説明

細胞培養方法及び細胞培養装置

【課題】培養細胞に損傷を与えることなく、細胞培養時に生じる泡沫層を効果的に破壊することができ、その結果、目的物質の生産性を向上させる。
【解決手段】細胞を培養するための培養液を充填することができる培養槽と、上記培養槽内部に充填された培養液に気泡を供給する第1の散気手段と、上記第1の散気手段により供給される気泡より大径の気泡を、上記培養槽内部に充填された培養液に供給する第2の散気手段と、少なくとも、上記第2の散気手段による気泡の供給を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医薬品等の主原料となる物質を生産する細胞を培養する際に適用される細胞培養方法及び細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体医薬をはじめとする医薬品は、細胞が産生する物質を主成分として含有している。このような物質は、例えば動物細胞により分泌生産されるため、動物細胞を培養し、培養液中に分泌された目的物質を分離精製することで得ることができる。生体の細胞を培養する場合においては、培養環境、すなわち培養槽内を培養に最適な条件に維持することが求められる。酸素についても培養に好適な溶存酸素濃度に維持することが求められる。
【0003】
このような細胞培養において、培養細胞を高密度化する場合や培養装置を大型化する場合には、培養液に対して酸素ガスを直接通気する液中通気が不可避となる。液中通気は、形成される気泡の気液界面から酸素を拡散させるものであり、通気量を増加して気液界面の面積を増加することで、容易により多量の酸素を培養液に供給することができる。ところが、液中通気によって生成された気泡は、培養液上面に滞留して泡沫層を形成する問題を生じることがある。特に動物細胞培養に使用される培地は発泡性が大きく、泡沫が培養槽内に充満して培養の継続に支障をきたす場合がある。泡沫層が形成されると、培養細胞の一部が当該泡沫層に移行することとなり、細胞の壊死が生じるといった問題がある。
【0004】
このため、泡沫層を破壊する手段の開発が行われており、破泡作用を有する物質との接触、破泡作用を有する消泡剤を添加する方法及び物理的外力を加えて破泡する方法等が開発されている。特許文献1には撥水性材料で構成する消泡層に接触させて破泡する方法が記載されている。特許文献2には撹拌機シャフトに設けられた消泡装置のノズルから散布される培養液で消泡する方法が記載されている。特許文献3には超音波を照射して破泡する装置が記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの手法では、長期間安定した破泡作用を維持するという観点から実用上の課題がある。すなわち、消泡剤を加える方法については、生産物の種類によっては好ましくない。特に培養の目的が医薬品原料物質の製造にある場合、消泡剤を完全に除去することが困難であるため特に好ましくない。また、培養する生体細胞が動物細胞である場合には、破泡翼に泡沫を衝突させて破壊する物理的外力を加える手法は細胞を死滅させてしまうため好ましくない。
【0006】
【特許文献1】特開平1−281072公報
【特許文献2】特開平7−184632公報
【特許文献3】特開2002−51763公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、培養細胞に損傷を与えることなく、細胞培養時に生じる泡沫層を効果的に破壊することができ、その結果、目的物質の生産性を向上させることができる細胞培養方法及び細胞培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成した本発明は、以下を包含する。
(1)散気手段によって培養液中に気泡を供給し、培養液中に酸素を供給しながら細胞培養工程を行う細胞培養方法において、上記培養液には、上記気泡より大径の気泡を供給することを特徴とする細胞培養方法。
本細胞培養方法において、上記大径の気泡は、培養液に形成された泡沫層の検出値を制御因子とした制御によって、当該泡沫層の検出値が得られたとき、又は当該泡沫層の高さが既定値に達したときに培養液に供給されることが好ましい。また、上記大径の気泡は、培養液の溶存二酸化炭素濃度を制御因子とした制御によって、当該溶存二酸化炭素濃度が既定値に達したときに培養液に供給されてもよい。上記大径の気泡は、培養液のpH値を制御因子とした制御によって、当該pH値が既定値に達したときに培養液に供給されてもよい。なお、大径の気泡は、二酸化炭素不含有ガスから形成されたものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明は以下を包含する。
