説明

細胞のアポトーシス活性のモディファイヤーを同定するための迅速な方法

【課題】ヒトの疾患の治療的処置のために、アポトーシスの経路を特異的に調節し得る化合物を同定するための、迅速でありそして効率的な方法などの提供。
【解決手段】細胞の特異的なアポトーシス活性を測定する、単一ウェルのマイクロスケールの方法であって、該方法は、細胞の集団を覆うために十分な容量の、アポトーシス特異的診断試薬および診断のアクセサリー試薬を含有する培地と、約1×10個の細胞の細胞の集団とを、約30分と4時間との間の時間接触させる工程、ならびにアポトーシス特異的診断試薬の活性を測定する工程を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、プログラムされた細胞死の生物学的プロセスに関する。そしてより詳細には、アポトーシス活性を測定する迅速な方法、およびアポトーシスを調節する化合物のスクリーニングする迅速な方法に関する。
【0002】
細胞は、少なくとも2つの根本的に異なる生物学的プロセスによって死滅し得る。壊死と呼ばれる1つのプロセスは、通常、大量の生理学的または化学的傷害の結果として生じる、細胞または組織の死をいう。壊死は、細胞の膨張した小器官の崩壊および細胞外空間への細胞の細胞質の漏出によって、一部特徴付けられ、そして一般的には、受動的なプロセスであると考えられている。
【0003】
細胞死の別のプロセスは、アポトーシスまたはプログラムされた細胞死として知られている。哺乳動物細胞中での細胞死のこの機構は、能動的な細胞の自殺を示す、一連の形態学的および生化学的変化によって特徴付けられている。アポトーシス性の変化として、細胞の萎縮、核のクロマチンの凝集、および縁の形成(margination)、およびDNAの断片化が挙げられる。生化学的事象として、ホスファチジルセリンの外面化およびアスパラギン酸特異的システインプロテアーゼの活性化が挙げられる。
【0004】
後者の生化学的事象に関して、ICE/CED-3ファミリーとしてもまた公知であるシステイ
ンアスパラギン酸プロテアーゼファミリーの中のプロテアーゼが、アポトーシスのプロセスを実行するために重要である。これらの酵素はシステインプロテアーゼであり、そしてアスパラギン酸残基の後ろでの切断について基質特異性を示す。これらの特徴に起因して、これらの酵素は、現在、上記の用語「システインアスパラギン酸プロテアーゼ」または「カスパーゼ(caspase)」と呼ばれる。アポトーシスのプロセスの間、カスパーゼ活性
は細胞中で生成され、そしてプロテアーゼのカスパーゼファミリーの公知のインヒビターはアポトーシスを阻害する。
【0005】
アポトーシスは、いくつかの理由によって臨床的に重要である。腫瘍学の分野において、多くの臨床的に有用な薬物は、アポトーシスを誘導することによって腫瘍細胞を殺傷する。例えば、ガンの化学療法剤(例えば、シスプラチン、エトポシド、およびタキソール)は全て、標的細胞中でアポトーシスを誘導する。さらに、種々の病理学的疾患状態は、適切に調節されたアポトーシスを細胞に受けさせることの失敗によって生じ得る。例えば、アポトーシスを受けさせることの失敗によって、多くの自己免疫疾患において生じるような、自己反応性リンパ球の病理学的蓄積を導き得、そしてまた、ウイルスに感染した細胞の蓄積および過増殖性の細胞(例えば、新生物または腫瘍細胞)の蓄積を導き得る。従って、アポトーシスを特異的に誘導し得る有効な化合物の開発は、これらの病理学的疾患状態の処置において治療的に価値がある。
【0006】
対照的に、アポトーシスの阻害もまた、臨床的に重要である。例えば、細胞は、発作および心筋梗塞後に、それぞれ、脳および心臓におけるアポトーシスによって死滅すると考えられる。さらに、アポトーシスの不適切な活性化もまた、種々の他の病理学的疾患状態(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)、神経変性疾患、および上記に列挙されるもの以外の虚血損傷を含む)に寄与し得る。アポトーシスのインデューサーが、上記の疾患状態において有益であるので、アポトーシスの特異的インヒビターは、同様に、これらの後者の病理学的疾患状態の処置において治療的に価値がある。
【0007】
薬物の発見は、目的の標的と相互作用する特異的な分子を迅速に同定し得る、効率的な高スループット方法の使用によって利点を与えられる。これまでのところ、アポトーシスの経路を特異的に調節する化合物の同定は、このような方法がないことによって遅れている。利用可能な方法は、特異性および/または効率性のいずれかがないことによって制限されている。例えば、ほとんどの抗ガン剤は、細胞を殺傷するそれらの能力についてスクリーニングされ、従って、壊死またはアポトーシスの両方を誘導する化合物を同定する。さらに、これらの方法の多くは、しばしば、それらが細胞の生存性の評価を必要とし、そして実行に日数を要する点で、扱いにくい。
【0008】
アポトーシスについて特異的である方法を考案する試みが、行われている。例えば、細胞の集団中で誘導されるDNAの分解の量は、アポトーシスの測定のために使用されている
。しかし、DNAの分解は、アポトーシスのプロセスにおいて比較的後期の工程である。さ
らに、DNAの分解は、アポトーシスについて正確に特異的ではない。なぜなら、DNAは、壊死細胞中でも最終的に分解されるからである。
【0009】
現在使用されている他の方法は、比較的短い時間の枠の中でアポトーシスを測定する試みとして、代謝の測定を使用する。例えば、アポトーシスを受けている細胞は、アラマーブルー(alamarblue)のような色素を使用して、またはMTT(3-(4,5-)ジメチル)チアゾール-2-イル-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)のホルマザンへの還元のような比色アッセイによって測定され得る、損なわれたミトコンドリア機能を示す。しかし、損なわれたミトコンドリア機能は、アポトーシスについて特異的ではない。なぜなら、これもまた、壊死細胞によって示される特徴であるからである。
【0010】
アポトーシスの測定が特異的であるようであり、そして比較的短い時間の時間で行われる1つの方法が、記載されている。例えば、CPP32基質のアナログであるDEVD-AMCの蛍光
切断産物を測定することによる、カスパーゼ活性の良好な測定が報告されている(Armstrongら、J.Biol. Chem. 271:16850-16855(1996))。しかし、この方法は、細胞の溶解
物および反応混合物の別々の調製、ならびにアッセイ手順におけるサンプルの洗浄を含むさらなる操作を必要とする。これらのさらなる操作を行うために必要とされる余分な時間に加えて、この方法は、溶解物および反応混合物の別々での調製の必要性に起因して、単一の工程では行われ得なかった。従って、アポトーシスの高スループットアッセイに関して、特異性において獲得され得る利点は、カスパーゼ活性を測定するために受ける非効率性によって失われた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
細胞の溶解物および反応混合物の別々の調製が必要とされていないアポトーシスに特異的な別の方法が、報告されている(Losら、Nature 375:81-83(1995))。この方法は同様に、ICE基質アナログの切断産物を測定することによるアポトーシスの誘導後にカスパ
ーゼ活性を測定した。細胞を完全には溶解しない界面活性剤の使用によって、サンプルおよび反応物の別々の調製は、回避された。しかし、細胞の構成要素の不完全な可溶化は、この方法の感受性の低下を生じ得る。さらに、基質の切断の検出は、別々の手順によって行われ、そして上記のArmstrongらの方法を用いる場合のように、手順の時間を延長する
さらなる操作および工程が、同様に必要とされた。
【0012】
従って、ヒトの疾患の治療的処置のために、アポトーシスの経路を特異的に調節し得る化合物を同定するための、迅速でありそして効率的な方法の必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たし、そして関連する利点を同様に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)細胞の特異的なアポトーシス活性を測定する、単一ウェルのマイクロスケールの方法であって、該方法は、細胞の集団を覆うのために十分な容量の、アポトーシス特異的診断試薬および診断のアクセサリー試薬を含有する培地と、約1×10個の細胞の細胞の集団とを、約30分と4時間との間の時間接触させる工程、ならびにアポトーシス特異的診断試薬の活性を測定する工程を包含する、方法。
(2)前記細胞集団が、約10,000個より多い細胞、より好ましくは約50,000個の細胞、そして好ましくは約100,000個の細胞をさらに含む、項目1に記載の方法。
