説明

紙製本体における底部補強構造

【課題】紙製本体の底部補強構造として、エコロジーやリサイクルなどに通じ、軽量・省スペース・低価格・低輸送コストなどのメリットを維持でき、かつ、その底部の強度をより向上させることのできるものを提供する。
【解決手段】紙製本体11は複数の脚体21を底面外面に有し、各脚体21間にはフォークリフトのフォークを差し込むための逆凹形空間14がある。脚体21は板紙製のアウタ部材22・インナ部材26で構成される。中空体からなるアウタ部材22の内面に接着層25が形成されている。インナ部材26が三つ以上の立面壁を有する多面体からなる。一つのアウタ部材22の内には一つ以上のインナ部材26が配置されている。一つのインナ部材26の二つの立面壁がアウタ部材22の接着層25を有する内部両側面に接着されている。一つのアウタ部材22に複数の内部空間29がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙製梱包容器や紙製荷役用パレットなどの紙製本体についてその底部を改良した底部補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、貨物についてはこれを梱包して取り扱うことが広く実施されている。荷物の保管・構内作業・輸送などに際してパレット(荷台)が用いられることも当業者において周知である。
【0003】
上述した梱包資材としては、木製・金属製・プラスチック製(FRP製を含む)などの梱包容器がこれまでに数多く提供されている。パレットについても、木製や金属製のものが種々提供されており、近年などはプラスチック製のものも増える傾向にある。しかし主流をなしているのは依然として木製のパレットである。
【0004】
一方、環境に配慮したエコロジーや省資源に通じるリサイクルを推進する観点からは、紙製の梱包容器や紙製のパレットも提供されるに至っている。紙製梱包容器や紙製荷役用パレットは、また、エコロジーやリサイクルの点を除いた場合でも軽量・省スペース・低価格・低輸送コストなどを満足させるので望ましい。
【0005】
しかしながら紙製梱包容器や紙製荷役用パレットの場合は、他の材質のものに比べて強度がかなり劣ることや、耐水性がきわめて乏しいことが大きなウイークポイントになっている。これに対し、下記の特許文献1〜2にみられる紙製荷役用パレットや紙製梱包箱には、そのような課題を解決する方向での改善がみられる。
【0006】
ちなみに特許文献1で図1に例示されたものの場合は、それぞれ紙製からなる複数の桁と多数の帯状板と二つの縁部材とを簀の子構造に組み立てることにより、パレットを構成している。特許文献1で他の図示例のものには、紙製の角筒体や紙製の角柱筒体を構成要素として用いることで、強度を高めるようにしたものもみられる。したがってこのような内容の当該文献技術は、紙製荷役用パレットの強度向上に貢献できるといえる。
【0007】
さらに特許文献2に示された技術では、二重にした箱底の裏面(外面)に多数の架台ブロックを接着することにより強化段ボール製梱包箱の一部を構成しているものである。特許文献2はこのほか、二つの角筒部を有する架台ブロックなども開示している。したがって特許文献2に開示された技術も、紙製梱包箱の強度向上に貢献できるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 03/043982 A1
【特許文献2】特開2007−284088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された紙製荷役用パレットの場合は、応分のパレット強度が確保されているので、貨物による圧縮荷重で簡単に破壊されるなどということがない。しかしながら使用中のパレット底面については、その底面側の各帯状板が直接接地するものである。ゆえに耐水性の乏しい紙製荷役用パレットが雨期(雨天)の雨水や不時の漏水で濡れた地面に遭遇したりするときには、濡れや吸水が生じてパレット強度が激減する。その結果、紙製荷役用パレットが荷台機能を喪失するという不具合が起こりがちになる。
【0010】
