説明

細胞表面タンパク質を精製するためのRHO抗体およびタグ

膜結合型タンパク質の発現および精製のためのプロセスが、提供される。膜タンパク質(例えば、Gタンパク質共役レセプター)の発現および精製のためのプロセスが、提供される。ハイブリッドポリペプチドが、対象とするタンパク質と、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメイン由来のペプチドタグとから、構築される。上記ロドプシンタグを使用して上記ハイブリッドタンパク質を精製するための方法が、提供される。その発現されたハイブリッドを検出する方法もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的には、タンパク質構造生物学および薬剤設計の分野に関し、より具体的には、膜貫通タンパク質(例えば、Gタンパク質共役レセプター)の発現、精製、および識別するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
膜タンパク質は、細胞連絡、代謝調節、電気およびイオンのバランス、細胞の構造的完全性、細胞接着、および他の機能のために必須である。Gタンパク質共役レセプター(GPCR)は、特に重要な膜タンパク質ファミリーである。なぜなら、Gタンパク質共役レセプターは、最も大きくかつ最も機能的に多岐にわたるレセプタータンパク質グループのうちの1つであるからである。ヒトゲノムの推定によって、ゲノムのうちの2%〜4%程度が、多数の生理的プロセスの調節に関与するGPCRをコードすることが、示唆される。結果として、GPCRに対する薬物および他の膜貫通タンパク質に対する薬物が、製薬産業全体にわたって活発に調査されている。
【0003】
膜タンパク質の構造モデルは、リガンド結合機構を推定する際、疾患を引き起こす変異の影響を推定する際、および薬物設計を支援する際に、有用であることが証明されている。しかし、原子レベル分解能で膜タンパク質の構造を得ることは、技術的に困難であり、均質でかつ比較的純粋なタンパク質が豊富に必要である。
【0004】
不幸なことには、ほとんどの膜タンパク質の天然供給源は、研究を促進する程には容易には豊富でも純粋でもない。組織培養系が、多量の発現タンパク質を得るために従来使用されている。しかし、そのような系は、代表的には、ほんの低レベルの組換え膜タンパク質しか生じない。特に、組換えGPCRは、組織培養中では非常に低レベルで発現される。さらに、組織培養により発現される組換えGPCRを精製するための従来の方法は、そのタンパク質構造を非常に破壊し、それによって、タンパク質の不均質混合物を生じる。この不均質混合物は、利用するのが困難である。
【0005】
組換え膜タンパク質は、まず、標的タンパク質をコードするDNAフラグメントを、適切なDNAプロモーター配列およびリボソーム結合部位に対して連結することによって生成される。生じる組換えタンパク質はまた、その組換えタンパク質を識別および精製するために有用な特徴的ポリペプチドタグを含み得る。その後、そのハイブリッドポリペプチドをコードするヌクレオチドが、プラスミド発現ベクター中に挿入される。そのプラスミドは、宿主原核生物細胞または宿主真核生物細胞中にトランスフェクトされる。形質転換された宿主細胞が、望ましいハイブリッドタンパク質の発現に基づいて、同定され、分離され、その後、培養される。組換えタンパク質は、おそらく、含まれたポリペプチドタグを使用することによって、細胞培養から精製され得る。例えば、ポリアルギニン配列が、上記タンパク質に付加され得、カチオン交換樹脂(例えば、SP−Sephadex樹脂)における精製を可能にし得る。特許文献1を参照のこと。別の精製技術は、上記ハイブリッドポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおいてポリヒスチジンタグを使用する。その後、この組換えタンパク質は、Ni2+金属アフィニティ樹脂におけるクロマトグラフィーによって、精製され得る。
【0006】
種々のアフィニティ精製プロトコルもまた、融合タンパク質を分離するために現在使用されている。アフィニティクロマトグラフィーは、タンパク質が、リガンドと特異的かつ非共有結合的に結合する能力に基づいている。この技術は、タンパク質を、連続式イオン交換およびゲルカラムクロマトグラフィーよりも高い純度で、かつまた、活性を有意に喪失することなく、非常に複雑な混合物から分離し得る。代表的には、アフィニティマトリックスに高特異性で結合され得るリガンド(またはタグ)が、融合パートナーとして選択される。例えば、E.coliのmalE遺伝子に由来するマルトース結合タンパク質ドメインが、融合パートナーとして使用されており、アミロース樹脂におけるその融合タンパク質のアフィニティ精製を可能にする。
【0007】
