説明

細胞内抗体送達

本発明は、小胞、及び該小胞内に封入された抗体を含有する組成物であって、ここで該小胞が、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する両親媒性ブロック共重合体を含む組成物に関する。前記組成物を細胞へ送達する方法も、説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、抗体を細胞へと導入するための送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
抗体の細胞への制御された送達は、現在大きい商業的かつ科学的関心となっている。かつては、無傷の抗体分子(内因性及び外因性の両方)は、生存可能な細胞に侵入することはできないと考えられていた。しかし現在、そうではないことを示す多くの研究が存在する。生細胞に侵入する成熟自己抗体は、健康な組織及び細胞のアポトーシスの誘導を通じ、多様な自己免疫疾患の病因に関与していると考えられる。抗体は、免疫系への自己抗原の提示を通じ、自己寛容の破壊に寄与することもできる。天然の自己抗体の未熟リンパ球様細胞への侵入は、健常個体の免疫レパトアにおいて生理的役割を有することができる。薬物、アイソトープ又は遺伝子を細胞へと送達する道具としての抗体の侵入の可能性のある免疫療法的役割に払われる関心が、増大している(Ruiz-Arguelles, A.らの文献、「生細胞への抗体侵入:病因的、予防的及び免疫療法的関与(Antibody penetration into living cells: pathogenic, preventive and immuno-therapeutic implications)」、Current Pharm Design, 9, 1881 (2003))。従って本来侵入しない抗体の細胞内送達のための無毒の送達システムは、実用性が高いであろう。
【0003】
抗体の細胞への送達は、多数の細胞が分析されるべき場合、又は研究者が接着細胞に加え非接着細胞を試験することを欲する場合のいずれかで、特有な問題であり得る。電気穿孔法、スクレープ負荷、又はリポソームによる送達などの、タンパク質及び他の成分を細胞へ導入するいくつかの方式が公表されている。
【0004】
一部は、新規IgG-捕獲タンパク質と、膜融合活性を介して様々な分子を哺乳類細胞へ送達することができる失活されたセンダイウイルス粒子であるHVJ-E (Hemaglutinating virus of Japan envelope)の組合せの使用などの、他の方式を報告している(Kondo, Y.らの文献、「新規HVJエンベロープベクターシステムを使用する抗体の生細胞への効率的送達(Efficient delivery of antibody into living cells using a novel HVJ envelope vector system)」、J Immunol Methods, 332, 10 (2008))。GenomONE-Cabとして公知のこの方式を基にした抗体送達試薬が、この目的のために市販されている。これは、エンドサイトーシスにより抗体が細胞へ導入される従来の脂質ベースの試薬を使用する実験に関連した難点を克服することを主張している。同様に別の研究において、TAT-融合タンパク質を使用し抗体を細胞へ送達する新規方法が報告された(Lee, K.O.らの文献、「HIV-1 TATタンパク質形質導入ドメインにより媒介されたグルコセレブロシダーゼの改善された細胞内送達(Improved intracellular delivery of glucocerebrosidase mediated by the HIV-1 TAT protein transduction domain)」、Biochem Biophys Res Comms, 337, 701 (2005))。この融合タンパク質は、ふたつの機能ドメイン、すなわちHIV-1 TATのタンパク質形質導入ドメインと、IgGへ結合する能力を有するブドウ球菌プロテインA(SpA)のBドメインからなる。このTAT-SpA融合タンパク質は、蛍光標識されたウサギIgGと混合され、かつ細胞に添加され、抗体のインターナリゼーションが、生細胞において、共焦点顕微鏡法及びフローサイトメトリーを用い分析された。
【0005】
広範に報告された抗体送達の方法は、リポソームシステムの使用である。多くの比較的安価な脂質-ベースの送達システムが、商業的に入手可能である。例えば、Lipodin-Ab(商標)及びAb-DeliverIN(商標)は、機能性抗体をそれらの標的に送達し;多くの株化細胞及び初代細胞において高度に効率的であり;血清と適合性があり;全ての抗体に適しており;生分解可能である一方で、高い細胞生存能を保持し;かつ、そのまま使用できかつ使用が容易であることを主張している抗体送達システムである。これらのシステムは、静電相互作用及び疎水性相互作用により、抗体と非共有結合複合体を形成する脂質-ベースの製剤である。しかしこれらの陽イオン性脂質及び重合体ベースのシステムは、高い細胞生存能を主張するにもかかわらず、細胞にとって悪評高い細胞毒であることは周知である。このことは確実に、長期間にわたり抗体複合体を連続投与することを必要とする療法的治療に関してより深刻な問題点であろう。
【0006】
Walterらの論文(Eur J Cell Biol, 1986年, 4月;4(2): 195-202)は、ショウジョウバエ(Drosophila)株化細胞への抗体のリポソーム-媒介型送達について説明している。抗体は、色素と一緒にリポソームに封入され、かつ光学顕微鏡を用いて観察された細胞により取り込まれた。
【0007】
細胞への進入をエンドサイトーシスに頼る脂質-ベースのシステムも、エンドソームからの不充分な解放(回避)に関連した問題点に遭遇する。2006年にCarafa M.らの論文(Eur J Pharm Sci., 28, 385 (2006))は、pHの変化によりエンドソームを回避することができるpH感受性小胞に関する研究を発表した。例えば、第3級アミン-ベースの界面活性剤の使用(Asokan A、Cho MJ.の論文、J. Control Release., 106, 146 (2005))などの、細胞質ゾルへの送達を増強することを試みるための別の研究が行われている。しかしこの方法は、その膜を部分的に破壊することにより、細胞の生存能に影響を及ぼす。別の試みは、接着細胞又は非接着細胞を可逆的に透過性とするために使用することができる毒素ストレプトリジンO(SLO)などの細孔-形成剤を用いて実行された(Walev Iらの論文、Proc Natl Acad Sci USA., 98, 3185 (2001))。これらの方法は全て、細胞にストレスを与え、かつ細胞の反応を変化させ、信頼できない結果をもたらすことがある。
【0008】
トリフルオロアセチル化されたリポポリアミンで構成された代替送達システムが、Zelphatiらの論文(Journal of Biological Chemistry;276巻, 37号, 2001年9月14日;35103-35110頁)に説明されている。この陽イオン性脂質製剤を使用し、組換えタンパク質、ペプチド及び抗体を生存可能な細胞に進入させることができる。
【0009】
ヒト細胞内のDNA送達のための非常に効率的な無毒かつ非炎症性のポリマーベクターが、Lomas, Hらの文献(「効率的DNA封入及び送達のための生体模倣pH感受性ポリマーソーム(Biomimetic pH Sensitive Polymersomes for Efficient DNA Encapsulation and Delivery)」、Adv. Mater. 19巻, 4238-4243頁(2007))に説明されている。加えて両親媒性重合体のDNAとの組合せが、WO03/074090に開示されている。この共重合体の各構成要素のブロック長に応じ、DNAとの相互作用は、DNA縮合体(ポリプレックス(polyplexes))を作製するか、又は小胞内にDNAを封入するようにあつらえることができる。後者は、pH感受性ポリ(2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン)-ポリ(2-(ジイソプロピルアミノ)-メタクリル酸エチル)(PMPC-PDPA)ブロック共重合体のナノメーターサイズの小胞への自己-組織化に基づいており、ポリマーソームとしても公知である(Du, J.らの文献、「生体適合性両性イオン性ジブロック共重合体を基にしたpH感受性小胞(pH Sensitive Vesicles based on a Biocompatible Zwitterionic Diblock Copolymer)」、J. Am. Chem. Soc. 127, 17982-17983 (2005))。核酸及びローダミン色素を送達するためのこれらの重合体小胞の使用は、Lomasらの論文(Faraday Discuss., 139, 143-159 (2008))に更に説明されている。これらの先行技術の参考文献はいずれも、抗体の細胞への送達を説明していない。
【発明の概要】
【0010】
(発明の概要)
先行技術を考慮し、抗体を細胞へ導入するための改善された送達システムを提供することが依然望ましい。この要望に従い、本発明の第一の態様において、小胞、及び該小胞内に封入された抗体を含有する組成物であって、ここで該小胞が、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する両親媒性ブロック共重合体を含む、組成物が提供される。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記ブロックのひとつがpH-感受性である本発明の第一の態様に従う組成物を形成する方法であって:
(i)前記両親媒性共重合体を水性媒体中に分散する工程;
(ii)工程(i)において形成された組成物を酸性化する工程;
(iii)酸性化された組成物に抗体を添加する工程;及び
(iv)そのpHを中性近傍に上昇させ、該抗体を封入する工程:を含む方法を提供する。
【0012】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様に従う組成物を、細胞と接触させることを含む、抗体を細胞へ送達するインビトロ方法を提供する。
本発明の第四の態様は、療法による治療方法において使用するための、本発明の第一の態様に従う組成物を提供する。
本発明の最後の態様は、抗体が細胞に送達される、療法による治療方法において使用するための、本発明の第一の態様に従う組成物を提供する。
【0013】
本発明の第一の態様において規定された小胞は、生体適合性であり、かつ細胞とのいかなる細胞毒性相互作用も受けない。この小胞-形成重合体は、細胞により良く許容され、炎症反応を誘導せず、かつ過度の毒性を伴わずに抗体を細胞へ送達するために使用することができる。送達率は、先行技術において説明された送達システムに比べ、改善されている。
【0014】