上記の対策として、パレット表面をプラスチック系の材料でコーティングしたりラッピングしたりすることが考えられる。しかしこれは、コストアップ要因になるばかりか、紙とプラスチックとが複合一体化したものになるゆえ、パレット廃棄後の紙の回収とそれを利用したリサイクルとが困難なものになる。
【0011】
特許文献2に開示された紙製梱包箱の場合は、箱底の裏面(外面)に多数の架台ブロックが設けられているので、箱底裏面が直接接地することがない。このような箱底持ち上げ状態のとき、たとえ箱の設置面に水気や水濡れがあっても、箱底が吸水して弱化することは起こりがたい。とはいえ、接地状態となる架台ブロック(紙製)の場合は水の影響をそのまま受けてしまうので、吸水などしたりして一挙に強度が低下し、架台ブロックの圧砕が生じることとなる。こうした架台ブロックの圧砕が生じた場合には、それが紙製梱包箱の底部破壊へと発展する。しかしそれ以前の問題として、架台ブロックが圧砕したことで梱包箱下へのフォーク差し込み(フォークリフト操業)が行えなくなるから、梱包物の取り扱いそのものが困難になってしまう。
【0012】
本発明はこのような技術上の課題に鑑み、エコロジー・リサイクルなどに通じる紙製梱包容器や紙製荷役用パレットなどの紙製本体について、軽量・省スペース・低価格・低輸送コストなどのメリットを維持しながら、その底部の強度をより向上させることのできる底部補強構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る「紙製本体における底部補強構造」は、所期の目的を達成するための課題解決手段として下記<01>〜<03>に提示する技術内容を特徴とするものである。
<01> 紙製梱包容器と紙製荷役用パレットとのうちから選択されたいずれか一つを紙製本体とするものであること、および、
複数の脚体が紙製本体の底面外面に取り付けられているとともに、その紙製本体の底面外面において相互に隣接する脚体の間には、フォークリフトのフォークを差し込むための逆凹形空間が介在していること、および、
それぞれの脚体が板紙製のアウタ部材と板紙製のインナ部材とを組み合わせたものからなること、および、
アウタ部材が板紙の折り込み形成物であって断面四角形の中空体からなり、かつ、その中空体からなるアウタ部材の内面に接着層が形成されていること、および、
インナ部材が板紙の折り込み形成物であって三つ以上の立面壁を有する多面体からなること、および、
アウタ部材とインナ部材との相対関係において、一つのアウタ部材の内には一つ以上のインナ部材が配置されているとともに、インナ部材の二つの立面壁がアウタ部材の接着層を有する内部両側面に接着されていること、および、
一つの脚体の内部に内部空間があること
を特徴とする紙製本体における底部補強構造。
<02> インナ部材が三つの立面壁を有する断面溝形の多面体からなる上記<01>に記載の紙製本体における底部補強構造。
<03> インナ部材が四つの立面壁を有する四角筒形の多面体からなる上記<01>に記載の紙製本体における底部補強構造。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る「紙製本体における底部補強構造」は、下記<11>〜<21>に提示するような効果を有している。
<11> 紙製本体やこれに設けられる脚体はいずれも紙製である。これは全体が実質紙製というものである。紙製の梱包容器や紙製の荷役用パレットについては既述のとおり、エコロジー・リサイクルなどに通じるだけでなく、軽量・省スペース・低価格・低輸送コストなどを満足させる。したがってこの底部補強構造を有する紙製本体も、他の材質のものと比較してこれらの点が望ましいといえる。
<12> 紙製本体は、複数の脚体が底面に取り付けられたことにより、その底面が直接接地しないで設置面から浮上するようになる。このように底面が設置面から浮上する紙製本体の場合、仮に水気や水濡れのある設置面に置かれても底部側からの吸水弱化は起こりがたい。したがって紙製本体は、水気や水濡れのある設置面から遊離する形での防水性を発揮するようになる。
<13> 紙製本体の底面において相互に隣接する各脚体の間には、フォークリフトのフォークを差し込むための逆凹形空間が介在している。したがって複数の脚体を有する紙製本体は、フォークリフト操業性も充足するものである。
