説明

紫外線ランプ

【課題】接着剤の乾燥のバラツキや長期保管時の自然乾燥によってシール部におけるリード線やモリブデン箔が腐蝕することがなく、発光管の気密性を安全にかつ長期に亘って確保する。
【解決手段】紫外線ランプは、石英ガラスからなり放電空間部11aの両端にシール部11bが設けられた発光管11と、シール部に密着封止されたモリブデン箔12と、一端が放電空間部に向けて突出配置され他端がモリブデン箔に接続されてシール部に密着封止された電極13と、一端がモリブデン箔に接続されてシール部に密着封止され他端が発光管の外部に導出されたリード線14と、リード線を覆うようにシール部に接着剤21で固定されたベース19とを備える。ベースは、接着剤がシール部とのみ接触し、リード線及び該リード線の他端に接続される電線17とは接触しないようにシール部に接着固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として発光管に石英を使用し、端部がモリブデン箔を用いて封止される発光用の紫外線ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般の家電や計測器などの電気製品の表示に、液晶のフラットパネルやタッチパネルが使用された製品が次々と開発されている。これらの製品の半導体電子部品や液晶パネルなどの製造工程には、露光、樹脂硬化接着、乾式洗浄、メモリ消去、樹脂表面改質など様々な工程において紫外線が利用されている。そして、これらの工程には、様々な用途に応じた各種紫外線を照射する光源が用いられる。
【0003】
従来、この紫外線を照射する光源として、ランプ自己の発光によって消費される電力負荷により、ランプ内部温度を高温化し、ランプ内の水銀やその他の金属を蒸発させ不飽和状態となり、それぞれの金属と電子とが衝突することによって得られるプラズマから紫外線の発光を得る高圧紫外線ランプ(高圧水銀ランプ)や、内部圧力が真空に近く、飽和蒸気圧となっている水銀に対して同じく電子が衝突することによって得られるプラズマから紫外線を得る低圧紫外線ランプ(低圧水銀ランプ)が広く知られている。これらの紫外線ランプが放射する紫外線は、高圧紫外線ランプでは連続スペクトルのうち、313〜450nmが突出して発光し、低圧紫外線ランプは輝線スペクトルの254nm、185nmの波長光が主として発光される。
【0004】
これらの紫外線ランプの構造について説明する。上述の紫外線ランプに大概的に共通する構造として、発光管には紫外域の透過率の高い石英ガラスやアルミナなどのチューブが使用される。発光管は、放電空間部とその放電空間部の両端に設けられたシール部とを有し、シール部に電極が支持される。発光管における放電空間部には放電の補助のためのバッファーガスとともに、それぞれの目的に応じた発光物質が封入されている。それらの純度は紫外線ランプの光学的・電気的性能や寿命特性に大きく影響するため、不純物質が入り込まないよう高温、高真空の条件下で製造され、発光管は気密性が高く、高純度の状態が維持される構造となっている。
【0005】
紫外線ランプに使用される電極には、主としてタングステンやモリブデンなどの高融点金属で構成される。理由としては、電子が放出されるアークスポットと呼ばれる部位が最も高温となり、高圧紫外線ランプでは2500℃、低圧紫外線ランプでは1200℃以上となる。電極の表面には電子放出を補助するために仕事関数の低いエミッタ(電子放射性物質)が塗布されており、各紫外線ランプの電極温度により、最適な物質が選定される。例として、蛍光灯で知られる低圧紫外線ランプでは、電極であるフィラメント上に仕事関数の低いBaO、SrO、CaOの三元酸化物からなるエミッタが使用されている。フィラメントに予熱電流を流すことで、抵抗発熱し、上記酸化物の温度を700℃以上とすることで熱電子が発生する。また、高圧紫外線ランプの場合は、自己のランプ電流により電極温度が上昇し、点灯中に電子放射に適正な温度となるように設計されている。
【0006】
発光管の端部におけるシール部には電極が放電空間部に向けて突出配置されるけれども、そのシール部は、外部に設けられた電線からの電力をその電極に供給することを可能とし、かつ放電空間部の気密性が保たれる構造とする必要がある。その方法として、ステムシール方法、ロッドシール方法、モリブデン箔溶着シール方法がある。蛍光灯では主としてステムシール方法が用いられており、軟質ガラス製のステムにジュメット線が溶着され、その線の上に電極が組み上げられた構成となっている。ジュメット線とは鉄ニッケル合金線に銅をクラッドされ、その最表面に亜酸化銅が生成させた線で、膨張率が軟質ガラスとほぼ同等であることからガラス封着用リード線として使用されている。最終的にその電極マウントが組上げられたステムと発光管とを溶着する。
【0007】
