説明

細胞培養のための液相/気相露出反応器

本発明は、培養のための細胞を中空の繊維膜内に配置し、液体栄養物およびその上の気相中に交互に支持することにより、高い密度で細胞および細胞培養基を育成する方法および装置に関する。前記装置は供給室を有する液相/気相露出バイオリアクターであり、供給室内に5mm以下の内径を有する中空繊維膜が配置され、その内部容積は培養室を形成する。培養室に細胞を導入後、供給室の約半分が栄養媒体で充填され、他の半分はガス混合物で充填される。前記媒体にスイッチを入れ、ガスを貫流後、中空繊維膜およびその中の細胞の気相または液相への周期的な露出が開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養すべき細胞が中空繊維膜に存在し、液体栄養媒体およびその上に存在する気相に交互に運ばれる、高い密度で細胞を育成し、細胞を培養する方法および装置に関する。
【0002】
生物薬学的薬剤を製造するための哺育細胞培養は主に攪拌反応器中で作動する。哺育細胞にもとづく薬剤を使用する市場の操作に関して従来空気リフト反応器はあまり使用されず、中空繊維反応器はごくまれにしか使用されていない。体積による生成物の収率を改良するために、攪拌反応器中で、いわゆるフェドバッチ法で培養基の最適化および細胞ライン特異的食物供給システムにより細胞密度および有効な製造時間が高まる。製造技術はバイオリアクター通路に3〜5個の攪拌容器が配置され、容器の収容容積はそれぞれ前記バイオリアクターの約5倍である。哺育細胞を培養するための最大の利用可能な攪拌反応器は現在200000リットルの収容容積を有する。攪拌反応器でのフェドバッチ法は丈夫であり、前記体積までの規模で拡大可能であり、製薬製造に長い間官庁で受け入れられている。欠点は培養室での生成物の長い滞留時間、過剰の収穫物からの細胞分離の必要性、多数回の利用により生じる浄化および殺菌の費用、およびこの技術を備えた工場での高い設備費用および運転費用である。
【0003】
製造中にバイオリアクターでの少ない滞留時間、例えば1/7を前提とする分解しやすいたんぱく質のために、培養室の灌流培養およびこれによる攪拌反応器の連続運転を可能にする装置およびシステムが開発された。このために連続的培養基の供給および生成物の収穫の際に有効な細胞の保留が必要である。この場合に攪拌容器の内部空間で、スピンフィルターおよび製造細胞が表面に付着する場合に、流動床または流動床法で担体材料を使用する。攪拌容器の連続的運転法は外部細胞保留系、例えば細胞沈積、連続的細胞遠心分離、または超音波細胞分離機により実現できる。連続的運転法の利点はバイオリアクターでの短い製造時間、製造の間の一定の生成物の品質、体積による生産性の増加および決められた培養時間での装入物体積の柔軟性である。欠点は残留細胞による収穫物の汚染、多数回の使用により生じる浄化および殺菌の費用および相当する工場での高い設備費用および運転費用である。
【0004】
生物的薬剤の製造に有利である中空繊維バイオリアクター、ACUSYST(登録商標)X Cell Generationのほかに、すべての細胞培養に関する成分を使い捨て成分として配置する他のリアクター系が存在する。これは装入物の製造に利用後に廃棄することができる。費用のかかる浄化および殺菌工程が省かれる。この場合に市販されている系は膜にもとづく系、例えばCell Pharm(登録商標)、Cellmax(登録商標)、Technomouse(登録商標)、CELLine(登録商標)、miniPERM(登録商標)またはOptiCell(登録商標)である。メンブラン法は多くの利点を有する。灌流運転で体積単位当たりの大きな膜面積に起因してきわめて高い細胞密度(10〜10細胞/ml)を達成できる。更に細胞が膜によりせん断力から保護される。メンブラン法は基本的に使い捨て原理にもとづき、利用後の浄化および殺菌が省かれる。生物薬学的製造のために、使い捨てバイオリアクターの分野で従来更に確認段階でいわゆるウェーブバイオリアクターが有利である。細胞を装置内で、混合を改良するために意図的に動く袋装置内で培養する。この反応器技術の利点は培養装置の使い捨て利用可能性である。欠点は達成できる低い細胞密度および制限された規模の拡大である。
【0005】
