説明

紡績準備工程で綿花の如き繊維材料を分離して加工機械に供給する装置

【課題】紡績準備工程で綿花の如き繊維材料を空気透過面を用いて分離して加工機械に供給するに際して、空気透過面への繊維材料の局所的固着を防止して効率良く繊維塊の浄化を達成することができる装置の提供。
【解決手段】空気透過面26に衝突した繊維材料が衝突後自重によって落下するように構成すると共に、空気透過面26に対して繊維材料を反転可能に案内する可動部材27a、27bを具備した空気流案内装置27を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績準備工程で綿花の如き繊維材料を分離して加工機械に供給する装置であって、繊維材料のためのほぼ垂直なホッパが設けられており、その上部進入口に空気圧で繊維を供給する装置と、空気誘導によって繊維材料を空気から分離するための定置された空気透過面とが付属している装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の装置において、空気透過面はほぼ水平に配置された半円筒として形成されており、搬送通路が空気透過面に向かって接線方向に内部に開口しており、半円筒は下方に開いている。搬送通路は繊維材料搬送ファンに接続されており、半円筒の開いた出口がホッパの進入口に開口している。繊維空気流はほぼ繊維供給口から半円筒の湾曲した内壁面に沿って下方が開いた出口まで案内され、繊維材料はそこから下方のホッパに到達する。湾曲した空気透過面への衝突作用、ひいてはフロック空気混合物の除塵を高めるために、材料搬送ファンによって空気流を強化できる。その結果として、フロックが空気流によって空気透過面(スクリーン面)に固着されて、局所的に空気透過面上に集合する恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上記の短所を回避して、特にフロックすなわち繊維塊の浄化および除塵の程度が著しく高められて、かつ運転障害が回避された、冒頭に記載した種類の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、本発明により請求項1の特徴部に記載された特徴によって解決される。
【0005】
本発明によれば、特定の方向に可動な空気流を形成する装置は、フロックを含んだ空気流を空気透過面(分離壁)の延長上で横断方向に往復案内して、空気流中に含まれているフロックの強い衝突にもかかわらず、空気透過面上にフロックが集合するのを防ぎ、フロックが空気透過面に衝突した後に空気透過面から重力によって落下することを可能にする。フロックは、特に空気流がさらに漂流したとき、すなわち可能な固持作用がなくなったときに落下する。
【0006】
空気透過面が湾曲していることが合理的である。搬送通路が空気透過面に向かってほぼ接線方向に開口していることが好都合である。搬送通路が繊維材料搬送ファンに接続されていることが有利である。ホッパの下端部に少なくとも1つのテークオフローラが配置されていることが好ましい。少なくとも1つのフィードローラの下流に開繊ローラが配置されていることが合理的である。ホッパが繊維材料貯蔵器として働くことが好都合である。ホッパが光遮断器などの充填高さ調節装置を有していることが有利である。フィードローラまたはテークオフローラの一方または両方の回転数が調節可能であることが好ましい。
【0007】
マイクロコンピュータなどの電子制御調節装置が存在しており、これに少なくとも1つのフィードローラまたはテークオフローラの回転数の調節素子と、下流に接続されているカードに対するフロックホッパの充填量のための少なくとも1つの測定素子が接続されていることが合理的である。測定素子としてフロックホッパに電子圧力スイッチが存在していることが好都合である。制御調節装置に全カード生産の合計に基づいて基本回転数を調整する部材が接続されていることが有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示す除塵ラインでは、開俵機1、たとえばツリュツラー社のBLENDOMAT BDTとマルチミキサ5との間に、高性能コンデンサ2とその下流に接続された装入シャフト3および繊維材料搬送ファン4が配置されている。マルチミキサ5の下流には、繊維材料搬送ファン6、繊維材料分離器7、装入装置8およびマルチローラクリーナ9を経て本発明の装置10が配置されている。装置10には少なくとも1つのカードフィーダ11と少なくとも1つのカード12、たとえばツリュツラー社のEXACTACARD DKが接続されている。1aは繊維俵列を表している。上記の機械は空気圧導管13により互いに連通している。
【0009】