ほとんどの抗体は自然に細胞へ進入する能力はないので、抗体を使用する過去の実験は、主に細胞外結合に焦点を当てている。本発明は、標的分子を生細胞に進入させることができるので、研究の新たな次元、例えば疾患診断及び治療のための標的分子の探索を遂行することが、現在可能である。本発明は、細胞内で抗体の機能を保持しかつ実行するような抗体を導入し、かつ生細胞内で標的化された分子に関連する細胞内事象の研究を含む多くの目的に有用である、新規方法を提供する。細胞骨格の機能に関する多くの疑問点は、インビトロアッセイによるか又は全細胞システム内のいずれかにより、機能性抗体を用い対処することができる。最終的に、成分の機能は、無傷の細胞システム内で研究されなければならず、かつ本発明はそのようなシステムが使用されることを可能にする。
【0015】
本明細書において説明された本発明は、抗体又は抗体断片の封入のための、及び細胞内で毒性を誘導することのなく、次いで該抗体を生存細胞に送達するための小胞(別に「ポリマーソーム」としても公知である)を形成するブロック共重合体の使用に関する。細胞内送達におけるポリマーソームの使用は、先に詳述されたように、これまでに説明されており、かつこれらの小胞を特定の細胞に標的化することを補助するための、抗体によるポリマーソーム表面の機能化に関する広範な報告が存在する。しかし本発明者らは、抗体の封入に関するこれらの構造の報告された使用、及び治療的又は診断的使用のために細胞機能を変更するための内部標的構造への結合能を持つ完全な抗体を生存細胞へ直接送達するための使用に関しては承知していない。従って本発明の抗体は、内部標的構造に結合することができる抗体である。
【0016】
本発明において、両親媒性ブロック共重合体を含む自己組織化された構造が使用される。これらは、生体リン脂質を模倣することができる。これらの重合体の分子量は、天然のリン脂質-ベースの界面活性剤よりもはるかに高く、その結果これらはより絡み合った膜へと組織化することができ(Battaglia, G.及びRyan, A. J.の論文、J, Am. Chem. Soc., 127, 8757 (2005))、改善された力学的特性及びコロイド安定性を伴う最終構造を提供する。更にこの共重合体合成の柔軟な性質は、広範な分子量及びその結果としての膜厚にわたる様々な組成及び機能性の適用を可能にする。従って送達ビヒクルとしてのこれらのブロック共重合体の使用は、先行技術において使用されたそれらのビヒクルに勝る著しい利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、ここで、下記実施例及び図面により例示される:
【図1】図1は、抗体、対、吸光度の検量曲線である;
【図2】図2は、細胞取り込み蛍光×細胞の強度を、経時的に示す;
【図3】図3は、細胞により取り込まれた抗体の量を、経時的に示す;
【図4】図4は、様々な処理により染色された線維芽細胞を示す:(a)常法による二次抗体;(b)二次抗体を含むポリマーソーム;(c)常法による一次抗体及び二次抗体;(d)ポリマーソーム中に封入された一次抗体及びポリマーソーム中に封入された二次抗体;
【図5】図5は、線維芽細胞中に取り込まれた蛍光二次抗体の(a)フローサイトメトリーの結果、及び(b)CLS画像を示す;
【図6】図6は、二次抗体を封入しているポリマーソームのHDFによる生存取り込みを示す;
【図7】図7は、(a)トリパンブルーと結合された一次抗α-チューブリンを封入しているポリマーソームが負荷された生存HDF細胞のCLSM顕微鏡写真;(b)図7aの詳細;(c)一次抗α-チューブリンのみを封入しているポリマーソームが負荷された生存HDF細胞のCLSM顕微鏡写真;(d)図7cの詳細を示す;
【図8】図8は、FITC標識された抗p65を封入しているポリマーソームが負荷された生存HDF細胞のCLSM顕微鏡写真を示す:a)細胞は、ポリマーソーム-抗p65NFκB抗体取り込みの6時間後に、LPS 1μg/mLにより刺激された(2時間);b)細胞は、ポリマーソーム-抗p65NFκB抗体取り込み前に2時間LPS 1μg/mLにより刺激された;c)細胞は、6時間の取り込みのために、ポリマーソーム-抗p65NFκB抗体により処理された(陰性対照、非刺激細胞);
【図9】図9は、HDFにおけるNFκB p65の従来の免疫標識を示している蛍光顕微鏡写真を示す−細胞は、固定されかつ抗体処理前にトリトンx-100により透過性亢進されている:a)陰性対照(非刺激細胞);b)細胞は、固定される前に、LPS 1μg/mLにより2時間刺激された;
【図10】図10は、核局在化を促進するための、FITC標識された抗-p65を封入しているポリマーソームが負荷された生存HDF細胞のCLSM顕微鏡写真を示す:細胞は、細胞透過性核酸染色Syto-9によっても染色された:a)細胞は、6時間取り込みのために、ポリマーソーム-抗p65NFκB抗体により処理された(陰性対照、非刺激細胞);b)細胞は、ポリマーソーム-抗p65NFκB抗体取り込み前に2時間LPS 1μg/mLで刺激された;
【図11】図11は、抗-ゴルジ抗体を封入しているポリマーソームで処理されたHDF細胞を示す:(a)一次抗体を封入しているポリマーソームの送達、それに続く生存細胞への二次抗体を封入しているポリマーソームの送達;(b)図11aの詳細;(c)一次抗体及び二次抗体による従来の免疫標識;(d)図11cの詳細を示す;並びに
【図12】図12は、有糸分裂紡錘体を明確に示している、抗α-チューブリンを封入しているポリマーソームにより処理された生存HDF細胞のCLSM顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
前記小胞が一旦細胞へ取り込まれると、これらは有利なことにその細胞内で解離しかつ抗体を放出する。解離は、様々な機序により促進され得るが、典型的にはブロック共重合体のpH感受性により促進される。この両親媒性共重合体の親水性ブロック又は疎水性ブロックが好ましく、好ましくは疎水性ブロックは、3.0〜6.9の範囲のpKaを持つペンダント基を有する。理論に結びつけられることを欲するものではないが、これらの小胞の細胞インターナリゼーション(エンドサイトーシス)の機序は、輸送(trafficking)小胞、ファゴソーム、又はピノソームなどの(正確なエンドサイトーシス経路により決まる)、エンドサイトーシスの細胞小器官により生じたリン脂質膜内の貪食に関与している。このエンドサイトーシスの細胞小器官は、細胞膜から剥がれ、かつ更なるプロセッシングのために細胞内部に小胞を取り込む。このエンドサイトーシス経路とは無関係に、インターナリゼーションされた小胞は、一旦細胞小器官の内部でpH7.4からpH5〜6への、局所的pHの低下を経験する。このpHの下落は、小胞の崩壊及び抗体の放出を引き起こすのに十分である。この変遷は、半透膜性細胞小器官内に限定されるので、粒子数の突然の増加は、浸透圧の大きい上昇に対応する。これは、エンドサイトーシスの細胞小器官のリン脂質膜の溶解を引き起こし、抗体を細胞質ゾルへ放出する。
【0019】
本発明の組成物は、通常水性であり、従って典型的には前記小胞は水溶液中にある。本水性組成物の典型的pHは、7.0〜7.6、好ましくは7.2〜7.4である。小胞は一般に、実質的に球形であり、かつ二層膜を含む。この二層は、一般に両親媒性分子のふたつの層から形成され、分子は、コア及び小胞の外側に面している親水性ヘッド基、並びに膜の内側を形成する親水性テール基により取り囲まれたコアを形成するように整列されている。
【0020】
実質的に球形の小胞の典型的直径は、50〜5000nmの範囲である。より典型的には、この直径は50〜1000nmの範囲である。この範囲の直径を有する小胞は、通常「ナノ小胞」と称される。ナノ小胞は、形状が実質的に球形であることが好ましい。典型的にはナノ小胞は、数平均直径300nm未満を、好ましくは250nm未満を、最も好ましくは200nm又は150nm未満を有する。この二層の厚さは、一般に2〜50nmの間、より典型的には5〜20nmの間である。これらの寸法は、透過型電子顕微鏡(TEM)、及びX-線小角散乱(SAXS)により測定することができる(Battagliaらの論文、JACS 127, 8757 (2005))。
【0021】
水溶液中において、例えば小胞とミセルの間などの、異なる種類の構造体の間には、通常平衡状態が存在する。溶液中の構造体の少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%又は95重量%、及び最も好ましくは全てが、小胞として存在することが好ましい。これは、本明細書において以下に概略された方法を用い、実現され得る。
細胞へと送達される抗体は、一次抗体又は二次抗体であることができる。本発明の一実施態様において、一次及び二次の両抗体が、細胞へ、典型的には個別の小胞集団へ送達される。二次抗体は、造影、精製又は細胞-選別の適用に関して有用となる標識を運搬することができる。抗体は、蛍光色素などの造影剤に複合されることができる。更なる実施態様において、抗体及び造影剤は、独立して小胞に会合される。
【0022】
本発明における使用に適した標識は、電磁放射線により励起された場合に蛍光を発し、かつ自己-組織化された構造体又は抗体と会合することができる、任意の標識である。典型的には、この蛍光標識は、小胞の水性コアの内側に封入されている。しかし蛍光標識が疎水性である場合には、より典型的にはこれは疎水性の膜と会合される。ローダミンフルオレセイン、BODIPY(登録商標)及びNBDなどの蛍光色素が特に適している。
【0023】
溶解は、標識された抗体のトリパンブルーなどの消光分子へのカップリングにより改善され得る。消光剤は、励起された発蛍光団からの放出エネルギーを吸収し、その蛍光シグナルを減少することができる分子である。消光作用を得るために、ドナー(発蛍光団)とアクセプター(消光剤)は、100Åよりも遠く離れてはならない。実施例8は、この消光技術の使用のより詳細を含んでいる。
【0024】
好適な抗体は、中心体、エンドソーム、小胞体及びゴルジタンパク質、リソソーム、ミトコンドリアタンパク質、核膜、ペルオキシソーム、細胞膜、並びにその他の細胞タンパク質及び細胞小器官タンパク質を含む細胞内構造体を標的とするものを含む。
【0025】
この抗体は、全抗体分子(例えばIgG)、あるいは抗体断片(一本鎖抗原結合部位scFvなど)であることができる。本発明において使用されることができる抗体の例は、以下を含む:
・腫瘍療法抗体(例えば、EGF受容体、erb2受容体などのチロシンキナーゼ受容体に対する抗体;Rasなどのシグナル伝達経路の阻害因子;並びに、カスパーゼなどのアポトーシス経路の抗体など);細胞の増殖停止及び死滅の誘導に関与した核因子(例えばp53)、細胞周期タンパク質(例えばサイクリン)並びに腫瘍進行に関与した細胞外プロテイナーゼ(例えばメタロプロテアーゼ及びカテプシン)
・感染症を治療することができる抗体(例えばHIVウイルス療法抗体及びHVC阻害因子)
・MCH-I抗体療法による免疫拒絶のブロック、及び細胞内炎症系路のブロックなどの、細胞内免疫抑制及び炎症経路抑制に関与した抗体(抗NFκB抗体)。
【0026】
本発明における使用が認められる抗体について可能性のある適用及び標的タンパク質を、下記表にまとめている:
【表1】

