説明

細胞外体液からの特異的生体高分子物質の体外捕獲

【課題】細胞外体液から特異的細胞高分子物質を体外捕獲するための方法および装置を提供する。
【解決手段】細胞外体液から特異的細胞高分子物質を体外捕獲するための方法は、カラムタイプの選択の工程からなり、1つ以上の特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有することを特徴とする吸着性媒体の安定化流動床を介した細胞外体液の体外循環からなる。また、連続したバッチ工程で、1つ以上の特異的生体高分子物質に対する特異的親和性を有することを特徴とするか、または、さらに、直径が小さくて密度が高い吸着性粒子からなることを特徴とする吸着性媒体を介したそのような体外循環からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、1つ以上の特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有することを特徴とする吸着性媒体の安定化流動床を介して、細胞外体液を体外循環させることからなる、細胞外体液から特異的生体高分子物質を体外捕獲するための方法を記載する。本発明は、更に細胞外体液を、小さく高密度な粒子からなる特異的吸着性媒体を有する流動床を介して循環する方法にも関係する。
また、細胞外体液からの特異的な生体分子物質の体外捕獲を用いた哺乳動物の治療処置の方法および装置を開示する。
【0002】
発明の背景
体液から特異的物質を除去するために、解毒剤粒子のカラムを介して細胞外体液を処理する概念は、特にヒト血液の場合でよく知られている(Yatzidis,H.;A convenient hemoperfusion microapparatus over charcoal.Proc.Europ. Dial.Transplant Ass.,1:83,1964)。この技術は初期には非常に効果的であるが、血液灌流への今までのその様な試みは、白血球および血小板の非常に高い損失(Duena,G.and Kolff,W.J.;Clinical experience with the Yatzidis charcoal artificial kidney. Trans. Amer.Soc.Artif.Int.Organs,11:179, 1965)、ならびにカラム内の血液の凝固、泥化、およびチャンネル化に悩まされてきた。そして、カラムは効果がなくなり、患者は血小板減少および白血球減少にさらされる。更に、細かな解毒剤粒子が血流中に放出され、血管ならびに肺、脾臓、および腎臓などの臓器内で塞栓が起こる傾向がある(Hagstam,K.E.,Larsson,L.E.,and Thysell,H.;Experimental studies on charcoal hemoperfusion in Phenobarbital intoxication and uremia including histological findings.Acta.Med.Scand.,180:593,
1966)。
【0003】
血液の体外精製に対する従来の治療処置は、血液透析、血漿瀉血、および限外濾過などの膜技術、ならびに血液灌流および血漿灌流などの吸着技術、またはこれらの方法を組み合わせたものを含む。上記の膜技術は、全て、血液中に含まれる化合物をそのサイズに従って分離するが、特定の成分を選択的に除去するものではない。それに対して、吸着技術は、選択的および非選択的の両方であり得る。
【0004】
吸着またはイオン交換によって汚染物を分離する血液灌流は、解毒剤粒子の塊の固体表面に渡って汚染された血液が通過することを必要とする。もう一つの技術、血漿灌流は、血漿が吸着剤と接触する前に、血球の分離を必要とする。いずれにしても、処理した血液または結合細胞、および処理した血漿を、患者の血液循環システムに戻す。
【0005】
血液から除去すべき特定の成分が明確であれば、その特定の成分を誘引して結合するよう特別にデザインした親和性特異的分子からなる吸着剤を使用してもよい。以下は、幾つかの吸着技術の例である:(1)プロテイン−Aなどの吸着剤を用いた自己免疫抗体、免疫グロブリン、および免疫複合体の除去;(2)固定化モノクローナル抗体および特異的に固定化された親和性特異的分子などの吸着剤を使った血中毒素および腫瘍抗原(例えば、肝癌と関連があるα-フェトプロテイン、種々の腫瘍と関連がある癌胎児抗原、乳癌と関連があるチオエステラーゼまたはサイトケラチンなど)の除去;(3)タンパク質結合毒素およびこれらタンパク質結合体の抗原特性を基にした薬剤(例えば、精神異常発現薬または麻酔薬の過剰投与)の除去;(4)LDLに特異的な吸着剤を使ったコレステロール(低密度リポタンパク、DLD)の除去;(5)活性炭に付着したMgO/TiO複合体上の過剰のリン酸塩の除去;(6)疎水性高分子材料でのトリグリセリド、コレステロール、および脂肪酸の吸着;(7)焼成ヒドロキシアパタイト-シリカ-アルミナ吸着性材料を使ったヒト免疫不全ウイルスの除去;(8)ポリフェニルアラニン、ポリアルキレン酸化物、あるいは表面上にチラミン、チロシン、フェニルアラニン、およびアミノフェノールの基を有する鉱質または高分子多孔質の材料上の血漿からの遊離ヘモグロビンの吸着。
【0006】
従来のいずれの血液灌流システムにおいても、血液は、充填床カラムに一般に含まれている活性炭などの吸着剤に直接接触し、そして2種類の深刻な問題をまねく。第一に、特定の炭素が血流中に放出され、そこで血管ならびに肺、脾臓、および腎臓などの臓器内で塞栓の形成を引き起こす。第二に、血液の生体防衛システムが活性化することがある:つまり、血液が凝固して血餅または血栓を形成し、免疫システムを活性化し、血球が人工装置をカプセル化しようとすることがある。実際に、特定の成分の除去に関し、活性炭における血液灌流は、初期には非常に効果的であったが、技術を改良しようという試みは、白血球および血小板の多大な損失ならびに吸着剤からなるカラム内の血液の凝固、泥化およびチャンネルの形成に悩まされる。その結果、カラムは効果がなくなり、患者は、血小板減少および重度の塞栓血症(embolia)にさらされる。従って、本発明の目的は、特定の細胞のタイプまたはウイルスなどのような非常に大きな生体分子物質を、血液から除去できるように改善した血液灌流方法を提供することである。
【0007】
流動床工程は、もともと細胞を含む発酵ブイヨンから抗生物質および他の低分子量化合物を回収するのに導入された。ごく最近では、安定化流動床の吸着技術は、先に粒子を除去することなく粒子を含む供給原料からタンパク質を捕獲するために使用されており、その結果、一回の操作で細胞懸濁液または細胞ホモジネートの精製および所望の生成物の濃縮を可能にする。
【0008】
米国特許第4,846,786号は、浮遊吸着性ビーズを含む振動チェンバーからなる体外装置内の生物学的体液から化学種を除去することを記載している。
【0009】
米国特許第4,863,611号は、反応器で、吸着性ビーズがパッキングするのを防ぎ、ビーズと生物学的溶液との混合物を反応器を介してチェンバー全体に分散させるための撹拌手段を構成する反応チェンバーからなる生物学的溶液から物質を除去するための装置を記載している。
【0010】
WO 00/12103は、ウイルス性成分に対して特異性を有する固定化親和性分子を多孔質の外表面に有する中空繊維に血液を循環させることにより血液からHIVおよび他のウイルスを除去する方法を記載している。
【0011】
米国特許第5,641,622号は、免疫親和性の分離と連続フロー遠心分離とを組み合わせた異種細胞混合物から有核細胞を分離するための方法を記載している。本方法は、所望のタイプの細胞に結合する物質を運ぶ粒子を接触させることからなり、非結合細胞と粒子結合細胞との間の沈降速度の差を利用して、所望の分離を行うための連続フロー分離器で活用されている。細胞結合する粒子結合抗体または、他の生物学的結合物質を使用することができることは実証されているが、分離原理は、技術的に難しい上、高価な装置に依存する連続フロー遠心分離からなり、そのため体外吸着法にはすぐには適用できない。
【0012】
米国特許第6,051,146号は、回転式流体チェンバー内で第二粒子を保持することができる粒子の流動床を記載している。分離は遠心分離により行われる。
【0013】
米国特許第6,153,113号は、異なる沈降速度を有する粒子、すなわち、共有結合的に第一粒子に付着し、非共有結合力により第二粒子に結合するリガンドによって、互いに結合される粒子を分離するためのシステムを記載している。分離は、遠心分離によって行われる。
【0014】
WO00/5698には、核酸、ウイルス、および細菌を含む生体高分子の処理における第一捕獲工程として利用される膨張床の工程を記載している。体液の体外処理は開示されておらず、いかなる治療方法もしくは治療装置は、示唆も開示もされていない。
米国特許第5,935,442号は、種々の分子を精製するための流動床クロマトグラフ工程を詳細に開示している。この発明は、クロマトグラフ使用のための吸着性ビーズを調整する方法を多数記載しているが、米国特許第5,935,442号は、全血および他の体液の治療的な体外処置の方法は開示していない。
【0015】
米国特許第5,522,993号は、下流工程、特に安定化流動床分離用のクロマトグラフビーズを開示している。ビーズは、1.1−1.5g/mlの範囲の密度および100−1000μm(125−315μm)の間の直径を有し、球形であると記載されている。超小型で、非常に高密度な粒子は、開示されておらず、体外療法に安定した流動床分離を使用すること、または治療のための装置には言及されていない。
【0016】
米国特許第4,846,786号及び第4,863,611号は、共に、体外接触法におけるビーズの効率的な撹拌用の装置、および血液の処理としての使用を記載している。吸着性ビーズの流動化は、反応チェンバーの特定の配置および撹拌によって行われる。これらの先行技術は、適切なメッシュ、好ましくは200μmの粒子を留める40μm孔のメッシュにより保持される直径10−400μmの粒子を記載している。したがって、この発明は、真核細胞、例えば血球、胎児細胞などの大型の生体高分子物質の吸着には適していない。
【0017】
米国特許第5,759,793号は、磁気的な安定化流動床によって哺乳動物の細胞集団において特定の哺乳動物の細胞のタイプを選択する方法を記載している。血液由来の造血細胞の分離および精製を記載しているが、連続体外療法の方法または装置も記載していない。
【0018】
本発明の要約
このように、本発明の背景にある課題は、日常の臨床診療において実用的な血液および他の体液の体外治療の方法を提供している。
【0019】
本発明のもう1つの目的は、細胞外体液から有害物質の効果的な吸着を基にした体外治療方法および治療装置を提供している。
【0020】
本発明は、カラムタイプ容器内の特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有する吸着性粒子からなる吸着性媒体を基にした比較的容易な安定化流動床の吸着方法を提供している。この方法は、小型で高密度な粒子を使用する撹拌または回転する容器内で交互に行ってもよい。重要なのは、この方法は連続遠心分離工程を含まない。
【0021】
安定化流動床の吸着特性は、一般に、床を介して上向きに流れる液体を使用する際に、床が膨張することである。吸着性粒子間の空間、ボイド容量は、その結果増大し、サンプルに含まれる大きな生体高分子物質を、カラムを詰まらせることなく通すことができる。この性質は、多くの異なる成分、例えば細胞を含む細胞外体液からの特定の成分の分離に関して、流動床の吸着をとりわけ適切にさせることがわかっている。また、安定化流動床において、その液体は実質的に乱流および逆混合がなく、プラグの流れとしてカラムを通過する。
【0022】
安定化流動床内の細胞外体液が、実質的に乱流および逆混合のなく、吸着性粒子からなる床を通るという事実は、体液から分離されうる生体高分子物質の大半を確実に拘留する吸着性媒体の広い表面積と、効果的に、かつ静かに接触することを提供する。乱流、逆混合、およびチャンネルの形成の除去が、形成された多数の理論上のプレートにより非常に効率的な吸着方法をもたらすことは、充填床カラムのプラグの流れから十分に知られている。
【0023】
開示された安定化流動床による細胞外体液からの特異的生体高分子物質の捕獲の最適な実施は、 (カラムを介して許容できる流量を得るために)体液の密度と吸着性粒子の密度との間での密度の大きな差異とが組み合わさって、(効果的に、かつ高い容量の吸着を得るために)吸着性粒子に非常に広い表面積を提供することで更に確実にされる。
【0024】
体液と吸着性粒子の最適な密度差は、非常に高密度(例えば、水の密度より著しく高い)の吸着性粒子を提供することにより得られる。したがって、高密度の吸着性粒子は、体液中で沈むであろう。しかし、安定化流動床が、下向きの流れの液体を、水性緩衝剤中で浮かぶような密度および/またはサイズを有する粒子の床に適用することによって作り出されることができることにも言及されるべきである。