(2)細胞を培養するための培養液を充填することができる培養槽と、上記培養槽内部に充填された培養液に気泡を供給する第1の散気手段と、上記第1の散気手段により供給される気泡より大径の気泡を、上記培養槽内部に充填された培養液に供給する第2の散気手段と、少なくとも、上記第2の散気手段による気泡の供給を制御する制御手段とを備える細胞培養装置。
本細胞培養装置は、上記培養槽内に充填された培養液の表面に形成される泡沫層を検出する泡沫層検出手段を更に有し、上記制御手段が上記泡沫層検出手段により泡沫層が検出されたとき、又は上記泡沫層検出手段によって検出された泡沫層高さが既定値に達したときに上記第2の散気手段による気泡の供給を開始するように制御することが好ましい。また、本細胞培養装置は、上記培養槽内に充填された培養液の溶存二酸化炭素濃度を検出する溶存二酸化炭素濃度検出手段を更に有し、上記制御手段が上記溶存二酸化炭素濃度検出手段により検出された溶存二酸化炭素濃度が既定値に達したときに上記第2の散気手段による気泡の供給を開始するように制御することもできる。さらに、本細胞培養装置は、上記培養槽内に充填された培養液のpHを検出するpH検出手段を更に有し、上記制御手段は、上記pH検出手段により検出されたpH値が既定値に達したときに上記第2の散気手段による気泡の供給を開始するように制御することもできる。なお、上記第2の散気手段に対して供給するガスとしては二酸化炭素不含有ガスをあげることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養液上に形成される泡沫層を効果的に除去し、或いは当該泡沫層の形成を効果的に防止することができ、目的物質の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る細胞培養方法及び細胞培養装置を図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る細胞培養方法は、医薬品等の主原料となる物質を生産する細胞を培養する際に適用することができる。本発明において、生産対象の物質としては、何ら限定されるものではなく、例えば抗体や酵素等のタンパク質、低分子化合物及び高分子化合物等の生理活性物質を挙げることができる。また、培養対象の細胞としては、何ら限定されるものではなく、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、真菌及び藻類等を挙げることができる。特に、本発明に係る細胞培養方法は、抗体や酵素等のタンパク質を生産する動物細胞を培養対象とすることが好ましい。
【0012】
特に、本発明を適用した細胞培養装置としては、例えば、図1に示すように、細胞を培養するための培養液1を充填することができる培養槽2と、培養槽2内部に充填された培養液1に気泡を供給する第1の散気手段3と、第1の散気手段3により供給される気泡より大径の気泡を培養液1に供給する第2の散気手段4と、少なくとも第2の散気手段4による気泡の供給を制御する制御手段5とを備えている。また、例示した細胞培養装置において、制御手段5は、第1の散気手段3による気泡の供給もまた制御している。
【0013】
第1の散気手段3及び第2の散気手段4は、それぞれポンプ等のエア供給装置及びこれをon/off操作する弁装置等を備える第1の個別操作手段6及び第2の個別操作手段7と接続されている。制御手段5は、これら第1の個別操作手段6及び第2の個別操作手段7を直接制御することで、第1の散気手段3及び第2の散気手段4からの気泡の供給を制御している。細胞培養装置は、培養液1の上面にガスを供給するためのガス供給装置8を備えている。制御手段5は、このガス供給装置8を制御して、培養液1上面に供給するガス流量を制御している。なお、第1の個別操作手段6及び第2の個別操作手段7並びにガス供給装置8は、それぞれ空気、酸素及び炭酸ガスの各ガスについての流量制御機能と供給量計測機能とを具備している。
【0014】
また、細胞培養装置は、培養液1を撹拌するための攪拌機9と、撹拌機9を回転駆動させる駆動用モーター10とを備える。なお、図示しないが、駆動用モーター10は、制御手段5によって制御されてもよいし、内蔵する制御装置によって制御されても良い。いずれの場合でも、所望の培養時間や撹拌条件(撹拌時間及び回転数)を適宜設定することができ、これらに従って駆動用モーター10及び攪拌機9が駆動することとなる。
【0015】
さらに、細胞培養装置は、培養液1の各種状態を計測するための計測装置11と、培養槽2内に充填された培養液1が撹拌されることによって培養液1上に形成された泡沫層を検出する泡沫層検出装置12とを有している。計測装置11は、より具体的には、培養液1中の酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定器、培養液1中の二酸化炭素濃度を測定する溶存二酸化炭素濃度測定器及び培養液1のpHを測定するpH測定器を備えている。これら各機器は、それぞれ別個に培養槽2に取り付けられていても良い。また、培養液1の温度を測定する温度計やその他の培養液1の性状を測定するための各種機器を備えていても良い。これら計測装置11及び泡沫層検出装置12からの出力は、計測値13として制御手段5へ入力される。制御手段5は、図2に示すように、入力した計測値13に基づいて、少なくとも第2の散気手段4からの気泡の供給を制御し、好ましくは、第1の散気手段3からの気泡の供給及びガス供給装置8からのガスの供給を制御する。
