説明

細胞周期の不定期の活性化に関連する神経変性障害または疾患の治療に有用なCDK4/CDK6阻害剤をコードする誘導性遺伝子を含有するベクター

(a)(i)CDK4/CDK6阻害剤、好ましくはp16INK4a、または(ii)CDK4および/またはCDK6発現および/または活性を妨げるRNAを誘導性プロモーターの制御下にてコードする遺伝子と、(b)神経変性疾患の治療に有用な前記プロモーターのトランス活性化因子タンパク質をコードする遺伝子と、を含有するベクターが記述される。このベクターは細胞に導入され、その細胞で保護機能を発揮して、(i)細胞死を防ぐ、または(ii)細胞死の進行を遅らせることができる。治療有効性を有するこれらのベクターを治療用途で使用して、神経変性疾患を予防する、またはその進行を遅らせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)(i)CDK4/CDK6阻害剤または(ii)CDK4および/またはCDK6発現および/または活性を妨げるRNAを誘導性プロモーターの制御下にてコードする遺伝子と、(b)前記プロモーターのトランス活性化因子タンパク質をコードする遺伝子とを含有するベクターを提供する。このベクターは細胞に導入され、その細胞でその保護機能を発揮して(i)細胞死を防ぐ、または(ii)細胞死の進行を遅らせる。治療有効性を有するこのベクター構築物は治療用途で使用され、例えば神経変性疾患を防ぐ、またはその進行を遅らせることができる。代替方法としては、細胞周期の不定期の活性化が起こる障害において、疾患修飾法としてベクター構築物を用いることができる。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、標的細胞の細胞周期調節に影響を及ぼす遺伝子治療アプローチに基づく。さらに、遺伝子治療に伴う既存のリスクおよび中枢神経によりもたらされる遺伝子治療の特定の問題はさらに、(i)ウイルスまたは(ii)安全な遺伝子導入のための非ウイルスベクター、(iii)細胞型特異的認識システム、(iv)細胞型特異的発現システムおよび(v)対流増加送達(convection-enhanced delivery)による制御送達、好ましくは、(i)〜(v)の組み合わせによって対処される。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、年齢に関連する、高齢の不治の神経変性疾患であり、高齢化社会に莫大な社会経済的負担を負わせている。20年(2025)未満以内に、EU人口の約1/3が、65歳を超え、約1/4が80歳を超えるため、認知症のリスクがある。現在、約800万人と推定されているヨーロッパにおける認知症患者数は、2050年までに1400万人に上ると考えられる。世界中で、認知症患者は現在の2400万人から2020までに4200万人に増加し、20年ごとに2倍となって2040年までに8100万人に上ると考えられる。先進国での増加速度は、2001年から2040年の間に100%であるが、インド、中国およびそのアジア近隣諸国で300%と予測されている(FERRI ET AL., 2005)。現在、EUにおける1600億ユーロを超える年間費用によって既に、ADは世界で3番目に費用がかかる疾患となっている。ADの医療費は、EUにおいて2025年までに2400億ユーロに上昇すると考えられる。66〜100歳のADに罹る生涯のリスクは、男性33%、女性45%である(VAN DER FLIER AND SCHELTENS, 2005)。
【0003】
ADは、進行性神経変性、最終的にはニューロン死を引き起こす進行性構造崩壊のプロセスを特徴とする。ニューロンのこの減少は、典型的ではあるが、特異的ではない神経病理学的な顕著な特徴、つまり細胞内神経原線維変化および細胞外老人斑の形態の異常分子凝集物の沈着に関連する。神経原線維変化は、過剰リン酸化形態の微小管関連タンパク質で構成される「対らせん状フィラメント」によって構成されている。老人斑は、かなり大きなアミロイド前駆タンパク質(APP)からのタンパク分解切断によって誘導される凝集Aβ−ペプチドからなる。神経原線維変化と老人斑の両方の病原的役割はまだ不明である。しかし、現時点では、細胞死のプロセスにおけるこれらの分子沈着物の原因的役割の証拠がなく、大抵の場合、神経変性の原因ではなく結果が表されている。したがって、ADの予防および/または治療のための分子標的としてのその適性は、非常に制限される。
【0004】
ADにおける神経変性は、細胞骨格タンパク質のニューロン発芽および再組織化を特徴とする、異常な構造的ニューロン可塑性に関連する(ARENDT ET AL., 1995A, B, c; 1997)。これらのプロセスは、Ras−MAP−キナーゼ−経路の異常な活性化によって細胞内で仲介される(図1)。疾患のごく初期段階にて、かつAEの神経原繊維病状または蓄積の前に、この経路が活性化される(GARTNER ET AL., 1999)。ADの経過における異なる脳領域にわたる神経変性の分布および進行はさらに、ニューロン可塑性のパターンに一致し(つまり、高い程度の可塑性を有する脳領域は、最も早く関与するのに対して、低い程度の可塑性を有する領域は、最も進んだ段階でのみ影響を受ける)(ARENDT ET AL., 1998)、構造的可塑性の仲介に関与する、神経変性と分子メカニズムとの間の関連を示している。
【0005】
構造的可塑性の仲介に関与する分裂促進(mitogentic)情報伝達メカニズムである、Ras−MAP−キナーゼ−経路の異常な活性化(HEUMANN ET AL., 2000; ARENDT ET AL., 2004)は明らかに、細胞周期の再活性化を含む成熟した脳におけるニューロンの最終分化段階と適合性でない、様々な下流作用を引き起こしている。細胞周期段階特異的なマーカータンパク質の再発現によって示されるように(ARENDT ET AL., 1996; ARENDT 2000, 2001, 2003)、ニューロンはG0期から出て、S期まで、さらにそれを超えて進行する。3つの独立した方法で、ADにおける神経変性プロセス中のニューロンにおけるDNA複製の明確な証拠が得られた(図2、MOSCH ET AL., 2007)。DNA複製は、神経変性によって残された領域で起こらない。M期に、かつそれを超えて進行する指標がないため、ニューロンはG2期からM期への移行で死滅する可能性が非常に高い。
【0006】
現在、この疾患の明確な原因はまだ不明であり、危険因子の有効な予防も疾患の治療法もない。ADは、障害の主な原因の1つであり、未だ対処されていない医学的必要性のある最も急速に増大している領域である。ADの発症を5年遅らせることができる治療を発見することができれば、AD患者数を50年後に半分に減らすことができる。したがって、神経変性を予防することによって、または神経変性の進行を単に遅らせることによって、老人人口の生活の質がかなり向上し、医療サービス利用および介護の対費用効果が最適化される。
【発明の概要】
【0007】
このように、本発明の基礎をなす技術的な問題は、ADなどの神経変性疾患、さらに細胞周期の不定期の活性化に関連する疾患を治療または予防するのに適した手段を提供することである。
【0008】
前記の技術的問題の解決は、特許請求の範囲で特徴付けられる実施形態を提供することによって達成される。脳の発達中および神経変性中のニューロン死は、細胞周期制御因子の再発現およびDNAの部分的または完全な複製によって証明される、細胞周期の再活性化を伴う。細胞周期の再活性化のこのプロセスは、AD、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、虚血または他の疾患など様々な起源の発生的細胞死および神経変性など、多様な条件下での細胞死に関連するという観察から、細胞周期活性化とニューロン死との間の重要な関係が示されている。さらに、この示唆を支持する証拠は、急性細胞死の様々な生体外(in vitro)パラダイム下での細胞周期遮断の神経保護作用によって与えることができる。
【0009】
