細胞培養器具及びこれを備えた顕微鏡装置
【課題】ステージ上での生細胞培養において、気密性を備え、培養器具ごとステージ上から持ち運び可能な細胞培養器具を提供する。
【解決手段】蓋体102の開閉を必要とせずに、気密性を有するディッシュ収容部104と、外部から操作可能な注入ノズル150と、排出ノズル151と、リザーブタンク310を保持するタンクホルダ130と、を備え、ステージ上からチャンバ101ごと、取り外して持ち運びが可能な細胞培養器具を提供する。
【解決手段】蓋体102の開閉を必要とせずに、気密性を有するディッシュ収容部104と、外部から操作可能な注入ノズル150と、排出ノズル151と、リザーブタンク310を保持するタンクホルダ130と、を備え、ステージ上からチャンバ101ごと、取り外して持ち運びが可能な細胞培養器具を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養器具及びこれを備えた顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡装置により、生細胞や微生物等の生体試料の経時変化を観察する場合には、ステージ上で細胞を培養しながら試料を観察する方法が用いられている。例えば、顕微鏡観察下において、観察試料のインターバル撮影を行ない、タイムラプスムービーを取得するような方法である。その際には、生細胞や微生物等を培養するため培地交換、温度や湿度等の培養条件管理、薬理試験に使用する薬剤の添加、排出等の操作を行なう必要がある。
【0003】
具体的には、ステージ上で生細胞や微生物等の培養に必要な温度や湿度を管理し、観察試料に液体を注入、排出するためのノズルを備えた顕微鏡用培養器が提供されている(特許文献1参照)。この培養器によれば、ディッシュを収容可能なチャンバの底面部と天面部とにそれぞれ加温プレートと、ディッシュの周囲に設けられた水槽によって、温度、湿度を管理し、さらにチャンバの蓋を開閉することなく、ディッシュに液体を供給、又はディッシュから液体を排出することが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−141143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の顕微鏡用培養器を使用するためには、ディッシュの蓋体を貫通するチューブにより液体の供給又は排出を行なうための、チューブ挿入穴を備える専用のディッシュ蓋を用いねばならない。また、ディッシュ着脱の際には、容器ホルダへの設置や、チューブの配管等の煩雑な作業が必要となる。また、チャンバは密閉構造ではなく、操作ミス等によって試料や薬剤等が外部に流出した場合、周辺器具にまで汚染が拡大する危険性があった。
【0006】
本発明の細胞培養器具は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、顕微鏡装置のステージ上で行なわれる生体培養と試料観察において、培養器具を密閉した状態の操作が可能である細胞培養器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、上面が開口し、培養容器を着脱自在に収容する培養容器収容部を構成する本体と、前記開口を覆って、前記培養容器収容部を有する前記本体を密閉させ、少なくとも一部に光透過部材を有する蓋体と、を備え、前記蓋体は、少なくとも一部に光透過性領域を有し、前記本体は、前記培養容器収容部に配置される培養容器に、本体外部からの液体を供給するための第一のノズルと、前記培養容器収容部に配置される前記培養容器から液体を、本体外部に排出するための第二のノズルと、前記本体外部から、前記培養容器収容部へ気体を送り込む給気口と、前記培養容器収容部の気体を、前記培養容器収容部の外部に排気する排気口と、を有し、前記本体底面部の少なくとも前記培養容器の設置位置に、光透過孔と、前記光透過孔に設けられる光透過部材と、を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明を適用した第一の実施形態にかかる細胞培養器具について説明する。以下において説明する実施形態は、タイムラプス観察が可能な倒立顕微鏡装置によって、細胞を培養しつつ行なわれる試料観察に、本発明を適用した例である。勿論、本発明の細胞培養器具の用途は、この場合に限られない。
【0009】
以下の実施形態で述べる細胞培養器具は、培養器を着脱自在に収容する培養空間を有し、上面が開口し、培養器を着脱可能に収容するディッシュ収容部104を構成するチャンバ101と、前記開口を覆って前記培養空間を気密する蓋体102と、を備える。
【0010】
図1に、本発明の第一の実施形態である細胞培養器具100の平面図を示す。本図に示した細胞培養器具100は、培養器として機能するディッシュ300を着脱自在に収容するチャンバ101と、その蓋体102と、調整気体、例えば、窒素、酸素、二酸化炭素、空気等の気体を、目的に応じて、ディッシュ収容部104へ給気する給気チューブ190と、ディッシュ収容部104内気体を排気する排気チューブ191と、培養液をディッシュ300へ供給する注入ノズル150と、ディッシュ300から培養液を排出する排出ノズル151とを備える。
【0011】
図2は第一の実施形態に係る細胞培養器具100の蓋体102が開放状態の平面図、図3は図1における細胞培養器具100の正面図、図4は図1の細胞培養器具100のI−I’線断面図である。
【0012】
本体であるチャンバ101は、方形の底面部115と、4つの側壁部105a、105b、105c、105dと、固定板117a、117bと、支持部126a、126bと、タンクホルダ130と、を有する中空の箱型であり、円柱状の中空部分である、ディッシュ収容部104を備える。さらに、チャンバ101の材料としては、チタン、銅、亜鉛、ステンレススチール、アルミニウム等の金属や合金、セラミックス等の非金属無機材料を用いることができる。大きさは、通常の顕微鏡のステージ上で使用できるサイズであれば足りる。
【0013】
本発明において使用されるディッシュ300は、図示しない蓋とともに、平滑なガラス、プラスチック等の光透過性材料で形成された、平面視円形の細胞培養容器である。内径35mm、深さは10mmに構成されており、培養細胞は底面部に付着して増殖する。また、細胞培養に用いる培地の容量は2.5ml〜3.0ml程度の構成となっている。ディッシュ300は、ディッシュ収容部104の光透過性領域上に着脱自在に収容され、顕微鏡装置によってディッシュ300の内部の生体試料を観察することが可能である。また、本実施形態の細胞培養器具100に用いる際には、蓋は使用せずに用いることができる。なお、ディッシュは上述のものに限定されず、他のサイズや形状のディッシュを用いても良い。
【0014】
ディッシュ収容部104は、箱型のチャンバ101における円柱形状の中空部分であり、ディッシュ300を収容して、試料の培養空間として機能する。ディッシュ収容部104の円半径は、ディッシュ300の縁部近傍に位置する試料を、円の中心に合わせる事が可能な範囲、すなわち、ディッシュ300の外径程度の長さを備えることが望ましい。ディッシュ300を用いた場合では、75mm程度あれば足りるが、これに限られることなく、必要に応じて適宜サイズを選択できる。また、ディッシュ収容部104は円柱形状に限定されず、方形としてもよい。
ディッシュ収容部104の底面部115には、後述する蓋体102の光透過領域に対応する位置関係で、光透過性領域を有する。具体的には、中心にディッシュ径よりも一回り小さな円形の透過孔119bを備え、ディッシュ収容部104の下方から照射される光を、ディッシュ収容部104へ透過させる。透過孔119bは、底面部115を貫通し、透過孔119bの内周面には、透過孔119bの中心へ向かって延出する内フランジ116bが形成されている。内フランジ116bの上面には、透過孔119bに嵌合する円盤状のガラス板121bが載置され、接着剤等で内周面に固定されている。このガラス板121b上に、ディッシュ300を載置することで、光を透過させて試料観察が可能な構成となっている。ガラス板121bは、光透過性であれば、アクリル樹脂等、他の素材を用いてもよい。
【0015】
ディッシュ収容部104の上部開口周縁には、溝106が形成されている。溝106には、蓋体102が閉鎖状態の際に、ディッシュ収容部104を気密シールするための、O−リング123が載置されている。O−リング123の材料としては、シリコン、フッ素樹脂、ニトリル樹脂、スチロール樹脂等を用いることができる。O−リング123は、溝106に接着剤等による接着、又は、溝106に嵌めて保持される。
【0016】
側壁部105b、105dは、中心に、後に説明する注入ノズル150と、排出ノズル151とを通すための貫通孔107がそれぞれ形成されている。また、側壁部105cには、側壁部105b側の上部に給気口180と、側壁部105d側の下部に排気口181とが形成される。給気口180と、排気口181とは、側壁部105cを貫通しており、それぞれにチューブ口金具182が備え付けられている。
【0017】
チューブ口金具は、ディッシュ収容部104内への給気、又はディッシュ収容部104内からの排気に使用可能な貫通孔を有するものならばどのような構成のものを用いてもよく、例えば、チャンバ101の側壁部105cに設けた雌ねじに対して、雄ねじで連結するものや、チャンバ101内側と外側から、側壁部105cを挟んでねじ等で部品を連結するものであってもよい。給気口180のチューブ口金具182には給気チューブ190が、排気口181のチューブ口金具182には排気チューブ191がそれぞれ接続される。また、給気チューブ190、排気チューブ191は、シリコンやビニール、ゴム等、生体試料に無害な材料であれば、どのようなものを用いても良い。
【0018】