(3)前記時間が、約30分と約4時間との間、より好ましくは約30と約2時間との間、そして好ましくは約1時間をさらに含む、項目1に記載の方法。
(4)前記容量が、約1μlと約200μlとの間、好ましくは約30μlと約200μlとの間、より好ましくは約100μlをさらに含む、項目1に記載の方法。
(5)前記アポトーシス特異的診断試薬が、カスパーゼ特異的基質またはアネキシンVをさらに含む、項目1に記載の方法。
(6)前記診断のアクセサリー試薬が、溶解試薬またはカルシウムである、項目5に記載の方法。
(7)前記アポトーシス特異的診断試薬が、検出可能な標識に結合されたカスパーゼ特異的基質を含む、項目1に記載の方法。
(8)前記アポトーシス特異的診断試薬が、ZEVD−AMC、YVAD−AMC、およびDEVD−AMCからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(9)マルチウェル形式をさらに含む、項目1に記載の方法。
(10)多数の異なるサンプルの同時の測定のための、多数の異なる単一ウェルをさらに含む、項目1に記載の方法。
(11)アポトーシスを誘導する化合物を同定する方法であって、該方法は、以下:
(a)細胞生存性ポリペプチドを過剰発現する細胞を提供する工程であって、該細胞生存性ポリペプチドは、アポトーシスの誘導を妨げるに十分なレベルで過剰発現されている、工程;
(b)細胞死の経路の直接的な刺激因子で、該細胞生存性ポリペプチドを過剰発現する該細胞を処理する工程;
(c)アポトーシスを誘導する活性について試験される化合物を添加する工程;および
(d)細胞のアポトーシス活性を測定する工程であって、該活性の存在がアポトーシスのインデューサーである該化合物の指標である、工程、
を包含する、方法。
(12)前記細胞生存性ポリペプチドが、Bcl−2、BcL−xL、Mcl−1、およびE1B−19Kを含む、項目11に記載の方法。
(13)前記細胞生存性ポリペプチドが、細胞死の経路の直接的な刺激因子の誘導を妨げるためのレベルで過剰発現される、項目11に記載の方法。
(14)前記細胞生存性ポリペプチドが、Fasリガンド、抗Fas抗体、スタウロスポリン、UV照射およびγ線照射からなる群より選択される直接的な刺激因子によるアポトーシスの誘導を妨げるレベルで過剰発現される、項目13に記載の方法。
(15)前記細胞死の経路の直接的な刺激因子が、Fasリガンド、抗Fas抗体、スタウロスポリン、UV照射およびγ線照射からなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(16)前記細胞生存性ポリペプチドが、外来性の核酸によってコードされる、項目11に記載の方法。
(17)前記外来性の核酸が、同種核酸または異種核酸のいずれかである、項目16に記載の方法。
(18)前記細胞生存性ポリペプチドが、内因性の核酸によってコードされる、項目11に記載の方法。
(19)前記アポトーシス誘導活性について試験される化合物が、細胞中のカスパーゼ活性を誘導する化合物をさらに含む、項目11に記載の方法。
(20)前記アポトーシス誘導活性について試験される化合物が、細胞生存性ポリペプチドの活性を阻害する化合物をさらに含む、項目11に記載の方法。
(21)前記アポトーシス誘導活性について試験される化合物が、細胞死ポリペプチドの活性を促進する化合物をさらに含む、項目11に記載の方法。
(22)前記工程(d)のアポトーシス活性の工程が、前記細胞を溶解させる工程、および該溶解物中のカスパーゼ活性を測定する工程をさらに包含する、項目11に記載の方法。
(23)前記工程(d)のアポトーシス活性の工程が、アネキシン5と前記細胞とを接触させる工程、および結合したアネキシン5の量を測定する工程をさらに包含する、項目11に記載の方法。
(24)アポトーシスを阻害する化合物を同定する迅速な方法であって、該方法が以下:(a)多数の細胞の集団と、アポトーシス阻害活性について試験される異なる化合物とを別々に接触させる工程;
(b)約2分と3時間との間の時間、細胞死の経路の直接的な刺激因子とともに該細胞をインキュベートする工程;および
(c)該細胞の特異的なアポトーシス活性を測定する工程、
を包含する、方法。
(25)前記細胞死の経路の直接的な刺激因子が、Fasリガンド、抗Fas抗体、およびスタウロスポリン、UV照射およびγ線照射からなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(26)前記工程(c)が、前記細胞を溶解させる工程、および該溶解物中のカスパーゼ活性を測定する工程をさらに包含する、項目24に記載の方法。
(27)前記化合物が、カスパーゼ阻害活性を示す、項目24に記載の方法。
(28)前記化合物が、細胞生存性ポリペプチドの活性を促進する、項目24に記載の方法。
(29)前記化合物が、細胞死ポリペプチド阻害活性を示す、項目24に記載の方法。
発明の要旨
本発明は、細胞の特異的なアポトーシス活性を測定する、単一ウェルのマイクロスケール法を提供する。この方法は、細胞の集団を覆うために十分な容量の、アポトーシス特異的診断試薬および診断のアクセサリー試薬を含有する培地と、約1×105個の細胞の細胞
の集団とを、約30分から4時間の間の時間接触させる工程、ならびにアポトーシス特異的診断試薬の活性を測定する工程を含む。本発明はまた、アポトーシスを誘導する化合物を同定する方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む:(a)アポトーシスの誘導を妨げるに十分なレベルで、細胞生存性ポリペプチドを過剰発現する細胞を提供する工程;(b)細胞死の経路の直接的な刺激因子で細胞生存性ポリペプチドを過剰発現する細胞を処理する工程;(c)アポトーシスを誘導する活性について試験される化合物を添加する工程;および(d)細胞のアポトーシス活性を測定する工程であって、その活性の存在がアポトーシスのインデューサーである化合物の指標である、工程。本発明はさらに、アポトーシスを阻害する化合物を同定する迅速な方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む:(a)多数の細胞の集団を、アポトーシス阻害活性について試験される種々の化合物と別々に接触させる工程;(b)約2分から3時間の間の時間、細胞死の経路の直接的な刺激因子とともに細胞をインキュベートする工程、および(c)細胞の特異的なアポトーシス活性を測定する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、アポトーシスの迅速なそして効率的な測定のための新規の方法に関する。この方法は、細胞死の他の形態からアポトーシスを区別する点、および単一の工程で、そして小スケールの分析において行われ得る点で有利である。さらに、この方法は、約30分から4時間の間の時間で行われ得る点で迅速である。これらの利点によって、特異性を有して、そして当該分野で公知の以前の方法を用いては以前には達成されなかった時間で、多数のサンプルの高スループットスクリーニングが可能である。システインアスパラギン酸プロテアーゼ、またはアポトーシスの他の特異的な指標の活性を測定するこの方法は、細胞死の他の形態からアポトーシスを区別する。従って、この方法は、Bcl-2の機能を阻害
する化合物のような、アポトーシスのインデューサーの特異的な同定のために、有利に使用され得る。
【0015】
1つの実施態様において、本発明は、溶解剤、および1つ以上のアスパラギン酸特異的システインプロテアーゼの検出可能な基質を含む、単一の緩衝液が添加される、アポトーシスを測定する方法に関する。検出可能な基質の具体的な例は、プロテアーゼ切断後に蛍光を発する、ペプチドアナログDEVD-AMCである。基質との同時の溶解によって、洗浄または他の試薬の移動の必要性を伴わない、アスパラギン酸特異的システインプロテアーゼ活性の迅速な測定が可能である。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、アポトーシスを誘導する化合物を同定する方法に関する。この方法は、Fas抗原を発現し、そして細胞生存性ポリペプチドであるBcl-2を過剰発現するように操作されており、そして抗Fas抗体で処理されている細胞株中で誘導され
るシステインアスパラギン酸プロテアーゼ活性の測定を使用する。正常な操作されていない細胞株においては、抗Fas抗体での処理は、迅速なアポトーシスを生じる。しかし、操
作された細胞株において、アポトーシスの進行は、Bcl-2の持続的な存在によってブロッ
クされる。アポトーシスを誘導する化合物は、これもまた抗Fas抗体とともにインキュベ
ートされている操作された細胞株とともにそれらをインキュベートすること、次いで、上記の方法を使用してアポトーシスを測定することによって同定される。Bcl-2の過剰発現
に起因して、アポトーシスのインデューサーを同定するためのこの方法は、Bcl-2の機能
