説明

細胞傷害性アッセイ

本発明は、フローサイトメトリーを用いて細胞傷害作用に関与する酵素の切断を検出することにより、CTLの活性を検出する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメトリーを用いて細胞傷害作用に関与する酵素の切断を検出することにより、CTLの活性を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロム51放出アッセイは、30年以上に亘って、免疫応答におけるCTLの活性を測定するための王道的な方法であった。しかし、このアッセイには数多くの技術的限界があり近年のデータではクロム51放出アッセイの生理学的な適性、及び測定値の信憑性、すなわち特に固形腫瘍といったイン・ビボ(in vivo)の標的細胞において真のCTL活性を表しているかについて疑問が生じていた。イン・ビトロ(in vitro)のCTLアッセイにおける標的細胞の溶解は、二つの異なるメカニズムによって誘導され得る:1)パーフォリンが標的細胞膜に単純に埋まり込むことによって生じる膜溶解過程;及び2)標的細胞表面のパーフォリン、または小胞融合により標的細胞に侵入したグランザイムBとAの活性から誘導されるDNAの断片化(アポトーシス)。クロム51放出アッセイは、これら二種類のメカニズムにより生じる変化の内、最初のものだけを測定する。後者のメカニズムの方が生理学的により適切であり、イン・ビボ(in vivo)における標的細胞の破壊に欠かせないものである。最近の所見では、クロム51放出アッセイによるエフェクター細胞の細胞傷害活性の測定値が正確ではない、または妥当でさえないこともあり得ることが示されている。これらの所見に基づき、研究者は、クロム51放出アッセイで細胞傷害性と判断されたエフェクター細胞でも、実際はイン・ビボ(in vivo)におけるDNAの断片化を介して腫瘍細胞を破壊できるCTLではないかもしれないという事実を認識していなければならない。これは、癌免疫療法の文献中に多く出てくる、イン・ビトロ(in vitro)で観測されているエフェクター細胞の応答が、患者体内のワクチン効果と相関しないという結果を説明し得る。例えば、クロム51放出アッセイを用いて測られたエフェクター細胞のポジティブな細胞傷害活性データから選ばれたペプチドワクチンは、イン・ビボ(in vivo)のDNA断片化を介したCTL溶解の誘導活性を持つ実際の抗原決定基を正確に反映しているわけではないかもしれない。加えて、有害な放射能の活用、及びシンチレーション計数器の使用に関する問題を含め、クロム51を使用したアッセイには他にも多くの解決すべき課題がある。
【0003】
JAMアッセイは、クロム51放出アッセイに伴う幾つかの問題を解決した、より新しい方法である。これは、DNAの断片化を効果的に測定できるが、3H-チミジンやl25I-デオキシウリジンなどで標的細胞のDNAを標識しなければいけないため、深刻な限界がある。この方法ではDNAが損傷を受けざるをえないため、標的細胞の生理機能がCTLアッセイの前に変化してしまうのである。加えて、3H-チミジンで標識する方法は、クロム51放出アッセイほどの感度を持ちあわせず、l25I-デオキシウリジンは危険な物質であるため、実験者並びに実験場所をしっかりと遮蔽する必要がある。総じて、放射性物質を使用せずに、CTLが攻撃する際の標的細胞におけるアポトーシス誘導とDNAの断片化を測定する方法がより理想的なアッセイであると思われ、特に臨床試験における使用を視野に入れるときはそうである。
【0004】
蛍光標識されたカスパーゼの基質を用いたカスパーゼの切断の検出もまた、細胞傷害性T細胞の活性を示すために用いられてきた (非特許文献1)。加えて他にも、細胞内サイトカイン染色、ELISPOTアッセイ、及びクラスI MHCの四量体を用いたT細胞の染色といった、抗原特異的CD8+ T細胞を数え上げる高感度の方法が導入されている。しかしながら、これらのアッセイは、抗腫瘍免疫応答を解析するのに特に重要である細胞溶解機能を最終的に測定するものではない。感度、特異性、安全性、及び使用性において適切な水準を満たすアッセイが必要である。本明細書では、CTL活性を検出するための高感度の新しいアッセイ系を提供する。
【非特許文献1】Liu et al., Visualization and quantification of T cell-mediated cytotoxicity using cell-permeable fluorogenic caspase substrates. Nature Medicine, Jan. 2003,9 (1) :4-5
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エフェクター細胞と接触した標的細胞におけるDNAの断片化、及び/またはアポトーシスに伴う変化を検出する細胞傷害性アッセイを提供するものである。一つの実施形態では、アッセイは、カスパーゼの切断、またはヒストンのリン酸化を検出する一つまたは複数の試薬を用いて行われる。好ましい実施形態では、モノクローナル抗体を用いてカスパーゼの切断が検出される。もう一つの好ましい実施例では、モノクローナル抗体を用いてヒストンのリン酸化が検出される。他の実施形態では、少なくとも1種類のモノクローナル抗体をフローサイトメトリーアッセイと併せて用いることにより、切断されたカスパーゼ、及び/またはリン酸化ヒストンを検出する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、細胞傷害性アッセイを行うための試薬とアッセイに関するものである。このアッセイは、免疫エフェクター細胞によりもたらされる細胞傷害性を検出するのに適したものであり、免疫エフェクター細胞にはT細胞だけでなくナチュラルキラー(NK)細胞、顆粒球、単球、マクロファージ等が含まれる。一般的に、アッセイは、標的細胞におけるDNAの断片化、及び/またはアポトーシスに伴う変化を検出することに土台を置いている。例えば、ある実施形態では、アポトーシスの経路に含まれる酵素の切断を検出する。他の実施形態では、アポトーシスの過程で生じるDNA関連タンパク質の性質の変化を検出する。このような変化は、蛍光活性化細胞選別器(FACS)またはフローサイトメーターのような細胞の蛍光を測定する機器を用いて検出するのに適している。
一つの実施形態においては、本発明はアポトーシス過程における一つまたは複数のカスパーゼの切断を測定するアッセイに関するものである。アポトーシスで役割を担うことが分かっており、本明細書に示されているようなアッセイで検出するのに適切であり得るカスパーゼには、カスパーゼ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、及び14が含まれ、さらにこれ以外にも考えられ得る。一つの実施形態では、カスパーゼ3が、本明細書で記述したアッセイを用いて検出される。アポトーシスの過程で切断されることが知られているもう一つの酵素は、ポリADPリボースポリメラーゼ (PARP)である。カスパーゼ(特にカスパーゼ3)とPARPの切断は、アポトーシス初期の事象であり、CTLの標的細胞中で引き起こされる。カスパーゼとPARPの切断に加えて、多くの細胞内基質がアポトーシス誘導中にリン酸化される。例えば、ヒストンH2A. Xは、広範囲に及ぶ細胞系譜においてリン酸化される。切断されたカスパーゼに特異的に結合する抗体、及びリン酸化ヒストンH2A. Xに特異的な抗体は、本発明の実施時に使用するにあたって適切であり、市販品を利用することができる。
