説明

細胞分離装置および細胞分離方法

【課題】細胞に与えるダメージが少ないうえに、がん細胞を他の細胞と高精度で分離することができるがん細胞分離装置およびがん細胞分離方法を提供する。
【解決手段】がん細胞分離装置は、がん細胞と特異的に結合する抗体が固定化された抗体固定化領域を有する流路を含み、流路に導入された細胞懸濁液中におけるがん細胞と他の細胞との移動速度の差を利用して、がん細胞を他の細胞と分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん細胞を他の細胞と分離することができるがん細胞分離装置およびがん細胞分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界各国において、がんはヒトの主要な死因の一つである。がんによる死亡理由のほとんどは、がんの転移による再発によるものである。原発巣からのがんの転移は、がん細胞が血管やリンパ管を経由して別の組織の血管壁に定着した後、浸潤して微小転移巣新を形成することによって成立する。
【0003】
現在、がんの転移を防ぐ方法として化学療法や放射線療法が広く行われているが(特開2008−310786号公報)、効果が不充分な場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−310786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞懸濁液中からがん細胞を確実に分離することができるがん細胞分離装置およびがん細胞分離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るがん細胞分離装置は、
がん細胞と特異的に結合する抗体が固定化された抗体固定化領域を有する流路を含み、
前記流路に導入された細胞懸濁液中におけるがん細胞と他の細胞との移動速度の差を利用して、がん細胞を他の細胞と分離する。
【0007】
上記がん細胞分離装置において、前記抗体固定化領域は、前記流路の全表面に設けられていることができる。
【0008】
上記がん細胞分離装置において、前記流路は、第1の部分と、前記第1の部分の一端部から2つに分岐する第2の部分および第3の部分と、を含み、
前記第1の部分の表面のうち前記第2の表面側に、前記抗体が固定化されていない抗体固定化禁止領域が設けられ、
前記第1の部分の表面のうち前記第3の表面側に、前記抗体固定化領域が設けられていることができる。
【0009】
上記がん細胞分離装置は、第1の電極対および第2の電極対をさらに含み、前記がん細胞および前記他の細胞が、それぞれ前記第1の電極対から前記第2の電極対までを通過するのに要する時間を検出することができる。この場合、上記がん細胞分離装置は誘電泳動電極対をさらに含むことができる。さらにこの場合、上記がん細胞分離装置は、前記時間に基づいて、前記誘電泳動電極対を制御することができる。
【0010】
本発明の他の一態様に係るがん細胞分離方法は、がん細胞と特異的に結合する抗体が固定化された抗体固定化領域を有する流路に細胞懸濁液を導入し、前記細胞懸濁液中におけるがん細胞と他の細胞との移動速度の差を利用して、がん細胞を他の細胞と分離する工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
上記がん細胞分離装置によれば、流路に導入された細胞懸濁液中におけるがん細胞と他の細胞との移動速度の差を利用して、がん細胞を他の細胞と分離することにより、細胞自体に加わるダメージが小さいうえに、がん細胞を高精度でかつ選択的に除去することができる。また、がん細胞の分離に際して複雑な構造の流路を必要とせず、単純な構造の流路によってがん細胞を分離できるため、流路製造の際のコストを下げることができる。さらに、流路の表面に固定化させる抗体の種類を適宜選択することにより、幅広い種類のがん細胞の除去に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るがん細胞分離装置を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示されるがん細胞分離装置によるがん細胞分離方法を説明する図。
【図3】本発明の別の一実施形態に係るがん細胞分離装置を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の他の一実施形態に係るがん細胞分離装置を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態にかかるがん細胞分離装置およびがん細胞分離方法について具体的に説明する。
【0014】
1.第1実施形態
1.1.がん細胞分離装置の構成およびがん細胞分離方法