<14> 紙製本体の底面に設けられた脚体は板紙製のアウタ部材と板紙製のインナ部材とを組み合わせたものからなる。一般に高強度の脚体は構造が複雑化しがちである。このような場合に脚体の構成部材を外側(アウタ部材)と内側(インナ部材)とに分けると、それぞれの部品ないし構成要素が単純化するためにつくりやすくなり、脚体全体の生産性も合理化するようになる。
<15> アウタ部材は板紙の折り込み形成物であり、かつ、断面四角形の中空体に形成されるものである。この中空体からなるアウタ部材の内面には接着層が形成されている。この接着層は、アウタ部材とインナ部材とを相対的に連結(固定)するために必要なものである。かかる接着層については、アウタ部材を折り込み形成する前の展開状態のときに、その内面に塗布するなどして簡単の形成することができる。それにアウタ部材内面への接着層形成であれば、事後、その接着層に触れないようにしてアウタ部材を折り込むことができるので、接着層形成後のアウタ部材の取り扱いも容易に行えることとなる。
<16> 脚体の外殻部分をになう断面四角形のアウタ部材は、四角形をなす周囲面が自明の四面で形成されていてそれぞれの一面が広いものである。かかるアウタ部材の場合は、紙製本体の底面に脚体を取り付けるときに、そのアウタ部材の広い一面を利用して脚体を安定かつ強固に取り付けることができる。
<17> インナ部材も板紙の折り込み形成物であるが、これは三つ以上の立面壁を有する多面体からなるものである。このような多面体の代表例をいくつかあげると、一つは断面溝形の多面体であり、他の一つは四角筒形の多面体である。この三つ以上の立面壁を有する多面体すなわちインナ部材は、垂直方向の圧縮荷重に対して座屈をきたすことなく当該荷重によく耐える。中空体からなるアウタ部材内にインナ部材が配置され、かつ、インナ部材の二つの立面壁がアウタ部材の接着層を有する内部両側面に接着される。こうしてアウタ部材とインナ部材とが一体化されて脚体が構成されたとき、インナ部材は脚体の内部にあってアウタ部材に高度の耐座屈性を付与する。したがって紙製本体の底面にあってその紙製本体を支持する脚体は、アウタ部材とインナ部材とが複合された高強度を発揮して紙製本体側からの圧縮荷重に十分に耐えるものとなる。一方で紙製本体も垂直荷重の集中する底部が高強度の脚体で補強されて破損しがたいものになる。
<18> アウタ部材の内面に形成された接着層には、水分の浸透を防止することのできる防水コートの機能がある。すなわちこれは、不測の事態で設置面が濡れたりして脚体が水と遭遇することがあっても、防水性のある接着層が脚体内部(アウタ部材内)への水分浸透を阻止するので、インナ部材には水濡れや吸水が生じがたいということである。ゆえに高度の湿りや水分などと遭遇するような使用条件下においても、耐座屈性のあるインナ部材が吸湿・吸水で弱化することなく本来の強度を維持し続けるようになり、その結果、紙製本体やその内包物をより確実に防護できるようになる。
<19> アウタ部材内面の接着層は上記のとおり、アウタ部材とインナ部材とを相対的に接着固定する機能のほか、脚体要部の防水機能をも兼備するものである。これは一つの構成要素で二つの機能がまかなえるのであるから、物品を構成したり製作したりする観点からみて経済性があるといえる。しかもアウタ部材の内面全域に形成される接着層は、アウタ部材内に配置されるインナ部材がどの位置にあってもこれを接着することができる。接着層は、また、アウタ部材内に配置されるインナ部材の多寡にかかわらず、いずれのケースでも接着自在に対応するから、脚体を構成する際のアウタ部材とインナ部材との組み立てが楽に行え、インナ部材の箇数に関する態様の変更も容易に実施できるようになる。
<20> 脚体を組み立てる前のとき、アウタ部やインナ部材の折り込み状態を事前に固定しておく必要はない。それは脚体組立時に両部材相互が接着されることで、アウタ部材やインナ部材の折り込み状態も同時に固定されるからである。したがって、アウタ部材内面の接着剤を利用してアウタ部材とインナ部材とを組み合わせるとき(すなわち脚体を組み立てるとき)は、かかる工程作業がきわめて合理的に行える。