【0027】
この抗体は典型的には、静電引力又は疎水性引力などの物理的又は化学的相互作用を介して、小胞に会合されている。通常、抗体は、本小胞に共有結合はされない。抗体は、膜の内側に会合されることができる。抗体は、好ましくはナノ小胞である小胞の水性コア内に封入されることが好ましい。
【0028】
様々な実験技術を使用し、抗体と小胞の間の会合を決定することができる。例えば、透過型電子顕微鏡及び動的光散乱法(DLS)を使用し、抗体が小胞のコア内に封入されていることを示すことができる。ゼータ電位測定法も、抗体が、小胞の外膜に会合されているよりも、むしろ封入されていることを確認するために使用することができる。
【0029】
両親媒性ブロック共重合体の疎水性ブロック又は親水性ブロックは好ましくは、3.0〜6.9の範囲のpKaを有するペンダント基を備える。これは、この共重合体に対し「pH感受性」を付与する。pKaは、それらのペンダント基の半分がイオン化されているpHを意味する。典型的には、この疎水性ブロックは、3.0〜6.9の範囲のpKaを持つペンダント基を有する。
【0030】
pKaは、pH滴定とそれに続く電位差滴定、UV分光法及び動的光散乱法(DLS)を含む、様々な方法により決定されることができる。分析されるべき共重合体に従うpKa及び試験媒体中のその溶解度を測定するために、好適な方法が選択されなければならない。
【0031】
DLSは、pKaの測定に関して特に好ましい方法である。Duらの論文(J. Am. Chem. Soc., 127, 17982-17983 (2005))に記されたように、水中のPMPC25-b-PDPA120共重合体からのDLSシグナルは、pHにより変動する。あるpHにおいて、この共重合体が分子的に分離から会合へ転移を受けるので、このシグナルは急激に増大する。pKaは、この急激な増加の中間点のpHとされる。これらの実験は、Giacomelliらの論文(Biomacromolecules, 7, 817-828 (2006))において更に説明されている。この参考文献において、実験は、PMPC-b-PDPAブロック共重合体のミセルについて実行されるが、その技術は、この相転移が小胞形成に関与する場合にも使用することができる。
【0032】
本明細書において、重合体内の基のpKaは、重合体システムを基に決定される(かつ、非重合システムの類似部分のpKaと同じであるとは推定されない)。
前記疎水性ブロックは、ペンダント基としてペンダントの陽イオン化可能な部分を含むことが好ましい。陽イオン化可能な部分とは、3〜6.9の範囲の値よりも低いpHでプロトン化されることが可能である、例えば1級、第2級又は第3級アミンである。あるいはこの基は、ホスフィンであることができる。
好ましくは、このペンダント基のpKaは、4.0〜6.9の範囲、より好ましくは5.5〜6.9の範囲内にある。従ってこれらの小胞は、そのようなpH範囲で分離することが可能である。
【0033】
本発明の一実施態様において、疎水性ブロックは、少なくとも50、より好ましくは少なくとも70の重合度を有する。好ましくは、該疎水性ブロックの重合度は、250以下、更により好ましくは200以下である。典型的には、該親水性ブロックの重合度は、少なくとも15、より好ましくは少なくとも20である。親水性ブロック対疎水性ブロックの重合度の比は、1:2.5〜1:8の範囲であることが好ましい。これらの制限は全て、ミセル形成よりもむしろ小胞形成を促進する。
【0034】
本発明において、親水性ブロックは、ポリエステル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリウレタン、ポリエーテル(ポリアルキレングリコール、特にPEGを含む)、ポリイミン、ポリペプチド、ポリ尿素、ポリアセタール又は多糖などの縮合重合体を基にすることができるが、好ましくは該親水性ブロックは、エチレン性不飽和単量体のラジカル重合された付加重合体を基にしている。一般にそれらからブロックが形成される単量体は、それら自身が重合プロセスにおいて無荷電であり続ける両性イオン性ペンダント基を有する。あるいは、重合後にこれを両性イオン性とするために、単量体の官能性ペンダント基を誘導体化することが可能であってもよい。
【0035】
好ましくは、前記親水性ブロックは、エチレン性不飽和両性イオン単量体から形成される。好適なエチレン性不飽和両性イオン単量体は、下記一般式を有する:
YBX I
(式中、
Yは、H2C=CR-CO-A-、H2C=CR-C6H4-A1-、H2C=CR-CH2A2、R2O-CO-CR=CR-CO-O、RCH=CH-CO-O-、RCH=C(COOR2)CH2-CO-O、
【化1】

から選択されたエチレン性不飽和基であり;
Aは、-O-もしくはNR1であり;
A1は、結合、(CH2)IA2及び(CH2)ISO3-から選択され、ここでIは1〜12であり;
A2は、結合、-O-、O-CO-、CO-O、CO-NR1-、-NR1-CO、O-CO-NR1-、NR1-CO-O-から選択され;
Rは、水素もしくはC1-4アルキルであり;
R1は、水素、C1-4アルキルもしくはBXであり;
R2は、水素もしくはC1-4アルキルであり;
Bは、結合、又は、任意に1個以上のフッ素置換基を含む、直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、もしくはアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;
Xは、両性イオン基である。)。
【0036】
好ましくは、Xは、アンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウムリン酸エステル又はホスホン酸エステルの両性イオン基であり、より好ましくは一般式IIの基である:
【化2】

(式中、同一であるかもしくは異なる部分A3及びA4は、-O-、-S-、-NH-もしくは原子価結合、好ましくは-O-であり、かつW+は、アンモニウム、ホスホニウムもしくはスルホニウム陽イオン性基、並びに、陰イオン部分と陽イオン部分を連結する好ましくはC1-12-アルカンジイル基である基を含む基であり、
好ましくはW+は、式-W1-N+R33、-W1-P+R43、-W1-S+R42もしくはW1-Het+の基であり、ここで:
W1は、任意に1個以上のエチレン性不飽和二重結合もしくは三重結合を含む1個以上、好ましくは炭素原子2〜6個のアルカンジイル、二置換型のアリール(アリーレン)、アルキレンアリーレン、アリーレンアルキレン、又は、アルキレンアリールアルキレン、シクロアルカンジイル、アルキレンシクロアルキル、シクロアルキルアルキレンもしくはアルキレンシクロアルキルアルキレンであり、基W1は、任意に1個以上のフッ素置換基及び/又は1個以上の官能基を含み;かつ、
各基R3は同一であるかもしくは異なり、かつ各々が水素もしくは炭素原子1〜4個のアルキル、好ましくはメチル、もしくはフェニルなどのアリールであるか、又は、基R3の内の2個はそれらに結合された窒素原子と協働して5〜7個の原子を含む脂肪族複素環を形成するか、又は、3個の基R3は、そのいずれかの環が別の飽和もしくは不飽和の環に縮合され得る5〜7個の原子を有する複素環式芳香環として、それらに結合する窒素原子と協働して、各環に5〜7個の原子を含む縮合環構造を形成し、かつ、任意に基R3の1個以上は親水性官能基により置換され;かつ、
基R4は同一であるかもしくは異なり、かつ各々はR3もしくは基OR3であり、ここでR3は先に定義され;又は、
Hetは、例えばピリジンなどの、芳香族窒素-、リン-もしくは硫黄-含有環、好ましくは窒素-含有環である。)。
【0037】
Xが、W+がW1N+R33である上記一般式である単量体は、本出願人による先の明細書WO-A-9301221に開示された如く作製され得る。ホスホニウム及びスルホニウムアナログは、WO-A-9520407及びWO-A-9416749に開示されている。
【0038】
一般的に、上記式IIの基は好ましい一般式IIIを有する:
【化3】