図1は、本発明の一実施形態に係るがん細胞分離装置10を模式的に示す断面図であり、図2は、図1に示されるがん細胞分離装置10の拡大断面図であって、がん細胞分離装置10によるがん細胞分離方法を説明する図である。
【0015】
本実施形態に係るがん細胞分離装置10は、細胞懸濁液26中からがん細胞20を他の細胞(がん細胞以外の細胞)24と選択的に分離する機能を有する。なお、本明細書において「がん細胞」とは、悪性の腫瘍細胞を意味する。細胞懸濁液26は少なくとも細胞を含む液であって、がん細胞を含む可能性がある液であり、例えばがん細胞および他の細胞を含む液である。細胞懸濁液26としては、例えば血液、リンパ液、唾液、尿、涙液等の体液が挙げられる。
【0016】
本実施形態に係るがん細胞分離装置10は、流路11を含む。流路11は、がん細胞20と特異的に結合する抗体13が固定化された抗体固定化領域12を有する。本実施形態に係るがん細胞分離装置10では、抗体固定化領域12は図1および図2に示されるように、流路11の表面(細胞懸濁液26と接触する面)全体に設けられている。
【0017】
がん細胞20と特異的に結合する抗体13としては、例えば、がん細胞20の表面抗原22に対する抗体が挙げられる。本実施形態に係るがん細胞分離装置10では、がん細胞20と特異的に結合する抗体13として、がん細胞20の表面抗原22に対する抗体13を用いる場合について説明する。この場合、がん細胞20の表面抗原22に対する抗体13は、分離対象のがん細胞20の種類に応じて選択することができる。例えば、上皮がんに共通の表面抗原に対する抗体としては、Ep−CAM抗体、N−カドヘリン抗体等が挙げられ、乳がん特有の表面抗原に対する抗体としては、HER2抗体等が挙げられ、大腸がん特有の表面抗原に対する抗体としては、NS19−9抗体等が挙げられ、前立腺がん特有の表面抗原に対する抗体としては、CD49、CD54,CD59抗体等が挙げられる。上記に例示されたこれらの抗体を抗体13として用いることができる。
【0018】
抗体13の固定化は、物理吸着による方法または化学結合による方法を用いることができる。化学結合による方法は、確実な固定化を達成できる点で有用である。例えば、表面が水酸基を含む材質からなる場合、抗体中のカルボキシル基を活性エステル化した後、水酸基と該活性エステル基とを反応させることにより、化学結合によって該表面に抗体を固定化させることができる。
【0019】
本実施形態に係るがん細胞分離装置10は、流路11に導入された細胞懸濁液26中におけるがん細胞20と他の細胞24との移動速度の差を利用して、がん細胞20を他の細胞24と分離する。
【0020】
より具体的には、図2に示されるように、がん細胞20の表面抗原22は抗体13と特異的に結合し、流路11の表面を転がるように移動するため、流路11内での移動速度が遅い。これに対して、他の細胞24は抗体13と結合しないため、がん細胞20と比較して大きな速度にて流路11内を移動する。これにより、がん細胞20と他の細胞24との間に移動速度の差が生じる。よって、流路11から所定時間以内に排出されるのが他の細胞24であり、他の細胞24から所定時間以降に流路11から排出されるのががん細胞20である。したがって、細胞懸濁液26を流路11に導入してから所定時間以内に流路11から排出される細胞を他の細胞24として回収し、細胞懸濁液26を流路11に導入してから所定時間以降に流路11から排出される細胞をがん細胞20として回収することにより、がん細胞20を他の細胞24と分離することができる。
【0021】
分離対象となるがん細胞20としては、例えば循環がん細胞(CTC)が挙げられる。このうち、細胞懸濁液26が血液またはリンパ液である場合、本実施形態に係るがん細胞分離装置10を用いて、患者から採取した血液またはリンパ液からCTCを除去した後、該血液またはリンパ液を再び患者の体内に戻すことによって、患者のがんの転移を確実に抑えることができる。例えば、血液中からCTCを選択的に分離することにより、CTCとその他の成分(例えば、赤血球、白血球、血小板等の正常細胞、塩類、アルブミン等の血漿タンパク質、免疫グロブリン等の抗体、血液凝固因子等)とを分離することができるうえ、他の細胞および成分に及ぼすダメージを最小限にすることができる。なお、体液は希釈されたものであってもよい。
【0022】
また、本実施形態に係るがん細胞分離装置10を用いたがん細胞(CTCの除去)を、放射線療法および/または化学療法と併用してもよいし、あるいは、放射線療法または化学療法の代替として用いることもできる。すなわち、本発明の一実施形態に係るがんの治療および/または予防方法は、本実施形態に係るがん細胞分離装置10を用いて患者から摂取した体液からがん細胞を除去した後、該体液を患者の体内に戻す工程を含む。この場合、該体液を患者の体内に戻す工程は例えば、血液透析と同様の手法を用いることができる。