<21> 倉庫などに長期保管されたりする紙製本体(紙製梱包容器または紙製荷役用パレット)についていうと、内外に自由に出入りできるような空間構造があるものでは、その空間が害虫発生の原因になったり鼠の営巣場所になったりするといわれている。かかる観点からした場合、アウタ部材とインナ部材とで構成された脚体も内部空間を有するものである。しかしながらこれに対しては、インナ部材の二つ立面壁をアウタ部材の両端部に配置することでアウタ部材の両端開口部を完全に密閉し、内部空間への有害生物の内外出入りを完全に遮断することができる。したがって脚体は、有害生物対策を簡単に講じることができるので望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の紙製本体における底部補強構造について、その第一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1の底部補強構造における脚体の各種配置態様を示した底面図である。
【図3】図1の底部補強構造における脚体の要部分解斜視図とアウタ部材およびインナ部材の展開端面図である。
【図4】図1の底部補強構造における要部縦断正面図である。
【図5】図1の底部補強構造における要部縦断側面図である。
【図6】本発明の紙製本体における底部補強構造について、脚体用のインナ部材に関する他の例を示した平面図である。
【図7】本発明の紙製本体における底部補強構造について、他の一実施形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る「紙製本体における底部補強構造」については、図1〜図5が第一の実施形態を示し、図7が第二実施形態を示すものである。
【0017】
第一実施形態を示す図1〜図6において、11は紙製本体を示し、21は脚体を示すものである。
【0018】
図1〜図5に示された紙製本体11は公知ないし周知の紙製梱包容器からなるものである。代表的一例でいうと、紙製本体11は段ボールのような厚紙製(板紙製も含む)の容器からなる。図1に例示された厚紙製の紙製本体11は、四角筒状をなす胴部12の上端側には、複数枚たとえば四枚の開閉片からなる蓋体13が折り曲げ開閉自在に一体形成されているものである。このような蓋体13は、紙製本体11の上面に代えて他の面に設けられてもよく、たとえば紙製本体11の前面(正面)・後面(背面)・右側面・左側面のいずれかに設けられてよいものである。この紙製本体(紙製梱包容器)11の他の一例としては、複数枚の開閉片からなる上記の蓋体が紙製本体11の底部側にも形成されているものがある。また、一体形成された蓋体13をもたない上面開放型の紙製本体11においては、胴部12の上端側と脱着自在に対応する別体形成の蓋体たとえば被せるタイプの蓋体がこれに組み合わされたりする。
【0019】
図1〜図6の実施形態において、脚体21は板紙製のアウタ部材22と板紙製のインナ部材26とを組み合わせたものからなる。したがって脚体21は板紙製である。この板紙としては段ボール原紙・白板紙・チップボール・黄ボールなど公知ないし周知のものが用いられる。段ボール原紙は茶色の板紙で四層〜五層の多層抄きのものである。段ボール原紙について単位面積あたりの重さでいうと、180g/m〜350g/m程度である。白板紙は外観上白く見える板紙でボール紙ともいわれる。白板紙について単位面積あたりの重さでいうと、190g/m〜600g/m程度である。チップボールは雑誌古紙や新聞古紙を原料とするネズミ色(灰色)の板紙である。黄ボールは稲藁や麦藁を原料とする黄色の板紙である。もちろん、アウタ部材22やインナ部材26については、これら以外の板紙からなるものであってもよい。とくに最近の再生紙製造技術でつくられるものでいえば、三層ないし八層などの多層構造の板紙が望ましい。
【0020】