ロッドシール方法は、比較的径の大きいタングステン製の電極芯棒を封止する方法で、第一にロッドの表面に酸化皮膜を形成し、膨張率がタングステンと同等のタングステンガラスを馴染ませ、その上に階的にタングステンガラスから石英へ膨張率を段変化させたガラス巻と呼ばれるガラス層を成形し、最終的にガラス巻きの石英部分と発光管の石英ガラスとを溶着する。導通部分の断面積の大きいタングステンロッドに用いられるシール方法であることから、大電流型のランプのシールに用いられる。
【0008】
3つ目のモリブデン箔溶着シール方法が、高圧紫外線ランプ及び低圧紫外線ランプの双方に広く用いられる。このモリブデン箔溶着シール方法は、電極が接続されたモリブデン製の薄い箔を石英ガラスに密着させる封着方法であって、回転バーナーにより石英ガラスを溶融して、そのモリブデン箔をモールドで挟み溶着するピンチシール方式(図12(b)端部参照)と、電極が接続されたモリブデン箔を発光管に入れてその発光管を真空にし、その後、モリブデン箔周囲の石英ガラスを加熱溶融させてモリブデン箔に溶着する真空溶封方式(図12(a)端部参照)がある。このモリブデン箔の厚さは20〜40μmで、箔の端部はナイフエッジと呼ばれる刃状となっており、石英ガラスとの気密性を保たせている。図12に示すように、このモリブデン箔溶着シール方法では、モリブデン箔4の電極3が設けられた反対側にモリブデン製のリード線5の一端が接続され、そのリード線5の他端が発光管2の外部に導出される。そして、外部の電源からの電力の供給を得るために、このリード線5の他端に電力供給用の電線6が接続される。
【0009】
一方、発光管2の端部におけるシール部2bには紫外線ランプ1の固定や位置出し、絶縁性のためにベース7と呼ばれるセラミックス製の口金が設けられる。このベース7は発光管2の端部におけるシール部2bとの間に接着剤8を充填することで接着固定される。一般の蛍光灯では、加熱すると発泡性し固化するタイトールと呼ばれる有機系接着剤が使用されている。またシリコーンなどが使用される場合もある。
【0010】
しかし、紫外線ランプの場合、タイトールやシリコーンでは、ランプから放射される紫外線によって化学変化が起こり、発煙・劣化してしまうため、これらの有機系接着剤は使用できない。このため、紫外線ランプには紫外線によって反応しない無機系の接着剤が使用される(例えば、特許文献1参照。)。この無機系の接着剤は大きく分けると、弱アルカリタイプ、アルカリタイプ、酸性タイプの3種類に分類される。この無機系の接着剤は、主として、硬化反応を生じる液体成分のバインダーと、無機質耐火物粉末を混合したスラリー状のフィラーと呼ばれるものとで構成され、バインダーの硬化反応は、加熱による脱水縮合反応である。代表例として、シラノール基(SiOH)では、脱水によってシロキサン結合が3次元方向の網目状の結合体となり固化する。フィラー粒子は絶縁性のスペーサとして、バインダーを硬化の際の収縮によるひび割れを防ぎ、水分蒸発の微細通路を作り、乾燥・硬化時間に影響する。
【0011】
図12に示す従来の紫外線ランプ1の場合、通常、発光管2が石英ガラスで構成されることから、強アルカリや酸性の接着剤と接触すると、石英と反応して、石英を侵食し、割れの原因となるため、反応性の低い弱アルカリタイプの接着剤8が使用される。そしてベース7には、キャップ形状の耐熱・絶縁性の高いセラミックスが使用され、その中に発光管2の端部におけるシール部2bを挿入し、上述の無機系接着剤8を充填し加熱することで接着及び固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−289147(段落番号「0062」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、発光管2が石英ガラスからなり、上述のモリブデン箔溶着シール方法により発光管2の気密性を確保した紫外線ランプ1において、ベース7内に充填された無機系接着剤8を完全に乾燥させた場合は、水分を含まないことからその接着剤8が弱アルカリ性を示すようなことはない。しかしながら、接着剤8の乾燥不足や長期保存されることで空気中の水分が接着剤8に吸着されると、ベース7を接着するために用いた接着剤8が再びアルカリ性の性質を帯びる場合がある。
【0014】
図12に示す従来の紫外線ランプ1では、ベース7は発光管2の端部におけるシール部2bとの間の隙間の全てに接着剤8を充填することで接着固定されているので、モリブデン製のリード線5と電線6の接合部を覆うように接着剤8が充填される。このために、長期保管・在庫によって接着剤8に水分が吸着され、再び接着剤8がアルカリ性の性質を帯びると、タングステンやモリブデンからなるリード線5がアルカリ性の性質を帯びた接着剤8に晒される状態となり、そのリード線5の酸化及びそのリード線5の周囲における石英ガラスの腐食を進行させる不具合がある。このような酸化及び腐食が進行すると、そのリード線5が膨張し、そのモリブデン箔4とシール部2bにおける石英ガラスを剥離させ、又はそのモリブデン箔4を封止するシール部2bにおける石英ガラスにクラックを発生させることになる。そして、この剥離やクラックが生じると、長期保管された紫外線ランプ1における発光管2はリークしてしまい、結果的に不点灯となる問題点があった。
