説明

紙送りロール

【課題】低硬度で、耐摩耗性および紙送り性に優れるとともに、耐紙粉付着性にも優れた紙送りロールを提供する。
【解決手段】軸体1の外周面に、下記の(A)〜(D)成分を含有するウレタン組成物の硬化体からなるウレタンエラストマー層2が形成された紙送りロールであって、下記(A)成分中のポリプロピレングリコールのモノオール含有量が1重量%以下であり、かつ、それ自体の硬度が50°以下である。
(A)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、ポリプロピレングリコール(PPG)とを、PTMG/PPG=99/1〜50/50の重量比で混合してなるポリエーテルポリオール。
(B)ポリイソシアネート。
(C)鎖延長剤。
(D)可塑剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙送りロールに関するものであり、詳しくは、複写機,ファクシミリ,プリンター等のOA機器において、ピックアップロール,フィードロール,リタードロール等の給紙ロールや、搬送ロール等として用いられる紙送りロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機等のOA機器に用いられる給紙ロール、搬送ロール等の紙送りロールにおいては、近年、用紙の多様化ニーズが進んでおり、薄い用紙,厚い用紙,表面がざらついた用紙,表面に光沢のある用紙,和紙のような繊維の粗い用紙等、様々な用紙が使用可能であることが要求されている。そして、これら様々な用紙に対応して、確実に紙を捉え、かつ送り出すためには、紙送りロールの低硬度化が有効であるとともに、高摩擦係数、耐摩耗性および耐紙粉付着性が変化せず、長期にわたって安定した紙送り性を確保することが、ますます重要となってきている。
【0003】
そこで、本発明者らは、高い摩擦係数を得ることができ、しかも耐摩耗性に優れた紙送りロールを得るため、エーテル系ポリオール材料を中心に鋭意研究を重ねた結果、エーテル系ポリオールのなかでも高強度であるPTMGに、PPGを所定の重量比でブレンドしてなる特定のポリエーテルポリオールを用いると、上記問題を解決できることを突き止め、このような紙送りロールについて、先に特許出願した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−68515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、本出願人の出願に係る上記特許文献1の内容についてさらに改良を図るため研究を続けた結果、この紙送りロールは、高い摩擦係数を得ることができ、耐摩耗性に優れているが、耐久後に紙粉が付着する傾向がみられた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低硬度で、耐摩耗性および紙送り性に優れるとともに、耐紙粉付着性にも優れた紙送りロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の紙送りロールは、軸体の外周面に、下記の(A)〜(D)成分を含有するウレタン組成物の硬化体からなるウレタンエラストマー層が形成された紙送りロールであって、下記(A)成分中のポリプロピレングリコールのモノオール含有量が1重量%以下であり、かつ、それ自体の硬度が50°以下であるという構成をとる。
(A)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、ポリプロピレングリコール(PPG)とを、PTMG/PPG=99/1〜50/50の重量比で混合してなるポリエーテルポリオール。
(B)ポリイソシアネート。
(C)鎖延長剤。
(D)可塑剤。
【0007】
すなわち、本発明者らは、低硬度で、耐摩耗性および紙送り性に優れるとともに、耐紙粉付着性にも優れた紙送りロールを得るため、ポリプロピレングリコール(PPG)に着目し、鋭意研究を重ねた。そして、PPG中のモノオールは、ポリイソシアネートと架橋反応せずに、フリー(未反応)で残る場合には、それ自身のブリードあるいは可塑剤のブリードを促進し、粘着性が高くなる一方、グラフト結合する場合は、ウレタン硬化物の結晶性が低下して、粘着性が高くなるという知見を得た。この知見に基づいて、さらに実験を続ける過程で、モノオール含有量が1重量%以下であるPPGを用いると、粘着性の増大に寄与する未反応のポリオール成分やグラフト結合の割合が小さくなり、粘着性を低減できるため、耐久後の紙粉の付着を防止でき、耐紙粉付着性に優れるとともに、低硬度で、耐摩耗性および紙送り性にも優れた紙送りロールが得られることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の紙送りロールは、PTMGとPPGとを所定の重量比で混合してなるポリエーテルポリオール(A成分)と、ポリイソシアネート(B成分)と、鎖延長剤(C成分)と、可塑剤(D成分)とを含有するウレタン組成物の硬化体からなり、かつ、上記PPGのモノオール含有量が1重量%以下であり、かつ、紙送りロールの硬度が50°以下であるため、低硬度で、耐摩耗性および紙送り性に優れるとともに、粘着性を低減でき、耐紙粉付着性にも優れている。
【0009】
また、上記特定のポリエーテルポリオール(A成分)中のPPGの数平均分子量(Mn)が、10000未満であると、製造時の注型性が良好となり、作業性が向上する。