エピトープタグ化が、ハイブリッドポリペプチドの発現を分離および検出するために使用される別の方法である。エピトープタグ化は、ポリペプチド配列(「タグ」)に対する抗体を、そのポリペプチドタグが付加されたハイブリッドタンパク質を標識するためまたはそのハイブリッドタンパク質に結合するために使用する。非特許文献1を参照のこと。そのエピトープをコードする短いヌクレオチド配列が、クローン化された遺伝子のコード領域中に挿入される。そのハイブリッド遺伝子は、形質転換などの方法によって、細胞中に導入される。その結果は、上記エピトープをタグとして含むキメラタンパク質である。上記エピトープが、上記タンパク質の表面上に露出される場合、そのエピトープは、そのエピトープに特異的な抗体による認識のために利用可能である。これによって、調査者は、免疫蛍光技術または他の免疫位置決定技術を使用して、細胞中でそのタンパク質を観察することが可能である。さらに、そのようなエピトープタグで標識された融合タンパク質が、アフィニティ精製技術によってタンパク質を精製するために使用され得る。そのエピトープタグのサイズが小さいこと(通常は、5アミノ酸長〜20アミノ酸長)が、重要である。なぜなら、小さいタグは、一般的には、タグ化されたタンパク質の生物学的機能に対して何ら影響を有さないからである。
【0008】
多くの型のエピトープタグが、使用されており、c−mycタグおよびFLAG(登録商標)タグが、最も一般的なタグのうちの2つである。非特許文献2を参照のこと。一般的に、これらのエピトープは、発現されるタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端に融合される。それによって、これらのエピトープは、検出用抗体に対して接近しやすくなり、深刻な構造的混乱または機能的混乱を引き起こす可能性が低くなる。エピトープタグ化はまた、研究される特定のタンパク質に対する抗体を生成するという従来の方法に対して、著しく時間を節約する。エピトープタグ化生成物はおよびそのキット(ペプチド、ポリヌクレオチド、および抗体の種々の組合わせを含む)が、多数の会社(Boehringer−Mannheim(Indianapolis Ind.);Berkeley Antibody Company(Berkeley,Calif.);MBL International Corporation(Watertown,Mass.);Novagen(Madison Wis.);IBI(West Haven,Conn.)およびLife Technologies(Gaithersburg,Md.)が挙げられる)によって現在販売されている。
【0009】
しかし、膜貫通タンパク質に関して従来のタグ化技術を使用する場合には、問題が存在する。第一に、従来のタグ(エピトープタグを含む)は、適切にフォールディングされ発現された、低レベルの内在性膜タンパク質を生じる。GPCRは、この問題の良い例である。細胞培養実験において、ほとんどの組換え発現されたGPCRは、小胞体中に捕捉されたままである。特徴的な低レベル発現は、膜中に不適切に挿入され、不適切なタンパク質フォールディングまたは他の不正確な翻訳後修飾をもたらすことが、おそらく原因である(非特許文献3)。従って、従来の方法によって組織培養から分離された組換えGPCRは、不均質であり、従って、構造研究のためには不適切である。
【0010】
さらに、膜タンパク質(例えば、GPCR)の精製は、特に複雑である。なぜなら、そのタンパク質の四次構造がその精製プロセスによって破壊されないことが、重要であるからである。ポリペプチドタグを使用する従来の精製技術(例えば、ニッケルカラム精製またはカチオン交換カラム)は、激しすぎ、ほとんどの膜貫通タンパク質の自然なフォールディングを破壊する。従来のエピトープタグ化による精製はまた、困難でありかつコストがかかる。なぜなら、細胞培養において組換えGPCRを使用する場合に、非常に低レベルの発現しか達成されないからである。
【特許文献1】米国特許第4,532,207号明細書
【非特許文献1】Kolodziej,P.A.およびYoung,R.A.,Methods Enzymol.,1991,194:508〜519
【非特許文献2】Evanら、Mol Cell Biol.,1985,5:3610〜3616
【非特許文献3】D.Kratwurstら、Cell,1998,95(7):917〜26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、タンパク質(特に、膜タンパク質(例えば、GPCR))を、多量に、高純度かつ高均質性で、生成および精製するための方法についての必要性が、存在する。そのようなタンパク質は、構造研究のため、ならびに他の研究および治療適用のために、使用され得る。本発明は、この必要性を満たし、そして関連する利点をもまた提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、ハイブリッドポリペプチドに関する。このハイブリッドポリペプチドは、識別ペプチドとして作用し、かつ対象とするポリペプチドのアミノ末端に融合されている、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインを含む。本発明のいくつかの実施形態において、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインとは、ウシロドプシンの少なくとも最初の20個の(しかし、最初の35個までの)アミノ酸を指す。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、対象とするポリペプチドは、膜ポリペプチドである。多くの実施形態において、対象とするポリペプチドは、Gタンパク質共役レセプターである。
