細胞配列用マイクロチップ及び細胞配列方法
【課題】光ピンセットによる方法とマイクロ流路を利用した方法の長所を組み合わせ、細胞の移動・配列を正確に且つ迅速に行うことができる細胞配列用マイクロチップを提供すること。
【解決手段】送液機構と連結される細胞注入口を有し細胞注入口から注入された細胞が移動する細胞注入用流路と、排液機構と連結される細胞排出口を有し細胞排出口へと向かう細胞が移動する細胞排出用流路と、細胞注入用流路と細胞排出用流路との間に形成され、細胞注入用流路から細胞排出用流路へと流れる途中の細胞を貯留する貯留部と、貯留部に貯留された細胞が導入される細胞配列部と、細胞配列部と前記貯留部とを接続する分岐路とを1つの基板上に備え、細胞配列部は、互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有し、貯留部は、細胞注入用流路及び細胞排出用流路よりも広い幅に、分岐路は貯留部よりも狭い幅に形成されている細胞配列用マイクロチップとする。
【解決手段】送液機構と連結される細胞注入口を有し細胞注入口から注入された細胞が移動する細胞注入用流路と、排液機構と連結される細胞排出口を有し細胞排出口へと向かう細胞が移動する細胞排出用流路と、細胞注入用流路と細胞排出用流路との間に形成され、細胞注入用流路から細胞排出用流路へと流れる途中の細胞を貯留する貯留部と、貯留部に貯留された細胞が導入される細胞配列部と、細胞配列部と前記貯留部とを接続する分岐路とを1つの基板上に備え、細胞配列部は、互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有し、貯留部は、細胞注入用流路及び細胞排出用流路よりも広い幅に、分岐路は貯留部よりも狭い幅に形成されている細胞配列用マイクロチップとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞配列用マイクロチップ及び細胞配列方法に関し、より詳しくは送液による細胞移動と光ピンセットによる細胞移動とを組み合わせて利用する細胞配列方法及びこの方法に用いられる細胞配列用マイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞を非接触で移動させるための方法としては、レーザ光の放射圧を利用して細胞を捕捉(トラップ)し、レーザ光を走査することにより細胞を移動させる光ピンセットと呼ばれる方法が知られている(例えば、下記特許文献1等参照)。
光ピンセットによる方法は、細胞を正確に且つ自在に移動させることができる点において優れた方法であるが、移動速度が遅いために、多数の細胞を移動させる場合や長い距離を移動させる場合には時間がかかり作業効率が悪いという問題があった。
【0003】
細胞を非接触で移動させるための他の方法として、マイクロポンプ等を用いてマイクロ流路に送液して細胞を移動させる方法が知られている(例えば、下記特許文献2等参照)。
マイクロ流路を利用した方法は、多数の細胞を一度に速く移動させることができる点においては優れているが、移動させる細胞数の制御や細胞の選択を行うことが困難であり、しかも微小且つ正確な移動には不向きであるという問題があった。
【0004】
一方、細胞を規則的に配列するために多数の細胞培養セルを基板上に設けたマイクロチップが知られている(例えば、下記特許文献3参照)。
このようなマイクロチップは、2種類以上の細胞を任意のパターンで配列及び培養して創薬における毒性検査や再生医療に利用することができる擬似組織を作るための細胞チップの作製に使用することができる。また、異なる細胞を隣接させて培養し、細胞間の相互作用を検出することにより、細胞の移動・接着・分化・増殖などの研究にも利用できる。
【0005】
従来、このようなマイクロチップを利用して細胞の配列を行う場合、マイクロチップ上から細胞を播種した後、光ピンセットにより細胞をセルに移動させて行われていた。
しかしながら、マイクロチップ上から細胞を播種すると、不要な細胞がセルの周りに残ってしまい、再現性のある細胞チップを得ることができなかった。また、光ピンセットによる移動では多くの細胞を並べるのに時間がかかり、細胞が移動・配列させられる前にマイクロチップに接着してしまうこともあった。
更に、マイクロチップ上で細胞を分別・抽出する場合においても、光ピンセットでは正確な分別が可能である反面、細胞の移動速度が遅いために、細胞の数が多い場合には、分別・抽出作業に時間がかかってしまい、作業効率が悪かった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−62792号公報
【特許文献2】特開2003−274924号公報
【特許文献3】特開2005−27598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、光ピンセットによる方法と、マイクロ流路を利用した方法の長所を組み合わせることにより、細胞の移動・配列を正確に且つ迅速に行うことができ、細胞チップの作製を作業効率良く行うことを可能とし得る細胞配列方法及びこの方法に用いられる細胞配列用マイクロチップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、送液機構と連結される細胞注入口を有し、該細胞注入口から注入された細胞が移動する細胞注入用流路と、排液機構と連結される細胞排出口を有し、該細胞排出口へと向かう細胞が移動する細胞排出用流路と、これら細胞注入用流路と細胞排出用流路との間に形成され、細胞注入用流路から細胞排出用流路へと流れる途中の細胞を一旦貯留する貯留部と、該貯留部に貯留された細胞が導入される細胞配列部と、該細胞配列部と前記貯留部とを接続する分岐路とを1つの基板上に備えており、前記細胞配列部は、壁により互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有し、前記貯留部は、前記細胞注入用流路及び細胞排出用流路よりも広い幅に形成され、前記分岐路は、該貯留部よりも狭い幅に形成されていることを特徴とする細胞配列用マイクロチップに関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記貯留部の細胞注入用流路側から前記分岐路へと入る経路の内角が直角又は鋭角に形成されていることを特徴とする請求項1記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記貯留部を介して接続された細胞注入用流路と細胞排出用流路とが同一直線上にないことを特徴とする請求項1又は2記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、夫々異なる細胞注入用流路及び細胞排出用流路と接続された複数の貯留部を有しており、該複数の貯留部が、1つの細胞配列部に対して夫々異なる分岐路を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記細胞配列部が、六角形の細胞収容用区画がハニカム状に配列された構造を有し、該細胞収容用区画は、その底面に前記六角形よりも小さい円形穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップを用いた細胞配列方法であって、前記送液機構からの送液により細胞を含む液を前記細胞注入用流路に供給して前記貯留部へと送り込む第一の段階と、該貯留部に送り込まれた細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、前記分岐路を介して前記細胞配列部に移動させる第二の段階と、該細胞配列部に移動された細胞を光ピンセットにより移動させて所望の細胞収容用区画に収容する第三の段階とを備えており、前記第一乃至第三の段階を所要回数繰り返すことにより、複数の細胞を細胞配列部において所望配列に配列することを特徴とする細胞配列方法に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項4又は5に記載された細胞配列用マイクロチップを用い、前記第一の段階において、前記複数の細胞注入用流路に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部へと送り込み、前記第二の段階において、夫々異なる貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより夫々異なる分岐路を介して前記細胞配列部に移動させることを特徴とする請求項6記載の細胞配列方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、細胞注入口に送液機構を接続して細胞注入用流路から貯留部へと多数の細胞を迅速に送り込むことができる。また、貯留部の幅が広く分岐路の幅が狭くなっていることにより、細胞を貯留部において一旦貯留させることができ、貯留部に貯留した細胞から所望の細胞を光ピンセット等を用いて細胞配列部へと移動させて、細胞配列部において細胞収容用区画内に細胞を正確に所望配列に配列することができる。