(式中、基R5は同一であるかもしくは異なり、かつ各々は水素もしくはC1-4アルキルであり、かつmは1〜4であり、好ましくは基R5は同一であり好ましくはメチルである。)。
【0039】
ホスホベタイン系基において、Xは一般式IVを有してもよい:
【化4】

(式中、A5は、原子価結合、-O-、-S-もしくは-NH-、好ましくは-O-であり;
R6は、(A5と共に)原子価結合、もしくは、アルカンジイル、-C(O)アルキレン-もしくは-C(O)NHアルキレンであって、好ましくはアルカンジイルであり、好ましくはアルカンジイル鎖中に炭素原子1〜6個を含み;
W2は、S、PR7もしくはNR7であり;
上記基R7は各々、水素もしくは炭素原子1〜4個のアルキルであるか、又は、2個の基R7はそれらに結合するヘテロ原子と協働し5〜7個の原子の複素環を形成し;
R8は、炭素原子1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個のアルカンジイルであり;
A6は、結合、NH、SもしくはOであって、好ましくはOであり;かつ、
R9は、ヒドロキシル、C1-12アルキル、C1-12アルコキシ、C7-18アラルキル、C7-18-アラルコキシ、C6-18アリールもしくはC6-18アリールオキシ基である。)。
【0040】
一般式IVの基を備える単量体は、アミノ置換単量体がホスホランと反応するというJP-B-03-031718に開示された方法により作成され得る。
【0041】
一般式IVの基を備える化合物においては、
A5は、結合であり;
R6は、C2-6アルカンジイルであり;
W2は、NR7であり;
各R7は、C1-4アルキルであり;
R8は、C2-6アルカンジイルであり;
A6は、Oであり;かつ、
R9は、C1-4アルコキシであるのが好ましい。
【0042】
あるいは、Xは、陰イオンが、スルフェート基、スルホネート基又はカルボキシラート基を備える両性イオンであることができる。
そのような基の一例は、下記一般式Vのスルホベタイン基である:
【化5】

(式中、基R10は同一であるか又は異なり、かつ各々は水素もしくはC1-4アルキルであり、かつsは2〜4である。)。
【0043】
好ましくは、基R10は同一である。基R10の少なくともひとつはメチルであることも好ましく、かつより好ましくは基R36は両方ともメチルである。
好ましくはsは2又は3であり、より好ましくは3である。
【0044】
カルボキシラート基を有する両性イオン基の別の例は、α炭素原子(それにアミン基及びカルボン酸基が結合されている)が、リンカー基を介して生体適合性重合体の主鎖に結合されているアミノ酸部分である。そのような基は、下記一般式VIにより表される:
【化6】

(式中、A7は、原子価結合、-O-、-S-もしくはNH-であり、好ましくは-O-であり、
R11は、原子価結合(任意にA7と共に)又はアルカンジイル、-C(O)アルキレン-又は-C(O)NHアルキレンであり、好ましくはアルカンジイルであり、かつ好ましくは炭素原子1〜6個を含むものであり;並びに
基R12は、同一であるか又は異なり、かつ各々は水素もしくは炭素原子1〜4個のアルキル、好ましくはメチルであるか、又は基R12の2もしくは3個は、それらに結合された窒素と協働して5〜7個の原子の複素環を形成するか、又は3個の基R12は、それらに結合された窒素原子と協働して各環に5〜7個の原子を含む縮合複素環構造を形成する。)。
【0045】
カルボキシラート基を有する両性イオンの別の例は、カルボキシベタイン-N+(R13)2(CH2)rCOO-であり、ここでR13基は、同一であるか又は異なり、かつ各々は、水素又はR1-4アルキルであり、かつrは、2〜6、好ましくは2又は3である。
【0046】
一般式Iの両性イオン単量体においては、エチレン性不飽和基Yが、H2C=CR-CO-A-であるのが好ましい。そのようなアクリル部分は好ましくは、Rがメチルであるメタクリル、又はRが水素であるアクリルである。上記化合物は(AがNR1である)(メタ)アクリルアミド化合物であるが、その場合にR1は好ましくは水素、やや好ましくはメチルであり、最も好ましくは上記化合物はエステルであり、即ちその場合にAはOである。
【0047】
上記一般式Iの単量体において、特にYが好ましい(アルカ)アクリル基である場合に、Bは最も好ましくはアルカンジイル基である。そのような基の水素原子のいくつかはフッ素原子により置換され得るが、好ましくはBは非置換のアルカンジイル基であり、最も好ましくは炭素原子2〜6個を有する直鎖基である。
特に好ましい両性イオン単量体は、2-メタクリロイルオキシエチル-ホスホリルコリン(MPC)である。各々上記一般式を有する両性イオン単量体の混合物が、使用され得る。
【0048】
前記疎水性ブロックは、ポリエーテル(ポリアルキレングリコールを含む)、ポリエステル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリウレタン、ポリイミン、ポリペプチド、ポリ尿素、ポリアセタール、又はポリシロキサンなどの、縮合重合体で形成され得る。好適な疎水性ブロックの一例は、ポリアルキレンオキシド、通常ではポリプロピレンオキシドであり、これは良く研究されたプルロニック/ポロキサマーベースのシステムにおいて使用されるものと同じ型のブロックである。高度に疎水性ブロック型のひとつは、ポリ(ジメチルシロキサン)である。ひとつの好ましい実施態様において、疎水性ブロックを形成する重合体の型は、親水性ブロックを形成するものと同じである。好ましくはこの重合体は、エチレン性不飽和単量体のラジカル重合により形成される。
【0049】
それから疎水性ブロックが形成され得る好適な単量体は、一般式VIIを有する:
Y1B1Q VII
(式中
Y1は、H2C=CR14-CO-A8-、H2C=CR14-C6H4-A9-、H2C=CR14-CH2A10、R16O-CO-CR14=CR14-CO-O、R14CH=CH-CO-O-、R14CH=C(COOR16)CH2-CO-O、
【化7】

から選択され;
A8は、-O-又はNR15であり;
A9は、結合、(CH2)qA10及び(CH2)qSO3-から選択され、ここでqは1〜12であり;
A10は、結合、-O-、O-CO-、CO-O-、CO-NR15-、-NR15-CO、O-CO-NR15-、NR15-CO-O-から選択され;
R14は、水素又はC1-4アルキルであり;
R15は、水素、C1-4-アルキル又はB1Qであり;
R16は、水素又はC1-4アルキルであり;
B1は、結合、又は任意に1個以上のフッ素置換基を含む直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;かつ
Qは、式-NR17P、-PR17P及びSR17rの陽イオン基もしくは陽イオン化可能な基であり、ここでpは、2又は3であり、rは1又は2であり、基R43は、同一又は異なり、かつ各々は、水素、C1-24アルキル及びアリールからなる群から選択されるか、又は基R17の2個は、それらに結合されたヘテロ原子と協働して5〜7員の複素環を形成するか、又は3個のR17基は、それらに結合されたヘテロ原子と協働して、その環のいずれかが別の5〜7員の飽和もしくは不飽和環に縮合され得る5〜7員の複素環式芳香環を形成し、かつR43基のいずれかは、アミノ基もしくはヒドロキシル基又はハロゲン原子により置換され得;ここで、pが3である場合、基R17の少なくともひとつは、水素である。)。
【0050】
好ましくは、Y1は、H2C=CR14-CO-A8-であり、ここでR14は、H又はメチルであり、かつA8は、O又はNHである。
好ましい基B1は、アルカンジイルであり、通常、好ましくは炭素原子2〜12個、例えば炭素原子2もしくは3個を有する、直線状アルキル鎖を備える。
【0051】
好ましくはQは、NR172であり、ここでR17は、C1-12-アルキルである。好ましくは両方のR17は同一である。特に有用な結果は、基R17がC1-4アルキル、特にエチル、メチル又はイソプロピルである場合に実現される。
【0052】
疎水性ブロック及び親水性ブロックのいずれか又は両方は、例えば官能性を提供し、疎水性を制御し、pH感受性、場合によってはpKaもしくはpKbを制御し、温度感受性を制御するため、又は一般的希釈剤として提供する、共単量体を含むことができる。例えば官能性を提供する共単量体は、重合及び/又は小胞形成後に標的化部分にペンダント基の縮合を提供するため、又は生物学的活性分子とこの重合体の間の縮合を提供するために有用であることができる。あるいは官能基は、この小胞構造に増大した安定性をもたらすために、小胞形成後に重合体を架橋することを可能にすることができる。
【0053】
好適な共単量体の例は、下記一般式VIIIの化合物である:
【化8】

