細胞外マイクロ電極及びその製造方法
【課題】観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保とを両立する。
【解決手段】本発明の細胞外マイクロ電極は、感光性絶縁材料からなる絶縁層20と、絶縁層20上に配置された1以上の金属層40と、金属層40の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる絶縁層70と、絶縁層70の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる絶縁層90とを有する。金属層40金属部は、絶縁層70に覆われた配線領域113と、絶縁層70に覆われていない電極領域111とをそれぞれ含む。そして、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層90によって周囲を囲まれる。
【解決手段】本発明の細胞外マイクロ電極は、感光性絶縁材料からなる絶縁層20と、絶縁層20上に配置された1以上の金属層40と、金属層40の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる絶縁層70と、絶縁層70の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる絶縁層90とを有する。金属層40金属部は、絶縁層70に覆われた配線領域113と、絶縁層70に覆われていない電極領域111とをそれぞれ含む。そして、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層90によって周囲を囲まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外マイクロ電極及びその製造方法に関し、特に、感光性絶縁材料を用いた細胞外マイクロ電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外マイクロ電極は、その電極上に配置又は培養された観察試料の計測と刺激に使用されている。代表的な細胞外マイクロ電極として、シリコンやポリイミドを基板材料とし、微細加工技術によって作製されるものが知られている(例えば、特許文献1や非特許文献1参照)。
図1は、従来の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図であり、図2は、その製造方法を説明するための流れ図である。これらの図を用い、従来の細胞外マイクロ電極の製造過程を説明する。
【0003】
まず、半導体基板又はガラス基板〔S〕表面に第1の絶縁層〔l(1)〕を形成する(ステップS1)。次に、第1の絶縁層の表面全面に金属層〔Au〕を形成し(ステップS2)、形成された表面全体にフォトレジスト層〔R〕を形成(ステップS3)する。次に、電極と電極配線が描画されたマスク〔M〕を用いてフォトレジスト層〔R〕を露光・現像し(ステップS4)、露光・現像されたフォトレジスト層〔R〕により金属層〔Au〕をエッチングして電極と電極配線を形成(ステップS5)し、フォトレジスト層を除去する(ステップS6)。そして、その表面全面に第2の絶縁層〔l(2)〕を形成(ステップS7)し、ドライエッチングの保護層としてアルミニウム等の金属膜〔Al〕を形成(ステップS8)する。次に、表面全体にフォトレジスト層〔R〕を形成し(ステップS9)、細胞外マイクロ電極の所定の形状が描画されたマスク〔M〕を用いてフォトレジスト層〔R〕を露光・現像(ステップS10)する。そして、露光・現像されたフォトレジスト層〔R〕により金属層〔Al〕をエッチングして細胞外マイクロ電極の所定の形状の金属保護層を形成(ステップS11)し、フォトレジスト層を除去する(ステップS12)。次に、その表面全体に露光された金属層〔Al〕を保護層としてドライエッチングを行い、第2の絶縁層〔l(2)〕ないし第1の絶縁層〔l(1)〕に切り込みを形成する(ステップS13)。次に、形成された表面全体にフォトレジスト層〔R〕を形成し(ステップS14)、第2の絶縁層〔l(2)〕より露出する電極と細胞外マイクロ電極の所定の形状が描画されたマスク〔M〕を用いてフォトレジスト層〔R〕を露光・現像し(ステップS15)、露光・現像されたフォトレジスト層〔R〕により金属層〔Al〕をエッチングして第2の絶縁層〔l(2)〕より露出する電極と細胞外マイクロ電極の所定の形状の金属保護層を形成する(ステップS16)。そして、フォトレジスト層〔R〕を除去し(ステップS17)、金属層〔Al〕を保護層としてドライエッチングを行い、第2の絶縁層〔l(2)〕により露出する電極と第1の絶縁層〔l(1)〕に切り込みを入れた細胞外マイクロ電極の所定の形状を形成する(ステップS18)。その後、金属保護層〔Al〕を除去し(ステップS19)、基板を剥離して(ステップS20)、細胞外マイクロ電極が完成する。
【特許文献1】特開2007−205756号公報
【非特許文献1】Boppart, S.A.; Wheeler, B.C.; Wallace, C.S. "A Flexible Perforated Microelectrode Array for Extended Neural Recordings", Biomedical Engineering, IEEE Transactions on Volume 39, Issue 1, Jan 1992 Pages 37-42.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の細胞外マイクロ電極及びその製造方法には以下のような課題がある。
(1)細胞外マイクロ電極上で観察試料の位置を安定させるような機構を持たず、観察試料の計測中又は刺激中に観察試料と電極との間にずれが生じる。
(2)製造工程が複雑で、作製が容易ではない。
図2に示したように、従来の製造工程では、電極を露出させ細胞外マイクロ電極を所定の形状に形成するために、柔軟絶縁材料をエッチングするステップS8からS19のプラズマエッチングやリアクティブイオンエッチング等のドライエッチング工程が不可欠である。そのため、従来の細胞外マイクロ電極の製造工程は非常に複雑でその作製は容易ではない。
【0005】
(3)露光とエッチング工程が多いため、アイライメント誤差が大きい。
従来の細胞外マイクロ電極の製造工程ではドライエッチング工程が不可欠であるが、このドライエッチングの影響により基板のアライメントマークが変形する。従来の製造工程では、複数工程においてアライメントマークを基準にマスクの位置決めが行われることから、アライメント誤差が生じて安定した微細加工を困難にしていた。
(4)ドライエッチング装置とその維持管理を含む製造コストが高く、廉価に細胞外マイクロ電極を作製することが難しい。
【0006】
従来のパリレンやポリイミドなどを含む柔軟絶縁材料を所定の形状に加工するためには、プラズマエッチングやリアクティブイオンエッチング等のドライエッチング工程が不可欠である。しかしながら、ドライエッチング工程に必要なプラズマエッチング装置やリアクティブイオンエッチング装置とそれらの維持費は高価であり、細胞外マイクロ電極を廉価に作製することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の細胞外マイクロ電極は、感光性絶縁材料からなる第1絶縁層と、第1絶縁層上に配置された1以上の金属部と、金属部の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第2絶縁層と、第2絶縁層の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第3絶縁層と、を有し、金属部は、第2絶縁層に覆われた配線領域と、第2絶縁層に覆われていない電極領域と、をそれぞれ含み、各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域は、それぞれ、第3絶縁層によって周囲を囲まれた領域である。なお、金属部は、単一の成膜工程によって成膜された単一の金属層のみからなるものであってもよいし、その少なくとも一部分が複数の金属層の堆積によって構成されたものであってもよい。
【0008】
ここで、本発明では、各電極領域の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域が、それぞれ、第3絶縁層によって周囲を囲まれた領域となる。これにより、各細胞配置領域にそれぞれ配置又は培養された観察試料は、第3絶縁層で形成された壁によって周囲を囲まれる。その結果、計測又は刺激中に観察試料が電極領域から位置ずれすることを抑制できる。
【0009】
また、本発明は、電極領域の形状を決定する第2絶縁層と独立な第3絶縁層によって観察試料の移動を抑制する壁を形成する点にも特徴がある。観察試料の移動を抑制するためには、それが配置される領域(空間)を壁で囲めばよいが、その壁で囲むべき最適な範囲は観察試料の量によって異なる。一方、第2絶縁層に覆われていない電極領域のインピーダンス特性は露出面積に依存するため、第2絶縁層の壁で覆われる電極領域表面の範囲は特定の範囲に制限される。そのため、第2絶縁層に覆われていない電極領域のみに観察試料を配置し、第2絶縁層を観察試料の移動を抑制する壁として用いる場合、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立ができない場合がある。本発明では、電極領域と独立に、第2絶縁層の一部分を覆う第3絶縁層によって観察試料の移動を抑制する壁を形成するため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。
【0010】
また、第1絶縁層及び第2絶縁層に感光性絶縁材料を用いることにより、本発明の細胞外マイクロ電極は、以下のようなドライエッチングを用いない簡易な製造方法によって製造できる。
【0011】