固定板117a、117bは、側壁部105d、105bの底面部115から、外側方向に延出しており、側壁部105d側の固定板117aに1箇所、側壁部105b側の固定板117bに2箇所の計3箇所に、貫通孔118が設けられている。貫通孔118には、固定ねじ120がそれぞれ挿入されており、これが顕微鏡のステージ上のねじ孔に形成される3つの雌ねじと連結することによって、チャンバ101は顕微鏡に位置固定される。
【0019】
蓋体102は、ディッシュ収容部104の上面開口を覆う方形の板であり、連結部112を回転中心として、チャンバ101の上面部111に、回動自在に連結されている(図2を参照)。連結部112は、上面部111の、側壁部105dと、105aとの角に形成される。また、蓋体102は、少なくとも一部に光透過性領域を有する。具体的には、蓋体102の中心に、蓋体102を貫通する円形の透過孔119aが設けられている。透過孔119aは、ディッシュ収容部104の開口の円周より一回り小さく、ディッシュ収容部104へ光を透過し、ディッシュ300の観察を妨げない程度の大きさで構成されている。透過孔119aの内周面についても、透過孔119bと同様に、透過孔119aの中心へ向かって延出する内フランジ116aが形成されている。内フランジ116aの上面には、円盤状のガラス板121aが支持され、接着剤等で内周面に固定されている。
【0020】
図5(a)は、図1における支持部126aの拡大断面図、図5(b)は、図1における支持部126bの拡大断面図である。支持部126a、126bは、側壁部105b、105dから外方に突出するようにして設置される長方形の部材であり、O−リング131と、ワッシャ133と、ノズル支持ねじ132とを備える。支持部126a、126bは、中心に貫通孔であるノズル支持孔122を有し、側壁部105dに形成される貫通孔107は、支持部126aのノズル支持孔122に、側壁部105bに形成される貫通孔107は、支持部126bのノズル支持孔122に、それぞれ連結するように設置されている。ノズル支持孔122は、チャンバ101側の内周面縁部に、内フランジ128が形成され、さらに、外方側の内周面には、雌ねじ129を備える。
支持部126aのノズル支持孔122には、注入ノズル150が、支持部126bのノズル支持孔122には、排出ノズル151が貫通している。以下、構造を具体的に説明する。まず、内フランジ128によって、注入ノズル150又は排出ノズル151の軸部に162、166に挿通された、O−リング131と、ワッシャ133が支持される。O−リング131の内周円は、注入ノズル150、及び、排出ノズル151の外径と同径以下で、ぴったりと嵌合するものを用いるのが望ましい。さらに、ノズル支持ねじ132に形成される雄ねじが、雌ねじ129に連結し、回転によって、チャンバ101方向へ移動することにより、ワッシャ133がO−リング131を内フランジ128に押し付ける。O−リング131は、ノズル支持孔122を気密シールすると共に、注入ノズル150、及び、排出ノズル151の軸部162と、軸部166とを、ディッシュ収容部104の気密状態を保持しながら、摺動、及び、回転自在に支持する。なお、排出ノズル151の軸部166は、連結部112を回転中心として蓋体102を回動させた際に、連結部112の形成される角の対角が、排出ノズル151に連結するアダプタ140と、基端部167とに、接触しない位置へと、摺動させることができる。
【0021】
注入ノズル150と、排出ノズル151とは、支持部126a、126bによって、軸部162、166を軸方向に摺動できる(図6参照)。さらに、それぞれの軸部162、166を中心軸として、回動自在に支持されている。このような構成により、ディッシュ収容部104内において、注入ノズル150と、排出ノズル151との先端の位置を、移動、及び、固定する事が可能である。また、ノズル支持ねじ132に形成される雄ねじの、雌ねじ129に対する回転の程度によって、支持強度を調整することも出来る。
【0022】
支持部126aは、側壁部105c側の端部にタンクホルダ130を備えている。タンクホルダ130は、円形の凹部134を備えており、ここに培養液等を貯留するリザーブタンク310を保持する。タンクホルダ130の大きさは、本実施形態において使用されるリザーブタンク310のサイズに合わせて構成されている。なお、タンクホルダ130のサイズや形状は、使用する培養液貯留容器の種類や、大きさに合わせて適宜選択される。
【0023】
リザーブタンク310には、空圧チューブ155と、供給チューブ160とが接続されている。リザーブタンク310は栓320によって、内部が気密構造に構成されている。栓320は中心部がシリコンで形成され、前記シリコンを、先端がリザーブタンク310に貯留される溶液に浸かるよう構成された送液ガラス管156と、先端が液面より上部に位置する空圧ガラス管157とが貫通する。空圧ガラス管157の、リザーブタンク310外側の先端には、空圧チューブ155の一端が接続され、他端は、後述の空圧手段(図示しない)に接続されている。送液ガラス管156のリザーブタンク310外側の先端には、供給チューブ160の一端が接続され、供給チューブ160の他端はアダプタ140を介して注入ノズル150に連結されている。
【0024】
上記のような構成により、溶液の供給経路は、空圧チューブ155と空圧ガラス管157を経てリザーブタンク310内に導入される空気によって、リザーブタンク310内に貯留される溶液の液面が加圧され、送液ガラス管156へ溶液が押し出される。リザーブタンク310内の空圧により押し出された溶液は、送液ガラス管156から、供給チューブ160と、アダプタ140とを経て、注入ノズル150へと送られ、注入ノズル150の注入口165から、ディッシュ300に注がれる。その際、空気と水との熱伝導性は小さいために、リザーブタンク310内の溶液の温度変化を引き起こさずに、ディッシュ300への供給が可能である。
【0025】
ここで、培地等の溶液を空圧輸送するための空圧手段について説明する。空圧チューブ155に接続するポンプ(図示しない)は、リザーブタンク310内に空気を導入して加圧可能であれば、どのようなものを用いても良い。例えば、空圧チューブ155にシリンジを直接接続して、手動で空圧する方法や、シリンジポンプ等の装置を使用して、無人で培地交換をするような方法を用いる事も出来る。なお、排出チューブ161に接続するポンプについても同様に、ディッシュ300の培養液を吸い出せるものであれば、どのようなものを用いても良い。なお、空圧チューブ155に接続されるシリンジには、リザーブタンク310内の汚染を防ぐため、滅菌フィルタ等を設置してもよい。同様に、滅菌フィルタは、空圧チューブ155や、空圧ガラス管157にも設置することが出来る。
【0026】
次に、注入ノズル150について説明する。図6(a)は、注入ノズル150の構成図である。図6(b)は、図6(a)における注入ノズル150のC矢視図、図6(c)は、図6(a)における注入ノズル150のD矢視図である。図7は、本発明の第一の実施形態に係る細胞培養器具100において、注入ノズル150と排出ノズル151とが、ディッシュ300から退避する位置に保持される状態の平面図である。図8は、図7の細胞培養器具100のI−II’線断面図である。
【0027】
注入ノズル150は、中空の円筒であって、リザーブタンク310に接続される供給チューブ160に、アダプタ140を介して連結している。注入ノズル150は、ディッシュ300に直接培地等の溶液を流し込むための注入口165と、先端部164と、O−リング131、ワッシャ133、ノズル支持ねじ132を挿通し、側壁部105dを貫通する軸部162と、アダプタ140に接続される基端部163とからなる。先端部164は、底面部115に向かって垂直な角度位置で支持されている時、ディッシュ300の深さの6分目程度、すなわち、溶液の注入時に、試料を巻き上げない程度の深さに、注入口165が位置するように構成されている。
【0028】
さらに、基端部163と、先端部164のそれぞれの延長方向は、軸部162に対して傾斜角θを備える(図6(a)参照)。本実施形態では、傾斜角θは135°に構成されている。よって、先端部164をディッシュ300から退避させるために、底面部115に対して水平に位置させた場合、又は、使用時に底面部115に向かって垂直に位置させる場合に、基端部163とアダプタ140を、底面部115に水平になるまで倒す必要が無くなる。よって、先端部164と基端部163が直線的に構成されている場合に比べて、供給チューブ160の引き回しによる潰れを回避し、容易に取り扱える構成となっている。
図6(d)は、排出ノズル151の構成図、図6(e)は、図6(d)の排出ノズル151のE矢視図、図6(f)は、図6(d)の排出ノズル151のF矢視図である。排出ノズル151は、注入ノズル150とは左右対照の構造となっており、廃液を外部へ排出するための排出チューブ161に、アダプタ140を介して接続されている。排出ノズル151は、ディッシュ300にから直接培地を吸い上げるための吸入口169と、先端部168と、O−リング131、ワッシャ133、ノズル支持ねじ132を挿通し、側壁部105bを貫通する軸部166と、アダプタ140に接続される基端部167とからなる。先端部168が底面部115に垂直な角度位置で支持されている時、吸入口169は、ディッシュ300の底面、すなわち、観察試料に接触しない程度の間隔を開けた深さに位置し、溶液の吸入時に、底面に貼り付いた試料を巻き込まないよう構成されている。
【0029】
基端部163と同様に、基端部167は、先端部168に対して、135°の傾斜角θを備え、操作に際して、基端部167を底面部115に対して水平な角度位置まで回転させる必要の無いように構成されている。なお、傾斜角θは、135°程度が望ましいが、器具類との位置関係によっては、他の角度としてもよい。
