端部は、側板の他端部から離間している。よって、この第一内側板の他端部が容器板表面に接触し、第一内側板の一端部が側板の一端部に接続しているので、第一内側板は容器内側から隙間を覆うことになる。
【0012】
また、第一内側板は、側板の一端部に、これを頂点として接続している。このため、側板が屈曲すると共に第一内側板も屈曲するので、取り付け作業が容易となる。さらに、第一内側板は、側板の一端部に、これを頂点として傾動可能に接続しているので、側板の他端部と第一内側板の他端部との離間間隔を調節でき、確実に隙間を覆うことが出来る。
【0013】
本願発明の紙製容器は、更に、前記第一内側板の他端部に、これを頂点として傾動可能に接続されて、前記第一内側板と前記側板との間に配置される第二内側板を有することを特徴としている。
【0014】
上記特徴によれば、第二内側板は、第一内側板と側板との間に配置されている。そのため、第二内側板の一端部は、側板に接触して第一内側板の他端部と側板の他端部とが離間するのを助長し、その状態を維持する。
【0015】
本願発明の紙製容器は、更に、前記側板、前記第一内側板、及び前記第二内側板を、片面に波形シートが貼り付けられた一枚の長尺状の紙材料を折り曲げ加工することにより形成したことを特徴としている。
【0016】
上記特徴によれば、側板、第一内側板及び第二内側板は、一枚の紙材料から形成されるため、製造コストの削減に寄与する。また、これらの側板は、片面に貼り付けられた波形シートの柔軟性により、取り付け作業を容易にする。
【発明の効果】
【0017】
上記に記したように、本願発明の紙製容器によれば、複雑な形状の容器板であっても、容器板と側板との間の隙間を覆うことができ、尚且つ側板の取り付けが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の紙製容器を示すもので、(a)紙製容器の全体図を、(b)及び(c)は紙製容器の側板及び第一内側板を示した図である。
【図2】本願発明の紙製容器を示すもので、(a)は紙製容器の側板の一部を切り離した状態を、(b)は紙製容器の上面を、(c)は(b)におけるX−X断面を、(d)は(b)の紙製容器の容器板を取り除いた状態を示した図である。
【図3】(a)は、第一内側板が隙間を覆いきれていない場合を示している。(b)及び(c)は、本願発明の紙製容器の他例を示すものである。
【図4】本願発明の背景技術の一例として紙製容器を示すものである。
【符号の説明】
【0019】
1 側板
1a 一端部
1b 他端部
2 容器板
2a 周縁
3 第1内側板
3b 他端部
34 第2内側板
10 紙製容器
H 隙間
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本願発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1の(a)は本願発明の紙製容器10の全体図を、図1の(b)及び(c)は紙製容器10の側板1及び第一内側板3を示した図である。
【0022】
図1の(a)に示す本願発明の紙製容器10は、それぞれ6個の凹凸を有した複雑形状で、容器板2の周縁2aに亘り側板1の他端部1bを取り付けて形成されている。この凹凸を多数有する複雑な形状の容器板2の凹部周辺では、側板1の他端部1bが周縁2aから離れ、隙間Hが生じ得る。しかし、本願発明の紙製容器10は、第一内側板3(図1の(b)及び(c)参照)により、容器内側から全ての隙間Hを覆うことができる。
【0023】
では、この第一内側板3について、図1の(b)で説明する。第一内側板3は、側板1と共にその片面に波形シートが貼り付けられた一枚の長尺状の紙材料で形成されている。紙材料で形成されているので、第一内側板3は、側板1の一端部1aを頂点として折り曲げることが出来る。そして、第一内側板3は折り曲げられると図1の(c)に示す状態となる。
【0024】
図1の(c)では、第一内側板3の幅は側板1の幅より狭いので、側板1の他端部1bには、容器板2の周縁2aとの当接個所1cができる。この当接個所1cに接着材等を塗り、側板1の他端部1bは容器板2の周縁2aに取り付けられる。また、側板1の他端部1bを容器板2の周縁2aに亘って取り付けると、側板1の糊しろ1dと第一内側板3の糊しろ3dとが重なり合い、当該部分を接着することで、側板1の両端は強固に固定される。
【0025】
なお、第一内側板3は、側板1の一端部1aに、これを頂点として傾動可能に接続されていればよい。したがって、第一内側板3及び側板1は、独立した紙材料で形成され、それらの一端部を接着材等で接合してもよい。
【0026】
次に、図2では、第一内側板13が、容器内側から隙間Hを覆うことについて詳しく説明する。図2の(a)は本願の紙製容器20の側板11の一部を切り離した状態を、図2の(b)は紙製容器20の上面を、図2の(c)は図2の(b)におけるX−X断面を、図2の(d)は図2の(b)の紙製容器20の容器板12を取り除いた状態を示している。
【0027】
図2の(a)では、側板11の他端部11bと第一内側板13の他端部13bとが離間した状態で、側板11の他端部11bは容器板12の周縁12aに取り付けられている。第一内側板13は、側板11の一端部11aに、これを頂点として接続されている。そのため、第一内側板13は、側板11の屈曲に伴って屈曲する。したがって、第一内側板13が側板11の屈曲の邪魔になることはない。また、側板11及び第一内側板13の片面に波形シートが貼り付けられているので、その波形シートの柔軟性により、側板11を複雑に屈曲させることが容易である。
【0028】