前記のすべての方法および装置において、高い細胞密度での一定の栄養物質の供給、特に酸素の供給が問題である。この問題を圧力の供給による複雑な工程により解決する試み(1989、米国特許第4804628号)および他の膜装置による細胞培養室への酸素の直接的導入(1986、ドイツ特許第2431450号および1995、ドイツ特許第4230194号)は細胞を一定に供給できる任意の規模に拡大できる培養装置を生じなかった。細胞を中空繊維の間で培養し、栄養物質を繊維の空洞に移動する中空繊維バイオリアクターにおいて規模の拡大が中空繊維の長さにより制限される。しかし中空繊維の長さは中空繊維からの酸素の消耗により制限される。これにより並列化によってのみ規模の拡大が可能である。しかしこれはほとんど利益のない方法になり、すなわち中空繊維バイオリアクターの等級の可能性は新鮮な気体および液体の栄養物質成分を細胞に適当に均一に供給することに失敗した。
【0006】
WO03/064586号には細胞を高い密度で室内で培養することを提案し、その際室の大きさが5mmの長さを上回らない。室の内部空間は培養室を形成し、培養室は供給室から半透過性に分離される。細胞は室内に保留され、中空繊維膜により物質交換が行われる。細胞への栄養物質および酸素の供給は変動可能に調節できる気体/細胞培養基混合物により保証される。培養装置および方法が栄養物質および酸素の供給の問題を解決し、等級分けの可能性を保証するとしても、WO03/102123号に記載された方法の欠点は高い密度の細胞を室に供給しなければならないことにある。この欠点を排除するために、WO03/102123号で細胞の培養の開始時に接種密度を減少するために、生分解可能なゲルを使用することが提案される。
【0007】
液相/気相露出バイオリアクターは基本的にZellwerk社により開発され、Sartorius社により販売された。このバイオリアクターにおいて表面に付着する細胞が担体材料からなる板に固定される。板を順番に軸上に配置し、半分に培養基、半分にガスを充填したシリンダーを回転する。この装置の利点は両方の相でのこれらの細胞の周期的露出である。欠点は付着する細胞に装置および方法が限定され、収穫物液中の離れた細胞が残り、規模の拡大が制限されることである。
【0008】
本発明の課題はWO03/064586号に記載された方法を更に改良することである。
【0009】
前記課題は、請求の範囲に記載される方法により解決される。本発明により供給室を有し、供給室に内径5mm以下を有する中空繊維膜が存在し、その内部容積が培養室を形成する液相−気相露出バイオリアクター中で細胞の育成および培養を実施する。以下の工程を実施する:
細胞を培養室に導入する
供給室の約半分を栄養媒体で充填し、他の半分をガス混合物で充填する
媒体および気体の灌流を同時にまたはずらして開始する
中空繊維膜およびこの中に存在する細胞を気相もしくは液相に周期的に露出する。
【0010】
本発明の方法の1つの有利な実施態様により、中空繊維膜を水平にバイオリアクターに配置する。反応器の充填後、膜の半分を栄養媒体で覆う。反応器を1つの方向に360°回転させ、引き続き他の方向に回転させることにより、中空繊維膜およびこれと一緒に細胞の気相もしくは液相への露出が達成される。
【0011】
1つの方向および引き続く他の方向への回転は反応器に接続される管のねじれを防ぐ。
【0012】
気相もしくは液相中のそれぞれ同じ露出時間を達成するために、本発明により一定の時間180°の回転を中断する。持続時間は変動可能に調節できる。これにより膜が液体栄養媒体に滞在する間に細胞に栄養物質が十分に供給され、気相に滞在する間に酸素が十分に供給されることが保証される。同時に持続時間の変動により個々の細胞ラインの個々の物質交換の要求を考慮することができる。
【0013】
これに選択的に中空繊維膜を栄養媒体に浸漬し、引き続き気相に取り出すことにより中空繊維膜の周期的露出を行うことができる。この方法により両方の相で異なる滞在時間を達成できる。
【0014】
本発明の方法を実施するために、まず低い密度の細胞を培養室に導入し、引き続き高い密度の細胞に成長する。WO03/102123号に記載されるようなゲルの使用により最も低い細胞密度の細胞を、高いグルタミン部分を有する架橋ポリペプチドからなるゲルおよび/または粘性液体または微視的に小さいゲル断片からなる液体からなる半固体媒体と一緒に培養室に導入することが可能である。