を阻害するか、またはBcl-2の遮断経路の下流の細胞死の経路を刺激するかのいずれかで
ある化合物を同定する。さらに、操作された細胞がプロアポトーシス性の抗Fas抗体で処
理されるので、これらの細胞は、プログラムされた細胞死のためにプライムされ、その結果、細胞は、一旦ポジティブなアポトーシスのインデューサーで処理されると、わずかな遅滞時間を伴うか、または全く遅滞時間を伴わない。細胞のこのプライムは、アポトーシスのインデューサーを同定するためのさらなる感受性および速度を提供する。細胞死のためのプライムは、スタウロスポリン、TNF、ならびにTNFおよびシクロヘキシミドを含むがこれらに限定されない他のアポトーシスの刺激によって提供され得る。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、アポトーシスの阻害因子を同定する方法に関する。この方法もまた、上記の単一工程の方法を利用するが、指標となる細胞株は、細胞生存性ポリペプチドの過剰発現を必要とはしない。かわりに、細胞は、阻害活性について試験される化合物とともに最初にインキュベートされ、次いで、抗Fas抗体のようなアポトーシ
スの直接的な刺激因子で処理される。阻害性の化合物の非存在下では、細胞は続いて、アポトーシスを受ける抗Fas抗体で処理され、そしてアスパラギン酸特異的システインプロ
テアーゼ活性の迅速な誘導を示す。対照的に、ポジティブな化合物は、コントロールサンプルと比較して、プロテアーゼ活性の出現を阻害する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「アポトーシス」は、プログラムされた細胞死として公知である生理学的プロセスを意味するように意図される。このプロセスは、正常な生理学的条件下での細胞の代謝回転を調節する細胞死の形態とは、形態学的および生化学的に異なる。形態学的特徴として、細胞の萎縮、クロマチンの凝集、核の細分化、および別個の膜結合アポトーシス体への最終的な細胞の崩壊を含む、一連の変化が挙げられる。生化学的特徴として、例えば、細胞性DNAのヌクレオソーム内切断、およびプロテアーゼのICE/Ced-3ファミリーの活性化が挙げられる。用語「アポトーシス」は、句「プログラムされた細胞死」と同義的に本明細書中で使用される。これらの用語は、それらが当業者に公知でありそして使用されるようなそれらの用途と一致するように意図される。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「単一ウェル」は、アポトーシスのアッセイ方法に関して使用される場合、特異的なアポトーシス活性の決定を達成するために行われる全ての作用、プロセス、または測定が、細胞が1つのウェルまたは容器から他へ移動されることを必要とする、中間処理工程の必要性を伴わずに行われることを意味するように意図される。このような中間処理工程として、例えば、以下が挙げられ得る:細胞の回収;洗浄工程;精製工程;分離工程;さらなる緩衝液または試薬の交換;培地、試薬、または溶解物の移動;あるいは分析のためのサンプルの移動または処理。しかし、この用語は、他の緩衝液または試薬の添加または混合を含む。従って、用語「単一のウェル」は、この方法が、細胞のサンプルに、インキュベーションの適切な時間後に特異的なアポトーシス活性を決定するために必要な全ての試薬を添加することによって行われ得ることを意味するように意図される。このような試薬の添加は、単回の工程において行われ得るか、またはそれらは、連続的に添加され得る。従って、特異的なアポトーシス活性の測定は、サンプルのさらなる処理または移動を伴わずに行われる。用語単一ウェルはまた、測定可能な形式および自動化された手順をも含むように意図される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「マイクロスケール」は、マイクロリットル(μl
)またはサブマイクロリットル用量で測定される目盛りで行われ得る方法を意味するように意図される。そしてこれによって、多くのサンプルの測定が、例えば、マルチウェルプレートで並行して行われ得る。このような目盛りは、ミリリットル(ml)およびマルチウェル形式に敏感には反応しない手順とは対照的である。マルチウェル形式の特異的な例は、96ウェルELISAプレートである。マイクロスケールの測定可能な容量は、約1〜200μl
の間であり、より好ましくは、約30〜125μlの間であり、そして好ましくは約100μlである。従って、マイクロスケール法は、例えば、マイクロウェルプレート形式(例えば、96ウェルまたは他のマルチウェルサンプル形式)で専ら行われる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「特異的なアポトーシス活性」は、プログラムされた細胞死の経路の活性化に特異的に起因する細胞活性を意味するように意図される。プログラムされた細胞死は、種々の分子(Bcl-2およびBaxポリペプチドを含む)およびシステイン-アスパラギン酸プロテアーゼ(カスパーゼ)のICE/Ced3ファミリーのメンバーの活
性化によって、影響を与えられるかまたは調節される。従って、プログラムされた細胞死の経路の活性化に特異的に起因する細胞の活性は、上記の分子のファミリーを含む分子の活性を意味するように意図される。これは、アポトーシスの経路を調節するかまたはそれに関与し、そしてその活性は、これらの細胞におけるアポトーシスの出現と相関する。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「直接的な刺激因子」は、細胞死の経路に関して使用される場合、細胞の特異的なアポトーシス活性を増大する試薬を意味するように意図される。直接的な刺激因子の特異的な例として、例えば、Fasリガンド、抗Fas抗体、スタウロスポリン、紫外線(UV)照射およびγ線照射が挙げられる。他の直接的な刺激因子が存在し、そして当業者に公知である。従って、アポトーシスの直接的な刺激因子は、アポトーシスを増強するかまたはそれに関与する分子の上記のファミリーの分子の活性を増大する試薬である。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「アポトーシス特異的診断試薬」または「診断試薬」は、細胞の特異的なアポトーシス活性を特異的に測定するかまたは細胞の特異的なアポトーシス活性の特異的な測定のために作成され得る試薬を意味するように意図される。このような試薬として、例えば、カスパーゼ活性の測定が挙げられる。さらに、このような測定は、直接的または間接的のいずれかであり得る。アポトーシス特異的診断試薬として、切断の際に蛍光を発するカスパーゼファミリーのメンバーの基質アナログが挙げられ得る。このような基質アナログの特異的な例として、例えば、ZEVD-AMC、YVAD-AMC、およびDEVD-AMC(それぞれ、カルボベンズオキシ-Glu-Val-Asp-アミノメチルクマリン、Tyr-Val-Ala-Asp-AMC、およびAsp-Glu-Val-Asp-AMC)が挙げられる。
【0024】
細胞生存性ポリペプチドまたは細胞死ポリペプチドの結合または活性を測定するこれら以外の試薬は、同様に、このような試薬がアポトーシス性の事象を特異的に測定し得るかまたはアポトーシス性の事象の特異的な測定のために作成される限りは、この用語の定義内に含まれる。このようなアポトーシス特異的診断試薬の例は、リン脂質結合ポリペプチドである、アネキシンV(AnnexinV)である。この試薬は、カルシウム依存性の様式で
ホスファチジルセリンに結合する。アポトーシス性の細胞についての測定としてのホスファチジルセリンの特異性は、この脂質が細胞膜の内表面上に主に見出されるが、細胞死の際に外表面に転位されるという事実に基づく。生存性株と組み合わせてのその使用は、アポトーシス媒介性の細胞死についての特異性を提供し得る。従って、外膜表面でのホスファチジルセリンの測定は、アポトーシス特異的診断試薬として使用され得る。アポトーシスの他の特異的な指標が存在し、そして当業者に公知である。このような他の特的な指標は、本明細書中で定義され、そして使用される用語の定義内に含まれるように意図される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「診断アクセサリー試薬」または「アクセサリー試薬」は、アポトーシス特異的診断試薬が機能するために必要とされる試薬を意味するように意図される。この薬剤は、単一のイオン、有機分子または無機分子、巨大分子、あるいはその任意の組み合わせであり得る。診断試薬の機能について必要とされるものは、生化学的または生理学的であり得る。生化学的に必要とされるものの具体的な例は、カルシウムがリン脂質の結合に必要とされるアネキシンVの場合に見出される。アクセサリー試薬についての生理学的要件は、カスパーゼ活性が測定される場合にある。カスパーゼ活性を測定するために、細胞が溶解されるか、または基質アナログが膜を浸透するようになるかのいずれかである。アクセサリー試薬は、このような溶解または細胞膜の通過を容易にした。このようなアクセサリー試薬の例は、細胞を溶解し得るか、または細胞膜を崩壊させ得る試薬であるか、あるいは膜に孔をあけて分子および巨大分子が膜を通過することを可能にする試薬である。このような試薬は、当業者に公知であり、そして本明細書中で使用されるような定義の範囲内であることが意図される。