アウタ部材22の主体をなす板紙は代表的一例として長方形をしており、その板紙内面には、これを内側に向けて折り込むための複数の溝部23a〜23dが形成されている。したがってアウタ部材22は、各溝部23a〜23dで区画された複数の板面部24a〜24eを有するものである。もちろんこれらの板面部24a〜24eにつていは、それぞれ溝部23a〜23dの箇所から内側に折り込むことができるものである。この場合の各溝部23a〜23dについていうと、それは図示例のごときV字状であったり図示しないU字状であったりして板紙内面を要所要所で凹ませているものである。ちなみにV字角が90度に設定された各溝部23a〜23dの場合は、各板面部24a〜24eを内側へと折り込んで該各溝部23a〜23dが閉じた状態になったとき、各板面部24a〜24eの折り込み角度がちょうど90度に仕上がるので望ましい。さらに、アウタ部材22の内面には接着層25が形成されており、その接着層25が各溝部23a〜23d内にも行きわたっている。接着層25には自明の接着性ないし粘着性がある。接着層25を形成するための接着剤については、水性もしくは水性エマルジョン型(酢酸ビニールエマルジョン型・アクリル共重合エマルジョン・水性イソシアネートなど)、溶剤型(樹脂系溶剤型・溶剤ゴム系型・ウレタン系型・樹脂系粘着剤型など)、無溶剤型(エポキシ系・ウレタン系・ホットメルト・シアノアクリレート・光硬化型など)のうちから任意ものを選定して使用することができる。その代表的一例として、サイビノール(登録商標)のような酢酸ビニールエマルジョン型接着剤が用いられて接着層25が形成される。
【0021】
インナ部材26の構成要素である板紙も代表的一例として長方形の板状をしており、その板紙内面には板紙折り込み用とした複数の溝部27a〜27dが形成されている。ゆえにインナ部材26も、各溝部27a〜27dで区画された複数の板面部28a〜28eを有しており、これら板面部28a〜28eも各溝部27a〜27dの箇所から内側に向けて折り込むことができるものである。この場合の各溝部27a〜27dも、V字角90度のようなV字状とか、または、U字状とかのような形状をしていて、板紙内面を要所要所で凹ませている。これ以外に関していうと、上記アウタ部材22で述べたと同様の接着層がインナ部材26の外面(板紙外面)にも形成されることがある。
【0022】
アウタ部材22は板面部24a〜24eを角筒状に折り込むことで断面四角形の中空体に形成されるものである。インナ部材26については、アウタ部材22を中空体に形成する過程で複数のものがアウタ部材22内の適所に配置される。具体的一例では、つぎのようなステップで脚体21が組み立て構成される。
[第1ステップ]
はじめの段階でのアウタ部材22は平坦な展開状態に保持される。この展開状態のアウタ部材22については、各板面部24a〜24eのうちのいずれが脚体21の底部になるのであるが、多くのケースでは、板面部24d・24e以外の板面部24a〜24cから選択された一つが脚体21の底部になる。その一例として図示の場合は板面部24aが脚体21の底部になるように設定されている。一つのアウタ部材22に対して複数あてがわれるところの各インナ部材26は、それぞれ板面部28a〜28eが折り込まれて角筒状のものになる。より具体的にいうと、角筒状をなすそれぞれのインナ部材26は、板面部28a〜28eによる各周壁がすべて立面壁として立ち上がり、かつ、上下両面が壁面のない開口状態となるものである。
[第2ステップ]
上記展開状態のアウタ部材22において、脚体底部用板面部24aの内面には複数のインナ部材26が配置されてそれが互いに隣接するものである。この隣接する各インナ部材26は隣接空間を介在して互いに離れていてよく、あるいは、その逆に相対接触していてよいのであるが、図示の一例では、各インナ部材26が隣接空間を介在して互いに離れている。図示例では、また、各インナ部材26の各板面部28a・28d・28eが脚体底部用板面部24aの両側の溝部27a・27bに沿うものとなる。さらに、脚体底部用板面部24aの長さ方向の一端部側や他端部側に配置された二つのインナ部材26については、当該両インナ部材26の板面部28bまたは28cが脚体底部用板面部24aの一端縁や他端縁と一致するものである。こうして板面部24aの内面上に配置されるそれぞれのインナ部材26は、板面部24aの内面に接着層25が形成されているので、みだりにずれ動くことなく所定の位置を保持する。
[第3ステップ]
アウタ部材22のはじめの折り込みステップでは、板面部24aの両側に連なる両板面部24b・24cが、各溝部23a・23bのところで内向きかつ直角に折り曲げられて直立する。かくて、アウタ部材22の両板面部24b・24c(内面)とこれに対応したインナ部材26の各板面部28a・28d・28e(外面)とが互いに面接触する。よって、互いに面接触するこれら各板面部24b・24c・28a・28d・28eは、両板面部24b・24cの内面にある接着層25を介して相対接着(相互固定)されることとなる。