ADにおいて、神経変性は、脳全体に均一に分布していない。むしろ、空間および時間の系統的分布を有する特徴的なパターンを示す。ADにおける細胞周期のニューロン再活性化は、細胞死に対して脆弱である可能性があるニューロンで起こり、つまり、細胞周期の再活性化により影響を受けたニューロンのパターンは、神経変性のパターンと根本的に同一である。これは、細胞周期の再活性化が、最終的に細胞死を引き起こす病原性連鎖(pathogenetic chain)における初期の事象であることを示している。したがって、ニューロンにおける細胞周期活性化の重要な分子スイッチは、神経変性疾患の予防および/または治療に適した分子標的である。本発明をもたらす実験の間、ニューロンの細胞周期リエントリーの遮断によって、好ましくは、長く続き、安全な、ニューロン特異的かつ調節された導入遺伝子発現を可能にする新規な遺伝子治療ツールを使用することによって、進行性神経変性を防ぐことができることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1:ADにおける形態調節不全(morpho-dysregulation)により引き起こされる細胞内情報伝達事象の概略図
これらの事象は、p21ras/MAP−キナーゼ情報伝達の異常な活性化、分化制御の低下、細胞周期のその後のリエントリーおよび部分的完了を含み、最終的に細胞死が起こる。
【0011】
図2:独立した3つの方法によって評価されたADにおけるニューロンDNA複製
A:突出した4nピークは、ADにおけるニューロンのPI染色後のレーザースキャン・サイトメトリーによって得られる。
B:17番染色体のプローブとの発色性in situハイブリッド形成によって、ADにおける四倍体ニューロン(右パネル)ならびに二倍体ニューロン(左パネル)が明らかにされている。
C:単一ニューロンのレーザー捕獲顕微解剖後のAlu反復配列のPCR増幅によって、ADにおけるさらなる4n DNAピークが明らかにされている。
【0012】
図3:本発明の治療学的コンセプト
生体外(A〜D)および生体内(E/F)でのp16INK4aの異所発現による変性に対する保護
A/B:マウスの脳の微小外植片;B:p16INK4aをトランスフェクトした後にオカダ酸(10nM)によって誘導されたアポトーシスの低減された速度(TUNEL)。
C/D:GFPまたはpEGFP−N−p16INK4aのいずれかをトランスフェクトされた肝細胞。D:p16INK4aは、スタウロスポリン誘導細胞死を防ぐ。
E/F:p16INK4aの誘導性ニューロン特異的発現を有する遺伝子導入マウスの海馬(CamKIIプロモーター、tetシステム)。
F:p16INK4a発現の誘導が、NMDAによって誘導されるニューロン死を防ぐ(変性ニューロンのFluorojade染色:矢印)
【0013】
図4:遺伝子導入マウスの皮質におけるp16INK4aの誘導性ニューロン特異的発現
CamKIIプロモーター制御tTA発現が、Dox投与に依存して、tet0/CMVminプロモーター関連p16INK4a発現の調節を可能にする(左、Doxあり、オフ状態;右、Doxなし、オン状態;p16INK4aの免疫細胞化学的検出)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
このように、本発明は、
(a)(i)サイクリン依存性キナーゼCDK4および/またはCDK6の生物活性を妨げるタンパク質、または(ii)CDK4および/またはCDK6発現および/または活性を妨げるRNAをコードする核酸分子;
(b)好ましくは誘導物質の存在下にて、(a)の誘導性プロモーターに結合し、それを活性化することができる、トランス活性化因子タンパク質をコードする(発現性)核酸分子;を含む、1種類のベクターまたは少なくとも2種類のベクターの混合物に関する。
核酸分子(a)および(b)は、1つのベクターにおいて、または2つのベクターにおいて別々の実体として存在することができる。
【0015】
CDK4および/またはCDK6発現および/または活性を妨げる多くの種類のRNA、例えば、RNA−RNAおよび/またはRNA−タンパク質相互作用の他のメカニズムに基づく抑制効果を示す、RNAiまたはRNAsは当業者には公知である。
好ましい実施形態において、(a)の核酸分子によってコードされるタンパク質は、CDK4および/またはCDK6の生物活性を低減または抑制する。
【0016】
したがって、本発明は、ニューロンの細胞周期リエントリーの遮断によって進行性神経変性を防ぐ新規な治療的概念を提供する。本発明は特に、治療有効性が高く、副作用が最小限である、または副作用がない、神経変性を遅らせる、または防ぐ、遺伝子治療的概念に関する。本発明では、重要な分子調節スイッチCDK4およびCDK6を標的とし、分化ニューロンにおける細胞周期を遅らせる、または完全に停止し、その結果、細胞が救出される、遺伝子治療アプローチが用いられる。この概念は、細胞周期リエントリー、ニューロンにおける細胞死の重要な誘因の抑制に基づき、CDK4および/またはCDK6のダウンレギュレーションによって、例えば(i)その生理学的阻害剤p16INK4aまたは他の阻害剤の異所発現および(ii)CDK4および/またはCDK6発現および/または活性を妨げるRNAの使用により達成される。
【0017】
本発明の概念の原則的な有効性は、生体外および生体内条件下の双方で証明されていることに基づく。p16INK4aの異所発現、オカダ酸などのニューロンアポトーシスの強力な誘導物質にさらされた脳スライス培養物におけるCDK4およびCDK6の分子阻害剤によるニューロンの極めて効率的な保護を実証することができた(図3)。
【0018】
さらに、CamKIIプロモーターおよびtet発現系の制御下にて、時間依存的に調節可能な、かつ主にニューロン特異的な、p16INK4aの発現を可能にする遺伝子導入マウスモデルにおいて、NMDA誘導アポトーシスおよび虚血性細胞死(図3)に対する神経保護作用、ならびに低減されたアポトーシス関連膠細胞反応を実証することができた。これは、例えば、p16INK4aの異所発現による、G0期からG1期への移行の主要な分子スイッチ、CDK4のダウンレギュレーションが、分化ニューロン表現型を回復させ、様々な実験的変性条件下にて、ニューロンならびに他の細胞型を細胞死から救出することを強く示している。
【0019】
細胞周期活性化の重要な分子スイッチであるCDK4およびCDK6の活性を調節することができる好ましいCDK阻害剤は、INK4ファミリー(p16INK4a、p15INK4B、p18INK4Cおよびp19INK4Dが特に好ましい)またはCip/Kipファミリー(p21Cip、p27Kip1およびp57Kip2が特に好ましい)に属する。個々のINK4およびCip/Kip阻害剤は、CDK4/CDK6の抑制に対して組織および細胞特異的な特性を有する。
【0020】
CDK4および/またはCDK6をコードする遺伝子(1種または複数種)の発現および/またはCDK4および/またはCDK6の活性を低減または抑制するために使用することができるさらなる方法は当業者にはよく知られている。例えば、小さな干渉性RNA(siRNA)、小さなヘアピンRNA(shRNA)、ミクロRNA、非コードRNAの形態のRNA干渉(RNAi)に基づく遺伝子サイレンシングが近年、細胞培養および生体内の両方での遺伝子発現を研究するための価値あるツールとして現れている(BANTOUNAS ET AL., 2004; ZHOU ET AL., 2006)。mRNA認識およびそのダウンレギュレーションを標的とする方策は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、触媒核酸−リボザイムおよびデオキシリボザイムならびに干渉性RNA(RNAis)がそれに含まれる、いわゆる「小さな抑制性核酸」のアンチセンス作用に基づく。これらの核酸すべてが、配列特異的なワトソン−クリック型塩基対を介して標的分子、例えばCDK4またはCDK6をコードする遺伝子を認識し、メッセンジャーRNAとの相補複合体が形成される。これらの抑制性核酸の作用メカニズムは異なる。標的分子に結合した場合に、アンチセンスオリゴヌクレオチドはDNA−mRNA二重鎖を形成し、「ハイブリダイゼーション抑止」によって翻訳をブロックし、あるいはRNase Hを活性化し、RNAの分解が起こる(STEIN AND CHENG, 1993)。リボザイムおよびデオキシリボザイムは、触媒機構を介してRNAリン酸ジエステル結合の切断を促進する(EMILSSON ET AL., 2003)。アンチセンス、リボザイムおよびデオキシリボザイムの手法は、治療用途用の核酸を設計するために広く用いられている(CHRISTOFFERSEN AND MARR, 1995; LEWIN AND HAUSWIRTH, 2001; OPALINSKA AND GEWIRTZ, 2002)。