これにより、細胞配列作業を迅速且つ正確に行うことが可能となる。
また、送液機構により細胞を送液することができるため、チップの望まない位置での細胞接着を防ぐことができる。
更に、貯留部に貯留した複数の細胞のうち不必要な細胞(例えば、死んだ細胞や大きさが異なる細胞など)は、細胞排出口に排液機構を接続して細胞排出用流路へと排出することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、貯留部の細胞注入用流路側から分岐路へと入る経路の内角が直角又は鋭角に形成されていることにより、送液機構からの送液によって多数の細胞が貯留部から分岐路を通って細胞配列部へと流れることが防がれ、不必要な細胞が細胞配列部へと入り込むことがない。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、貯留部を介して接続された細胞注入用流路と細胞排出用流路とが同一直線上にないことにより、貯留部において細胞を確実に一旦貯留させることができ、貯留部から細胞配列部への細胞の移動操作を容易に行うことが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、夫々異なる細胞注入用流路及び細胞排出用流路と接続された複数の貯留部を有しており、該複数の貯留部が1つの細胞配列部に対して夫々異なる分岐路を介して接続されていることにより、異種細胞を流路内で混ぜることなく細胞配列部へと移動させることが可能となる。従って、同じような形状、大きさの異種細胞であっても区別ができ、細胞を蛍光等で標識する必要がない。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、細胞配列部が六角形の細胞収容用区画がハニカム状に配列された構造を有することにより、多数の細胞を規則的に配列させるのに好適であるとともに、細胞収容用区画の底面に六角形よりも小さい円形穴が形成されていることにより、円形穴内に細胞を安定した状態で固定することができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、送液機構からの送液により複数の細胞を含む液を細胞注入用流路に供給して前記貯留部へと送り込み、該貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより分岐路を介して細胞配列部に移動させ、該細胞配列部に移動された細胞を光ピンセットにより移動させて細胞収容用区画に収容することにより、細胞の移動・配列を正確に且つ迅速に行うことができ、細胞チップの作製を効率良く且つ正確に行うことが可能となる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、複数の細胞注入用流路に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部へと送り込み、夫々異なる貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を夫々異なる分岐路を介して細胞配列部に移動させることにより、異種細胞を流路内で混ぜることなく細胞配列部へと移動させることができ、細胞を蛍光等で標識することなく、異種細胞が配列された細胞チップの作製を効率良く且つ正確に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る細胞配列用マイクロチップ及び細胞配列方法の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る細胞配列用マイクロチップ(以下、単にマイクロチップと称す)を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)の中心付近の拡大図である。また、図2は、図1(a)の中心付近の拡大図であり、図3は、図1(c)のB−B線断面図である。
【0023】
本発明に係るマイクロチップは、光硬化性樹脂等の光透過性の合成樹脂から形成された略平板状の基板からなり、この基板上に、細胞注入用流路(1)と、細胞排出用流路(2)と、貯留部(3)と、細胞配列部(4)と、分岐路(5)とを備えている。
【0024】
細胞注入用流路(1)は、送液機構からの送液により細胞を注入して貯留部(3)に向けて移動させるための流路であって、基板の表面下(表面に露出しない深さ位置を指す)に形成された内径100μm程度の中空流路からなる。
細胞注入用流路(1)は、その始端部にマイクロポンプやマイクロシリンジ等の送液機構(図示せず)と連結される細胞注入口(6)が形成されており、その終端部は貯留部(3)を介して細胞排出用流路(2)と接続されている。
【0025】
細胞排出用流路(2)は、貯留部(3)に貯留されている細胞を排液機構による吸引により移動させて排出するための流路であって、細胞注入用流路(1)と同様に、基板の表面下に形成された内径100μm程度の中空流路からなる。
細胞排出用流路(2)は、その終端部にマイクロポンプやマイクロシリンジ等の排液機構(図示せず)と連結される細胞排出口(7)が形成されており、その始端部が貯留部(3)を介して細胞注入用流路(1)と接続されている。
【0026】
貯留部(3)は、基板の表面下において、細胞注入用流路(1)と細胞排出用流路(2)との中間位置に両流路間を繋ぐように形成されており、細胞注入用流路(1)から細胞排出用流路(2)へと流れる途中の細胞を一旦貯留する役割を果たす。
貯留部(3)の幅は、細胞注入用流路(1)及び細胞排出用流路(2)よりも広い幅(例えば2倍以上)に形成されている。これにより、細胞注入用流路(1)を通って流れてきた細胞を含む液体は、その流速が貯留部(3)内において低下し、そのまま細胞排出用流路(2)へと排出されることが防がれる。
【0027】
細胞配列部(4)は、貯留部(3)に貯留された細胞が導入されて配列操作がなされる部分であって、分岐路(5)を介して貯留部(3)と接続されている。
細胞配列部(4)は、四角柱状の空間であって、その上部は上方に向けて拡がる逆四角錐台状に形成されて基板表面において開口している。この開口部は必要に応じて蓋(図示せず)を被せて塞ぐことができる。このように開口部を開閉できることにより、細胞を長時間培養する場合に、溶液の蒸発防止と通気性の確保を図ることができる。但し、短時間の培養を目的とする場合には、細胞配列部(4)を、細胞注入用流路(1)、細胞排出用流路(2)、貯留部(3)と同様に、基板表面下に形成する構成を採用することができる。
【0028】
細胞配列部(4)は、壁により互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有している。
図4は、細胞配列部(4)の細胞収容用区画を構成する微小基板(10)を示す図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は1つの区画を拡大抽出した図である。
微小基板(10)は、図1(c)に示す如く、マイクロチップを構成する基板に対して底部から嵌合されて一体化されるものであって、その上面が細胞配列部(4)の底面を構成する。
【0029】
微小基板(10)の上面には、多数の細胞収容用区画(8)が形成されている。
細胞収容用区画(8)は平面視において六角形であって、多数の六角形の区画がハニカム状に配列されている。このようなハニカム状の配列は、多数の細胞を規則的に配列させるのに非常に適している。
細胞収容用区画(8)の底面には、外形の六角形よりも小さい、より具体的には六角形の内接円よりも小さい円形穴(9)が形成されている。
一般的に、細胞は内周壁に付着しようとする性質があるため、六角形の区画に収容した場合には特定の辺に付着して偏ってしまうが、六角形の細胞収容用区画(8)の底部に円形穴(9)が形成されていることにより、細胞は円形穴(9)内に偏ることなく安定して収容固定される。