[第4ステップ]
アウタ部材22のつぎなる折り込みステップでは、両板面部24b・24cにそれぞれ連なる板面部24d・24eが、各溝部23c・23dのところでそれぞれ内向きかつ水平に折り曲げられて各インナ部材26の上面に被さる。こうした場合もアウタ部材22の両板面部24d・24e(内面)とこれに対応したインナ部材26の上端面とが互いに面接触するから、双方の接触面が両板面部24d・24eの接着層25で相対接着されることとなる。
【0023】
上記のような各ステップを経て組み立てられたアウタ部材22とインナ部材26との組立構成物すなわち脚体21は、立方体ブロック・直方体ブロック・棒状角材など、このいずれかの外観を呈するものである。その一方でアウタ部材22の内部には、あらかじめインナ部材26が有していた空間、および/または、インナ部材26で仕切られた空間が介在するものである。すなわちアウタ部材22は、その内部にインナ部材26を介在させたことで内部空間29を有するものとなる。この内部空間29は単数・複数のいずれでもよいが、単数の場合は必然的に内部空間29が大きなものになる。また、複数の場合でも、多数(三つ以上)の場合は、内部空間29が小さくなる傾向を示すものとなる。さらにいうと、内部空間29は脚体21のものでもある。この脚体21が望ましいのは、その内部に多くの空間を内在させていて軽量なことである。かかる脚体21が後述のようにして紙製本体11の底部に取り付けられたとき、アウタ部材22が水平材の機能をはたし、複数のインナ部材26が垂直材の機能をはたすものとなる。以下、脚体21が紙製本体11の底部に取り付けられることについて説明する。
【0024】
図1および図2(A)に例示された実施形態では、紙製本体11の底部外面における中央部や両側部に、長い棒状角材の形状をなす複数(三本)の脚体21があてがわれてそこに取り付けられているものである。この際の取付手段としては、接着剤による接着(図示せず)や紙止め用の金具(例:ステープル)による金具止め(図示せず)などが採用される。これについては、接着の単独使用・金具止めの単独使用・接着と金具止めとの併用などが適宜選択されるが、図示例の取付手段でいうと接着が単独採用されている。
【0025】
図1および図2(A)を参照して、複数の脚体21が取り付けられた紙製本体11の底部外面には、フォークリフト(図示せず)のフォークを差し込むための逆凹形空間14が相互に隣接する脚体21の間に介在している。この図示例で逆凹形空間14は、紙製本体11の前後方向に沿うものが二つあり、それが互いに平行しているものである。この逆凹形空間14は、そこにフォークリフトのフォーク(通常二本)を差し込むのであるから、互いに平行するものが二つ以上あればよいこととなる。もちろんこの図示の脚体取付態様は一例にすぎない。これに関しては、脚体21の他の取付態様が図2(B)(C)に示されているので、それをつぎに説明する。
【0026】
図2(B)に示された実施形態の場合、紙製本体11の底部外面において、十二の脚体21が前後左右に列をなして取り付けられている。この図示例で各脚体21の隣接部間に介在する逆凹形空間14は、紙製本体11の前後方向に沿うものが二つあり、かつ、紙製本体11の左右方向に沿うものが二つありから、合計四つの逆凹形空間14が存在することとなる。
【0027】
図2(C)に示された紙製本体11の底部外面には、五つの脚体21が四隅と中央に分散して取り付けられている。この図示例も図2(B)の場合と同様、前後方向に沿う複数の逆凹形空間14や左右方向に沿う複数の逆凹形空間14がそれぞれある。図2(C)の変形例として、紙製本体11の底部外面中央にある脚体21が省略されることもある。
【0028】
上記実施形態で示された紙製本体11は梱包容器であるから、周知の用法にしたがい、梱包の対象となる物品が内部に詰め込まれるものである。この梱包を終えた紙製本体11は、倉庫に保管されたりそこから取り出されたりするほか、一次的は屋外に設置されたりすることもある。
【0029】