【0026】
従って、用語「溶解剤」は、本明細書中で使用される場合、細胞膜の完全性の解消または減失を生じ得る試薬を意味するように意図される。このような試薬として、一般的には、例えば、SDS、NP-40、およびトライトン(triton)のような界面活性剤が挙げられるが、界面活性剤以外の溶解剤もまた、このような試薬が細胞性のアポトーシス活性およびアポトーシス特異的診断試薬を使用する検出を妨害しない限りは、定義内に含まれる。さらに、この用語の意味はまた、細胞の崩壊を生じないが、その代わりに、膜を透過性にし得、そして診断試薬の進入を可能にする、界面活性剤または他の試薬を含むことが意図される。このような溶解剤の特異的な例として、ジギトニンが挙げられる。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「化合物」は、アポトーシスを誘導または阻害し得る試薬に関して使用される場合、細胞の特異的なアポトーシス活性を調節し得る分子を意味するように意図される。このような分子として、有機低分子または無機低分子、および大きな巨大分子が上げられ得る。低分子の特異的な例として、エトポシドおよびカルボベンズオキシ-VaL-Ala-Asp-フルオロメチルケトンが挙げられる。細胞の特異的なアポトー
シス活性を調節し得る巨大分子の例として、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、および脂質が挙げられる。実質的に同じ活性または阻害活性を示す、このような化合物の機能的または構造的アナログまたは模倣物もまた、本明細書中で使用される用語の意味に含まれる。分子の型、大きさ、または形状は、分子が、細胞の特異的なアポトーシス活性を誘導し得るかまたは阻害し得るかのいずれかである限りは、重要ではない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞生存性ポリペプチド」は、細胞の特異的なアポトーシス活性を阻害し得るペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味するように意図される。細胞生存性ポリペプチドとして、Bcl-2、Bcl-xL、Mcl-1、およびアデノウイルスのE1B-19Kタンパク質のような、プログラムされた細胞死の経路を直接調節するポ
リペプチド、ならびにプログラムされた細胞死の経路を間接的に調節するポリペプチドが挙げられる。
【0029】
用語「細胞生存性ポリペプチド」の意味はまた、これらが細胞の特異的なアポトーシス活性を阻害する能力を有する限りは、機能的なフラグメントを含む。この用語はまた、このようなポリペプチドが上記で定義されるような機能的活性を維持する限りは、例えば、D-立体異性体のような天然に存在するアミノ酸の改変された形態、天然には存在しないアミノ酸、アミノ酸アナログ、および構造的な模倣物を含むポリペプチドを含むように意図される。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「過剰発現」は、細胞生存性ポリペプチドのレベルに関して使用される場合、対応する正常な細胞中のそれらのレベルと比較して、過剰発現している細胞中での細胞生存性ポリペプチドの増大した蓄積を意味することが意図される。過剰発現は、天然の生物学的な現象によって、および遺伝子操作された細胞を用いる場合は、特定の改変によって達成され得る。過剰発現はまた、内因性の機構または外因性の機構の両方による、細胞生存性ポリペプチドにおける増大の達成を含む。天然の現象による過剰発現は、例えば、発現、プロセシング、輸送、翻訳、またはRNAの安定性を増大す
る変異、およびポリペプチドの増大した安定性または減少した分解を生じる変異によってもたらされ得る。増大した発現レベルのこのような例はまた、過剰発現の内因性の機構の例である。外因性の機構による過剰発現を生じる天然の生物学的現象の特定の例は、レトロウイルスの隣接した組み込みである。特定の改変による過剰発現は、例えば、適合性のベクター−宿主系において細胞生存性ポリペプチドを構築し、そして安定にまたは一時的に過剰発現させるための、当該分野で公知の組換え方法の使用によって達成され得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞死ポリペプチド」は、細胞の特異的なアポトーシス活性を増大させ得るかまたは誘導し得る、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味することが意図される。細胞死ポリペプチドとして、Bax、Bad、Bcl-xS、Bak
、およびBikのようなプログラムされた細胞死の経路を直接調節するポリペプチド、なら
びに、プログラムされた細胞死の経路を間接的に調節するポリペプチドが挙げられる。細胞死ポリペプチドとしてまた、例えば、カスパーゼのICE/Ced3ファミリーが挙げられる。なぜなら、このようなカスパーゼは、プログラムされた細胞死を誘導し得るからである。
【0032】
用語「細胞死ポリペプチド」の意味はまた、それらが細胞の特異的なアポトーシス活性を増強または誘導する能力を有する限りは、機能的なフラグメントを含む。対応する細胞生存性ポリペプチドの機能的なフラグメントを用いる場合、この用語はまた、例えば、このようなポリペプチドが上記で定義されるような機能的活性を維持する限りは、例えば、D-立体異性体のような天然に存在するアミノ酸の改変された形態、天然には存在しないアミノ酸、アミノ酸アナログ、および構造的な模倣物を含むポリペプチドを含むことが意図される。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「アスパラギン酸特異的システインプロテアーゼ」または「カスパーゼ」は、C. elegansのced-3遺伝子産物に一般的に関連するプロテアーゼのファミリーを意味することが意図され、そして例えば、ヒトICE(インターロイキン-1-β転換酵素)、ICH-1L、CPP32、Mch2、Mch3、Mch4、Mch5、Mch6、ICH-2、およびICErel-IIIが挙げられる。Ced3に対して共有される相同性に加えて、既知のカスパーゼもまた、以下の特徴を共有する:1)これらは、Asp-x結合での基質の切断について特異性を有す
るシステインプロテアーゼ活性を示す、2)保存されたペンタペプチド配列(QACRG、QACGG、または関連する配列)を活性部位内に含む、そして3)プロテアーゼ活性の活性化のための特定のアスパラギン酸残基でのタンパク質分解的切断を必要とするプロ酵素として合成される。これらのプロテアーゼは、細胞死ポリペプチドとして本明細書中で定義されているが、アポトーシスを阻害するように機能するカスパーゼのいくつかの別の構造的な形態(例えば、ICEδ、ICEε、ICH-1s、およびMch2β)が存在する。これらの別の形態は、本質的には、優性な陰性の変異体として作用し、従って、細胞生存性ポリペプチドであると考えられる。
【0034】
本発明は、細胞の特異的なアポトーシス活性を決定する、単一ウェルのマイクロスケールの方法を提供する。この方法は、細胞の集団を覆うためにアポトーシス特異的診断試薬および診断アクセサリー試薬を含有する十分な容量の培地と約1×105個の細胞の細胞の
集団とを、約30分から4時間の間の時間接触させる工程、ならびに上記のアポトーシス特異的診断試薬の活性を決定する工程から構成される。
【0035】
本発明の方法は、迅速であり、効率的であり、かつアポトーシスに特異的であるという点で、当該分野で公知の方法を超える有意な利点を提供する。速度および効率は、少なくとも、全ての工程の要件が、アポトーシス活性の測定のために単一のマイクロウェルから細胞を取り出す工程を伴わずに行われることに起因する。特異性は、少なくとも、アポトーシス特異的な生化学的事象の測定に起因し得る。
【0036】
速度および効率に関して、別々の手順は、細胞の溶解およびアッセイ条件については必要とされない。さらに、特異的なアポトーシス性の事象が生じるための適切なインキュベーション時間後に、この方法には、さらなる洗浄手順、さらなる容器への移動、および/または独立した測定手順に必要とされる引き続く操作は存在しない。従って、本発明の方法は、本質的に、細胞のサンプルを採取し、そしてアポトーシスの特異的な検出に必要な全ての試薬を含む単一の溶液を添加し、混合物をインキュベートし、次いで、混合物中のアポトーシス活性を測定する。