【0010】
そして、分子構造中に含まれるベンゼン環の数が1個以下であるポリイソシアネート(B成分)を用いると、剛直なベンゼン環の構造が少なくなるため、さらに低硬度化が可能となる。
【0011】
また、上記A〜D成分とともに、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7(DBU)塩を用いると、反応性が高く、硬化度が上がるため、粘着成分となる未反応分が少なくなり、粘着性をより低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明の紙送りロールとしては、例えば、図1に示すように、軸体1の外周面にウレタンエラストマー層2が形成された構造のものがあげられる。
【0014】
本発明においては、上記ウレタンエラストマー層2が、下記の(A)〜(D)成分を含有するウレタン組成物の硬化体からなり、下記(A)成分中のPPGのモノオール含有量が1重量%以下であり、かつ、紙送りロールの硬度が50°以下であって、これが最大の特徴である。
(A)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、ポリプロピレングリコール(PPG)とを、PTMG/PPG=99/1〜50/50の重量比で混合してなるポリエーテルポリオール。
(B)ポリイソシアネート。
(C)鎖延長剤。
(D)可塑剤。
【0015】
本発明の紙送りロールの軸体1は、特に制限するものではなく、例えば、金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体等が用いられる。そして、その材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等があげられる。なお、必要に応じて、上記軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布してもよく、また上記接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化してもよい。
【0016】
つぎに、上記軸体1の外周面に形成されるウレタンエラストマー層2は、前述のように、特殊なウレタン組成物の硬化体から構成されている。
【0017】
上記特定のポリエーテルポリオール(A成分)は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、ポリプロピレングリコール(PPG)とを、所定の重量比で混合したものである。
【0018】
上記ポリプロピレングリコール(PPG)は、モノオール含有量が1重量%以下のものを用いる必要があり、モノオール含有量が0.5〜1重量%の範囲内のものを用いることが好ましい。すなわち、PPGのモノオール含有量が1重量%を超えると、ブリードが発生しやすくなり、また、結晶性が低下し、粘着性が高くなるため、耐紙粉付着性が劣るからである。
【0019】
なお、上記モノオール含有量値は、JIS K 1557に記載の総不飽和度に基づいて、下記の数式(1)により求めることができる。
【0020】
【数1】

【0021】
上記PPGの数平均分子量(Mn)は、10,000未満が好ましく、特に好ましくは4000〜6000の範囲内である。すなわち、PPGのMnが10,000以上であると、粘度が高くなるため、製造の際には気泡を巻き込みやすくなり、注型性が劣る傾向がみられるからである。
【0022】
また、上記PPGとともに用いられるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)の数平均分子量(Mn)は、通常、1000〜5000の範囲内であり、好ましくは1500〜3000の範囲内である。
【0023】
ここで、上記ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、ポリプロピレングリコール(PPG)の重量比は、PTMG/PPG=99/1〜50/50の範囲に設定する必要があり、好ましくはPTMG/PPG=90/10〜60/40である。すなわち、PPGの重量比が1未満である(PTMGの重量比が99を超える)と、ウレタン硬化物の結晶性が高くなり、硬度が高くなるため、高摩擦係数が得られず、逆にPPGの重量比が50を超える(PTMGの重量比が50未満である)と、耐摩耗性が悪化するとともに、粘着性が高くなり、耐紙粉付着性が劣るからである。
【0024】
つぎに、上記特定のポリエーテルポリオール(A成分)とともに用いられるポリイソシアネート(B成分)としては、分子構造中に含まれるベンゼン環の数が1個以下であるものが好ましく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、上記ポリイソシアネート(B成分)は、これらに限定されるものではなく、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、カルボジイミド変性MDI等を用いても差し支えない。
【0025】
上記特定のポリエーテルポリオール(A成分)の水酸基のモル数(a)と、ポリイソシアネート(B成分)のモル数(b)との比は、a/b=1.0/1.5〜1.0/3.5の範囲が好ましい。
【0026】