【0021】
近年、種々のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムが、HIV−I感染患者の生体外での治療(SULLENGER AND GILBOA, 2002)など、多くの前臨床試験および臨床試験の対象となっている(KURRECK, 2003)。さらに、最初のアンチセンスオリゴヌクレオチドFomivirsen(Vitravene)が、サイトメガロウイルスに感染したAIDS患者の治療に見事に導入された。核酸技術は、中枢神経系(CNS)障害の治療のための可能性のある治療的アプローチとしても認められている。CNSの標的遺伝子の同定における最新の業績および抑制アプローチの使用は、TRULZSCH AND WOOD (2004)およびGONZALES-ALEGRE AND PAULSON (2007)に概要が述べられている。
【0022】
CDK4および/またはCDK6発現への上述のRNAに基づく干渉に対する好ましい標的である、CDK4およびCDK6の領域も当業者には公知である。遺伝子サイレンシングアプローチの好ましい領域の例は:
(a)cdk4またはcdk6 mRNAの3’UTR領域;
(b)cdk4またはcdk6 mRNAの5’UTR領域;
(c)cdk4またはcdk6のmRNAのコード領域(CDR);
(d)ゲノムのイントロンまたはエクソン(例えば、単独での、または1つまたは複数のさらなるエクソンと組み合わされた、第1エクソン)
(e)プロモーター領域;である。
領域(a)〜(d)のいずれかを標的とするための好ましいRNAは:ミクロRNA(例えば、mir124a、mir34、mir16)、nc(非コード)RNA、リボザイム、siRNAまたはshRNAである。
【0023】
サイレンシング剤の直接的なトランスフェクション(例えば、単純な脂質に基づくプロトコルによる)は、外因的に送達されたRNAiの低サイレンシング活性、遺伝子サイレンシングの一時的作用およびいわゆる「標的外(off-target)」の作用の誘導(非標的遺伝子のサイレンシングの誘導)など、特定の不利点を有する。治療におけるRNA干渉の適用の最も重要な制限の1つは、標的細胞へのRNAi分子の送達効率が低いことである。それらは細胞内ヌクレアーゼによって急速に分解され、長期間の研究(および潜在的な治療用途)は実質的に不可能である。さらに、特定の細胞型(例えば、1次ニューロン)は従来から、裸の核酸をトランスフェクトするのが非常に難しい。ノックダウンの寿命を延ばすために、センスおよびアンチセンス配列が塩基対を形成するのを可能にするヘアピン構造の形成を仲介するスペーサーを含むように、RNAiシーケンスを適応させる。このように、shRNAの発現のための、ベクターをベースとするシステムが開発され、それによって、polIII(例えば、U6、H1)プロモーターの制御下にて、サイレンシング核酸が発現される。さらに最近では、shRNAを送達するためにミクロRNAシャトルが使用されており、この方法の重要な特徴は、polIIプロモーター(例えば、CMVまたはシナプシン)がウイルスベクターにおいて使用されることである。それによって、ウイルスベクターにおけるこれらの発現カセットのいずれかの包含は、CDK4またはCDK6をコードする遺伝子の効率的な送達および長期のサイレンシングを可能にする。
【0024】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、CDK4および/またはCDK6発現の、RNAiに基づくサイレンシングのためのRNAが、siRNA、shRNA、ミクロ、非コードRNA、リボザイムまたはデオキシリボザイムである、ベクターを提供することである。
【0025】
遺伝子調節用の試薬の送達に伴う既存のリスクおよび中枢神経系によりもたらされる特定の問題、例えば長時間の遺伝子発現の欠如、非ニューロンにおける未制御かつ意図しない導入遺伝子発現および導入遺伝子発現の制御されていない強度は、(i)ウイルスまたは(ii)安全な遺伝子導入のための非ウイルスベクター、(iii)細胞型特異的認識システム、(iv)細胞型特異的発現システムおよび(v)調節可能な導入遺伝子発現システム、好ましくは(i)〜(v)の1つまたは複数の組み合わせを使用することによって対処することができる。広範であるが、発現の細胞型特異的標的分布は、細胞型特異的認識および発現システムと(vi)対流増加送達(CED)との組み合わせによって達成されるだろう。
【0026】
遺伝子治療ツールのモジュール・キャラクターによって、細胞の不定期の細胞周期リエントリーが決定的に重要である、多種多様な他の神経疾患、例えばパーキンソン病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症または増殖性硝子体網膜症などの治療のために、別の基準に上記の概念を適合させることが可能となる。さらに、非ニューロン細胞の不定期の細胞周期リエントリーが決定的に重要である、広範囲の非神経疾患、例えば癌、免疫増生性疾患、心肥大、アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎、乾癬、AIDS等(表1;ARENDT, 2008)などに適用可能である。ADに加えて、マリグノーマ(malignoma)および心血管障害に、この新たな方策の直接的な焦点が置かれている。
【0027】
【表1】

【0028】
CDK4および/またはCDK6の生物活性を妨げるタンパク質をコードする核酸分子の発現を制御するために、十分に確立された異なるオン/オフ調節システムが、遺伝子発現を調節するのに利用可能である。基本的に、そのシステムは、2つの異なる発現単位:(A)誘導性プロモーターによって制御される対象の遺伝子を保有する単位(特徴(a)))、(B)好ましくは恒常的に発現され、誘導性プロモーター活性の活性化または抑制を仲介する特異的な物質に結合することができるトランス活性化因子タンパク質を保有するもう1つの単位(特徴(b))からなる。
(B)に関しては、少なくとも以下の6つのシステムが、ヒトまたはげっ歯類で使用するために開発されており、本発明に有用である。
(i)Tetオン/オフ(GOSSEN AND BUJARD, 1992; GOSSEN ET AL., 1995; BARON AND BUJARD, 2000)、
(ii)Pip(プリスチナマイシン誘導タンパク質)オン/オフ(FUSSENEGGER ET AL., 2000);
(iii)マクロライド応答性E.REX技術(WEBER ET AL., 2002)、
(v)抗プロゲスチン依存性(WANG ET AL., 1997)、
(v)エクジソン依存性(CHRISTOPHERSON ET AL., 1992; No ET AL., 1996)および
(vi)ラパマイシン依存性システム(RIVERA ET AL.,1996; LlBERLES ET AL., 1997)。
【0029】
(i)誘導物質ドキシサイクリン(Dox)は、ヒトにおいて忍容性がよく、
(ii)抗生物質として広く使用されており、
(iii)Doxは脂溶性であり、脳を含むかなりの組織浸透性を有し(UEBERHAMET AL., 2005)、それはCNS遺伝子治療を開発するため、tetシステムを使用するのに必須であり、
(iv)Doxの経口投与によって、生体内での急速かつ用量依存的な遺伝子誘導/抑制スイッチが可能となり(AURISICCHIO ET AL., 2001)、
(v)tetシステムは既に、遺伝子発現を調節するためのウイルスおよび非ウイルスベクターの産生に使用されており、