【0014】
本発明の他の実施形態は、ハイブリッドポリペプチドを発現させることによって標的ポリペプチドを精製する方法に関する。このハイブリッドポリペプチドにおいて、標的タンパク質のアミノ末端が、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインに融合されている。その後、そのハイブリッドポリペプチドは、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインに対して特異的な抗体と複合体化され、生じる複合体が分離される。最後に、そのハイブリッドポリペプチドは、その複合体中の抗体から解離される。
【0015】
この方法のいくつかの実施形態において、上記のロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインに対して特異的な抗体は、ロドプシンの最初の15アミノ酸に対する。いくつかの実施形態において、ロドプシンとは、具体的には、ウシロドプシンを指す。本発明はまた、上記標的ポリペプチドとしてGタンパク質共役レセプターを使用することを、企図する。
【0016】
本発明はまた、樹脂を使用して、上記の抗体/ハイブリッドポリペプチド複合体を分離することを企図する。その樹脂は、上記抗体に結合してその抗体を固定する。本発明はまた、上記ロドプシンに対する抗体から上記ハイブリッドポリペプチドを解離させるための択一的方法を包含する。上記ハイブリッドポリペプチドは、pHによって、塩勾配によって、または過剰な上記抗体のエピトープペプチドとの競合結合によって、溶出され得る。
【0017】
本発明の別の実施形態は、ハイブリッドポリペプチドを生成することによって標的ポリペプチドを標識する方法を記載する。このハイブリッドポリペプチドにおいて、標的ポリペプチドのアミノ末端が、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインに融合されている。その後、このハイブリッドポリペプチドは、そのハイブリッドポリペプチドと、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインのすべてまたは一部に対する抗体との複合体を形成することによって、レポーター因子(reporting agent)を使用して検出される。そのレポーター因子(reporting agent)は、上記抗体に直接結合されるか、または二次抗体もしくは結合因子を使用することによって連結されるかの、いずれかである。レポーター因子(reporting agent)は、蛍光性であっても、酵素性であっても、放射性であってもよい。本発明は、ウシロドプシンの最初の20アミノ酸を、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインとして使用し、かつウシロドプシンの最初の15アミノ酸に対する抗体を、ロドプシンに対する抗体として使用することを、企図する。
【0018】
この方法のいくつかの実施形態において、対象とするポリペプチドは、膜ポリペプチドである。多くの実施形態において、対象とするポリペプチドは、Gタンパク質共役レセプターである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ロドプシン由来のエピトープタグを提供することによって、膜タンパク質(例えば、Gタンパク質共役レセプター(GPCR)のファミリー)の精製という問題を克服する。ロドプシンは、GPCRファミリーの膜貫通タンパク質のプロトタイプメンバーである。従って、本発明は、ロドプシンのアミノ末端細胞外領域の特性を、エピトープ部位(識別ペプチドまたはタグ)として、かつタンパク質を細胞膜中に挿入するのを補助するペプチドとして、利用する。本発明は、標的ポリペプチド(特に、GPCRタンパク質ファミリーのメンバー)の増強された発現、精製、および検出に関する。標的タンパク質のアミノ末端を、GPCRタンパク質であるロドプシン(RHO)のアミノ末端細胞外領域に融合すると、高レベルで発現され得かつ抗ロドプシン抗体により結合される、ハイブリッドポリペプチドが生成される。
【0020】
以下の実施例は、本発明の特定の原理を伝達することが意図される。これらの実施例は、特許請求の範囲の範囲を、特定のいかなる実施例に限定することも意図されない。特許請求の範囲は、本明細書中の記載、あらゆる先行技術、および当業者の知識を考慮して、その最も広範な妥当な解釈を与えられるべきであることが、理解される。当業者は、以下の説明を使用して多くの改変形が誘導され得ることを、容易に認識する。
【0021】