【0025】
このように、本発明は、
(a)哺乳動物から細胞外体液を取得し、
(b)得られた細胞外体液を特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有することを特徴とする吸着性粒子の安定化流動床と接触させ、そして
(c)処理した細胞外体液を同じ哺乳動物に再注入する
工程からなり、
工程(a)及び(c)を連続した工程で行う
細胞外体液から特異的生体高分子物質を体外捕獲する方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、
(a)哺乳動物から細胞外体液を取得し、
(b)特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有し、少なくとも1.3g/mlの密度および5−1000μmの範囲の平均直径、例えば少なくとも1.5g/mlの密度および5−300μmの範囲の平均直径、好ましくは少なくとも1.8g/mlの密度および5−150μmの範囲の平均直径、最も好ましくは2.5g/mlより大きな密度および5−75μmの範囲の平均直径を有することを特徴とする粒子の形の粒状吸着性媒体に、得られた細胞外体液を接触させる、そして
(c)処理した細胞外体液を同じ哺乳動物に再注入する工程からなり、
工程(a)および(c)を、連続した遠心分離工程を含まない連続工程で行う
細胞外体液から特異的生体高分子物質を体外捕獲する方法を提供する。
【0027】
定義
本文において、「生体高分子物質」という用語は、少なくとも1,000D、たとえば少なくとも5,000D、好ましくは少なくとも100,000D、最も好ましくは少なくとも5,000,000Dのサイズまたは分子量を持つ生物起源の物質である。定義上、「生体高分子物質」は、以下のあらゆる物質:癌細胞、ある特定の血球、胎児細胞、寄生体、細菌(真性および原始細菌の両方)、およびウイルスなどの微生物ならびに細胞も含む。更に、例えばトランスポゾン、レトロトランスポゾン、およびプラスミドなどの核酸、プリオン、抗原、抗体、ホルモン、ある特定のシグナル高分子などのポリペプチドおよびタンパク質、ならびに有機毒素および無機毒素も「生体高分子物質」という用語で表される。
【0028】
本文において、「細胞」という用語は、原核細胞、真核細胞、および中間核細胞、ならびに多細胞および単細胞の生物からの細胞を含む生命の基本特性を保持する最小単位を表す。特に、遊走血中癌細胞、癌細胞前駆体、ある特定の血球およびウイルスまたはそれ以外の感染細胞が、本発明に関して興味深いと考えられる。
【0029】
本文において、「微生物」という用語は、種々の群に属する非常に小さな生物を表し、本発明に最も関連しているのは、原生動物、真菌、および細菌の群に属する微生物である。しかし、ある特定の植物、例えば藻類も微生物とみなされる。非細胞構造ウイルスとして特徴づけられるが、時としてプリオンも微生物とみなされる。
【0030】
本発明の内容において、「ウイルス」という用語は、動物、植物、または細菌の生細胞内でのみ増殖できる小型かつ簡単な構成の感染因子を表す。これらの因子は、核酸(レトロウイルスのDNAまたはRNA)およびタンパク質コートからなる。
【0031】
「ウイロイド」という用語は、既知のウイルスのどれよりも小さい感染性粒子を意味する。これらの粒子は、極めて小さい環状RNA(リボ核酸)分子のみからなり、ウイルスのタンパク質コートを欠いている。ウイロイドは、今のところ、ある特定の植物病害の因子としてしか知られていないが、ウイロイドが哺乳動物のある特定の疾患を引き起こすこともあり得る。このことは、「感染性」核酸分子の2つの他のタイプ、トランスポゾンおよびレトロトランスポゾンについても同様である。
【0032】
「トランスポゾン」という用語は、自身をゲノム内で新たな位置に挿入できるDNA配列を意味する。トランスポゾンは、通常、構造が、直線状で、1あるいは少数の遺伝子を含み、末端に特殊な配列構造(逆方向反復)を有する。
【0033】
「レトロトランスポゾン」という用語は、RNA型を介して移動するトランスポゾンを意味する。DNA因子は、RNAに転写され、次いでDNAに逆転写され、ゲノム内で新たな位置に挿入される。
【0034】
「プラスミド」という用語は、自律性自己複製染色体外環状DNAを意味する。
【0035】
本文において、「プリオン」という用語は、通常哺乳動物および鳥類においてみられる無害なタンパク質の異常型を表す。タンパク質の正常型は、脳内の細胞の表面に位置する。プロテアーゼ処理され、異常に折り畳まれた病原性プリオンタンパク質の分子量は、27−35kDである。プリオンタンパク質は、異常構造の時にのみ疾患を引き起こす。病原性タンパク質は感染を介して脳に入るか、またはタンパク質をエンコードする遺伝子内での変異から生じ得る。いったん脳内に現れると、病原性タンパク質は、良性タンパク質を誘導して異常な形状に再生することにより増殖する。正常なタンパク質の構造は、プロテアーゼにより比較的容易に退化し得るが、異常なタンパク質の形状は、この酵素活性に対する抵抗がより高い。したがって、プリオンタンパク質が増殖すればするほど、プロテアーゼでは分解されずに、代わりに神経細胞内に堆積して神経細胞を破壊する。進行性の神経細胞破壊は、最後には脳組織を穴だらけにし、海綿様、すなわち海綿状のパターンを形成する。プリオンが引き起こす疾患は、ヒトに影響を及ぼす5つの障害、すなわち、クロイツフェルト-ヤーコブ病、新変異型クロイツフェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン‐シュトロイスラー‐シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、およびクールーを含む。動物は、スクラピー、ウシの海綿状脳症(俗に言う狂牛病)、ならびにミュールジカおよびエルクの慢性消耗病などの他のプリオン疾患に罹る(Encyclopedia dia Britannica,Weber EL.Rev Argent Microbiol 1999 Oct−Dec;31(4):205−18およびHoriuchi M EMBO J 1999 Jun 15; 18(12):3193−203参照)。
【0036】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は両方とも、主としてペプチド結合形成により重合されたアミノ酸からなる分子を表し、ほぼ同義である。通常、「ポリペプチド」という表現は、比較的短い鎖の重合されたアミノ酸で用いられるのに対して、「タンパク質」という用語は、より大きな分子を表すのに用いられる。
【0037】
「抗原」という用語は、特異的抗体またはT細胞に対して反応性のある物質である。
【0038】
「抗体」という用語は、特定の「抗原」を認識するBリンパ球により産生されるタンパク質(免疫グロブリン)を意味する。
【0039】
本文において、「親和性特異的分子」は、生理学的条件下で、特定の生体高分子物質、またはその物質の一部と特に会合する能力を持つことを特徴とする分子を表す。「親和性特異的分子」は例えば、特異的結合ゼラチン、アルブミン、ヘモグロブリン、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む免疫グロブリン、抗原、プロテインG、プロテインA、血液型特異的オリゴ糖類、レクチン、糖タンパク、例えばオボムコイドまたはその特異的結合部分、ビオチン結合タンパク質、アビジンおよびストレプトアビジン、酵素、プロテアーゼ、レセプター、およびプロテアーゼインヒビター;上記クラスの分子の特異的結合部分、ならびにそれらの混合物である。
【0040】
本文において、「細胞外体液」という用語は、哺乳類生物の細胞外体液を表す。例として、血液、腹水、血漿、リンパ、羊水、尿、唾液、および髄液である。
【0041】
本文において、「吸着剤」、「粒状物質」、および「吸着性媒体」という用語は、同義語として使用される。
【0042】
本文において、「吸着性媒体」という用語は、特異的生体高分子物質を吸着できる粒子からなる吸着性の媒体を意味する。「吸着性媒体」および「吸着性粒子」という用語は同義語として使用される。
【0043】
本発明において、「流動床」は、各粒子間の空間が充填カラム内で得られる最小空間よりも広く、撹拌、緩衝剤、および吸着性粒子のあらゆる組み合わせとして定義される。
【0044】
つまり、この定義によると、あらゆるタイプの非充填床反応器で用いられる吸着性粒子のあらゆる組み合わせは、「流動床」を構成する。これら流動床は、例えば化学工学の教科書(例えば、H.Scott Fogler in“Elements of Chemical Reaction Engineering”,p.786,Prentice−Hall PTR,1999)で記載されるように、床の膨張および「流動化」をもたらすのに十分な高流速で、吸着性粒子の最初に充填された床に液体の流れを加えることで得られる流動床、ならびに「流動化」が吸着性床システムの連続的な液体の流れと効率的な混合とを組み合わせることでもたらされる連続撹拌タンク型反応器(CSTR’s)である(例えば、H.Scott Fogler in“Elements of Chemical Reaction Engineering”,p.10,Prentice−Hall PTR,1999参照)。
【0045】
「安定化流動床」は、各粒子の移動を、床の総容量の限られた容量内での移動を制限する結果として、吸着性粒子の逆混合の程度が低い流動床として定義される。このことは、各粒子の軸方向分散の範囲が狭く、そして流動床の限られた空間内のどの位置でも同じ確率でみられるわけではないということを意味する。このように安定化床は、逆混合が無いことにより床の相互的に異質な領域の混合を排除するので、全流動床の非同種成分を有することを特徴としてもよい。
【0046】
「膨張床」という用語は、流動床の限られた空間内に粒子が位置するような密度および/またはサイズ分布を有する粒子の床を含むカラムの底の送入を介して、サンプルまたは水性緩衝剤の上向きの液体の流れを加えることにより作り出される吸着性粒子の安定化流動床を意味する。安定化流動床と同様に、膨張床は、吸着性粒子の逆混合の程度が低いことを特徴とする。磁気的な安定化流動床を除けば、「膨張床」および「安定化流動床」という用語は、広い範囲で同義である。
【0047】
「磁気的な安定化流動床」は、床を通る流体の流れの経路に平行で、放射状に均一な磁界に吸着性粒子を入れることにより得られる吸着性磁化可能粒子(absorbent magnetizable particles)の安定化流動床を意味する。
【0048】
本文において、「膨張床の吸着」という用語は、送入および排出を有するカラム内に含まれる吸着性媒体が、例えば上向きに流れるサンプル(体液)または水性緩衝剤などの流体の流れを加えることで、沈降状態から上昇することができ、それによって吸着性粒子間の空間を増やす特殊なクロマトグラフ技術を表す。このことは、流体サンプルの導入時またはその前に同時に起こり得る。
【0049】
「連続工程」とは、一定の機能が工程の開始時点で適用され、工程の終了時に終わることで定義されうる工程を意味する。例えば、本文おける連続工程の典型的な例は、ある種の体液、通常血液が患者から定流(すなわち、実質的に連続した流れ)で除去され、同様の定流で患者に再導入される工程である。
【0050】
すなわち、一定の流速で患者から血液を抜き出し、その血液を吸着剤に接触させ、患者に再び導入することを、患者の枕元で連続的かつ相互的な1つの工程で行うことを理解すべきである。
【0051】
この工程は、1度に、1つの独立した工程で患者から体液を取り出し、適宜、保管し、別の時にバッチ式方法で吸着剤に接触させ、また別の時に、最初の2つの工程から大きく独立して選択された患者に再導入する他のいかなる「不連続」処置とも異なることを理解すべきである。
【0052】
「撹拌タンク」は、吸着性粒子を撹拌、回転、または他のいずれの公知の方法により遊離懸濁状態に保ち、粒状物質を含む清澄でない溶液との相互作用に利用できるようにした仕組みであり、前濾過、または前遠心分離工程の無い充填床では不可能なしくみである。このような撹拌タンク方法は、サンプル物質と吸着性ビーズとの相互作用が単相吸着処理であり、その単層吸着処理が充填(または安定化流動)床で起こるため、多段吸着工程ほど効果的でないことを特徴とする。この点で、非安定化流動床は、これら流動床で見られる逆混合(乱流)およびチャンネル化による撹拌タンク懸濁に似ている。これとは対照的に、安定化流動床は、濾過および遠心分離のような前処理工程を必要とせず、充填床の多段吸着特性と粘性および/または粒状サンプルを直接処理する能力とを兼ね備える。
【0053】