【0037】
アポトーシスは、種々の細胞の型、供給源、および形式において測定され得る。通常は、細胞のサンプルは、例えば、真核生物細胞株またはたの培養細胞の型であり、そして細胞のサンプルの分析が可能であるように処理されたかまたは未処理の組織培養ディッシュまたはマルチウェルプレート中に配置される。細胞のサンプルは、例えば、接着細胞の型または懸濁物中で増殖させられた細胞のサンプルであり得る。他の型の細胞のサンプル(例えば、組織)が、本発明の方法における使用について同様に敏感に反応する。当業者は、種々の型の細胞のサンプルについてこの方法の実施を可能にするために必要である適切な条件を知っているか、または決定し得る。
【0038】
本発明の方法において利用される細胞の数は、細胞型、およびどの診断試薬が細胞の特異的なアポトーシス活性を決定するために使用されるかに依存して変更され得る。例えば、ジャーカットT細胞株は、比較的高レベルのカスパーゼ活性を発現し、そして正確な測定値を得るために必要とされる細胞は、100,000個よりも少ない。ジャーカット株と比較
してより低いレベルのカスパーゼ活性を発現する細胞もまた、使用される。しかし、より多くの細胞の集団が、必然的に使用され得る。当業者は、特定の細胞のサンプルにおけるカスパーゼ活性の相対的なレベルを知っているか、または決定し得、従って、特異的なアポトーシス活性を決定するために必要とされる細胞の量を知り得る。
【0039】
従って、本発明は、わずか10,000個および1×106個ほどの細胞の細胞集団中の特異的なアポトーシス活性の測定を提供する。通常は、細胞の集団は、比較的簡単な検出が可能であるためには約50,000個より多く、そして好ましくは細胞の集団は約100,000個である。
もちろん、細胞の集団はさらに、上記に与えられるそれらの量と比較してさらに減少され得る。そしてこの方法は、アポトーシスの刺激因子、検出試薬、および/またはそれらの両方を伴う、わずかにより長いインキュベーション時間を可能にすることによって補われ得る。従って、本発明の実施のために使用され得る当業者に利用可能である種々の代替方法が、存在する。
【0040】
アポトーシスに必要とされる試薬として、アポトーシス特異的診断試薬およびアクセサリー試薬が挙げられる。診断試薬は、測定される特異的なアポトーシス性の事象に依存して変化する。例えば、カスパーゼ活性が特異的なアポトーシスの活性のマーカーとして使用され得る。活性は、例えば、検出可能な部分を含むカスパーゼ基質のアナログを使用して決定され得る。種々の異なる標識が検出可能な部分に利用され得るが、本発明の単一ウェルの方法における使用については、検出可能な部分は、出発基質のアナログと比較した場合に、基質の切断後に異なる特性を有するはずである。標識の特性における変化によって、例えば、生成物から未反応の基質または結合していない基質を除去するために、アッセイにおいて行われるさらなる工程の必要性を伴わずに、特異的なアポトーシス活性の測定が可能である。従って、例えば、切断の際に蛍光を発するかまたは発光する検出可能な部分を含む診断試薬は、本発明の単一ウェルの方法における使用に敏感に反応する。切断の際に蛍光を発する検出可能な部分を含むこのようなカスパーゼ基質のアナログの特異的な例として、ペプチドアナログZEVD-AMC、YVAD-AMC、およびDEVD-AMCが挙げられる。あるいは、切断後またはカスパーゼへの結合後ですら異なる波長で蛍光を発する検出可能な部分もまた、本明細書中に記載される方法における使用に敏感に反応する。
【0041】
カスパーゼ基質以外のアポトーシス特異的診断試薬が同様に存在し、そして本発明の方法において代わりに使用され得る。このような他の診断試薬の特定の例として、リン脂質結合ポリペプチドであるアネキシンVが挙げられる。上記のカスパーゼ基質のアナログを用いる場合、これらの他の診断試薬は、本発明の方法において同様に使用され得る。なぜなら、これらは、特異的なアポトーシス性の事象を測定するか、または特異的なアポトーシス性の事象を測定するために作製され得、そしてまた、アポトーシス活性の陽性の指標を得るためにさらなる手順または操作を必要としないからである。
【0042】
例えば、アネキシンVは、細胞死の間に外膜に転移されるホスファチジルセリンに対して高い親和性を有する。従って、アネキシンVの結合は、アポトーシス活性の尺度である。リン脂質の結合は、例えば、アネキシンVのFITC標識化、次いで、濾過による結合していない標識の除去によって決定され得る。メンブレンフィルターを備えた底を有するサンプルウェルの使用は、診断試薬としてのアネキシンVと組み合わせて使用され得る。なぜなら、濾過および引き続く分析が、サンプルの移動またはさらなる処理工程の必要性を伴わずに行われ得るからである。アネキシンV以外の診断試薬が存在し、そして当業者に公知である。このような他の試薬は、本明細書中で提供される教示を仮定として、本発明の方法において同様に使用され得る。
【0043】
アクセサリー試薬もまた、本発明の請求される方法における使用に必要とされる。アクセサリー試薬は、使用される診断試薬の型に依存して変化する。例えば、診断試薬としてカスパーゼ基質のアナログが使用される場合、アクセサリー試薬は、細胞膜の溶解、可溶化、または透過性にすることを可能にする薬剤である。このような手順は、カスパーゼ活性の測定を可能にするために細胞の細胞質成分を遊離させるか、または基質アナログが脂質二重層を通過して移動させるかのいずれかである。膜を破壊するかまたは透過性にするこれら以外の試薬は、それらが測定される特定の分子または活性と診断試薬との共局在を可能にする限り、同様に使用され得る。例えば、脂質小胞または他の送達粒子、ならびにレセプター媒介性の事象は、アポトーシス性の細胞の細胞質成分と診断試薬との共局在についてのアクセサリー試薬として同様に使用され得る。
【0044】
アクセサリー試薬の選択は、測定される特定の適用および/またはアポトーシス性の事象に依存して変化する。アクセサリー試薬は、細胞質性のアポトーシス性の事象の測定のためのカスパーゼ活性に関して上記に記載されている。しかし、別のアクセサリー試薬が、細胞表面または細胞の外部でのアポトーシス性の事象の測定のために使用され得る。これに関して、アポトーシス性の事象が細胞表面または細胞の外部に局在化される場合は、細胞質成分と診断試薬とを同時に用いる必要はない。この特定の場合においては、アクセサリー試薬は、例えば、細胞表面または細胞の外部への診断試薬のより良好な接近を可能にする薬剤であり得る。
【0045】
さらに、アクセサリー試薬はまた、例えば、診断試薬の作用を可能にする補因子または他の化合物であり得る。例えば、診断試薬であるアネキシンVは、カルシウム依存性のリン脂質結合ポリペプチドである。従って、アネキシンVについてのアクセサリー試薬は、アポトーシス性の細胞上でのホスファチジルセリンと診断試薬との結合を促進するための、培地中のカルシウムの存在であり得る。いくつかの例においては、診断試薬の測定または共局在を促進するための試薬の必要性はなくてもよい。これらの特定の例において、アクセサリー試薬は、例えば、診断試薬が最適に作用する緩衝液であり得る。
【0046】
さらに、アクセサリー試薬は、診断試薬を含有する培地中に存在する2つ以上の試薬であり得る。例えば、アクセサリー試薬は、溶解試薬、およびアポトーシス活性の測定を容易にする補因子または他の試薬のような、2つの成分を有し得る。さらに、診断試薬の特異性を増強する試薬が、アクセサリー試薬としてさらに含まれ得る。細胞の生存性を測定する色素が、特異性を増強するこのようなアクセサリー試薬の特定の例である。当業者は、薬剤のどの組合せがアクセサリー試薬として使用されるべきかを知っているか、または決定し得る。従って、アクセサリー試薬の選択は、測定される診断分子およびアポトーシス性の事象に依存する。当業者は同様に、本明細書中で記載される教示を仮定して、どのアクセサリー試薬がどの診断試薬と適合性であるかを知る。
【0047】
使用する細胞型、数および診断試薬に依存して、インキュベーション時間は、必要に応じて、そして測定される特異的アポトーシス活性に従って、変化する。例えば、ジャーカット細胞を使用して、診断試薬ともに30分間程度のインキュベーション時間、カスパーゼ活性の誘導を測定することは、シグナルの検出に必要である。このインキュベーション時間は、例えば、アポトーシスの誘導後に測定される。カスパーゼ活性の具体的な例として、産物の酵素生成は、時間とともに増加し、そして同様にシグナルの増加をもたらす。従って、診断試薬とのより長いインキュベーション時間は、より強いシグナルをもたらす。他の要因は、細胞の特異的アポトーシス活性を決定するのに必要とされるインキュベーション時間を改変するために調整され得る。例えば、細胞数または試薬濃度は、信頼できる測定を得るために必要なインキュベーション時間を減少するために、増加され得る。そのような改変は、当業者にとって公知であるか、または特定の要求のための最適な実行を提供するこれらの改変を決定するために、いくつかの時点にわたり、種々の細胞数および試薬濃度を試験することによって、日常的に決定され得る。通常は、6時間以下が、アポトーシス活性の検出に必要であり、好ましくは、約30分と2時間との間、そして通常は約1時間以下の診断試薬とのインキュベーションが、細胞の特異的アポトーシス活性の測定にとって必要である。