上記特定のポリエーテルポリオール(A成分)およびポリイソシアネート(B成分)とともに用いられる鎖延長剤(C成分)としては、通常のウレタン組成物に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール等の、分子量300以下のポリオールがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、耐摩耗性および低へたり性の点で、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、トリメチロールプロパン(TMP)が好ましい。
【0027】
上記鎖延長剤(C成分)の配合量は、鎖延長剤(C成分)の水酸基のモル数(c)と、上記特定のポリエーテルポリオール(A成分)とポリイソシアネート(B成分)とからなる特殊なウレタンプレポリマー(以下、単に「ウレタンプレポリマー」と略す)中のイソシアネートのモル数(u)との比が、u/c=100/75〜100/105の範囲になるよう配合することが好ましく、特に好ましくはu/c=100/85〜100/99の範囲である。すなわち、上記鎖延長剤(C成分)の水酸基のモル数(c)の比が75未満であると、硬度が高くなりすぎ、摩耗係数が低くなり、逆に鎖延長剤(C成分)の水酸基のモル数(c)の比が105を超えると、架橋密度が低下し、摩耗性が悪化するからである。
【0028】
つぎに、上記A〜C成分とともに用いられる可塑剤(D成分)としては、例えば、ジブチルカルビトールアジペート,ジブチルジグリコールアジペート(BXA)等のアジピン酸誘導体、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸誘導体、ジオクチルセバケート(DOS)等のセバシン酸誘導体、トリブチルホスフェート(TBP),トリブトキシエチルホスフェート(TBXP),トリオクチルホスフェート(TOP),トリフェニルホスフェート(TPP)等のリン酸誘導体、ポリエステル誘導体、ポリエーテルエステル誘導体、ポリエーテル誘導体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、相溶性や低硬度化の点で、ジブチルカルビトールアジペート、ポリエステル誘導体、ポリエーテルエステル誘導体が好適に用いられる。
【0029】
また、上記可塑剤(D成分)の配合量は、摩擦係数、耐摩耗性の観点から、上記ウレタンプレポリマー100重量部(以下「部」と略す)に対して5〜50部の範囲内が好ましく、特に好ましくは30〜40部の範囲内である。すなわち、可塑剤(D成分)の配合量が5部未満であると、紙送りロールの硬度が高くなり、紙送り性が悪くなる傾向がみられ、逆に50部を超えると、可塑剤(D成分)がブリードアウトする傾向がみられるからである。
【0030】
なお、本発明に用いられるウレタン組成物には、上記A〜D成分に加えて、触媒、イオン導電剤、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、着色剤、充填剤、安定剤、離型剤等を適宜配合しても差し支えない。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0031】
上記触媒としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7(DBU)のフェノール塩,DBUのギ酸塩等のDBU塩や、テトラエチレンジアミン(TEDA)等のアミン系触媒等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性が高く、粘着性をより低減できる点で、DBU塩が好適に用いられる。
【0032】
また、上記触媒の配合量は、上記ウレタンプレポリマー100部に対して0.005〜1.0部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1部の範囲内である。
【0033】
上記イオン導電剤としては、例えば、テトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウム,ドデシルトリメチルアンモニウム(ラウリルトリメチルアンモニウム等),オクタデシルトリメチルアンモニウム(ステアリルトリメチルアンモニウム等),ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム,変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,硫酸塩,アルキル硫酸塩,カルボン酸塩,スルホン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,トリフルオロメチル硫酸塩,スルホン酸塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、アルキル硫酸の第四級アンモニウム塩および多塩基カルボン酸の第四級アンモニウム塩が、連続通電時の抵抗上昇が小さいため好適に用いられる。また、ホウ酸エステル化合物を用いることも可能である。
【0034】
また、上記イオン導電剤の配合量は、上記ウレタンプレポリマー100部に対して3部以下が好ましく、特に好ましくは0.1〜3部の範囲内である。
【0035】