【0015】
培養室への細胞の導入は供給室の外部の中心的装入装置により行い、接続管によりすべての部屋への細胞の同時の均一な導入が可能である。
【0016】
本発明の方法は原生動物、細菌、酵母、菌類、植物細胞または哺育細胞を培養するために適している。
【0017】
本発明の方法はWO03/064586号に記載される方法に対して新規であり、それはここでは2つの異なる相への細胞の露出でなく、変動可能に調節できるガス/細胞培養基混合物中の細胞の露出が意図されているからである。ここでは反応器または膜の移動は記載されていない。WO03/064586号から膜を細胞と一緒に一定の時間相当する相に移動することは示唆されない。これは、前記刊行物には変動可能に調節できるガス/細胞培養基混合物を製造する装置が必要であり、従って膜の移動、特に回転は接続管に関する他の複雑な手段を必要とすることによる。
【0018】
本発明の装置は円筒形または球状の(ガスもしくは媒体を装入できる)二相供給室からなり、供給室中に、円筒外被の縦軸に平行に、ポリマー状の、細胞を保留する、ミクロ濾過用の、5mm以下の内径を有する中空繊維膜が最終プレートに固定され、その内部容積は培養室を形成し、培養室中に培養すべき細胞が存在し、その際供給室はガス混合物が貫流可能な気相および培養媒体が貫流可能な液相を有し、それぞれの中空繊維膜は円筒の長さにわたり最も近い中空繊維膜に少なくとも0.5mmの間隔を有し、中空繊維膜は円筒の回転軸に沿って想定された横断面に関して対称に配置され、想定された横断面平面上に円筒の回転軸に沿って膜が存在しない。
【0019】
前記膜はすべての物質を透過するが全部の細胞を透過しない。部屋の全部の体積からなる培養室は供給室から膜により分離されている。膜は供給物質の培養室への導入および細胞の供給を可能にする。分離装置は生成物の細胞室から供給周囲への排出も可能にする。
【0020】
前記膜はポリマー、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリカーボネートからなる。300μmより少ない膜壁厚、6m/m・h・バールより大きい水透過性および0.1〜1.0μmの細孔直径を有する生体適合性材料、ポリエーテルスルホンからなる中空繊維膜が特に適していることが示された。
【0021】
液体皮膜の形成を避けるために、および同時に気相に膜を均一に露出するために、膜は互いに上下に最小間隔を有する。
【0022】
前記膜は有利に六角形に配置される。これはそれぞれの膜が外周に存在するものを除いてそれぞれ6個の膜により中心の膜に対して同じ間隔を有して包囲されていることを意味する。これにより供給室中で最も高い均一な包装密度が保証される。他の場所を必要とする装置は必要でない。
【0023】
中空繊維膜は想定された横断面に関して、実際に相界面である円筒の回転軸に沿って対称に配置される。想定された横断面平面上に、円筒の回転軸に沿って膜が存在しない。これにより持続時間の間にすべての膜が完全に気相にまたは完全に液相に存在することが保証される。
【0024】
本発明の装置はWO03/064586号に記載される装置に対して新規であり、それはここでは二相運転が考慮されていないからである。本発明の装置は更にガス/媒体混合物を製造するためにおよび消費されたガス/媒体混合物から液体を堆積するための特別な装置を必要としない、
円筒のそれぞれの最終プレートは気体の導入もしくは排出のために少なくとも2個の出入口を有し、前記出入口はそれぞれ想定された横断面の上方および下方に存在し、ガスの供給は連続的に円筒を回転軸を中心に回転する場合にも保証される。
【0025】
更に頭部平面にそれぞれ少なくとも1個の媒体を灌流する管状通路およびそれぞれ少なくとも1個の細胞種の培養室への供給管が存在する。
【0026】
前記装置は付加的に管、ガス湿潤装置、ガス通路中の媒体トラップ、生成物収穫通路中の限外濾過装置、ハードウェアー装置、ポンプ、測定および調節装置、作動モーター、装置の取り付けおよび回転を可能にする台が含まれる。
【0027】
