説明

紙製断熱容器

【課題】筒状胴巻を指で把持しても、凹まない構造を有する紙製断熱容器を提供する。
【解決手段】上方開口端に外向きにカールされた口縁部3を有する有底紙製容器本体1と、該容器本体胴部の外壁面側に装着される筒状胴巻30とからなり、前記筒状胴巻が前記容器本体外壁面側に装着されたとき、前記筒状胴巻は、その上端内面が前記容器本体口縁部直下の外壁面に接触し、かつ、該胴巻の内側へカールされた複数個のカール部36が該下端部の内周に沿って所定の間隔で間欠的に設けられており、これにより前記筒状胴巻の下端部に、前記容器本体と筒状胴巻との間に形成された断熱空間40と連通する通気孔54を形成している紙製断熱容器において、前記容器本体外壁面と前記筒状胴巻内壁面との間に、複数本の縦折目を有する蛇腹円筒60を間挿する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙製断熱容器に関する。更に詳細には、本発明は容器本体胴部の外壁面上に筒状胴巻が、前記容器胴部外壁面と前記筒状胴巻の内壁面との間に断熱空間を形成するように接合され、該断熱空間内の熱気を冷い外気と交換可能に構成され、かつ、筒状胴巻を指で把持しても、把持箇所の筒状胴巻が潰れ難くするための補強中間部材が容器本体胴部と筒状胴巻との間に挿入されている優れた断熱性を有する紙製断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より高温液体の充填用断熱容器は幾種類か実用に供されてきた。例えば、このような目的のために、発泡ポリスチロール製の断熱容器が使用されてきた。これは発泡ポリスチロール原料をモールド内に注型し、その後、熱と圧力を加えて原料を発泡させ、成型容器を型から取り出すことによって製造される。このようにして得られた断熱容器は断熱性の点では非常に優れている。しかし、発泡ポリスチロール容器内に熱湯を注入すると容器本体から微量の環境ホルモンが溶出し、人体に悪影響を与えることが報告されている。しかも、石油資源の節約あるいは廃棄物の焼却処理の点からも再検討が必要な容器である。更に、発泡スチロール製断熱容器の外表面は平滑ではないので、印刷適性に劣るという欠点もあった。
【0003】
前記のような発泡ポリスチロール製断熱容器の欠点を克服するため、本出願人は特許文献1に記載されるような紙製断熱容器を開発し、実用に供している。図8は特許文献1に記載された紙製断熱容器の部分概要断面図である。図8に示されるように、この紙製断熱容器は、上方開口端に外向きにカールされた口縁部3を有する有底紙製容器本体10と、該容器本体胴部の外壁面側に装着される筒状胴巻30とからなり、前記筒状胴巻は、その上端内面が前記容器本体口縁部直下の外壁面に接触し、かつ、前記筒状胴巻下端のカール部36が前記容器本体下方の外壁面に接触するサイズを有し、前記筒状胴巻が前記容器本体外壁面側に装着されたとき、前記筒状胴巻は、その上端内面が前記容器本体口縁部直下の外壁面に接触されると共に、筒状胴巻下端のカール部を前記容器本体下方の外壁面に接着されることにより一体化される紙製断熱容器において、前記筒状胴巻の下端部には、該胴巻の内側へカールされた複数個のカール部36が該下端部の内周に沿って所定の間隔で間欠的に設けられており、これにより前記筒状胴巻の下端部に、前記容器本体と筒状胴巻との間に形成された断熱空間と連通する通気孔54を形成することを特徴とする。このような構成を採用したことにより、特許文献1記載の紙製断熱容器は、容器胴部と胴巻との間に形成される断熱空間内の空気が加熱された場合、通気孔を通じて外気と熱交換が容易に行われ、筒状胴巻の外表面の断熱効果が一層優れたものとなるという顕著な作用効果が奏される。
【0004】
しかし、図8に示される容器では、図9に示されるように筒状胴巻30の部分を指で把持すると、筒状胴巻30の把持部分は容器本体10側に凹み、筒状胴巻30と容器本体10が接触し、筒状胴巻30の把持部分の指に熱が直接伝熱され十分な断熱性が発揮されないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3953992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は特許文献1に記載された紙製断熱容器の特徴と効果を維持しつつ、筒状胴巻を指で把持しても、筒状胴巻が凹まない構造を有する紙製断熱容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、上方開口端に外向きにカールされた口縁部を有する有底紙製容器本体と、該容器本体胴部の外壁面側に装着される筒状胴巻とからなり、前記筒状胴巻は、その上端内面が前記容器本体口縁部直下の外壁面に接触し、かつ、前記筒状胴巻下端のカール部が前記容器本体下方の外壁面に接触するサイズを有し、前記筒状胴巻が前記容器本体外壁面側に装着されたとき、前記筒状胴巻は、その上端内面が前記容器本体口縁部直下の外壁面に接触され、前記筒状胴巻の下端部には、該胴巻の内側へカールされた複数個のカール部が該下端部の内周に沿って所定の間隔で間欠的に設けられており、これにより前記筒状胴巻の下端部に、前記容器本体と筒状胴巻との間に形成された断熱空間と連通する通気孔を形成している紙製断熱容器において、前記容器本体外壁面側と前記筒状胴巻内壁面側との間に、複数本の縦折目を有する蛇腹円筒を間挿することにより解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙製断熱容器は特許文献1に記載された容器を改良したものである。特許文献1に記載された容器では、前記容器本体と筒状胴巻との間に断熱空間が形成されるが、この空間内に複数本の縦折目を有する蛇腹円筒が間挿されているので、筒状胴巻を外側から指で把持しても蛇腹円筒の存在により筒状胴巻が指で凹むことは回避される。その結果、筒状胴巻に触れている指への熱伝導は大幅に抑制される。また、蛇腹円筒の谷部の空間は前記断熱空間が間欠カール部の通気孔を介して外気と熱交換することを妨げないので一層優れた断熱効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の紙製断熱容器の一例の部分概要断面図である。
【図2】図1に示された容器におけるII-II線に沿った部分概要断面図である。
【図3】図1に示された容器において使用される蛇腹円筒の一例の斜視図である。
【図4】図1に示された容器の底面図である。
【図5】図1に示された容器において使用される筒状胴巻を製造する方法の一例の工程図である。
【図6】本発明の紙製断熱容器の製造工程を示す模式図である。
【図7】本発明の紙製断熱容器の別の例の部分概要断面図である。
【図8】特許文献1に示された紙製断熱容器の部分概要断面図である。
【図9】図8に示された紙製断熱容器を指で把持した状態を示す部分概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の紙製断熱容器の好ましい実施態様について具体的に説明する。なお、前記のように本発明の紙製断熱容器は特許文献1に記載された紙製断熱容器を改良したものであるから、下記の説明において、特許文献1に記載された紙製断熱容器と同じ部材については説明の便宜上、同一の参照符号を使用する。
【0011】
図1は本発明の紙製断熱容器の一例の部分概要断面図である。図1に示されるように、本発明の紙製断熱容器1は、本質的に、容器本体10と筒状胴巻30と、両部材の間に間挿された蛇腹円筒60とからなる。容器本体10は胴部材12と底板部材14とからなる。胴部材12及び底板部材14は何れも紙16から形成されているが、容器本体10の内部には液体が充填されるので、胴部材12及び底板部材14への液体の浸透を阻止するために、胴部材12及び底板部材14ともその内壁面側には熱可塑性合成樹脂フィルム18(例えば、ポリエチレン,ポリスチレン,ナイロン,ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート、あるいはそれらの積層フィルムなど)がラミネートされている。熱可塑性合成樹脂フィルムの代わりに、アルミ箔をラミネートすることもできる。このような耐液体浸透性の紙製カップ自体は当業者に周知である。容器本体10の胴部材12の上端には、胴部材12の上方を容器外方へ向けてカールすることにより形成された口縁部3が存在する。胴部材12の外壁面側に紙製の蛇腹円筒60が装着されており、この蛇腹円筒60の山部に接触するように紙製の筒状胴巻30が装着されている。これにより、胴部材12の外壁面側と筒状胴巻30の内壁面側との間に断熱空間40が形成される。蛇腹円筒60は筒状胴巻30を容器本体10の胴部材12の外壁面側に装着するのを妨げないような外径でなければならない。従って、蛇腹円筒60は、山と谷の高さが容器本体10の口縁部3に向かって低くなるように構成されていることが好ましい。筒状胴巻30の下端部には内側へカールされた複数個のカール部36が該下端部の内周に沿って所定の間隔で設けられている。すなわち、このカール部36は筒状胴巻30の下端部内側の全周にわたって連続的に存在するのではなく、部分的又は間欠的に存在する。カール部36が存在しない箇所には断熱空間40に連通する通気孔54が形成されている。筒状胴巻30は、その上端内面が容器本体10の口縁部3直下の外壁面に接触し、かつ、筒状胴巻下端のカール部36が前記容器本体下方の外壁面に接触するサイズ又は内径を有する。従って、筒状胴巻30を蛇腹円筒60の山部に接触するように装着したとき、筒状胴巻30は、その上端32の内壁面が容器縁部3直下の胴部材12の外壁面に緊密に接触されると共に、筒状胴巻下端のカール部36も前記容器本体10の胴部材12下方の外壁面に接触される。