ここで、第一の実施形態における、温度及び、湿度の調整方法について説明する。顕微鏡装置によって生細胞のタイムラプス観察を行う際には、ステージ上で安定した培養条件を維持する必要がある。そこで、本発明の細胞培養器具100は、温度、湿度、成分等を調整した調整空気を、密閉されたディッシュ収容部104内への給気する構成をとる。これらは、別に設けられた空調装置によって行なう。
空調装置は、例えば、ヒータと温度センサとを備え、培養に適した温度に保たれる蒸留水の満たされた容器に、CO25%空気を、滅菌フィルタを通して導入し、バブリングによって高湿度のCO25%空気を得るようなものが考えられる。高湿度のCO25%空気は、給気チューブ190と、給気チューブ190に接続される給気口180のチューブ口金具182とを介して、ディッシュ収容部104に供給され、排気口181のチューブ口金具182と、チューブ口金具182に接続された排気チューブ191とを経て、外部に排気される(図7参照)。よって、ディッシュ収容部104は、常に培養に適した温度と、高い湿度を持つCO25%濃度の空気に満たされる。よって、ディッシュ300に満たされる液体培地は、高い湿度によって蒸発が押えられ、さらにCO2ガスにより培地のpHの変化が抑えられる。従って、試料の培養条件に合わせた環境を、ディッシュ収容部104内に実現することが可能となる。なお、空気の成分は、二酸化炭素に限られず、窒素、酸素等についても、調整することが出来る。なお、空気の調整方法はこれに限られず、培養条件に適した温度・湿度・空気成分を調整可能であれば、どのような方法を用いても良い。
【0030】
図9は顕微鏡装置400の断面を示す概略構成図、図10は顕微鏡装置900の側面図である。本実施形態の細胞培養器具100は、例えば、顕微鏡装置900や、400等で使用することができる。
【0031】
図9に示すように、顕微鏡装置400は、ディッシュ収容部104に調整空気を送り込む、加湿装置500、顕微鏡装置400と外気を遮断可能な筐体401内の温度を制御するための温度制御装置600、撮像装置700を備える。細胞培養器具100は、ステージ402に設けられる雌ねじに、チャンバ101の固定板117a、固定板117bに備えられる3つの連結ねじ120の雄ねじ部を連結して、固定される。
【0032】
加湿装置500は、上述したように、ヒータ502と温度センサ501によって、培養に適した温度、例えば、37℃に保たれる蒸留水の満たされたガラス容器504に、CO25%空気を、シリコンチューブ503によって、滅菌フィルタを通して導入し、バブリングによって高湿度のCO25%空気を得る。高湿度のCO25%空気は、給気チューブ190によって、ディッシュ収容部104に供給される。
【0033】
温度制御装置600は、筐体401内の温度調整をするためのヒータ601、筐体401内へ調整空気を送風するためのファン602、温度センサ603を備える。温度センサ603は、筐体401内の温度を検出して、一定の温度、例えば37℃を保つようヒータ601を制御する。温風は、ファン602によって、ダクト604を経て、顕微鏡装置400の上部へ送られる。このような構成により、筐体401中を温風が循環することによって、リザーブタンク310や、各チューブを流れる液体は、ディッシュ収容部104内の温度と略同じ温度となるように、一定に保持することが可能である。なお、ヒータ601は、冷却装置としても良く、また両方の機能を備えるものであっても良い。
【0034】
撮像装置700は、断熱部材405を介して筐体401と連結されており、対物レンズ系403、結像レンズ系404を経て、試料の画像データを取得する。
【0035】
図10に示すように、顕微鏡装置900は、接眼レンズ903と、熱源となる機器類のみが外部に配置され、それ以外の部分は顕微鏡装置900が外気と隔離されるように、筐体901に覆われている。さらに、筐体901には、筐体901の内部に調整空気を送り込むための、空調装置(図示しない)が接続されている。このような構成により、リザーブタンク310内の液体は常にディッシュ収容部104内の温度と略同じ適温に保たれ、チューブ内を輸送される際の温度変化を防ぐことが可能である。また、ステージ902上には、細胞培養器具100に備えられる、3つの連結ねじ120の雄ねじ部を連結させるための、雌ねじが形成されている。
次に、細胞培養器具100を顕微鏡装置900において、実際に使用する際の使用方法について説明する。
まず、アダプタ140、注入ノズル150、排出ノズル151を取り付けたチャンバ101に、必要な器具類をセットする空圧チューブ155に接続された空圧ガラス管157と、供給チューブ160に接続された送液ガラス管156とを連結させたリザーブタンク310に、培養液を満たしてタンクホルダ130に載置する。注入ノズル150に連結するアダプタ140に供給チューブ160を、排出ノズル151に連結するアダプタ140に排出チューブ161を、それぞれ接続する。空圧チューブ155に培地空圧用のシリンジを、排出チューブ161には、培地排出用のシリンジを取り付ける。これらの作業は、器具類の汚染を避けるため、クリーンベンチ内で行なうことが好ましい。なお、細胞培養器具100において使用される部品や器具類については、必要に応じてオートクレーブによる滅菌等の前処理を施しておいても良い。
次に、チャンバ101を、顕微鏡装置900のステージ902に載置する。次に、チャンバ101の固定板117a、固定板117bに備えられる3つの連結ねじ120の雄ねじ部を、倒立顕微鏡のステージ902に形成される雌ねじに連結させ、固定する。なお、ディッシュ収容部104内の落下菌等による汚染を防止するため、蓋体102は、ディッシュ300を出し入れする以外は、閉鎖状態で取り扱うのが望ましい。供給チューブ160と、排出チューブ161とに接続したシリンジは、操作を容易にするため、筐体901の外側に引き出しておいても良い。
さらに、チューブ口金具182に、空気の温度、湿度、成分等が調整可能な空調装置に接続した給気チューブ190と、排気チューブ191とをそれぞれ連結する。次に、ディッシュ収容部104が試料培養に最適な任意の温度、湿度、CO2濃度に達するよう、空調装置を作動させ、給気チューブ190から調整空気をディッシュ収容部104へ供給し、培養空間を満たす。
ここで、注入ノズル150と、排出ノズル151の位置を調整する。注入ノズル150の先端部164と、排出ノズル151の先端部168とが、底面部115に対して水平になるような角度まで、注入ノズル150の基端部163と、排出ノズル151の基端部167とを、側壁部105a方向へ移動させる。さらに、注入ノズル150の軸部162と、排出ノズルの軸部166とを、外方へ向かって摺動させて引き出し、ディッシュ300をディッシュ収容部104に格納する際、ディッシュ300が注入ノズル150あるいは、排出ノズル151に接触しない位置に移動して、支持部126a、126bに保持させる(図7、図8参照)。
ディッシュ収容部104の底面部115に固定されるガラス板121bの上に、細胞や菌等の試料を収容したディッシュ300を載置する。蓋体102を、反時計回りに連結部112で回動させて、ディッシュ収容部104を開放し、ディッシュ300をガラス板121b上に載置する。その後、蓋体102を、時計回りに連結部112で回動して閉鎖状態に戻す。これらの操作においては、落下菌等による汚染防止のため、ディッシュ300は蓋を装着した状態で取り扱い、蓋体102を閉める寸前に、蓋を取り除くのが望ましい。なお、チャンバ101ごと、ディッシュ300をインキュベータ等に入れて培養を行なった後、ディッシュ300を収容したチャンバ101を顕微鏡装置900へ載置して、試料観察を開始することも出来る。また、クリーンベンチ等でこれらの作業をしてから、顕微鏡装置900へ載置しても良い。
【0036】
次に、培地交換の方法について説明する。まず、ディッシュ300から退避した場所に位置する注入ノズル150の注入口165と、排出ノズル151の吸入口169とを、ディッシュ300の中へ挿入する。注入ノズル150の軸部162と、排出ノズル151の軸部166とを、ディッシュ300へ向かって摺動させ、先端部164と、先端部168とが、ディッシュ300の上空に位置するように調整する。注入ノズル150の先端部164と、排出ノズル151の吸入口169とが、底面部115に対して垂直になるように、注入ノズル150の基端部163と、排出ノズル151の基端部167を、側壁部105c方向へ移動させ、注入口165と、吸入口169とを、ディッシュ300の中へ挿入し、前側へ倒す(図4参照)。
【0037】
次に、排出チューブ161に接続される培地排出用シリンジの内筒を引き、ディッシュ300内の培地を吸入口169から吸い出す。この時、吸入口169は、ディッシュ300の底面に接触しない程度の間隔を開けた場所に位置し、ほとんどの培地を吸入することが可能である。その後、空圧チューブ155に接続された、培地空圧用のシリンジの内筒を押圧し、リザーブタンク310から、培地等の溶液を供給チューブ160に押し出し、注入口165からディッシュ300へと注ぐ。リザーブタンク310と、供給チューブ160とは、筐体内で常に任意の温度に保持されているため、培養に適した温度の溶液をディッシュ300へ供給することが可能である。
【0038】
以上、本実施形態の細胞培養器具100によれば、顕微鏡装置のステージ上への固定手段は、3つの連結ねじ120のみであり、チャンバ101の着脱を容易に行なうことが可能である。また、気密構造のディッシュ収容部104に、ディッシュ300を格納したまま、チャンバ101を持ち運ぶことが可能であるため、外気によるディッシュ300の汚染や、有害な生体試料が外部に漏れるような事態を防ぐことが出来る。
【0039】