すなわち、本発明の細胞外マイクロ電極は、(a)基板の表面に感光性絶縁材料からなる第1絶縁層を形成する工程と、(b)所定の形状に第1絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第1絶縁層を露光し、露光された第1絶縁層を現像して、第1絶縁層を所定の形状に加工する工程と、(c)工程(b)によって加工された第1絶縁層側の面全体に金属層を形成する工程と、(d)金属層が形成された面全体に第1フォトレジスト層を形成する工程と、(e) 所定の形状に金属層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第1フォトレジスト層を露光し、露光された第1フォトレジスト層を現像する工程と、(f)工程(e)で露光及び現像された第1フォトレジスト層が形成された金属層をエッチングする工程と、(g)第1フォトレジスト層を除去する工程と、(h)工程(f)によって加工された金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成する工程と、(i)金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に第2絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第2絶縁層を露光し、露光された第2絶縁層を現像して、金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に第2絶縁層を加工する工程と、(j)工程(i)によって加工されたに第2絶縁層の面全体に感光性絶縁材料からなる第3絶縁層を形成する工程と、(k)各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に第3絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第3絶縁層を露光し、露光された第3絶縁層を現像して、の各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に第3絶縁層を加工する工程と、(l)基板を剥離する工程と、を有する製造方法によって製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、第2絶縁層の一部分を覆う第3絶縁層によって観察試料の移動を抑制する壁を形成することとしたため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。
また、本発明では、絶縁層に感光性絶縁材料を用い、本発明独自の製造工程に従うことで、従来必要であったドライエッチング工程が不要となる。その結果、製造工程の単純化、アイライメント誤差の低減、及び製造コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態と説明する。
<構成>
図3は第1実施形態の細胞外マイクロ電極1の計測領域110を示す斜視図である。図4(a)は細胞外マイクロ電極1の計測領域110を示す拡大斜視図であり、図4(b)は図4(a)のA−A断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。まず、これらの図を用いて、本形態の細胞外マイクロ電極1の構成を説明する。
【0014】
図3に示すように、本形態の細胞外マイクロ電極1の計測領域110には、互いに絶縁された複数の電極領域111(第1電極領域)が同一面側に露出して配置される。また、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層90(第3絶縁層)によって周囲を囲まれた領域となる。すなわち、各細胞配置領域115上には絶縁層90が存在せず、各細胞配置領域115の周囲に存在する絶縁層90によって、各細胞配置領域115の周囲がそれぞれ独立に囲まれる。
【0015】
図4に示すように、本形態の細胞外マイクロ電極1は、柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層20(第1絶縁層)と、絶縁層20上に配置された金属層40(金属部)と、金属層40の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層70(第2絶縁層)と、絶縁層70の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層90(第3絶縁層)とからなる。また、金属層40は、絶縁層70(第2絶縁層)に覆われた配線領域113と、絶縁層70に覆われていない電極領域111をそれぞれ含む。また、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層90(第3絶縁層)によって周囲を囲まれた領域となっている。図4の例では、絶縁層90が網目状に形成されて絶縁層90の表面と絶縁層70の表面との間に段差が形成され、各網目内に各細胞配置領域115が配置される構成となっている。なお、細胞配置領域115は、図4のように電極領域111よりも広い領域であってもよいし、電極領域111と同程度の領域であってもよく、観測試料の量に応じて適宜設定可能である。
【0016】
また、柔軟性の感光性絶縁材料の例は、感光性ポリイミド、感光性ポリアミド、感光性ポリエステル、感光性ベンゾシクロブテン、感光性パリレン、感光性エポキシ、感光性アクリレートなどである。この中でも、加工が容易な感光性ポリイミドを用いることがより望ましい。また、使用する感光性絶縁材料は、細胞外マイクロ電極として使用した際の生体への悪影響が小さく、なおかつ、細胞外マイクロ電極を構成するために必要な膜厚に加工可能な材料であることが望ましい。そのような感光性絶縁材料の一例は、感光性ポリイミドの一種である富士フィルム製 "Durimide(登録商標) 7510"である。また、金属層40の材料の例は、白金(Pt)、金(Au)、窒可チタン(TiO2)、酸化銀(Ag2O)、タングステン(W)、スズ添加酸化インジウム(Indium Tin Oxide)、酸化スズ(SnO,SnO2,SnO3)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などである。これらの中でも、微細加工が容易で導電性が高く柔軟な白金や金が望ましい。
【0017】
<製造方法>
図5及び図6は第1実施形態の細胞外マイクロ電極1の製造方法を説明するための断面図であり、図7はその製造方法を説明するための流れ図である。なお、図5はネガ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用する場合の例を示し、図6はポジ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用する場合の例を示す。本形態の細胞外マイクロ電極1の製造工程は以下の通りである。
【0018】
[S101]基板10の表面に感光性絶縁材料からなる絶縁層20(第1絶縁層)を形成する(図5(a)、図6(a))。なお、基板10の例は、シリコンなどの半導体基板やガラス基板などである。
[S102]所定の細胞外マイクロ電極1の外部形状に絶縁層20(第1絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク30を用い、絶縁層20を露光し、露光された絶縁層20を現像して、絶縁層20を所定の形状に加工する(図5(b)(c)、図6(b)(c))。
[S103]ステップS102によって加工された絶縁層20(第1絶縁層)側の面全体に金属層40を形成する(図5(d)、図6(d))。
[S104]金属層40が形成された面全体にフォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)を形成する(図5(e)、図6(e))。
【0019】
[S105]所定の形状に金属層40を加工するための形状が描画されたマスク60を用い、フォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)を露光し、露光されたフォトレジスト層50を現像する(図5(f)(g)、図6(f)(g))。
[S106]ステップS105で露光及び現像されたフォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)が形成された金属層40をエッチング(ウェットエッチング)する(図5(h)、図6(h))。
[S107]フォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)を除去する(図5(i)、図6(i))。
【0020】
[S108]ステップS106によって加工された金属層40側の面全体に感光性絶縁材料からなる絶縁層70(第2絶縁層)を形成する(図5(j)、図6(j))。
[S109]金属層40の配線領域113を覆いつつ電極領域111を露出させる形状に絶縁層70(第2絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク80を用い、絶縁層70を露光し、露光された絶縁層70を現像して、金属層40の配線領域113を覆いつつ電極領域111を露出させる形状に絶縁層70を加工する(図5(k)(l)、図6(k)(l))。
【0021】
[S110]加工されたに絶縁層70(第2絶縁層)の面全体に感光性絶縁材料からなる絶縁層90(第3絶縁層)を形成する(図5(m)、図6(m))。
[S111]各電極領域111の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域115をそれぞれ囲む形状に絶縁層90を加工するための形状が描画されたマスク100を用い、絶縁層90(第3絶縁層)を露光し、露光された絶縁層90を現像して、各細胞配置領域115をそれぞれ囲む形状に絶縁層90を加工する(図5(n)(o)、図6(n)(o))。
[S112]基板10を剥離する(図5(p)、図6(p))。
【0022】
<インピーダンス特性>
図8は、以上のように生成された細胞外マイクロ電極1のインピーダンス特性を示したグラフである。図8に示すように、以上のように生成された細胞外マイクロ電極1は電極領域111の直径に相関し、脳表での計測と刺激に適当なインピーダンス特性を有する。
【0023】
<細胞外マイクロ電極1の使用方法>
次に、本形態の細胞外マイクロ電極1の使用方法を例示する。
細胞外マイクロ電極1で観察試料の計測や刺激を行う場合、まず、電極領域111の露出面が上向きとなるように細胞外マイクロ電極1を配置する。この状態で細胞外マイクロ電極1の各細胞配置領域115に神経細胞等の観察試料が配置される。各観察試料は、そのまま又は培養された後、各細胞配置領域115の電極領域111で下側から計測又は刺激される。なお、神経細胞培養方法の例は、「畠中 寛,中川 八郎,“神経細胞培養法 (ニューロサイエンス・ラボマニュアル)”,シュプリンガー・フェアラーク東京,ISBN-10: 4431707247, ISBN-13: 978-4431707240」に記載されている。また、細胞外マイクロ電極1での観察試料の計測方法の例は、特許文献1に記載されている。
【0024】
ここで、各細胞配置領域115はそれぞれ絶縁層90の壁によって囲まれているため、各細胞配置領域115に配置又は培養された観察試料は絶縁層90の壁によって位置が保持され、安定した計測や刺激が可能となる。
【0025】
<本形態の特徴>
以上のように、本形態では、電極領域111の形状を特定する絶縁層70とは別の絶縁層90によって観察試料の移動を抑制する壁を形成することとしたため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域111のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。なお、絶縁層90の加工形状は、上述のものには限定されず、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立が可能な構成であれば、どのようなものであってもよい。図9は、細胞外マイクロ電極1の計測領域110の変形例を示す拡大斜視図である。このように、各細胞配置領域115の位置に対応する複数の貫通孔を絶縁層90に設け、絶縁層90の各貫通孔の内壁面で各細胞配置領域115の周囲を囲むトラップ状の構成であってもよい。また、絶縁層90の各貫通孔をすり鉢状の形状とし、それらの絶縁層70側の開口径よりもその反対側の開口径を広くした場合には、各細胞配置領域115への観察試料の配置が容易になるといった利点がある。一方、当該各貫通孔の絶縁層70側の開口径よりもその反対側の開口径を狭くした場合には、各細胞配置領域115に配置された観察試料の位置安定性がより強固なものとなる。このような形状は、例えば、マスクエッジでの露光の回り込みの影響を利用し、感光性絶縁材料をポジ型とするかネガ型とするかによって選択的に形成可能である。