ある実施形態では、エフェクター細胞との接触に先立って標的細胞を染色するために色素が利用される。適切な色素としては、バイアル(Vial) T、CFSE、及びDDAO-SEが在り、各々当業者に知られている。好ましい色素は、DDAO-SE (モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社)である。他の適切な色素も当業者に知られており、本発明を実施する上で有用であり得る。
一つの実施形態では、本発明が提供するアッセイは、以下の工程により実行される。すなわち:1)エフェクター細胞(E)の調製; 2)蛍光色素のような検出マーカーで細胞を標識することを含めた標的細胞(T)の調製; 3)十分な数のE:T比率におけるエフェクター細胞と標的細胞の混合;4)少なくとも一部のエフェクター細胞が少なくとも一部の標的細胞に対して細胞傷害性となるのに適した条件下における、十分な時間のインキュベート;5)混合した細胞の固定と膜透過処理;6)タンパク質または断片に結合することのできる検出可能な試薬を用いた細胞の染色;及び7)検出可能な試薬の検出。ある実施形態では、検出可能な試薬は、試薬内に含まれている蛍光基等の標識により、あるいは検出可能な試薬に結合している二次試薬の検出により、検出が可能となる。この二次試薬は試薬内に含まれている蛍光基等の標識により検出可能なものである。好ましい実施形態では、検出可能な試薬、及び/または二次試薬とは、蛍光標識され得る抗体である。検出可能な試薬は、他にもFACS等を含めた、よく知られている幾つかの方法を用いて検出され得る。一つの好ましい実施形態では、検出可能な試薬とは、抗カスパーゼ3抗体(例えば、活性化型カスパーゼ3に対するPE融合型のウサギモノクローナル抗体、BDファーミンジェン(Pharmingen)社、カタログ番号550914)である。他にも適切な試薬が当業者に知られている。
ある実施形態では、標的細胞の染色、及び/または標的細胞とエフェクター細胞の混合の前に、エフェクター細胞が反応できるようなペプチドで標的細胞を接触または“刺激”することが、有益であり望ましいこともある。例えば、標的細胞は、HIVや腫瘍抗原といった感染性物質のアミノ酸配列を持つペプチドで刺激され得る。適切な腫瘍抗原には、例えば、gplOO (Cox et al., Science, 264: 716-719 (1994) ), MART- 1/Melan A (Kawakami et al. , J. Exp. Med., 180: 347-352 (1994) ), gp75 (TRP-1) (Wang et al. , J. Exp. Med., 186: 1131-1140 (1996) ), チロシナーゼ (Wolfel et al., Eur. J. Immunol., 24: 759-764 (1994) ), NY-ESO-1 (WO 98/14464; WO 99/18206), メラノーマ・プロテオグリカン (Hellstrom et al. , J. Immunol., 130: 1467-1472 (1983)), MAGEファミリー抗原(すなわち、(Boel et al., Immunity, 2: 167-175 (1995) ), GAGEファミリー抗原(すなわち、GAGE-1,2 ; Van den Eynde et al.,J. Exp. Med., 182: 689-698 (1995);U. S. Pat. No. 6,013, 765), RAGEファミリー抗原(すなわち、RAGE-1 ; Gaugler et at.,Immuzogenetics, 44: 323-330 (1996); 米国特許第5,939, 526号), N-アセチルグルコサミン転移酵素V (Guilloux et at., J. Exp.Med., 183: 1173-1183 (1996)),pi 5 (Robbins et al.,J. Immunol. 154: 5944-5950 (1995) ), B-カテニン(Robbins et al., J. Exp. Med., 183: 1185-1192 (1996)), MUM-1 (Coulie et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 7976-7980 (1995) ),サイクリン依存性キナーゼ-4 (CDK4) (Wolfel et al., Science, 269: 1281-1284 (1995)),p21-ras (Fossum et at. , Int. J. Cancer, 56: 40-45 (1994)), BCR-abl (Bocchia et al., Blood, 85: 2680-2684 (1995) ), p53 (Theobald et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 11993-11997 (1995)), pl85 HER2/neu (erb-Bl ; Fisk et al. , J. Exp. Med., 181: 2109-2117 (1995)),上皮増殖因子受容体(EGFR) (Harris et al., Breast CancerRes. Treat, 29 :1-2 (1994)), 癌胚抗原(CEA)(Kwong et al., J. Natl. Cancer Inst., 85: 982-990 (1995);米国特許第5,756,103号; 5,274,087号;5,571,710号; 6,071,716号; 5,698, 530号 ; 6,045, 802号; EP 263933; EP 346710; 及び EP 784483);腫瘍性変異ムチン(すなわちMUC-1 遺伝子産物;Jerome et al., J. Immunol., 151: 1654-1662 (1993)); EBVのEBNA遺伝子産物(すなわちEBNA-1;Rickinson et al., Cancer Surveys, 13: 53-80 (1992));ヒト乳頭腫ウィルスのE7、E6タンパク質(Ressing et al., J. Immunol, 154: 5934-5943 (1995)); 前立腺特異抗原(PSA;Xue et al., The Prostate, 30: 73-78 (1997)); 前立腺特異膜抗原(PSMA;Israeli et al., Cancer Res., 54:1807-1811 (1994));免疫
グロブリンのイディオタイプまたはT細胞抗原受容体のイディオタイプといったイディオタイプの抗原決定基または抗原(Chen et al., J. Immunol., 153: 4775-4787 (1994));KSA (米国特許第5,348, 887号), キネシン2(Dietz et al., Biochem Biophys Res Commun 2000 Sep 7; 275 (3): 731-8), HIP55、TGFβ-1細胞死抑制因子(Toomey et al., Br J Biomed Sci 2001 ; 58 (3): 177-83), 腫瘍タンパク質D52(Bryne, J. A. et al., Genomics, 35:523-532(1996)), H1FT、NY-BR-1(WO 01/47959), NY-BR-62、NY-BR-75、NY-BR-85、NY-BR-87、及びNY-BR-96(Scanlan, M. ヒト腫瘍抗原の同定のための、血清学及び生物情報学的アプローチ, Cancer Vaccines 2000中, Cancer Research Institute, ニューヨーク州ニューヨーク市)等が在り、これらの野生型、修飾型、変異型も含まれる。
【0007】
ある実施形態では、標的細胞とエフェクター細胞を共にインキュベートする時間は変更され得る。例えば、続くアッセイに先立って、1、2、3、4、5、6時間またはそれ以上の時間、混合物をインキュベートするのが望ましいことがあり得る。