(式中、R18は、水素、ハロゲン、C1-4アルキル及び基COOR22から選択され、ここでR22は、水素及びC1-4アルキルであり;
R19は、水素、ハロゲン及びC1-4アルキルから選択され;
R20は、水素、ハロゲン、C1-4アルキル及び基COOR22から選択され、但しR18及びR20は両方がCOOR22ではないことを条件とし;並びに
R21は、C1-10アルキル、C1-2Oアルコキシカルボニル、モノ-もしくはジ-(C1-20アルキル)アミノカルボニル、C6-20アリール(アルカリルを含む)、C7-20アラルキル、C6-20アリールオキシカルボニル、C1-20-アラルキルオキシカルボニル、C6-20アリールアミノカルボニル、C7-2Oアラルキル-アミノ、ヒドロキシル又はC2-10アシルオキシ基であり、そのいずれも、ハロゲン原子、アルコキシ、オリゴ-アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、アミン(アルキル基が置換されてよい、モノ及びジ-アルキルアミノ及びトリ-アルキルアンモニウムを含む)、カルボキシル、スルホニル、ホスホリル、ホスフィノ(モノ-及びジ-アルキルホスフィン及びトリ-アルキルホスホニウムを含む)、両性イオン基、ヒドロキシル基、ビニルオキシカルボニル及び他のビニル系もしくはアリル系置換基、及びトリアルコキシシリル基などの反応性シリル基もしくはシリルオキシ基から選択された1個以上の置換基を有することができるか;
又は、R21及びR20もしくはR21及びR19は一緒に、-CONR23COを形成し、ここでR23はC1-20アルキル基である。)。
【0054】
基R18、R19、R20及びR21の少なくともふたつに関して、ハロゲンであることが、又はより好ましくは水素原子であることが好ましい。好ましくはR18及びR19は、両方とも水素原子である。一般式Xの化合物は、スチレン系化合物又はアクリル系の化合物であることが特に好ましい。スチレン系化合物において、R21は、アリール基を、特に置換基がアミノアルキル基、カルボキシラート基又はスルホネート基である置換アリール基を表す。この共単量体がアクリル型の化合物である場合、R21は、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、又はアリールオキシカルボニル基である。最も好ましくはそのような化合物のR21は、任意にヒドロキシ置換基を有する、C1-20-アルコキシカルボニル基である。アクリル系化合物は一般に、メタクリル系であり、その場合R20はメチルである。
【0055】
好ましくは前記共単量体は、C1-24アルキル(アルカ)-アクリレート若しくは-アクリルアミド、モノ-若しくはジ-ヒドロキシ-C1-6-アルキル(アルカ)-アクリレート、又はアクリルアミド、オリゴ(C2-3アルコキシ)C2-18-アルキル(アルカ)-アクリレート、又は-アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル又はN-ビニルラクタムなどの、非イオン性共単量体である。
【0056】
最適なナノ小胞形成に関して、これらのブロック共重合体は、制御された分子量を有さなければならない。これらのブロックの各々に関して、狭い範囲で制御された分子量を有する、すなわち狭い多分散性を有することが好ましい。分子量の多分散性は、例えば2.0未満、より好ましくは1.5未満、例えば1.1〜1.4の範囲でなければならない。
【0057】
当然、これらのブロックのひとつが3.0〜6.9の範囲のpKaを有するような本発明の好ましい実施態様においては、ブロックが必要なpKa値を有するように、ブロックは選択されなければならない。
【0058】
本発明の一実施態様において、それらから疎水性ブロックが形成される単量体は、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA)又は2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEA)である。別の実施態様において、この親水性ブロックはPMPCである。好ましくはこの共重合体は、PMPC-b-PDPAブロック共重合体である。
【0059】
好ましくはこのブロック共重合体は、一般式PMPCm-b-PDPAnを有し、ここでmは15〜30の範囲(例えば25)であり、かつnは50〜180又は70〜180であり、好ましくは100〜160、より好ましくは120〜160である。
典型的には、この疎水性ブロックは、2-(ジメチル)エチルメタクリレート(DMA)単量体からは形成されない。
【0060】
このブロック共重合体は、単純なA-Bブロック共重合体であることができ、又はA-B-AもしくはB-A-Bブロック共重合体であることができる(ここでAは親水性ブロックであり、かつBは疎水性ブロックである。)。これは、A-B-C、A-C-B又はB-A-Cブロック共重合体であることもでき、ここでCは様々な型のブロックである。Cブロックは、例として、例えば新規組成物中においてこの共重合体の反応を可能にする、官能基、例えば架橋基又はイオン基などを含むことができる。特にA-C-B型共重合体の架橋反応は、ナノ小胞に有用な安定性を付与することができる。架橋は、事実上共有的、又は時には静電的であることができる。架橋は、2個のアミノ基に連結するために二官能性アルキル化剤を使用するなど、官能基を連結するための別の試薬の添加が関与することができる。このブロック共重合体は、選択的に親水性コアもしくは疎水性コアを備える星型分子であることができ、又は親水性主鎖(ブロック)と疎水性ペンダントブロックもしくはその逆を有する櫛型重合体であることができる。そのような重合体は、例えばモノ不飽和マクロマと単量体のランダム共重合により形成されることができる。
【0061】
本発明において使用される単量体の重合プロセスの詳細は、WO 03/074090において認められる。
前記リビング・ラジカル重合プロセスは、ゲル透過クロマトグラフィーによって判断されるように、1.5未満の(分子量の)多分散度を有する両性イオン単量体の重合体を提供することが見出された。本ブロック又は各ブロックに関して、1.2〜1.4の範囲の多分散性が好ましい。
【0062】
疎水性ブロックがpH感受性であるという本発明の利点は、これらの小胞が、pH変化システムを用いて負荷され得るという点である。このようなプロセスにおいて、重合体は、水性液体中にイオン化された形状で分散されており、その中において小胞を形成することなく比較的高濃度で可溶化されている。引き続きそのpHが変更され、その結果イオン化された基の一部又は全てが脱プロトン化されることになり、これらは非イオン型となる。第二のpHにおいて、このブロックの疎水性は上昇し、小胞が自発的に形成される。
【0063】
ブロックのひとつがpH-感受性である、コア内に封入された抗体を伴う小胞の形成方法は、下記の工程に関することができる:
(i)前記両親媒性共重合体を水性媒体中に分散する工程;
(ii)工程(i)において形成された組成物を酸性化する工程;
(iii)酸性化された組成物に抗体を添加する工程;及び
(iv)そのpHを中性近傍に上昇させ、該抗体を封入する工程。
【0064】
この方法は、前記両親媒性共重合体が、反応容器内で有機溶媒中に分散され、その後この溶媒が蒸発され、該反応容器の内側上に薄膜を形成する予備工程を含むことが好ましい。
【0065】
「pH-感受性」とは、ブロックのひとつが、特定のpHでプロトン化/脱プロトン化されることになる基を有することを意味する。好ましくは、これらのブロックのひとつ、及び典型的には疎水性ブロックは、3.0〜6.9の範囲、例えば4.0〜6.9の範囲のpKaを有するペンダント基を含む。組成物を酸性化する工程(ii)は、典型的には、そのpHを該ペンダント基のpKaを下回る値にまで低下させる。
【0066】
より詳細に述べると、小胞は典型的には、ガラス製容器内の2:1クロロホルム:メタノール混合液などの有機溶媒中への共重合体の溶解により調製される。溶媒は、真空下で蒸発させ、該容器の壁上に付着した共重合体の薄膜を残留させることができる。次にこの薄膜を、例えばリン酸緩衝生理食塩水を用い、水溶液により再水和させる。得られた懸濁液のpHは、pHほぼ2まで低下され、この薄膜を可溶化し、次にpHを約6までゆっくり上昇させる。一旦pHがこの値に到達すると、典型的には抗体が添加される。その後pHは、中性付近にまで上昇され、該抗体は封入される。この分散体は、次に音波処理され、かつ例えばベンチトップ押出機を用い押出される。当該技術分野において周知の技術を用い、封入効率を算出するために、UV分光法を使用することができる。
【0067】
封入された抗体を伴う小胞を形成する別法は、水中での抗体及び重合体小胞の単純な平衡化に関与することができる。例えば抗体は、固形形態で重合体小胞の水性分散体と接触され、かつ任意に振盪しながら、インキュベートされ、分散された小胞中に活性状態(the active)で可溶化されることができる。あるいは有機溶媒中に溶解された抗体は、重合体小胞の水性分散体中に乳化させることができ、これにより溶媒及び抗体は、小胞のコアへと取り込まれることとなり、引き続きこのシステムから溶媒が蒸発される。
【0068】
本発明において使用される小胞は、2種以上の異なるブロック共重合体から形成されることができる。例えばこれらは、ポリアルキレンオキシド親水性ブロックを含むブロック共重合体から、及び両性イオン単量体を含む親水性ブロックを有するブロック共重合体から、形成されることができる。この実施態様における、小胞を形成する方法において、ふたつのブロック共重合体の混合物が使用される。好適な混合物は、例えばPMPC-PDPAとPEO-PDPAの重量比75:25であろう。
【0069】
一般に、抗体の0.01%〜10%(w/w)が、先に説明された方法において、共重合体と混合される。
抗体と会合された小胞は、例えば細胞によるこれらの小胞の取り込みを促進する様式で、細胞と接触される。典型的には、これらの細胞は、培養培地において増殖され、その後ウェルプレート又はカバースリップなどの好適な支持体上に播種される。次にこれらの小胞は、支持体上の細胞に直接添加される。典型的には、既知量の小胞の水性分散体(例えばPBS中5〜20mg/ml)が、細胞培養培地内の細胞に添加される。
これらの抗体-負荷された小胞と接触される細胞は、初代細胞、癌細胞及び幹細胞を含む、ヒト細胞又は動物細胞であることができる。
【実施例】
【0070】
(実施例)
(実施例1:共重合体合成)
(PMPC25-PDPA70合成)
2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン(MPC;>99%)を、受けとったまま使用した(Biocompatibles UK社)。2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA)は、Scientific Polymer Products社(米国)から購入した。臭化銅(I)(CuBr;99.999%)、2,2'-ビピリジン(bpy)、メタノール及びイソプロパノールは、Aldrich社から購入し、かつ受け取ったまま使用した。ATRP銅触媒の除去に使用したシリカは、E. Merck社(Darmstadt, 独国)から購入した、カラムクロマトグラフィー等級のシリカゲル60(0.063〜0.200mm)であった。2-(N-モルホリノ)エチル2-ブロモ-2-メチルプロパノエート(ME-Br)開始剤は、先に報告された手順(Robinson, K. L.らの論文、J. Mater. Chem., 12, 890 (2002))に従い合成した。
【0071】
PMPC25-PDPA70共重合体は、別所にて報告されたATRP手順(Du, J.らの論文、J. Am. Chem. Soc., 127, 17982 (2005))により合成した。簡単に述べると、磁気攪拌子及びゴム隔壁が装着されたシュレックフラスコに、Cu(I)Br(25.6mg, 0.178mmol)及びMPC(1.32g, 4.46mmol)を装填した。ME-Br開始剤(50.0mg, 0.178mmol)及びbpyリガンド(55.8mg, 0.358mmol)を、メタノール(2ml)中に溶解し、この溶液を、N2を30分間泡立てることにより脱酸素化し、その後前述のフラスコにシリンジを用いて注入した。[MPC]:[ME-Br]:[CuBr]:[bpy]の相対モル比は、25:1:1:2であった。この反応は、窒素大気下、20℃で実行した。65分後、脱酸素化されたDPA(6.09g, 28.6mmol)及びメタノール(7ml)の混合液を、このフラスコに注入した。48時間後、反応溶液を、イソプロパノール(約200ml)を添加することにより希釈し、次にシリカカラムを通過させ、触媒を除去した。
【0072】
(PEO-PDPA合成)
Vamvakakiらの論文(Macromolecules, 32(6) 2088-2090 (1999))に従う手順を、以下に詳述したように改変した。
モノヒドロキシでキャッピングされたポリ(エチレンオキシド)(PEO)は、Inspec U.K.により寄贈された。GPC分析で、PEOのMw/Mnの1.10を得;PEOの重合度は、22又は45のいずれかであった。典型的合成において、PEO(5.0g)を、無水THF 100mL中に溶解し、乾燥窒素下で、丸底フラスコに添加した。THF中のナフタレンカリウム(2.50mmol)を、ダブルチップニードルにより添加し、この反応溶液を、30℃で1〜2時間攪拌し、アルコラートマクロ開始剤を形成した。新たに蒸留した第3級アミンメタクリレート(5〜15mL)を添加し、重合を4時間進行させ、その後メタノールでクエンチした。場合によっては、この重合は、35℃又は50℃で行った。溶媒を真空下で除去し、共重合体を希HCl中に再溶解し、水に不溶性のナフタレンを濾過により除去した。共重合体分子量は良好に制御されたPEG113-PDPA71及びPEG10-PDPA30が、高収率(95〜100%)で得られた。
【0073】
(実施例2:ポリマーソーム調製及び抗体封入)
PMPC25-PDPA70共重合体(20mg)を、ガラスバイアルに添加し、クロロホルム:メタノールの2:1溶液中に濃度3mg/mlで溶解した。この溶媒を、真空下で蒸発させ、バイアルの壁上に付着した共重合体の薄膜を得た。この共重合体薄膜を、オートクレーブ中で滅菌し、次にリン酸緩衝生理食塩水(100mM PBS)を使用し無菌条件下で再水和し、0.5%(w/w)共重合体懸濁液を形成した。この懸濁液のpHを、pH2まで低下させ、薄膜を再度可溶化し、かつそのpHをpH6.0まで上昇させた。標識されたヤギ抗-ヒトIgG(非特異的二次抗体)からなる抗体懸濁液を、この重合体溶液に添加した。重合体溶液1mlにつき抗体懸濁液50μgを添加した。細胞を抗体負荷された小胞と接触する場合、細胞培地10中に小胞1を希釈したものを使用した。従って抗体の濃度は、5μm/ml細胞培地であり、これは従来の免疫標識において使用される濃度とほぼ同じである。抗体を封入している小胞は、Sepharose 4Bを含むサイズ排除カラムを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により精製し、かつpH7.3のPBSを用い小胞を溶離した。Perkin Elmer Lambda 25 UV分光光度計を使用し260nmでのUV吸収を測定することにより決定された抗体を封入している小胞を含んだ画分を使用し、以下に詳述した実施例において細胞を処理した。
【0074】
(実施例3:蛍光抗体の細胞への送達)