生成物収穫通路中の限外濾過装置はそれぞれの生成物の濃縮に使用する。
【0028】
意想外にも、本発明による装置を使用してWO03/064586号による装置を使用するより高い細胞密度および同時に細胞生成物の高い収率を達成できることが示された。これは一方では最適な場所の利用に、および他方では二相中の中空繊維膜の周期的露出による細胞の改良された供給にもとづくことができる。
【0029】
これに対して選択的にガス供給の出入口を頭部平面でなく、円筒外被に、想定された横断面の上方および下方に取り付けることができる。
【0030】
本発明による装置の使用は高い密度の細胞の培養および細胞生成物、細胞成分、ウィルス、たんぱく質または低分子物質、例えば薬剤および診断および研究反応物質の取得にある。
【0031】
本発明の特徴は請求の範囲の要素および発明の詳細な説明から理解され、その際個々の特徴および組み合わせの形の多くの有利な構成が示され、この文献で保護される。
【0032】
本発明の知見は公知の要素(培養室と供給室の膜による分離)と新規の要素(供給室への膜の配置、装置の回転、気相もしくは液相中の細胞の交互の露出)の組み合わせからなり、2つの要素は相互に影響し、その新しい全体の作用において使用の利点および求められる成果を達成し、その成果は、細胞の高い密度の効果的な連続的培養の可能性および同時に細胞を保留してこの細胞からの生成物の取得の可能性を提供することにある。
【0033】
以下に本発明およびその機能を図面により説明する。図面はよりよい理解のために使用するが、1つの構成として理解するものでなく、これにより請求項を実現できる。
【0034】
図1:バイオリアクターの図
図1は円筒形供給室(12)にもとづくバイオリアクター装置の1つの変形を示す。供給室に配置された中空糸培養室の配列、実際の寸法でない寸法および実際の数が黒い線により供給室に示される。円筒形容器は回転装置(23)により適当なリズムで周期的に方向を変えて移動する。供給室の気相の貫流はガス通路により保証され、ガス通路はガス混合物貯蔵所(13)および円筒体にガスを供給するガス湿潤装置(14)および媒体トラップ(15)および円筒体からガスを排出する汚染トラップ(16)からなる。円筒体の液相の貫流は媒体通路により保証され、媒体通路は媒体貯蔵所および媒体を供給するポンプ(17)およびポンプ(19)および円筒体からの排出物の生成物収集容器(20)からなる。排出通路には更に酸素、pH値および温度を測定する測定装置通路(18)が組み込まれている。生成物収集容器に、生成物収集容器(20)中で生成物を濃縮するために、ポンプ(21)および限外濾過装置(22)を有する循環が接続されている。生成物不含のフィルターはこの限外濾過装置から下方に排出され、廃棄され、その間に濃縮された生成物は生成物収集容器に返送される。有利にはバイオリアクターのすべての部品がガス混合物貯蔵所の出入口で開始して使い捨て材料である。ポンプはホースポンプとして形成される。
【0035】
図2:円筒形二相供給室の縦断面図
円筒形供給室(12)は反応器の運転中に上方部分に気相(5)および下方部分に液相(6)を有し、相界面(7)を形成する。左側で供給室はガスおよび媒体を供給する最終プレート(1)により終了し、右側で排出する最終プレート(2)により終了する。右側は終了した部分に接する。ガスは出入口(3,4)をとおり最終プレートに供給する。それぞれ1個の円筒体の回転軸に向けられた中心出入口(8,9)により最終プレートに媒体を搬送する。細胞の個々の培養室は同じ中空糸膜として形成され、供給室に平行な黒い線として示される。細胞ガスおよび媒体供給と別に、黒く示された出入口(10)により最終プレートに懸濁液を導入する。すべての中空糸膜に細胞を均一に接種するために、前記出入口は細胞分配室(11)で終了し、分配室はそれぞれ1つの中空糸膜の内部空間と接続している。
【0036】
図3:供給室の最終プレートの平面図
供給プレート(1)の平面図において、小さい丸として示されるガス通路および供給室内の媒体(8)の通路の使用される1つの配置が示されている。排出プレート(2)の平面図は生成物を排出する中心出入口(9)およびガスを排出する出入口の使用される配置を示し、前記配置は小さいな丸で示される。この例ではそれぞれ4個の黒い点により示される出入口が両方の最終プレートに細胞懸濁液を接種するために組み込まれ、最終プレートは一緒に運ばれる接続管により装填できる。
