説明

紫外線硬化型組成物および電子写真機器用導電性ロール

【課題】低硬度で耐ヘタリ性に優れた硬化物を形成することが可能な紫外線硬化型導電性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)官能基数1〜2で、数平均分子量(Mn)1300以上5000未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(B)単官能モノマーと、(C)光重合開始剤と、(D)イオン導電剤とを含有し、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が20〜100質量部の範囲内にある紫外線硬化型導電性組成物とする。この組成物を導電性シャフト12の外周に塗布した後、紫外線照射して硬化させた硬化物を基層14とする。基層14の外周に、中間層18や表層16が形成されて、電子写真機器用導電性ロール10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性ロールの弾性層を形成する材料として好適な紫外線硬化型組成物および電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されている。これら電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれている。この感光ドラムの周囲には、帯電ロール、現像ロール、トナー供給ロール、転写ロールなどの各種導電性ロールが配設されている。
【0003】
上記導電性ロールは、通常、芯金の外周に1層または2層以上の導電性弾性層を有している。導電性弾性層には、トナーや感光体ドラム、層形成ブレードなどに対するストレスの低減を図るため、低硬度であることが要求されている。例えば、トナーに対するストレスが大きいと、印字枚数が増えたときに非画像部にトナーが飛散するカブリと呼ばれる画像不具合が生じる。また、感光体ドラムや層形成ブレードなどによる圧接痕に起因する画像不具合の低減を図るため、耐ヘタリ性に優れることが要求されている。
【0004】
そのため、導電性弾性層の材料には、シリコーンゴムやウレタンゴム、ウレタンアクリレートが良く用いられる。導電性弾性層は、通常、これらを用いて型成形により形成されている。
【0005】
また、最近では、特許文献1に示されるように、紫外線硬化型のウレタンアクリレート塗料を導電性弾性層の材料として用いることも提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−206436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、導電性弾性層の材料にシリコーンゴムを用いる場合には、イオン導電化が困難である。また、型成形すると表面にスキン層が形成される。そのため、電荷減衰性が悪くなりやすい。
【0008】
また、ウレタンゴムを用いる場合には、イソシアネート成分が金型と反応しやすいため、ワックスなどの離型剤が必要になる。このような離型剤は、感材汚染の原因になる。また、型成形すると表面にスキン層が形成される。そのため、形成された導電性弾性層の研磨が行なわれることが多い。この結果、工程が増加される上、研磨カスによる画像不具合や、研磨表面の不均一性に起因する画像ムラなどを招きやすい。
【0009】
さらに、ウレタンアクリレートを用いて型成形する場合には、表面にスキン層が形成されるため、電荷減衰性が悪くなりやすい。
【0010】
これに対し、紫外線硬化型のウレタンアクリレート塗料を用いる場合には、上記問題は生じない。しかしながら、従来の紫外線硬化型ウレタンアクリレートでは、得られる硬化物について、低硬度と耐ヘタリ性とを両立させることが難しかった。
【0011】
すなわち、低硬度と耐ヘタリ性とを両立させるためには、架橋密度を低く抑えることが必要であると考えられるが、これは、ウレタンアクリレートオリゴマーの分子量増大につながる。そうすると、塗料の粘度が高くなり、塗工により導電性弾性層を形成することができなくなる。そこで、塗料の粘度を下げ、塗工性を向上させるために溶剤を用いることも考えられるが、揮発性有機化合物を多量に含有させることになるため、環境への負荷が大きくなる上、導電性弾性層の厚肉化が難しくなる。
【0012】
また、特許文献1に示される材料では、ウレタンアクリレートオリゴマーの分子量が大きいため、得られる硬化物は耐ヘタリ性が悪いという問題があった。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、低硬度で耐ヘタリ性に優れた硬化物を形成することが可能な紫外線硬化型導電性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明に係る紫外線硬化型導電性組成物は、(A)官能基数1〜2で、数平均分子量(Mn)1300以上5000未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(B)単官能モノマーと、(C)光重合開始剤と、(D)イオン導電剤とを含有し、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分は20〜100質量部の範囲内にあることを要旨とするものである。
【0015】
このとき、前記(B)単官能モノマーは、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されていると良い。
【0016】
また、前記(B)単官能モノマーは、アミノ基を含有すると良い。
【0017】
また、前記(B)単官能モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレートであると良い。
【0018】
ここで、上記紫外線硬化型導電性組成物は、(E)疎水性フィラーをさらに含有していても良い。
【0019】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、上記紫外線硬化型導電性組成物が硬化されて形成された層を有することを要旨とするものである。
【0020】
