説明

細胞培養方法、及び人工臓器製造方法

【課題】細胞の培養によって3次元的な構造を有する組織を構築するための実用的な技術を提供する。
【解決手段】本発明による細胞培養方法は、培養液と培養細胞とを培養容器(2、12)に封入して、培養液の中に培養細胞を浮遊した状態で保持するステップと、培養容器(2、12)をn軸回転(nは2以上の整数)するステップとを備えている。培養容器(2、12)がn軸回転(nは2以上の整数)されることにより、培養細胞に働く重力方向が分散され、各細胞があらゆる方向に向けて増殖・進展することができるようになり、培養細胞の3次元的な培養が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養方法及び人工臓器製造方法に関する。本発明は、特に、3次元的に組織を培養して構築する細胞培養装置、及び人工臓器製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工的に構築された組織及び器官、即ち、人工臓器を使用して、損傷した組織及び器官の機能を修復して再生する医療手法は、将来の再生医学を担う重要な技術である。この医療手法を実現する上では、細胞から3次元的な立体構造を有する組織及び器官を構築する細胞培養技術が必要不可欠である。
【0003】
このような細胞培養技術として、培養液を満たした培養容器に培養される細胞塊を封入し、その培養容器に1軸回転を加える、振動を加える、気泡を導入する、又は羽根車によって水流を発生することによって細胞塊を浮遊させ、細胞塊を浮遊状態で成長する技術が知られている。しかし、これらの公知の技術では、細胞塊が分散し、更に、培養容器の内壁への接触により細胞が損傷を受けるため、3次元的な組織の構築が阻害されると推察されている。
【0004】
また、他の細胞培養技術として、宇宙のような微小重力環境で細胞塊を培養する技術が検討されている。微小重力環境では、細胞塊の沈降がないため、3次元的な組織の構築が可能と考えられている。更に、微小重力環境では、高密度の細胞集合体の形成の可能性が示されている。しかし、宇宙で細胞塊を培養することは、実用性に欠ける。
【0005】
更に、動植物育成装置が、特許公報(特公平7−89798)に知られている。公知のその動植物育成装置は、育成される動植物を定置して収納する容器を2軸以上で回転し、動植物に多方向から重力を印加する。これにより、擬似的に無重力状態で動植物が育成される。特許公報(特公平7−89798)には、動植物を育成することと共に、細胞を培養することが開示されている。しかし、細胞を培養するための具体的な方法は開示されていない。
【特許文献1】特公平7−89798
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、細胞の培養によって3次元的な構造を有する組織を構築するための実用的な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による細胞培養方法は、
培養液と培養細胞とを培養容器に封入することと、
前記培養液の中に前記培養細胞を浮遊した状態で保持しながら前記培養容器をn軸回転(nは2以上の整数)して前記培養細胞を培養し、これにより、3次元的な構造を有する組織を構築すること
とを備えている。
【0008】
このとき、培養容器に封入される培養液の粘度は、前記培養容器がn軸回転されている間に培養細胞が培養容器に接触しないように調整されていることが好ましい。培養液の粘度の調整は、培養液にメチルセルロースやコラーゲンゲルのような増粘材を添加することにより可能である。
【0009】
本発明による人工臓器製造方法は、
培養液と培養細胞とを培養容器に封入することと、
前記培養液の中に前記培養細胞を浮遊した状態で保持しながら前記培養容器をn軸回転(nは2以上の整数)して前記培養細胞を培養し、これにより、3次元的な構造を有する組織が構築された人工臓器を形成すること
とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、細胞の培養によって3次元的な構造を有する組織を構築するための実用的な技術が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明による細胞培養方法の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の第1形態:
本発明による細胞培養方法の実施の第1形態では、図1に示された細胞培養装置10が使用される。細胞培養装置10は、3次元クリノスタット1と培養容器2とを含む。3次元クリノスタット1は、培養容器2を2軸回転する。培養容器2の内部には、培養液と、培養される培養細胞とが封入される。培養細胞は、培養容器2には固定されず、培養液の中に浮遊される。
【0013】