【0016】
より具体的に、第2の散気手段4は、図3に示すように、環状のパイプ14の表面に複数の散気用孔15を形成したものを例示することができる。第2の散気手段4は、環状のパイプ14の一側面に導入部材16が配設されている。導入部材16の端部は、図示しないが第2の個別操作手段7におけるポンプに接続されている。ここで、第2の散気手段4は、第1の散気手段3から生ずる気泡よりも大径の気泡を発生させるが、発生させる気泡の径は散気用孔15の内径に依存する。例えば、第1の散気手段3から生ずる気泡の径が平均4mm程度である場合、散気用孔15の内径を1〜4mm程度とすることによって、平均5mm以上の気泡を発生させることができる。また、第2の散気手段4は、第1の散気手段3から生ずる気泡よりも大径の気泡を発生させる構成であればよいため、散気用孔15の形状及び数には特に限定されない。さらに、第2の散気手段4は、図3に示したような環状のパイプ14を有するような構成に限定されず、如何なる形状、材質及び構成を有するものであってもよい。さらに、散気用孔15の径が異なる複数種類の環状パイプ14を準備し、第1の散気手段3から生ずる気泡の平均径や培養条件等に応じて適当な環状パイプ14を選択して第2の散気手段4を構成してもよい。さらにまた、第2の散気手段4は、第1の散気手段3から生ずる気泡よりも大径の気泡を発生させる構成であればよいため、発生する気泡のうち一部が第1の散気手段3から生ずる気泡と同様又は小径であってもよい。
【0017】
一方、第1の散気手段3は、図4に示すように、多孔質材料から形成された筒状部材17を有するものを例示することができる。ここで、多孔質材料としては、例えば、金属焼結体、有機高分子多孔質体、四フッ化エチレン樹脂、ステンレス、スポンジ及び軽石を使用することができる。多孔質材料としては、約10〜200μmの内径を有する孔が形成された材料を使用することが好ましい。
【0018】
また、第1の散気手段3は、比較的に小径の気泡を培養液に供給することで、培養液と気泡と接触面積を大とすることができ、培養液中に効率的に酸素を供給することができる。このように、第1の散気手段3は、培養液1へ酸素を供給するための気泡を発生すればよいため、図4に示したような構成に限定されるものではない。例えば、第1の散気手段3としては、複数枚のメッシュを重ね合わせた部材から構成してもよい。この場合、複数枚のメッシュを重ね合わせた部材を介して気泡を形成し、培養液1へ気泡を導入する。
【0019】
また、泡沫層検出装置12は、図5に示すように、一対の電極18、19と、これら電極18、19間に所定の電圧を印加するとともに電極18、19間に流れる電流を測定する検出器20を備えている。一対の電極18、19は、先端部を露出する以外は全体を絶縁体によって覆われ、取り付け具21を介して培養槽2に取り付けられている。一対の電極18、19の先端部は、培養液2の上面に形成される泡沫層22の高さを規制する位置に合わされる。また、一対の電極18、19は、その先端部と培養液1上面との距離を所望の値に調節できるように、培養液1上面に対して近接又は離間する方向に位置決め自在に取り付けられることが好ましい。さらに、一対の電極18、19は、結露水や汚れの付着に起因して短絡が発生しないように十分な距離を取って配設させることが好ましい。さらにまた、一対の電極18、19は、泡沫層22を構成する泡沫が一対の電極18、19間にブリッジを形成して滞留しないような構造とすることが好ましい。
【0020】
なお、本発明に係る細胞培養装置は、図1には図示していないが、一般的な細胞培養装置に含まれる各種の設備を備えるものであっても良い。各種の設備としては、例えば、空気、酸素、窒素及び炭酸ガス等のガス供給設備、温水冷水供給設備、蒸気供給設備及び給排水設備を例示することができる。
【0021】
以上のように構成された細胞培養装置では、培養液1を培養槽2に充填した後、培養対象の細胞を播種して培養を開始する。このとき、培養液2は、駆動用モーター10により駆動される攪拌機9で撹拌されて均一に混合される。培養に必要な酸素は、酸素含有ガスを槽底部に配置された第1の散気手段3および第2の散気手段4から供給される液中通気法と、ガス供給装置8から培養槽2の上部気相領域に通気する上面通気法の二つの方法により供給される。液中通気の場合、気泡径が小さいほど体積当たりの気液界面が大きくなって必要な酸素供給量を得るための通気量が少なくなる。このことから酸素供給のためには、主として、第1の散気手段3によって形成される小さな気泡を用いて通気を行うことが望ましい。ここで、第1の散気手段3に通気するガスとしては、酸素に空気や炭酸ガスを混合して用いてもよいが、酸素分圧が低下することにより通気量の増加を招き、結果的に泡沫層を拡大させるため、酸素を用いるほうが好ましい。