クロマトグラフシステムにおける「理論段」の数は、吸着性ビーズと吸着性ビーズの床と相互に作用するサンプル成分との間で形成され得る平衡数を表したものである。この数は、当業者で公知のとおり、カラム1メートル当たりの数で表され、適切なトレーサーがカラムを通る滞留時間から計算できる(例えば、http;//www.chromatography.apbiotech.comで入手可能なThe Amersham Biosciences booklet“Expanded Bed Adsorption Handbook,Ref.no.18112426”参照、引用によりここに組み込まれる)。
【0054】
本文において、「凝集」という表現は、WO92/18237およびWO92/00799で記載されているように、ポリマーベースマトリクスにより共に保持される異なるタイプおよび大きさのコア物質のビーズ、例えば周囲のアガロース(ポリマーベースマトリクス)により共に保持される2つ以上の高密度粒子からなる粒子を含む粒状物質の粒子を示すことを意図している。「ペリキュラー」という表現は、各粒子がポリマーベースマトリクスの層で被覆されたただ1つの高密度コア物質、例えばアガロースでコートされた高密度ステンレス鋼ビーズからなる粒子の複合体を示すことを意図している。
【0055】
本文において、粒子の「密度」は、水和状態の粒子の密度のことである。
【0056】
本発明の詳細な説明
本発明は、
(a)哺乳動物から細胞外体液を取得し、
(b)得られた細胞外体液を特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有することを特徴とする吸着性粒子の安定化流動床と接触させ、そして
(c)処理した細胞外体液を同じ哺乳動物に再注入する
工程からなり、
工程(a)および(c)を連続した工程で行う細胞外体液から特異的生体高分子物質を体外捕獲する方法に関する。
【0057】
図1は全体の構成を示す。導入側(a)および導出側(c)の貯槽の容量を、体液の流れを調節することで、体液を吸着性媒体に十分な時間接触させながら、全ての工程を連続工程として作動させることができる。体液の抜き取りは、特定の哺乳動物の生理的限界を考慮にいれ、動物が処理により傷を負わないよう考慮すべきことが理解される。
【0058】
実施例1に示されるように、安定化流動床の特殊な特徴は、全血のような複雑な細胞懸濁液でさえもカラムを通らせることができる。このことは、実施例2に示されるように、体液、特に血液から特異的生体高分子物質細胞を治療的に体外に除去するため、および濾過工程を導入することなく他の物質を体液から回収するために、流動床吸着を使用するための可能性が開かれる。この技術は、分画遠心分離技術、細胞選別技術、またはいわゆる人化(非免疫原性)試薬の注入を基にした技術などの特定の細胞のタイプを除去するための今日の技術にいくつかの利点を提供する。このような技術と比較して、特定の細胞の体外除去は簡便かつ長年の使用に耐えられる。試薬分子が体内に導入されないため、体内に導入する際に、好ましくない免疫原性反応をもたらす治療用試薬を使用することがこれにより可能になる。これは、注入用の抗体およびレセプター構築物の今日の使用と比較して、重要な利点である。このように、インビトロ実験から望ましい結合能を持つと知られる抗体および他のレセプター分子は、固定化のあと、直接使用できる。固定化が、ストレプトアビジン−ビオチン結合に基づいているのであれば、レセプター分子をビオチン化したあと、容易に適用できるので柔軟なアプローチが保証される。
【0059】
さらに、ここに記載される粒子を、分析目的に使用することができる。1つの実施例は、多量の血液を特異的結合の安定化流動床に通し、続いてその後の分析用に、結合物質を溶離するか、または特に好ましい実施例においては、続いて粒子に直接結合状態にある標的分析物の分析を行うことで、多量の血液から極微量レベルの分析物を捕らえ、濃縮して適当なサンプルを調整することである。
【0060】
流動床に通すことで、体液から特定の細胞を体外除去して細胞を除去する方法のもう1つの重要な利点は、安全性である。この方法は、注入され、細胞標的を結合する際に補体を活性化する抗体によって細胞が溶解される際に、例えばウイルスを撒き散らす危険性を排除する。カラム吸着による、例えば抗体を取り除く体外循環方法の前使用、血漿の交換(血漿瀉血)、およびある範囲まで、血液透析方法は、全てこのアプローチの可能性および相対的な安全性を支持する。
【0061】
最後に、この方法の効率および能力についても考えなければならない。血液の全細胞画分を特異的吸着性マトリクスに通すことは、標的試薬を注入するときよりもはるかに高い相対濃度の抗体または他のレセプターを使用できるため、特定の細胞を除去するのにはるかに効率的である。また、その作用物質が固定化され(そしてそれにより安定化)、さらに短時間しか血液の成分に接触していないので、試薬は、体内に存在する分解システムおよびクリアランス機構では破壊されない。
【0062】
体外吸着は、
−抗体/抑制因子の結合が、有害活性を効率的に阻止しない、例えば、結合親和力が抑制を確実にするのと比べて低いとき、
−阻止物質が、患者に対して毒性かまたは体内で好ましくない反応(例えば、免疫反応)を生じるとき、
−全細胞または非常に大きな生体分子物質を除去する必要があるときに、
抗体および/または特異的な抑制因子(拮抗物質リガンド)の簡単な注入により、体内での好ましくない反応の抑制と選択的に比較される方法である。
【0063】
体外療法は、血漿交換療法の代わりとなる方法でもある。後者の方法では、高価な血漿および/または血漿タンパク分画が必要であり、好ましくない成分と一緒に有益な成分も患者から除去され、患者に感染性物質をトランスフェクトさせる恐れがある(例えば、肝炎ウイルスおよびHIVなどのウイルス)。
【0064】
現在の体外捕獲方法および装置は、低速で、濾過および/または遠心分離工程を含む不連続使用を特徴とし、フィルターが閉塞するために能力が低く、非常に少数の例しか全細胞の捕獲が証明されていない。
【0065】
このことは、他の点で、非常に有望で補足的な治療技術の普及を妨げてきた。
【0066】
活性炭およびイオン交換樹脂に対する膜ベースの方法ならびに血液灌流は、よく知られているが、非特異的結合特性を特徴とし、それゆえ、元へ戻すことが必要である有益なタンパク質および物質を同時に除去する。親和性リガンドを持つ軟性ゲルは、優れた選択性を示すが、充填床状態で崩壊するため、閉塞および乏しい流速に伴う困難を招く。
【0067】
血液は、粘性であり、添加物で対処しなければ凝固するため、体外治療装置で処理するのが特に難しく、非常に脆弱な多数の異なる細胞および高濃度のタンパク質(80mg/ml)を含む。さらに、体外治療を受けている患者の血流に粒状性質のものが何も導入されないのは極めて危険である。
【0068】
強い撹拌により吸着性粒子を、遊離懸濁状態に保つ装置が記載されているが(米国特許第4,846,786号および第4,863,611号)、血球が不活性状態でそれら装置内で起こる剪断力にどのようにして耐えるかは開示されていない。
【0069】
体外方法および吸着剤は、例えば、多孔質の硬質粒子でのリポタンパクの特異的な吸着を含む(米国特許第4,656,261号)。しかし、これは撹拌バッチ実験で作用することしか示されていない。先行技術の別の例は、アルブミン(米国特許第6,090,292号)で、コートされた可塑物(粒子、フィルム、または中空繊維)を基にした方法を開示していた。この方法は、アルブミンが多数の重要な細菌毒素および薬剤を有する血液または血漿を解毒するリガンドとして使用できるということを利用している。しかし、充填カラムを持つ例は、わずか2ml/分の流速で送り出される血漿、およびわずか0.5ml/分で灌流されるヘパリン化全血を含むが、10−500μm(直径)のビーズから灌流可能な充填物をどのようにして構成するのか全く教示しておらず、代わりに、全血のバッチ式吸着の例が開示されている。米国特許第5,041,079号は、ヒト免疫不全ウイルスに感染している患者の治療薬を除去することを教示し、血液の代わりに血漿を用いることを勧めている。米国特許第5,258,503号は、フィルターを組み込んで血液の可溶性成分から粒状物質を分離し、吸着剤として多孔質で硬質な粒子を用いる自己抗体を除去するための体外システムの構成要素を開示している。
【0070】
米国特許第4,865,841号は、治療の免疫毒素に効き目を発揮させるために、不要な抗体を固定化抗原(シリカ)と接触させることで除去することを記載している。除去は、20−25ml/分で送り出すことができる血漿(中空繊維濾過により調整される)の通過により影響を受ける。ビーズを懸濁(流動床)した状態に保つ他の装置は、AmeerらによるTaylor−Couetteフロー装置(Biotech.Bioegn.62,602−608,1999)を含むが、この装置も高い率の溶血を引き起こす剪断の実質的な問題により特徴づけられる。
【0071】
それゆえ、血液の治療的体外処理のための理想的な装置は、小さく、連続的に作動するものである。体外吸着工程にとって、このことは、高い能力を有する吸着性物質を必要とする。これは、吸着性中空繊維およびシートとは対照的に、吸着性ビーズで可能であるが、従来のカラムの仕組みでのビーズの充填のため、これまで吸着性ビーズを用いて血液を処理することは不可能であった。
【0072】
本発明は、能力の高いビーズ形状吸着性物質の使用を、安定した全血に対して実際に血液灌流を行う可能性と組み合わせている。
【0073】
体液を、当業者で公知の方法および器具により取得、処理、ならびに再注入する。この方法は、処理する体液および条件に依存している。方法全体を、無菌条件下で行うことが理解される。血液に関する例として、針は、例えば流動性吸着性媒体を含む容器に適切な管を介してつながる末梢静脈に導入され、別の静脈に挿入されている針につながる導入管を介して患者に再注入される。哺乳動物から大量に血液を抜く場合には、鎖骨下静脈から採血してもよい。
【0074】
任意に、血液を体から抜く場合に、クエン酸ナトリウム、ヘパリン、またはデキストランなどの血液凝固阻害物質を血液に添加し、血液の凝固を防ぐことができる。デキストランは、血液の粘性を下げ、塩類の添加と組み合わせると、血球と血小板との間の距離が増加するのは確かである。このような抗血液凝固薬を、血液の非凝固にとって十分な量で添加してもよい。
【0075】
処理した血液を哺乳動物に再注入する前に、例えばヘパリンなどの血液凝固阻害作用は、へパリナーゼ、プロタミン、および/またはビタミンKなどの適量な多くの物質で減少することがある。
【0076】
塞栓症を避けるため、再注入の際に吸着性媒体粒子が患者に入らないように特に注意しなければならない。本発明の好ましい実施例において、吸着性媒体は、問題を大部分解消する非常に密集した粒子からなる。しかし、保護基準として、患者に体液を戻す前に体液の残りからあらゆる残留粒子を除去するため、粒子捕獲装置は吸着性媒体の容器の下流で用いられるのが好ましい。粒子捕獲装置は、吸着性媒体のあらゆる粒状物質を保持するが、体液の非吸着性物質を通す大きさの孔サイズを有するフィルターまたはメッシュであってもよい。残念なことに、フィルターまたはメッシュを基にした効果的な粒子トラップは、全血のある特定の要素に悪影響を保有するか、または課す効果的な孔のサイズを有してもよい。
【0077】
本発明の特定の実施例において、吸着性媒体は、少なくとも1つの密度調節粒子が組み込まれたポリマーマトリクスで構成される集塊またはペリキュラー粒子からなる。前記密度調節粒子は強磁性体および常磁性体の材料で製造できる。このような強磁性体および常磁性体粒子は、体液を戻す時にビーズが患者に入らないことを確実にするために、磁石と組み合わせて使用されうる。
【0078】
流動床は、液体、例えば体液または水性緩衝剤は、液体の抵抗(摩擦)揚力が吸着性粒子の引力と平衡する十分な速度で吸着性粒子の床を上に向かって通るときに作り出され、それによって床が膨張され、吸着性粒子間の空間が増大される定常状態を得る。液体の十分かつ安定した速度は、当業者に理解されるような適切なポンプにより得られるであろう。流動床において、粒状物質は、流動流体中で完全に浸り、そして浮遊する。
【0079】
しかし、安定化流動床は、吸着性粒子の逆混合の程度が低いということを更に特徴とする。これは、各吸着性粒子が総流動床量の限られた容量内で移動することを意味している。これはまた、吸着性粒子の非相同的分布集団を含む安定化流動床を作成し得ることを意味している。
【0080】
流動床の安定化は、異なる手段によって得ることができる。
【0081】
膨張床の吸着において、流動床の安定化は、均一な液体の流れの分布を生じるよう設計されたカラムと共に、明確なサイズの分布、ならびに明確な密度分布を有する吸着性粒子の使用により得られる。安定は、上昇流システムにおいて、大型および/または最も高密度の吸着性粒子が床の底の近くに位置し、小型および/または低密度の吸着性粒子が、床の上部近くに位置する、いわゆる分別(または層状)床を吸着性粒子が構成するとき生じる。床は、吸着性粒子がカラムを介して液体の上昇流により上昇するにつれて膨張する。流動床の形成の原理を示す例として、これらの床は、また、水性緩衝剤中に浮遊するような密度および/またはサイズを有する粒子の床に液体の下降流を加えることにより作り出される。膨張床の吸着技術についての更なる情報は、http://www.chromatography.apbiotech.comで、参照番号18112426を参照することにより、PDFファイルとして入手できる、Amerhsam Biosciencesによる「Expanded Bed Adsorption Handbook」で見つけることができる。