【0008】
本発明の他の態様には、本明細書に記載されているアッセイを実行するためのキットも含まれる。キットは、エフェクター細胞、相当量のエフェクター細胞を調製する際に利用する試剤、標的細胞を染色するための蛍光色素、混合された標的細胞とエフェクター細胞をインキュベートできる96ウェルプレートのようなデバイス、細胞を固定し膜透過するのに必要な試剤、検出可能な試薬、及び/または二次試薬を含む。本発明のアッセイを実行する当業者の助けとなることを目的として、このような試剤の様々な組み合わせがキットとして構成され得る。
【0009】
図により説明される以下の施行例から、本発明とそれがもたらす多くの利益がより良く理解されるであろう。
【実施例1】
【0010】
材料と方法
A. 試薬と細胞培養液
フィコエリトリン(PE)で標識した抗切断型カスパーゼ3抗体(ヒト、マウス両者のタンパク質を認識)は、BD バイオサイエンス(Biosciences)社(ミシソーガ、オンタリオ州)から購入した。FITC融合型の抗リン酸化ヒストンH2A. X抗体は、アップステイト・セル・シグナリング・ソリューション(Upstate Cell Signaling Solutions)社(レークプラシッド、ニューヨーク州)から購入した。細胞を染色する色素、DDAO-SEは、モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社(ユージーン、オレゴン州)から獲得した。全ての細胞培養液は、インビトロジェン(Invitrogen)社(ミシソーガ、オンタリオ州)のものである。サイトカイン (IL-2, IL-2, IL-12, 及びIL-6)はR&D システム(Systems)社(ミネオポリス、ミネソタ州)のものである。ヒトとマウスにおけるIFN-γ ELISPOTアッセイのための抗IFN-γ 抗体のペアは、マブテック(MabTech)社(アムステルダム、オランダ)とBDバイオサイエンス(Biosciences)社(ミシソーガ、オンタリオ州)からそれぞれ購入した。5lCr (5lクロム酸ナトリウム)はアマーシャム(Amersham)社(トロント、オンタリオ州)から購入した。以下のHLA-A2. 1結合ペプチドとマウスのH-2Kb結合ペプチドを実験で使用した。すなわち: ILKEPVHGV (HIV revペプチド)、SLYNTVATL (HIV gagペプチド)、YLSGANLNL(腫瘍抗原CEAのCAP1抗原決定基)、IMDQVPVSV、YLEPGPVTV、KTWGQYWQV(gp100メラノーマ抗原決定基)、NLVPMVATV (CMV pp65 抗原決定基)、DAPIYTNV(b-ガラクトシダーゼH-2Kb抗原決定基)、TPHPARIGL(b-ガラクトシダーゼH-2Ld)、及びTLDSQVMSL (TRP-2メラノーマ抗原決定基)。ペプチドは、396マルチバイオモレキュラー(MultipleBiomolecular)合成機(アドバンスド・ケモテック(Advanced Chemtech)社、ルーイヴィル、ケンタッキー州)中で合成し、HPLCにより精製した。ALVAC-galとALVAC-gp100は、トリ胚由来繊維芽細胞(CEF)中で増殖させ、溶解した細胞をショ糖液と共に遠心し精製した。この手法は既に記述されている(Ferrari et al. , 1997)。プラーク形成単位中のウィルスの力価(pfu)を、既に記述されているようにCEF中で求めた(Santra et al. , 2002)。B. マウス
Balb/cとC57BL/6マウスはチャールズ・リバー(Charles River)社(モントリオール、キュベック州)から購入した。HLA-A2. 1/Kb トランスジェニックマウスは、記述されている通りに作製した (Borenstein et al., 2000)。全てのマウスは、カナダ動物管理協会(CACC)のガイドラインに忠実に従って、アベンティス・パスツール(Aventis Pasteur)社の動物資源部門(サニーブロック(Sunnybrook)キャンパス、トロント、オンタリオ州)の微生物隔離ケージ内で、特定病原体未感染(SPF)の状態で飼育された。
【0011】
C. ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の調製
ヒトPBMCは、フィコール・ハイパック(Ficoll-Hypaque)密度勾配遠心法(シグマ(Sigma)社、セント・ルイス、ミズーリ州)を用いて、白血球交換法によりドナーから得た。全ての血液産物は、ドナーの完全な同意を伴う施設内のIRBガイドラインに従って、サニーブロック(Sunnybrook)と女性健康科学センター(Women's Health Sciences Center)(トロント、オンタリオ州)に収集されている。DNA配列の解読によりHLA-A*0201が認められるドナーが事前に選別され、有志のみが白血球交換法による採取を受けた。
【0012】
D. マウスの混合リンパ球反応(MLR)とエフェクター細胞及び標的細胞の調製
C57BL/6またはBalb/マウス由来の脾臓をマウス細胞培養液(α-MEM、10% FCS、50μM メルカプトエタノール、1 mMグルタマックス(Glutamax)、ペニシリン-ストレプトマイシン)内で採取し、ストマッカー機(ストマッカー80 バイオマスター、英国)を用いて細胞懸濁液を作製した。細胞懸濁液は、70 μm孔径の濾過器(BD バイオサイエンス(Biosciences)社)で濾過された。細胞を洗い、培養液に再び懸濁した。刺激細胞を2000ラドで照射し(Gammacell(登録商標)1000エリート、MDS ノーディオン(Nordion)社)、培養液で一回洗った後、10x 106 細胞/mlになるように培養液に再び懸濁した。応答細胞(20 x 106 細胞)と照射済みの刺激細胞(20 x 106 細胞)を、全量で20mlになるように直立型T-25 フラスコに入れた。培養物を5日間インキュベートした後、リンホライト-M密度溶液(セダーレーン・ラボ(Cedarlane Labs)社、カナダ)に重層し100 x gで20分間遠心して、生きた細胞を回収した。細胞は、1.5x106/mlになるように培養液中で洗った。
【0013】
E. マウス免疫の研究、及びイン・ビトロ(in vitro)におけるT細胞の再刺激
ペプチドによる免疫は、ヒトPeriod 1遺伝子由来のトランスサイトーシスのペプチドをつなげたメラノーマH-2b結合TRP-2腫瘍抗原ペプチドを用いて行った。この配列は、抗原提示細胞(APC)へのTRP-2配列の取り込みを誘導し、ペプチドに対するCTLの強い応答を誘導する。C57BL/6マウスを50μgのTRP-2ペプチドを皮下投与して免疫し、3週間後に追加刺激した。追加刺激の3週間後に脾臓を採取し、脾臓細胞をTRP-2ペプチドで5日間再刺激した。次に、クロム51放出アッセイ、またはカスパーゼ3切断アッセイのいずれかを用いてCTL活性のアッセイを行った。カナリポックス(canarypox)ウィルスベクター(ALVAC-gp100)による免疫は、HLA-A2.1/Kbトランスジェニックマウスに皮下投与して行われた(Borenstein et al. , 2000)。マウスを2 x107 pfuのALVAC-gplO0で免疫し、2週間後に同量のALVAC-gplO0で追加刺激した。脾臓細胞を、追加刺激から5週間後と7週間後に採取し、強いHLA-A2.1結合gp100ペプチド(IMDQVPVSV、YLEPGPVTV、及びKTWGQYWQV)のプール(各ペプチド0.2pg/ml)で5日間再刺激した(24-ウェルプレート内で5 x 106 細胞/ウェル)。回収した細胞を、IFN-γ ELISPOT法、またはカスパーゼ3切断アッセイを用いて解析した。ELISPOT解析は、HLA-A2/Kb発現プラスミドを恒常的にトランスフェクトしたP815細胞(P815-A2/Kb 細胞系統)をgplOOペプチド(2μg/ml)で刺激したもの10,000個と、再活性化された脾臓細胞100,000個を混合して行われた。