【0012】
図2は図1におけるII-II線に沿った部分概要断面図である。蛇腹円筒60の谷部62及び山部64の各外周面側に接着剤38が塗布されており、蛇腹円筒60の谷部62の外周面は容器本体10の胴部材12側に接着され、蛇腹円筒60の山部64の外周面は筒状胴巻30側に接着される。これにより、容器本体10、蛇腹円筒60及び筒状胴巻30が強固に一体化され、蛇腹円筒60及び筒状胴巻30が容器本体10から脱落するような事故を効果的に防止することができる。蛇腹円筒60の谷部62及び山部64により形成される斜面は断熱空間40を形成する。
【0013】
図3は蛇腹円筒60の斜視図である。蛇腹円筒60の長さは断熱空間40の上端から下端までと同じ長さであることもできるし、あるいは、図1に示されたように、容器1を指で把持する可能性のある領域だけに対応した長さであることもできる。蛇腹円筒60の製造方法自体は公知である。すなわち、適当な厚さの原紙をプリーツ加工ローラ又は折り目付けローラなどに通して、山部と谷部を有する蛇腹様の折り目を形成し、この原紙から長方形のブランクを打ち抜き、長方形ブランクの直線状両端を接着することにより蛇腹円筒60を作製して容器本体に装着する。別法として、蛇腹様の折り目が付けられた長方形ブランクを容器本体の胴部外壁面に回転させて巻き付けることによっても蛇腹円筒60を容器本体に装着することができる。この際、蛇腹円筒60の山部64及び谷部62の外周面に接着剤を塗布しておくこともできる。これにより、蛇腹円筒60を容器本体に装着した際及び筒状胴巻30を蛇腹円筒60に装着した際、蛇腹円筒60が容器本体10に接着されると共に、筒状胴巻30も蛇腹円筒60に接着され、全ての部材を強固に一体化させることができる。
【0014】
図4は、図1に示された容器1の底面図である。筒状胴巻30は内側にカールされたカール部36を断続的に有するので、容器本体10に筒状胴巻30を装着すると、カール部36の存在しない箇所には、容器本体10の胴部材12と筒状胴巻30との間に形成された断熱空間40に連通する通気孔54が形成される。
【0015】
図1に示されるように、容器本体10の胴部材12の外壁面に蛇腹円筒60及び筒状胴巻30を装着させることにより、容器本体10の胴部材12の外壁面と、蛇腹円筒60及び筒状胴巻30の内壁面との間に断熱空間40が形成され、この断熱空間40の存在により本発明の容器1に断熱性が付与され、更に、筒状胴巻の下端部34に、胴部材12と筒状胴巻30との間に形成された断熱空間40と連通する通気孔54を形成することにより、断熱空間40中の空気が加熱された場合、通気孔54を通じて外気と熱交換又は換気が容易に行われ、筒状胴巻30の外表面の断熱効果が一層優れたものとなる。蛇腹円筒60の山部と谷部との間は断熱空間40に連通する空間を形成するので、断熱空間40自体は蛇腹円筒60により上部と下部に分断されたり、閉塞されたりすることはない。また、蛇腹円筒60はその構成からクッション又は弾発手段のような機能を果たすことが出来る。従って、断熱空間40中の加熱された空気は、使用者が胴巻30を指で把持したときに、蛇腹円筒60が若干応力変形することにより断熱空間40内の圧力が高まり、断熱空間40内の熱気は通気孔54を介して外に押し出され、指を離したときに、蛇腹円筒60が復元され、その際に容器外の冷たい空気が断熱空間40内に吸い込まれる。これを繰り返すことにより、断熱空間40内の加熱空気は徐々に温度が低下される。しかも、蛇腹円筒60の存在により、筒状胴巻30の内壁面が胴部材12の外壁面に接触することは無い。その結果、使用者が指で本発明の紙製断熱容器1を保持しても熱く感じることは殆ど無い。もし、通気孔54がなければ、カール部36により断熱空間40は完全に閉塞された空間となるので、この空間内に熱気が籠もり、蛇腹円筒60が存在しても、筒状胴巻を指で把持した際、熱気を感じることとなる。
【0016】
図5は筒状胴巻30を製造する工程図である。先ず(A)において、ロール原紙(図示されていない)などから、筒状胴巻30を構成するためのブランク39を打ち抜く。この際、ブランク39の下端縁42が所定の間隔で櫛歯状に切り欠かれ、櫛歯44が形成されるように打ち抜く。この櫛歯44の形状は図示された矩形状に限定されない。次いで、(B)に示すように、この櫛歯部分44をカールさせてカール部36を形成する。カール部36の形態は図示されたものに限定されない。例えば、略U字状、略円弧状に丸めたり、渦巻き状にカールされた形態も使用できる。次いで、(C)に示すように、カール部36が内側に来るように、ブランク39を丸め、その両側縁50−1及び50−2を若干オーバーラップするように重ね合わせて接合させ、サイドシーム52を形成し、筒状胴巻30を完成させる。別法として、ブランク39を丸め、その両側縁50−1及び50−2を若干オーバーラップするように重ね合わせて接合させ、サイドシーム52を形成し、筒状胴巻30を形成させた後、櫛歯部分44を胴巻30の内壁上部方向に向けてカールさせることにより(C)に示されるような胴巻30を完成させることもできる。