【0082】
磁気的な安定化流動床クロマトグラフィーにおいて、流動床の安定化は、床を通る流体の流れの経路に並行し、放射状に均一な磁界に磁化可能吸着性粒子を置くことにより得られる。磁界の効果は、吸着性物質の各粒子内に磁気双極子を作り出し、各粒子が磁界線に平行な方向に「粘着性」になるようにするものと概してみられている。これにより、床の軸に平行なビーズ鎖の形成に等しいものが生じる。
【0083】
反応器内の粒状物質(吸着剤)の膨張は、非分離細胞外体液を処理する可能性を生む。膨張において、吸着剤は、体液の上向きの流れにより上昇する。流動吸着剤の間の容量が膨張することにより、体液に含まれる高分子が、システムを詰まらせることなく反応器を通ることができる。このように、流体より大きな密度を有し、重力に従って降下する吸着性粒子を、上向きに流れる液体により自由な流動状態に保つことができるであろう。
【0084】
本発明において、吸着性媒体は、非分離細胞外体液、例えば全血から特定の生体高分子物質を保持するスカベンジャーを構成する。細胞外体液の必須生体高分子物質、例えば血球は、流動吸着性粒子間の空間の増大により、床をふさぐことなく通される。
【0085】
膨張床の吸着
本発明の好ましい面で、その方法は、膨張した床からなる、安定化流動床において行われ、そこで、吸着性媒体は、例えばWO00/5798で示されているように、膨張した床で使用するために特別にデザインされている。その開示がここに引用により取り入れられている。前記の吸着性媒体は、一般的に1.3−20g/mlの密度、例えば少なくとも2.0g/ml、少なくとも3.0g/ml、少なくとも3.5g/ml、好ましくは4.0−16g/mlの密度を有している。
【0086】
高密度で結合し、比較的小さな直径の粒子は、安定化流動床工程で、生体高分子物質の捕獲に重要な役割を果たしていると信じられている。したがって、その粒子物質の平均直径は、5−75μmが好ましく、例えば、10−60μmの範囲内、12−49μmの範囲内、さらに好ましくは 20−40μmの範囲内、さらにより好ましくは10−30μmの範囲内である。
【0087】
さらに、比較的限られたサイズの粒子の分布は、有利であると考えられ、(その物質が流動床構成において使用され得る場合には、ある幅のサイズの分布は有利であると想起すること)、したがって、その粒子の少なくとも95%が、5−80μm、例えば15−45μmの範囲内、好ましくは20−40μmの範囲内の直径を有するべきであると信じられている。
【0088】
前記の吸着性媒体は、一般的に、少なくとも1.3g/mlの密度で、平均直径が5−1000μm、例えば、少なくとも1.5g/mlの密度で、平均直径が5−300μmの範囲内で、好ましくは少なくとも1.8g/mlの密度で平均直径が5−150μm、もっとも好ましくは2.5g/ml以上の密度で平均直径が5−75μmの範囲内である。
【0089】
その高密度は、好ましくは少なくとも3.0g/mlの密度、例えば少なくとも5.0g/ml、好ましくは6.0−16.0g/mlの範囲内の密度を有する高比率の密集したコア物質を含むことによって、主として得られる。これは、構成上、薄膜状、あるいは集合体である粒子を生じる。適切なコア物質の例として、上記の密度基準を満たしている限りにおいて、無機物質、金属、元素非金属、金属酸化物、非金属酸化物、金属塩、合金、炭化タングステンなどが挙げられる。
【0090】
粒子の少なくとも95%がもつコア物質は、2−40μm、例えば8−28μm、好ましくは5−25μmの範囲内の直径を有するスチールビーズであることが好ましい。
【0091】
別の実施例で、粒子の少なくとも95%がもつコア物質は、2−40μm、例えば15−38μm、好ましくは5−30μmの範囲内の直径を有する炭化タングステン粒子である。
【0092】
さらに、粒子の少なくとも95%は、その粒子の直径の少なくとも0.70倍、例えば0.80倍、または少なくとも0.85倍を有するひとつのコア物質からなることが好ましい。
【0093】
あるいは、また、そのコア物質は、1つ以上のビーズ、例えば10μm以下の直径をもつビーズによって構成される。
【0094】
一般に、そのコア物質は、10−99%、好ましくは50−95%の粒子量から成り、ポリマーベースマトリクスは、1−90%、好ましくは5−50%の粒子容量からなる。
【0095】
高比率の粒子(95%以上)をもつコア物質は、1つのビーズによって構成されている場合には、ポリマーベースマトリクスは、厚さが50μm以下である。「厚さ」は、コア物質と粒子の表面との間の幾何学的距離と定義される。その厚さは、20μm以下であるのが好ましく、さらに好ましくは10μm以下、もっとも好ましくは5μm以下である。1つの実施例で、ポリマーベースマトリクスは、そのコア物質をコートする単分子層を構成しているであろうと考えられる。したがって、この場合、そのポリマーマトリクスは、そのコア物質に対して優れた親和性を有する低分子量族に置き換わるかもしれないことが予想される。この低分子量族とコア物質との間でのこの親和性は、そのコア物質の表面処理によって、例えば、セラミック物質の有機シリル化によって改善されるであろう。単分子層は、また、化学分野での当業者によって評価されているように、化学的処置によってそのコア物質の表面に共有結合するかもしれない。
【0096】
その粒状物質の非常に重要な特徴は、ポリマーベースマトリクッスが荷電される側鎖か、側鎖として生体高分子物質に対する親和性特異的分子で構成されているという事実である。側鎖の2つの亜型を組み合わせることも可能でもある。親和性特異的分子が、キレート間の親和性特異的分子、疎水親和性特異的分子、特異的結合ゼラチン、アルブミン、ヘモグロビン、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む免疫グロブリン、抗原、合成ペプチド、プロテインG、血液型特異的オリゴ糖類、レクチン、オボムコイドあるいはその特異的結合成分のような糖タンパク質、ビオチン結合タンパク質、アビジンおよびストレプタビジン、酵素、プロテアーゼ、種々の受容体、プロテアーゼ阻害物質、配列特異的親和性特異的分子(sequence specific affinity specific molecule)、例えばオリゴヌクレオチド、そして他の生体酵素;前述したクラスの分子の特異的結合部位、およびこれらの混合物からなるグループから選択するのが一般に好ましい。これらの親和性リガンドは、特殊な細胞、ウイルス、細菌、および他の生体高分子の結合に対して特に関連しているようである。荷電可能な側鎖は、ポリエチレンイミン、修正ポリエチレンイミン、ポリ(エチレン/オキシエチレン)、4級アミノエチル(QAE),ジエチルアミノエチル(DEAE)、スルフォン酸、ホスホン酸およびカルボン酸からなるグループから選択される成分を構成している。そのようなグループは、ジビニルスルフォンまたはエピクロロヒドリンリンカーによって、あるいは当業者で公知の他の結合手段、例えばそのグループに対応する塩化物を使用することによって、ポリマーベースマトリクスに結合してもよい。最初に記述した可能性は、ポリエチレンイミン類、修正(例えばアルキル化)ポリエチレンイミン類およびポリ(エチレンイミン/オキシエチレン)類のような荷電可能な成分に特に関連がある。相当する塩化物は、4級アミノエチル(QAE)およびジエチルアミノエチル(DEAE)のような荷電可能なグループにとって特に当てはまる。
【0097】
本発明の実施例の1つに、核酸(例えばDNA、例えばプラスミドDNA)を側鎖、例えばDEAE、ポリエチレンイミン(PEI)およびQAEを使用して捕獲してもよい。そのDNA分子内での負に荷電されたリン酸塩基と、DEAE、PEIおよびQAEにおいて正に荷電されたアミノ基との間の相互作用は、体液が通過している間に特殊な物質において結果として核酸を捕獲することになる。
【0098】
生体高分子物質を、粒子物質の表面に結合させるためには、当業者で公知の多数の異なる親和性特異的分子を、直接、あるいは後述する活性基によってポリマー相に結合させることで使用してもよい。正に荷電したイオン交換親和性特異的分子は、核酸、例えばDNAやRNAの結合に大変適しており、十分に知られている親和性特異的分子は、DEAE、QAE、PEI、および親和性特異的分子を含む他のアミノ基である。しかしながら、また、キレート間の親和性特異的分子は、配列特異性親和性特異的分子、例えば相補的DNA/RNA鎖および合成オリゴヌクレオチド、例えばペプチド核酸(PNA)や非転換核酸(LNA:locked nucleic acide)と同様に使用されるであろう。
【0099】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、合成ペプチドおよび他の合成の化学オリゴマー、レクチン、炭水化物、疎水親和性特異的分子、酵素、および他の生体酵素もまた、ウイルス、細菌、および他の生体高分子物質の結合にとって好都合であろう。
【0100】
荷電可能な成分のように、そのような親和性特異的分子は、引用により、この中で取り込まれているHermansonら,Academic Press,Inc.,San Diego,1992による"Immobilized Affinity Ligand Techniques"において記述されているように、当業者に公知の方法によって、ベースマトリクスに結合されるかもしれない。ポリマーベースマトリクスが活性物質として機能する性質を有していない場合には、そのポリマーベースマトリクス(あるいはポリマー混合物が使用されるマトリクス)は、誘導化され(活性化されて)、適切な環境下で化学的共有結合を形成する化学的な官能基と反応することのできる反応物質を生成してもよい。したがって、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、あるいはチオール基から成る物質は、種々の活性化学物質、例えば、臭化シアン、ジビニルスルフォン、エピクロロヒドリン、ビスエポキシラン、ジブロモプロパノール、グルタル酸ジアルデヒド、カルボジイミド、無水物、ヒドラジン、過ヨウ素酸塩、ベンゾキノン、トリアジン、トシル塩、トレシル塩、および/またはジアゾニウムイオンを使用して活性化あるいは誘導化してもよい。
【0101】
好ましい具体例では、側鎖は、ポリエチレンイミン鎖で、少なくとも10,000D例えば50,000−2,000,000Dの平均分子量をもつポリエチレンイミン鎖がより好ましい。
【0102】
側鎖がポリエチレンイミンであるかどうかに関係なく、側鎖がその粒子の表面上に触手構造を形成することも好ましい。触手表面構造は、大きな生体高分子物質自身に対して、表面積および/または結合部位を増加させることが好ましい。ポリエチレンイミンのような成分は、生体高分子物質の吸着を容易にすると信じられるコイル状の構造を形成するであろうというと理解されるべきである。生体高分子物質、例えばプラスミドDNAを捕獲するのに適した他の親和性特異的分子は、DEAEおよびQAEである。それら自身は、吸着性媒体に結合しても触手構造を形成しない。しかしながら、スペーサー、例えばデキストランや他のポリマーとの結合において、DEAEやQAEのような親和性特異的分子が、増大した表面積を有する触手構造を形成することができる。また、他の低分子量の親和性特異的分子、例えばオリゴヌクレオチドは、特に触手表面構造との結合おいて有用であるはずである。
【0103】
固定した酵素あるいは他の生体酵素の場合には、その酵素あるいは他の生体酵素をその物質に付着させるため、当業者で十分に知られている共有化学結合法を利用するのは有用なことでもあろう。
【0104】
種々の方法のうちで1つの重要なグループは、上述したように、親和性特異的分子を運ぶための集塊粒子を誘導化することから成っている。特定の生体高分子物質の免疫親和性捕獲にとって、ビーズ表面に抗体分子を結合させる化学的な手法を使用する本発明の粒子を使用することが特に好ましい。そのような表面を化学的に活性化させる好ましい方法は、当業者で公知の従来の方法である。そのような好ましい方法の実施例は、臭化シアン活性、ジビニルスルフォン活性、エピクロロヒドリン活性、トリアジン活性、カルボジイミド活性、ビスエポキシラン活性および少なくとも次の官能基、アルデヒド、無水物、ヒドラジン、過ヨウ素酸塩、ベンゾキノン、トシル酸塩、トレシル酸塩、およびジアゾニウム基を含む活性剤である。活性表面への抗体の固定化は、随所でよく記述されている。(Hariow&Lane,1988,Antibodies a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories参照のこと。)そして抗体分子を、pH、塩濃度ならびに温度の特殊な状態で特定な時間だけ化学的に活性化されたビーズと接触させることから成る。