リザーブタンク310は、チャンバ101に保持されているため、顕微鏡装置のステージ上以外の場所、例えば、クリーンベンチやインキュベータ等での培地交換操作にも対応できる。また、顕微鏡装置を筐体901で覆うことによって、リザーブタンク310や、供給チューブ160も筐体901内に保持されていることから、これらの中の溶液は、一定の温度に保たれるため、ウォーターバスやポンプ等の大きなスペースを必要とする装置を使用せずに作業が可能である。さらに、リザーブタンク310は、空圧による送液を行なうため、リザーブタンク310内の温度変化を引き起こさずに、ディッシュ300へ溶液を供給することが可能である。
【0040】
次に、本発明を適用した第二の実施形態について説明する。
【0041】
図11は、第二の実施形態に係る細胞培養器具200の正面図、図12は、第二の実施形態に係る細胞培養器具200の側面図である。本実施形態の細胞培養器具200は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、本実施形態の細胞培養器具200は、チャンバ101の固定板117aと、117bとを架橋する、把手201を有する。把手201は、回動自在の取手204と、注入ノズル150と、排出ノズル151とを、それぞれ跨って、固定板117a、117bに支持される脚部203と、脚部203と取手204とを、回動自在に連結する連結部材202とを備えている。
【0042】
把手201の脚部203は、固定板117a、117bにおいて、蓋体102を連結部112で回動させた時、蓋体102の角が、接触しない位置に配置される。なお、取手204は、連結部材202を回転中心として回動させた時、蓋体102に接触しない角度範囲内において回動自在に拘束される構成とすることができる。この回動を可能とする構成としては、例えば、蓋体102と水平となる角度位置で係止する係止構造が挙げられる。係止する構造部材としては、例えば、爪、ストッパ等を用いることができる。
【0043】
このような構成により、第二の実施形態に係る細胞培養器具200は、第一の実施形態に係る細胞培養器具100と同様の効果を奏する。さらに、把手201によって、より容易にチャンバ101を持ち運ぶことが出来る。例えば、細胞を具えたディッシュ300を細胞培養器具200に設置した状態で、細胞培養装置内に設置して、細胞の培養を行った後、細胞培養器具200を細胞培養装置から取り出し、そのまま顕微鏡装置900のステージ902上に設置すれば、細胞の培養から観察へ移行する為にかかる時間の節約ができ、より迅速に生きた細胞の観察をすることが可能となる。その際、細胞培養器具200にリザーブタンク310を設置した状態で細胞培養装置内に設置すれば、リザーブタンク310内の溶液の温度も、培養時の温度に保持されるため、そのまま観察に移行できるため、改めて液温を調整する必要が無く、迅速な観察が可能である。
【0044】
また、脚部203は、ノズルを跨って支持されるため、ノズルの操作を妨げない構成とされている。取手204は、蓋体102に対して水平な位置まで移動が可能であるため、顕微鏡装置のステージ上の限られた空間でも設置可能であり、蓋体102の開閉操作、ディッシュ300へのアプローチ、透過孔119aからの観察、又は、入射光の取り込み等を妨害せずに、使用することが出来る。
【0045】
把手の形状は、上述のものに限定されず、顕微鏡のステージ上で使用可能なものであれば、どのような形状としても良い。また、把手の数は1つに限らず、複数の把手を設けてもよい。
【0046】
以上が、本発明の実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る細胞培養器具100の平面図である。
【図2】第一の実施形態に係る細胞培養器具100の蓋体102が開放状態の平面図である。
【図3】図1における細胞培養器具100の正面図である。
【図4】図1における細胞培養器具100のI−I’線断面図である。
【図5】(a)図1における支持部126aの断面図である。(b)図1における支持部126bの断面図である。
【図6】(a)注入ノズル150の構成図である。(b)図6(a)における注入ノズル150のC矢視図である。(c)図6(a)における注入ノズル150のD矢視図である。(d)排出ノズル151の構成図である。(e)図6(d)の排出ノズル151のE矢視図である。(f)図6(d)の排出ノズル151のF矢視図である。
【図7】本発明の第一の実施形態である細胞培養器具100において、注入ノズル150と排出ノズル151とが、ディッシュ300から退避する位置に保持される状態の平面図である。
【図8】図7の細胞培養器具100のII−II’線断面図である。
【図9】顕微鏡装置400の断面を示す概略構成図である。
【図10】顕微鏡装置900の側面図である。
【図11】第二の実施形態に係る細胞培養器具200の正面図である。
【図12】第二の実施形態に係る細胞培養器具200の側面図である。
【符号の説明】
【0048】
100、200・・・細胞培養器具、101・・・チャンバ、102・・・蓋体、104・・・ディッシュ収容部、105a、105b、105c、105d・・・側壁部、106・・・溝、107・・・貫通孔、111・・・上面部、112・・・連結部、115・・・底面部、116a、116b、128・・・内フランジ、117a、117b・・・固定板、118・・・貫通孔、119a、119b・・・透過孔、120・・・固定ねじ、121a、121b・・・ガラス板、122・・・ノズル支持孔、123、131・・・O−リング、126a、126b・・・支持部、129・・・雌ねじ、130・・・タンクホルダ、132・・・ノズル支持ねじ、133・・・ワッシャ、134・・・凹部、140・・・アダプタ、150・・・注入ノズル、151・・・排出ノズル、155・・・空圧チューブ、157・・・空圧ガラス管、156・・・送液ガラス管、160・・・供給チューブ、161・・・排出チューブ、163、167・・・基端部、164、168・・・先端部、162、166・・・軸部、165・・・注入口、169・・・吸入口、180・・・給気口、181・・・排気口、182・・・ホース口金具、190・・・給気チューブ、191・・・排気チューブ、201・・・把手、202・・・連結部材、203・・・脚部、204・・・取手、300・・・ディッシュ、310・・・リザーブタンク、400、9009・・・顕微鏡装置、401、901・・・筐体、402、902・・・ステージ、403・・・対物レンズ系、404・・・結像レンズ系、405・・・断熱部材、500・・・空調装置、501、603・・・温度センサ、502、601・・・ヒータ、503・・・シリコンチューブ、504・・・ガラス容器、600・・・温度制御装置、602・・・ファン、604・・・ダクト、700・・・撮像装置、903・・・接眼レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養器具及びこれを備えた顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡装置により、生細胞や微生物等の生体試料の経時変化を観察する場合には、ステージ上で細胞を培養しながら試料を観察する方法が用いられている。例えば、顕微鏡観察下において、観察試料のインターバル撮影を行ない、タイムラプスムービーを取得するような方法である。その際には、生細胞や微生物等を培養するため培地交換、温度や湿度等の培養条件管理、薬理試験に使用する薬剤の添加、排出等の操作を行なう必要がある。
【0003】
具体的には、ステージ上で生細胞や微生物等の培養に必要な温度や湿度を管理し、観察試料に液体を注入、排出するためのノズルを備えた顕微鏡用培養器が提供されている(特許文献1参照)。この培養器によれば、ディッシュを収容可能なチャンバの底面部と天面部とにそれぞれ加温プレートと、ディッシュの周囲に設けられた水槽によって、温度、湿度を管理し、さらにチャンバの蓋を開閉することなく、ディッシュに液体を供給、又はディッシュから液体を排出することが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−141143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の顕微鏡用培養器を使用するためには、ディッシュの蓋体を貫通するチューブにより液体の供給又は排出を行なうための、チューブ挿入穴を備える専用のディッシュ蓋を用いねばならない。また、ディッシュ着脱の際には、容器ホルダへの設置や、チューブの配管等の煩雑な作業が必要となる。また、チャンバは密閉構造ではなく、操作ミス等によって試料や薬剤等が外部に流出した場合、周辺器具にまで汚染が拡大する危険性があった。
【0006】
本発明の細胞培養器具は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、顕微鏡装置のステージ上で行なわれる生体培養と試料観察において、培養器具を密閉した状態の操作が可能である細胞培養器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、上面が開口し、培養容器を着脱自在に収容する培養容器収容部を構成する本体と、前記開口を覆って、前記培養容器収容部を有する前記本体を密閉させ、少なくとも一部に光透過部材を有する蓋体と、を備え、前記蓋体は、少なくとも一部に光透過性領域を有し、前記本体は、前記培養容器収容部に配置される培養容器に、本体外部からの液体を供給するための第一のノズルと、前記培養容器収容部に配置される前記培養容器から液体を、本体外部に排出するための第二のノズルと、前記本体外部から、前記培養容器収容部へ気体を送り込む給気口と、前記培養容器収容部の気体を、前記培養容器収容部の外部に排気する排気口と、を有し、前記本体底面部の少なくとも前記培養容器の設置位置に、光透過孔と、前記光透過孔に設けられる光透過部材と、を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明を適用した第一の実施形態にかかる細胞培養器具について説明する。以下において説明する実施形態は、タイムラプス観察が可能な倒立顕微鏡装置によって、細胞を培養しつつ行なわれる試料観察に、本発明を適用した例である。勿論、本発明の細胞培養器具の用途は、この場合に限られない。