【0017】
筒状胴巻30の高さは、筒状胴巻30を胴部材12に接着固定させたときに、筒状胴巻30の下端部34が胴部材12の下端部20と“面一致”になるように選択される。しかし、筒状胴巻30の下端部34が胴部材12の下端部20よりも上側にある、いわゆる“寸足らず”であることもできる。“寸足らず”の場合、本発明の紙製断熱容器をテーブルなどの上面に置いたときにも、通気孔54が閉塞されないので、断熱空間40内の熱気の自然放熱が促進され、優れた断熱性を示す。
【0018】
この容器本体10は常用のカップ製造装置により容易に組み立てることができる。例えば、先ず、片側にポリエチレンなどの熱可塑性合成樹脂フィルムがラミネートされた原紙を準備する。このラミネート原紙から容器胴部用ブランク及び底板部用ブランクを打ち抜く。これらのブランクを用いて、常用のカップ成形機で、容器胴部用ブランクはフィルムラミネート面が容器内側に向くように、また、底板部はフィルムラミネート面が容器内側に向くようにして、容器に組み立てる。
【0019】
図6は本発明の紙製断熱容器1の製造工程を示す模式図である。容器本体10を前記のように作製し、この容器本体10の外壁面に蛇腹円筒60を装着する。この際、蛇腹円筒60の谷部と山部の各外周面には接着剤を塗布しておくことが好ましい。次いで、得られた組立体を筒状胴巻30の内側に挿入し、蛇腹円筒60の山部の接着剤により筒状胴巻30を容器本体10に接着させる。斯くして、容器本体10と、蛇腹円筒60及び筒状胴巻30が一体的に接着された本発明の紙製断熱容器1が得られる。別法として、蛇腹円筒60を容器胴部材12に接着させる場合、容器胴部材12の外壁面に接着剤を塗布しておくこともできる。また、蛇腹円筒60を筒状胴巻30と接着させる場合、筒状胴巻30の内壁面に接着剤を塗布しておくこともできる。蛇腹円筒60を介して容器本体10及び筒状胴巻30は分離しないように相互に一体的に接着されているので、筒状胴巻30の下端部のカール部36を胴部材12の外壁面に接着させる必要は特に無いが、所望により、筒状胴巻30の下端部のカール部36を接着剤により胴部材12の外壁面に接着させることもできる。
【0020】
図7は本発明の紙製断熱容器の別の例の部分概要断面図である。図7に示されるように、この容器1Aは、容器本体10の胴部材12の上方寄り部分を半径方向外方へ拡径することにより形成された段部9を有し、段部9の外壁面側直下から胴部材12の下端部20よりも少し上側までに延びる長さの蛇腹円筒60が接着されている。更に、蛇腹円筒60の山部外周面に接触し、かつ、段部9から口縁部3までの拡径側壁部分5の外周壁面に接触するように筒状胴巻30が装着されている。筒状胴巻30の上端部32は容器口縁部3直下に当接させるか又は口縁部3のカール内に嵌入させることが好ましい。筒状胴巻30は蛇腹円筒60の山部外周面に接着されている。図1の容器1では、断熱空間40は筒状胴巻30のカール部36付近で最大の幅を有するが、図7の容器1Aは図1の容器と異なり、断熱空間40の幅が段部9付近から広くなり、その結果、断熱空間40の容積自体も拡大されるので、一層優れた断熱性を発揮することができる。このような段部9を有する紙容器の製造方法自体は当業者に公知である。
【0021】
容器本体10を形成する紙素材については特に限定されない。容器本体10は内側になり、直接人の手に持つ側にはならないので、とりたてて丈夫な紙を使用する必要はない。一般的な指標として、容器本体10用としては150g/m 〜400g/m の範囲内の坪量を有する紙が好ましい。
【0022】
筒状胴巻30は紙製である。この筒状胴巻30を構成する原紙としては、バージンパルプから生成された通常の厚紙などを使用することもできるが、古紙を80%以上含有し、坪量が200g/m〜600g/mの範囲内のコートボール紙を使用することが好ましい。このような高古紙含有率の再生紙を使用すると、資源リサイクルの観点から好ましいばかりか、同程度の坪量のバージンパルプ紙に比べてコストを大幅に低減することが出来る。また、このような再生紙は印刷美粧性の点でも優れている。但し、坪量が200g/m未満では、胴巻としての十分な剛度が発揮されない可能性がある。一方、坪量が600g/m超の場合、胴巻として必要な剛度を超えるばかりか加工作業性も著しく低下するので不経済である。