【0048】
細胞型、細胞数、試薬濃度およびインキュベーション時間とともに、培地容量は、所望の結果を得るために、または特定の要求に適合するために変化し得る。例えば、細胞サンプルを覆うのに十分な培地容量は、アポトーシス活性の適切な測定を可能にするように使用されるべきである。容量は、診断試薬およびアクセサリー試薬の可溶性特性に従って調整され得る。本質的に、必要なことの全ては、培地が必要な試薬の適切な量を含み、そして測定される分子に対して利用可能な試薬を作製することである。好ましくは、容量は、96ウェルELISAプレートのようなマイクロウェルチャンバーの容量に制限されるべきで
ある。そのような容量は、一般的に約1と200μlの間、より好ましくは約30と125μlの間、そして好ましくは約100μlである。当業者には、どの容量が特定の状況にとって有
用であるのか公知である。
【0049】
従って、この方法は、多数のサンプルが迅速にかつ効率的にスクリーニングされ得るマルチウェル型式アッセイに従う。特に、96ウェル型式は、実用的な利点を提供する。なぜなら、操作および測定デバイスに適切なプレートは、市販されているからである。そのような手順は、この方法のスピードおよび効率をさらに増加するために、さらに自動化され得る。この方法の特異性と組み合わせたこれらの特徴は、アポトーシスを誘導するか、または阻害するかのいずれか化合物の、高スループットスクリーニングを可能にする。例えば、試験化合物のライブラリーは、複数の細胞サンプル集団に投与され得、そして次にアポトーシスを誘導または阻害するその能力についてアッセイされ得る。異なる試験化合物の各々は、特異的アポトーシス活性を決定する前に、アポトーシスを誘導または阻害するのに十分な時間、投与される。そのようなインキュベーション時間は、通常約2分〜4時間である。同定された化合物は、治療的目的および診断的目的の両方ために有用である。なぜなら、これらは、アポトーシス媒介性疾患の処置および検出を可能にし得るからである。このような化合物はまた、アポトーシス機構に関連した研究において、有用である。なぜなら、これらは、さらなる分子事象を推定するのを補助し得、そして将来の化合物の発見および開発のための特異性をさらに提供し得るからである。
【0050】
細胞の特異的アポトーシス活性を決定するために以前に記載された単一ウェルマイクロスケール方法はまた、アポトーシスのインヒビターの迅速なスクリーニングおよび同定のために使用され得る。従って、本発明はまた、アポトーシスを阻害する化合物の迅速な同定方法を提供する。この方法は、(a)複数の細胞集団を、アポトーシス阻害活性について試験される異なる化合物と、別々に接触させる工程;(b)この細胞を、約2分と3時間の間、細胞死経路の直接的な刺激因子とインキュベートする工程、および(c)細胞の特異的アポトーシス活性を測定する工程、からなる。
【0051】
本発明は、アポトーシスを誘導する化合物を同定する方法をさらに提供する。この方法は、(a)細胞生存性ポリペプチドを過剰発現する細胞を提供する工程であって、この細胞生存性ポリペプチドは、アポトーシスの誘導を防止するのに十分なレベルで過剰発現される、工程;(b)細胞生存性ポリペプチドを過剰発現する細胞を、細胞死経路の直接的な刺激因子で処理する工程;(c)アポトーシス誘導活性について試験される化合物を添加する工程、および(d)細胞性アポトーシス活性を決定する工程であって、ここでアポトーシス活性の存在は、化合物がアポトーシスインデューサーであることの指標である、工程、からなる。
【0052】
アポトーシスのインデューサーを同定する上記の方法は、特に有用である。この方法は、処理される細胞においてアポトーシス活性を測定するための増強された型式を提供し、その結果、細胞がプログラムされた細胞死について「平衡している」。このようにして、細胞は、プログラムされた細胞死に必要な、合成されたおよび/または活性化された全ての必要な成分を有する。必要なものの全ては、細胞を、そのホールディングポイント(holdingpoint)を過ぎてアポトーシスへ押しやる刺激因子である。ポジティブな試験化合
物は、まさにプログラムされた細胞死へ進行する細胞を引き起こす刺激因子である。
【0053】
細胞のプログラムされた細胞死への進行を妨げるホールディングポイントは、細胞生存性ポリペプチドの過剰発現である。細胞生存性ポリペプチドは、アポトーシスを受けるよう誘導された細胞において発現または活性化される場合、アポトーシスを妨げる能力を示すことによって特徴付けられる。例えば、機能する細胞生存性ポリペプチドの非存在下において、アポトーシスインデューサーを用いて処理された細胞は、プログラムされた細胞死経路を開始して、そして最終的にアポトーシスによって死滅する。しかし、細胞生存性ポリペプチド存在下において、アポトーシスインデューサーでの処理は、プログラムされた細胞死経路を開始し得るが、細胞は、経路の間の1つ以上の事象の阻害に起因して生存し得る。細胞生存性ポリペプチドが機能するポイントに依存して、プログラムされた細胞死経路は、最終的な細胞死をもたらす事象のカスケードの実行における、初期または比較的後期に、阻害され得る。細胞生存性ポリペプチドおよびそれをコードする核酸は、当該分野で周知であり、例えば、Bcl-2ファミリーの関連タンパク質である、Bcl-2、Bcl-xL、Mcl-1、E1B-19K、ならびにp35、cmrAのようなカスパーゼのインヒビター、およびカスパ
ーゼのドミナントネガティブ形態が挙げられる。これらの形態は、例えば、活性部位システインの不活性化変異を有するカスパーゼ形態を含む。
【0054】
細胞生存性ポリペプチドの過剰発現は、例えば、当業者にとって公知である組換え方法の使用により達成され得る。そのような組換え発現方法を実施する日常的な手順は、例えば、Sambrookら、MolecularCloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1992)、およびAusubelら、CurrentProtocols in Molecular Biology、John WhileyおよびSons、Baltimore、MD(1989)に記載される。このような方法は、細胞生存性ポリペプチドを、安定的にまたは一過的に、アポトーシス誘導を妨げるのに十分なレベルで発現するために、使用され得る。細胞生存性ポリペプチドをコードする核酸は、例えば、同一の種または細胞型由来の相同核酸によってコードされ得るか、あるいは異なる種または細胞型由来の異種核酸によってコードされ得る。コードする核酸の供給源は、コードされる細胞生存性ポリペプチドがアポトーシス阻害活性を示す限り重要ではない。
【0055】
アポトーシスの誘導を妨げるために十分な細胞生存性ポリペプチドの発現レベルは、当業者にとって公知であり、そしてまた、当業者によって日常的に決定され得る。組換えポリペプチド発現を提供する発現ベクターおよび系は、公知でありそして市販されている。当業者にとって、特定の宿主細胞において十分なレベルの発現を提供するベクターまたは系を選択するのは、日常的な事項である。あるいは、アポトーシスの誘導を妨げるのに十分なレベルの発現は、細胞生存性ポリペプチドを発現させ、そして次にアポトーシス刺激因子を用いた処置後に細胞が生存するか否かを測定することによって、日常的に決定され得る。
【0056】
細胞生存性ポリペプチドの過剰発現の組換え方法に加え、細胞生存性ポリペプチドを固有に過剰に発現する細胞が使用され得る。細胞生存性ポリペプチドを固有に過剰発現する細胞の具体的な例は、Bcl-2が最初に同定されたB細胞リンパ腫である。この白血病は、第14番と第18番染色体の転座を有し、Bcl-2の高レベルな発現を生じ、それゆえ細胞が
生存する。白血病表現型は、増加した細胞生存に起因する。細胞生存性ポリペプチドを固有に過剰発現する他の細胞株(天然の機構または非天然の機構のいずれかによって)は、存在して、そして本発明の方法において同様に使用され得る。
【0057】
細胞生存性ポリペプチドの過剰発現に起因するアポトーシスからのブロック、およびアポトーシスの直接的な刺激因子を用いる細胞の処置は、細胞に対して拮抗的な影響を提供する。このようにして、次に細胞は、プログラムされた細胞死について実質的に平衡である。アポトーシスについての直接的な刺激因子は、細胞に対する種々の異なる傷害(分子的、環境的、および生理的刺激因子を含む)であり得る。以前に定義したように、このような刺激因子は、当業者にとって公知であり、そしてアポトーシス経路内の分子の活性化によって特徴付けられ得る。アポトーシスの直接的な刺激因子の例としては、Fasリガン