このとき、前記層は、基層であると良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る紫外線硬化型導電性組成物は、(A)官能基数および数平均分子量(Mn)が特定範囲にあるウレタンアクリレートオリゴマーと、(B)単官能モノマーと、(C)光重合開始剤と、(D)イオン導電剤とを含有し、(A)成分に対して(B)成分の量が特定範囲内にある。そのため、塗工可能な粘度であり、塗工による層形成が可能である。そして、これにより、低硬度で耐ヘタリ性に優れた硬化物を形成することができる。
【0022】
この際、添加される(B)成分は、塗工の際に液粘度を低下させることができるものであるが、(A)成分とともに硬化物の構造中に取り込まれるため、(B)成分のブルームやブリードによる感材汚染のおそれがない。また、(B)成分は単官能であるため、三次元架橋しないで構造中に取り込まれる。そのため、硬化物の硬度上昇やヘタリ性低下への影響が少ない。
【0023】
このとき、前記(B)単官能モノマーの分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている場合には、イオン成分が動きやすくなるため、イオン導電性をより発揮する。
【0024】
また、前記(B)単官能モノマーがアミノ基を含有する場合には、負電荷性を備える。そのため、例えば、単層のロール構成にする場合などに好適である。
【0025】
また、前記(B)単官能モノマーがウレタン(メタ)アクリレートである場合には、耐摩耗性にも優れる。
【0026】
そして、上記紫外線硬化型導電性組成物が、(E)疎水性フィラーをさらに含有している場合には、吸水による膨張を防ぐことができる。
【0027】
一方、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、上記紫外線硬化型導電性組成物が硬化されて形成された層を有する。そのため、低硬度で耐ヘタリ性に優れる。特に、前記層がロール基層であると、より一層、その効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明に係る紫外線硬化型導電性組成物(以下、本組成物ということがある。)について詳細に説明する。本組成物は、(A)特定のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(B)単官能モノマーと、(C)光重合開始剤と、(D)イオン導電剤とを含有し、(A)成分と(B)成分との混合比が特定割合の範囲内にある。本組成物は、電子写真機器用導電性ロールの弾性層を形成する材料として好適であり、基層材料として好適である。
【0029】
(A)成分において、(メタ)アクリレート官能基の数は、1〜2である。官能基の数が2を超えると、(A)成分を硬化させたときの架橋点が多くなりすぎて、硬化物の硬度が高くなりすぎる。また、(A)成分の数平均分子量(Mn)は、1300以上5000未満である。数平均分子量が1300未満であると、硬化物の硬度が高くなりすぎる。一方、数平均分子量が5000以上であると、耐ヘタリ性に劣る。
【0030】
(A)成分の粘度は、硬化物が低硬度になりやすい、組成物を塗工可能にしやすいなどの観点から、1000〜20000mPa・sの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、2000〜10000mPa・sの範囲内である。
【0031】
(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールと、ポリイソシアネートと、水酸基を含有する(メタ)アクリレートとにより合成される。
【0032】
(A)成分を構成するポリオールとしては、特に限定されるものではない。より好ましくは、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されているポリオールである。この場合、イオン導電剤のイオン成分がポリマー中で動きやすくなるため、イオン導電性をより発揮させることができる。ポリオール成分の数平均分子量(Mn)は、1500〜3000の範囲が好ましく、特に好ましくは1500〜2500である。
【0033】
具体的には、ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール等のジオールや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン等のトリオールや、ソルビトール等のヘキサオール等があげられる。
【0034】
また、上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、環状エーテルの開環重合または共重合によって得られるものが好適に用いられる。上記環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、ブチレンオキシド、α−メチルトリメチレンオキシド、3 ,3’−ジメチルトリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキサミン等があげられる。
【0035】
(A)成分を構成するポリイソシアネートとしては、特に限定されるものではない。具体的には、ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートや、トリイソシアネート、またはこれらの変性体、多量体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0036】
上記イソシアネート成分の配合量は、上記ポリオール成分100重量部に対して、1〜100質量部の範囲に設定することが好ましい。特に好ましくは、1〜50質量部である。
【0037】
(A)成分を構成する水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。水酸基含有(メタ)アクリレートの配合量は、上記ポリオール成分100重量部に対して、1〜10質量部の範囲に設定することが好ましい。
【0038】
(B)単官能モノマーは、塗工の際に液粘度を低下させる希釈剤になる。この(B)成分は、官能基((メタ)アクリレート基)を有するため、(A)成分とともに硬化物の構造中に取り込まれる。そのため、硬化後に、(B)成分のブルームやブリードによる感材汚染のおそれがない。また、(B)成分は単官能であるため、三次元架橋しないで構造中に取り込まれる。そのため、硬化物の硬度上昇やヘタリ性低下への影響が少ない。
【0039】