本発明は、形質膜に広がるかまたは形質膜に結合しているタンパク質およびポリペプチドを発現および精製する必要性に応じる。標的ポリペプチドは、使用者にとって興味の対象となるタンパク質である。標的ポリペプチドとしては、主に、膜貫通タンパク質(例えば、GPCRファミリーのタンパク質)が挙げられる。しかし、本発明は、GPCRタンパク質に限定されず、完全(全長)タンパク質に限定されることすらない。本発明の目的のためには、標的ポリペプチドとは、形質膜に広がるかまたは形質膜に結合する、タンパク質またはタンパク質部分を指す。上記識別ポリペプチド(エピトープタグ)は、ロドプシンに由来するので、GPCRファミリータンパク質間での相同性は、本発明が、GPCRファミリーのメンバーを発現および精製するために理想的であることを示唆する。
【0022】
多くの形態のロドプシンが、種内および種間で存在する。最も良く研究されたロドプシン分子のうちの1つは、ウシロドプシンである。そのウシロドプシン(RHO)タンパク質の最初の36アミノ酸は、細胞外にあり、膜中にそのロドプシンタンパク質を挿入するのを補助し得る。ウシRHOタンパク質のアミノ末端由来の最初の20アミノ酸(MNGTEGPNFY VPFSNKTGVV)(配列番号1)は、対象とする標的ポリペプチドのアミノ末端において容易に組み込まれ得、そして細胞培養中で発現され得る。このポリペプチド配列は、良好なエピトープタグを生成する。なぜなら、このポリペプチド配列は、細胞外にあり、従って、接近可能であるからであり、そしてまた、このポリペプチド配列は、膜挿入を補助する隠れた(cryptic)部位を含むと考えられるからである。さらに、ロドプシンはGPCRファミリーのプロトタイプメンバーであるので、このRHOタグは、他の膜貫通タンパク質のプロセシングもフォールディングも妨害する可能性が低い。従って、ウシロドプシンのアミノ末端部分はまた、細胞膜上において機能的なタグ化タンパク質を発現するのを補助する。
【0023】
ウシロドプシンのアミノ末端ドメインを特異的に認識し得る、多くの抗体が存在する。D.HicksおよびR.S.Molday,Exp.Eye Res.1986,42(1):55〜71;P.Rohlichら、Exp.Eye Res.1989,49(6):999〜1013;P.A.Hargraveら、Exp.Eye Res.1986;G.Adamusら、Vision Res.1991,31(1):17〜31;ならびにG.Adamusら、Pept.Res.1988,1(1):42〜47を参照のこと。ウシロドプシンの最初の15アミノ末端ペプチド(MNGTEGPNFY VPFSN)(配列番号2)に対する抗体(特に、モノクローナル抗体)は、ウシロドプシンのアミノ末端由来の最初の20アミノ酸でタグ化されたハイブリッドポリペプチドを識別するために、非常に有効である。しかし、他の形態のロドプシンのアミノ末端領域に対する抗体もまた、本発明に適用される。上記抗体は、上記ハイブリッドポリペプチドのロドプシン識別ペプチド部分に対して高親和性で結合することが、重要である。通常は、これは、上記抗体が、上記識別ペプチドのすべてまたは一部に対したことを意味する。
【0024】
本発明の代替的実施形態は、他の任意の種に由来するロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインを使用することを企図する。例としては、ラットロドプシン、ヒトロドプシン、マウスロドプシン、またはショウジョウバエ(fruit fly)もしくはミバエ(fruit fly)のロドプシンが挙げられる。本発明の目的のためには、ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインとは、内因性発現された場合に実質的に細胞外に存在する、ロドプシンの最もアミノ末端側の部分を指す。このアミノ末端細胞外ドメインは、上記アミノ末端領域の細胞外領域全体に限定されず、上記アミノ末端領域の細胞外領域の一部または部分を包含する。
【0025】
上記膜貫通タンパク質の精製は、理論上は簡単である。例えば、上記標的ポリペプチドがGPCRファミリーのメンバーである場合、その標的ポリペプチドは、まず、上記ロドプシン識別ペプチドに融合されて、上記のハイブリッドポリペプチドが生成される。そのハイブリッドポリペプチドは、GPCRタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、ウシロドプシンの最初の20アミノ酸を連結することによって、GPCR標的ポリペプチドのペプチド配列から生成される。上記配列は、ロドプシンのアミノ末端をコードするヌクレオチドがGPCR標的ポリペプチドのアミノ末端に連結されるように、連結されるべきである。その後、生じるハイブリッドポリヌクレオチド(上記ハイブリッドポリペプチドをコードする)が、培養細胞中で発現可能な発現ベクター(例えば、SigmaのFLAG発現ベクター(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO))中に挿入される。その後、培養細胞が、上記プラスミドで形質転換され得、そして上記ハイブリッドポリヌクレオチドを発現するように誘導され得る。
【0026】