【0022】
第1の散気手段3の制御においては、培養液1中の溶存酸素濃度を制御量とし、酸素通気量を操作因子とする。すなわち、計測装置11で得られた酸素濃度に関する計測値13は、制御手段5に電子データとして伝送される。制御手段5においては、計測値13と予め設定された目標値とを比較して、動作信号を第1の個別操作手段6に伝達して操作量を変更する。これにより、第1の散気手段3から供給される気泡によって培養液1に対して酸素が補充されることとなる。なお制御手段5は、第1の散気手段3への通気内容を制御して、酸素濃度に関する測定値13が目標値に収束するよう制御動作を実行する。
【0023】
このように、第1の散気手段3から培養液1に対して気泡を供給すると、攪拌機9による撹拌の効果と相俟って培養時間が経過するに従って培養液1表面に泡沫層が形成されることとなる。
【0024】
本発明に係る細胞培養装置において、第2の散気手段4からは、第1の散気手段3から生ずる気泡よりも大径の気泡が培養液1に供給される。第2の散気手段4から生ずる気泡は、培養液1の上面に達した段階で比較的容易に破泡する。第2の散気手段4から生ずる気泡が破泡する際の衝撃波は、近傍の微細な泡沫の破泡を促進する作用があり、これにより泡沫層の増加を抑制することができる。本発明に係る細胞培養装置は、このように第1の散気手段3から生ずる気泡によって形成された泡沫層を効果的に除去しながら細胞培養を行うことが可能となっている。
【0025】
また、本発明に係る細胞培養装置において、第2の散気手段4は、所望のタイミングで泡沫層を破壊するための気泡を培養液1に供給するように適宜設定される。例えば、第2の散気手段4は、図5に示したような泡沫層検出装置12によって泡沫層を検出し、泡沫層の高さが所定の値に達した段階で気泡を発生させるように制御されることが好ましい。すなわち、この場合、第2の散気手段4は、泡沫層の検出値を制御因子とし、通気量を操作因子とする。泡沫層検出装置12で得られた泡沫層の検出信号(計測値13)は、制御手段5に電子データとして伝送される。制御手段5においては、泡沫層の検出信号が入力されると、動作信号を第2の個別操作手段7に伝達して第2の散気手段4への通気を開始する。これにより、第2の散気手段4からは、第1の散気手段3から供給される気泡よりも大径の気泡が培養液1に対して供給されることとなる。そして、上述した破泡メカニズムによって泡沫層が除去されると、泡沫層検出装置12からの泡沫層の検出信号が出力されなくなる。すなわち、これは泡沫層の高さが所定の値より低くなったことを意味する。制御手段は、泡沫層検出装置12からの泡沫層の検出信号が出力されなくなると、第2の散気手段4への通気を停止するように制御する。
【0026】
なお第2の散気手段4に通気するガスとしては、第1の散気手段3と同様に酸素を用いても良いが、第1の散気手段3に比べて通気量が大きいため、コスト低減を目的に空気や炭酸ガスを混合して用いることが好ましい。第2の散気手段4に通気するガス組成及びガス量はあらかじめ設定した値に固定して制御しても良いし、溶存酸素濃度及び泡沫層高さ等に対応してガス組成及びガス量を適宜調整して制御しても良い。
【0027】
ここで、図5に示した泡沫層検出装置12では、一対の電極18、19間に閾値を超える電流を測定できたとき、泡沫層の高さが所定の値に達したと判断する。したがって、泡沫層検出装置12では、泡沫層の電気伝導度に依存することとなる。泡沫層の電気伝導度は、泡沫密度(泡沫層の単位容積に含まれる培養液の量)にほぼ比例するが、培養液の物性(粘度等)、培養液の組成及び泡沫層を構成する気泡の大きさ等で変化する。よって、泡沫層検出装置12によって測定した泡沫層の高さは、目視で観察できる泡沫層の高さと一致しないことになる。しかしながら、本明細書において「泡沫層の高さ」とは、泡沫層検出装置12によって測定される値として定義してもよいし、他の手段によって測定された値として定義しても良いし、或いは目視によって観察された値として定義しても良い。すなわち、本明細書においては、泡沫層を測定する手段毎に異なるように「泡沫層の高さ」を定義しても良い。
【0028】