このとき、(B)成分の分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されていると、イオン導電剤のイオン成分がポリマー中で動きやすくなるため、イオン導電性をより発揮させることができる。エチレンオキシド単位の含有量としては、硬化物の電気抵抗を低くしやすくなるなどの観点から、好ましくは、1〜98質量%の範囲内、より好ましくは、20〜98質量%の範囲内、さらに好ましくは、40〜98質量%の範囲内にあると良い。なお、モノマー中におけるエチレンオキシド単位の割合は、例えば、NMR(核磁気共鳴装置)などを用いて測定することができる。
【0040】
また、(B)成分がアミノ基を含有していると、単官能モノマーが負電荷性を備える。この場合には、例えば、導電性ロールを、単層の(基層のみの)ロール構成にすることが可能になる。さらに、(B)成分がウレタン(メタ)アクリレートであると、耐摩耗性にも優れる。
【0041】
(B)成分としては、具体的には、例えば、エトキシジエチレングリコールモノアクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキシド変性(メタ)アクリレート、メトキシエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、エトキシエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、ブトキシエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性クレゾール(メタ)アクリレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0042】
本組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(B)成分の量を20〜100質量部としている。(B)成分が20質量部未満であると、組成物の液粘度が高くなる。これにより、本組成物を塗工することが難しくなる。ここで、仮に溶剤(VOC)を用いて液粘度を下げようとすると、揮発性有機化合物を多量に含有させることになるため、環境への負荷が大きくなる。また、本組成物を厚く塗工することが難しくなる。このような理由から、本組成物においては、溶剤を用いないことが好ましい。一方、(B)成分が100質量部を超えると、材料の引張強度(TS)が低下しやすいため、例えば導電性ロールの基層の材料として用いるには好適ではなくなる。
【0043】
本組成物において、(C)光重合開始剤は、特に限定されることなく、通常使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0044】
(C)光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、2−メチルベンゾイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジアセチル、エオシン、チオニン、ミヒラ−ケトン、アントラセン、アントラキノン、アセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピルαヒドロキシイソブチルフェノン、α・α´ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルベンゾイルフォルメイト、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]・2・モルフォリノ−プロペン、チオキサントン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−イル)チタニウム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(η5 −2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0045】
本組成物において、(C)光重合開始剤の割合は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量部の範囲内である。
【0046】
本組成物において、(D)イオン導電剤は、特に限定されることなく、通常使用され得るもの(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)であれば、何れのものでも使用することができる。本組成物において、(D)イオン導電剤の割合は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量部の範囲内である。
【0047】
本組成物は、(E)疎水性フィラーをさらに含有していても良い。この場合、吸水による膨張を防ぐことができる。疎水性フィラーとしては、疎水性シリカなどが挙げられる。また、本組成物は、他の任意成分として、光安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、分散剤、消泡剤、顔料などの各種の添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0048】
上述した本組成物の製造方法としては、例えば、上記必須の(A)〜(D)成分と、必要に応じて含有させる任意の成分とを、所望の配合となるように秤量し、これらを攪拌機などの混合手段により混合する方法などを例示することができる。なお、混合時に加熱したり、撹拌後に脱泡したりするなどしても良い。
【0049】
次に、本発明に係る電子写真機器用導電性ロール(以下、導電性ロールということがある。)について、図を参照して詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る導電性ロールを表す周方向断面図である。導電性ロールは、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器に組み込まれる。
【0050】
導電性ロール10においては、図1(a)、(b)に示すように、軸体である導電性シャフト12の外周に沿って、上記紫外線硬化型導電性組成物の硬化物よりなる基層14が形成されている。紫外線硬化型導電性組成物の組成・成分に関しては、上記する本組成物ですでに説明しているため、ここでは説明を省略する。
【0051】