【0105】
スペーサー基、荷電された基、あるいは疎水基は、「混合様式」分離に混合結合の特徴をもつ吸着性粒子を達成するために導入されうる。
【0106】
親和性捕獲および遊離を、従来の親和性クロマトグラフィーの熟練技術者で知られ、そして随所で詳細に述べられているように作用させうる(Affinity Chromatography,Principles and Methods(Pharmacia−LKB),Dean,P.G.ら編.,1985,Affinity Chromatography:A practical approach,IRL出版,Oxfordおよび Scouten,W.H.,1981,Affinity Chromatography, Wiley Interscience,New York参照)。
【0107】
ポリマーベースマトリクスは、複数のコア物質を一緒にコートしたり、保護する手段として、およびその活性物質を結合する手段として使用される。したがって、そのポリマーベースマトリクスは、一般に、
A)天然および合成の多糖類ならびに他の炭水化物をベースとするポリマー、それらは、寒天、アルギン酸塩、カラゲナン、グアールゴム、アラビアゴム、インドゴム(gum ghatti)、トラガントゴム、カラヤゴム、イナゴマメゴム、ザンサンゴム、アガロース、セルロース、ペクチン、ムチン、デキストラン、でんぷん、ヘパリン、キトサン、ヒドロキシでんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、カルボキシメチルでんぷん、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む、
B)合成有機ポリマーおよびポリマーを生じるモノマー、それらは、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、高分子ビニル化合物、ポリアルケンおよびそれらの置換体、ならびに1つの以上のそのようなポリマー官能性からなる共重合体およびその置換誘導体を含む、および
C)その混合物
から選択される、あるタイプの天然あるいは合成の有機ポリマーの中から求めることができる。
【0108】
ポリマーベースマトリクスの好ましいグループは、多糖類、例えばアガロースである。
【0109】
単一粒子の理想的かつ好ましい形状は、実質的に球状である。しかしながら、その粒子全体の形は、通常、それほど重要ではなく、したがって、その粒子は他の円い形状、例えば楕円体、小滴およびマメの型、ならびにさらにもっと不規則な形状を有することもできる。
1つの好ましい実施例で、その粒状物質は、少なくとも1.3g/ml、例えば少なくとも2.0g/ml、好ましくは少なくとも3.0g/ml、より好ましくは少なくとも3.5g/ml、もっとも好ましくは少なくとも4g/mlの密度を有し、その粒状物質の粒子は、直径平均が5−75μmであり、その粒状物質の粒子は、本質的に多糖類ベースマトリクスとコア物質から構成される。
【0110】
別の実施例では、粒子物質は、6−16g/mlの範囲内の密度を有し、そこでは、粒状物質の粒子は、直径平均10−30μmであり、その粒状物質の粒子は本質的に多糖類を主成分とするマトリクスとコア物質から構成される。
【0111】
さらなる実施例で、その粒状物質は、少なくとも2.5g/mlの密度を有し、その粒状物質の粒子は、直径平均が5−75μmであり、そしてその粒状物質の粒子は本質的には多糖類、好ましくはアガロースから選択されたポリマーベースマトリクスとコア物質から構成されている。前記のコア物質は、6.0−16.0g/mlの範囲内の密度を有しており、粒子の少なくとも95%は、その粒子の直径が少なくとも0.70である1つのコア物質ビーズから成っている。そして、前記のポリマーベースマトリクスは、pH4.0で正に荷電される側鎖、あるいは生体分子に対して親和性特異的分子である側鎖を含んでいる。
【0112】
あるいは、その吸着性粒子は、WO92/18237および WO92/00799に開示されているように、集塊粒子の形体であってもよく、あるいは、それらは、サイズ、密度、表面化学、安定性および安全性によって望ましい特徴を有するいかなる他のタイプの粒子であってもよい。その粒子は、生体高分子物質に対して多孔質かまたは透過性であってもよく、あるいは、実質的に、その生体高分子物質の結合に有利な表面積だけを有する非孔質および非透過性であってもよい。
【0113】
方法
膨張床の吸着用にデザインされたカラムは、体外捕獲法に使用される。例えば、WO92/18237とWO92/00799でそれぞれ開示されているごとく、分布プレートあるいは局所攪拌装置という形式で、送入での分布手段を有するカラムである。その開示は、引用によりこの中で取り入れられる。適切なカラムは、また、WO99/65686(UpFront Chromato−graphy A/S)に図解されているごとく、「全ての膨張工程」用に特別にデザインされたカラムでもありうる。あるいは、そのカラムは、WO99/65586で図解されているのと同様に、使い捨てカラムでもありうる。その開示は引用によりこの中で取り入れられている。体液の量およびそれによって必要とされる吸着剤の量は、精製に必要なカラムのサイズを決定する。
細胞外体液を吸着性媒体と接触させる前に、吸着剤は、10−1000cm/h、好ましくは200−400cm/hに相当する平衡緩衝液の流れを使って、カラムの中で任意に流動化・膨張化される。その平衡緩衝液は、10−100mM緩衝液(例えば、トリス、酢酸塩、クエン酸塩、グリシン、炭酸塩、リン酸塩)から成っていてもよく、一般的に7.0−8.0、例えば7.3−7.5の間のpH値を有し、一般的に0.9%w/v NaClと同様な重量モル濃度を有する。
したがって、粒状物質である流動床は、体液と接触する前に平衡緩衝液で洗浄するのが好ましい。吸着剤は、カラム中で非常に都合よく平衡化され、平衡緩衝液を少なくとも床が安定化するまで供給することが好ましい。
【0114】
床の安定化後、体液を、一般に0.1−100cm/min、例えば1−20cm/min、好ましくは1−12cm/min、さらに好ましくは、約2−10cm/min、例えば2−8cm/minに接触させる。これらの速度は、細胞外体液と使用されたマトリクスのタイプに依存している。
【0115】
続く膨張比(H/H0)は、1−5倍、有利には1.2−3倍であることが推奨される。通常、1.5−2倍が薦められているが、流動マトリクスの量と沈降マトリクスの量との間の関係は、膨張率によって意味づけられる。
【0116】
その他の重要なパラメーターは、生体高分子物質のある特定の量を捕獲するのに使用する粒状物質(吸着剤)の量である。一般的には、生体高分子物質と粒状物質(吸着剤)との間の割合は、吸着剤1ml当り生体高分子物質が0.1−100.0mg、好ましくは少なくとも0.5mg/ml、より好ましくは少なくとも2mg/ml、さらに好ましくは5mg/ml、最も好ましくは少なくとも10mg/mlの範囲内である。
【0117】
磁気的な安定化流動床
本発明の別の実施例で、安定化流動床は、磁気的な安定化流動床によって構成され、吸着性媒体は、磁気的な安定化流動床で使用するために特別にデザインされている。
【0118】
1つの実施例で、磁化可能吸着性媒体は、液体鉄溶液(ferrofluid)で処理されたイオン交換粒子を基にしたアガロースから調製された多孔質なイオン交換粒子によって構成されている(US 5,084,169を参照)。
【0119】
別の実施例で、引用によって、この中で組み込まれているUS 5,2300,805に記述されているごとく、磁化可能吸着性媒体は、アニオン交換樹脂、柔軟強磁性物質(soft ferromagnetic substance)および水浸透性有機ポリマー結合体の均質な組成である。
【0120】
好ましい実施例で、上述のように、磁化可能吸着性媒体は、1つ以上の側鎖からなり、それは1つ以上の生体高分子物質に対して親和性特異的分子である。
【0121】
攪拌タンク
本発明の重要な実施例で、利点として非常に高密度の粒子からなる吸着性媒体の独特な特徴があげられる。広い範囲にまでそのような粒子を使用すると、連続攪拌培養容器から吸着性媒体粒子を持ち越すという重大な問題が避けられる。
【0122】
前記の吸着性媒体は、一般に、少なくとも1.3g/mlの密度で平均直径5−1000μmの範囲内、例えば少なくとも1.5g/mlの密度で平均直径5−300μm、好ましくは少なくとも1.8g/mlの密度で平均直径5−150μm、もっとも好ましくは2.5g/ml以上の密度で平均直径5−75μmを有する粒子の形体である。
【0123】
前述したごとく、粒状物質の非常に重要な特徴は、そのポリマーベースマトリクスが、側鎖として生体高分子物質に対する荷電可能側鎖か、親和性特異的分子のいずれかからなるという事実である。前記の側鎖は、詳しく前述しており、ここにもあてはまる。
【0124】
応用
開示された発明は、体液から特定な細胞、微生物、あるいは粒状物質を体外に除去するのに適している。それは、容態(感染症、悪性腫瘍ならびに自己免疫疾患)の幅広い範囲で、非常に価値があるであろうし、また輸血法あるいは移植医学において、高度で特定な細胞の亜集団を調製するための負の選択スキームでも価値があるであろう。
【0125】
体外特殊細胞除去(ECD:extracorporeal specifccellular depletion)用の応用の1つは、血液からウイルス感染細胞を取り除くことであろう。血中のウイルス感染細胞は、様々な状態で出現する。これらの細胞は、その表面でウイルス性のエンコードされたタンパク質を発現するので、それらは、例えば抗体による特異的な標的化を分析することができる。これは、免疫系がいずれにしても、何をしようとしているのかということであり、ウイルス負荷細胞の部分的除去でさえ、免疫系の仕事を容易にすることができる。免疫不全(例えばAIDS)と関連する感染症は、ウイルス感染免疫細胞の除去によって一時的に悪化することもありうるが、その治療は、依然として感染荷重を減少させ、その結果、非感染細胞の体内回復レベルを助長させなければならない。
【0126】
血球における重症感染症の例は:
HIV(AIDS)−HIVは、CD4−陽性Tリンパ球に感染し、これらの感染細胞のわずかな分画が循環している。HIVは、しばしば変異を起こすので、抗体治療にとって困難な標的であるが、一定のエピトープは、感染細胞によって発現されるであろう。しかしながら、HIVの最大の病原巣は、リンパ組織の細胞で循環の外でみられる。
【0127】
寄生体。マラリア寄生虫は、その一生の一時期を赤血球の中で過ごす。そして、もしこれらの寄生虫が特異的なマーカーを発現すると、それらはECDによって除去される。薬剤に対する耐性は、マラリア治療の際に問題を大きくしている。
【0128】
その他の重要な応用は、癌細胞を血液から除去することであろう。白血病(血液癌)、特にリンパ球および骨髄球の白血病、ならびに骨髄腫症は、細胞毒素剤(cytotoxic drug)(非特異的なものである)に対する代替物、あるいは付加物として特定の細胞の除去に有益であるかもしれない。もしその異常細胞が、特異的な表面マーカーを発現するならば(多くの悪性細胞がそうしている)、ECDによるそれらの選択的除去は可能である。時として、白血球除去(遠心分離法を基にした白血球の体外選択的除去)は、この分野におけるECDの便益に賛同するいくつかの白血病の治療ですでに使用されている。
【0129】
枯死体(apoptotic body)(細胞表面に、特異的な抗体、例えばフォスファチジルセリンが存在する)および他の細胞壊死組織片(cellular debris)を、血液から除去することができる。いくつかの免疫疾患(例えば、全身性紅班性エリテマトーデス)において、死滅した細胞および細胞残骸を除去する正常なメカニズムが損傷され、その結果、これらの構成成分が血液内に蓄積されるようである。例えばフォスファチジルセリン特異的受容体によって、これらを除去することは、おそらく、これらの自己免疫疾患を軽減するであろう。
【0130】
また、特異的に反応する細胞を除去することは、興味あることのように思える。自己免疫疾患において、組織および臓器の損傷は、自己反応免疫細胞によって引き起こされる。これらの細胞は、(循環時)それらが受容体分子として反応する抗原を使ってECDによって除去されるであろう。(カッコ内の標的を使った)いくつかの実施例は、リウマチ様関節炎(コラーゲン)、糖尿病タイプI(島細胞抗原)、シューグレン症候群(内分泌腺)、全身性紅班性エリテマトーデス(二本鎖DNA)、重症筋無力症(アセチルコリン受容体)である。これらの疾患(糖尿病、全身性紅班性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症など)のいくつかは、その原理を試験できる動物モデルが存在する。