【0023】
なお、本実施形態に係るがん細胞分離装置10を、がん細胞以外の細胞、ウイルス、細菌、タンパク質、低分子〜高分子化合物、粒子、コロイド、例えば花粉等のアレルギー物質、毒物、有害物質、環境汚染物質を液体中から分離するための装置として使用してもよい。また、本実施形態に係るがん細胞分離装置10を例えば、血液透析、血液浄化、細胞分化誘導、遺伝子導入のための装置、病原菌の除去装置(水浄化フィルター)として使用してもよい。
【0024】
1.2.作用効果
(i)一般的な細胞分離方法
微量でかつ少量の細胞を分離するために一般に用いられている細胞分離方法では、目的の細胞を染色したり、目的の細胞を粒子と化学結合させたりすることにより、目的の細胞と目的以外の細胞との差異を生じさせたうえで、物理的手法または化学的手法を用いて目的の細胞の分離を行なう。
【0025】
(ii)本実施形態に係るがん細胞分離装置10
これに対して、本実施形態に係るがん細胞分離装置10によれば、流路11に導入された細胞懸濁液26中におけるがん細胞20と他の細胞24との移動速度の差を利用して、がん細胞20を他の細胞24と分離することにより、細胞に加わるダメージが小さいうえに、がん細胞20を高精度でかつ選択的に除去することができる。また、がん細胞20の分離に際して複雑な構造の流路を必要とせず、単純な構造の流路11によってがん細胞20を分離できるため、流路製造の際のコストを下げることができる。さらに、流路11の表面に固定化させる抗体13の種類を適宜選択することにより、幅広い種類のがん細胞20の除去に対応することができる。
【0026】
2.第2実施形態
2.1.がん細胞分離装置の構成および使用方法
図3は、本発明の別の一実施形態に係るがん細胞分離装置100の一断面を模式的に示す図である。
【0027】
本実施形態に係るがん細胞分離装置100は、(i)流路110が第1の部分110aと、第1の部分110aの一端部から2つに分岐する第2の部分110bおよび第3の部分110cとを含む点、ならびに、(ii)流路110を挟むように、第1の電極対32a,32b、第2の電極対34a,34b、および誘電泳動電極対36a,36bがそれぞれ設けられている点で、第1実施形態に係るがん細胞分離装置10と異なる構成を有する。
【0028】
本実施形態に係るがん細胞分離装置100は、上述の第1実施形態に係るがん細胞分離装置10と同様に、流路110に導入された細胞懸濁液26中におけるがん細胞20と他の細胞24との移動速度の差を利用して、がん細胞20を他の細胞24と分離する。上記移動速度の差は、物理的手法(例えば、伝導度、インピーダンス、光センシング)で検出することができる。
【0029】
また、本実施形態に係るがん細胞分離装置100は、がん細胞20および他の細胞24がそれぞれ、第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bまでを通過するのに要する時間を検出することができる。なお、本実施形態に係るがん細胞分離装置100においては、第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを通過する細胞が、がん細胞20か他の細胞24かを判定できるように、流路110内における細胞懸濁液26の流速は、1つの細胞が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを通過するのを検出できる程度に設定することが好ましい。
【0030】
より具体的には、図3に示されるように、がん細胞20の表面抗原22は抗体13と特異的に結合し、流路110の表面を転がるように移動するため、流路110内での移動速度が遅い。これに対して、他の細胞24は抗体13と結合しないため、がん細胞20と比較して大きな速度にて流路110内を移動する。これにより、がん細胞20と他の細胞24との間に移動速度の差が生じる。したがって、がん細胞20が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bまでを通過するのに要する時間(Δt)は、他の細胞24が、第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bまでを通過するのに要する時間(Δt)より長い。
【0031】