初代ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を、腹部形成術又は乳房縮小手術から得られた皮膚から単離した(地域の倫理上承認された指針に従う、NHS Trust, Sheffield, 英国)。線維芽細胞の初代培養物を、Ralstonらの論文(Br J Dermatol. 1999年4月;140(4): 605-15)において先に説明されたように確立した。簡単に述べると、皮膚の表皮層を、トリプシン処理により除去し、残存する真皮層を、PBSで洗浄した。次に真皮を、手術用ブレードを用いて細かく裂き、0.5%(w/v)コラゲナーゼA中で、加湿したCO2インキュベーター内で、37℃で一晩インキュベートした。この消化物から細胞のペレットを収集し、10%(v/v)ウシ胎仔血清、2mM L-グルタミン、100IU/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン及び0.625μg/mlアンホテリシンBを補充したDMEM(Sigma社、英国)中で培養した。細胞は、0.02%(w/v)EDTAを使用しルーチン的に継代し、かつ継代数4と8の間で実験に使用した。
【0075】
前述の細胞を、6-ウェルプレート中(又はカバースリップ上)に、1×105個細胞/ウェルで播種した。翌日、培地を細胞から吸引し、次にこれらの細胞上に、最初に一次抗体を、次に二次抗体を含有するPMPC25-PDPA70ポリマーソーム(細胞培地中1mg/ml)を直接添加した。実施例2に従う手順を使用し、一次抗体及び二次抗体を、小胞の個別の集団に封入した。培地1ml当たり一次抗体及び二次抗体5μgを、細胞に負荷した。これらの細胞を、37℃で24時間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄した。生細胞を共焦点顕微鏡(ZEISS LSM 510M)で直接調べた。
【0076】
(抗体の定量:)
試料の吸光度を、二次抗体(標識されたヤギ抗-ヒトIgG)の数多くの異なる濃度にわたり検量した。この検量曲線は、動態試験時に細胞中に存在する抗体量の算出を可能にした。増大する濃度のポリマーソーム及びその結果としての増大する濃度の二次抗体の試料を調製した(PBS 1mlにつき抗体0.0μg、0.0063μg/ml、0.0013μg/ml、0.0251μg/ml、0.0376μg/ml)。細胞の表面上にポリマーソーム(通常の培養培地中1mg/ml)を負荷する主要実験を行った。試料は、数多くの時点(5、15、30、45、60分)にわたりインキュベートし、小胞への細胞取り込みに関するデータを得た(図1参照)。その後全ての試料をPBSで5回洗浄し、あらゆる負荷されない小胞を除去した。トリプシンEDTAを2分間使用し、細胞をウェルプレートから剥離した。その後実施例5に詳述したようにフローサイトメトリー分析を試行するために、細胞をPBS中で調製した。これらのポリマーソームは、あらゆる細胞により取り込まれ、1時間のインキュベーション後の細胞取り込みは70%であった(図2)。ポリマーソームの初回負荷後に、1個の細胞当たりの蛍光は鋭く増大し、強度は5〜30分間は比較的安定し、細胞取り込みは22〜28%の間で変動した。30分時点の後、1個の細胞当たりの蛍光の線形の増加が認められた。吸光度を評価し、その結果各細胞中に存在する抗体の量を概算するために、300μlを採取した。大量の活性抗体が、生存細胞内に送達された(図3)。
【0077】
(実施例4:共焦点レーザー走査型(CLS)顕微鏡を使用する画像法)
ポリマーソーム送達効率を、先に説明されたように5×104個細胞/ウェルで細胞を播種し、次にそれらをポリマーソームに封入された一次抗体及び二次抗体と接触することにより調べた。細胞を負荷し、共焦点顕微鏡を用いて撮像した。固定し、かつ一次抗体(抗-ゴルジン-97(ヒト)マウスIgG1モノクローナルCDF4)及び二次抗体(AlexaFluor 546ヤギ抗-ヒトIgG)で染色した対照試料を、免疫染色プロトコールに従い調製した。
【0078】
(一次抗体及び二次抗体の免疫染色:)
カバースリップ上で既に増殖した細胞を、PBSで3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。次にその膜を、0.1%トリトンにより20分間透過性亢進し、反応しなかった結合部位を5%BSAで1時間ブロックした。この時点の後、一次抗体を、1%BSA溶液に添加し(Invitrogen社から購入した抗-ゴルジ-97(ヒト)マウスIgG1モノクローナルCDF4(Anti Golgi))、かつこのプレートを一晩4℃に放置した。その日、カバースリップを、再度(3回)慎重に洗浄した後、二次抗体を添加した(AlexaFluor 546ヤギ抗-ヒトIgG)。カバースリップを、二次抗体中で2時間インキュベートし、その後慎重に洗浄した。細胞とカバースリップを、ハンギングドロップスライド(hanging drop slide)上に直接乗せ、視認した。
【0079】
(CLS画像法:)
次にカバースリップを、PBSで3分間すすいだ。最後にカバースリップを、顕微鏡スライド上に乗せ、CLS顕微鏡を用いて分析した。図4は、染色された細胞並びに実施例1及び2のポリマーソームで処理した生存細胞の結果を示している:一次抗体及び二次抗体で固定された細胞(4c)、並びに二次抗体-のみで固定された細胞(4a);並びに、一次抗体及び二次抗体を含む本発明のポリマーソームで処理された生存細胞(4d)、並びに二次抗体-のみを含む本発明のポリマーソームで処理された生存細胞(4b)。図4bの結果を得るために、生存細胞は、ポリマーソーム中に封入された一次抗体で24時間負荷し、その後ポリマーソーム中に封入された二次抗体で2時間負荷した。一次抗体は、細胞内標的(ゴルジ)へと送達されたことが示された。固定された細胞と生存細胞の両方に関して、結果はほとんど同じであることを認めることができる。唯一の差異は、シグナル強度に関連する。これは、ゴルジの標的化に利用可能な抗体の量は、細胞がトリトンにより処理された場合により大きくなるからである。加えて固定された細胞において、遊離の抗体を洗浄することが可能であるのに対し、生存細胞において、その膜は完全に無傷(entact)でありかつ損傷を受けていないのでこれは不可能である。これらの結果は、生存細胞内の活性抗-ゴルジン抗体の送達及びゴルジ装置の特異的標的化を明らかにしている。
【0080】
図4bにおいて、細胞内の二次抗体単独の非特異性が明らかにされている。これらの結果は、図4aにおいて得られた結果と同等である(従来の免疫標識におけるBSAブロックを伴わない二次抗体の送達)。図4c及び4dにおいて、小胞の異なる集団内の一次抗体及び二次抗体の両方の送達は、より特異的結合を生じることを認めることができる。
【0081】
(実施例5:フローサイトメトリー)
フローサイトメトリーは、細胞カウント及び生存度アッセイを提供する技術である。第一の光電子倍増管は、580nmに集結された蛍光による全ての事象を確定し、第二のものは、675nmに集結された蛍光による全ての事象を確定する。次にこれらのデータを図5aに示し、これは、図5bのCLS画像により明らかにされるように、線維芽細胞の大部分が、二次抗体(AlexaFluor 546ヤギ抗-ヒトIgG)を取り込んでいることを明確に示している。
【0082】
(実施例6)
実施例2の手順を使用し、封入された抗体抗-ヒトアクチンを備えるポリマーソームを作製した。これらのポリマーソームを、実施例3の方法を用い、生存ヒト皮膚線維芽細胞と接触させた。アクチンの線維構造は、明確に視認できた。カラー画像において、緑色アクチン(カラー抗体)及び細胞の赤色/黄色自己蛍光は、明確に識別することができた。
【0083】
(実施例7:ポリマーソームにより送達された抗体のエンドソーム回避)
図7は、可視化された細胞からの蛍光が常に生じ、それらの細胞の細胞質ゾルをゆっくり満たしていくことを示すビデオから作製した3枚のスライドを示している。これらの試験からの最も重要な知見は、PMPC-PDPAポリマーソームは、細胞により取り込まれるのみではなく、物質を細胞質ゾルへ送達することもできることであり、これは従来のエンドサイトーシス経路を回避することができることを示唆している。
【0084】
(実施例8:ポリマーソームからの細胞内送達後の抗体の完全性)
抗体の完全性は、CLSMにより、一次標識化抗体の標的化能を検証することにより明らかにされた(図7)。図7a及び7bにおいて、抗α-チューブリンFITC標識された一次抗体で負荷されたポリマーソームが、生存HDF細胞に24時間曝されている。チューブリンフィラメントは、これらの細胞の細胞質ゾル内に広範に存在する。チューブリンフィラメント(白色の溝)は、明らかに印しをつけられているように見え、標的作用、環境による分解からの保護及びこれらの細胞の細胞質ゾル内での均質な放出を確認している。
【0085】
ポリマーソームのインターナリゼーション後にエンドソーム内で遭遇した浸透圧ショックは、エンドソーム内容物の100%の放出を保証するものではない。この放出機構は、溶質濃度の平衡化により働く。その後、これらの内容物の〜50%は、エンドサイトーシス経路内に捕獲され続け、依然その蛍光を保ち続ける。この放出は、最終画像獲得を損ない(図7c及び7d)、高いバックグラウンドノイズを生じる。図7bは、黒色消光剤トリパンブルーと標識された抗体の結合による解像度の改善を示している。エンドソームから放出された抗体は、専らα-チューブリンを染色するのに対し、トリパンブルーは、エンドソーム内に残存する抗体を消光する。放出されたトリパンブルーは、細胞質ゾル内に単純に拡散する。従って得られる画像は、改善される。
【0086】
全ての抗体は、チューブリン細胞骨格内のそれらのエピトープに合致することができる。対照として、それら自身の消光剤が、ポリマーソーム内に封入され、黒色の顕微鏡像(示さず)を生じた。
【0087】
(実施例9:ポリマーソームを使用するNFκB-p65抗体の細胞内送達)
ヒト真皮線維芽細胞を、6ウェルプレートにおいて培養した。ヒトNFκB-p65に対するウサギポリクローナル抗体(Abeam社)を、PMPC20-PDPA75ポリマーソーム内部に封入した。この抗体は、NFκBの機能に重要である特異的リン酸化ポイントから離れたこのタンパク質のC-末端内の領域を標的化することを基に選択した。細胞取り込みを確実にするために、細胞をポリマーソーム-抗p65と共に、6時間インキュベートした。NFκBの移行を活性化するために、細胞を、細菌のリポ多糖(LPS、Sigma-Aldrich社)によっても刺激した。ふたつの異なる種類の刺激を、以下のように行った:a)細胞をポリマーソーム-抗p65NFκB抗体取り込みの6時間後にLPS 1μg/mLで刺激した(2時間)、又は、b)細胞をポリマーソーム-抗p65NFκB抗体取り込み前に2時間LPS 1μg/mLで刺激した。顕微鏡における細胞のバックグラウンドノイズを確立するための追加の陰性対照として、細胞をPBSにおいて空のポリマーソームで処理した(結果は示さず)。結果を図8にまとめている。
【0088】
抗p65抗体は、細胞の生存能に影響を及ぼすことも、細胞のストレスを促進することもなく、うまく封入され、かつ送達された。このことは、図8cに明らかにされており、ここで抗体を封入しているポリマーソームで処理された細胞は、細胞質ゾル内のNFκBの支配的局在化を有し、これはNFκBが失活していることを示唆している。しかし、この経路の活性化時に(LPSによる刺激後)、NFκBは核へと移行し、その結果本発明者らは、核領域内にこの抗体の明確なシグナルを認めることができる。これは、この経路の生物学的機能の及び生存細胞において処置後に送達された抗体の証拠であった(図8a及びb)。これらの結果は、固定された細胞による従来の免疫標識において得られた結果に類似している(図9)。
【0089】
ポリマーソームを使用する細胞内の機能性抗体の標的化は、病因に直接関連した重要な生物学的プロセスを変更するよう利用することもできる。こうしてNFκBモデルは、この経路の細胞内での阻害は、抗炎症療法において大きい利点があるので、非常に有用であり得る。このポリマーソームにより高濃度の抗体を負荷すると、本発明者らは、NFκBが核へ移行することができず(図10b)、従ってこの経路を阻害することを発見した。(NFκBの核移行の不能及びこの転写因子に代わる核周囲配置に注意。これは、非刺激細胞における細胞質ゾル全体にわたる均質な分布(aのような)とは、非常に対照的である);)
【0090】
(実施例10:ポリマーソーム-送達された抗体標的化作用の実証)
標的化作用を、一次抗体及び二次抗体を封入することにより示すことができる。ゴルジを、細胞小器官標的化のモデルとして選択した。標的化された領域は限定されているので、検出可能なシグナルを得るために、結合部位を拡大することが必要である。標識化された領域を拡大するために、エピトープを結合することができる。非標識一次抗体(抗-ゴルジン-97(ヒト)マウスIgG1モノクローナルCDF4)を使用した。二次抗体(AlexaFluor546ヤギ抗-ヒトIgG)は、この一次抗体を特異的に標識した。一次抗体及び二次抗体を封入し、生存HDF細胞を処理した。共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)により、負荷された試料を、固定された試料と比較した。顕微鏡像11a及び11bは、一次抗体が封入され、かつ細胞の細胞質ゾル内に24時間で送達された生存細胞を示している。抗体は残留し、ゴルジ装置に配置されたそれらのエピトープに達した。その後に蛍光標識された二次抗体が、ポリマーソームにより個別に送達され、先に放出されたそれらの一次抗体と合致するように残った。図11c及び11dは、通常の免疫標識により一次抗体及び二次抗体で染色された固定された細胞を図示している。この実験は、ポリマーソームの安定性及び特異的標的化を混乱させることなく、生体活性分子を生存細胞内で送達するポリマーソームの能力を強調している。
【0091】
(実施例11:核内の細胞内抗体標的化)
生存状態での免疫標識化は、細胞固定により引き起こされるアーチファクトを生じることなく、細胞周期をモニタリングするのに必須である。この技術は、例えば、図12に明らかにされた有糸分裂紡錘体など、関連細胞の細胞内の詳細を示す細胞探索の新たな窓を開いた。有糸分裂紡錘体は、有糸分裂時にふたつの娘細胞へ染色体をわけて引っ張る、細胞骨格機構である。細胞内で送達されている抗体は、エンドサイトーシス経路を回避し、細胞の細胞質ゾル全体に拡散し、かつ核内であっても古典的ロックキーモデルでそれらの標的を複雑化することが依然可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小胞、及び該小胞内に封入された抗体を含む組成物であって、ここで該小胞が、親水性及び疎水性ブロックを有する両親媒性ブロック共重合体を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記ブロックの一方、好ましくは疎水性ブロックが、3.0〜6.9の範囲の、好ましくは4.0〜6.9の範囲のpKaを有するペンダント基を備える、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水性ブロックが、50〜250の範囲の重合度を有し、かつ親水性ブロックが、少なくとも15の重合度を有する、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】