輸血のための特異的細胞分画の調製もまた考えられるであろう。血液バンクは、注入量を最小限にし(感染リスクを最小にする)、かつ合理的に献血に使用するため、血液の構成成分をすでに分画している(遠心分離法)。ECD法はその患者が必要とする特定の細胞、例えば、ネガティブ選択スキームにおけるリンパ球の特定の構成成分、あるいは幹細胞の富化以外の全てを除くことによって、このストラテジを広げることを可能にするであろう。また、輸血前にECDによって、損傷/感染した細胞を取り除くことも可能であろう。これは、広範囲に反応する受容体分子をリガンドとして使用することによって達成できる。
【0131】
そして、最後にECD法は、診断目的のため、まれに生体高分子物質を特異的に捕獲するのに使用することができる。一例は、脳障害容態の診断に、プリオンを捕獲することである。別の例は、遺伝疾患の早期診断を意図として、母親の血液中の胎児細胞を捕獲することである。
【0132】
図面の説明
図1.連続した体外吸収の原理。
図では、患者から得た血液を連続的に受取り、開閉可能なバルブを介して安定化流動床カラム(b)に結合した容器(a)を示している。血流を、安定化流動床の底部から直接上方向に当て、そして他のバルブを介してカラムの上部から、患者に血液を連続的に戻す容器(c)に誘導する。「容器」は、血液の断続的な分配を連続して行うために、ポンプの形態をとっていてもよいし、または分離ポンプ(図示せず)を利用してもよい。
図2.UpFront クロマトグラフィーカラム(7010−0000)。
本図は、市販の装置(UpFront chromatography A/S,7010−0000)を使った安定化流動床カラムの構成を示している。本装置は、液体送入用のチューブコネクターをも含み、フットプレートのそばに設置した垂直のガラスカラムからなる。(A)は、移送容器内の分解したカラムを示している。(B)は、組み立てたカラムを示している。
図3.DABでの染色(+ビオチン)、および非染色(−ビオチン)によるガラス粒子のコアを有するビオチン結合集塊ビーズ。
ガラス粒子のコアをもつ集塊吸着性粒子は、誘導化されていないか(A)、またはリガンドとしてビオチンで誘導化(B)されている。いずれのタイプの粒子も、実施例2で記載されているように、アビジン−パーオキシダーゼでスパイクされたEDTA安定化ヒト血液について、安定化流動床クロマトグラフィーに使用した。クロマトグラフィーおよび洗浄の後、各々のタイプの吸着性ビーズサンプルを、ビーズ表面にパーオキシダーゼ活性が存在することを証明するために、DAB染色した。パーオキシダーゼ活性は、非誘導化ビーズでは見られないが、ビオチン結合ビーズで見られるように、ビーズに褐色の色調(白黒図の黒色部)を生じさせる。
図4aおよびb.Cy3ラベルされたマウスMab(血液の有無)を結合しているZ109結合ビーズ(ステンレススチール粒子を含むアガロース)。
図4aおよび4bは、誘導化されていないか(A)、3mg/mlでウサギ抗マウス免疫グロブリン抗体と結合(BおよびC)したいずれかのステンレススチール粒子のコアを有する集塊吸着性粒子を示している。そのビーズは、バッチ培養に続くPBSでの洗浄で、Cy3ラベルされ、精製され、PBS中(図4a)、またはバッチ培養中に全ヘパリン化ウシ血液(図4b)にスパイクされたモノクローナルマウス抗体と接触していた。ビーズを、570nmでの蛍光で検査し(A+B)、および通常光でも検査した(C)。ビーズ中のCy3蛍光分子の存在は、抗体結合ビーズで見られるが、血中における場合と同じくPBS中のCy3免疫グロブリンをもつ非誘導化ビーズでは、ごくわずしか見られないが、明赤色発光によって明らかにされる。
図5ステンレススチール粒子のコアをもつ血球に結合しているPEIアガロースビーズ。
図5Aは、ステンレススチール/アガロース−PEIビーズをもつバッチ処理での全EDTA安定化ヒト血液の培養後、いくつかの血球は、そのビーズの外表面に結合し(A)、他のところでは、結合しない(B)ことを示している。さらに詳しく調べてみると(図5B、両矢印は約25μmを表している。)、ステンレススチールコア粒子(A)、アガロースコーティング層(B)、非結合(C)および結合(D)血球が見られる。
【0133】
実施例
実施例 1
安定化流動床処理の基礎
A. 安定化流動床(EDTA安定化血液)を介した流動ヒト全血液
下記の実施例の目的は、高密度かつ直径の小さな吸着性ビーズを介した流動ヒト非分離血液の可能性を実証することである。
【0134】
材料と方法:
実験用の流動床カラム装備を、次の標準実験室装置を基にして設置した:
−ポンプ(Ole Dich Aps,デンマーク)
−シリコン チューブ(MasterFlex)
−磁気攪拌棒(Janke and Kunkel)
−カラム: UpFront Chromato−graphy A/S,デンマーク(カタログ番号7010−0000)、組み立てた装置も示す図2を参照。
【0135】
吸着性ビーズ(リガンドなし):
試験ビーズは、UpFront Chromato−graphy A/S,デンマークにより、快く提供してもらった。そのビーズは、次のような特徴を有していた。
−ビーズ組成:タングステンカーバイドのコアを有するエピクロロヒドリン架橋結合アガローズ(4%w/v)
−ビーズ形状: ほぼ球状
−直径: 20−40μm
−水和状態での個々のビーズの平均密度:4.1g/ml
−沈降状態での空隙量: 詰まった量の約40%
−沈降ビーズ1リットル当りの理論上のビーズ表面積:120m2
(理論上の表面積を、1リットル沈降床が、600mlのビーズ(非空間量)に相当すると推定することから算出した。各々のビーズは、14130μm3の量を有しており、それからビーズ数が42x109個であると算出することができた。各ビーズは、2826μm2の外表面積を有するとともに、ビーズ1リットルに対して120m2の総床表面積を示す。
【0136】
吸着性平衡緩衝剤:
0.9%w/vの塩化ナトリウム溶液中6%w/vのデキストラン110,000(Pharmacosmos,デンマーク)を、カラムを介して血液濾過前に、吸着剤を予め平衡にするために使用した。
【0137】
血液:
標準EDTA試験管(Becton Dickinson,コード番号15067)に集められた健常ドナーから新たに採取されたヒト血液サンプルを、実験に供した。その血液を室温で保存し、採取後1時間以内に使用した。
【0138】
工程:
流動床カラム(直径:1cm)を、供給元の説明書に従って組み立て、沈降床の高さが7cm(5.5 ml、約0.7 m2ビーズ表面積に相当)に達するように吸着性ビーズの水性懸濁液を付加した。そして、約5ml/minの吸着性平衡緩衝液の上方への流れを、緩衝液でビーズを液体化し、洗浄するため、およびカラムに入れたとき、血液細胞の溶解が最も少なくなるように至適塩濃度/重量モル濃度を確保するために供した。
【0139】
このカラムを、カラム内で一様な流れを確保するため、完全に垂直な位置に調整した。
【0140】
ビーズが流動化された場合(すなわち、その流動床の高さが10cm以上に達したとき)、カラムの底部にある磁気攪拌棒を、流入する溶液の分布を均一に確保するため、約80%のフルスピードで攪拌し、流速を2.2ml/minに調整した。吸着性平衡緩衝液を使った洗浄を15分間続けた。その時間内に、安定化流動床を、流動床を使って、16cmの高さに形成した。流動床の安定性は、目でみえる器具としてルーペを使って、カラムの中の床およびビーズを注意深く目視で調べることで確認した。目視でチャンネル化と逆混合がないのは、床の安定性を示すものであると考えた。
【0141】
安定した平衡状態の流動床を設けたあと、ヒト血液100mlを、2.2ml/minの一定流入速度でカラムに注入した。
【0142】
結果:
血液の安定化流動床への流入および濾過を、目視で調べることによって注意深く追跡した:赤血球サンプルの境界の鮮明で少し放射状のフロントは、安定化流動床を通って、一定の速度で移動していた。そして全体に安定化流動床のいたるところで、逆混合やチャンネル化も観察されなかった。血液サンプルが安定化流動床の全量を占める場合、その床の高さは、21cm(すなわち、沈降床の高さの3倍)に増加した。血液サンプルの不透明さは、カラムの中の吸着性ビーズの観察を非常に困難にするが、ルーペを使用することで、床の高さだけでなく、床の中にチャンネル化がないことも確認することができた。
【0143】
安定化流動床の上端で血液サンプルが貫流した後、カラムへ全100mlの血液サンプルを加え続けながら、流出物を5mlの血液の分画で採取した。その採取した分画を、それぞれ500Gで10分間遠心分離し、血液サンプルがカラムを通過した後に起こる溶血の程度を、対照サンプルとして未処理の血液サンプルを用い、分光光度計を使って540nmで測定した。採取した全ての分画は、溶血の程度が総赤血球数の2%以下であった(十分に実験的に溶血した対照サンプルで測定したのと同じ)。さらに、採取した血液サンプルの顕微鏡検査では、なんら血液の凝固の発生はみられず、サンプル中に全く吸着性ビーズもみられなかった。
【0144】
100mlの血液サンプルを使用した後、カラム内部に残存する血液を洗浄する目的で、カラムに再び吸着性平衡緩衝液で濾過する。洗浄は、また、流速2.2ml/min で行った。緩衝液の流入と、カラムを段階的に洗浄することにより、流入平衡緩衝液と血液サンプルとの間に上方に移動する鮮明な境界線を生じ、チャンネル化や逆混合なしに、流動体がプラグの流れの中を移動しながら、その床の安定な流動化を示す。血液サンプルを完全にカラムの外へ洗い流すと、流動床の高さは16cmに戻っていた。
【0145】
安定化流動床を平衡緩衝液を使って洗浄したあと、カラムの内側からビーズのサンプルを顕微鏡検査した。すべてのビーズは、滑らかな表面を持ち、全く損傷しておらず、それらに付着している細胞は全くないことが観察された。
【0146】
本実験で、100mlのEDTA安定化ヒト全血液サンプルを使用し、高さ7cmの沈降床(5.5ml)を有する安定化流動床を介して汲み上げた。総合的な結論として、小さな吸着性ビーズの安定化流動床に対して、40−50容量%の血球量からなる全血液と、高濃度なタンパク質とを供給するのに、安定化流動床システムの崩壊および/または血液における重大なマイナス効果の形で重大な問題を引き起こすことが想定されるが、全処理中で何らの重大な問題は認められなかった。さらに、ビーズは、血液と全く付着せずに洗浄することができたし、床全体は血液の通過と後の洗浄後にその初期状態に逆戻りした。
【0147】
B.安定化流動床(ヘパリン安定化血液)を介した流動性ヒト全血液
EDTA安定化血液の代わりにヘパリンヒト血液を使用するという以外は、実施例1Aにおけるのと同様な実験を行った。この実験のための血液を、標準ヘパリン試験管(Venoject,NaHeparin,Terumo Europe)の中に採取した。
得られた結果は、EDTA安定化ヒト血液での上述した結果と同様であり、従って、安定化流動床処理を、ヘパリンヒト血液およびEDTA安定化ヒト血液で、何ら問題もなく行うことができることを指摘している。
【0148】
実施例 2
安定化流動床における全ヒト血液からの生体高分子物質の特異的吸着;ビオチン結合ビーズによるアビジンパーオキシダーゼ結合
次の実験の目的は、安定化流動床処理における全ヒト血液からの特異的生体高分子物質の結合の可能性を確立することであった。そのような結合を実証する真の目的のため、酵素結合体を、酵素の結合を証明する目的で、感度の高い分析を実施できるようにモデルタンパク質として使用した。試験物質(パーオキシダーゼでラベルされたアビジン)を、全ヒト血液に付加し、ついで安定化流動床処理では、高密度でビオチンでラベルされた吸着剤に、その試験物質を吸着させた。そして、試験物質の吸着剤への結合を、適切なインジケーターである酵素基質(ジアミノベンジヂン)を使用し、結合パーオキシーダーゼ結合体の作用により吸着性ビーズ上に染色を展開することで実証した。
【0149】
この実施例は、低級密度およびより大きな直径を有し、かつ全血液の安定化流動床クロマトグラフィーに対して、ガラス粒子のコアをもつその他のタイプのビーズを使用する可能性を示すことで、実施例1を補足している。
【0150】
材料と方法:
使用した実験組み立て装置は、実施例1におけるものと同じであった。
【0151】
吸着性ビーズ(リガンドとしてビオチンを使用):
この実験で使用した吸着剤は、高密度ビオチン−アガローゼ/ガラス吸着剤(生産no.:6302−0000,UpFront Chromato−graphy A/S,デンマーク)であった。この吸着剤は、次のような特徴を有している:
−床組成:球状ガラス粒子をコアにもつエピクロロヒドリン架橋結合アガロース(6%w/v)(図3も参照)
−ビーズ形状:主として球状
−直径:100‐300μm
−水和状態における個々のビーズ平均密度1.5g/ml
−リガンド:ビオチン
【0152】
吸着性平衡緩衝液:
0.9%w/v塩化ナトリウム中6%w/vでデキストラン110.000(Pharmacosmos、デンマーク)を、カラムを介して血液を濾過する前に吸着剤をあらかじめ平衡化するために使用した。