3次元クリノスタット1は、本体3、モータ4、外側フレーム5、モーター6、及び内側フレーム7を含む。本体3は、静止系に設置される。本体3は、基部3aと脚3b、3cを含む。基部3aには、脚3b、3cが接続されている。脚3bには、モータ4が設けられている。モータ4は、外側フレーム5に接続され、回転軸4aの回りに外側フレーム5を回転する。外側フレーム5には、モータ6が設けられている。モータ6は、内側フレーム7に接続され、回転軸6aの回りに内側フレーム7を回転する。回転軸6aは、回転軸4aと概ね直交する。内側フレーム7には、既述の培養容器2が接続される。培養容器2は、回転軸4aと回転軸6aとの交点の近傍にある。培養容器2は、内側フレーム7と同体に回転する。外側フレーム5と内側フレーム7とがそれぞれ回転されると、培養容器2は、2軸回転する。
【0014】
培養容器2が2軸回転されると、培養容器2に封入された培養細胞に働く重力の方向が分散され、各細胞があらゆる方向に向けて増殖・進展することができるようになり、培養細胞塊の3次元的な培養が可能になる。また、n軸回転により培養容器2の内部に発生する液流による剪断力は小さく、培養細胞塊の剥離と個々の細胞の遊離を防ぐ。従って、培養容器2が2軸回転された状態で細胞塊を培養することにより、3次元的な構造を有する組織の構築が実現される。
【0015】
このとき、アクチビンのような分化因子が培養液に添加されることは、所望の組織の構築を適切に行う上で好ましい。分化因子を培養液に添加することは、培養細胞の分化を促進し、組織の構築を適切に行うことを可能にする。
【0016】
更に、培養液にメチルセルロースやコラーゲンゲルのような増粘材が添加され、培養容器2が2軸回転されたときに培養容器2の内壁に培養細胞が接触しないように培養液の粘度が調整されることが好ましい。これにより、培養細胞塊の沈降が防がれる。
【0017】
図2及び図3は、実施の第1形態の細胞培養方法により培養された細胞塊の外観写真及び断面写真である。その細胞塊は、下記方法により培養された。まず、アフリカツメカエルの雄生体の正常腎由来のA6細胞が、培養フラスコにより23℃環境下で2週間、付着培養された。続いて、付着フラスコの培養面に1層状態で増殖した培養細胞の一部が剥離され、上記の培養容器2に移された。培養容器2は、培養液で満たされた。続いて、培養容器2が3次元クリノスタット1により回転され、培養細胞が培養容器2の中で浮遊状態で培養された。培養は、23℃環境下で2週間行われた。培養細胞が培養されて形成された細胞塊には、図2に示されているように、細胞球状化が認められた。更に、形成された細胞塊を切片化して内部状態を観察したところ、図3に示されているように、腎管様の構造が認められた。この実験事実は、実施の第1形態の細胞培養方法によって細胞の培養を行うことにより、3次元的な構造を有する組織を構築することができることを示している。
【0018】
実施の第1形態の細胞培養方法は、人工臓器の製造に適用可能である。この場合、培養容器2に封入される培養細胞として、目的とする臓器に分化可能な細胞が封入される。封入された細胞が2軸回転されながら培養され、3次元的な構造を有する人工臓器が形成される。
【0019】
なお、実施の第1形態では、培養容器2が2軸回転されているが、培養容器2は、更に多くの回転軸の回りに回転されることも可能である。この場合でも、2軸回転の場合と同様に、培養容器2の回転により培養細胞塊に働く重力の方向が分散され、各細胞があらゆる方向に向けて増殖・進展することができるようになり、培養細胞塊の3次元的な培養が可能になる。また、n軸回転により、培養容器2の内部に発生する液流の剪断力が小さくなり、培養細胞塊の剥離と個々の細胞の遊離を防ぐ。培養容器2が2軸よりも多くの回転軸の回りに回転された状態で細胞塊を培養することにより、3次元的な構造を有する組織の構築が実現される。
【0020】
実施の第2形態:
本発明による細胞培養方法の実施の第2形態では、実施の第1形態と同様に、培養液で満たされた培養容器が2軸回転され、その培養容器の内部で細胞塊が培養される。実施の第2形態では、新鮮な培養液が2軸回転される培養容器に逐次に供給された状態で培養が行われ、長期間の培養が可能である。
【0021】
図4は、本発明による細胞培養方法の実施の第2形態で使用される細胞培養装置50を示す。細胞培養装置50は、3次元クリノスタット11、培養容器12、培養液タンク13、及びポンプ14を備えている。3次元クリノスタット11は、培養容器12を2軸回転する。培養容器12の内部には、培養液と、培養される細胞塊とが封入される。培養される細胞塊は、培養容器12には固定されず、培養液の中に浮遊される。
【0022】
培養液タンク13は、培養容器12に供給されるべき培養液を蓄積する。ポンプ14は、培養液タンク13に蓄積された培養液を、培養容器12に圧出して供給する。培養容器12に供給された培養液は、培養液タンク13に戻される。細胞塊を培養する培養液は、循環的に使用されることになる。
【0023】