【0026】
また、本形態では、絶縁層に感光性絶縁材料を用い、本発明独自の製造工程に従うことで、従来必要であったドライエッチング工程が不要となる。その結果、製造工程が単純化できる。また、ドライエッチング工程が不要となるため、ドライエッチング工程に起因するアライメントマークの変形が回避でき、アイライメント誤差が低減し、安定した加工精度で細胞外マイクロ電極1を作成できる。さらに、ドライエッチング工程が不要となるため、ドライエッチング装置とその維持費を不要とし、細胞外マイクロ電極1を低廉に作製できる。
【0027】
また、ステップS109とステップS112との間に、絶縁層70(第2絶縁層)の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を設けてもよい。通常、シリコン、パリレン、ポリイミドなどを含む絶縁材料は、その硬さ如何にかかわらず細胞正着性が低く、生体の異物反応を促進する。これに対し、絶縁層70の表面を親水性に改質することで、神経細胞等の観察試料の細胞配置領域115への生体適合性を向上させ、長期間安定した計測と刺激とが可能となる。
【0028】
また、各細胞配置領域115又はその近傍に、各細胞配置領域115を識別するための位置指標マーク(シリアル番号、座標軸など)を設けてもよい。この位置指標マークも上述した感光性絶縁材料を用いて他の絶縁層と同様に構成すればよい。このような位置指標マークを設けることにより、観察試料を顕微鏡などで拡大して観察する際に、観察試料が細胞外マイクロ電極1のどの位置の細胞配置領域115に配置されているものなのかを容易に特定することが可能となる。
【0029】
また、細胞外マイクロ電極1の金属層を多層化してもよい。この場合には、金属層間の少なくとも一部を絶縁する絶縁層が追加される。従来の製造工程ではドライエッチング工程が必須であるが、従来の製造工程で金属層を多層構造にする場合、層数に応じてドライエッチング工程の数も増加する。この場合、前述したドライエッチング工程に基づく、製造工程の複雑化やアイライメント誤差の増大の問題がより大きくなる。しかし、本形態では、絶縁層に感光性絶縁材料を用いることで従来必要であったドライエッチング工程が不要となるため、細胞外マイクロ電極1の金属層を多層に構成し、それに伴って金属層間の絶縁層を追加する場合でも、ドライエッチング工程に基づく前述の問題は生じない。そして、本形態のように、細胞外マイクロ電極1の金属層を多層化することにより、細胞外マイクロ電極1の面積を必要以上に大きくすることなく、電極チャネルの数を増加させることができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態を説明する。本形態は第1実施形態の変形例であり、絶縁層の壁で周囲を囲まれた細胞配置領域の上部に、神経細胞等の観察試料よりも径が小さな複数の貫通孔が網目状に形成された感光性絶縁材料からなる絶縁層が配置される。この複数の貫通孔が網目状に形成された絶縁層の上面に観察試料を配置することにより、当該絶縁層がハンモック状にたわみ、そのたわみ部分に観察試料が保持される。これにより、観察試料の位置ずれを防止できるとともに観察試料の変形を抑制する。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0031】
<構成>
図10(a)は、第2実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域310を示す斜視図であり、図10(b)は(a)のC−C断面図であり、図10(c)は(a)のD−D断面図である。
図10に示すように、本形態の細胞外マイクロ電極の計測領域310は、柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層20(第1絶縁層)と、絶縁層20上に配置された金属層40(金属部)と、金属層40の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層70(第2絶縁層)と、絶縁層70の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層440(第3絶縁層)と、複数の貫通孔311が網目状に形成された感光性絶縁材料からなる絶縁層420(第4絶縁層)からなる。また、金属層40は、絶縁層70(第2絶縁層)に覆われた配線領域113と、絶縁層70に覆われていない電極領域111をそれぞれ含む。また、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層440(第3絶縁層)によって覆われておらず、絶縁層440によって周囲を囲まれた領域となっている。また、絶縁層440(第3絶縁層)は、絶縁層70(第2絶縁層)と絶縁層420(第4絶縁層)との間に配置され、各細胞配置領域115と絶縁層420との間には、それぞれ、絶縁層440によって周囲を囲まれた空間315が存在する。そして、絶縁層420(第4絶縁層)に形成された網目状の貫通孔311は、外部から何れかの空間315へ貫通する孔となっている。これにより、各細胞配置領域115の各上面には、網目状の貫通孔311をもつ絶縁層420の領域であるハンモック領域320がそれぞれ配置される。なお、貫通孔311は、神経細胞等の観察試料が通過しない程度の径(例えば、神経細胞等の観察試料の直径未満の直径)に形成する。
【0032】
<製造方法>
図11は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための斜視図であり、図12及び図13はその製造方法を説明するための断面図であり、図14はその製造方法を説明するための流れ図である。なお、図11では基板10,410の記載を省略している。また、図12及び図13では、ネガ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用する場合の例のみを示すが、ポジ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用してもかまわない。本形態の細胞外マイクロ電極の製造工程は以下の通りである。
【0033】
[S101〜S109]第1実施形態で説明したS101〜S109の工程を実行する(図11(a),図12(a)〜(l))。
[S210]基板410(第2基板)の表面に感光性絶縁材料からなる絶縁層420(第4絶縁層)を形成する(図13(a))。
[S211]複数の貫通孔311を含む形状に絶縁層420(第4絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク230を用い、絶縁層420を露光し、露光された絶縁層420を現像して、絶縁層420を網目状の複数の貫通孔311を含む形状に加工する(図11(b),図13(b)(c))。
【0034】
[S212]加工されたに絶縁層420(第4絶縁層)の面全体に感光性絶縁材料からなる絶縁層440(第3絶縁層)を形成する(図13(d))。
[S213]1以上の貫通孔311の開口部を含む絶縁層420(第4絶縁層)上の各開口領域318をそれぞれ囲む形状に絶縁層440(第3絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク250を用い、絶縁層440を露光し、露光された絶縁層440を現像して、の各開口領域318をそれぞれ囲む形状に第3絶縁層を加工する(図11(c),図13(e)(f))。
[S214]S109で加工された絶縁膜70(第2絶縁膜)(図11(a),図12(a)〜(l))と、S213で加工された絶縁層440(第3絶縁膜)とを貼り合わせる(図13(g))。
[S215]基板10,410を剥離する(図13(h))。
【0035】
<細胞外マイクロ電極の使用方法>
次に、本形態の細胞外マイクロ電極の使用方法を例示する。
細胞外マイクロ電極で観察試料の計測や刺激を行う場合、まず、電極領域111が絶縁層420の下となり、電極領域111の露出面が上向きになるように細胞外マイクロ電極を配置する。この状態で、絶縁層420の各ハンモック領域320に神経細胞等の観察試料を配置する。すると、観察試料の重みによって各ハンモック領域320がたわみ、各ハンモック領域320上の各観察試料が細胞配置領域115に配置される。各観察試料は、そのまま又は培養された後、各細胞配置領域115の電極領域111で下側から計測又は刺激される。
【0036】
ここで、各観察試料は、たわんだ各ハンモック領域320に保持されるため、安定した計測や刺激が可能となる。また、各観察試料が平面上ではなく、たわんだハンモック領域320上に配置されるため、配置された神経細胞等の観察試料が自らの重みで平面状につぶれてしまうことも防止できる。
【0037】
<本形態の特徴>
以上のように、本形態では、電極領域111の形状を特定する絶縁層70とは別の絶縁層440,420によってハンモック領域320を構成し、それによって観察試料の位置を保持することとしたため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域111のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。
また、ステップS210以降に、絶縁層420(第4絶縁層)のハンモック領域320側の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を設けてもよい。これにより、観察試料のハンモック領域320への生体適合性を向上させることができる。
【0038】
また、各細胞配置領域115、その近傍又は貫通孔311の開口部近傍に、各細胞配置領域115を識別するための位置指標マーク(シリアル番号、座標軸など)を設けてもよい。このような位置指標マークを設けることにより、観察試料を顕微鏡などで拡大して観察する際に、観察試料が細胞外マイクロ電極1のどの位置の細胞配置領域115に配置されているものなのかを容易に特定することが可能となる。
また、細胞外マイクロ電極の金属層を多層化してもよい。この際には、金属層間の少なくとも一部を絶縁する絶縁層も追加される。
【0039】