基層14の厚みとしては、0.1〜5mmの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.2〜3mmの範囲内である。基層14の厚みが0.1mm未満では、ロールの表面硬度が高くなりやすい。一方、基層14の厚みが5mmを超えると、ロール全体が大きくなりすぎる。
【0052】
導電性シャフト12の外周に沿って基層14を形成するには、導電性シャフトの表面上に、所望の配合割合に調製した本組成物を、ディッピング法、ロールコーティング法、スプレーコート法などの各種のコーティング法により塗布し、次いで、このロールを回転させながら、所定光量の紫外線を所定時間照射し、本組成物を硬化させる。このとき、本組成物の硬化前の流動性は、塗布しやすい、液たれしにくいなどの観点から、200〜5000cpsの範囲内にあることが好ましい。なお、上記塗布は、1回または2回以上繰り返しても良い。また、紫外線の代わりに電子線を照射して本組成物を硬化させても良い。
【0053】
例えばディッピング法による場合には、本組成物を貯留した貯留槽内に導電性シャフトを浸漬し、引き上げた後に紫外線を照射して硬化させる方法などを例示することができる。
【0054】
導電性ロール10は、図1(a)に示すように、基層14の外周にさらに1層のコート層(表層16)が形成されたものであっても良いし、図1(b)に示すように、基層14の外周にさらに2層以上のコート層(例えば、表層16および中間層18)が形成されたものであっても良い。
【0055】
導電性シャフト12は、アルミニウム、ステンレス等の金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、またはこれらにめっきが施されたものなどが挙げられる。必要に応じて、導電性シャフト12の外周面に、接着剤やプライマーなどを塗布して、接着層を形成しても良い。接着剤やプライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0056】
表層16や中間層18を形成する材料としては、具体的には、例えば、ヒドリンゴム(CO、ECOなど)、NBR、H−NBR、シリコーンゴム、EPDM、アミド系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などに電子導電剤やイオン導電剤などの導電性付与剤、さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、表面調整剤、可塑剤、粗さ形成用粒子などを1種または2種以上添加した組成物などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0057】
表層16や中間層18の厚みは、適宜定めることができる。例えば、表層16の厚みとしては、0.1〜50μmの範囲内にあると良い。また、中間層18の厚みとしては、例えば、1〜50μmの範囲内にあると良い。
【0058】
上記基層14の外周に表層16や中間層18を形成するには、例えば、形成材料を溶剤に溶解させて塗工液を調製し、これを基層14の外周面に塗工する方法を用いることができる。この塗工法は、特に制限されるものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来の方法を適用することができる。塗工後、乾燥および加熱架橋処理すれば、表層16や中間層18を形成することができる。このとき、溶剤は適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0060】
<原材料>
(ウレタンアクリレートオリゴマー)
・新中村化学社製「A200」、官能基数2、数平均分子量(Mn)508
・新中村化学社製「U4200」、官能基数2、数平均分子量(Mn)1300
・新中村化学社製「U412A」、官能基数2、数平均分子量(Mn)4700
・新中村化学社製「U2235PE」、官能基数2、数平均分子量(Mn)5000
・新中村化学社製「U7100」、官能基数3、数平均分子量(Mn)2000
(単官能モノマー)
・大阪有機化学社製「HEA」、官能基数1、分子量144
・EO含有単官能モノマー(エトキシジエチレングリコールモノアクリレート、試薬)
【0061】
(実施例1〜2)
<紫外線硬化型導電性組成物の調製>
表1に記載の各ウレタンアクリレートオリゴマー100質量部と、単官能モノマー(大阪有機化学社製「HEA」)60質量部と、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル社製、「イルガノキュアー819」)1質量部と、イオン導電剤(4級アンモニウム塩)1質量部とを混合して、紫外線硬化型導電性組成物を調製した。
【0062】
<コート層材料の調製>
NBR(日本ゼオン社製、「Nipol DN202」)100質量部と、カーボンブラック(電気化学工業社製、「デンカブラックHS−100」)20質量部と、加硫剤(硫黄)1質量部と、加硫促進剤1質量部と、ウレタン粒子(根上工業社製、「アートパールU600T」)10質量部とをロールを用いて混練した後、これらをMEKとトルエンの混合有機溶剤〔MEK:トルエン(重量比)=2:1〕に配合し溶解させて20質量%濃度のコート層材料を調製した。
【0063】
<導電性ロールの作製>
外周面に接着剤を塗布した導電性シャフト(SUM24Lに無電解Niめっきしたもの、φ10mm)を、上記紫外線硬化型導電性組成物を満たした容器内に浸漬させ、引き上げた直後に、紫外線を照射(30秒間照射、光量120mW/cm)し、付着した組成物を硬化させた(ディップコーティング法)。上記操作を3回繰り返し、導電性シャフトの外周に厚み0.3mmの基層を形成した。次いで、ロールコーティング法により、基層の外周に、上記コート層材料を塗工し、150℃で30分加熱処理することにより、厚み6μmのコート層を形成した。以上のようにして、各実施例に係る導電性ロールを作製した。
【0064】
(比較例1)
紫外線硬化型導電性組成物の調製において、数平均分子量508のウレタンアクリレートオリゴマーを用いた点、および、単官能モノマーを配合しなかった点以外、実施例1と同様にして、比較例1に係る導電性ロールを作製した。
【0065】
(比較例2〜3)
紫外線硬化型導電性組成物の調製において、表1に記載の各ウレタンアクリレートオリゴマーを用い、実施例1と同様にして、比較例2〜3に係る導電性ロールを作製した。
【0066】
(実施例3〜10)