【0014】
F.ヒトのペプチド特異的T細胞の産生
T細胞が豊富なPBMC (PBMCのプラスチック非接着性フラクション)を、ヒトのT細胞培養液(HTC-CM)中で、ペプチド刺激済みの自己の成熟した樹状細胞(DC)を用いて刺激した。なお、ヒトのT細胞培養液(HTC-CM)は以下のものから成る。すなわち:イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、1 mM グルタマックス(Glutamax)、1 mMピルビン酸塩 (インビトロジェン(Invitrogen)社、ミシソーガ、オンタリオ州)、5%ヒト AB血清、50M 2-メルカプトエタノール、20μg/mlゲンタマイシン。成熟したDCは、2%ヒトAB血清、1,000 U/ml GM-CSF、1,000 U/ml IL-4、4ng/mlTNF-a、及び 100 U IFN-γを含むHTC-CMを用いて、接着性単球から産生され、これは6日間以上かかる1工程のプロトコールである。採取したDCを洗い、10μg/mlのペプチドで刺激する。以下のHLA-A2.1結合ノナマーペプチドをT細胞の産生に用いた: HIV rev ペプチド(ILKEPVHGV)、HIV gagペプチド(SLYNTVATL)、及びCEA腫瘍抗原のCAP1抗原決定基(YLSGANLNL)。これらのペプチドは、HLA-A2.1に結合し、HLA-A2.1特異的なCD8+ T細胞応答を引き出すことが以前に示されている(Stuber et al. , 1992; Herr et al. , 1996; Zaremba et al., 1997)。刺激を受けたDCを洗い、T細胞が豊富な自己のPBMC(T細胞)を刺激するために用いた。刺激は、24-ウェルプレート内において、T細胞6 x 106に対して、刺激済みDC 0.6 x 106の比率で行われた。IL-2 (10 U/ml)、IL-7 (5 ng/ml)、IL-6 (1,000 U/ml)、及びIL-12 (10 ng/ml)が培養の始めに加えられ、4日後にはIL-2 (さらに10 U/ml)が加えられた。最初の活性化は10〜12日間行われ、続いて、既に記述されている方法(Schultze et al. , 1997)で産生した自己のBリンパ球を用いて再刺激を2、3回繰り返した。このBリンパ球は、ペプチド刺激を受けたCD40リガンドで活性化されている。3または4回目の刺激から5日後に、エフェクター細胞のアッセイ (カスパーゼ3切断アッセイ、IFN-γ ELISPOTアッセイ、アネキシン(Annexin)-V/7-AADを用いたCTLアッセイ、及びHLA五量体染色)を行った。表記してあるように、幾つかのケースでは、アッセイの前に活性化T細胞を自己のナイーブPBMCを用いて希釈した。
G. カスパーゼ3切断アッセイと染色の方法論
1. 標的細胞の標識化とペプチドによる刺激。採取した標的細胞(P815, EL4, T2リンパ腫細胞)をD-PBSで一回洗った。細胞は、D-PBS中に0. 6μMのDDAO-SE (モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社、Eugene, OR)を含む標識化バッファーで5 x106/mlになるように再懸濁し、37℃で15分間インキュベートした。細胞を培養液で洗い、2 x 106細胞/mlになるように培養液に再懸濁し、表記されたペプチド1-3μg/mlで1時間刺激した。刺激された標的細胞を培養液で1回洗い、1 x 106 細胞/mlになるように再懸濁した。
2. CTLアッセイの準備と抗体染色。DDAO-SEで標識された標的細胞をペプチド(0.1ml)で刺激し、コニカル型ポリプロピレン製のコスター(Costar)クラスターチューブ (コスター(Costar)、コーニング(Coming)社、ニューヨーク州)の中で、0.1 mlのエフェクター細胞 (1x 106 細胞/ml)と混合した。この細胞混合物を低速(200 rpm)で1分間遠心した。混合物は、5% C02を含む37℃の加湿された保温器内で、表記された時間(0.5〜5時間)だけインキュベートした。細胞は、室温(RT)の下、1% BSAを含むD-PBSで洗われ、室温でFix/Perm溶液(BD バイオサイエンス(Biosciences)社、ミシソーガ、オンタリオ州)中に20分間浸して固定後即座に膜透過処理するか、または室温で1%パラフォルムアルデヒドに20分間浸して固定してから4℃で24時間以下保存するかのいずれかを行った。この固定後保存した細胞は、遠心し室温で20分間Fix/Permバッファーに再懸濁した。次に、細胞を染色バッファー(D-PBS、1% BSA、0.1%サポニン)で2回洗い、0.1 mlの染色バッファーに再懸濁した。細胞は、15μlのビオチン標識された抗切断型カスパーゼ3モノクローナル抗体(BD バイオサイエンス(Biosciences)社、ミシソーガ、オンタリオ州)を加えて氷上で60分間染色した。細胞を染色バッファーで洗い、ストレプトアビジン(Strepavidin)-PE (シグマ(Sigma)社、セント・ルイス、ミズーリ州)を加えて氷上で30分間対比染色した。細胞を染色バッファーで2回洗い、フローサイトメトリーによる解析のために1% BSAを含むD-PBSに再懸濁した。
【0015】
3. フローサイトメトリーによる解析。染色した細胞はFACS キャリバー(Calibur)フローサイトメーター (BD バイオサイエンス(Biosciences)社、ミシソーガ、オンタリオ州)により解析された。各サンプルにつき、30,000〜50,000細胞が集められた。生きた細胞と標的細胞を、前方散乱光と側方散乱光パラメーターを用いてゲート設定し、続いてFL4チャンネルにおいてDDAO-SEで標識された標的細胞の集団にゲートを設定した(図1B参照)。次に、FL4/FL2ドットプロット上のゲートで囲まれたDDAO-SE標識の標的細胞を用いて、切断型カスパーゼ3の発現(FL2チャンネル)をもとめた。
【0016】
H. IFN-γ ELISPOTアッセイ
ELISPOTアッセイでは、ミリポア・マルチスクリーン(Millipore MultiScreen)-HA 96ウェル・フィルター・プレート (ミリポア(Millipore)社、カタログ番号MAHAS4510)を用いた。プレートはpH 9.5の炭酸バッファー(シグマ(Sigma)社、セント・ルイス、ミズーリ州)中、5 μg/mlの抗IFN-γ モノクローナル抗体と共に4℃で一晩コーティングした後、2% BSAを含むD-PBSでブロッキングした。表記してあるようにヒトまたはマウスのT 細胞(100,000/ウェル)を加え、関係または無関係のペプチドと共に一晩インキュベートした。プレートを洗い、ビオチン標識した抗IFN-γ モノクローナル抗体と共に室温で1時間インキュベートした。プレートを洗い、1:5,000希釈のエクストラアビジン(Extravidin)-アルカリ性ホスファターゼ (シグマ(Sigma)社)と共に室温で1時間処理した。プレートは、全てのスポットが明瞭に見えるまでBCIP/NBT基質(シグマ(Sigma)社)と共に反応させた。反応させたプレートを乾かし、AID バージョン3.1. 1 ELISPOTリーダー(reader)(セル・テクノロジー(Cell Technologies)社、米国)で計測した。PMAとイオノマイシン(Ionomycin)(シグマ(Sigma)社)で処理した細胞を、全ての実験のポジティブコントロールとして用いた。
【0017】
I. クロム51放出アッセイ