【0037】
本発明を実施例により説明するが、この例に限定されない。
【0038】
例1;高い密度の細胞
2つのバイオリアクター装置は図1に示される図により形成される。円筒形供給室は14リットルの全収容容積を有した。液相はこの工程で7リットルを有した。両方の場合にそれぞれ長さ500mmの144個の中空糸膜が軸方向に対称に供給室に配置された。細胞の接種は基礎媒体PBG1.0中の高い密度の細胞を使用して0.02%ヒト血清アルブミンを添加して最終プレート中の接種通路により中空糸膜の内部空間に細胞を接種した。細胞ラインが人間のたんぱく質を産生し、このたんぱく質を一工程クロマトグラフィー法により培養上澄みから単離し、引き続きその量を正確に測定できる。培養時間は10日および23日であった。この時間にわたり供給室の気相に連続的に空気と5%COの混合物を貫流した。全部で細胞供給のために10日間11リットルの培養媒体もしくは23日間24リットルの培養媒体を流入して使用した。液相もしくは気相露出サイクルは実験では相交換の間それぞれ30秒であった。培養基供給が終了後、細胞を中空糸膜から接種通路により収穫し、細胞密度および活性を測定した。たんぱく質を細胞不含生成物収穫物のアリコートから単離し、量を測定した。以下の表に中空糸培養室中で達成された細胞密度および活性を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
この装置で高い細胞密度が得られた。更に作業の間にたんぱく質48mgおよび168mgが形成され、細胞不含培養基上澄み中に相当する生成物収集容器に収容した。
【0041】
例2;低い密度の細胞
培養室1ミリリットル当たり1.3個のE5細胞の活性細胞密度の細胞を長さ200mmのそれぞれ12個の中空糸膜を有する2個の二相露出反応器中で接種し、4日間にわたり2つのプラスチック容器を回転させて培養した。接種の前に細胞を微視的に小さいHSAからなるゲル断片と混合した。媒体の交換は不連続的に行った。物質交換活性はグルコース消費により測定した。細胞密度は流入の終了後、ゲルとその中に存在する細胞の収穫およびトリパンブルーによる計数により決定した。短い培養時間内で培養室1ミリリットル当たり6個のE5活性細胞への(4.6倍)もしくは培養室1ミリリットル当たり5個のE5活性細胞への(3.8倍)細胞の拡大が達成できた。
【0042】
例3;バイオリアクター装置の機能
バイオリアクターの供給原理は細胞が交互に媒体およびガス混合物に保持され、これにより細胞への酸素の供給が従来の装置に比べて改良できることにもとづく。
【0043】
例4:装置の構成
バイオリアクターの核心は水平に保存される円筒形プラスチック容器を形成する。この容器内に回転軸に平行に、中空糸膜が図2に示されるように、長さにわたり張設されている。これにより円筒体に2つの膜により互いに分離される空間が生じる。これは一方で中空糸膜を包囲する供給室であり、供給室は液相および気相からなる。この2つの相の界面は図2および3に示される。他方で供給室はそれぞれの中空糸膜の内部空間である。すべての中空糸内部空間の合計は細胞の培養室である。回転軸に対称に配置される中空糸膜の数により装置は培養室に関して任意の大きさである。2つの空間は別の出入口を有し、互いに分離されている。供給室と培養室の間の1つの結合は膜の細孔である。この細孔は1ミリリットル当たり0.1〜1.0μgの有利な細孔直径を有し、小さい分子およびたんぱく質を透過するが、細胞を透過しない。ガスもしくは液体の装置への連続的貫流能力は図1で実施され、記載される全部の装置により保証される。
【0044】
バイオリアクターに更に可動性ハードウェアー装置、ポンプ、圧縮器および測定および調節装置が含まれる。この装置は更に作動モーターおよび回転装置を有し、前記装置はプラスチック容器の保存および回転を可能にする。
【0045】
例5:機能
プラスチック容器は回転装置によりそれぞれの細胞ラインに適合可能な回転循環で回転軸を中心に回転する。この回転循環は有利な方法で全部のバイオリアクターの運転時間にわたり中断されずに繰り返される。回転循環の8個の段階を以下に例示する。