紫外線硬化型導電性組成物の調製において、実施例2と同じウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製、「U412A」)を用い、EO含有の単官能モノマー(エトキシジエチレングリコールモノアクリレート)を表2に示す配合量とし、実施例1と同様にして、実施例3〜10に係る導電性ロールを作製した。
【0067】
(比較例4)
紫外線硬化型導電性組成物の調製において、単官能モノマーを用いなかった点および溶剤を用いた点以外、実施例3〜10と同様にして、比較例4に係る導電性ロールを作製した。
【0068】
(比較例5)
紫外線硬化型導電性組成物の調製において、単官能モノマーを用いなかった。
【0069】
<各導電性ロールの評価>
実施例および比較例に係る各導電性ロールについて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0070】
(数平均分子量Mnの測定方法)
GPC(東ソー製、「TC8012」)を用い、THF3質量%溶液に調整して数平均分子量Mnを測定した。
【0071】
(粘度)
実施例3〜10、比較例4〜5に係る導電性組成物(液状)の25℃における粘度を、B型粘度計((株)トキメック製、「VISCOMETER DVL−B2」)にて測定した。
【0072】
(JIS−A硬度)
JIS K6253に基づき、ロール表面のタイプAデュロメータ硬度を測定した。
【0073】
(画像評価(カブリ))
各導電性ロールを市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)製、LBP−2510)のカートリッジに組み込み、画像出しを行なった。そして、画像出し中に評価用マシンを強制停止させ、白地部分における感光ドラムへのトナー飛翔量を、テープ転写による濃度比較(マクベス濃度計により測定)により測定した。評価は、初期と3000枚複写後(3K後)のそれぞれについて行ない、測定値が0.15未満のものを「○」とし、測定値が0.15以上のものを「×」とした。
【0074】
(耐ヘタリ性)
各導電性ロールを市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)製、LBP−2510)のカートリッジに組み込んだ状態で、気温32.5℃、湿度80%の環境下で2週間放置し、その後ハーフトーン画像をNN環境(23℃×53%RH)で画像出しを行なった。画像上に圧接部に起因する不良がない場合を「○」とし、圧接痕(セット痕)に起因するスジ状の不良が発生した場合を「×」とした。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
比較例1では、ウレタンアクリレートオリゴマーの数平均分子量(Mn)が小さいため、JIS−A硬度が高い。また、比較例3では、ウレタンアクリレートオリゴマーの官能基数が2を超えているため、JIS−A硬度が高い。その結果、画像評価においてカブリの発生量が多い。比較例2では、ウレタンアクリレートオリゴマーの数平均分子量(Mn)が大きいため、耐ヘタリ性に劣っている。
【0078】
比較例4では、導電性組成物の調製において溶剤を用いている。これにより、基層の膜厚を厚くすることができないため、JIS−A硬度が高くなった。そのため、画像評価においてカブリの発生量が多い。比較例5では、導電性組成物が単官能モノマーを含有していない。また、溶剤も用いていない。そのため、導電性組成物の粘度が高くなりすぎて、基層を形成することができなかった。
【0079】
これに対し、実施例に係る各導電性組成物は、特定のウレタンアクリレートオリゴマーと、単官能モノマーと、光重合開始剤と、イオン導電剤とを含有し、ウレタンアクリレートオリゴマーと単官能モノマーとの混合比が特定範囲内にある。そのため、この導電性組成物を硬化させて得られた実施例に係る各導電性ロールの基層は低硬度で耐ヘタリ性に優れることが確認できた。
【0080】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールを表す周方向断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 電子写真機器用導電性ロール
12 導電性シャフト
14 基層
16 表層
18 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)官能基数1〜2で、数平均分子量(Mn)1300以上5000未満のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、
(B)単官能モノマーと、
(C)光重合開始剤と、
(D)イオン導電剤とを含有し、
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分は20〜100質量部の範囲内にあることを特徴とする紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項2】
前記(B)単官能モノマーは、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項3】
前記(B)単官能モノマーは、アミノ基を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項4】
前記(B)単官能モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項5】
(E)疎水性フィラーをさらに含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の紫外線硬化型導電性組成物が硬化されて形成された層を有する電子写真機器用導電性ロール。
【請求項7】
前記層は、基層であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真機器用導電性ロール。

【図1】
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【公開番号】特開2009−235157(P2009−235157A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80101(P2008−80101)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】