(vi)個々の細胞における遺伝子発現のレベルが誘導物質の容量と直接相関するため、段階的転写応答が可能となることから、患者に適用するのに最も適しているため、Tetオン/オフシステムが好ましい。
【0030】
Tetオンシステムにおいて、テトラサイクリンオペロンのリバースリプレッサー(rtetR)は、単純ヘルペスウイルスVP16転写因子に融合し、リバーステトラサイクリン制御トランス活性化因子(rtTA)が確立される。これは、誘導性プロモーターに結合し、テトラサイクリンまたはその類似のドキシサイクリンの存在下にて対象の遺伝子の転写を活性化する。誘導性プロモーターは、サイトメガロウイルス最小プロモーター(CMVmin)に融合したTetオペレーターtet0からなる。
【0031】
これらのシステムにおける潜在的に高い基本的発現はさらに、以下の方策によって低減されるだろう。
・修飾TREエレメントおよび改変最小CMVプロモーターで構成される密なTRE構築物を使用することによって、対象の遺伝子の基礎的発現が低減されるだろう。
・tetO配列に融合した弱いニューロン特異的プロモーター(CamKIIまたはシナプシン)でCMVプロモーターを置換することによって、基礎的活性も低減されると同時に、さらにニューロン特異性が高められる。アルブミンプロモーターを適応させるために、同様な方策がうまく用いられている(ZABALA ET AL., 2004)。
・TTRE応答性プロモーターと相互作用し、かつドキシサイクリンの存在下にて基礎的発現を能動的にサイレンスする、2つの異なるキメラリプレッサーがある。
[a]ヒトKox−1タンパク質のリプレッサードメイン(KRAB)に融合した細菌tetRタンパク質および
[b]mSin3−ヒストンデアセチラーゼ複合体の漸増に関与する、ヒトMad−1ドメインに融合したtetRタンパク質。
本発明では、KRABリプレッサータンパク質およびtetR−Mad−1を使用する方策が好ましい。
【0032】
・第4のアプローチは、上述(SAQR ET AL., 2006)のCamKIIプロモーターとトランス活性化因子シーケンスとの間のtTSサイレンサー配列(TREに特異的に結合し、さらにDoxの非存在下で転写を抑制する、テトラサイクリン制御転写サイレンサー)のクローニングである。
【0033】
・代替方法としては、トランス活性化因子とTRE保有構築物の両方の比を変化させるか、または適用を遅らせることによって、tetシステムの強固さが向上する。代替方法としては、基礎バックグラウンドを減らす、反対方向を有する両方のtetエレメントを保有する単一調節性脳特異的ベクターを使用することができる。必要な場合、かつ発現レベルが低すぎる場合には、3’末端でのウッドチャック転写後調節因子(WPRE)の組込みが代わりに考慮される。
【0034】
・別々のベクターにクローン化されたプロモーターおよびリプレッサー/トランス活性化因子エレメントを有する非組込み性(non-integrating)エピソームベースのベクターに、調節可能な発現システムを組み込むことによって、治療的要求に応じて発現を調節することが可能となり、したがって、治療の安全性がさらに高まる。このように、ウイルスの割合を変化させることによって、相対的な発現レベルを制御することが可能であり、したがって、単一ベクターシステムおよび組込み事象に伴う問題を避けることが可能である。さらに、非組込み性ベクターは、発現プロファイルも変化させる複合体エピソームコンカテマー(高力価で使用しなければならないAAVベクターで見られる)を形成しない。
【0035】
本発明に使用することができる様々なウイルスベクターは当業者には公知である。例えば、レンチウイルスのベクターは、中枢神経系に遺伝子送達ために選択されるツールである。このベクターは、比較的大きな導入遺伝子容量(8〜10kb)を有し、高力価に産生され、低い免疫原性を有し、レトロウイルスベクターと異なり、分裂終了ニューロンを効率的に形質導入し、導入遺伝子の安定かつ長期の発現を生じさせることができる(検討のため、WONG ET AL., 2006参照)。標的細胞へのエントリーに続いて、レンチウイルスのベクターは、宿主ゲノムに安定に組み込まれる。挿入変異に関連する安全性の問題は、非組込み性ウイルスベクター、例えばアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を使用することによって避けることができる。AAVベクターは効率的に神経細胞型を形質導入し、低い免疫原性を有するが(検討のため、TENENBAUM ET AL., 2004参照)、それらは、導入遺伝子能力(4〜5kb)によって制限され、マウスにおける活性遺伝子がそれに組み込まれることも示されている(NAKAI ET AL., 2003)。
【0036】
さらに有望なことには、分裂細胞の形質導入で非効率的であると本来は述べられていた組込み不能(integration-deficient)レンチウイルスベクター(CASE ET AL., 1999; NALDINI ET AL ., 1996)が最近、生体外(Lu ET AL. 2004; SAENZ ET AL.,2004; VARGAS JR. ET AL., 2004)および生体内(YANEZ-MUNOZ ET AL., 2006; NIGHTINGALE ET AL., 2006)での導入遺伝子発現を維持することが明らかとなっている。これらのベクターは、インテグラーゼ遺伝子のコード配列の変異によって組込み不能になっており、複製シグナルなく、核において環状形で存在する。成体のCNAにおいて、この組込み不能なレンチウイルスのベクターからの効率的かつ持続した導入遺伝子発現が、げっ歯類の眼球組織および脳組織で確認された。さらに、これらのベクターを用いた治療遺伝子の送達は、網膜変性のげっ歯類モデルの救済を仲介した(YANEZ-MUNOZ ET AL., 2006)。したがって、組込み不能なレンチウイルスのベクターが特に好ましい。
【0037】
さらに、本発明に使用することができる様々な非ウイルスベクターが当業者には公知である。ウイルスベクター仲介送達に加えて、およびその代替として、非ウイルスベクター仲介遺伝子導入が既に、CNSなどの様々な臓器にうまく適用されている。腫瘍退縮が生じる臨床的に有効な異なるアプローチが最近、再検討されている(OHLFEST ET AL., 2005B)。非ウイルスベクターのいくつかの利点がある。それは、(i)産生が容易であり、(ii)その構成が単純であり、(iii)ウイルスベクターとして潜在的に安全であることである。(iv)制御されない複製のリスクはなく、(v)その合成はウイルスベクターと比較して安価である(一部には、哺乳動物細胞不含システムにおいてそれが容易に産生されるため)。ウイルスベクターとは逆に、(vi)トランスフェクション効率を妨げ、副作用を生じさせる可能性のある非ウイルスベクターに対するヒトの既存の免疫がない(BESSIS ET AL. 2004)。
【0038】
例えば、分枝鎖および直鎖ポリエチレンイミン(PEI)は、効率的かつ可変性の遺伝子送達を示す。PEIは正に荷電しており、負に荷電したDNAを200nm未満のサイズに圧縮し、細胞エントリーが促進され、エンドソームの破裂が起こる。分岐度は、トランスフェクション効率に影響する(KICHLER 2004)。PEIは、CNS標的化に特に有望であり、いくつかの利点を有し、(i)DNA/PEIは、CNSに投与された場合に忍容性がよく(LEMKINE ET AL. 2002; OHLFEST ET AL. 2005A; OH ET AL. 2007)、(ii)脳は、PEIの魅力的な標的であり、PEIは全身投与後でも高濃度であった(JOHANSSON ET AL., 2004)。細胞特異性を高めるために、(iii)標的細胞の表面受容体に対して高親和性を有する異なるリガンドにPEIを結合させることができる。
【0039】
さらに好ましい実施形態において、本発明のベクターまたはベクターの混合物はさらに、細胞特異的標的化のためのペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸配列を含有する。細胞型特異的標的化は、例えば、ペプチドおよびポリペプチドに、好ましくは細胞特異的表面受容体に対する抗体に非ウイルスベクターを結合させることによって達成することができる。