段階:右に180°回転
段階:停止時間
段階:右に180°回転
段階:停止時間
段階:左に180°回転
段階:停止時間
段階:左に180°回転
段階;停止時間。
【0046】
回転循環の結果において、容器は1つの方向に完全に回転し、反対の方向に完全に回転して吸収され、再び最初の出発位置に存在する。回転方向の交換は、容器に固定して組み込まれた通路による媒体およびガスの貫流を可能にし、前記通路にプラスチック管が固定されている。これによりこの装置は大部分の哺育細胞バイオリアクターと異なり、可動性の無菌の供給もしくは培養領域に導入する構造部品、例えば羽根車または媒体もしくはガス供給管がなくても運転できる。これと結びついた汚染の危険は発生せず、例えば二重滑りリングパッキングによる相当する摩擦面を保護する費用が生じない。
【0047】
装置構造および運転方法は同時に、装置に存在する中空糸膜の数に関係なく、全部のバイオリアクター運転時間にわたり2つの相へのそれぞれ1つの同じ露出条件にさらされることを保護する。気相での露出は特に酸素供給に使用され、液相での露出は特に溶解した栄養物質の取り入れおよび物質交換生成物の排出に使用される。栄養物質およびガス混合物を連続的に供給できる。
【0048】
利点/新規性
使い捨て製品としての組み込まれた細胞保留装置を有する容器
膜はたんぱく質を透過し、細胞不含収穫物は透過しない
装置内でそれぞれ1つの中空糸膜で同じ露出条件
気相での露出の際の短い酸素の拡散通路
反応器の長さにわたり露出反応器の気相で勾配を形成しない
回転の間にガスの貫流を可能にする、多くの、最終キャップに分配されるガス出入口。
【0049】
定義
高い密度の細胞:高い細胞密度を有する培養基は培養室1ミリリットル当たり1E7細胞より高い細胞密度で達成される。
低い密度の細胞は培養室での細胞密度が培養室1ミリリットル当たり1E4〜1E7細胞である場合に達成される。
最も低い細胞密度の細胞:最も低い細胞密度を有する培養基は培養室1ミリリットル当たり1E4細胞より小さい密度で達成される。
栄養媒体:栄養媒体は細胞に必須の栄養物質、例えばグルコース、アミノ酸、および微量元素が含まれる水溶液である。
ガス混合物:ここに使用される意味でのガス混合物は有利な方法で空気と二酸化炭素の変動可能な混合比の混合物を記載する。更に本発明の意味でのガス混合物は窒素、酸素およびCOの変動可能な混合比も含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるバイオリアクターの図である。
【図2】二相供給室の縦断面図である。
【図3】供給室の最終プレートの平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 供給プレート、
2 排出プレート、
3,4 ガス供給および排出用出入口
5 気相
6 液相
7 相界面
8 媒体出入口(中心出入口)
9 生成物排出用中心出入口
10 培養室の出入口
11 細胞分配室
12 円筒形供給室
13 ガス混合物貯蔵所
14 ガス湿潤装置
15 媒体トラップ
16 汚染トラップ
17,19,21 ポンプ
22 限外濾過装置
23 回転装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給室を有し、供給室に内径5mm以下を有する中空糸膜が存在し、その内部容積が培養室を形成する、液相−気相露出バイオリアクター中で細胞を育成および培養する方法において、以下の工程:
細胞を培養室に導入する
供給室の約半分を栄養媒体で充填し、他の半分をガス混合物で充填する
媒体および気体の灌流を同時にまたはずらして開始する
中空糸膜およびこの中に存在する細胞を気相もしくは液相に周期的に露出する
を有することを特徴とする、液相−気相露出バイオリアクター中で細胞を育成および培養する方法。
【請求項2】
中空糸膜が水平に配置され、反応器を充填後、膜の半分が栄養物質で覆われ、反応器を1つの方向に360°回転し、引き続き他の方向に360°回転することにより中空糸膜の周期的露出が達成される請求項1記載の方法。
【請求項3】
変動可能に調節できる待ち時間により互いに分離される2つの180°の回転工程を実施し、それぞれ1つの中空繊維膜が気相と液相で同じ時間存在する請求項2記載の方法。