培養液タンク13は、培養液に含まれる気体の濃度を調節する気体濃度調整機能を有することが好ましい。培養液に含まれる酸素及び二酸化炭素の濃度の最適化は、細胞塊の培養の上で重要である。培養液に含まれる気体、特に、酸素及び二酸化炭素の濃度を調整することにより、細胞塊をより好ましい環境で培養することが可能である。より具体的には、培養液タンク13がガス交換可能な材質で形成され、且つ、培養液タンク13の周囲の雰囲気が調整される。これにより、培養液に含まれる気体を所望の濃度に調節することが可能である。
【0024】
3次元クリノスタット11は、培養液を培養容器12に供給するために、実施の第1形態の3次元クリノスタット1とは異なる構成を有する。3次元クリノスタット11は、本体15を備えている。本体15には、支柱16aと支柱16bとが接合されている。支柱16aは、外側フレーム17を回転可能に支持する。支柱16bには、ロータリージョイント18とモータ19とが接合されている。ロータリージョイント18は、外側フレーム17を回転可能に支持する。モータ19は、ギア、ベルトのような動力伝達機構(図示されない)を介して外側フレーム17を駆動し、外側フレーム17を回転軸18aの回りに回転する。
【0025】
外側フレーム17には、ロータリージョイント20とモータ21とが接合されている。ロータリージョイント20は、内側フレーム22を回転可能に支持する。モータ21は、ギア、ベルトのような動力伝達機構(図示されない)を介して内側フレーム22を駆動し、内側フレーム22を回転軸20aの回りに回転する。
【0026】
内側フレーム22には、既述の培養容器12が接続される。培養容器12は、回転軸18aと回転軸20aとの交点の近傍にある。培養容器12は、内側フレーム22と同体に回転する。外側フレーム17と内側フレーム22とがそれぞれ回転されると、培養容器12は、2軸回転する。
【0027】
ポンプ14から培養容器12への培養液の供給は、ロータリージョイント18とロータリージョイント20とを介して行われる。ポンプ14が送り出す新鮮な培養液は、供給管23を介してロータリージョイント18に到達する。ロータリージョイント18は、供給管23から送られる培養液を、外側フレーム17と同体に回転する供給管24に導入する。更に、ロータリージョイント20は、供給管24に送られた培養液を、内側フレーム22と同体に回転する供給管25に導入する。供給管25は培養容器12に接続され、供給管25から培養液が培養容器12に供給される。
【0028】
同様に、培養容器12から培養液タンク13への培養液の排出は、ロータリージョイント18とロータリージョイント20とを介して行われる。培養容器12は、排出管26に培養液を排出する。排出管26に排出された培養液は、ロータリージョイント20を介して、外側フレーム17と同体に回転する排出管27に導入される。排出管27に導入された培養液は、ロータリージョイント18を介して、静止系に置かれている排出管28に導入される。排出管28を介して培養液が培養液タンク13に戻される。
【0029】
図5は、ロータリージョイント18を詳細に示す。ロータリージョイント18は、固定部29と回転部30とを含む。固定部29と回転部30とは、径の異なる円柱体であり、回転部30は、固定部29に回転自在に挿入されている。固定部29は支柱16bに固着され、回転部30は外側フレーム17に固着されている。
【0030】
固定部29と回転部30との間の空間には、シール31、32により、第1液導入室33と第2液導入室34とが形成されている。第1液導入室33と第2液導入室34とは、シール31により分離されている。第2液導入室34は、シール32により外部からの気密が保たれている。第1液導入室33には、ポンプ14に接続されている供給管24が接続され、第2液導入室34には、培養液タンク13に接続されている排出管排出管27が接続されている。
【0031】
回転部30には、第1液導入室33に開口する第1穴35と、第2液導入室34に開口する第2穴36とが設けられている。第1穴35は、供給管24に接続され、第2穴36は、排出管27に接続される。
【0032】
このような構造を有するロータリージョイント18は、支柱16bと外側フレーム17とがなす角度に関わらず、供給管23と供給管24とを接続し、且つ、排出管27と排出管28とを接続する。
【0033】
ロータリージョイント20は、ロータリージョイント18と同様の構成を有しており、外側フレーム17と内側フレーム22とがなす角度に関わらず、供給管24と供給管25とを接続し、排出管26と排出管27とを接続する。
【0034】
このように、ロータリージョイント18とロータリージョイント20とを介して、3次元クリノスタット11の外部から培養容器12に培養液が供給され、更に、培養容器12から3次元クリノスタット11の外部に培養液が排出される。
【0035】