【0040】
細胞表面上の適切な分子標的構造の選択は、細胞型特異的遺伝子送達に重要であり(KIRCHEIS, 2001)、以下の態様は、抗体は(i)ニューロンに対する強力な特異性を有し、(ii)非毒性であり、(iii)生体内での免疫細胞の活性化の減少を全く引き起こさないか、またはわずかに引き起こす、と考える必要がある。さらに、(iv)それらは重要な生理学的機能を妨げない。
本明細書で使用される「抗体」という用語は、天然に産生されていようと、一部もしくは完全に合成的に産生されていようと、免疫グロブリンを表す。この用語は、免疫グロブリン結合性ドメインと相同である結合性ドメインを有するタンパク質も含む。これらのタンパク質は、天然源から誘導されるか、または一部もしくは完全に合成的に産生される。抗体の例は、免疫グロブリンアイソタイプおよびFab、F(ab12、scFv、Fv、dAbおよびFd断片である。
【0041】
適切な標的は、チロシンキナーゼ(Trk)A受容体によって表され、ADにおいて最も初期に、および最も重篤に影響を受けるコリン作動性ニューロン上に特異的に位置する(ARENDT ET AL., 1983)。TrkA受容体に結合した後、完全なAb−TrkA−受容体複合体は内部に取り入れられる(LESAUTEUR ET AL., 1996)。これによって、生理学的リガンドNGFと共にそれが起こるため、結合型PEIの適切なインターナリゼーションが可能となる。代替方法としては、抗NGF抗体を使用することができる。NGFに結合した後、抗体−NGF−複合体もTrkA受容体に結合し、続いて、NGFのみと比較してインターナリゼーションが促進される(SARAGOVI ET AL. 1998)。
さらなる実施形態において、コリン作動性ニューロンの代替の細胞表面分子、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、ニューロン細胞接着分子(NCAM)およびニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)などが特異的に標的化される。
【0042】
さらなる実施形態において、ニューロンに裸のRNAiをシャトルするために最近使用されている修飾狂犬病ウイルス糖タンパク質(rvg)(KUMAR ET AL., 2007)がPEIと結合され、それによって、運搬RNAiの安定化が促進される。注目すべきことには、p75NTR、NCAMおよびnAChRは細胞表面上の狂犬病タンパク質に結合し、インターナリゼーションを促進する。この実施形態において、ペプチドの内因性神経向性を用いて、ADにおいて選択的に冒されるコリン作動性ニューロンを特異的に標的化する。さらに、それによって、血液脳関門を容易に通過することが可能となり、その結果、このツールの末梢性投与が可能となる。
【0043】
治療される標的組織または器官、例えば脳のみでの発現を達成するために、本発明のベクターの核酸分子を組織特異的プロモーターに結合させて、遺伝子治療に使用することができる。このように、さらなる好ましい実施形態において、細胞型特異的発現は、発現の細胞特異的制御によって、例えばニューロン特異的プロモーターによって達成することができる。ニューロンに対して選好性(preference)を有する多くのプロモーターが特徴付けられており、種々のシャトル/発現システムによって生体内で試験された(HiOKI ET AL., 2007)。CamKIIおよびシナプシン(SYN)プロモーターはほとんど、ニューロンにおいて発現されることから、多くの利点を有する。CMVおよびU1 snRNAなどの他のプロモーターは主に、グリア細胞における遺伝子発現を仲介する。NSEプロモーターは、ニューロンに対する相対的特異性のみを有し、グリア細胞においても発現される。SYNプロモーターは、ニューロン発現に対して最も高い特異性を示し(>96%)(HIOKI ET AL., 2007)、p21rasのニューロン特異的発現を有する遺伝子導入マウスの作製に既にうまく適用されている(HEUMANN ET AL., 2000; ARENDT ET AL., 2004; GARTNER ET AL., 2005; SEEGER ET AL., 2005; ALPAR ET AL., 2006)。最近、CamKIIプロモーターの高いニューロン特異性が実証された(UEBERHAM ET AL., 2005; 2006)。
【0044】
対象の遺伝子の発現レベルは、(a)HIOKI ET AL. (2007)に従ってCMVエンハンサーと融合することによってハイブリッドプロモーターを産生することによる、プロモーター活性の増強によって、または(b)3’非翻訳領域にウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を組み込むことによって(PATERNA ET AL., 2000)、さらに改善することができる。
【0045】
本発明は、(a)神経変性疾患または(b)細胞周期の不定期の活性化に関連する疾患を予防または治療する方法で使用される、上述のベクターも提供する。
【0046】
本発明は、(a)神経変性疾患または(b)細胞周期の不定期の活性化に関連する疾患の予防または治療に使用される医薬組成物の製造のための、上記で定義される(a)ベクターの使用にも関する。好ましい実施形態において、前記神経変性疾患はアルツハイマー病(AD)である。
【0047】
好ましくは、医薬組成物は、薬学的に許容される担体も含有する。適切な薬剤担体等の例は当技術分野でよく知られており、リン酸緩衝生理食塩水、水、水中油型エマルジョンなどのエマルジョン、種々の種類の湿潤剤、滅菌溶液等が挙げられる。かかる担体は、従来の方法によって配合され、適切な用量で被検者に投与される。適切な組成物の投与は、異なる方法によって、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内投与によって行われる。当然のことながら、投与経路は、疾患、例えばADの性質、その位置および医薬組成物に含有される化合物の種類に応じて異なる。投与計画は、主治医および他の臨床因子によって決定される。医療技術においてよく知られているように、いずれか1人の患者の投薬量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間および投与経路、疾患の種類およびステージ(例えば、AD)、全身の健康状態および同時に投与されている他の薬物などの多くの因子に依存する。
【0048】
本発明のベクターの送達は、例えば、標的部位、例えば脳に直接適用することによって、または例えば、髄腔内、脳脊髄内、鼻腔内、腹腔内または経口投与によって達成することができる。
血液脳関門は、ウイルスベクター仲介遺伝子治療またはPEIなどの治療薬の脳への送達にかなりのハードルである。このバリアを効率的にバイパスする技術の開発は、神経疾患の管理に大変革をもたらすだろう。血液脳関門の浸透圧破壊は、薬物の投与前に濃縮マンニトール溶液を動脈内注入することによって達成される。このアプローチは一過的に、内皮細胞の密着結合を開くが、薬物は、その下の基底膜に蓄積すると思われ、組織浸透が制限される(MULDOON ET AL., 1999)。
【0049】
対照的に、対流増加送達(CED)では、脳または脊髄に直接移植される、非常に微細な頭蓋内カテーテル(外径0.4mm未満)が用いられる。正確に制御された低注入速度(0.5〜10μl/分)でのこれらのカテーテルによる薬物の注入によって、脳細胞外空間内に薬物分布が生じる(KRAUZE ET AL., 2005)。その結果、カテーテルチップの正確な位置付けおよび血液脳関門を通過することができない治療薬の使用によって、別々の神経解剖学的構造内に薬物を区分することが可能であり、全身毒性のリスクが限定される。
【0050】