ところで、細胞培養装置を用いて細胞培養を継続すると、培養液中の溶存二酸化炭素濃度が上昇する。本細胞培養装置では、計測装置11で測定した溶存二酸化炭素濃度が設定値に達したときに、第2の散気手段4を駆動して、二酸化炭素不含有のガス(低濃度の二酸化炭素を含んでもよい)を用いて培養液1に気泡を供給するように制御することが好ましい。培養液中の溶存二酸化炭素は、第2の散気手段4から生じた気泡中に拡散することとなり、培養液1から除去することができる。このように、本発明に係る細胞培養装置は、上述したように、消泡剤や破泡機を使用することなく泡沫層を除去することができるとともに、二酸化炭素不含有のガスを用いて第2の散気手段4から気泡を発生させることで溶存二酸化炭素濃度を制御することもまた可能である。なお、培養液1中の溶存二酸化炭素濃度は、培養液のpH値を測定してこの値を用いて通常の比例制御で実施してもよい。
【0029】
また、以上の説明では、泡沫層検出装置12といった泡沫層又は泡沫層の高さを検出する手段を用いて第2の散気手段4を制御するようにしたが、本発明に係る細胞培養装置は、このような制御に限定されるものではない。すなわち、第2の散気手段4の駆動制御は、泡沫層が形成されるタイミングを予測し、当該予測に基づいて実施されてもよい。この場合、第2の散気手段4は、予め設定されたタイミングで自動的に駆動制御されることとなるが、この場合でも泡沫層を除去することは同様である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した細胞培養装置の一例を示す模式図である。
【図2】細胞培養装置における制御方法の一例を示すブロック図である。
【図3】第2の散気手段の一例を示す上面図である。
【図4】第1の散気手段の一例を示す斜視図である。
【図5】泡沫層検出装置の一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…培養液、2…培養槽、3…第1の散気手段、4…第2の散気手段、5…制御手段、12…泡沫層検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散気手段によって培養液中に気泡を供給し、培養液中に酸素を供給しながら細胞培養工程を行う細胞培養方法において、
上記培養液には、上記気泡より大径の気泡を供給することを特徴とする細胞培養方法。
【請求項2】
上記大径の気泡は、培養液に形成された泡沫層の検出値を制御因子とした制御によって、当該泡沫層の検出値が得られたとき、又は当該泡沫層の高さが既定値に達したときに培養液に供給されることを特徴とする請求項1記載の細胞培養方法。
【請求項3】
上記大径の気泡は、培養液の溶存二酸化炭素濃度を制御因子とした制御によって、当該溶存二酸化炭素濃度が既定値に達したときに培養液に供給されることを特徴とする請求項1記載の細胞培養方法。
【請求項4】
上記大径の気泡は、培養液のpH値を制御因子とした制御によって、当該pH値が既定値に達したときに培養液に供給されることを特徴とする請求項1記載の細胞培養方法。
【請求項5】
上記大径の気泡は、二酸化炭素不含有ガスから形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の細胞培養方法。
【請求項6】
細胞を培養するための培養液を充填することができる培養槽と、
上記培養槽内部に充填された培養液に気泡を供給する第1の散気手段と、
上記第1の散気手段により供給される気泡より大径の気泡を、上記培養槽内部に充填された培養液に供給する第2の散気手段と、
少なくとも、上記第2の散気手段による気泡の供給を制御する制御手段とを備える細胞培養装置。
【請求項7】
上記培養槽内に充填された培養液の表面に形成される泡沫層を検出する泡沫層検出手段を更に有し、
上記制御手段は、上記泡沫層検出手段により泡沫層が検出されたとき、又は上記泡沫層検出手段によって検出された泡沫層高さが既定値に達したときに上記第2の散気手段による気泡の供給を開始するように制御することを特徴とする請求項6記載の細胞培養装置。
【請求項8】
上記培養槽内に充填された培養液の溶存二酸化炭素濃度を検出する溶存二酸化炭素濃度検出手段を更に有し、
上記制御手段は、上記溶存二酸化炭素濃度検出手段により検出された溶存二酸化炭素濃度が既定値に達したときに上記第2の散気手段による気泡の供給を開始するように制御することを特徴とする請求項6記載の細胞培養装置。
【請求項9】
上記培養槽内に充填された培養液のpHを検出するpH検出手段を更に有し、
上記制御手段は、上記pH検出手段により検出されたpH値が既定値に達したときに上記第2の散気手段による気泡の供給を開始するように制御することを特徴とする請求項6記載の細胞培養装置。
【請求項10】
上記第2の散気手段に対して供給するガスが二酸化炭素不含有ガスであることを特徴とする請求項6記載の細胞培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−182899(P2008−182899A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16486(P2007−16486)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】