標的細胞(P815、P815-A2/Kb、EL4、及びT2 細胞)は、10% FCSを含む細胞培養液中で、100μCiの51Cr-標識クロム酸ナトリウム(Na251CrO4)と共に37℃で45分間標識した。細胞を培養液中で洗った後、プロトコール上の指示があれば、特異的または非特異的なコントロールペプチド(1〜3ug/ml)で1時間刺激した。刺激された細胞を培養液中で1回洗い、30,000 細胞/mlになるように再懸濁した。エフェクター細胞(マウスMLR、ペプチドによる再刺激を受けた脾臓細胞、またはペプチドで活性化されたヒトT細胞の系統)を、結果に表記されているように異なるE:T比で加えた。幾つかの実験では、クロム51放出アッセイのために、様々なE:T比で加える前にナイーブリンパ球を用いてエフェクター細胞を希釈した。4時間インキュベートした後、解析する上精25μl分を96ウェルのルーマプレート(Lumaplate)(パッカード(Packard)社)にのせた。プレートを乾かし、トップカウント(TopCount)NXT v2.12シンチレーション・カウンター (パッカード(Packard)社)を用いて放射能活性を測定した。結果は、((実験上の放出量-自発的放出量)/(全ての放出量-自発的放出量)) x 100という式で計算された特異的溶解の百分率として示されている。
【0018】
J. HLA五量体染色
HIV gag ペプチド特異的、及びCEAのCAP1ペプチド特異的なHLA-A*0201ヒトT細胞系統を、PEが結合した組み換えHLAペプチド五量体(プロイミューン(ProImmune)社、オックスフォード、英国)で染色した。HIV特異的な系統を染色するために、HIV gag由来のSLYNTVATL配列を含むHLA-A*0201五量体(プロイミューン(ProImmune)社、コード 010)を用いた。一方CAP1ペプチド特異的な系統を染色するために、CEA由来のYLSGANLNLペプチドを含むHLA-A*0201五量体(プロイミューン(ProImmune)社、コード075)を用いた。両者のケースで、非特異的な五量体による染色コントロールと同じ割合のCD8+ T細胞から成るHLA-A*0201特異的なT細胞系統が用いられた。T細胞を洗った後、D-PBS、0.1% NaN3、0.1% BSAから成る五量体染色バッファー(PSB)中に2 x 106細胞/mlになるように再懸濁した。細胞は、室温で20分間10μ1のPro5(商標)で染色し、洗った後、FITC融合型抗ヒトCD8抗体 (BD Biosciences) 5μlを含んだPSB中にて、室温で20分間染色した。細胞をPSBで洗い、1%パラフォルムアルデヒドを含むD-PBS中で固定し、FACSキャリバー(calibur)フローサイトメトリー解析器にかけた。まず前方散乱光及び側方散乱光識別器を用いて生きた細胞にゲートを設定し、次にX軸にCD8+ 蛍光、Y軸に五量体+蛍光をとった2色プロット上で解析することにより、五量体陽性細胞を検出し、定量した。結果は、各培養液について五量体陽性細胞の百分率として示されている。
【実施例2】
【0019】
A. アッセイの手順と標的細胞を標識する色素の選択
我々が解決した最初の問題の一つは、FACS解析の間カスパーゼ3のシグナルを妨害しないで標的細胞を効果的に標識する色素を見つけることである。感度を最大にするために、我々は、ビオチン標識された抗切断型カスパーゼ3抗体を1次抗体として利用し、続いてFL2チャンネルで明るい蛍光を発するストレプトアビジン-PEで対比染色を行うことを考えた。そこで、far-red (FL4)チャンネルで蛍光を発し、FL2チャンネルとの蛍光補正を必要としない非毒性の細胞標識の色素を探す必要があった。我々は、DDAO-SE (モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社)が全ての条件を満たすことを見つけた。図1に示されているように、DDAO-SEは、P815、EL-4、B16F10メラノーマ、4T1 乳癌、ヒトT2胸腺腫、及びCOS細胞を含むマウスとヒトの様々な細胞系統を、15時間以下で再現的かつ安定に染色することが判明した。さらにこの時、非特異的なカスパーゼ3の切断は誘導されない。
DDAO-SEで染色した標的細胞を用いて、我々はまずカスパーゼ3切断アッセイを行い、マウスの同種T細胞免疫応答におけるCTL活性を測定した。Balb/cに対するC57BL/6、及びC57BL/6に対するBalb/c脾臓細胞の混合リンパ球反応を培養5日後に調べ、クロム51放出アッセイとの比較をした。エフェクター細胞と標的細胞(P815またはEL-4細胞)を様々な比率で混合し、様々な時間間隔でインキュベートしてから、固定し抗切断型カスパーゼ3抗体で染色した。図1Bは、カスパーゼ3が切断されている標的細胞の割合を計算するために適用したゲート設定を示す。このやり方は全ての実験で用いられた。前方散乱光(FSC)と側方散乱光(SSC)のプロットは、示されているように、生きたDDAO- SE陽性(FL4チャンネル)標的細胞の集団を分離するために用いられた(R2とR3)。ゲートR2とR3を合わせて、DDAO-SE陽性かつカスパーゼ3が切断された(FL2チャンネル)標的細胞をもとめた。このゲート設定により、確実に生きた標的細胞のみが対象になるようにした。
【0020】
Balb/cに対するC57BL/6 MLRエフェクター細胞とP815標的細胞(1:1のE:T 比)を混合した実験から、H-2d P815 標的細胞に特異的にカスパーゼ3の切断が誘導されることが分かったが、H-2bEL4標的細胞ではカスパーゼ3の切断は検出されなかった(図 2A)。図 2A 及び 2Bで示されている経時的データは、カスパーゼ3の切断シグナルが、この場合インキュベート1時間後から最大になることをまた示している。C57BL/6に対するBalb/c MLR エフェクター細胞を試験した際も同様の結果が得られた(図 2B)。総じて、MLRにおける同種特異的なCTL活性を測定するに際して、カスパーゼ3切断アッセイは、4時間インキュベートのクロム51放出アッセイを用いた時と同程度の特異性を示した(データ不掲載)。
【0021】
標的細胞におけるカスパーゼ3の切断が、CTLから分泌される細胞傷害性の顆粒に依存していることを確かめるために、Balb/cに対するC57BL/6 MLR エフェクター細胞を、標的細胞と混合する前にCTLアッセイで脱顆粒の阻害剤として用いられるコンカナマイシンAと共にインキュベートした。コンカナマイシンAは、P815標的細胞においてカスパーゼ3の切断を阻害した(図 2C)。CEA腫瘍抗原由来のCAP1ペプチドに応答するヒトのCTL系統を用いて行われたアッセイでも、同様の結果が得られた(データ不掲載)。加えて、カスパーゼの阻害剤Z-DEVD-FMK、または一般的なカスパーゼの阻害剤Z-VAD-FMKを用いてカスパーゼ3の活性を阻害しても、Balb/cに対するC57BL/6 MLRの標的であるP815細胞中の切断型カスパーゼ3の出現は妨げられなかった (データ不掲載)。以上を併せた結果から、標的細胞におけるカスパーゼ3の切断はCTLから分泌される顆粒に依存しており、細胞破壊の過程において標的細胞内で内在的に活性化されるカスパーゼ3やカスパーゼ3を切断する他のカスパーゼに依存するものではないことが示された。