【0015】
本発明の目的は、接着剤の乾燥のバラツキや長期保管時の自然乾燥によってシール部におけるリード線やモリブデン箔が腐蝕することがなく、発光管の気密性を安全にかつ長期に亘って確保し得る紫外線ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、石英ガラスからなり放電空間部の両端にシール部が設けられた発光管と、シール部に密着封止されたモリブデン箔と、一端が放電空間部に向けて突出配置され他端がモリブデン箔に接続されてシール部に密着封止された電極と、一端がモリブデン箔に接続されてシール部に密着封止され他端が発光管の外部に導出されたリード線と、リード線を覆うようにシール部に接着剤で固定されたベースとを備える紫外線ランプの改良である。
【0017】
その特徴ある構成は、ベースは、接着剤がシール部とのみ接触し、リード線及び該リード線の他端に接続される電線とは接触しないようにシール部に接着固定されたところにある。
【0018】
ベースが,リード線とともにシール部を包囲する包囲部と,包囲部に連続して設けられリード線に接続された電線を貫通させる底部とを有する場合、包囲部に接着剤充填用の凹部をシール部に対向して形成し、その凹部に充填された接着剤によりベースをシール部に接着固定することが好ましい。そして、包囲部が,リード線及びシール部の一部を包囲して端部が底部に連結する第1筒部と、第1筒部に連続してシール部を包囲し第1筒部の内径より大きな内径を有する第2筒部とを有するようにして、第1筒部の内径より大きな第2筒部の内周が接着剤充填用の凹部を形成するようにすることもできる。
【0019】
一方、ベースが,リード線とともにシール部を挟む一対の挟持部と,一対の挟持部の端部を連結するように設けられリード線に接続された電線を貫通させる底部とを有する場合、一対の挟持部のいずれか一方又は双方に接着剤充填用の凹部をシール部に対向して形成し、
その凹部に充填された接着剤によりベースをシール部に接着固定することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の紫外線ランプでは、シール部から引き出されるリード線に無機系接着剤を接触させない構造とすることで、接着剤のアリカリ成分によるリード線の酸化及びそのリード線の周囲における石英ガラスの腐蝕を防止し、この腐蝕によるシール部のモリブデン箔と石英ガラスの剥れやクラックによるリークを回避して、安定して長期保管させることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施形態の高圧紫外線ランプの縦断面図である。
【図2】その高圧紫外線ランプの横断面図である。
【図3】その高圧紫外線ランプに用いられるベースの概略図である。
【図4】その高圧紫外線ランプに用いられる別のベースの概略図である。
【図5】その高圧紫外線ランプの製造手順を示す図である。
【図6】本発明実施形態の低圧紫外線ランプの縦面図である。
【図7】その低圧紫外線ランプの横断面図である。
【図8】図7のA−A線断面図である。
【図9】図7のB−B線断面図である。
【図10】その低圧紫外線ランプの製造手順を示す図である。
【図11】その低圧紫外線ランプに用いられる別のベースの斜視図である。
【図12】(a)従来の高圧紫外線ランプを示す図1に対応する断面図である。(b)従来の低圧紫外線ランプを示す図6に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1及び図2に、本発明の高圧紫外線ランプ10を示す。この高圧紫外線ランプ10は、チューブ状の石英ガラスからなり放電空間部11aの両端にシール部11bが設けられた発光管11を備える。この発光管11の内部、即ちシール部11bにより両端が封止された放電空間部11aには水銀やその他の金属、ハロゲン化物などの発光物質とバッファーガスが封入される。
【0024】
シール部11bには、モリブデン箔12が密着封止される。このモリブデン箔12には、一端が放電空間部11aに向けて突出配置された電極13の他端が接続され、この電極13の他端はそのモリブデン箔12に接続された状態でそのモリブデン箔12とともにシール部11bに密着封止される。図1における電極13は、モリブデン箔12に他端が接続されて実際にシール部11bに密着封止されたタングステン製の芯棒13aと、放電空間部11aに突出する芯棒13aの一端に設けられて実際に電子を放出するタングステン製のコイル部13bとを有する。
【0025】