【0030】
但し、本発明において、細胞配列部(4)の構造は、図4に示す如く六角形の細胞収容用区画をハニカム状に配置した構造に限定されるものではない。
他の構造としては、例えば、図5(a)に示すような四角形の細胞収容用区画(8)を格子状に配置した構造や、図5(b)に示すような直線溝状の細胞収容用区画(8)を平行に配置した構造を例示することができる。尚、図5において、(S)は細胞を示しており、図3(b)の場合には、溝の幅を変化させることで異なる大きさの細胞(S)を収容することができ、細胞間相互作用の検出に好適に利用できる。
【0031】
分岐路(5)は、貯留部(3)と細胞配列部(4)を接続する流路であって、その幅は貯留部(3)よりも狭い幅(好ましくは1/2〜1/3程度)に形成されている。
また、貯留部(3)の細胞注入用流路側から分岐路(5)へと入る経路の内角(θ)は、直角又は鋭角に形成されている。図6(a)は直角に形成した例を示しており、図6(b)は鋭角に形成した例を示している。
このように分岐路(5)の幅及び角度を設定することにより、送液機構からの送液によって多数の細胞が貯留部(3)から分岐路(5)を通って細胞配列部(4)へと流れ込むことが防がれ、不必要な細胞が細胞配列部へと入り込むことがない。
【0032】
また、貯留部(3)を介して接続されている細胞注入用流路(1)と細胞排出用流路(2)とは同一直線上にないように形成されている。
これにより、細胞注入用流路(1)から移動してきた細胞を、貯留部(3)において確実に一旦貯留させることができる。そのため、貯留部(3)から細胞配列部(4)への細胞の移動操作を容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、本発明に係るマイクロチップは、1つの細胞配列部(4)に対して複数の貯留部(3)が夫々異なる分岐路(5)を介して接続されている。図示例では、2つの貯留部(3)が細胞配列部(4)を挟んで対称位置に配置されているが、3つ以上の貯留部を設ける構成としてもよい。
複数の貯留部(3)は、夫々異なる細胞注入用流路(1)及び細胞排出用流路(2)と接続されている。つまり、細胞注入用流路(1)と貯留部(3)と細胞排出用流路(2)を繋ぐ経路が複数設けられているということであり、これら複数の経路が細胞配列部(4)を挟んで対称位置に形成されている。
この構成により、異種細胞を細胞注入用流路(1)内で混ぜることなく細胞配列部(4)へと移動させることができ、細胞を蛍光等で標識する必要がない。
【0034】
次に、本発明に係る細胞配列方法について説明する。
図7は、本発明に係る細胞配列方法において用いられる装置の一例を示す概略図であり、この装置は、倒立型の顕微鏡にレーザ光源等の各種機器が組み合わされた構成を有している。
先ず、この装置の構成について説明する。
【0035】
装置に設けられた顕微鏡は、XY方向への移動が可能であって本発明に係るマイクロチップ(11)を載置するための電動ステージ(12)と、該電動ステージ(12)の直下部に配置されて後述するレーザ光源から出力されたレーザ光を集光してマイクロチップ(11)へと導く対物レンズ(13)と、該対物レンズ(13)の鉛直上方に配置されてマイクロチップ(11)に光を照射するハロゲンランプからなる光源ランプ(14)と、該光源ランプ(14)とマイクロチップ(11)の間に配置されて光源ランプ(14)からマイクロチップ(11)へと照射される光量を調節する電動シャッター(15)と、光源ランプ(14)から照射されてマイクロチップ(11)を通過した可視光の透過像を撮像するCCDカメラやCMOSカメラ等からなる撮像装置(16)を備えている。
【0036】
電動ステージ(12)の移動及び電動シャッター(15)の開閉は、コンピュータ(27)に組み込まれた制御ソフトウェアからの制御信号に基づいて制御されるように構成されている。
【0037】
顕微鏡の対物レンズ(13)の鉛直下方には、ダイクロイックミラー(171)と吸収フィルター(172)を備えたミラーユニット(17)が配置されている。
ダイクロイックミラー(171)は、レーザ光源から出力されたレーザ光の向きを変えて対物レンズ(13)へと導くとともに、光源ランプ(14)から照射された光を通過させて撮像装置(16)へと導くものである。
吸収フィルター(172)は、光源ランプ(14)から照射されてダイクロイックミラー(171)を通過した光の波長成分のうち可視光成分のみを通過させて撮像装置(16)へと導くものである。
【0038】
レーザ光源は、IRレーザを出力する第1レーザ光源(18)と、UVレーザを出力する第2レーザ光源(19)とからなる。
第1レーザ光源(18)から出力されるIRレーザは、細胞を捕捉して操作するためのトラッピング用レーザ、即ち光ピンセットとして用いられる。IRレーザとしては、例えばYAGレーザ(波長1060nm)、Nd:YLFレーザ(波長1047nm)、DPSSレーザ(波長1064nm)等を用いることができるが、細胞にダメージを与えずに移動等の操作を行うことができるものであれば、特にこれらに限定はされない。
第2レーザ光源(9)から出力されるUVレーザは、細胞をレーザ融合するための細胞融合用レーザとして用いられる。但し、本発明に係る方法においては、この第2レーザ光源は必ずしも必要ではない。
【0039】
第1レーザ光源(18)及び第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光を、上記したミラーユニット(17)のダイクロイックミラー(171)へと導く導光路には、電動シャッター(20)(21)、ダイクロイックミラー(22)(23)(25)(26)、電動ミラーユニット(24)が配置されている。
【0040】
電動シャッター(20)(21)は、第1レーザ光源(18)及び第2レーザ光源(19)の出射孔の前方に夫々配置されている。
これら電動シャッター(20)(21)は、コンピュータ(27)から送られる制御信号に基づいて独立して開閉操作が可能となっており、これによって第1レーザ光源(18)及び第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光を選択的に、電動ミラーユニット(24)等を介してミラーユニット(17)へと導くことができる。
【0041】
電動シャッター(20)の前方にはダイクロイックミラー(23)が配置され、電動シャッター(21)の前方にはダイクロイックミラー(22)が配置されている。
ダイクロイックミラー(22)は、第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光の向きを変えてダイクロイックミラー(23)へと導く。
ダイクロイックミラー(23)は、第1レーザ光源(18)から出力されたレーザ光を通過させて電動ミラーユニット(24)へと導くとともに、ダイクロイックミラー(22)により導かれた第2レーザ光源(19)からのレーザ光を反射させて電動ミラーユニット(24)へと導く。
上記したダイクロイックミラー(22)(23)により、第1レーザ光源(18)と第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光は、同一経路を通って電動ミラーユニット(24)へと導かれる。
【0042】
電動ミラーユニット(24)は、コンピュータ(27)から送られる制御信号に基づいて独立して制御可能な2つの電子制御ミラーを有しており、これら2つの電子制御ミラーは、電動ステージ(12)上のマイクロチップ(11)内におけるレーザ光の走査方向において、一方のミラーがX方向、他方のミラーがY方向の走査を夫々担当する。
電子制御ミラーとしては、ガルバノミラー、ピエゾ駆動によるミラー、アクチュエータ駆動によるミラー等が好適に用いられる。
【0043】
ダイクロイックミラー(25)は、電動ミラーユニット(24)を通過したレーザ光の向きを変えてダイクロイックミラー(26)へと導く。
ダイクロイックミラー(26)は、この導かれたレーザ光の向きを変えて、ミラーユニット(17)のダイクロイックミラー(171)へと導く。
【0044】
本発明に係る細胞配列方法は、上記構成からなる装置を用いて行うことが可能であり、以下その具体的方法について説明する。