また、絶縁層420に貫通孔311を設けず、代わりに、金属層40が存在しない領域に絶縁層20,70を貫通する複数の貫通孔を網目状に設け、これらの貫通孔が外部から各空間315へ貫通する構成としてもよい。これらの貫通孔も神経細胞等の観察試料が通過しない程度の径とする。この場合には、絶縁層420が絶縁層20,70の下となり、電極領域111の露出面が下向きになるように細胞外マイクロ電極を配置する。そして、各電極領域111の露出面と反対側の絶縁層20の外面を前述の各ハンモック領域として機能させる。各観察試料がこれらのハンモック領域に配置されると、前述と同様に、各観察試料の重量で各ハンモック領域がたわみ、そのたわみ部分に各観察試料が保持される。各観察試料は、そのまま又は培養された後、電極領域111で下側から計測又は刺激される。この場合にも、観察試料の移動抑制と適切な電極領域111のインピーダンス特性確保との両立が可能である。なお、この場合も、絶縁層20の外面を粗して親水性に改質し、ハンモック領域の生体適合性を向上させてもよい。また、この場合に、絶縁層70側から露出した電極領域111が形成されず、代わりに絶縁層20側から露出した電極領域111が形成され、絶縁層20側から露出した電極領域111部分に観察試料が配置されてもよい。
【0040】
また、第1実施形態の計測領域110において、金属層40や絶縁層90が存在しない領域で絶縁層20,70を貫通する貫通孔を網目状に設けてもよい。この場合には、電極領域111の露出面が上向きになり、その下に位置する絶縁層20の外面(下面)が浮いた状態で外部の機構部に保持される。そして、各観察試料が各細胞配置領域115に配置され、そのまま又は培養された後、電極領域111で下側から計測又は刺激される。この場合にも同様な効果が得られる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、神経細胞等の計測や刺激等を行う細胞外マイクロ電極の分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、従来の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】図2は、従来の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための流れ図である。
【図3】図3は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域を示す拡大斜視図であり、図4(b)は図4(a)のA−A断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。
【図5】図5は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】図6は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】図7は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための流れ図である。
【図8】図8は、生成された細胞外マイクロ電極のインピーダンス特性を示したグラフである。
【図9】図9は、細胞外マイクロ電極の計測領域の変形例を示す拡大斜視図である。
【図10】図10(a)は、第2実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域を示す斜視図であり、図10(b)は(a)のC−C断面図であり、図10(c)は(a)のD−D断面図である。
【図11】図11は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための斜視図である。
【図12】図12は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】図13は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図14】図14は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための流れ図である。
【符号の説明】
【0043】
1 細胞外マイクロ電極
111 電極領域
113 配線領域
115 細胞配置領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外マイクロ電極及びその製造方法に関し、特に、感光性絶縁材料を用いた細胞外マイクロ電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外マイクロ電極は、その電極上に配置又は培養された観察試料の計測と刺激に使用されている。代表的な細胞外マイクロ電極として、シリコンやポリイミドを基板材料とし、微細加工技術によって作製されるものが知られている(例えば、特許文献1や非特許文献1参照)。
図1は、従来の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図であり、図2は、その製造方法を説明するための流れ図である。これらの図を用い、従来の細胞外マイクロ電極の製造過程を説明する。
【0003】
まず、半導体基板又はガラス基板〔S〕表面に第1の絶縁層〔l(1)〕を形成する(ステップS1)。次に、第1の絶縁層の表面全面に金属層〔Au〕を形成し(ステップS2)、形成された表面全体にフォトレジスト層〔R〕を形成(ステップS3)する。次に、電極と電極配線が描画されたマスク〔M〕を用いてフォトレジスト層〔R〕を露光・現像し(ステップS4)、露光・現像されたフォトレジスト層〔R〕により金属層〔Au〕をエッチングして電極と電極配線を形成(ステップS5)し、フォトレジスト層を除去する(ステップS6)。そして、その表面全面に第2の絶縁層〔l(2)〕を形成(ステップS7)し、ドライエッチングの保護層としてアルミニウム等の金属膜〔Al〕を形成(ステップS8)する。次に、表面全体にフォトレジスト層〔R〕を形成し(ステップS9)、細胞外マイクロ電極の所定の形状が描画されたマスク〔M〕を用いてフォトレジスト層〔R〕を露光・現像(ステップS10)する。そして、露光・現像されたフォトレジスト層〔R〕により金属層〔Al〕をエッチングして細胞外マイクロ電極の所定の形状の金属保護層を形成(ステップS11)し、フォトレジスト層を除去する(ステップS12)。次に、その表面全体に露光された金属層〔Al〕を保護層としてドライエッチングを行い、第2の絶縁層〔l(2)〕ないし第1の絶縁層〔l(1)〕に切り込みを形成する(ステップS13)。次に、形成された表面全体にフォトレジスト層〔R〕を形成し(ステップS14)、第2の絶縁層〔l(2)〕より露出する電極と細胞外マイクロ電極の所定の形状が描画されたマスク〔M〕を用いてフォトレジスト層〔R〕を露光・現像し(ステップS15)、露光・現像されたフォトレジスト層〔R〕により金属層〔Al〕をエッチングして第2の絶縁層〔l(2)〕より露出する電極と細胞外マイクロ電極の所定の形状の金属保護層を形成する(ステップS16)。そして、フォトレジスト層〔R〕を除去し(ステップS17)、金属層〔Al〕を保護層としてドライエッチングを行い、第2の絶縁層〔l(2)〕により露出する電極と第1の絶縁層〔l(1)〕に切り込みを入れた細胞外マイクロ電極の所定の形状を形成する(ステップS18)。その後、金属保護層〔Al〕を除去し(ステップS19)、基板を剥離して(ステップS20)、細胞外マイクロ電極が完成する。
【特許文献1】特開2007−205756号公報
【非特許文献1】Boppart, S.A.; Wheeler, B.C.; Wallace, C.S. "A Flexible Perforated Microelectrode Array for Extended Neural Recordings", Biomedical Engineering, IEEE Transactions on Volume 39, Issue 1, Jan 1992 Pages 37-42.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の細胞外マイクロ電極及びその製造方法には以下のような課題がある。
(1)細胞外マイクロ電極上で観察試料の位置を安定させるような機構を持たず、観察試料の計測中又は刺激中に観察試料と電極との間にずれが生じる。
(2)製造工程が複雑で、作製が容易ではない。
図2に示したように、従来の製造工程では、電極を露出させ細胞外マイクロ電極を所定の形状に形成するために、柔軟絶縁材料をエッチングするステップS8からS19のプラズマエッチングやリアクティブイオンエッチング等のドライエッチング工程が不可欠である。そのため、従来の細胞外マイクロ電極の製造工程は非常に複雑でその作製は容易ではない。
【0005】
(3)露光とエッチング工程が多いため、アイライメント誤差が大きい。
従来の細胞外マイクロ電極の製造工程ではドライエッチング工程が不可欠であるが、このドライエッチングの影響により基板のアライメントマークが変形する。従来の製造工程では、複数工程においてアライメントマークを基準にマスクの位置決めが行われることから、アライメント誤差が生じて安定した微細加工を困難にしていた。
(4)ドライエッチング装置とその維持管理を含む製造コストが高く、廉価に細胞外マイクロ電極を作製することが難しい。
【0006】
従来のパリレンやポリイミドなどを含む柔軟絶縁材料を所定の形状に加工するためには、プラズマエッチングやリアクティブイオンエッチング等のドライエッチング工程が不可欠である。しかしながら、ドライエッチング工程に必要なプラズマエッチング装置やリアクティブイオンエッチング装置とそれらの維持費は高価であり、細胞外マイクロ電極を廉価に作製することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の細胞外マイクロ電極は、感光性絶縁材料からなる第1絶縁層と、第1絶縁層上に配置された1以上の金属部と、金属部の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第2絶縁層と、第2絶縁層の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第3絶縁層と、を有し、金属部は、第2絶縁層に覆われた配線領域と、第2絶縁層に覆われていない電極領域と、をそれぞれ含み、各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域は、それぞれ、第3絶縁層によって周囲を囲まれた領域である。なお、金属部は、単一の成膜工程によって成膜された単一の金属層のみからなるものであってもよいし、その少なくとも一部分が複数の金属層の堆積によって構成されたものであってもよい。
【0008】
ここで、本発明では、各電極領域の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域が、それぞれ、第3絶縁層によって周囲を囲まれた領域となる。これにより、各細胞配置領域にそれぞれ配置又は培養された観察試料は、第3絶縁層で形成された壁によって周囲を囲まれる。その結果、計測又は刺激中に観察試料が電極領域から位置ずれすることを抑制できる。
【0009】