ここで、前記ウレタンエラストマー層2を形成するウレタン組成物は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、PTMGとPPGとを、所定の重量比で混合してなるポリエーテルポリオール(A成分)を、所定の条件(好ましくは80℃×1時間)にて真空脱泡、脱水する。つぎに、ポリイソシアネート(B成分)を混合し、窒素雰囲気下で所定の条件(好ましくは80℃×3時間)にて反応させ、末端にイソシアネート(NCO)基を有するウレタンプレポリマーを作製する。そして、このウレタンプレポリマーに対して鎖延長剤(C成分)、可塑剤(D成分)および必要に応じて触媒等を配合することにより、ウレタン組成物を得ることができる。
【0036】
なお、上記ウレタン組成物の調製は、上記のようなプレポリマー法が好ましいが、これに限定されるものではなく、全ての成分を一度に混合して硬化させるワンショット法や、セミワンショット法等を適用しても差し支えない。
【0037】
前記図1に示した本発明の紙送りロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、軸体1となる芯金をセットした紙送りロール成形用金型を準備し、これを所定温度(好ましくは140℃)に加熱する。ついで、この金型内に前述の方法で調製したウレタン組成物を注型し、所定の条件(好ましくは140℃×30分間)で硬化反応させて硬化体を得る。得られた硬化体を脱型し、所定の条件(好ましくは110℃×12時間)で2次硬化させた後、表面を研磨することにより、図1に示したような、軸体1の外周面にウレタンエラストマー層2が形成されてなる紙送りロールを得ることができる。
【0038】
このようにして得られた紙送りロールのウレタンエラストマー層2の厚みは、通常、1〜8mmであり、好ましくは3〜6mmである。
【0039】
本発明の紙送りロールは、硬度が50°以下でなければならず、好ましい硬度は30〜45°の範囲内である。すなわち、紙送りロールの硬度が50°を超えると、紙送り性が悪くなるからである。
【0040】
なお、紙送りロールの硬度は、タイプAデュロメーターで荷重9.8Nにて測定した値である。
【0041】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0042】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0043】
〔PPG−A〕
旭硝子社製、PREMINOL S 3005(モノオール含有量:0.8重量%、Mn:5000、官能基数:3、総不飽和度:0.0048meq/g)
【0044】
〔PPG−B〕
旭硝子社製、PREMINOL S 3006(モノオール含有量:0.96重量%、Mn:6000、官能基数:3、総不飽和度:0.0048meq/g)
【0045】
〔PPG−C〕
旭硝子社製、N−PREMINOL X4002(モノオール含有量:1.00重量%、Mn:4000、官能基数:2、総不飽和度:0.005meq/g)
【0046】
〔PPG−D〕
旭硝子社製、N−PREMINOL X4000(モノオール含有量:0.50重量%、Mn:2000、官能基数:2、総不飽和度:0.005meq/g)
【0047】
〔PPG−a〕
旭硝子社製、PREMINOL 3005(モノオール含有量:3.3重量%、Mn:5000、官能基数:3、総不飽和度:0.02meq/g)
【0048】
〔PPG−b〕
旭硝子社製、PREMINOL 3006(モノオール含有量:4.0重量%、Mn:6000、官能基数:3、総不飽和度:0.02meq/g)
【0049】
〔PPG−c〕
旭硝子社製、PREMINOL 3010(モノオール含有量:10.0重量%、Mn:10000、官能基数:3、総不飽和度:0.03meq/g)
【0050】
〔可塑剤A〕
ポリエーテルエステル誘導体(旭電化社製、アデカサイザーRS700)
【0051】
〔可塑剤B〕
ジブチルカルビトールアジペート(旭電化社製、アデカサイザーRS705)
【0052】
〔鎖延長剤〕
1,4−ブタンジオール(1,4−BD)
【0053】
〔鎖延長剤〕
トリメチロールプロパン(TMP)
【0054】
〔触媒〕
テトラエチレンジアミン(TEDA)
【0055】
〔触媒〕
DBU−フェノール塩
【0056】
〔触媒〕
DBU−ギ酸塩
【実施例】
【0057】
〔実施例1〜7、比較例1〜10〕
(ウレタンプレポリマーの作製)
後記の表1〜表3に示すポリエーテルポリオールを80℃にて1時間真空脱泡、脱水した後、ポリイソシアネートを同表に示す割合で混合し、窒素雰囲気下で80℃にて3時間反応させ、末端にNCO基を有するウレタンプレポリマー(NCO含有率:3.0重量%、NCOインデックス:105)を作製した。
【0058】
(紙送りロールの作製)
軸体となる芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした紙送りロール成形用金型を準備し、これを140℃に加熱した。そして、上記ウレタンプレポリマーを90℃にて30分間真空脱泡した後、このウレタンプレポリマー100部に対して、可塑剤、鎖延長剤および触媒を同表に示す割合で配合して、減圧下で2分間攪拌混合したものを、上記金型内に注型し、140℃で30分間硬化反応させて硬化体を得た。得られた硬化体を脱型し、110℃にて12時間2次硬化させた後、表面を研磨することにより、軸体の外周面にウレタンエラストマー層(厚み5mm)が形成されてなる紙送りロールを得た。