マウスBalb/cに対するC57B1/6 MLR系、及びHLA-A2.l/Kb トランスジェニックマウスにおけるペプチド免疫の応答といった二つの異なるアッセイ系を用いて、カスパーゼ3切断アッセイとクロム51放出アッセイを比較した(図 3)。MLR系においては、カスパーゼ3切断アッセイは、クロム51放出アッセイと同程度の特異性と信頼性を示した。しかし感度は著しく上昇し、0. 5:1以下のE:T比でCTL活性を検出することが可能であった(図3A)。ヒトTRP2メラノーマ抗原のペプチドで免疫されたマウス由来の脾臓細胞でもまた、ペプチド刺激されたP815-A2/Kb標的細胞に対するCTL活性が調べられた(図3B)。ペプチドによる再刺激を受けた脾臓細胞を40:1及び10:1のE:T比で試験した場合、カスパーゼ3切断アッセイは、クロム51放出アッセイと同様の結果を生じた。さらに前述の場合と同様、カスパーゼ3切断アッセイは非常に高い感度を示し、10:1のE: T比で検出された特異的CTL活性の割合は、クロム51放出アッセイより高かった(図3B)。
【0022】
B.ウィルスベクターのワクチンに対するCTL応答を追跡することを目的としたカスパーゼ3切断アッセイの利用
HLA-A2. 1/Kbトランスジェニックマウスを2 x107 pfuのALVAC-gplO0で免疫した後、gp100ペプチド特異的CD8+ T細胞の免疫応答を測定し、カスパーゼ3切断アッセイとIFN-γ ELISPOTアッセイを比較した。免疫、追加刺激したマウスの脾臓細胞を、0. 2μg/mlのHLA-A2.1結合gp100ペプチドのプールで5日間再刺激した。次に、カスパーゼ3切断アッセイ、またはIFN-γ ELISPOTアッセイのいずれかを用いて、エフェクター細胞のアッセイを行った。カスパーゼ3切断アッセイでは、HLA-A2.1/Kbプラスミドを恒常的にトランスフェクとしたDDAO-SE標識のP815細胞を、gp100あるいはコントロールペプチドで刺激したものが用いられた。P815-A2/Kb細胞をDDAO-SEで標識しなかったことを除けば、ほぼ同様のアプローチがELISPOTアッセイでも用いられた(方法の段落参照)。カスパーゼ3切断アッセイで調べる際、個々の動物間でぶれる結果の精度を調べるために、各アッセイにおいて5匹の複製マウスが用いられた。図4は、カスパーゼ3切断アッセイ及びELISPOTアッセイを用いて、gp100ペプチド特異的なCD8+ T細胞応答の計測値を比較した二つの別々の実験の結果を示している。両方のアッセイで共に、空のALVACコントロールベクターで免疫されたマウスにおける非特異的な反応はみられなかった。個々の動物間の誤差は小さく、CTL標的細胞におけるカスパーゼ3切断アッセイを用いたCD8+ T細胞応答の追跡によって、免疫後の抗原特異的CD8+ T細胞応答を高い精度で測定できることを示している。
これらの結果は、マウスの系においてCTL標的細胞中のカスパーゼ3の切断を測定することは、実際にクロム51放出アッセイにとって代わることのできるアッセイであり、クロム51放出アッセイと同等の特異性、かつより顕著な検出感度を持つことを示している。加えて、カスパーゼ3の切断を用いたCTL活性の測定は、標的抗原またはペプチドを発現している標的細胞が使用可能な時に、IFN-γ ELISPOT法を機能的に補助するアッセイとして、あるいはELISPOT法に代わるアッセイとして利用されることもまた可能である。
【0023】
C.抗原特異的ヒトT細胞の応答を追跡するための、カスパーゼ3切断によるCTLアッセイ
研究の最初の段階として、ヒトのT細胞系統は、HLA-A*0201を持つドナーから9マーのHIV revペプチドであるHIV gagペプチド、または癌関連抗原CEA由来のCAP1ペプチドの刺激により産生した。方法に概説されているように、全てのT細胞系統は、HIV非感染の癌ではない正常なドナーから、ペプチド刺激の繰り返し、及びIL-2とIL-7との増殖によって産生された。通常、3または4回目の刺激後に、TCRαβ+, CD8+, CD16-, CD56-増殖T細胞を85%以上から成るT細胞系統が得られる。これらT細胞を用いて、エフェクター細胞の活性を、カスパーゼ3の切断を追跡して調べた。IFN-γ ELISPOTアッセイでは、3または4回目の刺激後にペプチド特異的T細胞の存在が確認された。HIVペプチド特異的、及びCEAペプチド特異的な両方の系統において、この出現頻度は、1:100から1:250までに亘った(データ不掲載)。
図 5Aは、HIV rev由来のペプチドに特異的なHLA-A2.1限定のT細胞系統を用いて、活性化したヒトT細胞の活性を追跡したカスパーゼ3切断アッセイの典型的な結果を示したものである。活性化したT細胞を、5:1 または1:1のE:T比で刺激を受けたT2標的細胞と混合した(図5A)。pp65 CMV 抗原由来の非特異的なHLA-A*0201結合ペプチドで刺激されたT2標的細胞では、僅かなカスパーゼ3切断しか認められず、このアッセイが特異的であることが証明された。図5Bでは、カスパーゼ3切断アッセイの結果を、FACSを用いたもう一つのCTLアッセイの結果と比較した。このCTLアッセイは、CEAのCAP1 HLA-A2.1抗原決定基特異的なT細胞系統を用いて、アネキシン-Vと7-AAD染色(Fischer et al. , 2002)のキット(BD バイオサイエンス(Biosciences)社)で標的細胞中のアポトーシスを検出するものである。T細胞系統(刺激4回目)をドナー由来の自己のナイーブPBMCで表記の比率に希釈し、等量(100,000個)のペプチド刺激を受けたT2標的細胞と混合した。両方のアッセイからは、同水準の感度を示す結果が生じた(図5B)。しかし、我々は、数多くの実験をする中で、アネキシン-Vと7-AADのアッセイでは非特異的バックグラウンドが非常に高く出ることを認めた。加えて、サンプル間でアネキシン-Vの蛍光強度にかなりのばらつきがあることが判明した(データ不掲載)。アネキシン-Vのホスファチジルセリンへの結合はCa2+感受性で、Ca2+濃度の僅かな変化がアネキシン-Vの結合の平衡を変化させてしまう。この染色における蛍光のばらつきは、カスパーゼ3の切断を染色する際には認められないものだった。
【0024】
より低いバックグラウンド加えて、カスパーゼ3切断アッセイは、CTL活性を追跡する上で非常に高い感度を示した。実際、エフェクター細胞が8倍希釈でも、特異的なCTL活性が検出されている(図 5B; カスパーゼ3の切断)。我々はまた、図5Bで用いられたT細胞系統中のCAP1特異的T細胞の出現頻度を、IFN-γ ELISPOTアッセイにより算出し(不掲載)、1:237の出現頻度であることが分かった。これらの結果を元にして、我々は、図5Bの4倍及び8倍希釈時におけるCAP1特異的T細胞の出現頻度は、各々1:711 (0.14%) 及び1:1659 (0.06%)であると見積もった。これは、このアッセイの感度が高く、僅かな抗原に特異的な、特にCTL頻度が極めて低いことがあり得る癌関連抗原(TAA)に特異的なCD8+ T細胞を検出することができることを示唆している。
D.カスパーゼ3の切断を用いたCTLアッセイの感度
アッセイの検出限界を調べるために、マウスのMLRエフェクター細胞と活性化したペプチド特異的ヒトT細胞を用いて一連の実験を行った。ここでエフェクター細胞は、同系のナイーブ脾臓細胞または自己のナイーブPBMC各々により200倍まで希釈された。
最初の実験は、採取後に同系のナイーブC57BL/6脾臓細胞で1倍(希釈なし) から200倍まで希釈されたBalb/cに対するC57BL/6 MLRエフェクター細胞を用いて行われた(図 6)。希釈されたエフェクター細胞を、DDAO-SE標識されたP815細胞と、1:1の比率で混合、インキュベートした。標的細胞のみ、及びナイーブ脾臓細胞をCTL活性のネガティブコントロールとし、DDAO-SE標識されたEL-4標的細胞を特異性のコントロールとした。MLRエフェクター細胞がナイーブ脾臓細胞で200倍希釈されている時でさえも有意なカスパーゼ3の切断が認められるように、カスパーゼ3の切断は高い感度を示した(図6)。全ての希釈率において、非特異的なEL4標的細胞ではカスパーゼ3の切断は、僅かにしか見られなかった(図6)。典型的なマウスMLRにおける同種応答のCD8+ 脾臓細胞の割合は、1:10ほどであることが分かっている。従って、MLRにおいて同程度の割合のBalb/cに対するエフェクター細胞が存在すると想定すれば、ナイーブ脾臓細胞で200倍希釈した時には、このアッセイで1:2,000 (0.05%)のエフェクター細胞のCTL活性が検出できていたことになる。この実験は少なくとも3回繰り返され、同様の結果を示した。