梱包容器たる紙製本体11の底部には既述の脚体21がある。したがって当該紙製本体11屋内や屋外に設置されたときは、紙製本体11の底部でなく、脚体21が設置面と接することとなる。こうしたときの紙製本体11の底部と設置面との間に逆凹形空間14が介在するから、紙製本体11の取り扱いに際してフォークリフトで紙製本体11を運搬するときには、フォークリフトのフォークが逆凹形空間14内に差し込まれて紙製本体11の底部にあてがわれ、この状態で紙製本体11がフォークリフトにより運搬されることとなる。
【0030】
上述した実施形態において、脚体用インナ部材26として採用することができるものの他例を、図6に基づき説明する。
【0031】
図6(A)のインナ部材26は各板面部28a〜28cがすべて立面壁として立ち上がるものである。したがって図6(A)のインナ部材(複数)26が適当間隔でアウタ部材22内に配置されたとき、該各インナ部材26は平面溝形となり、かつ、板面部28b・28cがアウタ部材22の両側内面に接着されることとなる。さらに、この場合の各インナ部材26は、溝形が向き合ったり、その反対の向きになったり、その両方であったりする。ただし板面部28aについては、アウタ部材22の両端開口部を塞ぐような態様で使用されるのが望ましい。図6(A)のインナ部材(複数)26とアウタ部材22との組み合わせで構成された脚体21の場合は、複数のインナ部材26で仕切られた内部空間29を有するものとなる。
【0032】
図6(B)のインナ部材26も、各板面部28a〜28gがすべて立面壁として立ち上がるものである。図6(B)のインナ部材26は、そのサイズいかんでアウタ部材22内に一つだけ配置されたり、または、複数のものが配置されたりする。その場合にアウタ部材22の内面に接着されるのは、二つの板面部28b・28cであったり、三つの板面部28a・28d・28eであったりする。この図6(B)のインナ部材26とアウタ部材22との組み合わせで構成された脚体21の場合、インナ部材26の内部空間が脚体21の内部空間29の一部または全部をになうこととなる。
【0033】
図6(C)のインナ部材26も、各板面部28a〜28eがすべて立面壁として立ち上がるものである。このインナ部材26については、二つの板面部28d・28eが互いに接着されて用いられることがある。図6(C)のインナ部材26も、そのサイズいかんでアウタ部材22内に一つだけ配置されたり、または、複数のものが配置されたりする。その場合にアウタ部材22の内面に接着されるのは、二つの板面部28b・28cであったり、二つの板面部28a・28d(28e)であったりする。この図6(C)のインナ部材26とアウタ部材22との組み合わせで構成された脚体21の場合も、インナ部材26の内部空間が脚体21の内部空間29の一部または全部をになうこととなる。
【0034】
図6(D)のインナ部材26は、箱形中空の六面体からなるものである。図6(D)のインナ部材26も、そのサイズいかんでアウタ部材22内に一つだけ配置されたり、または、複数のものが配置されたりする。その場合に、互いに対面する二つの板面部、たとえば「28aと28d」、「28bと28c」、「28eと28f」のいずれかがアウタ部材22の内面に接着される。この図6(D)のインナ部材26とアウタ部材22との組み合わせで構成された脚体21の場合も、インナ部材26の内部空間が脚体21の内部空間29の一部または全部をになうこととなる。
【0035】
第二実施形態を示す図7において、この場合の紙製本体11は紙製のパレットからなるものである。
【0036】
紙製パレットからなる図7の紙製本体11について、その代表的は一例は扁平四角形をしているものである。さらにいうと、上下両面や四つの周囲面(前後両面・左右両側面)がいずれも密閉された中空扁平の四角形をしており、その内部には、補強用の桁材が縦列状・横列状・格子状のいずれかの態様で設けられているものである。もちろんこの場合の紙製本体11については、その六面のうちの一つ以上の面が必要に応じて開口されていてよいものである。
【0037】
図7の脚体21については、前記実施形態で説明した図1〜図6のものと同様であってよい。すなわち図7の実施形態でも、前記実施形態で説明した各種脚体21のうちから任意のものが選択されて採用される。
【0038】