一方、モリブデン箔12には、電極13が設けられた反対側にモリブデンからなるリード線14の一端が接続される。このリード線14の一端は、そのモリブデン箔12に接続された状態でそのモリブデン箔12とともにシール部11bに密着封止され、他端が発光管11の外部に導出される。
【0026】
この高圧紫外線ランプ10におけるモリブデン箔12の封止は、前述したモリブデン箔溶着シール方法の真空溶封方式により行われる。即ち、電極13が接続されたモリブデン箔12を発光管11に入れてその発光管11を真空にし、その後、モリブデン箔12周囲を加熱してその周囲における石英ガラスをモリブデン箔12に密着させる。このようにして、放電空間部11aの両端にモリブデン箔12が封止されたシール部11bを形成する。
【0027】
図5(a)に示すように、電極13の他端、即ち芯棒13aの他端はそのモリブデン箔12に接続されているので、シール部11bが形成されると、その電極13の他端はそのモリブデン箔12に接続された状態でそのモリブデン箔12とともにシール部11bに密着封止される。一方、シール部11bが形成されると、モリブデン箔12に他端が接続された電極13の一端、即ち、芯棒13aの一端におけるコイル部13bはその放電空間部11aに突出配置されることになる。
【0028】
また、リード線14にあっても、その一端がモリブデン箔12に接続されているので、シール部11bが形成されると、そのモリブデン箔12とともにその一端はシール部11bに密着封止される。一方、シール部11bが形成されると、そのリード線14の他端は発光管11の外部に導出される。そして、発光管11の外部に導出させたリード線14の他端には、外部の電源からの電力の供給を得るために、電力供給用の電線17が接続される。
【0029】
図1の拡大図に詳しく示すように、電線17は、複数の導電性細線17aが束ねられた状態でフッ素樹脂等の絶縁材で被覆されたいわゆる被覆リード線であって、その電線17の被覆が除去された端部における複数の細線17aには、それらの細線17aが互いに離れて解けることを防止するためのニッケルスリーブ18が被せられる。そして、その電線17の端部における複数の細線17aは、そのスリーブ18が被せられた状態でそのスリーブ18とともにリード線14に接合される。なお、この電線17は、ランプ10の始動時に高電圧がかかるため、絶縁性の高い被覆を施し、更にその外周囲をガラス繊維で覆った構造の電線を使用しても良い。
【0030】
図1及び図2に示すように、この高圧紫外線ランプ10は、シール部11bから外部に導出されたリード線14を覆うようにそのシール部11bに接着剤21で固定されたベース19を備える。本発明の特徴ある構成は、このベース19をシール部11bに接着する接着剤21がそのシール部11bとのみ接触し、リード線14及びそのリード線14の他端に接続される電線17やスリーブ18とは接触しないようにシール部11bに接着固定されたところにある。この実施の形態における高圧紫外線ランプ10は、モリブデン箔12周囲の石英ガラスを加熱溶融させてモリブデン箔12に溶着する真空溶封方式であるので、モリブデン箔12を実際に封着するシール部11bは放電空間部11aより縮径することになる。このため、この実施の形態におけるベース19は、縮径したシール部11bをリード線14とともに包囲する円筒状の包囲部19aと、その包囲部19aに連続してリード線14に接続された電線17を貫通させる底部19bとを有する。
【0031】
具体的に、この実施の形態におけるベース19は、図1の拡大図及び図3に示すように、底部19bに電線17を挿通可能な孔19cが形成され、シール部11bを包囲する包囲部19aには接着剤21充填用の凹部19eがシール部11bに対向するように形成される。この実施の形態におけるベース19は、包囲部19aが、リード線14及びシール部11bの一部を包囲して端部が底部19bに連結する第1筒部19dと、その第1筒部19dに連続してシール部11bを包囲しその第1筒部19dの内径より大きな内径を有する第2筒部19eとを有する。このため、第1筒部19dの内径より大きな第2筒部19eの内周は、第1筒部19dの内周に比較してシール部11bから離間することになるので、その第2筒部19eの内周が接着剤21充填用の凹部を形成するものとする。
【0032】
図1及び図2に示すように、発光管11の端部におけるシール部11bとそのシール部11bから導出されたリード線14が挿入される第1筒部19dは、そのシール部11bの外径より僅かに大きな内径に形成される。また、シール部11bのみを包囲する第2筒部19eより第1筒部19dの内径は極力小さく形成され、第2筒部19eとシール部11bの間の隙間に充填される接着剤21が第1筒部19dに流れ込まないように調整される。そして、その凹部である第2筒部19eとシール部11bの間の隙間に充填された接着剤21によりベース19がシール部11bに接着固定される。