その発現されたタンパク質は、ロドプシンタグに対して高い特異性および親和性を有する抗体を使用して、精製され得る。この実施例は、マウスにおいて惹起され、かつウシロドプシンの最初の15アミノ酸(配列番号2)に対する、モノクローナル抗体を使用する。この抗体は、マトリックス(例えば、セファロース(sepharose)などの樹脂)に結合体化される。上記培養細胞から収集されたハイブリッドポリペプチドを含む溶液が、このマトリックスに適用される。このハイブリッドポリペプチドの露出されたアミノ末端部分は、上記抗体に結合し、そして上記マトリックス中に保持される。その後、上記樹脂が、不純物を除去するために洗浄され得る。最後に、上記ハイブリッドポリペプチドが、上記樹脂から溶出される。その樹脂および望ましい溶出のストリンジェンーに依存して、上記ハイブリッドポリペプチドを溶出する種々の様式が、使用され得る。例えば、上記ハイブリッドポリペプチドは、pH勾配、塩勾配、または界面活性剤によって、溶出され得る。あるいは、上記ハイブリッドポリペプチドは、小さいペプチドを使用して、競合の結果、上記抗体から離され得る。この実施例について、ロドプシンの最初の15アミノ酸を発現する過剰なペプチドが、上記のハイブリッドポリペプチドを溶出するために使用され得る。
【0027】
その後、精製されたハイブリッドポリペプチドが、分析され得る。本発明は、特に、結晶学的技術によって決定されるタンパク質構造についてタンパク質結晶を作製するのを補助することに関する。上記のアミノ末端ロドプシンタグは、小さいので、上記結晶構造決定を変更するはずも、複雑にするはずもない。ウシロドプシンはまた、ウシロドプシンが結晶化されており、従って、そのアミノ末端ドメインの構造が既知であるという、利点を有する。
【0028】
上記ハイブリッドポリペプチドが発現した後に、そのハイブリッドポリペプチドを検出することもまた、可能である。例えば、上記ロドプシンマーカーが、ハイブリッドポリペプチド(例えば、膜タンパク質)の細胞表面発現をモニターするために使用され得る。ロドプシンマーカー(識別ペプチド)をGPCRタンパク質に融合することによって上記のように生成されたハイブリッドタンパク質は、上記RHOタグに対する抗体を使用して、可視化され得る。上記ハイブリッドポリペプチドを含むプラスミドによって形質転換された細胞は、上記タンパク質が形質膜において充分なレベルで発現されることを確認するために、免疫標識され得る。上記の20アミノ酸タグは、細胞外で発現されるので、この20アミノ酸タグはまた、生存細胞における生存マーカーとして、有用である可能性がある。さらに、表面発現および全体的発現が、放射標識抗体を用いる結合アッセイによって定量され得る。上記ハイブリッドポリペプチドにおける上記ロドプシンタグを認識する抗ロドプシン抗体を使用する視覚的免疫組織化学もまた、表面発現または内部発現を定量するために使用され得る。上記ロドプシンタグに対する抗体を使用するハイブリダイゼーションブロッティング(例えば、ウェスタンブロッティング)は、上記ハイブリッドポリペプチドの発現を決定するための別の方法である。
【0029】
事実上任意のレポーター因子(reporting agent)が、上記ロドプシンタグに対する抗体と組み合わせて使用され得る。酵素性レポーター因子(reporting agent)(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP))は、有効である。上記のように、放射性標識および蛍光標識もまた、企図される。上記レポーター因子(reporting agent)は、上記抗ロドプシン抗体に直接結合体化または組み込みされ得る。あるいは、上記レポーター因子(reporting agent)は、二次抗体を介して、上記抗体/ハイブリッドタンパク質複合体に連結され得る。上記ロドプシンタグに対する抗体がマウスにおいて惹起された場合、レポーター因子(reporting agent)で標識された抗マウスIgG二次抗体が、上記ハイブリッドポリペプチドを可視化するために使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッドポリペプチドであって、
標的ポリペプチド、
ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインを含む識別ペプチド、
を含み、該識別ペプチドは、該標的ポリペプチドのアミノ末端に連結されている、ハイブリッドポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッドポリペプチドであって、前記識別ペプチドは、ウシロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインを含む、ハイブリッドポリペプチド。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッドポリペプチドであって、前記識別ペプチドは、最初の20アミノ酸、最初の25アミノ酸、最初の30アミノ酸、および最初の35アミノ酸からなる群より選択されるウシロドプシンのアミノ末端アミノ酸を含む、ハイブリッドポリペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のハイブリッドポリペプチドであって、前記標的ポリペプチドは、膜タンパク質を含む、ハイブリッドポリペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッドポリペプチドであって、前記標的ポリペプチドは、Gタンパク質共役レセプタータンパク質を含む、ハイブリッドポリペプチド。