また、本発明は、電極領域の形状を決定する第2絶縁層と独立な第3絶縁層によって観察試料の移動を抑制する壁を形成する点にも特徴がある。観察試料の移動を抑制するためには、それが配置される領域(空間)を壁で囲めばよいが、その壁で囲むべき最適な範囲は観察試料の量によって異なる。一方、第2絶縁層に覆われていない電極領域のインピーダンス特性は露出面積に依存するため、第2絶縁層の壁で覆われる電極領域表面の範囲は特定の範囲に制限される。そのため、第2絶縁層に覆われていない電極領域のみに観察試料を配置し、第2絶縁層を観察試料の移動を抑制する壁として用いる場合、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立ができない場合がある。本発明では、電極領域と独立に、第2絶縁層の一部分を覆う第3絶縁層によって観察試料の移動を抑制する壁を形成するため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。
【0010】
また、第1絶縁層及び第2絶縁層に感光性絶縁材料を用いることにより、本発明の細胞外マイクロ電極は、以下のようなドライエッチングを用いない簡易な製造方法によって製造できる。
【0011】
すなわち、本発明の細胞外マイクロ電極は、(a)基板の表面に感光性絶縁材料からなる第1絶縁層を形成する工程と、(b)所定の形状に第1絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第1絶縁層を露光し、露光された第1絶縁層を現像して、第1絶縁層を所定の形状に加工する工程と、(c)工程(b)によって加工された第1絶縁層側の面全体に金属層を形成する工程と、(d)金属層が形成された面全体に第1フォトレジスト層を形成する工程と、(e) 所定の形状に金属層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第1フォトレジスト層を露光し、露光された第1フォトレジスト層を現像する工程と、(f)工程(e)で露光及び現像された第1フォトレジスト層が形成された金属層をエッチングする工程と、(g)第1フォトレジスト層を除去する工程と、(h)工程(f)によって加工された金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成する工程と、(i)金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に第2絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第2絶縁層を露光し、露光された第2絶縁層を現像して、金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に第2絶縁層を加工する工程と、(j)工程(i)によって加工されたに第2絶縁層の面全体に感光性絶縁材料からなる第3絶縁層を形成する工程と、(k)各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に第3絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、第3絶縁層を露光し、露光された第3絶縁層を現像して、の各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に第3絶縁層を加工する工程と、(l)基板を剥離する工程と、を有する製造方法によって製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、第2絶縁層の一部分を覆う第3絶縁層によって観察試料の移動を抑制する壁を形成することとしたため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。
また、本発明では、絶縁層に感光性絶縁材料を用い、本発明独自の製造工程に従うことで、従来必要であったドライエッチング工程が不要となる。その結果、製造工程の単純化、アイライメント誤差の低減、及び製造コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態と説明する。
<構成>
図3は第1実施形態の細胞外マイクロ電極1の計測領域110を示す斜視図である。図4(a)は細胞外マイクロ電極1の計測領域110を示す拡大斜視図であり、図4(b)は図4(a)のA−A断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。まず、これらの図を用いて、本形態の細胞外マイクロ電極1の構成を説明する。
【0014】
図3に示すように、本形態の細胞外マイクロ電極1の計測領域110には、互いに絶縁された複数の電極領域111(第1電極領域)が同一面側に露出して配置される。また、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層90(第3絶縁層)によって周囲を囲まれた領域となる。すなわち、各細胞配置領域115上には絶縁層90が存在せず、各細胞配置領域115の周囲に存在する絶縁層90によって、各細胞配置領域115の周囲がそれぞれ独立に囲まれる。
【0015】
図4に示すように、本形態の細胞外マイクロ電極1は、柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層20(第1絶縁層)と、絶縁層20上に配置された金属層40(金属部)と、金属層40の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層70(第2絶縁層)と、絶縁層70の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層90(第3絶縁層)とからなる。また、金属層40は、絶縁層70(第2絶縁層)に覆われた配線領域113と、絶縁層70に覆われていない電極領域111をそれぞれ含む。また、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層90(第3絶縁層)によって周囲を囲まれた領域となっている。図4の例では、絶縁層90が網目状に形成されて絶縁層90の表面と絶縁層70の表面との間に段差が形成され、各網目内に各細胞配置領域115が配置される構成となっている。なお、細胞配置領域115は、図4のように電極領域111よりも広い領域であってもよいし、電極領域111と同程度の領域であってもよく、観測試料の量に応じて適宜設定可能である。
【0016】
また、柔軟性の感光性絶縁材料の例は、感光性ポリイミド、感光性ポリアミド、感光性ポリエステル、感光性ベンゾシクロブテン、感光性パリレン、感光性エポキシ、感光性アクリレートなどである。この中でも、加工が容易な感光性ポリイミドを用いることがより望ましい。また、使用する感光性絶縁材料は、細胞外マイクロ電極として使用した際の生体への悪影響が小さく、なおかつ、細胞外マイクロ電極を構成するために必要な膜厚に加工可能な材料であることが望ましい。そのような感光性絶縁材料の一例は、感光性ポリイミドの一種である富士フィルム製 "Durimide(登録商標) 7510"である。また、金属層40の材料の例は、白金(Pt)、金(Au)、窒可チタン(TiO2)、酸化銀(Ag2O)、タングステン(W)、スズ添加酸化インジウム(Indium Tin Oxide)、酸化スズ(SnO,SnO2,SnO3)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などである。これらの中でも、微細加工が容易で導電性が高く柔軟な白金や金が望ましい。
【0017】
<製造方法>
図5及び図6は第1実施形態の細胞外マイクロ電極1の製造方法を説明するための断面図であり、図7はその製造方法を説明するための流れ図である。なお、図5はネガ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用する場合の例を示し、図6はポジ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用する場合の例を示す。本形態の細胞外マイクロ電極1の製造工程は以下の通りである。
【0018】
[S101]基板10の表面に感光性絶縁材料からなる絶縁層20(第1絶縁層)を形成する(図5(a)、図6(a))。なお、基板10の例は、シリコンなどの半導体基板やガラス基板などである。
[S102]所定の細胞外マイクロ電極1の外部形状に絶縁層20(第1絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク30を用い、絶縁層20を露光し、露光された絶縁層20を現像して、絶縁層20を所定の形状に加工する(図5(b)(c)、図6(b)(c))。
[S103]ステップS102によって加工された絶縁層20(第1絶縁層)側の面全体に金属層40を形成する(図5(d)、図6(d))。
[S104]金属層40が形成された面全体にフォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)を形成する(図5(e)、図6(e))。
【0019】
[S105]所定の形状に金属層40を加工するための形状が描画されたマスク60を用い、フォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)を露光し、露光されたフォトレジスト層50を現像する(図5(f)(g)、図6(f)(g))。
[S106]ステップS105で露光及び現像されたフォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)が形成された金属層40をエッチング(ウェットエッチング)する(図5(h)、図6(h))。
[S107]フォトレジスト層50(第1フォトレジスト層)を除去する(図5(i)、図6(i))。
【0020】
[S108]ステップS106によって加工された金属層40側の面全体に感光性絶縁材料からなる絶縁層70(第2絶縁層)を形成する(図5(j)、図6(j))。
[S109]金属層40の配線領域113を覆いつつ電極領域111を露出させる形状に絶縁層70(第2絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク80を用い、絶縁層70を露光し、露光された絶縁層70を現像して、金属層40の配線領域113を覆いつつ電極領域111を露出させる形状に絶縁層70を加工する(図5(k)(l)、図6(k)(l))。
【0021】
[S110]加工されたに絶縁層70(第2絶縁層)の面全体に感光性絶縁材料からなる絶縁層90(第3絶縁層)を形成する(図5(m)、図6(m))。
[S111]各電極領域111の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域115をそれぞれ囲む形状に絶縁層90を加工するための形状が描画されたマスク100を用い、絶縁層90(第3絶縁層)を露光し、露光された絶縁層90を現像して、各細胞配置領域115をそれぞれ囲む形状に絶縁層90を加工する(図5(n)(o)、図6(n)(o))。
[S112]基板10を剥離する(図5(p)、図6(p))。
【0022】
<インピーダンス特性>