よって、本実施形態に係るがん細胞分離装置100では、1の細胞が、第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bまでを通過するのに要する時間を検出し、かかる移動時間に基づいて、がん細胞20および他の細胞24のどちらかであるかを判定する。これにより、がん細胞20を他の細胞24と分離することができる。より具体的には、リファレンス細胞が、第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bまでを通過するのに要する時間をΔtrefとし、1の細胞が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bまでを通過するのに要する時間がΔtrefより短い場合、他の細胞24であると判定する(Δt<Δtref)。一方、1の細胞が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bまでを通過するのに要する時間がΔtrefより長い場合、がん細胞20であると判定する(Δt>Δtref)。Δtrefはがん細胞20の種類および流路110内での細胞懸濁液26の流速等の条件に応じて、実測値に基づいて適宜決定することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るがん細胞分離装置200によれば、誘電泳動電極対36a,36bが流路110の分岐点110dより前方(第1の部分110a)に設けられていることにより、各細胞が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを移動するのに要した時間に基づいて、印加する電圧を制御することによって、各細胞を第2の部分110bまたは第3の部分110cへ移動するように制御することができる。
【0033】
例えば、1の細胞ががん細胞20の場合、第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを移動するのに要する時間が、他の細胞よりも長い(>Δtref)。よって、1の細胞が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを移動するのに要する時間が長い場合、該1の細胞はがん細胞20であると判定し、該1の細胞(がん細胞20)が誘電泳動電極対36a,36bの間を通過する際に誘電泳動電極対36a,36bに所定の電圧を印加することにより、該1の細胞(がん細胞20)を第3の部分110cへと移動させる。
【0034】
一方、1の細胞が他の細胞24の場合、第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを移動するのに要する時間が、がん細胞20よりも短い(<Δtref)。よって、1の細胞が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを移動するのに要する時間が短い場合、該1の細胞は他の細胞24であると判定し、該1の細胞(他の細胞24)が誘電泳動電極対36a,36bの間を通過する際に誘電泳動電極対36a,36bに所定の電圧を印加することにより、該1の細胞(他の細胞24)を第2の部分110bへと移動させる。
【0035】
なお、第1の電極対32a,32b、第2の電極対34a,34b、および誘電泳動電極対36a,36bはいずれもデータ処理部(図示せず)に電気的にまたは光学的に接続されており、第1の電極対32a,32bおよび第2の電極対34a,34bからデータ処理部に送信された情報に基づいて、1の細胞が第1の電極対32a,32bから第2の電極対34a,34bを移動するのに要する時間がデータ処理部で算出され、かかる時間に基づいて、1の細胞ががん細胞20または他の細胞24のどちらかであるかがデータ処理部で判定される。次いで、この判定結果に基づいて、がん細胞の種類に応じて所定の電圧が誘電泳動電極対36a,36bに印加される。
【0036】
また、本実施形態に係るがん細胞分離装置100によれば、図3に示されるように、第1の部分110aの表面のうち第2の表面110bに近い側に、抗体13が固定化されていない抗体固定化禁止領域14が設けられ、第1の部分110aの表面のうち第3の表面110cに近い側に、抗体固定化領域12が設けられている。これにより、第1の部分110aにおいて、がん細胞20は抗体13と結合しながら流路110の抗体固定化領域12近傍を移動するのに対して、他の細胞24は、抗体13と結合せずに流路110内を移動する。これにより、がん細胞20を第3の部分110cへと導き、他の細胞24を第2の部分110bへと導くことができる。これにより、がん細胞20と他の細胞24とをより確実に分離することができる。
【0037】
3.第3実施形態
3.1.がん細胞分離装置の構成および使用方法
図4は、本発明の他の一実施形態に係るがん細胞分離装置200の一断面を模式的に示す図である。
【0038】