【0009】
以下の実施形態で述べる細胞培養器具は、培養器を着脱自在に収容する培養空間を有し、上面が開口し、培養器を着脱可能に収容するディッシュ収容部104を構成するチャンバ101と、前記開口を覆って前記培養空間を気密する蓋体102と、を備える。
【0010】
図1に、本発明の第一の実施形態である細胞培養器具100の平面図を示す。本図に示した細胞培養器具100は、培養器として機能するディッシュ300を着脱自在に収容するチャンバ101と、その蓋体102と、調整気体、例えば、窒素、酸素、二酸化炭素、空気等の気体を、目的に応じて、ディッシュ収容部104へ給気する給気チューブ190と、ディッシュ収容部104内気体を排気する排気チューブ191と、培養液をディッシュ300へ供給する注入ノズル150と、ディッシュ300から培養液を排出する排出ノズル151とを備える。
【0011】
図2は第一の実施形態に係る細胞培養器具100の蓋体102が開放状態の平面図、図3は図1における細胞培養器具100の正面図、図4は図1の細胞培養器具100のI−I’線断面図である。
【0012】
本体であるチャンバ101は、方形の底面部115と、4つの側壁部105a、105b、105c、105dと、固定板117a、117bと、支持部126a、126bと、タンクホルダ130と、を有する中空の箱型であり、円柱状の中空部分である、ディッシュ収容部104を備える。さらに、チャンバ101の材料としては、チタン、銅、亜鉛、ステンレススチール、アルミニウム等の金属や合金、セラミックス等の非金属無機材料を用いることができる。大きさは、通常の顕微鏡のステージ上で使用できるサイズであれば足りる。
【0013】
本発明において使用されるディッシュ300は、図示しない蓋とともに、平滑なガラス、プラスチック等の光透過性材料で形成された、平面視円形の細胞培養容器である。内径35mm、深さは10mmに構成されており、培養細胞は底面部に付着して増殖する。また、細胞培養に用いる培地の容量は2.5ml〜3.0ml程度の構成となっている。ディッシュ300は、ディッシュ収容部104の光透過性領域上に着脱自在に収容され、顕微鏡装置によってディッシュ300の内部の生体試料を観察することが可能である。また、本実施形態の細胞培養器具100に用いる際には、蓋は使用せずに用いることができる。なお、ディッシュは上述のものに限定されず、他のサイズや形状のディッシュを用いても良い。
【0014】
ディッシュ収容部104は、箱型のチャンバ101における円柱形状の中空部分であり、ディッシュ300を収容して、試料の培養空間として機能する。ディッシュ収容部104の円半径は、ディッシュ300の縁部近傍に位置する試料を、円の中心に合わせる事が可能な範囲、すなわち、ディッシュ300の外径程度の長さを備えることが望ましい。ディッシュ300を用いた場合では、75mm程度あれば足りるが、これに限られることなく、必要に応じて適宜サイズを選択できる。また、ディッシュ収容部104は円柱形状に限定されず、方形としてもよい。
ディッシュ収容部104の底面部115には、後述する蓋体102の光透過領域に対応する位置関係で、光透過性領域を有する。具体的には、中心にディッシュ径よりも一回り小さな円形の透過孔119bを備え、ディッシュ収容部104の下方から照射される光を、ディッシュ収容部104へ透過させる。透過孔119bは、底面部115を貫通し、透過孔119bの内周面には、透過孔119bの中心へ向かって延出する内フランジ116bが形成されている。内フランジ116bの上面には、透過孔119bに嵌合する円盤状のガラス板121bが載置され、接着剤等で内周面に固定されている。このガラス板121b上に、ディッシュ300を載置することで、光を透過させて試料観察が可能な構成となっている。ガラス板121bは、光透過性であれば、アクリル樹脂等、他の素材を用いてもよい。
【0015】
ディッシュ収容部104の上部開口周縁には、溝106が形成されている。溝106には、蓋体102が閉鎖状態の際に、ディッシュ収容部104を気密シールするための、O−リング123が載置されている。O−リング123の材料としては、シリコン、フッ素樹脂、ニトリル樹脂、スチロール樹脂等を用いることができる。O−リング123は、溝106に接着剤等による接着、又は、溝106に嵌めて保持される。
【0016】
側壁部105b、105dは、中心に、後に説明する注入ノズル150と、排出ノズル151とを通すための貫通孔107がそれぞれ形成されている。また、側壁部105cには、側壁部105b側の上部に給気口180と、側壁部105d側の下部に排気口181とが形成される。給気口180と、排気口181とは、側壁部105cを貫通しており、それぞれにチューブ口金具182が備え付けられている。
【0017】
チューブ口金具は、ディッシュ収容部104内への給気、又はディッシュ収容部104内からの排気に使用可能な貫通孔を有するものならばどのような構成のものを用いてもよく、例えば、チャンバ101の側壁部105cに設けた雌ねじに対して、雄ねじで連結するものや、チャンバ101内側と外側から、側壁部105cを挟んでねじ等で部品を連結するものであってもよい。給気口180のチューブ口金具182には給気チューブ190が、排気口181のチューブ口金具182には排気チューブ191がそれぞれ接続される。また、給気チューブ190、排気チューブ191は、シリコンやビニール、ゴム等、生体試料に無害な材料であれば、どのようなものを用いても良い。
【0018】
固定板117a、117bは、側壁部105d、105bの底面部115から、外側方向に延出しており、側壁部105d側の固定板117aに1箇所、側壁部105b側の固定板117bに2箇所の計3箇所に、貫通孔118が設けられている。貫通孔118には、固定ねじ120がそれぞれ挿入されており、これが顕微鏡のステージ上のねじ孔に形成される3つの雌ねじと連結することによって、チャンバ101は顕微鏡に位置固定される。
【0019】
蓋体102は、ディッシュ収容部104の上面開口を覆う方形の板であり、連結部112を回転中心として、チャンバ101の上面部111に、回動自在に連結されている(図2を参照)。連結部112は、上面部111の、側壁部105dと、105aとの角に形成される。また、蓋体102は、少なくとも一部に光透過性領域を有する。具体的には、蓋体102の中心に、蓋体102を貫通する円形の透過孔119aが設けられている。透過孔119aは、ディッシュ収容部104の開口の円周より一回り小さく、ディッシュ収容部104へ光を透過し、ディッシュ300の観察を妨げない程度の大きさで構成されている。透過孔119aの内周面についても、透過孔119bと同様に、透過孔119aの中心へ向かって延出する内フランジ116aが形成されている。内フランジ116aの上面には、円盤状のガラス板121aが支持され、接着剤等で内周面に固定されている。
【0020】
図5(a)は、図1における支持部126aの拡大断面図、図5(b)は、図1における支持部126bの拡大断面図である。支持部126a、126bは、側壁部105b、105dから外方に突出するようにして設置される長方形の部材であり、O−リング131と、ワッシャ133と、ノズル支持ねじ132とを備える。支持部126a、126bは、中心に貫通孔であるノズル支持孔122を有し、側壁部105dに形成される貫通孔107は、支持部126aのノズル支持孔122に、側壁部105bに形成される貫通孔107は、支持部126bのノズル支持孔122に、それぞれ連結するように設置されている。ノズル支持孔122は、チャンバ101側の内周面縁部に、内フランジ128が形成され、さらに、外方側の内周面には、雌ねじ129を備える。
支持部126aのノズル支持孔122には、注入ノズル150が、支持部126bのノズル支持孔122には、排出ノズル151が貫通している。以下、構造を具体的に説明する。まず、内フランジ128によって、注入ノズル150又は排出ノズル151の軸部に162、166に挿通された、O−リング131と、ワッシャ133が支持される。O−リング131の内周円は、注入ノズル150、及び、排出ノズル151の外径と同径以下で、ぴったりと嵌合するものを用いるのが望ましい。さらに、ノズル支持ねじ132に形成される雄ねじが、雌ねじ129に連結し、回転によって、チャンバ101方向へ移動することにより、ワッシャ133がO−リング131を内フランジ128に押し付ける。O−リング131は、ノズル支持孔122を気密シールすると共に、注入ノズル150、及び、排出ノズル151の軸部162と、軸部166とを、ディッシュ収容部104の気密状態を保持しながら、摺動、及び、回転自在に支持する。なお、排出ノズル151の軸部166は、連結部112を回転中心として蓋体102を回動させた際に、連結部112の形成される角の対角が、排出ノズル151に連結するアダプタ140と、基端部167とに、接触しない位置へと、摺動させることができる。
【0021】
注入ノズル150と、排出ノズル151とは、支持部126a、126bによって、軸部162、166を軸方向に摺動できる(図6参照)。さらに、それぞれの軸部162、166を中心軸として、回動自在に支持されている。このような構成により、ディッシュ収容部104内において、注入ノズル150と、排出ノズル151との先端の位置を、移動、及び、固定する事が可能である。また、ノズル支持ねじ132に形成される雄ねじの、雌ねじ129に対する回転の程度によって、支持強度を調整することも出来る。
【0022】