【請求項5】
前記小胞が、50〜1000nmの範囲の直径を有するナノ小胞である、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体が、内因性細胞内標的への特異的結合が可能である、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記親水性ブロックが、ポリアルキレンオキシド、好ましくはポリエチレンオキシドである、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記親水性ブロックが、両性イオン単量体を含むエチレン性不飽和のラジカル重合可能な単量体から形成される、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記両性イオン単量体が、下記一般式を有する、請求項8記載の組成物:
YBX I
(式中、
Yは、H2C=CR-CO-A-、H2C=CR-C6H4-A1-、H2C=CR-CH2A2、R2O-CO-CR=CR-CO-O、RCH=CH-CO-O-、RCH=C(COOR2)CH2-CO-O、
【化1】

から選択されたエチレン性不飽和基であり;
Aは、-O-もしくはNR1であり;
A1は、結合、(CH2)IA2及び(CH2)ISO3-から選択され、ここでIは1〜12であり;
A2は、結合、-O-、O-CO-、CO-O、CO-NR1-、-NR1-CO、O-CO-NR1-、NR1-CO-O-から選択され;
Rは、水素もしくはC1-4アルキルであり;
R1は、水素、C1-4アルキルもしくはBXであり;
R2は、水素もしくはC1-4アルキルであり;
Bは、結合、又は、任意に1個以上のフッ素置換基を含む、直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、もしくはアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;
Xは、両性イオン基である。)。
【請求項10】
前記Xが、一般式IIの基である、請求項9記載の組成物:
【化2】