【0033】
図5(b)に示すように、このベース19のシール部11bへの接着は、その電線17をベース19における底部19bの孔19cに挿入し、シール部11bを包囲部19aに進入させる。そして、凹部を形成する第2筒部19eの内周とそのシール部11bとの間の隙間に充填機22等を使用して無機系接着剤21を充填する。その後、ヒータなどでベース19の周囲を加熱して、接着剤21を硬化させる。接着剤21の粘度は、第2筒部19eより径が小さい第1筒部19dの内部に流れ込まない程度の粘度に調整される。そして、この高圧紫外線ランプ10は、ヒータによる乾燥に加え、特性確認のための点灯エージング工程において、点灯による自己発熱によりその接着剤21を乾燥させる。このようにベース19をシール部11bに接着することにより、その接着剤21がそのシール部11bとのみ接触し、リード線14及びそのリード線14の他端に接続される電線17とは接触しないような図1及び図2に示す高圧紫外線ランプ10が得られる。
【0034】
このような構成の高圧紫外線ランプ10では、リード線14を覆うベース19の内部に接着剤21を充填するけれども、そのベース19の内部の全てに接着剤21を充填する従来の紫外線ランプ1(図12(a))と異なり、そのベース19を発光管11の端部におけるシール部11bにのみ接着させる。このため、接着剤21がリード線14やそのリード線14に接合された電線17と接触することはなく、長期保存等の要因により接着剤21が水分を吸収して、その接着剤21がアルカリ性の性質を帯びたとしても、モリブデンからなるリード線14がそのアルカリ性の性質を帯びた接着剤21に晒されるようなことはない。従って、アルカリ性の性質を帯びた接着剤21に晒されることに起因するリード線14の酸化は回避され、そのリード線14の周囲における石英ガラスが腐食するような事態も回避することができる。よって、リード線14の腐食等を原因とするシール部11bのクラックや発光管11におけるリーク現象は防止され、本発明における高圧紫外線ランプ10における発光管11の気密性は安全にかつ長期に亘って確保することができる。
【0035】
また、ベース19の接着に用いる接着剤21はそのベース19をシール部11bにのみ接着する量で足りることになり、そのベース19の内部の全体に接着剤21を充填していた従来に比較して、使用する接着剤21の充填量を少なくすることができる。そして、その量の減少に伴って、接着剤21を乾燥させる時間も短縮され、本発明の高圧紫外線ランプ10の製造工程を短縮することが可能となる。
【0036】
更に、ベース19の接着作業においては、ベース19とシール部11bの間に接着剤21を充填させる必要があるけれども、ベース19における包囲部19aに凹部19eをシール部11bに対向して形成し、その凹部19eを接着剤21注入専用空間として用いることにより、その接着剤21を充填する位置及び範囲が明確になり、その作業を比較的容易かつ確実に行わせることが可能となる。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、包囲部19aが第1筒部19dと第2筒部19eを有し、その第2筒部19eの内周が接着剤21充填用の凹部を形成するベース19を用いて説明したが、凹部に充填された接着剤21によりベース19をシール部11bに接着可能である限り、凹部の形状は第2筒部19eのようなものに限られない。例えば、図4に示すように、包囲部19aに、放電空間部11a側の端縁から底部19bに向かって伸びる1又は2以上の凹溝19fをシール部11bに対向して形成し、その凹溝19fを接着剤充填用の凹部としても良い。このようなベース19であっても、凹部となる凹溝19fを放電空間部11a側の端縁に開口させることにより、その開口から接着剤21をその凹溝19fの内部に充填させることが可能になる。そして、凹溝19fをシール部11bに対向して形成することにより、その凹溝19fに充填された接着剤21によりベース19をシール部11bに接着固定すると、その充填された接着剤21はシール部11bとのみ接触し、リード線14及びそのリード線14の他端に接続される電線17とは接触しないようにすることができる。
【0038】
また、上述した実施の形態では、包囲部19aが円筒状を成すベース19を用いて説明したけれども、図示しないが、ベース19はその包囲部19aがシール部11bを包囲可能である限り、その断面が楕円形や方形状を成すようなものであっても良い。
【0039】
図6〜図10に、本発明の別の実施の形態である低圧紫外線ランプ50を示す。この低圧紫外線ランプ50は、チューブ状の石英ガラスからなり放電空間部51aの両端にシール部51bが設けられた発光管51を備える。シール部51bにより両端が封止された放電空間部51aには発光物質の水銀とバッファーガスのアルゴンやネオンなどが封入される。シール部51bには、モリブデン箔52が密着封止される。このモリブデン箔52には、一端が放電空間部51aに向けて突出配置された電極53の他端が接続され、この電極53の他端はそのモリブデン箔52に接続された状態でそのモリブデン箔52とともにシール部51bに密着封止される。