図8は、以上のように生成された細胞外マイクロ電極1のインピーダンス特性を示したグラフである。図8に示すように、以上のように生成された細胞外マイクロ電極1は電極領域111の直径に相関し、脳表での計測と刺激に適当なインピーダンス特性を有する。
【0023】
<細胞外マイクロ電極1の使用方法>
次に、本形態の細胞外マイクロ電極1の使用方法を例示する。
細胞外マイクロ電極1で観察試料の計測や刺激を行う場合、まず、電極領域111の露出面が上向きとなるように細胞外マイクロ電極1を配置する。この状態で細胞外マイクロ電極1の各細胞配置領域115に神経細胞等の観察試料が配置される。各観察試料は、そのまま又は培養された後、各細胞配置領域115の電極領域111で下側から計測又は刺激される。なお、神経細胞培養方法の例は、「畠中 寛,中川 八郎,“神経細胞培養法 (ニューロサイエンス・ラボマニュアル)”,シュプリンガー・フェアラーク東京,ISBN-10: 4431707247, ISBN-13: 978-4431707240」に記載されている。また、細胞外マイクロ電極1での観察試料の計測方法の例は、特許文献1に記載されている。
【0024】
ここで、各細胞配置領域115はそれぞれ絶縁層90の壁によって囲まれているため、各細胞配置領域115に配置又は培養された観察試料は絶縁層90の壁によって位置が保持され、安定した計測や刺激が可能となる。
【0025】
<本形態の特徴>
以上のように、本形態では、電極領域111の形状を特定する絶縁層70とは別の絶縁層90によって観察試料の移動を抑制する壁を形成することとしたため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域111のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。なお、絶縁層90の加工形状は、上述のものには限定されず、観察試料の移動抑制と適切な電極領域のインピーダンス特性確保との両立が可能な構成であれば、どのようなものであってもよい。図9は、細胞外マイクロ電極1の計測領域110の変形例を示す拡大斜視図である。このように、各細胞配置領域115の位置に対応する複数の貫通孔を絶縁層90に設け、絶縁層90の各貫通孔の内壁面で各細胞配置領域115の周囲を囲むトラップ状の構成であってもよい。また、絶縁層90の各貫通孔をすり鉢状の形状とし、それらの絶縁層70側の開口径よりもその反対側の開口径を広くした場合には、各細胞配置領域115への観察試料の配置が容易になるといった利点がある。一方、当該各貫通孔の絶縁層70側の開口径よりもその反対側の開口径を狭くした場合には、各細胞配置領域115に配置された観察試料の位置安定性がより強固なものとなる。このような形状は、例えば、マスクエッジでの露光の回り込みの影響を利用し、感光性絶縁材料をポジ型とするかネガ型とするかによって選択的に形成可能である。
【0026】
また、本形態では、絶縁層に感光性絶縁材料を用い、本発明独自の製造工程に従うことで、従来必要であったドライエッチング工程が不要となる。その結果、製造工程が単純化できる。また、ドライエッチング工程が不要となるため、ドライエッチング工程に起因するアライメントマークの変形が回避でき、アイライメント誤差が低減し、安定した加工精度で細胞外マイクロ電極1を作成できる。さらに、ドライエッチング工程が不要となるため、ドライエッチング装置とその維持費を不要とし、細胞外マイクロ電極1を低廉に作製できる。
【0027】
また、ステップS109とステップS112との間に、絶縁層70(第2絶縁層)の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を設けてもよい。通常、シリコン、パリレン、ポリイミドなどを含む絶縁材料は、その硬さ如何にかかわらず細胞正着性が低く、生体の異物反応を促進する。これに対し、絶縁層70の表面を親水性に改質することで、神経細胞等の観察試料の細胞配置領域115への生体適合性を向上させ、長期間安定した計測と刺激とが可能となる。
【0028】
また、各細胞配置領域115又はその近傍に、各細胞配置領域115を識別するための位置指標マーク(シリアル番号、座標軸など)を設けてもよい。この位置指標マークも上述した感光性絶縁材料を用いて他の絶縁層と同様に構成すればよい。このような位置指標マークを設けることにより、観察試料を顕微鏡などで拡大して観察する際に、観察試料が細胞外マイクロ電極1のどの位置の細胞配置領域115に配置されているものなのかを容易に特定することが可能となる。
【0029】
また、細胞外マイクロ電極1の金属層を多層化してもよい。この場合には、金属層間の少なくとも一部を絶縁する絶縁層が追加される。従来の製造工程ではドライエッチング工程が必須であるが、従来の製造工程で金属層を多層構造にする場合、層数に応じてドライエッチング工程の数も増加する。この場合、前述したドライエッチング工程に基づく、製造工程の複雑化やアイライメント誤差の増大の問題がより大きくなる。しかし、本形態では、絶縁層に感光性絶縁材料を用いることで従来必要であったドライエッチング工程が不要となるため、細胞外マイクロ電極1の金属層を多層に構成し、それに伴って金属層間の絶縁層を追加する場合でも、ドライエッチング工程に基づく前述の問題は生じない。そして、本形態のように、細胞外マイクロ電極1の金属層を多層化することにより、細胞外マイクロ電極1の面積を必要以上に大きくすることなく、電極チャネルの数を増加させることができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態を説明する。本形態は第1実施形態の変形例であり、絶縁層の壁で周囲を囲まれた細胞配置領域の上部に、神経細胞等の観察試料よりも径が小さな複数の貫通孔が網目状に形成された感光性絶縁材料からなる絶縁層が配置される。この複数の貫通孔が網目状に形成された絶縁層の上面に観察試料を配置することにより、当該絶縁層がハンモック状にたわみ、そのたわみ部分に観察試料が保持される。これにより、観察試料の位置ずれを防止できるとともに観察試料の変形を抑制する。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0031】
<構成>
図10(a)は、第2実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域310を示す斜視図であり、図10(b)は(a)のC−C断面図であり、図10(c)は(a)のD−D断面図である。
図10に示すように、本形態の細胞外マイクロ電極の計測領域310は、柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層20(第1絶縁層)と、絶縁層20上に配置された金属層40(金属部)と、金属層40の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層70(第2絶縁層)と、絶縁層70の一部分を覆う柔軟性の感光性絶縁材料からなる絶縁層440(第3絶縁層)と、複数の貫通孔311が網目状に形成された感光性絶縁材料からなる絶縁層420(第4絶縁層)からなる。また、金属層40は、絶縁層70(第2絶縁層)に覆われた配線領域113と、絶縁層70に覆われていない電極領域111をそれぞれ含む。また、各電極領域111の露出面をそれぞれ含む各細胞配置領域115は、それぞれ、絶縁層440(第3絶縁層)によって覆われておらず、絶縁層440によって周囲を囲まれた領域となっている。また、絶縁層440(第3絶縁層)は、絶縁層70(第2絶縁層)と絶縁層420(第4絶縁層)との間に配置され、各細胞配置領域115と絶縁層420との間には、それぞれ、絶縁層440によって周囲を囲まれた空間315が存在する。そして、絶縁層420(第4絶縁層)に形成された網目状の貫通孔311は、外部から何れかの空間315へ貫通する孔となっている。これにより、各細胞配置領域115の各上面には、網目状の貫通孔311をもつ絶縁層420の領域であるハンモック領域320がそれぞれ配置される。なお、貫通孔311は、神経細胞等の観察試料が通過しない程度の径(例えば、神経細胞等の観察試料の直径未満の直径)に形成する。
【0032】
<製造方法>
図11は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための斜視図であり、図12及び図13はその製造方法を説明するための断面図であり、図14はその製造方法を説明するための流れ図である。なお、図11では基板10,410の記載を省略している。また、図12及び図13では、ネガ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用する場合の例のみを示すが、ポジ型の感光性絶縁材料及びフォトレジストを使用してもかまわない。本形態の細胞外マイクロ電極の製造工程は以下の通りである。
【0033】
[S101〜S109]第1実施形態で説明したS101〜S109の工程を実行する(図11(a),図12(a)〜(l))。
[S210]基板410(第2基板)の表面に感光性絶縁材料からなる絶縁層420(第4絶縁層)を形成する(図13(a))。
[S211]複数の貫通孔311を含む形状に絶縁層420(第4絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク230を用い、絶縁層420を露光し、露光された絶縁層420を現像して、絶縁層420を網目状の複数の貫通孔311を含む形状に加工する(図11(b),図13(b)(c))。
【0034】
[S212]加工されたに絶縁層420(第4絶縁層)の面全体に感光性絶縁材料からなる絶縁層440(第3絶縁層)を形成する(図13(d))。
[S213]1以上の貫通孔311の開口部を含む絶縁層420(第4絶縁層)上の各開口領域318をそれぞれ囲む形状に絶縁層440(第3絶縁層)を加工するための形状が描画されたマスク250を用い、絶縁層440を露光し、露光された絶縁層440を現像して、の各開口領域318をそれぞれ囲む形状に第3絶縁層を加工する(図11(c),図13(e)(f))。
[S214]S109で加工された絶縁膜70(第2絶縁膜)(図11(a),図12(a)〜(l))と、S213で加工された絶縁層440(第3絶縁膜)とを貼り合わせる(図13(g))。
[S215]基板10,410を剥離する(図13(h))。
【0035】
<細胞外マイクロ電極の使用方法>
次に、本形態の細胞外マイクロ電極の使用方法を例示する。
細胞外マイクロ電極で観察試料の計測や刺激を行う場合、まず、電極領域111が絶縁層420の下となり、電極領域111の露出面が上向きになるように細胞外マイクロ電極を配置する。この状態で、絶縁層420の各ハンモック領域320に神経細胞等の観察試料を配置する。すると、観察試料の重みによって各ハンモック領域320がたわみ、各ハンモック領域320上の各観察試料が細胞配置領域115に配置される。各観察試料は、そのまま又は培養された後、各細胞配置領域115の電極領域111で下側から計測又は刺激される。
【0036】