先ず、準備段階として、上記説明した本発明に係るマイクロチップ(11)を倒立顕微鏡の電動ステージ(12)上に載置固定する。
そして、マイクロポンプやマイクロシリンジ等からなる送液機構及び排液機構を用意し、送液機構をマイクロチップ(11)の細胞注入口(6)と、排液機構を細胞排出口(7)と、夫々チューブを介して接続する。
【0045】
次いで、第一段階として、送液機構からの送液により、細胞(S)を含む液を細胞注入用流路(1)に供給して貯留部(3)へと送り込む(図8参照)。この貯留部(3)への細胞の供給は、送液機構からの送液により行われるため迅速に行うことができる。
そして、第二段階として、貯留部(3)に送り込まれた細胞の中から所望の細胞(S1)を、送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、分岐路(5)を介して細胞配列部(4)に移動させる(図9参照)。
【0046】
送液機構と排液機構の制御による方法では、送液機構による送液圧に比べて排液機構による吸引圧が低くなる(吸引を停止する場合も含む)ように行う。
送液圧と吸引圧とが略等しい場合、細胞注入口(6)から細胞注入用流路(1)へと供給された液は、貯留部(3)において層状の流れとなってそのまま細胞排出用流路(2)へと流れていく。しかし、上記のように制御すると、細胞注入口(6)から細胞注入用流路(1)へと供給された液は、細胞排出用流路(2)への流通が妨げられて貯留部(3)内において拡散し、分岐路(5)を通って細胞配列部(4)へと流入する。
この制御方法では、細胞注入用流路(1)への細胞の供給を少量ずつ行うことによって、より確実に所望の細胞(S1)のみを分岐路(5)を介して細胞配列部(4)へと移動させることができる。
【0047】
光ピンセットによる方法では、上記した装置において、第1レーザ光源(8)から出力されたIRレーザを貯留部(3)へと導いて液中の細胞を捕捉し、電動ミラーユニット(24)の駆動によってレーザ光を走査することにより、所望の細胞(S1)を分岐路(5)を介して細胞配列部(4)へと移動させることができる。
【0048】
最後に、第三段階として、細胞配列部(4)に移動された所望の細胞(S1)を、上記した光ピンセットにより移動して、所望の細胞収容用区画(8)の円形穴(9)内に収容する(図10参照)。
細胞注入用流路(1)から貯留部(3)へと供給された液中に含まれる細胞のうち、不必要な細胞については、送液機構による送液圧に比べて排液機構による吸引圧が高くなる(送液を停止する場合も含む)ように制御することにより、細胞排出用流路(2)へと導いて細胞排出口(7)から外部に排出する(図11参照)。
【0049】
上記第一乃至第三段階を所要回数繰り返すことにより、複数の細胞を細胞配列部(4)において所望配列に配列することができる。
【0050】
異種細胞を配列させる場合には、上記第一段階において、複数の細胞注入用流路(1)に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部(3)へと送り込む。
そして、上記第二段階において、夫々異なる貯留部(3)に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を、上記した送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、夫々異なる分岐路(5)を介して細胞配列部(4)に移動させる。
最後に、第三段階として、細胞配列部(4)に移動された細胞を、上記した光ピンセットにより移動して、所望の細胞収容用区画内に収容する。
この第一乃至第三段階を所要回数繰り返すことにより、異種細胞を細胞配列部(4)において所望配列に配列することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、創薬における毒性検査や再生医療に利用できる擬似組織を作るための細胞チップの作製等に使用することができ、細胞の移動・接着・分化・増殖などの研究にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る細胞配列用マイクロチップを示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)の中心付近の拡大図である。
【図2】図1(a)の中心付近の拡大図である。
【図3】図1(c)のB−B線断面図である。
【図4】細胞配列部において細胞収容用区画を構成する微小基板を示す図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は1つの区画を拡大抽出した図である。
【図5】細胞配列部の構造の別の例を示す平面図である。
【図6】貯留部の細胞注入用流路側から分岐路へと入る経路の内角を説明する図であって、(a)は直角に形成した例、(b)は鋭角に形成した例を示す図である。
【図7】本発明に係る細胞配列方法において用いられる装置の一例を示す概略図である。
【図8】本発明に係る細胞配列方法の第一段階を示す図である。
【図9】本発明に係る細胞配列方法の第二段階を示す図である。
【図10】本発明に係る細胞配列方法の第三段階を示す図である。
【図11】本発明に係る細胞配列方法において不要な細胞を排出する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 細胞注入用流路
2 細胞排出用流路
3 貯留部
4 細胞配列部
5 分岐路
6 細胞注入口
7 細胞排出口
8 細胞収容用区画
9 円形穴
11 マイクロチップ
S 細胞
S1 所望の細胞
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞配列用マイクロチップ及び細胞配列方法に関し、より詳しくは送液による細胞移動と光ピンセットによる細胞移動とを組み合わせて利用する細胞配列方法及びこの方法に用いられる細胞配列用マイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞を非接触で移動させるための方法としては、レーザ光の放射圧を利用して細胞を捕捉(トラップ)し、レーザ光を走査することにより細胞を移動させる光ピンセットと呼ばれる方法が知られている(例えば、下記特許文献1等参照)。
光ピンセットによる方法は、細胞を正確に且つ自在に移動させることができる点において優れた方法であるが、移動速度が遅いために、多数の細胞を移動させる場合や長い距離を移動させる場合には時間がかかり作業効率が悪いという問題があった。
【0003】
細胞を非接触で移動させるための他の方法として、マイクロポンプ等を用いてマイクロ流路に送液して細胞を移動させる方法が知られている(例えば、下記特許文献2等参照)。
マイクロ流路を利用した方法は、多数の細胞を一度に速く移動させることができる点においては優れているが、移動させる細胞数の制御や細胞の選択を行うことが困難であり、しかも微小且つ正確な移動には不向きであるという問題があった。
【0004】
一方、細胞を規則的に配列するために多数の細胞培養セルを基板上に設けたマイクロチップが知られている(例えば、下記特許文献3参照)。
このようなマイクロチップは、2種類以上の細胞を任意のパターンで配列及び培養して創薬における毒性検査や再生医療に利用することができる擬似組織を作るための細胞チップの作製に使用することができる。また、異なる細胞を隣接させて培養し、細胞間の相互作用を検出することにより、細胞の移動・接着・分化・増殖などの研究にも利用できる。
【0005】
従来、このようなマイクロチップを利用して細胞の配列を行う場合、マイクロチップ上から細胞を播種した後、光ピンセットにより細胞をセルに移動させて行われていた。
しかしながら、マイクロチップ上から細胞を播種すると、不要な細胞がセルの周りに残ってしまい、再現性のある細胞チップを得ることができなかった。また、光ピンセットによる移動では多くの細胞を並べるのに時間がかかり、細胞が移動・配列させられる前にマイクロチップに接着してしまうこともあった。
更に、マイクロチップ上で細胞を分別・抽出する場合においても、光ピンセットでは正確な分別が可能である反面、細胞の移動速度が遅いために、細胞の数が多い場合には、分別・抽出作業に時間がかかってしまい、作業効率が悪かった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−62792号公報
【特許文献2】特開2003−274924号公報