図7を参照して、紙製本体11の底部外面における中央部や両側部には、複数(三本)の脚体21があてがわれてそこに取り付けられている。かかる取付手段も、前記実施形態で説明した接着とか金具止とかであり、その際、接着の単独使用・金具止めの単独使用・接着と金具止めとの併用などが自由に選択される。具体的一例をあげれば、接着と金具止めとの併用で、複数の脚体21が紙製本体11の底部外面に取り付けられている。
【0039】
図7を参照して、各脚体21が取り付けられた紙製本体11の底部外面にも、フォークリフトのフォークを差し込むための逆凹形空間14が相互に隣接する脚体21の間に介在している。この逆凹形空間14を図7のケースよりも多くする場合は、紙製本体11の底部外面に三本以上の脚体21を取り付ければよいものである。その場合の逆凹形空間14の方向も前例と同様、前後方向・左右方向・前後左右の両方向など自由に設定できる。
【0040】
図1〜図6と実施形態と図7の実施形態との主たる相違は、一方の紙製本体11が紙製梱包容器、他方の紙製本体11が紙製パレットということである。したがって、図7の実施形態におけるその他の事項は、図1〜図6と実施形態と実質的に同じであるか、それに準ずるものである。また、図1〜図6と実施形態で述べたすべての事項は、技術的互換性の範囲内で図7の実施形態にも適用することができ、それが実施されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る紙製本体の底部補強構造は、エコロジー・リサイクルなどの要件を満たしたり、軽量・省スペース・低価格・低輸送コストなどのメリットを維持したりしながら、その底部の強度をより向上させるものであるから、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0042】
11 紙製本体
12 紙製本体の胴部
13 紙製本体の蓋体
14 逆凹形空間
21 脚体
22 アウタ部材
23a 溝部
23b 溝部
23c 溝部
23d 溝部
24a 板面部
24b 板面部
24c 板面部
24d 板面部
24e 板面部
25 接着層
26 インナ部材
27a 溝部
27b 溝部
27e 溝部
27d 溝部
28a 板面部
28b 板面部
28c 板面部
28d 板面部
28e 板面部
29 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製梱包容器と紙製荷役用パレットとのうちから選択されたいずれか一つを紙製本体とするものであること、および、
複数の脚体が紙製本体の底面外面に取り付けられているとともに、その紙製本体の底面外面において相互に隣接する脚体の間には、フォークリフトのフォークを差し込むための逆凹形空間が介在していること、および、
それぞれの脚体が板紙製のアウタ部材と板紙製のインナ部材とを組み合わせたものからなること、および、
アウタ部材が板紙の折り込み形成物であって断面四角形の中空体からなり、かつ、その中空体からなるアウタ部材の内面に接着層が形成されていること、および、
インナ部材が板紙の折り込み形成物であって三つ以上の立面壁を有する多面体からなること、および、
アウタ部材とインナ部材との相対関係において、一つのアウタ部材の内には一つ以上のインナ部材が配置されているとともに、インナ部材の二つの立面壁がアウタ部材の接着層を有する内部両側面に接着されていること、および、
一つの脚体の内部に内部空間があること
を特徴とする紙製本体における底部補強構造。
【請求項2】
インナ部材が三つの立面壁を有する断面溝形の多面体からなる請求項1に記載の紙製本体における底部補強構造。
【請求項3】
インナ部材が四つの立面壁を有する四角筒形の多面体からなる請求項1に記載の紙製本体における底部補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76806(P2012−76806A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224657(P2010−224657)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(592066882)
【出願人】(310016289)
【Fターム(参考)】