ここで、各観察試料は、たわんだ各ハンモック領域320に保持されるため、安定した計測や刺激が可能となる。また、各観察試料が平面上ではなく、たわんだハンモック領域320上に配置されるため、配置された神経細胞等の観察試料が自らの重みで平面状につぶれてしまうことも防止できる。
【0037】
<本形態の特徴>
以上のように、本形態では、電極領域111の形状を特定する絶縁層70とは別の絶縁層440,420によってハンモック領域320を構成し、それによって観察試料の位置を保持することとしたため、観察試料の移動抑制と適切な電極領域111のインピーダンス特性確保との両立が可能となる。
また、ステップS210以降に、絶縁層420(第4絶縁層)のハンモック領域320側の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を設けてもよい。これにより、観察試料のハンモック領域320への生体適合性を向上させることができる。
【0038】
また、各細胞配置領域115、その近傍又は貫通孔311の開口部近傍に、各細胞配置領域115を識別するための位置指標マーク(シリアル番号、座標軸など)を設けてもよい。このような位置指標マークを設けることにより、観察試料を顕微鏡などで拡大して観察する際に、観察試料が細胞外マイクロ電極1のどの位置の細胞配置領域115に配置されているものなのかを容易に特定することが可能となる。
また、細胞外マイクロ電極の金属層を多層化してもよい。この際には、金属層間の少なくとも一部を絶縁する絶縁層も追加される。
【0039】
また、絶縁層420に貫通孔311を設けず、代わりに、金属層40が存在しない領域に絶縁層20,70を貫通する複数の貫通孔を網目状に設け、これらの貫通孔が外部から各空間315へ貫通する構成としてもよい。これらの貫通孔も神経細胞等の観察試料が通過しない程度の径とする。この場合には、絶縁層420が絶縁層20,70の下となり、電極領域111の露出面が下向きになるように細胞外マイクロ電極を配置する。そして、各電極領域111の露出面と反対側の絶縁層20の外面を前述の各ハンモック領域として機能させる。各観察試料がこれらのハンモック領域に配置されると、前述と同様に、各観察試料の重量で各ハンモック領域がたわみ、そのたわみ部分に各観察試料が保持される。各観察試料は、そのまま又は培養された後、電極領域111で下側から計測又は刺激される。この場合にも、観察試料の移動抑制と適切な電極領域111のインピーダンス特性確保との両立が可能である。なお、この場合も、絶縁層20の外面を粗して親水性に改質し、ハンモック領域の生体適合性を向上させてもよい。また、この場合に、絶縁層70側から露出した電極領域111が形成されず、代わりに絶縁層20側から露出した電極領域111が形成され、絶縁層20側から露出した電極領域111部分に観察試料が配置されてもよい。
【0040】
また、第1実施形態の計測領域110において、金属層40や絶縁層90が存在しない領域で絶縁層20,70を貫通する貫通孔を網目状に設けてもよい。この場合には、電極領域111の露出面が上向きになり、その下に位置する絶縁層20の外面(下面)が浮いた状態で外部の機構部に保持される。そして、各観察試料が各細胞配置領域115に配置され、そのまま又は培養された後、電極領域111で下側から計測又は刺激される。この場合にも同様な効果が得られる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、神経細胞等の計測や刺激等を行う細胞外マイクロ電極の分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、従来の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】図2は、従来の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための流れ図である。
【図3】図3は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域を示す拡大斜視図であり、図4(b)は図4(a)のA−A断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。
【図5】図5は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】図6は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】図7は第1実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための流れ図である。
【図8】図8は、生成された細胞外マイクロ電極のインピーダンス特性を示したグラフである。
【図9】図9は、細胞外マイクロ電極の計測領域の変形例を示す拡大斜視図である。
【図10】図10(a)は、第2実施形態の細胞外マイクロ電極の計測領域を示す斜視図であり、図10(b)は(a)のC−C断面図であり、図10(c)は(a)のD−D断面図である。
【図11】図11は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための斜視図である。
【図12】図12は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】図13は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための断面図である。
【図14】図14は第2実施形態の細胞外マイクロ電極の製造方法を説明するための流れ図である。
【符号の説明】
【0043】
1 細胞外マイクロ電極
111 電極領域
113 配線領域
115 細胞配置領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性絶縁材料からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に配置された1以上の金属部と、
前記金属部の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第3絶縁層と、を有し、
前記金属部は、前記第2絶縁層に覆われた配線領域と、前記第2絶縁層に覆われていない電極領域と、をそれぞれ含み、
前記の各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域は、それぞれ、前記第3絶縁層によって周囲を囲まれた領域である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項2】
請求項1の細胞外マイクロ電極であって、
前記細胞配置領域は、前記第2絶縁層の表面が粗され、親水性に改質されることによって生体適合性が向上した領域である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項3】
請求項1又は2の細胞外マイクロ電極であって、
複数の貫通孔が網目状に形成された感光性絶縁材料からなる第4絶縁層をさらに有し、
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層と前記第4絶縁層との間に配置され、
前記各細胞配置領域と前記4絶縁層との間には、それぞれ、前記第3絶縁層によって周囲を囲まれた空間が存在し、
前記第4絶縁層に形成された前記貫通孔は、外部から何れかの前記空間へ貫通する孔である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項4】
請求項1又は2の細胞外マイクロ電極であって、
前記金属部や前記第3絶縁層が存在しない領域に、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とを貫通する貫通孔が網目状に設けられる、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項5】
請求項4の細胞外マイクロ電極であって、
前記第1絶縁層の表面は、粗されて親水性に改質されることによって生体適合性が向上した領域である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの細胞外マイクロ電極であって、
前記の各絶縁層は、感光性絶縁材料を露光及び現像することによって形状が加工された膜である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項7】
請求項1の細胞外マイクロ電極の製造方法であって、
(a)基板の表面に感光性絶縁材料からなる第1絶縁層を形成する工程と、
(b)所定の形状に前記第1絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1絶縁層を露光し、露光された前記第1絶縁層を現像して、前記第1絶縁層を所定の形状に加工する工程と、
(c)工程(b)によって加工された前記第1絶縁層側の面全体に金属層を形成する工程と、
(d)前記金属層が形成された面全体に第1フォトレジスト層を形成する工程と、
(e) 所定の形状に前記金属層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1フォトレジスト層を露光し、露光された前記第1フォトレジスト層を現像する工程と、
(f)工程(e)で露光及び現像された前記第1フォトレジスト層が形成された前記金属層をエッチングする工程と、
(g)前記第1フォトレジスト層を除去する工程と、
(h)工程(f)によって加工された前記金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成する工程と、
(i)前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第2絶縁層を露光し、露光された前記第2絶縁層を現像して、前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工する工程と、
(j)工程(i)によって加工されたに前記第2絶縁層の面全体に感光性絶縁材料からなる第3絶縁層を形成する工程と、
(k)前記の各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第3絶縁層を露光し、露光された前記第3絶縁層を現像して、前記の各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工する工程と、
(l)前記基板を剥離する工程と、
を有する製造方法。
【請求項8】
請求項7の製造方法であって、
前記工程(i)と前記工程(l)との間に行われる、前記第2絶縁層の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を、さらに有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項3の細胞外マイクロ電極の製造方法であって、
(a)第1基板の表面に感光性絶縁材料からなる第1絶縁層を形成する工程と、
(b)所定の形状に前記第1絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1絶縁層を露光し、露光された前記第1絶縁層を現像して、前記第1絶縁層を所定の形状に加工する工程と、