【0153】
血液:
標準EDTA試験管(Becton Dickinson、コード番号15067)に採取した健常人ドナーから新たに集めたヒト血液サンプルを、本実験に使用した。血液を、室温で保管し、採取後1時間以内に使用した。吸着処理直前に、1mlのセイヨウワサビ パーオキシターゼでラベルされたアビジン(アビジン−パーオキシターゼ、1mg/ml、生産番号:4030Y、Kem−En−Tec A/S、デンマーク)を、100mlの血液に添加し、最終濃度をヒト血液1mlあたり10μgのアビジン−パーオキシターゼにした。
【0154】
処理:
その液体床カラムを、供給元の説明書に従って組み立て、沈降床の高さが5.8cmに達するように吸着性ビーズの水溶性懸濁液を加えた。
【0155】
カラムに入れる際に、血球の溶血を最小にする目的で、至適塩濃度/モル濃度を確保するために、吸着性平衡緩衝液での洗浄を、最初2.2m/minの流速で行った。吸着性ビーズは、平衡緩衝液を上方に流すことによって液化し、磁気攪拌棒を80%のフルスピードで攪拌し、そのカラムを完全に垂直状態になるように慎重に設置した。十分に安定化流動状態に達したとき、吸着性床の高さは10.5cmに増加した。
【0156】
平衡緩衝液での最初の洗浄後、血液サンプルを、流速2.2ml/minでカラムに導入し、血液の境界が鮮明で少し放射状のフロントが、安定化流動床を介して次第に上方へ移動するのが観察された。本実験を通して、逆混合もチャンネル化も観察されなかった。ヒト血液で十分にロードした際に、その床の高さをルーペを使って測定したところ、約14.5cm(すなわち、沈降床の高さの2.5倍)であった。
【0157】
カラムを通過した血液の溶血の程度は、分光光度計により540nmで(実施例1と同様に)測定したところ0.2%以下であった。
【0158】
血液サンプルを使用した後、カラムを、血液およびなんら結合していないパーオキシダーゼでラベルされたアビジンを洗浄する目的で、200mlの吸着性平衡緩衝液で洗浄した。
【0159】
安定化流動床を完全に洗浄したあと、吸着性ビーズのサンプルを、供給元の説明書に従って調製したジアミノベンジジン基質で2分間培養した。
【0160】
結果:
ジアミノベンジジン酵素基質は、吸着性ビーズを非常に強く褐色に着色させた。そして、安定化流動床を介して血液が通過する間に、血液から抽出した結合アビジン-パーオキシダーゼがビーズ上に存在することを証明した(図3参照)。
【0161】
ビオチンリガンドを欠く以外は、同じタイプの吸着性ビーズを使用して行った実験では、この酵素基質試験で否定的な結果を示し、そのことは、最初の結果が吸着性ビーズ上のビオチンリガンドとヒト血液サンプルに対する試験物質として付加したアビジン−パーオキシダーゼとの間の特殊な相互作用および結合によるものであることを示していた(図3参照)。
【0162】
実施例 3
バッチ操作における全ウシ血液からの生体高分子物質の特異的吸着、抗マウス抗体結合ビーズによるマウス免疫グロブリンの結合。
この実施例の目的は、ウシ全血液に付加したマウス抗体の抽出に、抗マウス免疫グロブリン抗体結合吸着剤を使用することの可能性を実証することであった。
【0163】
本実験で使用した吸着剤は、(コード番号z01109,DAKO A/S,デンマーク)から得た抗マウス免疫グロブリン抗体を結合させた高密度のジビニルスルフォン結合のアガロース/ステンレススチールの吸着剤(Upfront
Chromatography A/S,デンマーク)である。
−ビーズ組成:ステンレススチール粒子をコアにもつエピクロロヒドリン架橋結合アガロース(4%w/v)(図5)。
−ビーズ形体:主として球状
−直径:20‐40μm
−水和状態の個々のビーズの平均密度:3.8g/ml
−リガンド:3mg/mlでジビニールスルフォンにより結合したウサギ抗マウス免疫グロブリン(DAKO A/S,デンマーク,コード番号z0109)
【0164】
処理:
新たに得たウシのヘパリン化した全血液を、へパリン試験管(Venoject,NaHeparin Terumo Europe)の中で収集された健常ドナーから得た。血液から得たマウスの免疫グロブリンの選択抽出を実証する目的で、製造元の説明書に従ってAmersham Pharmaci a Biotech(コード番号PA33000)から得たキットにて調製したCy3でラベルされたマウス免疫グロブリン100μlを、0.5mlのウシ血液に付加し、室温で30分間、吸着性ビーズの懸濁液で培養した(緩やかな回転)。マウス免疫グロブリンは、タンパク質A精製化IgG1イソタイプであり、PBS中に3.7 mg/mlで使用された。これと平行して、同様の培養を、PMS(血液以外のポジティブコントロール)中で100μlのCy3マウス免疫グロブリンで行い、これらの培養の両方ともを、非結合ビーズ(ネガティブコントロール)を使っても行った。
【0165】
吸着性ビーズを、使用前に培養することで洗浄し、血液/マウス抗体混合液を使った培養前にPBS[2回]でデカントした。培養30分後、ビーズをデカントすることで回収し、PBS[培養/デカンテーション]を使って2回洗浄し、そして目視および蛍光顕微鏡検査(570nm)で検査した。
【0166】
結果:
図4にみられる様に、Z0109誘導化ビーズを、純粋溶液[PBS]の中に供し、そして、5倍の低濃度の全ヘパリン化血液に加えると、いずれの場合にも、Cy−3ラベルされたマウス抗体に結合した。一方、非常に低いバックグラウンド結合が非誘導化ビーズで観察された。そのビーズの蛍光強度は、培養が全血液にスパイクしたCy3−免疫グロブリンを使って行った場合と比較すると、結合が純粋なCy3−免疫グロブリン溶液で実施した場合と同様であったので、ビーズに対する免疫グロブリンの結合は、全血液の存在によって明確な影響を受けることはなかった。蛍光は、予想されたように、ポリマーベースマトリクス(アガロース層)の外表面に限定された。(図4参照)。
【0167】
結論として、本実験は、全ウシ血液から溶解性生体高分子物質のバッチ式の特殊回収をするために、小さい吸着性ビーズを使用することが出来ることを示している。
【0168】
実施例4
ポリエチレンイミン結合ビーズと使用した連続攪拌タンク反応器における高密度吸着剤への血球の吸収
次の実施例の目的は、攪拌タンク反応器における高密度イオン交換吸着剤に対するヒト血球の結合の可能性を実証することであった。
【0169】
本実験で使用した吸着剤は、高密度ポリエチレンイミン(PEI)アガロース/ステンレススチール(UpFront Chromatography A/S,デンマーク)であった。この吸着剤は次の特徴を有する:
−ビーズ組成: ステンレススチール粒子のコアをもつエピクロロヒドリン架橋結合アガロース(4%w/v)(図5)。
−ビーズ形体: 主として球状
−直径: 20‐40μm
−水和状態の個々のビーズの平均密度: 3.8g/m
−リガンド: ポリエチレンイミン(PEI)
【0170】
実施例1に述べたごとく、全EDTA安定化ヒト血液(100ml)を、室温で10分間慎重に攪拌しながら1mlの吸着性ビーズと混合させた。吸着ビーズが沈降した後、血液サンプルをデカントし、ビーズを吸着性平衡緩衝液で洗浄し(緩衝液を培養してデカントする)、ついで顕微鏡検査した。
図5に示すように、吸着剤は、血球をその表面吸着性ポリマーマトリクス層に結合させる。
【0171】
実施例 5
細胞懸濁液中の細胞のバッチ工程における抗体コート高密度集塊粒子(antibody−coated high density conglomerate particle)に対して直接的な特異的結合
この実施例の目的は、抗体コート集塊吸着性ビーズを全細胞の免疫親和性クロマトグラフィーに使用できることを実証することである。
【0172】
本実験で使用した吸着剤は、マウス抗ウシCD8抗体(モノクローナルIgG1, ATCC CLR1871)が結合されたジビニルスルフォン活性化(低活性化レベル)アガロース/ステンレススチール吸着剤(UpFront Chromatography A/S,デンマーク)である。:
−ビーズ組成:ステンレススチール粒子のコアを有するエピクロロヒドリン架橋結合アガロース(4%w/v)(図5)。
−ビーズ形体:主として球状
−直径:20‐40μm
−水和状態の個々のビーズの平均密度:3.8g/m
−リガンド:ジビニールスルフォンによって結合された、モノクローナルマウス抗ウシCD8免疫グロブリン(ATCC CLR1871)
【0173】
処理:
新たに得られたヘパリン化された全ウシ血液を、へパリン試験管(Venoject,NaHeparin,Terumo Europe)内に血液を採取することで、健常ドナーから得た。末梢血液単核細胞(PBMCs)を、標準的な方法(Ficoll(登録商標)による密度勾配遠心分離(Amersham Pharmacia Biotech,コード番号17−1440−03))によって、標準的な処理(Rickwood編, 1984, Centrifugation:a practical approach,IRL出版)に従って調整し、1mlあたり約106PBMCsでPBS中に再懸濁した。この細胞懸濁液を、新鮮な血液から調製し、そして調製後直ちに使用に供する。
【0174】
単にモデル実験として吸着性ビーズが全細胞に効果的に結合する能力を実証するため、500μlのPBMC懸濁液を、先ずAmersham Pharmacia Biotech(コード番号PA 33000)から得たCy3ラベルされたキットを用いて調整したウシCD8(ビーズに結合させるために使用した同一の抗体3.7mg/ml)に対して、そのキットに備わっていた説明書に従って、100μlのCy−3結合抗体と最初に混合し、そして、室温で30分後、この混合物をPBS中で200μlの抗体結合ビーズと培養する。ネガティブコントロールとして、同様な組成の非誘導化ビーズも別の実験でも培養する。吸着性ビーズを培養前にPBSで培養し、デカント(3回)して洗浄する。室温で30分間緩やかに攪拌し、次いでPBSで3回洗浄後、生じた懸濁液を可視光と、蛍光顕微鏡を使って570nmで懸濁液中のCD8−ポジティブ(Cy3−ラベルされた)細胞の存在および位置を解明するために調べる。
【0175】
結果:
抗体誘導化ビーズは、非蛍光細胞が全くないかごくわずか有するビーズの表面に付着したより小さなCD−8ポジティブ(したがってCy−3蛍光性)PBMCsを使って、顕微鏡下でより明確に示されることは、本実験から予想できるであろう。このパターンは、非誘導化集塊粒子を使ってみられる蛍光(CD−8ポジティブ)および非蛍光細胞のランダムなパターンとは明らかに異なっており、(CD8−ポジティブ)細胞、および非誘導化集塊粒子をもつ非蛍光細胞の任意のパターンとは明らかに異なっており、さらに、細胞がその免疫吸着性粒子に結合するという特殊な性質をも実証している。
【0176】
実施例6
バッチ工程において捕獲抗体による、抗体コート高密度集塊粒子に対する細胞懸濁液中の細胞の間接的な特異的結合
本実施例の目的は、抗体コート集塊吸着性ビーズが全細胞の間接的な免疫親和性クロマトグラフィーで使用できることを実証することである。
【0177】
本実験に使用した吸着剤は、ジビニルスルフォン活性(低活性化レベル)のアガロース/ステンレススチール吸着剤(Upfront Chromatography A/S,デンマーク)であり、それにウサギ抗マウス免疫グロブリン(DAKO コード番号Z0109)が結合される。:
−ビーズ組成:ステンレススチール粒子をコアにもつエピクロロヒドリン架橋結合アガロース(4%w/v)(図5)。
−ビーズ形体:主として球状
−直径:20‐40μm
−水和状態の個々のビーズの平均密度:3.8g/m
−リガンド:ジビニールスルフォンによって結合された、ウサギ抗マウス免疫グロブリン(DAKO Z0109)
【0178】
処理:
新たに得られたへパリン化全ウシ血液は、へパリン試験管(Venoject,NaHeparin,Terumo Europe)中で血液を収集することによって健常ドナーから得る。末梢血液単核細胞(PBMCs)を、標準的な処理(Rickwood編,1984,遠心分離:実際のアプローチ、IRL出版)にしたがって、標準的な方法(Ficoll(登録商標)による遠心分離, (Amersham Pharmacia Biotech,コード番号17−1440−03))により調整し、1ml当り約106のPBMCsでPMS中で再懸濁する。この細胞懸濁液を、新鮮な血液から調製し、調製後直ちに使用する。
【0179】
単にモデル実験として、吸着性ビーズが全細胞に効果的に結合する能力を実証するため、500μlのPBMC懸濁液を、先ずAmersham Pharmacia Biotech(コード番号PA 33000)から得たCy−3ラベルされたキットを用いて調整したウシCD8(3.7mg/ml)に対して、そのキットに備わっていた説明書に従って、100μlのCy−3結合抗体と最初に混合させ、そして、室温で30分後、この混合物をCy3ラベル抗体の余剰分を取り除くために注意して3回洗浄し、PBS中において200μlのZ0109結合ビーズで培養する。ネガティブ コントロールとして、同様の組成の非誘導化ビーズも別の実験で培養する。吸着性ビーズを、PBMCで培養する前にPBSを使って培養してデカント(3回)して洗浄する。室温で30分間緩やかに攪拌し、次いでPBSで3回洗浄した後、生じた懸濁液を、可視光と蛍光顕微鏡を使って570nmで懸濁液中のCD8−ポジティブ(Cy3ラベルされた)細胞の存在および位置を解明するために調べた。