図2に示すように、綿花除塵設備においてマルチミキサ5の下流に2方向分配器14が配置されている。その導管13′、13″はそれぞれ下流に配置されているのこ刃クリーナ9′もしくは9″、たとえばツリュツラー社のCLEANOMAT CVTに続いており、その下流にそれぞれ本発明の装置10′もしくは10″が接続されている。装置10′、10″の下流にはカードフィーダ11′、11″と付属のカード12′、12″が続いている。42はダブルローラクリーナAXI−FLOを表している。
【0010】
図3に示すように、ほぼ垂直なホッパ15が設けられており、その下端部には低速回転する2つのフィードローラ16a、16b(テークオフローラ)とその下流に配置された高速回転する開繊ローラ17とが存在している。開繊ローラ17の針布面17aには、フィードローラ16a、16b(テークオフローラ)、幾つかのカバー18(図5参照)、および特に明度偏差および/または色偏差によって不純物を検知するための電子評価装置21(図4(A)参照)を備えた光学的センサ系19、たとえば走査カメラ20(CCDカメラ)が付属している。このセンサ系19は電子制御・調節装置22を介して不純物を分離するための装置23と連携している(図4(A)参照)。この装置23は、一時的に送風空気流を形成できる。この送風空気流は、針布面17aに向かって進んで吸引空気流を形成し、この吸引空気流が不純物をわずかな繊維と一緒に針布面17aから剥ぎ取って搬出する。
【0011】
ホッパ15の上部進入口には、空気圧で繊維を供給する装置として繊維材料搬送ファン25と、空気誘導によって繊維材料を空気から分離するための定置された空気透過面26と、可動部材を有する空気流案内装置27とが付属しており、空気流中に存在している繊維材料の反転可能な案内が空気透過面26上で横断方向前後に行われ、衝突に続いて繊維材料が本質的に重力によって空気透過面26から落下して、下方のホッパ15に進入する。ローラ16a、16bは二重機能を有している。すなわち、これらのローラはホッパ15から出る繊維材料のテークオフローラとして働くと同時に、繊維材料を開繊ローラ17に供給するためのフィードローラとして働く。黒い矢印は繊維材料を表し、白い矢印は空気を表し、半分黒い矢印は繊維を含んだ空気流を表している。
【0012】
図4(A)に示すように、カメラ20、たとえばカラー走査カメラを有する光学的センサ系19は、開繊ローラ17の斜め上方でホッパ15の外壁15aの近傍に配置されている。そうすることによってスペース節約型のコンパクトな構造が実現されている。カラー走査カメラ20は開繊ローラ17の針布17aに向けられていて、繊維材料中の有色の不純物、たとえば赤い繊維を検知する。カメラ20は開繊ローラ17の幅、たとえば1mにわたって全範囲を捕捉する。開繊ローラ17は湾曲した矢印17bの方向で時計と反対方向に回転する。回転方向17bで光学的センサ系19の下流に送風空気流を形成するための不純物分離装置23が配置されており、そのノズル23aは開繊ローラ17の針布面17aに向けて、強い空気噴射が一時的に針布面17aに対してほぼ接線方向に流れるように位置調整されている。センサ系19は評価装置21と電子制御・調節装置22を介して不純物分離装置23と連携しており、装置23にはバルブ制御装置24が付属している。カメラ20が比較値もしくは目標値に基づいて針布面17a上の繊維材料中に不純物を検知したら、バルブ制御装置24を介して短い衝撃空気が高速で針布17aに対して放出される。この衝撃空気は吸引空気によって針布17a上の繊維膜からわずかな繊維と一緒に不純物を剥ぎ取り、次いで運び去る。センサ系19は、図4(B)に示すように、位置固定のピボット軸受52を中心に内方および外方に旋回可能なケーシング51内に設けられている。
【0013】
図5に示すように、開繊ローラ17の針布面17aには中心点Mの斜め上方に2つのフィードローラ(テークオフローラ)16a、16bが付属している。回転方向17bで見て、その下流にカバー28、カバー部材29、開口部30、カバー部材31、開口部32およびカバー部材33が設けられている。不純物分離装置23には、圧縮空気源50が接続されている。バルブ制御装置24によって装置23内のバルブ(図示しない)が一時的に開き、ノズル23aを通って強い空気噴射D1が、たとえば15〜25m/secの高速で放出される。複数のノズル23aを有するノズルバー(図示しない)が開繊ローラ17の幅にわたって存在していることが合理的である。カバー29と、対向する誘導部材34の誘導面34aとは、互いに円錐形をなすように配置されており、狭隘部で互いに間隔aを有している。この間隔aを通ることによって圧縮空気流D2は、針布面17aに対してわずかな間隔で流れる。そうすることにより一種のウォータージェットポンプの原理で、吸引空気流F1が形成される。この吸引空気流は一時的に針布面17a上の繊維膜から局所的に少量の繊維を不純物と一緒に剥ぎ取る。誘導部材34は丸くされた先端部34bとそれに続く誘導面34cとを有している。誘導面34cは対向する転向部材35と共に、空気流F2が流れる通路36を形成している。通路37を通って圧縮空気流Gが開口部32に向かって流れて、針布面17aから繊維膜を剥がし、繊維空気流Hとして通路38から流出する。