【特許文献3】特開2005−27598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、光ピンセットによる方法と、マイクロ流路を利用した方法の長所を組み合わせることにより、細胞の移動・配列を正確に且つ迅速に行うことができ、細胞チップの作製を作業効率良く行うことを可能とし得る細胞配列方法及びこの方法に用いられる細胞配列用マイクロチップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、送液機構と連結される細胞注入口を有し、該細胞注入口から注入された細胞が移動する細胞注入用流路と、排液機構と連結される細胞排出口を有し、該細胞排出口へと向かう細胞が移動する細胞排出用流路と、これら細胞注入用流路と細胞排出用流路との間に形成され、細胞注入用流路から細胞排出用流路へと流れる途中の細胞を一旦貯留する貯留部と、該貯留部に貯留された細胞が導入される細胞配列部と、該細胞配列部と前記貯留部とを接続する分岐路とを1つの基板上に備えており、前記細胞配列部は、壁により互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有し、前記貯留部は、前記細胞注入用流路及び細胞排出用流路よりも広い幅に形成され、前記分岐路は、該貯留部よりも狭い幅に形成されていることを特徴とする細胞配列用マイクロチップに関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記貯留部の細胞注入用流路側から前記分岐路へと入る経路の内角が直角又は鋭角に形成されていることを特徴とする請求項1記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記貯留部を介して接続された細胞注入用流路と細胞排出用流路とが同一直線上にないことを特徴とする請求項1又は2記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、夫々異なる細胞注入用流路及び細胞排出用流路と接続された複数の貯留部を有しており、該複数の貯留部が、1つの細胞配列部に対して夫々異なる分岐路を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記細胞配列部が、六角形の細胞収容用区画がハニカム状に配列された構造を有し、該細胞収容用区画は、その底面に前記六角形よりも小さい円形穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップに関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップを用いた細胞配列方法であって、前記送液機構からの送液により細胞を含む液を前記細胞注入用流路に供給して前記貯留部へと送り込む第一の段階と、該貯留部に送り込まれた細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、前記分岐路を介して前記細胞配列部に移動させる第二の段階と、該細胞配列部に移動された細胞を光ピンセットにより移動させて所望の細胞収容用区画に収容する第三の段階とを備えており、前記第一乃至第三の段階を所要回数繰り返すことにより、複数の細胞を細胞配列部において所望配列に配列することを特徴とする細胞配列方法に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項4又は5に記載された細胞配列用マイクロチップを用い、前記第一の段階において、前記複数の細胞注入用流路に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部へと送り込み、前記第二の段階において、夫々異なる貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより夫々異なる分岐路を介して前記細胞配列部に移動させることを特徴とする請求項6記載の細胞配列方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、細胞注入口に送液機構を接続して細胞注入用流路から貯留部へと多数の細胞を迅速に送り込むことができる。また、貯留部の幅が広く分岐路の幅が狭くなっていることにより、細胞を貯留部において一旦貯留させることができ、貯留部に貯留した細胞から所望の細胞を光ピンセット等を用いて細胞配列部へと移動させて、細胞配列部において細胞収容用区画内に細胞を正確に所望配列に配列することができる。
これにより、細胞配列作業を迅速且つ正確に行うことが可能となる。
また、送液機構により細胞を送液することができるため、チップの望まない位置での細胞接着を防ぐことができる。
更に、貯留部に貯留した複数の細胞のうち不必要な細胞(例えば、死んだ細胞や大きさが異なる細胞など)は、細胞排出口に排液機構を接続して細胞排出用流路へと排出することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、貯留部の細胞注入用流路側から分岐路へと入る経路の内角が直角又は鋭角に形成されていることにより、送液機構からの送液によって多数の細胞が貯留部から分岐路を通って細胞配列部へと流れることが防がれ、不必要な細胞が細胞配列部へと入り込むことがない。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、貯留部を介して接続された細胞注入用流路と細胞排出用流路とが同一直線上にないことにより、貯留部において細胞を確実に一旦貯留させることができ、貯留部から細胞配列部への細胞の移動操作を容易に行うことが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、夫々異なる細胞注入用流路及び細胞排出用流路と接続された複数の貯留部を有しており、該複数の貯留部が1つの細胞配列部に対して夫々異なる分岐路を介して接続されていることにより、異種細胞を流路内で混ぜることなく細胞配列部へと移動させることが可能となる。従って、同じような形状、大きさの異種細胞であっても区別ができ、細胞を蛍光等で標識する必要がない。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、細胞配列部が六角形の細胞収容用区画がハニカム状に配列された構造を有することにより、多数の細胞を規則的に配列させるのに好適であるとともに、細胞収容用区画の底面に六角形よりも小さい円形穴が形成されていることにより、円形穴内に細胞を安定した状態で固定することができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、送液機構からの送液により複数の細胞を含む液を細胞注入用流路に供給して前記貯留部へと送り込み、該貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより分岐路を介して細胞配列部に移動させ、該細胞配列部に移動された細胞を光ピンセットにより移動させて細胞収容用区画に収容することにより、細胞の移動・配列を正確に且つ迅速に行うことができ、細胞チップの作製を効率良く且つ正確に行うことが可能となる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、複数の細胞注入用流路に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部へと送り込み、夫々異なる貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を夫々異なる分岐路を介して細胞配列部に移動させることにより、異種細胞を流路内で混ぜることなく細胞配列部へと移動させることができ、細胞を蛍光等で標識することなく、異種細胞が配列された細胞チップの作製を効率良く且つ正確に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る細胞配列用マイクロチップ及び細胞配列方法の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る細胞配列用マイクロチップ(以下、単にマイクロチップと称す)を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)の中心付近の拡大図である。また、図2は、図1(a)の中心付近の拡大図であり、図3は、図1(c)のB−B線断面図である。