ド、抗Fas抗体、スタウロスポリン、紫外線およびγ線照射のようなインデューサーが、
挙げられる。従って、細胞生存性ポリペプチドを過剰発現する細胞の、アポトーシスの直接的刺激因子を用いる処理は、細胞をアポトーシスについてプライムする。なぜなら、ポジティブおよびネガティブ両方のシグナルは、平衡化効果を提供するからである。このプライミングの1つの利点は、一旦細胞生存性ポリペプチドのブロックを乗り越えるシグナルを受けると、全ての細胞死成分が、アポトーシスについて利用可能であることである。この利点は、迅速なアポトーシス誘導を可能にする。これは、Bcl-2またはBcl-xLが細胞
生存性ポリペプチドである場合のアポトーシス誘導活性を有する化合物についてのスクリーニングに使用する場合に、有益であり得る。このような細胞は、Bcl-2またはBcl-xLそ
れぞれのインヒビターについてのスクリーニングにおいて、特に有用である。
【0058】
細胞をアポトーシスの直接的な刺激因子を用いて処理することに加え、細胞はまた、アポトーシス誘導活性について試験される1つ以上の化合物を用いて処理され得る。この化合物は、例えば、低分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または他の高分子であり得る。実質的に、試験される化合物の型は重要ではない。使用者が所望することは、化合物がアポトーシス誘導活性を有するか否かを試験することのみである。従って、アッセイは種々の異なる設定(臨床的、診断的および医薬発見を含む)について適用される。
【0059】
例えば、アポトーシスをネクローシスと区別する実質的に任意の方法が、細胞性アポトーシス活性を決定するために使用され得るが、アポトーシス活性の測定のために以前に記載された単一ウェル方法の使用が、利点を提供する。この方法は、マルチウェルまたは高スループット型式において使用され得る、迅速かつ効率的なアポトーシスの決定を可能にする。従って、一旦化合物が、細胞に投与されると、細胞のアポトーシス活性は、例えば、カスパーゼ活性の迅速な測定、あるいは当該分野で公知の任意の種々の他の方法によって決定される。コントロールサンプルと比較してポジティブな結果を生じる、これらのサンプルは、プログラムされた細胞死を誘導する化合物の指標である。
【0060】
本発明の種々の実施態様の活性に実質的に影響しない改変はまた、本明細書において提供された本発明の定義内に含まれることが、理解される。従って、以下の実施例は、本発明を説明することを意図するが、限定することを意図しない。
【実施例】
【0061】
実施例I
特異的なアポトーシス活性の測定
この実施例は、特異的なアポトーシス活性の測定、およびアポトーシスのインデューサーについての化合物ライブラリーのスクリーニングのための、単一ウェル法の使用および特徴づけを記載する。
【0062】
細胞の特異的なアポトーシス活性を測定するための単一ウェル法を実証および特徴づけるために、ヒトT細胞白血病クローン(ジャーカット)細胞株を以下で使用した。化合物のスクリーニングのために、このジャーカット細胞株を、細胞生存性ポリペプチドBcl-2
の発現構築物で安定にトランフェクトし、そしてクローン細胞株を安定なトランスフェクト体から作製した。細胞株を、当該分野で公知の方法を使用して、および本質的にSambrookら、MolecularCloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory, New
York (1992)に記載されるように構築した。細胞株を、維持レベル(200μg/ml)のG418
の存在下で、RPMI1640および10%ウシ胎仔血清(FBS)中で培養した。neoトランスフェクト細胞株を構築し、そしてコントロールとして使用するために同様に培養した。
【0063】
トランスフェクト細胞株がBcl-2を発現したことを確認するために、細胞溶解物をポジ
ティブクローンから調製し、そしてBcl-2レベルをポリペプチドブロット分析によって測
定した。簡潔には、細胞溶解物を、最初に培養物をペレット化し、次いで細胞をメルカプトエタノール-SDS緩衝液(250mM Tris-HCl中、5%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム、15%(v/v)グリセロール、0.01%(w/v)ブロモフェノールブルー、10%(v/v)β-メルカプトエタノール、pH6.0)中で可溶化させることによって、500,000のトランスフェクト体から調製した。溶解物中のポリペプチドを、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そしてエレクトロブロッティングによってニトロセルロースに転写した。検出を、Bcl-2の内因性形態およびトランスフェクト形態の両方を認識するBcl-2特異的モノクローナル抗体を使用して行った(Hockenberyら、Nature348:334-336(1990))。発現レベル
を、比較物として同じゲル上で電気泳動させた異なる量の精製組換えBcl-2を使用するこ
とによって、定量した。トランスフェクトされたBcl-2の発現レベルを公知の量と比較す
ることにより、約6ng/106細胞の発現レベルが示された。抗Bax特異的抗体を用いて検出
され、そして同様の様式で定量された、内因性Baxの発現レベルは、約1ng/106細胞であ
ると決定された(Reedら、Analytical Biochem. 205:70-76(1992))。
【0064】
アポトーシスを誘導するために、neoトランスフェクトジャーカット細胞株または上記
のBcl-2トランスフェクト細胞株のいずれかを使用した。詳細には、細胞株を収集し、RPMI1640(指示薬としてフェノールレッドを含まない)および10%FBS中で洗浄し、そして同じ培地中で1.33×106細胞/mlの密度で再懸濁した。細胞を、75μl容量中100,000細胞/ウェルで、96ウェルプレート中にプレートし、37℃で1時間、順化させた。アポトーシスを、細胞に100ng/mlの最終濃度まで添加され、そして37℃で3時間インキュベートされる、抗Fas抗体とともにインキュベーションすることによって誘導した(11μlの10×ストック溶液;MBL,Pavera:Madison,WI;Yoneharaら、Experimental Med. 169:1747-1756 (1989))。あるいは、スクリーニングの手順について、抗Fas抗体を添加する前に、化合物を、Bcl-2トランスフェクト細胞とともに1時間37℃でプレインキュベートした。試験される
べき化合物を、4×濃度(25μl)で二重のウェルに添加し、最終濃度5μg/mlの化合物
および1%DMSOを得た。
【0065】
アポトーシスを、抗Fas抗体インキュベーション後のアスパラギン酸特異的システイン
プロテアーゼ(カスパーゼ)活性を測定することによって決定した。簡潔には、細胞を、10×溶解緩衝液の添加によって溶解し、そして室温で5分間、回転式振盪器において振盪した(12.3μl/ウェル;10×低張緩衝液(100mMHepes pH 7.4、420mM KCl、50mM MgCl2
)中、2mM PMSF、10mM DTT、10μg/mlペプスタチンA、10μg/mlロイペプチン、50μg/mlアプロテニン、1mM EDTA、1mMEGTAおよび5% CHAPS)。次いで、ICE緩衝液を添加(
以下のように調製された2×ストックの70μl/ウェル:40mM Hepes、pH7.5、2mM EDTA、20%ショ糖、および0.2% CHAPS(各アッセイの開始の直前に、DTTを、最終濃度10mMまでこれに添加した))し、そして酵素アッセイを、最終濃度2μM(20×ストックの10μl)まで、DEVD-AMC基質に添加することによって開始した。あるいは、溶解緩衝液、ICE緩衝液
、およびDEVD-AMC基質を単一の緩衝液に組み合わせ、そして一工程で添加し得る。基質切断活性を、蛍光プレートリーダーにおいて、ゼロ時間での開始から2時間にわたって、30分毎に測定した。励起波長は360/40nmであり、そして発光波長は460/40nmであった。
【0066】
各マルチウェルプレートで実行したコントロールは、ポジティブ死コントロールとして、化合物ではなく抗Fas抗体で処理した適合するneoトランスフェクト細胞株、そしてバックグラウンドコントロールとして抗体を有するかまたは有さないBcl-2トランスフェクト
細胞を含んだ。
【0067】
アポトーシスのインデューサーをスクリーニングするための上記の方法の特徴づけおよび使用は、下記にさらに記載される。
【0068】
上記の単一ウェル法(ここで、全ての実験は、同じウェル中で実施される)を、公知の方法(ここで、細胞はスピンダウンされ、そして抗Fas抗体処理後、および溶解緩衝液の