支持部126aは、側壁部105c側の端部にタンクホルダ130を備えている。タンクホルダ130は、円形の凹部134を備えており、ここに培養液等を貯留するリザーブタンク310を保持する。タンクホルダ130の大きさは、本実施形態において使用されるリザーブタンク310のサイズに合わせて構成されている。なお、タンクホルダ130のサイズや形状は、使用する培養液貯留容器の種類や、大きさに合わせて適宜選択される。
【0023】
リザーブタンク310には、空圧チューブ155と、供給チューブ160とが接続されている。リザーブタンク310は栓320によって、内部が気密構造に構成されている。栓320は中心部がシリコンで形成され、前記シリコンを、先端がリザーブタンク310に貯留される溶液に浸かるよう構成された送液ガラス管156と、先端が液面より上部に位置する空圧ガラス管157とが貫通する。空圧ガラス管157の、リザーブタンク310外側の先端には、空圧チューブ155の一端が接続され、他端は、後述の空圧手段(図示しない)に接続されている。送液ガラス管156のリザーブタンク310外側の先端には、供給チューブ160の一端が接続され、供給チューブ160の他端はアダプタ140を介して注入ノズル150に連結されている。
【0024】
上記のような構成により、溶液の供給経路は、空圧チューブ155と空圧ガラス管157を経てリザーブタンク310内に導入される空気によって、リザーブタンク310内に貯留される溶液の液面が加圧され、送液ガラス管156へ溶液が押し出される。リザーブタンク310内の空圧により押し出された溶液は、送液ガラス管156から、供給チューブ160と、アダプタ140とを経て、注入ノズル150へと送られ、注入ノズル150の注入口165から、ディッシュ300に注がれる。その際、空気と水との熱伝導性は小さいために、リザーブタンク310内の溶液の温度変化を引き起こさずに、ディッシュ300への供給が可能である。
【0025】
ここで、培地等の溶液を空圧輸送するための空圧手段について説明する。空圧チューブ155に接続するポンプ(図示しない)は、リザーブタンク310内に空気を導入して加圧可能であれば、どのようなものを用いても良い。例えば、空圧チューブ155にシリンジを直接接続して、手動で空圧する方法や、シリンジポンプ等の装置を使用して、無人で培地交換をするような方法を用いる事も出来る。なお、排出チューブ161に接続するポンプについても同様に、ディッシュ300の培養液を吸い出せるものであれば、どのようなものを用いても良い。なお、空圧チューブ155に接続されるシリンジには、リザーブタンク310内の汚染を防ぐため、滅菌フィルタ等を設置してもよい。同様に、滅菌フィルタは、空圧チューブ155や、空圧ガラス管157にも設置することが出来る。
【0026】
次に、注入ノズル150について説明する。図6(a)は、注入ノズル150の構成図である。図6(b)は、図6(a)における注入ノズル150のC矢視図、図6(c)は、図6(a)における注入ノズル150のD矢視図である。図7は、本発明の第一の実施形態に係る細胞培養器具100において、注入ノズル150と排出ノズル151とが、ディッシュ300から退避する位置に保持される状態の平面図である。図8は、図7の細胞培養器具100のI−II’線断面図である。
【0027】
注入ノズル150は、中空の円筒であって、リザーブタンク310に接続される供給チューブ160に、アダプタ140を介して連結している。注入ノズル150は、ディッシュ300に直接培地等の溶液を流し込むための注入口165と、先端部164と、O−リング131、ワッシャ133、ノズル支持ねじ132を挿通し、側壁部105dを貫通する軸部162と、アダプタ140に接続される基端部163とからなる。先端部164は、底面部115に向かって垂直な角度位置で支持されている時、ディッシュ300の深さの6分目程度、すなわち、溶液の注入時に、試料を巻き上げない程度の深さに、注入口165が位置するように構成されている。
【0028】
さらに、基端部163と、先端部164のそれぞれの延長方向は、軸部162に対して傾斜角θを備える(図6(a)参照)。本実施形態では、傾斜角θは135°に構成されている。よって、先端部164をディッシュ300から退避させるために、底面部115に対して水平に位置させた場合、又は、使用時に底面部115に向かって垂直に位置させる場合に、基端部163とアダプタ140を、底面部115に水平になるまで倒す必要が無くなる。よって、先端部164と基端部163が直線的に構成されている場合に比べて、供給チューブ160の引き回しによる潰れを回避し、容易に取り扱える構成となっている。
図6(d)は、排出ノズル151の構成図、図6(e)は、図6(d)の排出ノズル151のE矢視図、図6(f)は、図6(d)の排出ノズル151のF矢視図である。排出ノズル151は、注入ノズル150とは左右対照の構造となっており、廃液を外部へ排出するための排出チューブ161に、アダプタ140を介して接続されている。排出ノズル151は、ディッシュ300にから直接培地を吸い上げるための吸入口169と、先端部168と、O−リング131、ワッシャ133、ノズル支持ねじ132を挿通し、側壁部105bを貫通する軸部166と、アダプタ140に接続される基端部167とからなる。先端部168が底面部115に垂直な角度位置で支持されている時、吸入口169は、ディッシュ300の底面、すなわち、観察試料に接触しない程度の間隔を開けた深さに位置し、溶液の吸入時に、底面に貼り付いた試料を巻き込まないよう構成されている。
【0029】
基端部163と同様に、基端部167は、先端部168に対して、135°の傾斜角θを備え、操作に際して、基端部167を底面部115に対して水平な角度位置まで回転させる必要の無いように構成されている。なお、傾斜角θは、135°程度が望ましいが、器具類との位置関係によっては、他の角度としてもよい。
ここで、第一の実施形態における、温度及び、湿度の調整方法について説明する。顕微鏡装置によって生細胞のタイムラプス観察を行う際には、ステージ上で安定した培養条件を維持する必要がある。そこで、本発明の細胞培養器具100は、温度、湿度、成分等を調整した調整空気を、密閉されたディッシュ収容部104内への給気する構成をとる。これらは、別に設けられた空調装置によって行なう。
空調装置は、例えば、ヒータと温度センサとを備え、培養に適した温度に保たれる蒸留水の満たされた容器に、CO25%空気を、滅菌フィルタを通して導入し、バブリングによって高湿度のCO25%空気を得るようなものが考えられる。高湿度のCO25%空気は、給気チューブ190と、給気チューブ190に接続される給気口180のチューブ口金具182とを介して、ディッシュ収容部104に供給され、排気口181のチューブ口金具182と、チューブ口金具182に接続された排気チューブ191とを経て、外部に排気される(図7参照)。よって、ディッシュ収容部104は、常に培養に適した温度と、高い湿度を持つCO25%濃度の空気に満たされる。よって、ディッシュ300に満たされる液体培地は、高い湿度によって蒸発が押えられ、さらにCO2ガスにより培地のpHの変化が抑えられる。従って、試料の培養条件に合わせた環境を、ディッシュ収容部104内に実現することが可能となる。なお、空気の成分は、二酸化炭素に限られず、窒素、酸素等についても、調整することが出来る。なお、空気の調整方法はこれに限られず、培養条件に適した温度・湿度・空気成分を調整可能であれば、どのような方法を用いても良い。
【0030】
図9は顕微鏡装置400の断面を示す概略構成図、図10は顕微鏡装置900の側面図である。本実施形態の細胞培養器具100は、例えば、顕微鏡装置900や、400等で使用することができる。
【0031】
図9に示すように、顕微鏡装置400は、ディッシュ収容部104に調整空気を送り込む、加湿装置500、顕微鏡装置400と外気を遮断可能な筐体401内の温度を制御するための温度制御装置600、撮像装置700を備える。細胞培養器具100は、ステージ402に設けられる雌ねじに、チャンバ101の固定板117a、固定板117bに備えられる3つの連結ねじ120の雄ねじ部を連結して、固定される。
【0032】
加湿装置500は、上述したように、ヒータ502と温度センサ501によって、培養に適した温度、例えば、37℃に保たれる蒸留水の満たされたガラス容器504に、CO25%空気を、シリコンチューブ503によって、滅菌フィルタを通して導入し、バブリングによって高湿度のCO25%空気を得る。高湿度のCO25%空気は、給気チューブ190によって、ディッシュ収容部104に供給される。
【0033】
温度制御装置600は、筐体401内の温度調整をするためのヒータ601、筐体401内へ調整空気を送風するためのファン602、温度センサ603を備える。温度センサ603は、筐体401内の温度を検出して、一定の温度、例えば37℃を保つようヒータ601を制御する。温風は、ファン602によって、ダクト604を経て、顕微鏡装置400の上部へ送られる。このような構成により、筐体401中を温風が循環することによって、リザーブタンク310や、各チューブを流れる液体は、ディッシュ収容部104内の温度と略同じ温度となるように、一定に保持することが可能である。なお、ヒータ601は、冷却装置としても良く、また両方の機能を備えるものであっても良い。
【0034】
撮像装置700は、断熱部材405を介して筐体401と連結されており、対物レンズ系403、結像レンズ系404を経て、試料の画像データを取得する。
【0035】
図10に示すように、顕微鏡装置900は、接眼レンズ903と、熱源となる機器類のみが外部に配置され、それ以外の部分は顕微鏡装置900が外気と隔離されるように、筐体901に覆われている。さらに、筐体901には、筐体901の内部に調整空気を送り込むための、空調装置(図示しない)が接続されている。このような構成により、リザーブタンク310内の液体は常にディッシュ収容部104内の温度と略同じ適温に保たれ、チューブ内を輸送される際の温度変化を防ぐことが可能である。また、ステージ902上には、細胞培養器具100に備えられる、3つの連結ねじ120の雄ねじ部を連結させるための、雌ねじが形成されている。