同様の希釈実験が、ナイーブPBMCのプールから3〜4回の刺激によって生じたHIVペプチド特異的なヒトHLA-A*0201限定T細胞系統を用いて行われた(図7)。図9Aに示されている実験では、IFN-γ ELISPOTアッセイにより、3回目の刺激後の培養液中のHIVペプチド特異的T細胞の割合は、1:156 (0.64%)であると推定された。これらT細胞は、自己のナイーブPBMCにより 1〜200倍の比率で希釈された。前回のように、DDAO-SE標識されたT2リンパ腫細胞のみ、及びHIVペプチドで刺激済みのT2標的細胞とインキュベートしたナイーブPBMCから活性化T細胞を除いたものをネガティブコントロールとして使用した。一方、HLA-A*0201結合pp65 CMVペプチドで刺激されたT2細胞を特異性のコントロールとして使用した。図7B及び9Bで示されているように、カスパーゼ3切断の測定は、著しく高い感度を持ち、エフェクター細胞が100倍及び200倍の比率で希釈されていても有意な活性を検出する。HIVペプチドによる刺激済みのT2標的細胞では、100倍及び200倍希釈で各々5.7%及び6%のカスパーゼ3の切断が観察されたのに対し、非特異的なpp65 CMVペプチドで刺激された標的細胞では、僅か2.1%及び2.2%のカスパーゼ3の切断しか観察されなかった。このエフェクター細胞の希釈率を下げても、CMVペプチド刺激時のカスパーゼ3切断活性の割合の低さは変わらなかった。エフェクター細胞を除いた標的細胞、及び標的細胞を加えたナイーブPBMCでのカスパーゼ3の切断の割合は、2%以下だった(図7B)。さらにこのアッセイの感度を調べるために、HIV gagペプチド特異的T細胞系統を、抗原特異的T細胞のT細胞受容体(TCR)を直接染色するHLAペプチド五量体(プロイミューン(ProImmune)社、オックスフォード、英国)で染色した(図7C)。図7Cは、図7Bのカスパーゼ3切断アッセイで用いられたのと同じT細胞を五量体で染色した結果を示している。この解析により、カスパーゼ3切断アッセイが、HLA五量体染色に相当する感度を持つことが明らかになった。カスパーゼ3切断アッセイにおけるHIV gagペプチド特異的なT細胞の出現頻度は(図 7B)、IFN-γELISPOTアッセイでの出現頻度から概算すると、エフェクター細胞が100倍及び200倍希釈のとき、各々1:15,444 (0.007%)及び1:31,044 (0.003%)である。これは、このアッセイが高い感度を持ち、抗原特異的T細胞の出現頻度が極めて低い時でもCTL活性を定量する際に利用できることを表している。さらに、五量体または四量体に依存した方法と異なり、これはT細胞の出現頻度のみではなく、T細胞の機能を測定する方法である。
【参考文献】
【0025】


【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】色素標識した標的細胞の安定性、及び標的細胞中のカスパーゼ3の切断を用いてCTL活性を追跡するためのゲート設定。A. 細胞を標識する色素であるDDAO-SEは、CTLの標的細胞系統を、明瞭かつ安定に標識する。通常使用されている懸濁培養、及び接着性の細胞系統、すなわちP815、EL4、T2リンパ腫、NIH 3T3、4T1乳癌、及びB16F10メラノーマを染色したものを示す。細胞をDDAO-SEで染色し、表記の時間 (0、1、3、または15時間)インキュベートした後、FACSにより解析した。各細胞系統において、平均の蛍光強度と変動係数(CV)が示されている。二回の類似した実験の内の一つの結果が示されている。B. DDAO-SE標識した標的細胞中のカスパーゼ3の切断を計測するために用いられたゲート設定。Balb/cに対するC57BL/6 MLR細胞と混合したDDAO-SE標識のP815細胞の例を示す。最初のプロットは、FSC /SSCで展開し、全ての細胞集団をゲートで囲んだものを示している(Rl)。次に、ゲートR1の細胞を、FSC /FL4蛍光(DDAO-SE陽性)とSSC /FL4蛍光(DDAO-SE陽性)で展開し解析した。DDAO-SE陽性細胞は、(R2及びR3)で示されているように、小さいFSCの(死)細胞を除きゲートで囲んだ。次に、R2*R3細胞をFL2 (PE標識された切断型カスパーゼ3) /FL4 (DDAO-SE)で展開して、アポトーシスを起こしている標的細胞の割合を求めた(R4)。
【図2】マウスMLRにおける、カスパーゼ3切断アッセイを用いたCTL活性の測定、及びCTLにより分泌されたパーフォリンとグランザイムに対する、標的細胞中のカスパーゼ3切断の依存性。Balb/cに対するC57BL/6 またはC57BL/6に対するBalb/c MLRエフェクター細胞を、示されているように、標識したP815標的細胞と共に様々な時間(0.5、1、2、及び3時間)インキュベートした後、切断型カスパーゼ3を染色した(A)。カスパーゼ3の切断は、Balb/cに対するC57BL/6 MLR エフェクター細胞とインキュベートした時にのみ見いだされた。B.示されているように、DDAO-SEで標識したP815またはEL4標的細胞を、Balb/cに対するC57BL/6またはC57BL/6に対するBalb/c MLR エフェクター細胞と共に様々な時間インキュベートした。カスパーゼ3が切断された標的細胞の割合を示す。MLRエフェクター細胞はH-2不適合の標的細胞のみを破壊し、このアッセイの特異性が示されている。結果は、同様の結果を伴った3回の実験の典型を示す。C. CTLがもたらす細胞溶解顆粒分泌の阻害剤であるコンカナマイシンAは、Balb/cに対するC57BL/6 MLRエフェクター細胞とインキュベートしたP815標的細胞におけるカスパーゼ3の切断を阻害する。5日目のMLR培養液を分注し、示されているように2倍、4倍、10倍、または希釈なしの比率で、同系のナイーブC57BL/6脾臓リンパ球を用いて希釈した。希釈したエフェクター細胞は、標識したP815細胞とインキュベートした。MLR細胞なしのナイーブC57BL/6脾臓細胞、または標識されたP815細胞のみをコントロールとした。アッセイでは、3時間後に切断型カスパーゼ3を染色した。
【図3】マウスのMLRエフェクター細胞と、ペプチドワクチン接種応答後に単離されたCTLを用いたマウスCTL活性の追跡におけるカスパーゼ3切断アッセイとクロム51放出アッセイの比較。A. マウスMLR(b→d)由来のエフェクター細胞を、表記のE:T比で100,000個のP815、またはEL4標的細胞と4時間インキュベートした。クロム51放出アッセイでは、16:1のE:T比から始めて、0.2:1まで採択した。一方カスパーゼ3切断アッセイは、1:1から0.1:1の間のE:T比で行われた。2回の類似した実験の一つを示す。B. ペプチドで免疫されたマウスにおける免疫応答を追跡するにあたって、カスパーゼ3切断アッセイは、クロム51放出アッセイと同等の信頼性と特異性を持つ。マウスは、メラノーマTRP2ペプチドで免疫され、表記のE:T比で調べられた。