【0014】
図6(A)に示すように、ホッパ15と光学的センサ系19の側方に箱状の空間39が配置されている。この箱状の空間39は壁39aに開口部を有しており、これに通路36が接続されている。繊維空気流F3は、空気流F3が膨張できる大きさを有する内部39eに進入する。ここで空気流F3の速度は著しく低減される。内部39eは分別された繊維材料と不純物のための捕集室でもある。壁面39a、39bおよび天井面39cは、大面積の空気を透過するスクリーン面を有している。内部39eから集められた綿ごみを取り除くために、壁面39bにはドア40、フラップなどが存在している。通路36と壁面39a内の開口部との間には、空気を透過するスライド41などが配置されている。スライド41はドア40を開き、もしくは閉じている場合に、両矢印の方向で移動可能である。空間39は高く、かつ上方に向けられており、それによってスペースが節約される。図6(B)に示すように、空間39は移動可能な台車として形成してもよく、このようにすれば通路36に連結または分離することができる。壁面39a、39bに対して直角に配置されている空間39のその他の壁面は図示されていない。
【0015】
図7(A)に示す実施例では、ホッパ15の壁15bの側方に、空気圧で繊維を供給する装置として繊維材料搬送ファン25が配置されている。繊維材料搬送ファン25は繊維空気流Aを導管43を通って空間44内に送り込む。空間44は空気誘導によって繊維材料Bを空気Cから分離するための定置された空気透過面26と、可動部材を備えた空気流案内装置27とを有している。この場合、空気流中に存在している繊維材料の反転可能な案内が空気透過面26上で横断方向前後に行われ、衝突に続いて繊維材料Bが本質的に重力によって空気透過面26から落下し、下方のホッパ15に進入する。黒い矢印Bは繊維材料を表し、白い矢印Cは空気を表し、半分黒い矢印Aは繊維を含んだ空気流を表している。空気透過面26は湾曲していて、ほぼ半円筒形に形成されている。搬送通路43の一方の端部は繊維材料ファン25に接続されており、他方の端部は定置された空気透過面26に向かってほぼ接線方向に内部44に開口している。
【0016】
集合容器44の下部範囲で壁面もしくはスクリーンとして形成された空気透過面26は中断されており、ホッパ15の上端部に開口している。運転中は空気圧搬送通路43を通って繊維空気混合物Aが空気透過面26に向かって過圧下で流れる。空気Cの一部が塵と一緒に空気透過面26の開口部を通ってケーシング45の内部に突入し、そこから接続導管46を通って吸引される。空気流Aは衝突後に一部が空気透過面26の湾曲した内面に沿って流れ、それによって空気透過面26も清掃される。空気透過面26の穴(開口部)は、塵を含んだ空気Cとフロックに含まれた比較的小さい不運物が通過するのには十分であるが、フロックA自体は通過できないような大きさに設定されている。
【0017】
図7(B)に示すように、繊維空気流Aの往復移動する案内は、片側が回転可能に支承された1対のフラップ27a、27bやウイングによって実施される。面が互いにほぼ平行に配置されているフラップ27a、27bは、モータ47などの駆動装置によって駆動される。通路43は、両フラップ27a、27bの間の空間に開口している。
【0018】
本発明は、ホッパ15が除塵設備(図1参照)内の繊維材料貯蔵器として働く構成も含んでいる。ホッパ15が光遮断器などの充填高さ調節装置を有していると合理的である。フィードローラ16a、16bの一方または両方の回転数が調節可能であると有利である。電子制御調節装置22、たとえばマイクロコンピュータが存在しており、これに少なくとも1つのフィードローラ16a、16bの回転数に対する調節素子と、その下流に接続されたカード12に対するフロックホッパ11の充填量に対する少なくとも1つの測定素子とが接続されていることが好ましい。フロックホッパ11における測定部材として、電子圧力スイッチが存在していることが有利である。制御調節装置22に、カード11の全生産の合計に基づいて基本回転数を調整する装置が接続されていることが合理的である。さらに、本発明は、たとえばマルチローラクリーナ9において、作業方向で上流に配置されている開繊ローラには光学的センサ系19が付属し、下流に配置されている開繊ローラには送風空気流を形成する装置が付属している構成形態を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】紡績準備設備(除塵及びカーディング)における本発明の装置の配置を示す略示側面図である。