培養容器12に外部から培養液が供給される場合、培養液が流れ込むことにより、培養容器12の内部で液流の乱れが発生し得る。液流の乱れは、細胞塊の分散を招き、3次元的な組織の構築の障害になり得る。これに対応するために、培養容器12は、この液流の乱れによる影響を抑制するような構造を有している。
【0036】
図6は、培養容器12を示す。培養容器12の内部は、隔壁37により、流路室38と培養室39とに分離されている。流路室38には、培養液を供給する供給管25と、培養液を排出する排出管26とが接続されている。隔壁37には、多数の穴(図示されない)が設けられ、その穴を通じて、流路室38と培養室39とで培養液の交換が行われる。培養室39には、細胞塊40が浮遊状態で収められ、細胞塊40の培養は、培養室39の内部で行われる。
【0037】
このような構造を有する培養容器12では、細胞塊40の培養が行われる培養室39には、直接には培養液が流入しない。これにより、培養容器12に培養液が流入することによる液流の乱れが、細胞塊40の培養に及ぼす影響が抑制される。
【0038】
本発明による細胞培養装置の実施の第2形態は、実施の第1形態と同様に、3次元的な構造を有する組織を構築することができる。実施の第2形態では、更に、長期間にわたる細胞の培養が可能である。
【0039】
なお、実施の第2形態では、培養に使用される培養液は循環されているが、培養容器12から排出された培養液が、そのまま捨てられることも可能である。この場合、培養容器12から培養液が排出される排出管28は、培養液タンク13に接続されない。
【0040】
実施の第3形態:
本発明による細胞培養方法の実施の第3形態は、人工臓器の製造に特に好適に適用される。
【0041】
本発明による細胞培養方法の実施の第3形態は、培養液で満たされた培養容器が2軸回転され、その培養容器の内部で細胞が培養される点では、実施の第1形態及び第2形態と同じである。
【0042】
実施の第3形態では、実施の第1形態及び第2形態と異なり、細胞塊は、培養容器に固定された人工基質に付着されて培養される。実施の第3形態では、3次元的に重力が印加され、3次元的構造をもつ人工基質に均一に細胞付着する等の3次元的な培養が可能になる。また、培養容器が2軸回転されて発生する流体攪拌による剪断力は小さく、付着・凝集した細胞がバラバラになることや、損傷することが防がれる。
【0043】
人工基質の上に細胞が培養されることは、大型の人工臓器の構築を可能にする。大型の人工臓器を構築するためには、大型の細胞塊を培養することが必要である。しかし、大型の細胞塊を完全な浮遊状態に保つことは困難であり、細胞塊が大型化すると細胞塊に損傷が加わりやすい。細胞塊が、培養容器に固定された人工基質の上に培養されることにより、細胞塊の損傷が防がれ、大型の細胞塊の培養が可能になる。このとき人工基質は、細胞塊を固定的に支持すると共に、細胞塊の培養の骨格となり、人工臓器の一部を構成する。
【0044】
実施の第3形態では、実施の第2形態で使用される培養容器12の代わりに、図7に示された培養容器41が使用される。培養容器41は、隔壁42により、流路室43と培養室44とに分離される。流路室43には、培養液を供給する供給管25と、培養液を排出する排出管26とが接続される。隔壁42には、多数の穴(図示されない)が設けられ、その穴を通じて、流路室43と培養室44とで培養液の交換が行われる。
【0045】
培養室44の内部には、人工基質45と人工基質支持部46、47とが収納される。人工基質45は、例えばスポンジコラーゲンにより形成される。人工基質45は細胞塊(図示されない)を培養する骨格となり、細胞塊は、人工基質45に付着した状態で培養される。人工基質支持部46、47は、人工基質45を培養容器41の内壁に固定的に保持する。人工基質45と人工基質支持部46、47とにより、培養される細胞塊は、培養液中に固定的に保持される。
【0046】
本発明による細胞培養装置の実施の第3形態の他の構成は、実施の第2形態と同一でありその詳細な説明は行われない。
【0047】
実施の第3形態では、以下のようにして組織の構築が行われる。培養される細胞が、人工基質45に付着される。人工基質45が人工基質支持部46、47により培養室44の内壁に固定され、更に、培養容器41の内部は培養液で満たされる。培養容器41が、3次元クリノスタット11により2軸回転され、培養が開始される。培養の間、ポンプ14は、培養液タンク13から培養液を培養容器41に供給し、培養容器41から排出される培養液は、培養液タンク13に戻される。培養室44の内部では、培養液が三次元的に流れ、更に、重力が人工基質45に対して全ての方向から印加される。これにより、細胞が人工基質45の表面に3次元的に増殖する。
【0048】
培養細胞と人工基質45で構成された構造体は、人工臓器として培養容器41から取り出される。構築された人工臓器を、体内に移植し、或いは、体外に設置することにより、臓器の機能の再生及び修復が可能である。
【0049】