【図4】カスパーゼ3切断によるCTLアッセイは、ウィルスベクターでワクチン免疫されたマウスのCD8+ T細胞応答の追跡において、IFN-γELISPOTアッセイに匹敵する結果をもたらす。HLA-A2.1/Kbトランスジェニックマウスを、ALVAC-gp100で免疫した後、脾臓細胞をgp100ペプチドのプールで5日間再刺激した。生きた細胞を分離し、20:1のE:T比でカスパーゼ3の切断を用いてCTL活性を調べた(パネル左)。あるいは、1ウェル毎に100,000細胞のせて、ELISPOTアッセイのIFN-γ 産物を調べた(パネル右)。gplOOペプチド、またはコントロールのA2結合CMV pp65ペプチドで刺激したP815-A2/Kbトランスフェクタントを標的細胞として用いた。結果は二つの独立した実験を示す。点は、ワクチン接種したマウス各個体の結果を表したものである。
【図5】カスパーゼ3切断アッセイを用いた抗原特異的ヒトCD8+T細胞の応答の追跡。ペプチド刺激を受けた自己の樹状細胞(DC)と活性化型B細胞を用いて、HLA-A*0201をもつドナーのPBMCから、最初のペプチド特異的ヒトT細胞系統を産生した。CTL活性を調べる前に、T細胞に4回のペプチド特異的刺激を行った。A. 外来性抗原特異的(HIV rev ペプチド)T細胞系統に対するカスパーゼ3切断アッセイの適用。採取したT細胞を、HIV rev、CMV pp65ペプチド、または“ペプチドなし”で刺激したDDAO-SE標識のT2リンパ腫標的細胞と一緒にインキュベートした。T細胞は、100,000個の刺激済み標的細胞と1:1 の比率で混合する前に、自己のナイーブPBMCを用いて2倍または6倍希釈された。表記のように、細胞を1または3時間インキュベートし、切断型カスパーゼ3を染色した。標的細胞のみ (「Tのみ」)をまた、コントロールとして用いた。3回の類似した実験の内、一つの結果を示す。B. カスパーゼ3の切断、またはアネキシン(Annexin)-V+7-AAD染色アッセイを用いて測定した自己抗原特異的な(CEAのCAP1ペプチド)ヒトT細胞系統におけるCTL活性。エフェクター細胞は、CAP1特異的ペプチドまたは非特異的なCMV pp65ペプチドで刺激されたT2細胞と混合する前に、自己のナイーブPBMCを用いて表記の比率で希釈した。標的細胞のみ ("T のみ")、及びドナー由来のナイーブPBMCをネガティブコントロールとして用いた。3時間インキュベートした結果を示す。1または4時間の場合でも、同様の結果が得られた (不掲載)。2回の類似した実験の内、一つの結果を示す。
【図6】カスパーゼ3切断アッセイは、マウスのCTL活性の追跡法として高い感度を示すアッセイである。b→d MLR由来の脾臓細胞を採取し、DDAO-SE標識したP815標的細胞とインキュベートした。MLRエフェクター細胞は、P815標的細胞と1:1の比率で混合する前に、同系のナイーブ脾臓細胞を用いて表記の比率で希釈した。アッセイでは、100,000個の希釈されたエフェクター細胞と100,000個の標的細胞が用いられた。上のパネル(A)は、様々な希釈率のMLRエフェクター細胞において、FACS解析後、DDAO-SE /カスパーゼ3の切断で展開したドットプロットを示す。標的細胞と混合したナイーブB6脾臓細胞をネガティブコントロールとして示している。 B. b→d MLRエフェクター細胞を表記比率で希釈した時のカスパーゼ3の切断を示す二つの独立した実験の結果。切断型カスパーゼ3の染色の前に、エフェクター細胞とP815標的細胞を2または4時間インキュベートした。
【図7】カスパーゼ3切断アッセイは、ヒトCD8+ T細胞の活性の追跡法として、HLAペプチド五量体によるTCR染色と同水準の高い感度を持つアッセイである。HLA-A*0201限定 HIV gagペプチド特異的なヒトT細胞系統を前述と同様に産生し、CTL活性を調べた。T細胞にHIV またはCMV (特異性のコントロール)ペプチドで刺激されたT2標的細胞を1:1の比率で加える前に、T細胞を、自己のナイーブPBMCを用いて表記の比率で希釈した。標的細胞のみ、及びエフェクター細胞なしのナイーブPBMCをネガティブコントロールとして用いた。A. ドットプロットは、高倍希釈したHIV gag ペプチド特異的T細胞を、HIV gag ペプチド、または非特異的なCMV pp65ペプチドで刺激したT2細胞と共にインキュベートした時の典型的な結果を示す。200倍希釈の時でさえ、カスパーゼの切断における違いがはっきりと検出される。B. カスパーゼ3の切断アッセイを調べた3つの異なる実験の平均値と標準偏差を示す棒グラフ。ここでは、ナイーブPBMCを用いて表記のように希釈されたHIV gag ペプチド特異的T細胞系統のCTL活性が、カスパーゼ3の切断アッセイにより測定されている。各ケースにおいて、希釈されたエフェクター細胞150,000個と、ペプチドで刺激した標的細胞をDDAO-SE標識したもの150,000個が共にインキュベートされた。パネル(C)には、同じT細胞を、HLA-gag ペプチド五量体(プロイミューン(ProImmune)社、オックスフォード、英国)で染色したものが比較対象として示されている。CMV pp65 ペプチド特異的なT細胞系統を、特異性のコントロールとして用いた。五量体アッセイをカスパーゼ3切断アッセイと比較することを目的として、ゲートで囲まれたT細胞150,000個が各データをとるために集められた(同量のエフェクター細胞がCTLアッセイに加えられた)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞集団に対する免疫エフェクター細胞集団の細胞傷害活性を検出する方法であって、
(a)免疫エフェクター細胞集団を標的細胞集団に暴露させ;
(b)前記標的細胞におけるアポトーシス経路が活性化されるように、免疫エフェクター細胞が前記標的細胞に作用するのに十分な時間それに適した条件下で前記細胞をインキュベートし;
(c)混合した細胞集団を固定および膜透過処理し;
(d)混合した細胞集団を、アポトーシス過程の間に変化を受けるかあるいはその過程の結果生じるタンパク質またはその断片に結合できる検出可能な試薬に曝し;
(e)前記検出可能な試薬を検出する;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記免疫エフェクター細胞がT細胞であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記標的細胞がウィルス感染細胞または腫瘍細胞であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記工程(d)のタンパク質がカスパーゼであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
カスパーゼがカスパーゼ3であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記検出可能な試薬が抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記検出可能な試薬が蛍光標識した抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記工程(e)の検出が、フローサイトメーターを用いてなされることを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−522447(P2007−522447A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551314(P2006−551314)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/001993
【国際公開番号】WO2005/090990
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506121342)サノフィ パストゥール インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR, INC.
【Fターム(参考)】