本実施形態に係るがん細胞分離装置200は、流路210の第3の部分210cにも抗体固定化領域12が設けられている点で、第2実施形態に係るがん細胞分離装置100と異なる構成を有するが、上記の点以外は第2実施形態に係るがん細胞分離装置100と同様の構成を有する。よって、本実施形態に係るがん細胞分離装置200は、第2実施形態に係るがん細胞分離装置100と同様の作用効果を有する。また、本実施形態に係るがん細胞分離装置200の使用方法も、第2実施形態に係るがん細胞分離装置10と同様である。
【0039】
本実施形態に係るがん細胞分離装置200は図4に示されるように、上述の第2実施形態に係るがん細胞分離装置100と同様に、第1の部分210aの表面のうち第2の表面210b側に、抗体13が固定化されていない抗体固定化禁止領域14が設けられ、第1の部分210aの表面のうち第3の表面210c側に、抗体固定化領域12が設けられている。これにより、第1の部分210aにおいて、がん細胞20は、抗体13と結合しながら抗体固定化領域12近傍を移動するため、がん細胞20は第3の部分210cに移動しやすい。その結果、がん細胞20を第3の部分210cへとより容易に導くことができる。これにより、がん細胞20と他の細胞24とを確実に分離することができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係るがん細胞分離装置200は、図4に示されるように、流路210の第3の部分210cにも抗体固定化領域12が設けられている。より具体的には、第3の部分210cの片側(第1の部分210aにおいて抗体固体化領域12が設けられている側と同じ側)に抗体固定化領域12が設けられている。このため、第3の部分210cにおいても、がん細胞20は抗体固定化領域12の抗体と結合しながら移動する。これにより、がん細胞20を第3の部分210cへとより確実に導くことができる。
【0041】
本発明に係る実施の形態の説明は以上である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0042】
10,100,200…がん細胞分離装置、11,110,210…流路、12…抗体固定化領域、13…抗体、14…抗体固定化禁止領域、20…がん細胞、22…表面抗原、24…他の細胞、26…細胞懸濁液、32a,32b…第1の電極対、34a,34b…第2の電極対、36a,36b…誘電泳動電極対、110a,210a…第1の部分,110b,210b…第2の部分、110c,210c…第3の部分、110d,210d…分岐点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞と特異的に結合する抗体が固定化された抗体固定化領域を有する流路を含み、
前記流路に導入された細胞懸濁液中におけるがん細胞と他の細胞との移動速度の差を利用して、がん細胞を他の細胞と分離する、がん細胞分離装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記抗体固定化領域は、前記流路の全表面に設けられている、がん細胞分離装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記流路は、
第1の部分と、
前記第1の部分の一端部から2つに分岐する第2の部分および第3の部分と、
を含み、
前記第1の部分の表面のうち前記第2の表面側に、前記抗体が固定化されていない抗体固定化禁止領域が設けられ、
前記第1の部分の表面のうち前記第3の表面側に、前記抗体固定化領域が設けられている、がん細胞分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
第1の電極対および第2の電極対をさらに含み、
前記がん細胞および前記他の細胞が、それぞれ前記第1の電極対から前記第2の電極対までを通過するのに要する時間を検出する、がん細胞分離装置。
【請求項5】
請求項4において、
誘電泳動電極対をさらに含む、がん細胞分離装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記時間に基づいて、前記誘電泳動電極対を制御する、がん細胞分離装置。
【請求項7】
がん細胞と特異的に結合する抗体が固定化された抗体固定化領域を有する流路に細胞懸濁液を導入し、前記細胞懸濁液中におけるがん細胞と他の細胞との移動速度の差を利用して、がん細胞を他の細胞と分離する工程を含む、がん細胞分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−227016(P2010−227016A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78461(P2009−78461)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】