【図2】本発明の装置が2組配置された紡績準備装置の一例を示す図1と同様の略示側面図である。
【図3】ホッパとその下流に配置された開繊ローラ、不純物検知・除去装置及び繊維材料分離器を含んで成る本発明の装置の一例を示す側面図である。
【図4】本発明の装置におけるホッパの側方に配置され、開繊ローラに向けて配置されたカメラを含んで成る光学的センサ系を説明する図であって、図4(A)は光学的センサ系全体を示す側面図、図4(B)はカメラが開繊ローラに対して離反接近可能に揺動する構造を示す側面図である。
【図5】本発明の装置における開繊ローラに対して接線方向に送風空気流を形成し、不純物を含んだ空気流を誘導する機構を説明する側面図である。
【図6】本発明の装置における空気膨張を利用して綿花ごみを捕集する機構を説明する図であって、図6(A)は機構全体を示す側面図、図6(B)は捕集室を連結又は分離可能な台車として構成した例を示す側面図である。
【図7】本発明の装置における供給された繊維材料を空気から分離する機構を説明する図であって、図7(A)は機構全体を示す側面図、図7(B)は図7(A)の線I−Iによる、可動な繊維・空気流案内装置とスクリーン面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 高速回転ローラで繊維材料を分離して加工機械に供給する装置(本発明)
15 ホッパ
16a、16b フィードローラ
17 開繊ローラ
19 光学的センサ系
20 カメラ
22 電子制御・調節装置
23 不純物を分離する装置
25 繊維材料搬送ファン
26 空気透過面
27 空気流案内装置
36 通路
39 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維フロックを含んだ空気流から繊維フロックを分離する分離装置において、
(a)上方部分と下方部分とを有していて鉛直方向を向いたホッパと、
(b)前記上方部分に配置されていて内面を有する空気透過面と、
(c)前記上方部分において出口を有する搬送通路とを具備し、該搬送通路は前記繊維フロックを含んだ空気流を前記上方部分に導入すると共に、前記繊維フロックを含んだ空気流を前記空気透過面の前記内面に向けるようになっており、それにより、前記繊維フロックを前記空気透過面に衝突させると共に、前記繊維フロックが分離された前記空気流を前記空気透過面に通過させるようになり、
さらに、
(d)前記空気透過面の前記内面に隣接した前記ホッパの前記上方部分に配置された機構部を具備し、前記空気透過面の前記内面に押し当たる前記繊維フロックに対する前記空気流の押圧力を取除くために、前記機構部は、前記繊維フロックを含んだ空気流が前記内面を前後方向に清掃するようにさせており、それにより、前記繊維フロックは前記内面から前記ホッパの前記下方部分に向かって重力により落下する、分離装置。
【請求項2】
前記空気透過面の前記内面が湾曲している請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記搬送通路の前記出口が前記空気透過面の前記内面に対して接線方向を向いている請求項1に記載の分離装置。
【請求項4】
前記機構部は、
(a)前記空気透過面の前記内面に隣接して互いに平行に間隔を空けて配置された二つの空気案内部材と、
(b)該空気案内部材を前記内面上で往復させるために前記空気案内部材に接続された駆動部と、を具備する請求項1に記載の分離装置。
【請求項5】
前記搬送通路の前記出口が前記二つの空気用案内部材の間に常に配置されている請求項4に記載の分離装置。
【請求項6】
前記空気透過面が前記上方部分を内側上方部分と外側上方部分とに分割しており、
さらに、前記空気透過面を通過した後で前記空気流を離間して案内するために、前記外側上方部分から延びる導管を含んでいる請求項1に記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−13908(P2008−13908A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232740(P2007−232740)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【分割の表示】特願平11−39557の分割
【原出願日】平成11年2月18日(1999.2.18)
【出願人】(590002323)ツリュツラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (85)
【Fターム(参考)】