実質内、脳室内および髄腔内投与などの直接的な頭蓋内薬物送達の他の技術ならびにカプセル化細胞および生分解性ポリマーと比較して、CEDの主な利点は、CEDは拡散に依存せず、適切な薬物分布を達成することである。CEDは、カテーテルチップと脳細胞外空間との間に生じる圧力勾配に沿って治療薬を分布する。その結果、濃度勾配の下に短い距離で不均一に薬物分布を生じる、拡散に依存する技術と対照的に、CEDは、その分子サイズにかかわらず、長い距離にわたって(カテーテルチップから5cmまで)薬物の制御された、均一な分布を可能にする(GILL ET AL., 2003; GILLIES ET AL., 2005)。これは明らかに、少ない数の移植カテーテルを使用した、臨床的に有意な脳の容積にわたる治療に使用されるベクターの送達において多大な利点を提供する。
以下の実施例によって本発明を説明する。
【0051】
実施例1
3つの異なる方法によって評価された、ADにおけるニューロンDNA複製の研究
(A)スライドベースのサイトメトリー(Slide-based cytometry)(SBC)
Laser Scanning Cytometer(LSC,CompuCyte Corporation,Cambridge,MA,USA)および適切なソフトウェアWinCyte,version 3.4を使用して、SBCを行った。SBCの条件を上述の本発明の適用に対して最適化した(Lenz et al., 2004; Mosch et al., 2006)。各蛍光事象をサイズ、周囲長、対象スライド上でのx−y位置、最大(最高画素)および全体の積分蛍光強度に関して記録した。各標本について分析細胞数80,000〜120,000で、各海馬傍回全体をスキャンした。積分PI蛍光値によって、細胞の相対DNA含有量を決定し、cell cycle software ModfitLT,version 2.0(Verity Software House Inc.,Topsham,ME,USA)を使用して、これらのデータをさらに解析した。この方法によって、2n、2n〜4nまたは4nのDNAの一定量を含有する細胞集団を明確に識別した(図2A)。大部分の細胞は2nピークによって表されたが、AD脳ではさらに、同年齢の健康な対照の脳には存在しない4nピーク(矢印)がはっきりと得られた。
【0052】
(B)色素生産性in situハイブリッド形成(CISH)
17番染色体のセントロメアのα−サテライト配列を標的化するZytoDotCEN 17プローブ(ZytoVision,Bremerhaven,Germany)でハイブリダイゼーションを行った。ヒツジ由来の抗ジゴキシゲニン抗体のペルオキシダーゼ結合型Fab断片(Boehringer−Mannheim,Mannheim,Germany)および色原体として硫酸アンモニウムニッケル/DAB/0.015% H22を使用して、ジゴキシゲニン標識プローブを免疫組織化学的に可視化した。対象スライド上に滴下された固定化ヒトリンパ球および標準条件下で培養され、カバースリップ上で増殖されたヒーラ細胞を対照として使用した。嗅内皮質のすべての皮層全体にわたって採取されたニューロン核400〜500個を各ケースについて分析した。17番染色体プローブとの発色性in situハイブリッド形成によって一貫して、ニューロン、星状膠細胞および小膠細胞を含むすべての細胞型において異なるハイブリダイゼーションスポットが現れた。脳切片のハイブリダイゼーション後に、対照およびAD患者両方の嗅内皮質におけるニューロンの大部分で2つのハイブリダイゼーションスポットが得られた。さらに、スポットがない、1つまたは3つのスポットを有するニューロンはあまり確認されなかった。図2Bは、2つのスポット(左)および4つのスポット(右)(矢印)を有するADの進行症例におけるニューロンを示す。スケールバー:10μm。
【0053】
(C)顕微解剖および定量的PCR
ニューロフィラメントに対する免疫反応性により同定された単一ニューロンをレーザーマイクロダイセクターで脳スライスから切り出し(PALM(登録商標)MicroBeam,P.A.L.M.Microlaser Technologies AG,Bernried,Germany)、続いてDNA定量化にかけた。Alu反復配列(Walker et al., 2003)、霊長類においてコピー数約100万に達する真核生物ゲノムにおける、あるクラスの短散在エレメントのリアルタイムPCR増幅によって、個々のニューロンのDNA含有量を定量化した(Houck et al., 1979; Batzer and Deininger, 2002)。真核生物ゲノムにおける他の短散在エレメントと比較して、コピー数が高く、多型のレベルが低いため、Alu反復配列が選択された(Roy-Engel et al., 2001)。いくつかの個体における異なるコピー数または単一ヌクレオチド多型による人為的影響の残りのリスクは、各患者の2つの異なる脳領域を個人内比較することによって避けられた。「Primer3」プログラム(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3 www.cgi)を用いて、Alu反復配列の保存領域に位置するAluオリゴヌクレオチドプライマーalu−for 5’−GTGGCTCACGCCTGTAATCCC−3’およびalu−rev 5’−ATCTCGGCTCACTGCAACCTC−3’をデザインした。リアルタイムPCR定量化は、Rotor−Gene 2000(Corbett Research,Sydney,Australia)で行われた。Rotor−Gene 2000 software Rotorgene,version 4.6によってデータを解析し、PlotIT 3.2(SPE Software,Quebec,Canada)を使用して、統計を行った。ヒト脳組織と同様に処理されたヒトリンパ球を対照に用いた。1つのリンパ球および2つのリンパ球それぞれに対して、2.07pg±0.6(平均±SD)および4.06pg±0.5のDNA量が得られた。各ケースに関して、嗅内皮質のすべての層から試料採取された少なくとも20個のSMI311−免疫反応性細胞をマイクロダイセクターで捕獲し、PCRのために処理した。
【0054】
CISHに続いて、顕微鏡下にて個々に同定された嗅内皮質におけるニューロンのレーザー捕獲顕微解剖に続いて、Alu反復配列のPCR増幅によって、同じ状況で単細胞DNA含有量をさらに解析した。この方法によって得られた単細胞DNA含有量の度数分布が図2Cに示される(上のパネル)。ADを対照と比較すると、より高いサイズのクラスに対するシフトおよび分布形状の差異が明らかとなる。対照群の分布は、2.5〜3.5pg/細胞で1つの最大値を有し、それは、最初のバリデーション実験で決定される2nDNA含有量に対するサイズに相当する。さらに、AD群は、おそらく四倍体ニューロン(4n)を表す、6.5〜7.5pg/細胞のサイズ群において第2の最大値を示した(図2C、下のパネル)。
【0055】
実施例2
p16INK4aのクローニングおよび遺伝子導入マウスの作製
p16INK4aをクローニングするために、ヒト線維芽細胞RNAを単離し、ランダムpdN6−プライマーおよびSuperscript II RT(Gibco社)を用いて逆転写し、得られたcDNAを以下の特異的プライマー対:p16−フォワード:5’−GAG AAC AGA CAA CGG GCG GCGおよびp16−リバース:5’−CCT GTA GGA CCT TCG GTG ACTを用いて増幅した。
【0056】
アガロースゲル電気泳動に続いて、クローニングベクター(つまり、PUC18シリーズ[Promega社]からの)におけるsure clone ligation kit(Promega社)を使用して、p16rNK4a配列をクローニングし、pUC18−p16が得られた。このプラスミドをCaCl2コンピテントJM109大腸菌細胞において形質転換し、アンピシリンの存在下にて寒天平板で培養した。コロニーを採取し、LB培地で培養し、Qiagen Maxi-prepを使用して単離し、インサートを配列決定した。制限酵素を使用して、p16INK4aインサートを切断し、さらに、マルチクローニング部位において制限酵素で前もって直鎖化されたpSinRep5ベクターにサブクローニングした。pSinRep5ベクターは、Invitrogen社から購入された、Sindbis発現システムに属する(「Sindbis Expressions System」;Invitrogen社;カタログ番号K750−01)。