(c)工程(b)によって加工された前記第1絶縁層側の面全体に金属層を形成する工程と、
(d)前記金属層が形成された面全体に第1フォトレジスト層を形成する工程と、
(e) 所定の形状に前記金属層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1フォトレジスト層を露光し、露光された前記第1フォトレジスト層を現像する工程と、
(f)工程(e)で露光及び現像された前記第1フォトレジスト層が形成された前記金属層をエッチングする工程と、
(g)前記第1フォトレジスト層を除去する工程と、
(h)工程(f)によって加工された前記金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成する工程と、
(i)前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第2絶縁層を露光し、露光された前記第2絶縁層を現像して、前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工する工程と、
(j)第2基板の表面に感光性絶縁材料からなる第4絶縁層を形成する工程と、
(k)網目状の複数の貫通孔を含む形状に前記第4絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第4絶縁層を露光し、露光された前記第4絶縁層を現像して、前記第4絶縁層を複数の貫通孔を含む形状に加工する工程と、
(l)工程(k)によって加工されたに前記第4絶縁層の面全体に感光性絶縁材料からなる第3絶縁層を形成する工程と、
(m)1以上の前記貫通孔の開口部を含む前記第4絶縁層上の各開口領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第3絶縁層を露光し、露光された前記第3絶縁層を現像して、前記の各開口領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工する工程と、
(n)前記工程(i)で加工された前記第2絶縁層と、前記工程(m)で加工された前記第3絶縁層と、を貼り合わせる工程と、
(o)前記第1基板及び前記第2基板を剥離する工程と、
を有する製造方法。
【請求項10】
請求項9の製造方法であって、
前記工程(j)より後に行われる、前記第4絶縁層の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を、さらに有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項1】
感光性絶縁材料からなる第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に配置された1以上の金属部と、
前記金属部の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の一部分を覆う感光性絶縁材料からなる第3絶縁層と、を有し、
前記金属部は、前記第2絶縁層に覆われた配線領域と、前記第2絶縁層に覆われていない電極領域と、をそれぞれ含み、
前記の各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域は、それぞれ、前記第3絶縁層によって周囲を囲まれた領域である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項2】
請求項1の細胞外マイクロ電極であって、
前記細胞配置領域は、前記第2絶縁層の表面が粗され、親水性に改質されることによって生体適合性が向上した領域である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項3】
請求項1又は2の細胞外マイクロ電極であって、
複数の貫通孔が網目状に形成された感光性絶縁材料からなる第4絶縁層をさらに有し、
前記第3絶縁層は、前記第2絶縁層と前記第4絶縁層との間に配置され、
前記各細胞配置領域と前記4絶縁層との間には、それぞれ、前記第3絶縁層によって周囲を囲まれた空間が存在し、
前記第4絶縁層に形成された前記貫通孔は、外部から何れかの前記空間へ貫通する孔である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項4】
請求項1又は2の細胞外マイクロ電極であって、
前記金属部や前記第3絶縁層が存在しない領域に、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とを貫通する貫通孔が網目状に設けられる、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項5】
請求項4の細胞外マイクロ電極であって、
前記第1絶縁層の表面は、粗されて親水性に改質されることによって生体適合性が向上した領域である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの細胞外マイクロ電極であって、
前記の各絶縁層は、感光性絶縁材料を露光及び現像することによって形状が加工された膜である、
ことを特徴とする細胞外マイクロ電極。
【請求項7】
請求項1の細胞外マイクロ電極の製造方法であって、
(a)基板の表面に感光性絶縁材料からなる第1絶縁層を形成する工程と、
(b)所定の形状に前記第1絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1絶縁層を露光し、露光された前記第1絶縁層を現像して、前記第1絶縁層を所定の形状に加工する工程と、
(c)工程(b)によって加工された前記第1絶縁層側の面全体に金属層を形成する工程と、
(d)前記金属層が形成された面全体に第1フォトレジスト層を形成する工程と、
(e) 所定の形状に前記金属層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1フォトレジスト層を露光し、露光された前記第1フォトレジスト層を現像する工程と、
(f)工程(e)で露光及び現像された前記第1フォトレジスト層が形成された前記金属層をエッチングする工程と、
(g)前記第1フォトレジスト層を除去する工程と、
(h)工程(f)によって加工された前記金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成する工程と、
(i)前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第2絶縁層を露光し、露光された前記第2絶縁層を現像して、前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工する工程と、
(j)工程(i)によって加工されたに前記第2絶縁層の面全体に感光性絶縁材料からなる第3絶縁層を形成する工程と、
(k)前記の各電極領域の露出面をそれぞれ含む、当該露出面側の特定の閉じた領域である各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第3絶縁層を露光し、露光された前記第3絶縁層を現像して、前記の各細胞配置領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工する工程と、
(l)前記基板を剥離する工程と、
を有する製造方法。
【請求項8】
請求項7の製造方法であって、
前記工程(i)と前記工程(l)との間に行われる、前記第2絶縁層の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を、さらに有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項3の細胞外マイクロ電極の製造方法であって、
(a)第1基板の表面に感光性絶縁材料からなる第1絶縁層を形成する工程と、
(b)所定の形状に前記第1絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1絶縁層を露光し、露光された前記第1絶縁層を現像して、前記第1絶縁層を所定の形状に加工する工程と、
(c)工程(b)によって加工された前記第1絶縁層側の面全体に金属層を形成する工程と、
(d)前記金属層が形成された面全体に第1フォトレジスト層を形成する工程と、
(e) 所定の形状に前記金属層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第1フォトレジスト層を露光し、露光された前記第1フォトレジスト層を現像する工程と、
(f)工程(e)で露光及び現像された前記第1フォトレジスト層が形成された前記金属層をエッチングする工程と、
(g)前記第1フォトレジスト層を除去する工程と、
(h)工程(f)によって加工された前記金属層側の面全体に感光性絶縁材料からなる第2絶縁層を形成する工程と、
(i)前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第2絶縁層を露光し、露光された前記第2絶縁層を現像して、前記金属層の配線領域を覆いつつ電極領域を露出させる形状に前記第2絶縁層を加工する工程と、
(j)第2基板の表面に感光性絶縁材料からなる第4絶縁層を形成する工程と、
(k)網目状の複数の貫通孔を含む形状に前記第4絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第4絶縁層を露光し、露光された前記第4絶縁層を現像して、前記第4絶縁層を複数の貫通孔を含む形状に加工する工程と、
(l)工程(k)によって加工されたに前記第4絶縁層の面全体に感光性絶縁材料からなる第3絶縁層を形成する工程と、
(m)1以上の前記貫通孔の開口部を含む前記第4絶縁層上の各開口領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工するための形状が描画されたマスクを用い、前記第3絶縁層を露光し、露光された前記第3絶縁層を現像して、前記の各開口領域をそれぞれ囲む形状に前記第3絶縁層を加工する工程と、
(n)前記工程(i)で加工された前記第2絶縁層と、前記工程(m)で加工された前記第3絶縁層と、を貼り合わせる工程と、
(o)前記第1基板及び前記第2基板を剥離する工程と、
を有する製造方法。
【請求項10】
請求項9の製造方法であって、
前記工程(j)より後に行われる、前記第4絶縁層の表面を粗し、それを親水性に改質する工程を、さらに有する、
ことを特徴とする製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−288080(P2009−288080A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141007(P2008−141007)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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