【0040】
この低圧紫外線ランプ50における電極53はブリッジ53aとフィラメント53bからなり、ブリッジ53aはモリブデン箔52に他端が接続されて実際にシール部51bに密着封止された一対のモリブデンリード部53c,53cと、その一対のモリブデンリード部53c,53cを所定の間隔を空けて支持するガラス支持片53dとを有する。そして、フィラメント53bは放電空間部51aに突出する一対のモリブデンリード部53c,53cの一端に架設され、一対のモリブデンリード部53c,53cの他端が別々に設けられた一対のモリブデン箔52,52にそれぞれ別々に接合される(図7)。
【0041】
一方、一対のモリブデン箔52,52には、電極53が設けられた反対側にモリブデンからなる一対のリード線54,54の一端がそれぞれ接続される。この一対のリード線54,54のそれぞれの一端は、一対のモリブデン箔52,52に接続された状態でそのモリブデン箔52,52とともにシール部51bに密着封止され、他端が発光管51の外部に導出される。
【0042】
この低圧紫外線ランプ50におけるモリブデン箔52の封止は、前述したモリブデン箔溶着シール方法のピンチシール方式により行われる。即ち、発光管51の端部のモリブデン箔52が挿入された周囲を回転バーナーにより加熱し、その部分における石英ガラスを溶融させた後、モールドで挟むことでその石英ガラスをモリブデン箔に溶着させる。このピンチシール方式により、放電空間部51aの両端にモリブデン箔52が封止されたシール部51bを形成する。このシール部51bの形成にあっては、図9に示すように、並列に設けられた一対のモリブデン箔52,52の双方をモールドで挟み、一対のモリブデン箔52から外れる発光管51の外周近傍はそのモールドにより挟まないようにすることができる。すると、得られたシール部51bの断面は略H状を成し、シール部51bの幅Wが放電空間部51aの外径Dより過度に広がらないようにすることができる。
【0043】
図10(a)に示すように、電極53の他端、即ちモリブデンリード部53cの他端はそのモリブデン箔52に接続されているので、シール部51bが形成されると、その電極53の他端はそのモリブデン箔52に接続された状態でそのモリブデン箔52とともにシール部51bに密着封止される。一方、シール部51bが形成されると、電極53の一端、即ち、一対のモリブデンリード部53c,53caの一端に架設されたフィラメント53bはその放電空間部51aに突出配置されることになる。
【0044】
また、リード線54にあっても、その一端がモリブデン箔52に接続されているので、シール部51bが形成されると、そのモリブデン箔52とともにその一端はシール部51bに密着封止される。一方、シール部51bが形成されると、一対のリード線54,54の他端は、発光管51の端縁から外部に導出される。発光管51の外部に導出するリード線54の他端には、外部の電源からの電力の供給を得るために、上述した高圧紫外線ランプ10に用いられた電線17と同様な電力供給用の電線57が接続される。即ち、図6の拡大図に示すように、電線57の被覆が除去された端部における複数の細線57aには上述した高圧紫外線ランプ10と同様にニッケルスリーブ58が被せられる。そして、そのスリーブ58が被せられた電線57の端部における複数の細線57aはその状態でスリーブ58とともにリード線54に接合される。
【0045】
図6及び図7に示すように、この低圧紫外線ランプ50のシール部51bには、そのシール部51bから外部に導出されたリード線54を覆うようにベース59が接着剤61により固定される。本発明の特徴ある構成は、このベース59をシール部51bに接着する接着剤61がそのシール部51bとのみ接触し、リード線54及びそのリード線54の他端に接続される電線57とは接触しないようにシール部51bに接着固定されたところにある。
【0046】
この実施の形態における低圧紫外線ランプ50は、石英ガラスを溶融させてモリブデン箔52をモールドで挟み込むピンチシール方式であるので、モリブデン箔52を実際に封着するシール部51bは平板状のものとなる。このため、この実施の形態におけるベース59は、リード線54とともにシール部51bを挟む一対の挟持部59a,59aと、その一対の挟持部59a,59aの端部を連結するように設けられてリード線54に接続された電線57を貫通させる底部59bとを有する。
【0047】