【0023】
本発明に係るマイクロチップは、光硬化性樹脂等の光透過性の合成樹脂から形成された略平板状の基板からなり、この基板上に、細胞注入用流路(1)と、細胞排出用流路(2)と、貯留部(3)と、細胞配列部(4)と、分岐路(5)とを備えている。
【0024】
細胞注入用流路(1)は、送液機構からの送液により細胞を注入して貯留部(3)に向けて移動させるための流路であって、基板の表面下(表面に露出しない深さ位置を指す)に形成された内径100μm程度の中空流路からなる。
細胞注入用流路(1)は、その始端部にマイクロポンプやマイクロシリンジ等の送液機構(図示せず)と連結される細胞注入口(6)が形成されており、その終端部は貯留部(3)を介して細胞排出用流路(2)と接続されている。
【0025】
細胞排出用流路(2)は、貯留部(3)に貯留されている細胞を排液機構による吸引により移動させて排出するための流路であって、細胞注入用流路(1)と同様に、基板の表面下に形成された内径100μm程度の中空流路からなる。
細胞排出用流路(2)は、その終端部にマイクロポンプやマイクロシリンジ等の排液機構(図示せず)と連結される細胞排出口(7)が形成されており、その始端部が貯留部(3)を介して細胞注入用流路(1)と接続されている。
【0026】
貯留部(3)は、基板の表面下において、細胞注入用流路(1)と細胞排出用流路(2)との中間位置に両流路間を繋ぐように形成されており、細胞注入用流路(1)から細胞排出用流路(2)へと流れる途中の細胞を一旦貯留する役割を果たす。
貯留部(3)の幅は、細胞注入用流路(1)及び細胞排出用流路(2)よりも広い幅(例えば2倍以上)に形成されている。これにより、細胞注入用流路(1)を通って流れてきた細胞を含む液体は、その流速が貯留部(3)内において低下し、そのまま細胞排出用流路(2)へと排出されることが防がれる。
【0027】
細胞配列部(4)は、貯留部(3)に貯留された細胞が導入されて配列操作がなされる部分であって、分岐路(5)を介して貯留部(3)と接続されている。
細胞配列部(4)は、四角柱状の空間であって、その上部は上方に向けて拡がる逆四角錐台状に形成されて基板表面において開口している。この開口部は必要に応じて蓋(図示せず)を被せて塞ぐことができる。このように開口部を開閉できることにより、細胞を長時間培養する場合に、溶液の蒸発防止と通気性の確保を図ることができる。但し、短時間の培養を目的とする場合には、細胞配列部(4)を、細胞注入用流路(1)、細胞排出用流路(2)、貯留部(3)と同様に、基板表面下に形成する構成を採用することができる。
【0028】
細胞配列部(4)は、壁により互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有している。
図4は、細胞配列部(4)の細胞収容用区画を構成する微小基板(10)を示す図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は1つの区画を拡大抽出した図である。
微小基板(10)は、図1(c)に示す如く、マイクロチップを構成する基板に対して底部から嵌合されて一体化されるものであって、その上面が細胞配列部(4)の底面を構成する。
【0029】
微小基板(10)の上面には、多数の細胞収容用区画(8)が形成されている。
細胞収容用区画(8)は平面視において六角形であって、多数の六角形の区画がハニカム状に配列されている。このようなハニカム状の配列は、多数の細胞を規則的に配列させるのに非常に適している。
細胞収容用区画(8)の底面には、外形の六角形よりも小さい、より具体的には六角形の内接円よりも小さい円形穴(9)が形成されている。
一般的に、細胞は内周壁に付着しようとする性質があるため、六角形の区画に収容した場合には特定の辺に付着して偏ってしまうが、六角形の細胞収容用区画(8)の底部に円形穴(9)が形成されていることにより、細胞は円形穴(9)内に偏ることなく安定して収容固定される。
【0030】
但し、本発明において、細胞配列部(4)の構造は、図4に示す如く六角形の細胞収容用区画をハニカム状に配置した構造に限定されるものではない。
他の構造としては、例えば、図5(a)に示すような四角形の細胞収容用区画(8)を格子状に配置した構造や、図5(b)に示すような直線溝状の細胞収容用区画(8)を平行に配置した構造を例示することができる。尚、図5において、(S)は細胞を示しており、図3(b)の場合には、溝の幅を変化させることで異なる大きさの細胞(S)を収容することができ、細胞間相互作用の検出に好適に利用できる。
【0031】
分岐路(5)は、貯留部(3)と細胞配列部(4)を接続する流路であって、その幅は貯留部(3)よりも狭い幅(好ましくは1/2〜1/3程度)に形成されている。
また、貯留部(3)の細胞注入用流路側から分岐路(5)へと入る経路の内角(θ)は、直角又は鋭角に形成されている。図6(a)は直角に形成した例を示しており、図6(b)は鋭角に形成した例を示している。
このように分岐路(5)の幅及び角度を設定することにより、送液機構からの送液によって多数の細胞が貯留部(3)から分岐路(5)を通って細胞配列部(4)へと流れ込むことが防がれ、不必要な細胞が細胞配列部へと入り込むことがない。
【0032】
また、貯留部(3)を介して接続されている細胞注入用流路(1)と細胞排出用流路(2)とは同一直線上にないように形成されている。
これにより、細胞注入用流路(1)から移動してきた細胞を、貯留部(3)において確実に一旦貯留させることができる。そのため、貯留部(3)から細胞配列部(4)への細胞の移動操作を容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、本発明に係るマイクロチップは、1つの細胞配列部(4)に対して複数の貯留部(3)が夫々異なる分岐路(5)を介して接続されている。図示例では、2つの貯留部(3)が細胞配列部(4)を挟んで対称位置に配置されているが、3つ以上の貯留部を設ける構成としてもよい。
複数の貯留部(3)は、夫々異なる細胞注入用流路(1)及び細胞排出用流路(2)と接続されている。つまり、細胞注入用流路(1)と貯留部(3)と細胞排出用流路(2)を繋ぐ経路が複数設けられているということであり、これら複数の経路が細胞配列部(4)を挟んで対称位置に形成されている。
この構成により、異種細胞を細胞注入用流路(1)内で混ぜることなく細胞配列部(4)へと移動させることができ、細胞を蛍光等で標識する必要がない。
【0034】
次に、本発明に係る細胞配列方法について説明する。
図7は、本発明に係る細胞配列方法において用いられる装置の一例を示す概略図であり、この装置は、倒立型の顕微鏡にレーザ光源等の各種機器が組み合わされた構成を有している。
先ず、この装置の構成について説明する。
【0035】
装置に設けられた顕微鏡は、XY方向への移動が可能であって本発明に係るマイクロチップ(11)を載置するための電動ステージ(12)と、該電動ステージ(12)の直下部に配置されて後述するレーザ光源から出力されたレーザ光を集光してマイクロチップ(11)へと導く対物レンズ(13)と、該対物レンズ(13)の鉛直上方に配置されてマイクロチップ(11)に光を照射するハロゲンランプからなる光源ランプ(14)と、該光源ランプ(14)とマイクロチップ(11)の間に配置されて光源ランプ(14)からマイクロチップ(11)へと照射される光量を調節する電動シャッター(15)と、光源ランプ(14)から照射されてマイクロチップ(11)を通過した可視光の透過像を撮像するCCDカメラやCMOSカメラ等からなる撮像装置(16)を備えている。
【0036】
電動ステージ(12)の移動及び電動シャッター(15)の開閉は、コンピュータ(27)に組み込まれた制御ソフトウェアからの制御信号に基づいて制御されるように構成されている。
【0037】
顕微鏡の対物レンズ(13)の鉛直下方には、ダイクロイックミラー(171)と吸収フィルター(172)を備えたミラーユニット(17)が配置されている。
ダイクロイックミラー(171)は、レーザ光源から出力されたレーザ光の向きを変えて対物レンズ(13)へと導くとともに、光源ランプ(14)から照射された光を通過させて撮像装置(16)へと導くものである。
吸収フィルター(172)は、光源ランプ(14)から照射されてダイクロイックミラー(171)を通過した光の波長成分のうち可視光成分のみを通過させて撮像装置(16)へと導くものである。