(式中、同一であるかもしくは異なる部分A3及びA4は、-O-、-S-、-NH-もしくは原子価結合、好ましくは-O-であり、かつW+は、アンモニウム、ホスホニウムもしくはスルホニウム陽イオン基、並びに、陰イオン部分と陽イオン部分を連結する基、好ましくはC1-12-アルカンジイル基である基を含む基であり、
好ましくはW+は、式-W1-N+R33、-W1-P+R43、-W1-S+R42もしくはW1-Het+の基であり、ここで:
W1は、任意に1個以上のエチレン性不飽和二重結合もしくは三重結合を含む1個以上、好ましくは炭素原子2〜6個のアルカンジイル、二置換型のアリール(アリーレン)、アルキレンアリーレン、アリーレンアルキレン、又は、アルキレンアリールアルキレン、シクロアルカンジイル、アルキレンシクロアルキル、シクロアルキルアルキレンもしくはアルキレンシクロアルキルアルキレンであり、基W1は、任意に1個以上のフッ素置換基及び/又は1個以上の官能基を含み;かつ、
各基R3は、同一であるかもしくは異なり、かつ各々が水素もしくは炭素原子1〜4個のアルキル、好ましくはメチル、もしくはフェニルなどのアリールであるか、又は、基R3の内の2個はそれらに結合された窒素原子と協働して5〜7個の原子を含む脂肪族複素環を形成するか、又は、3個の基R3は、そのいずれかの環が別の飽和もしくは不飽和の環に縮合され得る5〜7個の原子を有する複素環式芳香環として、それらに結合する窒素原子と協働して、各環に5〜7個の原子を含む縮合環構造を形成し、かつ、任意に基R3の1個以上は親水性官能基により置換され;かつ、
基R4は、同一であるかもしくは異なり、かつ各々はR3もしくは基OR3であり、ここでR3は先に定義されるか;又は、
Hetは、例えばピリジンなどの、芳香族窒素-、リン-もしくは硫黄-含有環、好ましくは窒素-含有環である。)。
【請求項11】
前記両性イオン単量体は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである、請求項9又は10記載の組成物。
【請求項12】
前記疎水性ブロックが、エチレン性不飽和単量体のラジカル重合により形成される、請求項1〜11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記の疎水性ブロックがそれから形成される単量体が、一般式VIIを有する、請求項12記載の組成物:
Y1B1Q VII
(式中
Y1は、H2C=CR40-CO-A8-、H2C=CR14-C6H4-A9-、H2C=CR14-CH2A10、R16O-CO-CR14=CR14-CO-O、R14CH=CH-CO-O-、R14CH=C(COOR16)CH2-CO-O、
【化3】

から選択されるエチレン性不飽和基であり;
A8は、-O-又はNR15であり;
A9は、結合、(CH2)qA10及び(CH2)qSO3-から選択され、ここでqは1〜12であり;
A10は、結合、-O-、O-CO-、CO-O-、CO-NR41-、-NR41-CO、O-CO-NR15-、NR15-CO-O-から選択され;
R14は、水素又はC1-4アルキルであり;
R15は、水素、C1-4-アルキル又はB1Qであり;
R16は、水素又はC1-4アルキルであり;
B1は、結合、又は任意に1個以上のフッ素置換基を含む直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;かつ
Qは、式-NR17P、-PR17P及びSR17rの陽イオン基もしくは陽イオン化可能な基であり、ここでpは、2又は3であり、rは1又は2であり、基R17は、同一又は異なり、かつ各々は、水素、C1-24アルキル及びアリールからなる群から選択されるか、又は基R17の2個は、それらに結合されたヘテロ原子と協働して5〜7員の複素環を形成するか、又は3個のR17基は、それらに結合されたヘテロ原子と協働して、その環のいずれかが別の5〜7員の飽和もしくは不飽和環に縮合され得る5〜7員の複素環式芳香環を形成し、かつR17基のいずれかは、アミノ基もしくはヒドロキシル基又はハロゲンにより置換され得;ここで、pが3である場合、基R17の少なくともひとつは、水素でなければならない。)。
【請求項14】
前記疎水性ブロックが、(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA)又は(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEA)単量体から形成される、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記共重合体のブロックのひとつが、pH-感受性である、請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
(i)前記両親媒性共重合体を水性媒体中に分散する工程;
(ii)工程(i)において形成された組成物を酸性化する工程;
(iii)酸性化された組成物に抗体を添加する工程;及び
(iv)そのpHを中性近傍に上昇させ、該抗体を封入する工程:を含む、請求項15記載の組成物の製造方法。
【請求項17】
工程(i)の前に、前記両親媒性共重合体が、反応容器内で有機溶媒に溶解され、その後この溶媒が蒸発され、該反応の内側上に薄膜を形成する予備工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物を、細胞と接触させることを含む、抗体を細胞へ送達するインビトロ方法。
【請求項19】
前記細胞が生存している、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記小胞が、細胞により取り込まれ、一旦該細胞の内側で該小胞が解離し、かつ抗体を放出し、これが細胞内標的に結合する、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
療法による治療方法において使用するための、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
抗体が細胞に送達される、療法による治療方法において使用するための、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a−b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7(a)】
image rotate

【図7(b)】
image rotate

【図7(c)】
image rotate

【図7(d)】
image rotate

【図8A)】
image rotate

【図8B)】
image rotate

【図8C)】
image rotate

【図9(A)】
image rotate

【図9(B)】
image rotate

【図10(A)】
image rotate

【図10(B)】
image rotate

【図11(a)】
image rotate

【図11(b)】
image rotate

【図11(c)】
image rotate

【図11(d)】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2011−520841(P2011−520841A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508927(P2011−508927)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055867
【国際公開番号】WO2009/138473
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510300418)
【Fターム(参考)】