【請求項6】
標的ポリペプチドを精製する方法であって、該方法は、
標的ポリペプチドのアミノ末端領域に融合されたロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインの識別ペプチドを含む、ハイブリッドポリペプチドを発現させる工程;
該ハイブリッドポリペプチドと、該ロドプシンのアミノ末端ドメインに対する抗体との、複合体を形成させる工程;
該複合体を分離する工程;
該ハイブリッドポリペプチドを該抗体から解離させる工程;
を包含する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記標的ポリペプチドは、Gタンパク質共役レセプターを含む、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記識別ペプチドは、最初の20アミノ酸、最初の25アミノ酸、最初の30アミノ酸、および最初の35アミノ酸からなる群より選択されるウシロドプシンのアミノ末端アミノ酸を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記抗体は、ウシロドプシンの最初の15アミノ酸に対する抗体である、方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法であって、前記抗体は、樹脂により保持される、方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法であって、前記ハイブリッドポリペプチドを、pH勾配によって前記抗体から解離させる、方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法であって、前記ハイブリッドポリペプチドを、塩勾配によって前記抗体から解離させる、方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法であって、前記ロドプシンのアミノ末端ドメインのすべてまたは部分を含むポリペプチドと競合させることによって、前記ハイブリッドポリペプチドを前記抗体から解離させる、方法。
【請求項14】
標的ポリペプチドを標識する方法であって、該方法は、
標的ポリペプチドのアミノ末端領域に融合されたロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインを含む、ハイブリッドポリペプチドを発現させる工程;
該ハイブリッドポリペプチドと、該ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインに対する抗体との、複合体を形成させる工程;および
該複合体をレポーター因子によって検出する工程;
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記ロドプシンのアミノ末端ドメインは、最初の20アミノ酸、最初の25アミノ酸、最初の30アミノ酸、および最初の35アミノ酸からなる群より選択されるウシロドプシンのアミノ末端アミノ酸を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記抗体は、ウシロドプシンの最初の15アミノ酸に対する抗体である、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記標的ポリペプチドは、Gタンパク質共役レセプターである、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記レポーター因子は、前記抗体に結合体化される、方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法であって、前記レポーター因子は、蛍光マーカーである、方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、前記レポーター因子は、酵素性マーカーである、方法。
【請求項21】
請求項14に記載の方法であって、前記レポーター因子は、放射性マーカーである、方法。
【請求項22】
請求項14に記載の方法であって、前記複合体を、前記ロドプシンのアミノ末端細胞外ドメインに対する抗体に対する二次抗体に該複合体を結合させることによって検出し、該二次抗体は、レポーター因子に連結される、方法。

【公表番号】特表2007−506793(P2007−506793A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528318(P2006−528318)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/031831
【国際公開番号】WO2005/029043
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506099937)サグレス ディスカバリー, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】