【0180】
結果:
抗体誘導化ビーズを、非蛍光細胞が全くないかごくわずか有する表面に付着したより小さなCD−8ポジティブ(したがってCy−3蛍光性)PBMCsを使って、顕微鏡下でより明確に出現することは、本実験から予想できるであろう。このパターンは、(CD8−ポジティブ)細胞および非誘導化集塊粒子を使ってみられる非蛍光細胞の任意のパターンとは明らかに異なっており、細胞のその免疫吸着性粒子に対する結合の特異的な性質をも実証していると推測される。
【0181】
このように、本実験は、吸着性集塊粒子に結合するリガンドとして、ポリクローナルマウス免疫グロブリン特異的抗体を使用し、あらゆる種類のモノクローナル抗体に対する「万能タイプ」免疫吸着剤を調整することが可能であることを示すようにデザインされている。これは、当業者に公知であるそのようなモノクローナル抗体が、固体表面に(化学的に)共有固定化した後では、機能しないという利点がある。さらに、これは、他の抗体を捕獲するための装置で、例えば、体液(「結合−および−捕獲」手段)内に成分を有するこれら第二抗体の溶液相中での反応後などに、そのような一般的な免疫吸着性粒子から発生した安定化液化床を使用することができるであろう。
【0182】
実施例7
生体宿主でのCD8ポジティブT細胞の除去のための免疫吸着性高密度集塊粒子からなる安定化液化床の使用
ウシの血流から得たT細胞の亜集団を体外特殊除去するために、安定化流動床を使用する可能性を実証するため、高密度の吸着性粒子がウシCD8に対する抗体で、ビーズにジビニルスルフォンを介して、ウシCD8(ATCC CLR1871)に対するモノクローナルマウス抗体に結合させることで、誘導化される。
【0183】
吸着性ビーズ(リガンドなし):
試験ビーズは、UpFront Chromatography A/S,デンマークより提供された。そのビーズは、次のような特徴を有していた。
−ビーズ組成:タングステンカーバイドのコアを有するエピクロロヒドリン架橋結合アガローズ(4%w/v)
−ビーズ形状:ほぼ球状
−直径:20−40μm
−水和状態の個々のビーズの平均密度:4.1g/ml
−沈降状態での空隙量:詰まった量の約40%
−沈降ビーズ1リットル当りの理論上のビーズ表面積:約120 m2
【0184】
吸着性平衡緩衝液:
0.9%w/vの塩化ナトリウム溶液中の6%デキストランMW110,000(Pharmacosmos,デンマーク)を、カラムを介して血液を濾過する前に、吸着剤を前もって平衡化させるために使用する。
【0185】
処理;
液体床カラム(直径:1cm)を、供給元の説明書に従って組み立て、沈降床の高さが7cm(5.5 ml、約0.7m2のビーズ表面積に相当する)に達するように吸着性ビーズの水性懸濁液を付加する。そして、約5ml/minの吸着性平衡緩衝液の上方への流れを、緩衝液を使ってビーズを液体化して洗浄するため、およびカラムに入れたときに血液細胞の溶解を最も少さくするような至適塩濃度/重量モル濃度を確保するために供する。このカラムを、カラム内で均一な流れを確保するために、完全に垂直な位置に調整する。ビーズが液化された場合(すなわち、その液化床の高さが10cm以上に達したとき)、カラムの底部にある磁気攪拌棒が流入する液体の均一な分布を確保するために、約80%のフルスピードで攪拌し、その流速を2.2ml/minに調整する。吸着性平衡緩衝液での洗浄を15間続ける。その時間内に、安定化流動床は、高さ16cmの流動床で形成される。流動床の安定性は、その床を注意深く検査することで達成する。安定で平衡化した流動床を設立した後、300mlのウシ血液を、2.2 ml/minで、一定の速度でカラムに導入する。これは、注射器を介してチューブをウシの適切な静脈に結合させ、そしてカラムを介して、血液を一連の工程で底部送入口から導入し、上部排出口からウシでの適切な静脈に戻すことで達成される。少量の血液サンプルを、実験を通して、各々5分間上部排出口から採取する。吸着を1分当り5mlで1時間行い、そして終了する。凝固は、PBS中のへパリン溶液を、25IU/mlの血液にカラムの底部送入口でバルブを介して連続して加えることによって避ける。
【0186】
その結果は、全操作が血液の凝固を起こさずに、なんら広範囲の細胞損傷もなく、動物に無害で行うことができるかどうかを示している。
さらに、フローサイトメトリーによって採取された排出口の分画の分析は、CD8細胞が排出口の血流からなくなる範囲を実証するであろう。
【0187】
実施例8
結合および捕獲実施例:生体宿主におけるCD8ポジティブT細胞の除去のために、抗免疫グロブリンで誘導化された免疫吸着性高密度集塊粒子からなる安定化流動床の使用
この実施例の目的と実施は、CD8−特異的抗体が1mg/mlのマウス抗CD8を含む20mlの滅菌PBSの大量注入として、はじめにウシに静脈注射する以外は、実施例11と同様である。次いで、これは、付着リガンドとして抗マウス免疫グロブリン(DAKO Z0109,3 mg/ml)を有する吸着性粒子に実施例11で述べたごとく体外吸着が行われる。
【0188】
その結果は、全操作が血液の凝固を起こすことなく、なんら広範囲の細胞損傷もなく、動物に無害で行われるかどうかを示している。
さらに、フローサイトメトリーによって採取された排出口の分画の分析は、CD8細胞が、その床の量に依存した容量で、排出口の血流からなくなるかどうかを実証するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】図1.連続した体外吸収の原理。
【図2】図2.UpFront クロマトグラフィーカラム(7010−0000)。
【図3】図3.DABでの染色(+ビオチン)、および非染色(−ビオチン)によるガラス粒子のコアを有するビオチン結合集塊ビーズ。
【図4】図4aおよびb.Cy3ラベルされたマウスMab(血液の有無)を結合しているZ109結合ビーズ(ステンレススチール粒子を含むアガロース)。
【図5】図5ステンレススチール粒子のコアをもつ血球に結合しているPEIアガロースビーズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)哺乳動物の細胞外体液を得るための送入管、
(ii)特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有することを特徴とする吸着性粒子からなる安定化流動床、および
(iii)処理した細胞外体液を、はじめに得たのと同じ哺乳動物に再注入するための排出管
からなり、
無菌条件下に適する、
細胞外体液から特異的生体高分子物質を体外捕獲するための装置。
【請求項2】
安定化流動床が、膨張床である請求項1による装置。
【請求項3】
吸着性粒子が、少なくとも1つの送入口および少なくとも1つの排出口を有する膨張床吸着クロマトグラフィー用にデザインされたカラム内に含まれる請求項1または2のいずれか1つによる装置。
【請求項4】
安定化流動床が、磁気的な安定化流動床からなる請求項1による装置。
【請求項5】
吸着性粒子が、少なくとも1つの送入口および少なくとも1つの排出口を有する磁気的な安定化流動床用にデザインされたカラム内に含まれる請求項1による装置。
【請求項6】
吸着性粒子が、吸着性磁化可能粒子である請求項1による装置。
【請求項7】
吸着性粒子が、特異的生体高分子物質に対して特異的親和性を有し、少なくとも1.3g/mlの密度および5〜1000μmの範囲内の直径平均を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つによる装置。
【請求項8】
細胞外体液の吸着性粒子との接触を、攪拌または回転する容器で行う請求項1〜7のいずれか1つによる装置。
【請求項9】
細胞外体液の吸着性粒子との接触を、安定化流動床で行う請求項1〜8のいずれか1つによる装置。
【請求項10】
吸着性粒子が、少なくとも2つの密度調節粒子が組み込まれたポリマーマトリクスからなる集塊粒子である請求項1〜9のいずれか1つによる装置。
【請求項11】
吸着性粒子が、ペリキュラーな構造を有する請求項1〜10のいずれか1つによる装置。
【請求項12】
吸着性粒子の直径平均が、10〜60μmの範囲内である請求項1〜11のいずれか1つによる装置。
【請求項13】
その吸着性粒子の少なくとも95%が、5〜80μmの範囲内の直径を有する請求項1〜12のいずれか1つによる装置。
【請求項14】
吸着性粒子の密度が、1.3〜20g/mlである請求項1〜13のいずれか1つによる装置。
【請求項15】
細胞外体液が、血液である請求項1〜14のいずれか1つによる装置。
【請求項16】
吸着性粒子が、荷電可能な側鎖、及び/又は生体高分子物質に対する親和性特異分子からなる請求項1〜15のいずれか1つによる装置。
【請求項17】
荷電可能な側鎖が、ポリエチレンイミン、修飾ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン/オキシエチレン)、4級アミノエチル(QAE)、ジエチルア
ミノエチル(DEAE)、スルフォン酸、ホスホン酸およびカルボン酸からなる基から選択される請求項16による装置。
【請求項18】
生体高分子物質用の親和性特異的分子が、キレート間の親和性特異的分子、アルブミン、ヘモグロビン、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む免疫グロブリン、抗原、合成ペプチド、プロテインG、プロテインA、レクチン、糖タンパク、ビオチン結合タンパク、アビジンおよびストレプトアビジン、酵素、プロテアーゼ、種々の受容体およびプロテアーゼ阻害物質、及び配列特異的親和特異的分子からなる群から選択される請求項16による装置。
【請求項19】
生体高分子物質用の親和性特異的分子が、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む免疫グロブリン、抗原、合成ペプチド、血液型特異的オリゴ糖類、レクチン、受容体および配列特異的親和特異的分子からなるグループから選択される請求項18による装置。
【請求項20】
生体高分子物質用の親和性特異的分子が、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む免疫グロブリン、抗原、レクチンからなるグループから選択される請求項19による装置。
【請求項21】
生体高分子物質用の親和性特異的分子が、抗体である請求項20による装置。
【請求項22】
生体高分子物質が、癌細胞および癌細胞前駆体からなるグループから選択された細胞である請求項1〜21のいずれか1つによる装置。
【請求項23】
生体高分子物質が、単細胞の寄生体および多細胞の寄生体からなるグループから選択される寄生体である請求項1〜22のいずれか1つによる装置。
【請求項24】
生体高分子物質が、HIV、脳炎ウイルス、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスからなるグループから選択されたウイルスである請求項1〜23のいずれか1つによる装置。
【請求項25】
ウイルスが、HIVである請求項24による装置。
【請求項26】
生体高分子物質が、プリオンである請求項1〜25のいずれか1つによる装置。
【請求項27】
プリオンが、クロイツフェルト-ヤーコブ病、新変異型クロイツフ
ェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン‐シュトロイスラー‐シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、クールー、スクラピー、ウシの海綿状脳症、またはミュールジカおよびエルクの慢性消耗病を引き起こすプリオンの群から選択される請求項26による装置。
【請求項28】
生体高分子物質が、抗体である請求項1〜27のいずれか1つによる装置。
【請求項29】
カラムが、1.2〜3.0の膨張率を示す請求項1〜28のいずれか1つによる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−536(P2009−536A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182761(P2008−182761)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【分割の表示】特願2002−554196(P2002−554196)の分割
【原出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(302018226)
【Fターム(参考)】