図2の(b)は、紙製容器20の上面を示している。凹凸を多数有する容器板12の周縁12aに、側板11の他端部11bが取り付けられている。容器板12の凸部周辺12Sでは、容器板12の周縁12aと側板11の他端部11bとが確実に取り付けられ隙間Hは生じていない。しかし、凹部周辺12Tでは、容器板12の周縁12aから側板11の他端部11bが離れて隙間Hが生じている。なお、容器板12の下側にある第一内側板13の他端部13bは、破線で示されている。
【0029】
図2の(c)は、図2の(b)のX−X断面を示しており、容器内側に配置された第一内側板13が、隙間Hを覆っているのがわかる。第一内側板13の他端部13bは、側板11の他端部11bから離間し、容器板12の表面(裏面)に接触している。一方、第一内側板13の一端部13aは側板11の一端部11aに接続している。したがって、第一内側板13は容器内側から隙間Hを完全に覆うことになる。
【0030】
図2の(d)は、図2の(b)に示す紙製容器20の容器板12を取り除いた状態である。第一内側板13は、傾動可能に側板11の一端部11aに接続されている。そのため、隙間Hが生じていない凸部周辺12Sでは、第一内側板13の他端部13bと側板11の他端部11bとが接近するように、第一内側板13は傾動される。一方、隙間Hが生じている凹部周辺12Tでは、隙間Hを覆うために第一内側板13の他端部13bを側板11の他端部11bから離間するように、第一内側板13は傾動される。
【0031】
このように、場所に応じて第一内側板13を傾動する利点を説明する。まず、第一内側板13は容器内側にはみ出すため、そのはみ出した分だけ容器の収容体積が減ることになる。しかし、本願の紙製容器20は、上記のように隙間Hが生じる場所と生じない場所に応じて、第一内側板13の傾動を変化させ、そのはみ出し具合を調節することができる。したがって、本願の紙製容器20は、収容体積を最大にしつつ、隙間Hを覆うことができるのである。
【0032】
次に、図3の(a)は、紙製容器30の第一内側板23が隙間Hを覆いきれていない場合を、図3の(b)は、紙製容器40の側板31、第一内側板33、及び第二内側板34を一枚の長尺状の紙材料で形成した状態を、図3の(c)は、第一内側板33及び第二内側板34が隙間Hを覆っている状態を示している。
【0033】
図3の(a)では、第一内側板23が隙間Hを覆いきれていない場合を示している。この原因は、例えば、紙製容器30の製造過程で第一内側板23に外力が加わり、隙間Hを覆っていた第一内側板23が、側板21側に傾動してしまったことである。
【0034】
そこで、隙間Hを確実に覆うことができるよう、本願の紙製容器の他例である紙製容器40は、更に図3の(b)に示す第二内側板34を設ける。この第二内側板34、第一内側板33、及び側板31は、片面に波形シートが貼り付けられた一枚の長尺状の紙材料で形成されている。紙材料で形成されているので、第二内側板34は第一内側板33の他端部33bを頂点として、第一内側板33は側板31の一端部31aを頂点として、それぞれ折り曲げることができる。
【0035】
各側板(31、33、34)を折り曲げて、側板31の他端部31bを容器板32の周縁32aに取り付けた状態を図3の(c)に示す。第一内側板33は容器内側に、第二内側板34は第一内側板33と側板31との間に位置している。第二内側板34は、その一端部34aが側板31に接触するので、第一内側板33の他端部33bと側板31の他端部31bとが離間するのを助長及び維持している。したがって、紙製容器40は、第一内側板33に外力が加わっても、第一内側板33が側板31側に傾動するのを防止し、隙間Hを確実に覆うことができる。
【0036】
また、図3の(c)からわかるように、第一内側板33だけでなく、第二内側板34も容器内側から隙間Hを覆うので、紙製容器40の密閉性がより高まる。また、図3の(c)では隙間Hが生じている場所を示しているが、隙間Hが生じない場所であれば、第二内側板34は第一内側板33に接近するように折りたたまれる。そして、第一内側板33は、第一内側板33の他端部33bと側板31の他端部31bとが接近するように、傾動される。このようにして、紙製容器40は、収容体積を最大にしつつ、隙間Hを覆うことができる。
【0037】
なお、本願発明の紙製容器は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明の紙製容器は、側板を複雑な形状の容器板に取り付けて形成することが要請される産業分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側板を容器板に取り付けて形成する紙製容器であって、
前記側板の一端部に、これを頂点として傾動可能に接続されて、前記紙製容器内側に配置される第一内側板を有し、
この第一内側板の他端部と前記側板の他端部とを離間させた状態で、前記側板の他端部を前記容器板の周縁に取り付けたことを特徴とする紙製容器。
【請求項2】
前記第一内側板の他端部に、これを頂点として傾動可能に接続されて、前記第一内側板と前記側板との間に配置される第二内側板を有することを特徴とする請求項1に記載の紙製容器。
【請求項3】
前記側板、前記第一内側板、及び前記第二内側板を、片面に波形シートが貼り付けられた一枚の長尺状の紙材料を折り曲げ加工することにより形成したことを特徴とする請求項2に記載の紙製容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−71871(P2012−71871A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218610(P2010−218610)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(509208745)株式会社山清 (2)