添加の前に洗浄される)と比較する研究を最初に行った。この比較を図1Aに示す。結果は、neo形質転換細胞株におけるDEVD-AMC基質のCPP32様酵素切断によって示されるように、両方法が匹敵するカスパーゼ活性を生じることを示す。対照的に、Bcl-2でトランスフェ
クトされた細胞株は、Fas誘導性死から保護され、そして切断においてほとんど増加を示
さない(図1B)。これらの結果は、単一ウェル法が、以前に使用された方法に匹敵する感受性で、カスパーゼ活性の誘導および阻害の両方を正確に測定し得ることを示す。
【0069】
単一ウェル法のさらなる特徴づけにより、10%FBSの存在が、細胞溶解までのアッセイ
過程を通じて有益であることが示された。例えば、0.5%ウシ血清アルブミンでの置換は
、抗Fas抗体処理の非存在下で、neoトランスフェクトジャーカット細胞においてCPP32様
活性の誘導を生じた。この効果は、成長因子の中止(withdrawal)によるアポトーシスの誘導に起因するようである。しかし、Bcl-2の発現は、この効果から細胞を保護し得た。
【0070】
さらに、高処理能力スクリーニングのためのライブラリーにおける化合物は、DMSO中に溶解されたストック溶液として日常的に維持される。単一ウェル法のさらなる特徴づけを、この方法において許容されるDMSOの許容レベルを決定するために行った。結果は、少なくとも1%までのDMSOが、細胞に対する有意な効果、またはこの方法の正確さを有さない
ことを示した。培地成分フェノールレッド(これは、RPMIにおける指示薬として通常使用される)の可能性のある効果の試験は、蛍光読み取りにおいて少しであるが有意な消光の影響を有した。この効果のために、全てのさらなるアッセイにおいて、フェノールレッドを培地から除去した。
【0071】
抗Fas抗体のインキュベーション時間および濃度を最適化するために、抗Fas抗体のインキュベーション時間および濃度のある範囲にわたってのカスパーゼ活性を測定する研究を行った。カスパーゼ活性を、neoトランスフェクト細胞およびBcl-2トランスフェクト細胞の両方において決定した。neoトランスフェクト細胞において、CPP32様活性の誘導は、30ng/mlまでの抗Fas抗体濃度により増加し、その後プラトーに達した。少しではあるが、有意に増加したCPP32様活性が、100ng/mlの抗体濃度で、Bcl-2トランスフェクトジャーカットにおいて観察された。
【0072】
10ng/mlを上回る抗Fas抗体濃度で、最も高い酵素活性が、neoトランスフェクトジャー
カット細胞への抗体の添加の2時間後と5時間後との間で観察された。より長いインキュベーション時間は、観察可能なCPP32様活性の減少を生じた(図2A)。Bcl-2トランスフェクト細胞において、非常に小さな酵素活性の検出が、4時間のインキュベーション時間でのみ見られた(図2B)。上記の結果から、3時間インキュベートされた100ng/mlの抗体濃度を、アッセイのための標準実施条件として選択した。
【0073】
アッセイのさらなる特徴づけを、アッセイ内変動およびアッセイ間変動の両方を評価することによって行った。詳細には、手順のアッセイ内変動を、抗Fas抗体の存在または非
存在下で、同じ時間で、同じプレート上で、各々12ウェルのneoトランスフェクト細胞株
およびBcl-2トランスフェクト細胞株を実施することによって試験した。この研究の結果
を表1に示す。これは、抗Fasで処理された、ポジティブなneoトランスフェクトコントロールのカスパーゼ活性の平均の、6.8%以下の全体的なアッセイ内変動を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
あるいは、アッセイ間変動を、2日間にわたって、別々のプレート上で、24個のneoト
ランスフェクト細胞株およびBcl-2トランスフェクト細胞株の各々について実施すること
によって決定した。各プレートを個々に設定した。この決定の結果を表2に示す。これは、抗Fasで処理された、ポジティブなneoトランスフェクトコントロールのカスパーゼ活性の平均の、7.0%以下の全体的なアッセイ間変動を示す。
【0076】
【表2−1】

【0077】
【表2−2】

【0078】
実施例II
アポトーシスの誘導のための化合物のスクリーニング
この実施例は、アポトーシスインデューサーの検出のための化合物ライブラリーのスクリーニングの使用を記載する。
【0079】
アポトーシス誘導活性を示す化合物を同定するために、特異的なアポトーシス活性を決定するための単一ウェル法を、Bcl-2トランスフェクト細胞と組み合わせて使用した。手
順およびBcl-2トランスフェクト細胞株は、上記の実施例Iに記載した。
【0080】
簡潔には、化学的ライブラリーから選択された960の化合物を、抗Fas抗体を伴うBcl-2
安定トランスフェクト細胞のインキュベーションによってプライムされた細胞内で、アポトーシスを誘導する能力について試験した。スクリーニングをマルチウェルまたは高処理能力様式において行い、そして化合物を5μg/mlの濃度でインキュベートした。このスクリーニングの結果を図3に示す。値を、各プレート上に存在する抗Fasで処理した、ポジ
ティブな、neoトランスフェクトコントロールのカスパーゼ活性のパーセントとして示す
。カスパーゼ活性のレベルは、非Bcl-2保護コントロールの62.1〜-11.5%の範囲であった
。1.7%の平均値および4.2%の標準偏差もまた観察された。
【0081】
化合物をポジティブとして規定する閾値を、任意の化合物の非存在下での、neoトラン
スフェクタント体の24%のカスパーゼ活性で設定した(46の相対的な蛍光単位)。この数
を、アッセイ間変動の計算について表2に示されるネガティブコントロール(抗Fas処理Bcl-2トランスフェクト細胞)の、平均+3標準偏差によって決定した。この閾値は、結果
の正常な分布を評価するに有効である。この仮定を考慮して、ネガティブ化合物が、ネガティブコントロールの平均を、3標準偏差上回るという可能性は、0.0028である。この基準を使用して、5つのポジティブを、スクリーニングした960の化合物から同定した。
【0082】
本願を通して、種々の刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示は、本発明に関係のある当該分野の状況をより十分に記載するために、本願において、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0083】
本発明は開示された実施態様を参照して記載されているが、当業者は、詳細な特定の実験が本発明の例示のみであることを容易に理解する。種々の変更が、本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることが理解されるべきである。従って、本発明は、以下の請求の範囲のみによって制限される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、さらなる洗浄手順を必要とする方法を用いる、特異的なアポトーシス活性を測定する単一ウェルの方法の比較を示す。図1Aは、抗Fas抗体の存在下(黒色の記号)または非存在下(白色の記号)での、neo-トランスフェクトされたジャーカット細胞中で誘導されたカスパーゼ活性を示す。図1Bは、抗Fas抗体の存在下または非存在下での、Bcl-2でトランスフェクトされた細胞中で誘導されたカスパーゼ活性の阻害を示す。(黒丸:洗浄+抗Fas:白丸:洗浄-抗Fas;黒四角:単一ウェル+抗Fas;白四角:単一ウェル-抗Fas)
【図2】図2は、抗Fas抗体濃度の範囲を用いた処置後の異なる時点で測定された、誘導されたカスパーゼ活性を示す。図2Aは、neo-トランスフェクトされたジャーカット細胞中での抗Fas抗体滴定およびカスパーゼの時間経過を示す。図2Bは、Bcl-2でトランスフェクトされたジャーカット細胞中での、同様の滴定および時間経過を示す。
【図3】図3は、抗Fas抗体でプライムしたBcl-2でトランスフェクトした細胞を使用する、化学的化合物のライブラリーのスクリーニング、およびポジティブなアポトーシスインデューサーの同定を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−154591(P2008−154591A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15658(P2008−15658)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【分割の表示】特願2006−186138(P2006−186138)の分割
【原出願日】平成10年6月5日(1998.6.5)
【出願人】(502247802)アイドゥン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】