【請求項4】
中空糸膜を栄養媒体に浸漬し、引き続き気相に取り出すことにより周期的露出が達成される請求項1記載の方法。
【請求項5】
低い密度の細胞を培養室に導入し、高い密度の細胞に成長する請求項1記載の方法。
【請求項6】
最も低い細胞密度の細胞を、高いグルタミン部分を有する架橋ポリペプチドからなるゲルおよび/または粘性液体または微視的に小さいゲル断片からなる液体からなる半固体媒体と一緒に培養室に導入する請求項5記載の方法。
【請求項7】
細胞が原生動物、細菌、酵母、菌類、植物細胞または哺育細胞である請求項1記載の方法。
【請求項8】
供給室外部の中心装入装置により部屋への細胞の導入を行い、すべての部屋に接続管により細胞の同時の均一な導入が可能である請求項1記載の方法。
【請求項9】
円筒形または球状の(ガスもしくは媒体を装入できる)二相供給室中で細胞を育成および培養する装置であり、供給室中に、円筒外被の縦軸に平行に、ポリマー状、細胞を保留するミクロ濾過用の、5mm以下の内径を有する中空糸膜が最終プレートに固定され、その内部容積は培養室を形成し、培養室中に培養すべき細胞が存在する、細胞を育成および培養する装置において、
供給室はガス混合物が貫流可能な気相および培養媒体が貫流可能な液相を有し、
それぞれの中空糸膜は円筒の長さにわたり最も近い中空糸膜に少なくとも0.5mmの間隔を有し、
中空糸膜は円筒体の縦軸に沿って想定された横断面に関して対称に配置され、
想定された横断面上に円筒の縦軸に沿って膜が存在しない
ことを特徴とする細胞を育成および培養する装置。
【請求項10】
円筒のそれぞれの最終プレートがガスを導入および排出する少なくとも2個の接続管を有し、前記接続管はそれぞれ想定された横断面の上方および下方に存在し、供給室が中空糸膜と一緒に媒体およびガスを供給する際に縦軸を中心に回転できる請求項9記載の装置。
【請求項11】
ガス供給の出入口が頭部平面でなく、円筒外被に想定される横断面の上方および下方に取り付けられている請求項9または10記載の装置。
【請求項12】
中空糸膜が300μm未満の壁厚を有し、6m/m・h・バールより高い水透過性および0.1〜1μmの細孔直径を有する請求項9記載の装置。
【請求項13】
供給室内の膜が六角形に配置されている請求項9記載の装置。
【請求項14】
頭部平面にそれぞれ少なくとも1個の媒体灌流のための出入口およびそれぞれ少なくとも1個の培養室への通路が存在する請求項9記載の装置。
【請求項15】
付加的に管、ガス湿潤装置、ガス通路中の媒体トラップ、生成物収穫通路中の限外濾過装置、ハードウェアー装置、ポンプ、圧縮器、測定および調節装置、作動モーター、装置の取付けおよび回転を可能にする台を有する請求項10から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
高い密度で細胞を培養するためのおよび細胞生成物、細胞成分、ウィルス、たんぱく質または低分子物質を取得するための請求項9から15までのいずれか1項記載の装置の使用。
【請求項17】
薬剤を取得するための請求項16記載の使用。
【請求項18】
診断薬を製造するための請求項16または17記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−502331(P2008−502331A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515768(P2007−515768)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001248
【国際公開番号】WO2005/121311
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506415230)プロビオゲン アクチエンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】ProBioGen AG
【住所又は居所原語表記】Goethestrasse 54, D−13086 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】