【0023】
蛇腹円筒60も紙製である。蛇腹円筒60は容器本体10と筒状胴巻30との間に隠れて全く人の目に触れないので、古紙100%の再生紙であっても差し支えない。又は筒状胴巻30と同様な古紙を80%以上含有するコートボール紙を使用することもできる。蛇腹円筒60としては、坪量が50g/m〜200g/mの範囲内の紙を使用することが好ましい。坪量が50g/m未満では、蛇腹円筒に成型したときの機械的強度が低すぎて自立的な山と谷を維持できない。一方、坪量が200g/m超の場合、折り目付加工が困難となる。
【0024】
本発明で使用できる接着剤38は例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル・アクリル共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂などの合成樹脂系接着剤の他、にかわ、しょうふ、コーンスターチ、デキストリン、天然ゴムなどの天然物接着剤などを使用できる。また、ホットメルト接着剤なども適宜選択して使用することができる。このようなホットメルト接着剤は当業者に周知である。合成樹脂系接着剤は例えば、エマルジョンの形で使用することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の紙製断熱容器は、熱湯を注ぐことにより喫食される即席食品(例えば、即席麺、即席スープ、即席茶漬け、即席みそ汁など)の他、嗜好飲料(例えば、日本茶、紅茶、コーヒー、ココアなど)など広範な用途に使用することができる。紙製容器本体に限らず、プラスチック製容器本体に対しても紙製の蛇腹円筒60及び筒状胴巻30を装着して同様な断熱効果を得ることも出来る。
【符号の説明】
【0026】
1,1A 本発明の紙製断熱容器
5 拡径側壁部
9 段部
10 容器本体
12 胴部材
14 底板部材
16 紙
18 ポリエチレンラミネートフィルム
20 胴部下端部
30 筒状胴巻
32 筒状胴巻上端部
34 筒状胴巻下端部
38 接着剤
40 断熱空間
52 筒状胴巻のサイドシーム
54 通気孔
60 蛇腹円筒
62 蛇腹円筒の谷部
64 蛇腹円筒の山部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口端に外向きにカールされた口縁部を有する有底紙製容器本体と、該容器本体胴部の外壁面側に装着される筒状胴巻とからなり、前記筒状胴巻は、その上端内面が前記容器本体口縁部直下の外壁面に接触し、かつ、前記筒状胴巻下端のカール部が前記容器本体下方の外壁面に接触するサイズを有し、前記筒状胴巻が前記容器本体外壁面側に装着されたとき、前記筒状胴巻は、その上端内面が前記容器本体口縁部直下の外壁面に接触され、前記筒状胴巻の下端部には、該胴巻の内側へカールされた複数個のカール部が該下端部の内周に沿って所定の間隔で間欠的に設けられており、これにより前記筒状胴巻の下端部に、前記容器本体と筒状胴巻との間に形成された断熱空間と連通する通気孔を形成している紙製断熱容器において、
前記容器本体外壁面と前記筒状胴巻内壁面との間に、複数本の縦折目を有する蛇腹円筒が間挿されていることを特徴とする紙製断熱容器。
【請求項2】
前記蛇腹円筒の折目の谷部外周面は前記容器本体外壁面と接着剤を介して接着されており、前記蛇腹円筒の折目の山部外周面は前記筒状胴巻内壁面に接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製断熱容器。
【請求項3】
前記容器本体はその胴部内径が上端から下端に向かって直線的に減少することを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製断熱容器。
【請求項4】
前記容器本体はその胴部内径が上端付近で半径方向外方へ向けて拡大され、段部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製断熱容器。
【請求項5】
前記筒状胴巻の下端部が前記容器本体胴部の下端部よりも上側の位置に存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紙製断熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−269798(P2010−269798A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120631(P2009−120631)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000152930)株式会社日本デキシー (14)
【Fターム(参考)】