次に、細胞培養器具100を顕微鏡装置900において、実際に使用する際の使用方法について説明する。
まず、アダプタ140、注入ノズル150、排出ノズル151を取り付けたチャンバ101に、必要な器具類をセットする空圧チューブ155に接続された空圧ガラス管157と、供給チューブ160に接続された送液ガラス管156とを連結させたリザーブタンク310に、培養液を満たしてタンクホルダ130に載置する。注入ノズル150に連結するアダプタ140に供給チューブ160を、排出ノズル151に連結するアダプタ140に排出チューブ161を、それぞれ接続する。空圧チューブ155に培地空圧用のシリンジを、排出チューブ161には、培地排出用のシリンジを取り付ける。これらの作業は、器具類の汚染を避けるため、クリーンベンチ内で行なうことが好ましい。なお、細胞培養器具100において使用される部品や器具類については、必要に応じてオートクレーブによる滅菌等の前処理を施しておいても良い。
次に、チャンバ101を、顕微鏡装置900のステージ902に載置する。次に、チャンバ101の固定板117a、固定板117bに備えられる3つの連結ねじ120の雄ねじ部を、倒立顕微鏡のステージ902に形成される雌ねじに連結させ、固定する。なお、ディッシュ収容部104内の落下菌等による汚染を防止するため、蓋体102は、ディッシュ300を出し入れする以外は、閉鎖状態で取り扱うのが望ましい。供給チューブ160と、排出チューブ161とに接続したシリンジは、操作を容易にするため、筐体901の外側に引き出しておいても良い。
さらに、チューブ口金具182に、空気の温度、湿度、成分等が調整可能な空調装置に接続した給気チューブ190と、排気チューブ191とをそれぞれ連結する。次に、ディッシュ収容部104が試料培養に最適な任意の温度、湿度、CO2濃度に達するよう、空調装置を作動させ、給気チューブ190から調整空気をディッシュ収容部104へ供給し、培養空間を満たす。
ここで、注入ノズル150と、排出ノズル151の位置を調整する。注入ノズル150の先端部164と、排出ノズル151の先端部168とが、底面部115に対して水平になるような角度まで、注入ノズル150の基端部163と、排出ノズル151の基端部167とを、側壁部105a方向へ移動させる。さらに、注入ノズル150の軸部162と、排出ノズルの軸部166とを、外方へ向かって摺動させて引き出し、ディッシュ300をディッシュ収容部104に格納する際、ディッシュ300が注入ノズル150あるいは、排出ノズル151に接触しない位置に移動して、支持部126a、126bに保持させる(図7、図8参照)。
ディッシュ収容部104の底面部115に固定されるガラス板121bの上に、細胞や菌等の試料を収容したディッシュ300を載置する。蓋体102を、反時計回りに連結部112で回動させて、ディッシュ収容部104を開放し、ディッシュ300をガラス板121b上に載置する。その後、蓋体102を、時計回りに連結部112で回動して閉鎖状態に戻す。これらの操作においては、落下菌等による汚染防止のため、ディッシュ300は蓋を装着した状態で取り扱い、蓋体102を閉める寸前に、蓋を取り除くのが望ましい。なお、チャンバ101ごと、ディッシュ300をインキュベータ等に入れて培養を行なった後、ディッシュ300を収容したチャンバ101を顕微鏡装置900へ載置して、試料観察を開始することも出来る。また、クリーンベンチ等でこれらの作業をしてから、顕微鏡装置900へ載置しても良い。
【0036】
次に、培地交換の方法について説明する。まず、ディッシュ300から退避した場所に位置する注入ノズル150の注入口165と、排出ノズル151の吸入口169とを、ディッシュ300の中へ挿入する。注入ノズル150の軸部162と、排出ノズル151の軸部166とを、ディッシュ300へ向かって摺動させ、先端部164と、先端部168とが、ディッシュ300の上空に位置するように調整する。注入ノズル150の先端部164と、排出ノズル151の吸入口169とが、底面部115に対して垂直になるように、注入ノズル150の基端部163と、排出ノズル151の基端部167を、側壁部105c方向へ移動させ、注入口165と、吸入口169とを、ディッシュ300の中へ挿入し、前側へ倒す(図4参照)。
【0037】
次に、排出チューブ161に接続される培地排出用シリンジの内筒を引き、ディッシュ300内の培地を吸入口169から吸い出す。この時、吸入口169は、ディッシュ300の底面に接触しない程度の間隔を開けた場所に位置し、ほとんどの培地を吸入することが可能である。その後、空圧チューブ155に接続された、培地空圧用のシリンジの内筒を押圧し、リザーブタンク310から、培地等の溶液を供給チューブ160に押し出し、注入口165からディッシュ300へと注ぐ。リザーブタンク310と、供給チューブ160とは、筐体内で常に任意の温度に保持されているため、培養に適した温度の溶液をディッシュ300へ供給することが可能である。
【0038】
以上、本実施形態の細胞培養器具100によれば、顕微鏡装置のステージ上への固定手段は、3つの連結ねじ120のみであり、チャンバ101の着脱を容易に行なうことが可能である。また、気密構造のディッシュ収容部104に、ディッシュ300を格納したまま、チャンバ101を持ち運ぶことが可能であるため、外気によるディッシュ300の汚染や、有害な生体試料が外部に漏れるような事態を防ぐことが出来る。
【0039】
リザーブタンク310は、チャンバ101に保持されているため、顕微鏡装置のステージ上以外の場所、例えば、クリーンベンチやインキュベータ等での培地交換操作にも対応できる。また、顕微鏡装置を筐体901で覆うことによって、リザーブタンク310や、供給チューブ160も筐体901内に保持されていることから、これらの中の溶液は、一定の温度に保たれるため、ウォーターバスやポンプ等の大きなスペースを必要とする装置を使用せずに作業が可能である。さらに、リザーブタンク310は、空圧による送液を行なうため、リザーブタンク310内の温度変化を引き起こさずに、ディッシュ300へ溶液を供給することが可能である。
【0040】
次に、本発明を適用した第二の実施形態について説明する。
【0041】
図11は、第二の実施形態に係る細胞培養器具200の正面図、図12は、第二の実施形態に係る細胞培養器具200の側面図である。本実施形態の細胞培養器具200は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、本実施形態の細胞培養器具200は、チャンバ101の固定板117aと、117bとを架橋する、把手201を有する。把手201は、回動自在の取手204と、注入ノズル150と、排出ノズル151とを、それぞれ跨って、固定板117a、117bに支持される脚部203と、脚部203と取手204とを、回動自在に連結する連結部材202とを備えている。
【0042】
把手201の脚部203は、固定板117a、117bにおいて、蓋体102を連結部112で回動させた時、蓋体102の角が、接触しない位置に配置される。なお、取手204は、連結部材202を回転中心として回動させた時、蓋体102に接触しない角度範囲内において回動自在に拘束される構成とすることができる。この回動を可能とする構成としては、例えば、蓋体102と水平となる角度位置で係止する係止構造が挙げられる。係止する構造部材としては、例えば、爪、ストッパ等を用いることができる。
【0043】
このような構成により、第二の実施形態に係る細胞培養器具200は、第一の実施形態に係る細胞培養器具100と同様の効果を奏する。さらに、把手201によって、より容易にチャンバ101を持ち運ぶことが出来る。例えば、細胞を具えたディッシュ300を細胞培養器具200に設置した状態で、細胞培養装置内に設置して、細胞の培養を行った後、細胞培養器具200を細胞培養装置から取り出し、そのまま顕微鏡装置900のステージ902上に設置すれば、細胞の培養から観察へ移行する為にかかる時間の節約ができ、より迅速に生きた細胞の観察をすることが可能となる。その際、細胞培養器具200にリザーブタンク310を設置した状態で細胞培養装置内に設置すれば、リザーブタンク310内の溶液の温度も、培養時の温度に保持されるため、そのまま観察に移行できるため、改めて液温を調整する必要が無く、迅速な観察が可能である。
【0044】
また、脚部203は、ノズルを跨って支持されるため、ノズルの操作を妨げない構成とされている。取手204は、蓋体102に対して水平な位置まで移動が可能であるため、顕微鏡装置のステージ上の限られた空間でも設置可能であり、蓋体102の開閉操作、ディッシュ300へのアプローチ、透過孔119aからの観察、又は、入射光の取り込み等を妨害せずに、使用することが出来る。
【0045】
把手の形状は、上述のものに限定されず、顕微鏡のステージ上で使用可能なものであれば、どのような形状としても良い。また、把手の数は1つに限らず、複数の把手を設けてもよい。
【0046】
以上が、本発明の実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る細胞培養器具100の平面図である。
【図2】第一の実施形態に係る細胞培養器具100の蓋体102が開放状態の平面図である。
【図3】図1における細胞培養器具100の正面図である。
【図4】図1における細胞培養器具100のI−I’線断面図である。
【図5】(a)図1における支持部126aの断面図である。(b)図1における支持部126bの断面図である。