【0057】
新たに産生されたpSinRep5−p16INK4aベクターを直鎖化し、SP6ポリメラーゼを用いてRNAを転写した。SP6ポリメラーゼによって、DH−BBヘルパープラスミドからもRNAを転写した。DH−BBヘルパーRNAおよびSinRep5−p16RNAをリポフェクチン(Gibco社から購入)と混合し、BHK培養細胞に添加した。この同時トランスフェクションから24時間後に、培地を取り出し、2000×gで遠心分離し、壊死組織片を除去し、シンドビス(Sindbis)−p16ウイルスを含有する残りの上清を、実施例3に示す実験のウイルスストック溶液として使用した。
【0058】
pUC18−p16プラスミドで開始し、制限酵素でp16INK4a配列を切断し、さらに発現ベクターpEGFP−N(Clontech社)においてサブクローニングし、それを実施例3に示す実験に使用した。
【0059】
遺伝子導入マウスを作製するために、MluIおよびHindIII部位を含有する以下の特異的プライマー対を使用して、p16INK4acDNAを増幅し、pBIベクターにサブクローニングすることが可能となり(p16−Mlu−F:ctcacgcgtagcgggagcagcatggagccggcg;p16−Hind−R:atcaagcttgctctggttctttcaatcggggat)、その結果、pBI−p16INK4aが得られる。異種tTAシステムを使用して、p16INK4aの誘導性神経特異的発現を有する遺伝子導入マウスを作製した。簡潔には、ルシフェラーゼの二方向転写ユニットおよびp16INK4aを保有する遺伝子導入ラインptetp16INK4a(C57B1/6−DBAバックグラウンドであり、および従来の方法によりマウス卵母細胞におけるpBI−p16INK4aの微量注入によって産生された)の個体をトランス活性化因子ラインCamKII(C57B1/6−NMRIバックグラウンド)の個体と交配した。12:12時間の一定の昼夜サイクル下で動物を収容し、標準的な食餌を与え(Altromin 1324,Altromin Gesellschaft f−r Tierernahrung,Lage,Germany)、すべての条件下にて無制限に、水/ドキシサイクリン塩酸塩にアクセスできるようにした。European Council Directive of 24 November 1986(86/609/EEC)に従って、動物実験を行い、地方自治体によって承認された。
【0060】
ドキシサイクリン塩酸塩(Sigma,Deisenhofen,Germany,Dox)を水に50μg/mlに溶解し、茶色の瓶に入れ、それを1週間に2回交換し、転写を防いだ。遺伝子導入タンパク質の発現は、Doxの代わりに淡水を使用することによって誘導された。実施例3に記載の実験において、P16INK4a発現性マウスおよび対照を使用した。
【0061】
実施例3
生体外および生体内でのp16INK4aの異所発現による変性に対する保護
(A)生体外での神経保護実験(結果を図3A+Bに示す)
(A)シンドビスウイルスまたは(B)シンドビス−p16INK4aウイルスのストック希釈溶液をラット脳スライスに形質導入した。ニューロン死を誘導する、オカダ酸(10nM OA,24時間)でのラット脳スライスの処理に続いて、脳スライスを4%PFAと共にインキュベートし、dUTP−ローダミンとのTUNEL反応を行った。図3A:赤色が、シンドビス形質導入微小外植片における多くのアポトーシスニューロンを示している。図3Bは、シンドビス−p16INK4a形質導入培養微小外植片(TUNEL;dUTP−ローダミン)を示し、少ない数のアポトーシスニューロンと共にニューロン細胞死の減少が実証されている。
【0062】
(B)生体外での神経保護実験(結果を図3C+Dに示す):
リポフェクタミン法を用いて、一次マウス肝細胞にpEGFP−N(C)またはpEGFP−N−p16(D)構築物をトランスフェクトし、生体外にて6穴プレートで培養した。24時間後に、スタウロスポリンを培地に添加し、アポトーシスを誘導した。細胞ブレブ形成によって示されるように、pEGFP−Nトランスフェクト肝細胞が死んだのに対して(C)、pEGFP−N−p16トランスフェクト肝細胞は生存した(D)。
【0063】
(C)生体内での神経保護(結果を図3E+Fに示す)
P16INK4a発現性マウス(飲料水からドキシサイクリンを除去した後に、遺伝子導入p16INK4aが発現される)およびP16INK4a非発現性マウス(遺伝子導入p16INK4a発現の抑制は、飲料水中で投与されたドキシサイクリンによるものである)をNMDAで処理した。定位装置によって、NMDAを投与した(NMDA 2μg/μl PBS;注入速度0.1μl/分;注入時間5分;領域:海馬内)。14日間の生存時間の後、マウスを屠殺し、脳を4%パラホルムアルデヒドで灌流し、染色ニューロンを検出するために、スライスをFluorojadeで染色した。P16INK4a発現性マウス(図3F)は、p16INK4a発現が抑制されたマウス(図3E)と対照的に、少ない数のアポトーシスニューロンを示す。
【0064】
Fluoro−Jade Bは、細胞体およびニューロンが変性するプロセスの両方を選択的に染色するアニオン性蛍光色素である。この方法は、最初に記述された方法からわずかに改変された(Schmued et al., 1997)。ゼラチン(2%)コートスライド上に切片を載せ、50℃で50分間空気乾燥させ、80%エタノール中に水酸化ナトリウム1%を含有する溶液に3分間浸した。70%エタノール中で1分間インキュベートし、蒸留水中で2分間洗浄した後、振盪テーブル上の0.06%過マンガン酸カリウム溶液に、スライドを15分間移動した。蒸留水中で(1分間)すすいだ後、スライドをFluoro−Jade B染色溶液中で20分間インキュベートした。染色溶液を調製するために、Fluoro−Jade B(Histo−Chem Inc.,Jefferson,USA)10mgを蒸留水100mLに溶解し、このストック溶液10mLを0.1%酢酸90mLで希釈して、染色溶液を得た。染色後、スライドを水ですすぎ、乾燥させ、カバーガラスを載せた。一連のFluoro−Jade B染色切片を用いて、software Neurolucida(商標)(version 5.05.4,MicroBrightField Inc.,Williston,USA)を適用して、病変容積を決定した。簡潔には、10個に1個のFluoro−Jade B染色スライス上で病変を取り囲み、software Neurolucida(商標)によって断面積を決定した。
【0065】
実施例4
ドキシサイクリンの存在下での抑制された遺伝子導入p16INK4a発現(図4,左)と比較した、ドキシサイクリンを除去した後の、遺伝子導入マウスの皮質(ニューロン)におけるp16INK4aの誘導性ニューロン特異的発現
異種tTAシステムを用いて、p16INK4a[tTACamKIIa/tTA−応答性プロモーター(Ptet)p16INK4a]の誘導性ニューロン特異的発現を有する遺伝子導入マウスを作製した(Baron and Bujard, 2000; Gossen and Bujard, 1992; Gossen et al., 1995)。このtTAシステムにおいて、トランス活性化因子(tTA)、大腸菌由来tetリプレッサー(tetR)DNA結合性ドメインと単純ヘルペスウイルスに由来するVP16タンパク質の転写活性化ドメインの融合タンパク質(Gossen and Bujard, 1992)を、tTAタンパク質のニューロン特異的発現を可能にするCamKIIaプロモーターの制御下に置く。tTAタンパク質はtetオペレーター(tet0)配列に特異的に結合し、続いて、導入遺伝子(p16INK4a)と組み合わせられる、隣接するサイトメガロウイルス(CMV)最小プロモーターからの転写を誘導する。テトラサイクリンまたはその誘導体ドキシサイクリン(Dox)は、tet0に対するtTAの結合を阻止し、CMVプロモーター下でクローニングされた導入遺伝子の転写活性化が停止される(ここで、p16INK4a発現が阻止される)。対照的に、Doxの除去によって、導入遺伝子発現の誘導が可能となる(ここで、p16INK4a発現が可能となる)。