【0038】
レーザ光源は、IRレーザを出力する第1レーザ光源(18)と、UVレーザを出力する第2レーザ光源(19)とからなる。
第1レーザ光源(18)から出力されるIRレーザは、細胞を捕捉して操作するためのトラッピング用レーザ、即ち光ピンセットとして用いられる。IRレーザとしては、例えばYAGレーザ(波長1060nm)、Nd:YLFレーザ(波長1047nm)、DPSSレーザ(波長1064nm)等を用いることができるが、細胞にダメージを与えずに移動等の操作を行うことができるものであれば、特にこれらに限定はされない。
第2レーザ光源(9)から出力されるUVレーザは、細胞をレーザ融合するための細胞融合用レーザとして用いられる。但し、本発明に係る方法においては、この第2レーザ光源は必ずしも必要ではない。
【0039】
第1レーザ光源(18)及び第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光を、上記したミラーユニット(17)のダイクロイックミラー(171)へと導く導光路には、電動シャッター(20)(21)、ダイクロイックミラー(22)(23)(25)(26)、電動ミラーユニット(24)が配置されている。
【0040】
電動シャッター(20)(21)は、第1レーザ光源(18)及び第2レーザ光源(19)の出射孔の前方に夫々配置されている。
これら電動シャッター(20)(21)は、コンピュータ(27)から送られる制御信号に基づいて独立して開閉操作が可能となっており、これによって第1レーザ光源(18)及び第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光を選択的に、電動ミラーユニット(24)等を介してミラーユニット(17)へと導くことができる。
【0041】
電動シャッター(20)の前方にはダイクロイックミラー(23)が配置され、電動シャッター(21)の前方にはダイクロイックミラー(22)が配置されている。
ダイクロイックミラー(22)は、第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光の向きを変えてダイクロイックミラー(23)へと導く。
ダイクロイックミラー(23)は、第1レーザ光源(18)から出力されたレーザ光を通過させて電動ミラーユニット(24)へと導くとともに、ダイクロイックミラー(22)により導かれた第2レーザ光源(19)からのレーザ光を反射させて電動ミラーユニット(24)へと導く。
上記したダイクロイックミラー(22)(23)により、第1レーザ光源(18)と第2レーザ光源(19)から出力されたレーザ光は、同一経路を通って電動ミラーユニット(24)へと導かれる。
【0042】
電動ミラーユニット(24)は、コンピュータ(27)から送られる制御信号に基づいて独立して制御可能な2つの電子制御ミラーを有しており、これら2つの電子制御ミラーは、電動ステージ(12)上のマイクロチップ(11)内におけるレーザ光の走査方向において、一方のミラーがX方向、他方のミラーがY方向の走査を夫々担当する。
電子制御ミラーとしては、ガルバノミラー、ピエゾ駆動によるミラー、アクチュエータ駆動によるミラー等が好適に用いられる。
【0043】
ダイクロイックミラー(25)は、電動ミラーユニット(24)を通過したレーザ光の向きを変えてダイクロイックミラー(26)へと導く。
ダイクロイックミラー(26)は、この導かれたレーザ光の向きを変えて、ミラーユニット(17)のダイクロイックミラー(171)へと導く。
【0044】
本発明に係る細胞配列方法は、上記構成からなる装置を用いて行うことが可能であり、以下その具体的方法について説明する。
先ず、準備段階として、上記説明した本発明に係るマイクロチップ(11)を倒立顕微鏡の電動ステージ(12)上に載置固定する。
そして、マイクロポンプやマイクロシリンジ等からなる送液機構及び排液機構を用意し、送液機構をマイクロチップ(11)の細胞注入口(6)と、排液機構を細胞排出口(7)と、夫々チューブを介して接続する。
【0045】
次いで、第一段階として、送液機構からの送液により、細胞(S)を含む液を細胞注入用流路(1)に供給して貯留部(3)へと送り込む(図8参照)。この貯留部(3)への細胞の供給は、送液機構からの送液により行われるため迅速に行うことができる。
そして、第二段階として、貯留部(3)に送り込まれた細胞の中から所望の細胞(S1)を、送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、分岐路(5)を介して細胞配列部(4)に移動させる(図9参照)。
【0046】
送液機構と排液機構の制御による方法では、送液機構による送液圧に比べて排液機構による吸引圧が低くなる(吸引を停止する場合も含む)ように行う。
送液圧と吸引圧とが略等しい場合、細胞注入口(6)から細胞注入用流路(1)へと供給された液は、貯留部(3)において層状の流れとなってそのまま細胞排出用流路(2)へと流れていく。しかし、上記のように制御すると、細胞注入口(6)から細胞注入用流路(1)へと供給された液は、細胞排出用流路(2)への流通が妨げられて貯留部(3)内において拡散し、分岐路(5)を通って細胞配列部(4)へと流入する。
この制御方法では、細胞注入用流路(1)への細胞の供給を少量ずつ行うことによって、より確実に所望の細胞(S1)のみを分岐路(5)を介して細胞配列部(4)へと移動させることができる。
【0047】
光ピンセットによる方法では、上記した装置において、第1レーザ光源(8)から出力されたIRレーザを貯留部(3)へと導いて液中の細胞を捕捉し、電動ミラーユニット(24)の駆動によってレーザ光を走査することにより、所望の細胞(S1)を分岐路(5)を介して細胞配列部(4)へと移動させることができる。
【0048】
最後に、第三段階として、細胞配列部(4)に移動された所望の細胞(S1)を、上記した光ピンセットにより移動して、所望の細胞収容用区画(8)の円形穴(9)内に収容する(図10参照)。
細胞注入用流路(1)から貯留部(3)へと供給された液中に含まれる細胞のうち、不必要な細胞については、送液機構による送液圧に比べて排液機構による吸引圧が高くなる(送液を停止する場合も含む)ように制御することにより、細胞排出用流路(2)へと導いて細胞排出口(7)から外部に排出する(図11参照)。
【0049】
上記第一乃至第三段階を所要回数繰り返すことにより、複数の細胞を細胞配列部(4)において所望配列に配列することができる。
【0050】
異種細胞を配列させる場合には、上記第一段階において、複数の細胞注入用流路(1)に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部(3)へと送り込む。
そして、上記第二段階において、夫々異なる貯留部(3)に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を、上記した送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、夫々異なる分岐路(5)を介して細胞配列部(4)に移動させる。
最後に、第三段階として、細胞配列部(4)に移動された細胞を、上記した光ピンセットにより移動して、所望の細胞収容用区画内に収容する。
この第一乃至第三段階を所要回数繰り返すことにより、異種細胞を細胞配列部(4)において所望配列に配列することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、創薬における毒性検査や再生医療に利用できる擬似組織を作るための細胞チップの作製等に使用することができ、細胞の移動・接着・分化・増殖などの研究にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る細胞配列用マイクロチップを示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)の中心付近の拡大図である。
【図2】図1(a)の中心付近の拡大図である。
【図3】図1(c)のB−B線断面図である。
【図4】細胞配列部において細胞収容用区画を構成する微小基板を示す図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は1つの区画を拡大抽出した図である。