【図6】(a)注入ノズル150の構成図である。(b)図6(a)における注入ノズル150のC矢視図である。(c)図6(a)における注入ノズル150のD矢視図である。(d)排出ノズル151の構成図である。(e)図6(d)の排出ノズル151のE矢視図である。(f)図6(d)の排出ノズル151のF矢視図である。
【図7】本発明の第一の実施形態である細胞培養器具100において、注入ノズル150と排出ノズル151とが、ディッシュ300から退避する位置に保持される状態の平面図である。
【図8】図7の細胞培養器具100のII−II’線断面図である。
【図9】顕微鏡装置400の断面を示す概略構成図である。
【図10】顕微鏡装置900の側面図である。
【図11】第二の実施形態に係る細胞培養器具200の正面図である。
【図12】第二の実施形態に係る細胞培養器具200の側面図である。
【符号の説明】
【0048】
100、200・・・細胞培養器具、101・・・チャンバ、102・・・蓋体、104・・・ディッシュ収容部、105a、105b、105c、105d・・・側壁部、106・・・溝、107・・・貫通孔、111・・・上面部、112・・・連結部、115・・・底面部、116a、116b、128・・・内フランジ、117a、117b・・・固定板、118・・・貫通孔、119a、119b・・・透過孔、120・・・固定ねじ、121a、121b・・・ガラス板、122・・・ノズル支持孔、123、131・・・O−リング、126a、126b・・・支持部、129・・・雌ねじ、130・・・タンクホルダ、132・・・ノズル支持ねじ、133・・・ワッシャ、134・・・凹部、140・・・アダプタ、150・・・注入ノズル、151・・・排出ノズル、155・・・空圧チューブ、157・・・空圧ガラス管、156・・・送液ガラス管、160・・・供給チューブ、161・・・排出チューブ、163、167・・・基端部、164、168・・・先端部、162、166・・・軸部、165・・・注入口、169・・・吸入口、180・・・給気口、181・・・排気口、182・・・ホース口金具、190・・・給気チューブ、191・・・排気チューブ、201・・・把手、202・・・連結部材、203・・・脚部、204・・・取手、300・・・ディッシュ、310・・・リザーブタンク、400、9009・・・顕微鏡装置、401、901・・・筐体、402、902・・・ステージ、403・・・対物レンズ系、404・・・結像レンズ系、405・・・断熱部材、500・・・空調装置、501、603・・・温度センサ、502、601・・・ヒータ、503・・・シリコンチューブ、504・・・ガラス容器、600・・・温度制御装置、602・・・ファン、604・・・ダクト、700・・・撮像装置、903・・・接眼レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口し、培養容器を着脱自在に収容する培養容器収容部を有する本体と、前記開口を覆って、前記培養容器収容部を有する前記本体を密閉させ、少なくとも一部に光透過部材を有する蓋体と、を備え、
前記本体は、
前記培養容器収容部に配置される培養容器に、本体外部からの液体を供給するための第一のノズルと、
前記培養容器収容部に配置される前記培養容器から液体を、本体外部に排出するための第二のノズルと、
前記本体外部から、前記培養容器収容部へ気体を送り込む給気口と、
前記培養容器収容部の気体を、前記培養容器収容部の外部に排気する排気口と、を有し、
前記本体底面部の少なくとも前記培養容器の設置位置に、光透過孔と、前記光透過孔に設けられる光透過部材と、を有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養器具であって、
前記本体は、液体を貯留する容器を保持する容器ホルダを有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項3】
請求項2に記載の細胞培養器具であって、
前記液体を貯留する容器と、前記第一のノズルと、を連通する連通手段と、
前記液体を貯留する容器内の液体面を加圧するための加圧部と、を有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記本体の側壁部に設けられ、前記第一のノズルと前記第二のノズルとを支持する、支持手段を有し、
前記支持手段は、前記第一ノズルと前記第二のノズルとに、貫通される貫通部を有し、前記貫通部では、前記第一のノズルと、前記第二のノズルとを、前記培養容器収容部を密閉した状態で、軸回転可能に、かつ、軸方向へ摺動可能に支持する、支持部材を有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記第一のノズルと、前記第二のノズルとは、一部を側壁部に支持される軸部と、軸部の一端側に設けられる先端部と、他端側に設けられる基端部と、をそれぞれ有し、
前記先端部と前記基端部とは、それぞれの延長方向が、前記軸部の回転軸に対して角度をなす状態で設けられること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記本体の開口の周縁には、環状溝が設けられ、
前記環状溝には、O−リングが装填され、
前記蓋体は、前記O−リングと密接して、前記本体開口を覆うこと
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記本体は、単数もしくは、複数の把手を有する
ことを特徴とする細胞培養器具。
【請求項8】
請求項1から12のいずれか一項に記載の細胞培養器具を有する顕微鏡装置であって、
前記細胞培養器具と、これを載置するステージを備えた顕微鏡本体を有し、少なくとも前記細胞培養器具と、前記顕微鏡と、を密閉する筐体を有する
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項9】
請求項8に記載の顕微鏡装置であって、
前記筐体内の温度制御を行う温度制御装置を、さらに有する
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項1】
上面が開口し、培養容器を着脱自在に収容する培養容器収容部を有する本体と、前記開口を覆って、前記培養容器収容部を有する前記本体を密閉させ、少なくとも一部に光透過部材を有する蓋体と、を備え、
前記本体は、
前記培養容器収容部に配置される培養容器に、本体外部からの液体を供給するための第一のノズルと、
前記培養容器収容部に配置される前記培養容器から液体を、本体外部に排出するための第二のノズルと、
前記本体外部から、前記培養容器収容部へ気体を送り込む給気口と、
前記培養容器収容部の気体を、前記培養容器収容部の外部に排気する排気口と、を有し、
前記本体底面部の少なくとも前記培養容器の設置位置に、光透過孔と、前記光透過孔に設けられる光透過部材と、を有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養器具であって、
前記本体は、液体を貯留する容器を保持する容器ホルダを有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項3】
請求項2に記載の細胞培養器具であって、
前記液体を貯留する容器と、前記第一のノズルと、を連通する連通手段と、
前記液体を貯留する容器内の液体面を加圧するための加圧部と、を有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記本体の側壁部に設けられ、前記第一のノズルと前記第二のノズルとを支持する、支持手段を有し、
前記支持手段は、前記第一ノズルと前記第二のノズルとに、貫通される貫通部を有し、前記貫通部では、前記第一のノズルと、前記第二のノズルとを、前記培養容器収容部を密閉した状態で、軸回転可能に、かつ、軸方向へ摺動可能に支持する、支持部材を有すること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記第一のノズルと、前記第二のノズルとは、一部を側壁部に支持される軸部と、軸部の一端側に設けられる先端部と、他端側に設けられる基端部と、をそれぞれ有し、
前記先端部と前記基端部とは、それぞれの延長方向が、前記軸部の回転軸に対して角度をなす状態で設けられること
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記本体の開口の周縁には、環状溝が設けられ、
前記環状溝には、O−リングが装填され、
前記蓋体は、前記O−リングと密接して、前記本体開口を覆うこと
を特徴とする細胞培養器具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の細胞培養器具であって、
前記本体は、単数もしくは、複数の把手を有する
ことを特徴とする細胞培養器具。
【請求項8】
請求項1から12のいずれか一項に記載の細胞培養器具を有する顕微鏡装置であって、
前記細胞培養器具と、これを載置するステージを備えた顕微鏡本体を有し、少なくとも前記細胞培養器具と、前記顕微鏡と、を密閉する筐体を有する
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項9】
請求項8に記載の顕微鏡装置であって、
前記筐体内の温度制御を行う温度制御装置を、さらに有する
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−65892(P2009−65892A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237417(P2007−237417)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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