【0066】
この目的のために、二方向プロモーターPtet−bilの制御下にてp16βINK4aおよびルシフェラーゼcDNAの両方からなる、染色体組込みptetP16INK4aベクター(Ueberham et al., 2008)を保有する、マウス系を使用した(Baron et al., 1995)。このptetp16INK4a系を作製するために、pBI−5ベクターへのサブクローニングを可能にするMluIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する以下の特異的なプライマー対を用いて(CVU89934, GenBank at NCBI, Bethesda, MD, USA; (Baron et al., 1995; Baron and Bujard, 2000)(p16−Mlu−F:ctcacgcgtagcgggagcagcatggagccggcg;p16−Hind−R:atcaagcttgctctggttctttcaatcggggat)、ヒトp16INK4acDNA(上記参照)を増幅し、プラスミドpBI−p16INK4aが得られた。プラスミドpBI−p16INK4aを制限エンドヌクレアーゼによって直鎖化し、従来の卵母細胞注入(C57B1/6−DBAバックグラウンド)による遺伝子導入マウスの作製に使用した。標準PCR法を用いて、得られたファウンダーマウス(founder mice)をトランスジェナイティ(transgeneity)について試験した。pBIベクターは、共に受け継がれたが、PtetP16INK4aマウス系においてサイレントなままである、ルシフェラーゼおよびp16INK4acDNAの二方向転写ユニットからなる。
【0067】
ニューロン特異的発現を得るために、PtetCp16INK4a系を、カルシウム−カルモジュリンキナーゼIIaプロモーターにより制御されたトランス活性化因子タンパク質(tTA)を発現するマウス系と交配させた(tTACamKIIa−ラインB,C57B1/6−NMRIバックグラウンド(Mayford et al., 1996))。発達中のp16INK4aの制御されていない発現を防ぐために、動物が妊娠している間、5%ショ糖水溶液に溶解されたドキシサイクリン塩酸塩(Dox;0.05mg/mL;Sigma,Taufkirchen,Germany)を飲料水に供給した。1日おきに新たな溶液を調製した。飲料水中に同一用量のDoxを得た非遺伝子導入同胞は、薬物の毒性作用を示さなかった。p16INK4a発現の誘導は、飲料水からDoxを取り除き、代わりに淡水を供給することによって達成された。12:12時間の一定の昼夜サイクル下で動物を収容し、標準的な食餌を与え(Altromin 1324,Altromin Gesellschaft f−r Tierernahrung,Lage,Germany)、すべての条件下にて無制限に、水または水/ドキシサイクリン塩酸塩にアクセスできるようにした。European Council Directive of 24 November 1986(86/609/EEC)に従って、動物実験を行い、地方自治体によって承認された。
【0068】
その結果を図4に示す:CamKIIプロモーターで制御されたtTA発現によって、Dox投与に依存して、tet0/CMVminプロモーター関連p16INK4a発現の調節が可能となる(左,Doxあり,オフ状態;右,Doxなし,オン状態)。
【0069】
定義づけ:pBI−p16INK4a(プラスミド)ベクターを作製するために、プラスミドpBI−5を使用し;Ptetp16INK4aマウス系を作製するために、ベクターpBI−p16INK4aを使用した。
【0070】
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【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)サイクリン依存性キナーゼCDK4および/またはCDK6の生物活性を妨げるタンパク質、または(ii)CDK4および/またはCDK6発現および/または活性を妨げるRNAをコードする核酸分子;及び
(b)(a)の誘導性プロモーターに結合し、それを活性化することができる、トランス活性化因子タンパク質をコードする核酸分子;を含む、1種類のベクターまたは少なくとも2種類のベクターの混合物。
【請求項2】
(a)の核酸分子によってコードされるタンパク質は、CDK4および/またはCDK6の生物活性を低減または抑制する請求項1のベクター。
【請求項3】
CDK4および/またはCDK6発現を妨げるRNAが、siRNA、shRNA、ミクロRNA、非コードRNA、リボザイム又はデオキシリボザイムである請求項1又は2のベクター。
【請求項4】
ベクターが、ウイルスベクターである請求項1から3のいずれか1つのベクター。
【請求項5】
ウイルスベクターが、レンチウイルス又はAAVである請求項4のベクター。
【請求項6】
レンチウイルスが、組込み不能レンチウイルスウイルスである請求項5のベクター。
【請求項7】
ベクターが、非ウイルスベクターである請求項1、2又は3のベクター。
【請求項8】
ベクターが、さらに、細胞特異的標的化のためのペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸配列を含有する及び/あるいは細胞特異的発現を可能にする核酸を含有する請求項1から7のいずれか1つのベクター。
【請求項9】
細胞特異的標的化のためのポリペプチドが、細胞型特異的エピトープを認識する抗体である請求項8のベクター。
【請求項10】
細胞特異的標的化のためのペプチドが、細胞型特異的表面プロモーターを認識するペプチドである請求項9のベクター。
【請求項11】
誘導性プロモーターが、神経特異的プロモーターである請求項1のベクター。
【請求項12】
プロモーターが、CamKIIプロモーターである請求項11のベクター。
【請求項13】
トランス活性化タンパク質が、リバーステトラサイクリン制御トランス活性化因子:rtTAである請求項1から12のいずれか1つのベクター。
【請求項14】
サイクリン依存性キナーゼCDK4および/またはCDK6の生物活性を妨げるタンパク質が、INK4ファミリーである請求項1から13のいずれか1つのベクター。
【請求項15】
INK4ファミリーのメンバーが、p16INK4a、p15INK4B、p18INK4Cまたはp19INK4Dである請求項14のベクター。
【請求項16】
化合物が、Cip/Kipファミリーのメンバーである請求項1から13のいずれか1つのベクター。
【請求項17】
Cip/Kipファミリーのメンバーが、p21Cip、p27Kip1またはp57Kip2である請求項16のベクター。
【請求項18】
(a)神経変性疾患又は(b)細胞周期の不定期の活性化に関連する疾患を予防または治療する方法に使用するための請求項1から17のいずれか1つに記載のベクター。
【請求項19】
(a)神経変性疾患又は(b)細胞周期の不定期の活性化に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物の製造のための請求項1から17のいずれか1つに記載のベクターの使用。
【請求項20】
神経変性疾患がアルツハイマー病である請求項18のベクター又は請求項19の使用。。
【請求項21】
ベクターが、対流増加送達によって神経系に適用される請求項18のベクター又は請求項19の使用。

【公表番号】特表2012−516691(P2012−516691A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548607(P2011−548607)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000702
【国際公開番号】WO2010/089122
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(506134364)ウニベルジテート ライプチヒ (2)
【Fターム(参考)】