図6〜図9に示すように、底部59bは円盤状を成し、リード線54に接続された電線57を貫通させる一対の孔59cが形成される。また、リード線54とともにシール部51bを挟む一対の挟持部59a,59aは、そのシール部51bの厚さt(図9)より僅かに広い間隔Tを有し、この状態で底部59bにより連結される。この底部59bにより連結された一対の挟持部59a,59aは、その外形が円柱状を成すように形成され、その一対の挟持部59a,59aの双方に接着剤充填用の凹部59dがシール部51bの厚さ方向における面に対向して形成される。この凹部59dは、放電空間部51a側の端縁から底部59bに向かって伸びる溝であって、その断面は外形に沿う半月状に形成される。そして、この凹部59dとシール部51bの間に充填された接着剤61によりベース59がシール部51bに接着固定される。
【0048】
図10(b)に示すように、このベース59のシール部51bへの接着は、その電線57をベース59における底部59bの孔59cに挿入し、シール部51bを一対の挟持部59a,59aの間に進入させる。そして、シール部51bにより蓋された凹部59dに充填機62等を使用して無機系接着剤61を充填する。その後、ヒータなどでベース59の周囲を加熱して、接着剤61を硬化させる。接着剤61の粘度は、凹部59dに充填された接着剤61がその凹部59dからはみ出てシール部51bの端縁に流れ込まない程度の粘度に調整される。このようにして、図6及び図7に示すように、ベース59をシール部51bに接着し、その接着剤61がそのシール部51bとのみ接触し、リード線54及びそのリード線54の他端に接続される電線57とは接触しないような低圧紫外線ランプ50を得る。
【0049】
このような構成の低圧紫外線ランプ50では、リード線54を覆うベース59の内部に接着剤61を充填するけれども、接着剤が充填される凹部59dをシール部51bの厚さ方向における面に対向して形成するので、ベース7の内部の全てに接着剤8を充填する従来の紫外線ランプ1(図12(b))と異なり、そのベース59を発光管51の端部におけるシール部51bにのみ接着させることができる。このため、接着剤61がリード線54やそのリード線54に接合された電線57と接触することはなく、長期保存等の要因により接着剤61が水分を吸収して、その接着剤61がアルカリ性の性質を帯びたとしても、モリブデンからなるリード線54がそのアルカリ性の性質を帯びた接着剤61に晒されるようなことはない。従って、アルカリ性の性質を帯びた接着剤61に晒されることに起因するリード線54の酸化は回避され、そのリード線54の周囲における石英ガラスが腐食するような事態も回避することができる。よって、リード線54の腐食等を原因とするシール部51bのクラックや発光管51におけるリーク現象は防止され、本発明における低圧紫外線ランプ50における発光管51の気密性は安全にかつ長期に亘って確保することができる。
【0050】
また、この低圧紫外線ランプ50にあっても、ベース59の接着に用いる接着剤61はそのベース59をシール部51bにのみ接着する量で足りることになり、そのベース7の内部の全体に接着剤8を充填していた従来の紫外線ランプ1(図12(b))に比較して、使用する接着剤61の充填量を少なくすることができる。そして、その量の減少に伴って、接着剤61を乾燥させる時間も短縮され、本発明の低圧紫外線ランプ50の製造工程を短縮することが可能となる。
【0051】
更に、この低圧紫外線ランプ50のベース59の接着作業においても、ベース59とシール部51bの間に接着剤61を充填させる必要がある。けれども、ベース59における一対の挟持部59a,59aに凹部59dをシール部51bに対向して形成し、その凹部59dを接着剤注入専用空間として用いることにより、その接着剤61を充填する位置及び範囲が明確になり、その作業を比較的容易かつ確実に行わせることが可能となる。
【0052】
なお、上述した実施の形態では、一対の挟持部59a,59aの双方に接着剤61を充填するための凹部59d,59dを形成したけれども、充填された接着剤61によりベース59をシール部51bに接着固定し得る限り、一対の挟持部59a,59aのいずれか一方にのみ接着剤61を充填するための凹部59dをシール部51bに対向して形成しても良い。
【0053】