【0059】
このようにして得られた実施例および比較例の紙送りロールを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を後記の表1〜表3に併せて示した。
【0060】
〔注型性〕
評価は、上記金型内への注型の際にエア巻き込みによる不良発生率が5%未満のものを○、エア巻き込みによる不良発生率が5%以上のものを×とした。
【0061】
〔硬度〕
紙送りロールの表面の硬度をタイプAデュロメーターで荷重9.8Nにて測定した。
【0062】
〔摩擦係数〕
各紙送りロールを搬送ロールとしてFRR方式の給紙システムを持った市販の複写機に組み込み、通紙搬送耐久試験を行った。初期および耐久後(50万枚搬送後)の紙送りロールを周速度200mm/secで、荷重2.9Nを負荷して紙の曲率が大きい試験機を用いて摩擦係数を測定した。
【0063】
〔紙送り性〕
各紙送りロールをFRR方式の給紙システムを持った市販の複写機に組み込み、紙送り性の評価を行った。評価は、INTERNATIONAL PAPER 社製のRAY紙を用いて、500枚通紙を行い、紙づまりが発生しなかったものを○、連続5枚以上紙づまりが発生したものを×とした。
【0064】
〔耐紙粉付着性〕
上記耐久後(50万枚搬送後)の紙送りロールの外観を、初期状態の紙送りロールと比較した。評価は、紙粉や紙の繊維がほとんどロールに付着していなかったものを○、ロール表面に紙粉や繊維がうすく付着したものを×、ロール表面に紙粉や繊維がびっしりと付着しており、擦ると紙粉が剥がれたものを××とした。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
上記結果から、実施例品はいずれも、モノオール含有量が1重量%以下のPPGを用いているため、粘着性を低減でき、耐紙粉付着性に優れるとともに、耐久後の摩擦係数も高く、紙送り性や注型性も良好であった。
【0069】
これに対して、比較例1品は、PTMGが少なく、PPGが多くなるようなブレンド比で混合しているため、耐久後の摩擦係数が低く、耐紙粉付着性が劣っていた。比較例2〜4品は、いずれもモノオール含有量が1重量%を超えるPPG−aを用いているため、耐久後の摩擦係数が低く、耐紙粉付着性が劣っていた。比較例5〜8品は、いずれもモノオール含有量が1重量%を超えるPPG−bを用いているため、耐久後の摩擦係数が低く、耐紙粉付着性が劣っていた。比較例9品は、モノオール含有量が1重量%を超え、かつ、分子量が高いPPG−cを用いているため、粘着性が高くなり、注型性および耐紙粉付着性が劣るとともに、耐久後の摩擦係数が低かった。比較例10品は、可塑剤を配合していないため、硬度が高く、紙送り性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の紙送りロールは、例えば、複写機,ファクシミリ,プリンター等のOA機器において、ピックアップロール,フィードロール,リタードロール等の給紙ロールや、搬送ロール等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の紙送りロールの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1 軸体
2 ウレタンエラストマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に、下記の(A)〜(D)成分を含有するウレタン組成物の硬化体からなるウレタンエラストマー層が形成された紙送りロールであって、下記(A)成分中のポリプロピレングリコールのモノオール含有量が1重量%以下であり、かつ、それ自体の硬度が50°以下であることを特徴とする紙送りロール。
(A)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、ポリプロピレングリコール(PPG)とを、PTMG/PPG=99/1〜50/50の重量比で混合してなるポリエーテルポリオール。
(B)ポリイソシアネート。
(C)鎖延長剤。
(D)可塑剤。
【請求項2】
上記(A)成分中のPPGの数平均分子量(Mn)が、10000未満である請求項1記載の紙送りロール。
【請求項3】
上記(B)成分のポリイソシアネートは、分子構造中に含まれるベンゼン環の数が1個以下である請求項1または2記載の紙送りロール。
【請求項4】
上記ウレタンエラストマー層が、上記(A)〜(D)成分とともに、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7(DBU)塩を含有するウレタン組成物の硬化体からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙送りロール。

【図1】
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【公開番号】特開2006−1713(P2006−1713A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180888(P2004−180888)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】