大型の人工臓器を構築するためには、図8に示されているように、人工基質管48が人工基質45に設けられることが好ましい。この人工基質管48の一端は、図4に示された供給管25に接続され、他端は、排出管26に接続され、人工基質管48の内部には、培養液が通される。人工基質45に構築される組織が大型化すると、増殖に必要な物質を、組織の内部に供給することが困難になる。その内部に培養液が通された人工基質管48は、人工血管として作用し、組織の内部に増殖に必要な物質が供給される。人工基質管48が設けられる場合、人工基質管48が人工基質45を支持することが可能であり、図8に示されているように、人工基質支持部46、47は、必ずしも設けられる必要がない。
【0050】
本発明による細胞培養装置の実施の第3形態は、実施の第1形態及び第2形態と同様に、3次元的な構造を有する組織を構築することができる。実施の第3形態では、更に、大型の組織の構築が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明による細胞培養装置の実施の第1形態を示す。
【図2】図2は、実施の第1形態の細胞培養装置により培養された細胞塊の外観写真である。
【図3】図3は、実施の第1形態の細胞培養装置により培養された細胞塊の断面写真である。
【図4】図4は、本発明による細胞培養装置の実施の第2形態を示す。
【図5】図5は、ロータリージョイント18を示す。
【図6】図6は、培養容器12を示す。
【図7】図7は、本発明による細胞培養装置の実施の第3形態で使用される培養容器42を示す。
【図8】図8は、培養容器42の変形例を示す。
【符号の説明】
【0052】
1:3次元クリノスタット
2:培養容器
3:本体
3a:基部
3b、3c:脚
4:モータ
5:外側フレーム
6:モーター
7:内側フレーム
11:3次元クリノスタット
12:培養容器
13:培養液タンク
14:ポンプ
15:本体
16a、16b:支柱
17:外側フレーム
18:ロータリージョイント
19:モータ
20:ロータリージョイント
21:モータ
22:内側フレーム
23、24、25:供給管
26、27、28:排出管
29:固定部
30:回転部
31、32:シール
33:第1液導入室
34:第2液導入室
35:第1穴
36:第2穴
37:隔壁
38:流路室
39:培養室
41:培養容器
42:隔壁
43:流路室
44:培養室
45:人工基質
46、47:人工基質支持部
48:人工基質管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液と培養細胞とを培養容器に封入することと、
前記培養液の中に前記培養細胞を浮遊した状態で保持しながら前記培養容器をn軸回転(nは2以上の整数)して前記培養細胞を培養し、これにより、3次元的な構造を有する組織を構築すること
とを備えた
細胞培養方法。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養方法において、
前記培養液の粘度は、前記培養容器がn軸回転されている間に前記培養細胞が前記培養容器に接触しないように調整された
細胞培養方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の細胞培養方法において、
更に、前記培養細胞の培養の間に前記培養細胞の分化を促進すること
を備えた
細胞培養方法。
【請求項4】
培養液と培養細胞とを培養容器に封入することと、
前記培養液の中に前記培養細胞を浮遊した状態で保持しながら前記培養容器をn軸回転(nは2以上の整数)して前記培養細胞を培養し、これにより、3次元的な構造を有する組織が構築された人工臓器を形成すること
とを備えた
人工臓器製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の人工臓器製造方法において、
前記培養液の粘度は、前記培養容器がn軸回転されている間に前記培養細胞が前記培養容器に接触しないように調整された
人工臓器製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の人工臓器製造方法において、
更に、前記培養細胞の培養の間に前記培養細胞の分化を促進すること
を備えた
人工臓器製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−17890(P2009−17890A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251676(P2008−251676)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願2001−267747(P2001−267747)の分割
【原出願日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(501349424)
【Fターム(参考)】