また、上述した別の実施の形態では、底部59bが円盤状を成し、その底部59bに連続する一対の挟持部59aの外形が円柱状を成すベース59を説明したけれども、一対の挟持部がシール部51bを挟み得る限り、その形状は問わない。従って、例えば図11に示すように、ベース66はその外形が方形状のものであっても良い。図11に示すベース66は、一対の挟持部67,67が、リード線54及びシール部51bの一部を挟んで端部が底部59bに連結する一対の第1挟持部67a,67aと、一対の第1挟持部67a,67aに連続してシール部51bを挟み一対の第1挟持部67a,67aより互いの間隔が広げられた第2挟持部67b,67bとを有する。そして、一対の第1挟持部67a,67aより互いの間隔が広げられた第2挟持部67b,67bの内面が接着剤61充填用の凹部を形成するようにすれば、凹部となる第2挟持部67b,67bを電空間部51a側の端縁に開口させることによりその開口から接着剤61を凹部となる第2挟持部67b,67bの内部に充填させることが可能になる。すると、その凹部に充填された接着剤61によりベース59をシール部51bに接着固定することにより、その充填された接着剤61はシール部51bとのみ接触し、リード線54及びそのリード線54の他端に接続される電線57とは接触しないようにすることができる。ここで、図11の符号68は一対の挟持部67,67を連結する底部68であり、符号68aはその底部68に形成されて電線57が挿通される孔68aである。
【0054】
更に、上述した別の実施の形態では、図9に示すように、断面が略H状を成すシール部51bを説明したけれども、シール部51bの幅Wが放電空間部51aの外径Dから比較的多く広がっても良い場合には、図示しないが、発光管51の端部の全てをモールドにより挟んで、得られたシール部51bをその幅が発光管51の外径を越える平板状にしても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 高圧紫外線ランプ(高圧水銀ランプ)
11 発光管
11a 放電空間部
11b シール部
12 モリブデン箔
13 電極
14 リード線
19 ベース
19a 包囲部
19b 底部
19d 第1筒部
19e 第2筒部(凹部)
21 接着剤
50 低圧紫外線ランプ(低圧水銀ランプ)
51 発光管
51a 放電空間部
51b シール部
52 モリブデン箔
53 電極
54 リード線
59 ベース
59a 挟持部
59b 底部
59d 凹部
61 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなり放電空間部(11a,51a)の両端にシール部(11b,51b)が設けられた発光管(11,51)と、前記シール部(11b,51b)に密着封止されたモリブデン箔(12,52)と、一端が前記放電空間部(11a,51a)に向けて突出配置され他端が前記モリブデン箔(12,52)に接続されて前記シール部(11b,51b)に密着封止された電極(13,53)と、一端が前記モリブデン箔(12,52)に接続されて前記シール部(11b,51b)に密着封止され他端が前記発光管(11,51)の外部に導出されたリード線(14,54)と、前記リード線(14,54)を覆うように前記シール部(11b,51b)に接着剤(21,61)で固定されたベース(19,59)とを備える紫外線ランプにおいて、
前記ベース(19,59)は、前記接着剤(21,61)が前記シール部(11b,51b)とのみ接触し、前記リード線(14,54)及び該リード線(14,54)の他端に接続される電線(17,57)とは接触しないように前記シール部(11b,51b)に接着固定された
ことを特徴とする紫外線ランプ。
【請求項2】
ベース(19)が,リード線(14)とともにシール部(11b)を包囲する包囲部(19a)と,前記包囲部(19a)に連続して設けられ前記リード線(14)に接続された電線(17)を貫通させる底部(19b)とを有し、
前記包囲部(19a)に接着剤(21)充填用の凹部(19e)が前記シール部(11b)に対向して形成され、
前記凹部(19e)に充填された接着剤(21)により前記ベース(19)が前記シール部(11b)に接着固定された
請求項1記載の紫外線ランプ。
【請求項3】
包囲部(19a)が,リード線(14)及びシール部(11b)の一部を包囲して端部が底部(11b)に連結する第1筒部(19d)と、前記第1筒部(19d)に連続して前記シール部(11b)を包囲し前記第1筒部(19d)の内径より大きな内径を有する第2筒部(19e)とを有し、
前記第1筒部(19d)の内径より大きな前記第2筒部(19e)の内周が接着剤充填用の凹部を形成する請求項2記載の紫外線ランプ。
【請求項4】
ベース(59)が,リード線(54)とともにシール部(51b)を挟む一対の挟持部(59a,59a)と,前記一対の挟持部(59a,59a)の端部を連結するように設けられ前記リード線(54)に接続された電線(57)を貫通させる底部(59b)とを有し、
前記一対の挟持部(59a,59a)のいずれか一方又は双方に接着剤充填用の凹部(59d)が前記シール部(51b)に対向して形成され、
前記凹部(59d)に充填された接着剤(61)により前記ベース(59)が前記シール部(51b)に接着固定された
請求項1記載の紫外線ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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