【図5】細胞配列部の構造の別の例を示す平面図である。
【図6】貯留部の細胞注入用流路側から分岐路へと入る経路の内角を説明する図であって、(a)は直角に形成した例、(b)は鋭角に形成した例を示す図である。
【図7】本発明に係る細胞配列方法において用いられる装置の一例を示す概略図である。
【図8】本発明に係る細胞配列方法の第一段階を示す図である。
【図9】本発明に係る細胞配列方法の第二段階を示す図である。
【図10】本発明に係る細胞配列方法の第三段階を示す図である。
【図11】本発明に係る細胞配列方法において不要な細胞を排出する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 細胞注入用流路
2 細胞排出用流路
3 貯留部
4 細胞配列部
5 分岐路
6 細胞注入口
7 細胞排出口
8 細胞収容用区画
9 円形穴
11 マイクロチップ
S 細胞
S1 所望の細胞
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液機構と連結される細胞注入口を有し、該細胞注入口から注入された細胞が移動する細胞注入用流路と、
排液機構と連結される細胞排出口を有し、該細胞排出口へと向かう細胞が移動する細胞排出用流路と、
これら細胞注入用流路と細胞排出用流路との間に形成され、細胞注入用流路から細胞排出用流路へと流れる途中の細胞を一旦貯留する貯留部と、
該貯留部に貯留された細胞が導入される細胞配列部と、
該細胞配列部と前記貯留部とを接続する分岐路と、
を1つの基板上に備えており、
前記細胞配列部は、壁により互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有し、
前記貯留部は、前記細胞注入用流路及び細胞排出用流路よりも広い幅に形成され、
前記分岐路は、該貯留部よりも狭い幅に形成されている
ことを特徴とする細胞配列用マイクロチップ。
【請求項2】
前記貯留部の細胞注入用流路側から前記分岐路へと入る経路の内角が直角又は鋭角に形成されていることを特徴とする請求項1記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項3】
前記貯留部を介して接続された細胞注入用流路と細胞排出用流路とが同一直線上にないことを特徴とする請求項1又は2記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項4】
夫々異なる細胞注入用流路及び細胞排出用流路と接続された複数の貯留部を有しており、
該複数の貯留部が、1つの細胞配列部に対して夫々異なる分岐路を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項5】
前記細胞配列部が、六角形の細胞収容用区画がハニカム状に配列された構造を有し、
該細胞収容用区画は、その底面に前記六角形よりも小さい円形穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップを用いた細胞配列方法であって、
前記送液機構からの送液により細胞を含む液を前記細胞注入用流路に供給して前記貯留部へと送り込む第一の段階と、
該貯留部に送り込まれた細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、前記分岐路を介して前記細胞配列部に移動させる第二の段階と、
該細胞配列部に移動された細胞を光ピンセットにより移動させて所望の細胞収容用区画に収容する第三の段階とを備えており、
前記第一乃至第三の段階を所要回数繰り返すことにより、複数の細胞を細胞配列部において所望配列に配列することを特徴とする細胞配列方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載された細胞配列用マイクロチップを用い、
前記第一の段階において、前記複数の細胞注入用流路に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部へと送り込み、
前記第二の段階において、夫々異なる貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより夫々異なる分岐路を介して前記細胞配列部に移動させることを特徴とする請求項6記載の細胞配列方法。
【請求項1】
送液機構と連結される細胞注入口を有し、該細胞注入口から注入された細胞が移動する細胞注入用流路と、
排液機構と連結される細胞排出口を有し、該細胞排出口へと向かう細胞が移動する細胞排出用流路と、
これら細胞注入用流路と細胞排出用流路との間に形成され、細胞注入用流路から細胞排出用流路へと流れる途中の細胞を一旦貯留する貯留部と、
該貯留部に貯留された細胞が導入される細胞配列部と、
該細胞配列部と前記貯留部とを接続する分岐路と、
を1つの基板上に備えており、
前記細胞配列部は、壁により互いに仕切られた複数の細胞収容用区画を有し、
前記貯留部は、前記細胞注入用流路及び細胞排出用流路よりも広い幅に形成され、
前記分岐路は、該貯留部よりも狭い幅に形成されている
ことを特徴とする細胞配列用マイクロチップ。
【請求項2】
前記貯留部の細胞注入用流路側から前記分岐路へと入る経路の内角が直角又は鋭角に形成されていることを特徴とする請求項1記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項3】
前記貯留部を介して接続された細胞注入用流路と細胞排出用流路とが同一直線上にないことを特徴とする請求項1又は2記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項4】
夫々異なる細胞注入用流路及び細胞排出用流路と接続された複数の貯留部を有しており、
該複数の貯留部が、1つの細胞配列部に対して夫々異なる分岐路を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項5】
前記細胞配列部が、六角形の細胞収容用区画がハニカム状に配列された構造を有し、
該細胞収容用区画は、その底面に前記六角形よりも小さい円形穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップ。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の細胞配列用マイクロチップを用いた細胞配列方法であって、
前記送液機構からの送液により細胞を含む液を前記細胞注入用流路に供給して前記貯留部へと送り込む第一の段階と、
該貯留部に送り込まれた細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより、前記分岐路を介して前記細胞配列部に移動させる第二の段階と、
該細胞配列部に移動された細胞を光ピンセットにより移動させて所望の細胞収容用区画に収容する第三の段階とを備えており、
前記第一乃至第三の段階を所要回数繰り返すことにより、複数の細胞を細胞配列部において所望配列に配列することを特徴とする細胞配列方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載された細胞配列用マイクロチップを用い、
前記第一の段階において、前記複数の細胞注入用流路に対して夫々異なる種類の細胞を供給して夫々異なる貯留部へと送り込み、
前記第二の段階において、夫々異なる貯留部に送り込まれた複数の細胞の中から所望の細胞を、前記送液機構と排液機構の制御により若しくは光ピンセットにより夫々異なる分岐路を介して前記細胞配列部に移動させることを特徴とする請求項6記載の細胞配列方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−330202(P2007−330202A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168013(P2006−168013)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(507044022)株式会社ABsize (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(507044022)株式会社ABsize (8)
【Fターム(参考)】
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